JP3464618B2 - 高輝度発光半導体材料の作製方法 - Google Patents

高輝度発光半導体材料の作製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリサイド・ベー
スの光グラス・ファイバーで減衰の最も少ない1.54
μmの波長で発光し、温度変化の波長依存性がない半導
体レーザや発光素子等の半導体材料を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従米の技術では、CVD法やイオン注入
法により、 III−V 族半導体(GaN,GaAs,In
P,InAs等)やシリコン半導体(Si)を母体とす
る半導体に、希土類金属不純物(Er,Tm,Yb,ま
たはNd等)をドープして1.54μmの波長の発光材
料を製造し、母体半導体をアルゴンレーザで励起するこ
とにより発光を得ていたが、発光効率が励起光に対して
1000分のl程度と低く、実際にシリサイド・ベース
の光フアイバーで使うための半導体レーザや発光素子が
実現されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の方法では、 III
−V 族半導体(GaN,GaAs,InP,InAs
等)やシリコン半導体(Si)のCVD法による結晶成
長中に、もしくはイオン注入法により、希土類金属不純
物(Er,Tm,Yb,またはNd等)を単独にドープ
しているため、不純物濃度は溶解度極限のため1018
-3程度しかドーピングすることができなかった。ま
た、希土類金属不純物を単独にドープする従来の方法で
は、半導体ギャップ中に浅い不純物準位しか作ることが
できず、電子と正孔の再結合中心となりにくく、さらに
電子と正孔の再結合エネルギーと発光エネルギーに大き
なミスマッチがあるために発光効率がきわめて低かっ
た。
【0004】特開平6−177062号公報には、基板
温度450〜800℃でSiをCVDで被着してシリコ
ン内のErの平衡固溶限度超えるオーダーの約2×10
19cm-3程度までErドープする方法が開示されている
が、希土類金属不純物を増やして不純物濃度が溶解度極
限を超えると格子間位置に溶け込んだり、発光に寄与し
ない不純物複合体を形成し、これ以上希土類金属不純物
濃度を増やしても、発光強度が増加しなくなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、この様な問題
を解決するために、希土類金属不純物をドープする際
に、ドナー(O,S,またはSe)とアクセプター(Z
n,Cd、またはSi)を、結晶成長時に同時にドーピ
ングすることにより、高輝度の半導体レーザや発光素子
半導体材料を提供するものである。
【0006】すなわち、本発明は、高輝度の半導体レー
ザや発光素子半導体材料の III−V族半導体材料やシリ
コン半導体材料の製造方法において、超高真空蒸着法の
一種であるMBE(Molecular Beam Epitaxy)法または有
機金属化合物を使って熱CVD法により薄膜を作るMO
CVD(Metalorganic CVD)法で、 III−V 族半導体やシ
リコン半導体(Si)を母体として希土類金属不純物を
ドープする際に、希土類金属不純物(RE)と同時に、
ドナー(D=O,S,またはSe)とアクセプター(A
=Zn,Cd,Si)を、結晶成長領域に導入し、これ
らを同時ドーピングすることにより、高輝度の発光半導
体材料を製造する方法である。
【0007】同時にドーピングすることにより、希土類
金属不純物とドナーおよびアクセプターの不純物複合体
を形成することによって、対称性の低い不純物複合体
(A−D−RE−D−A)を結晶中に導入し、希土類金
属不純物の形成エネルギーを減少させて、不純物の溶解
度を上昇させることができる。
【0008】高輝度発光中心の形成に不可欠な、例えば
Si−O−RE−O−SiやSi−O−RE−O−Si
−Siのように希土類金属不純物:ドナー:アクセプタ
ーが1:2:2または1:2:3の比での不純物複合体
を作るためには、希土類金属、ドナー、アクセプターの
分圧を結晶成長中に制御する必要がある。
【0009】同時にドーピングする際に、希土類金属不
純物とドナーおよびアクセプターの濃度を調整すること
により、半導体ギャップ中の不純物準位の位置を希土類
金属不純物のf電子内殻遷移エネルギーの直上に調整
し、エネルギー・マッチングにより発光強度が最高値と
なるように制御することができる。
【0010】同時にドーピングする際に、希土類金属不
純物とドナーおよびアクセプターの濃度を調整すること
により、結晶中に出現する希土類金属不純物とドナーと
アクセプターからなる不純物複合体の形成を制御するこ
とにより、希土類金属不純物の発光強度を制御すること
ができる。
【0011】
【作用】結晶成長中に、希土類金属不純物とドナーとア
クセプターを結晶成長域に同時ドーピングすることによ
り、希土類金属不純物とドナー原子間には静電的及び共
有結合的な引力が働き、またアクセプター原子とドナー
原子間にも静電的な引力が働く。一方、希土類金属不純
物とアクセプター原子間には斥力が働くため、結晶成長
時に半導体中に原子レベルでの対称性の低い不純物複合
体(A−D−RE−D−A)を結晶中に導入することが
できる。
【0012】これらの不純物複合体の形成は、単独ドー
ピングと比較して不純物の形成エネルギーを低下させる
ため、半導体中での不純物溶解度を大きく上昇させる。
このため発光強度が増大する。さらに、図1に示すよう
に、対称性の低い不純物複合体(A−D−RE−D−
A)の形成は、半導体バンドギャップ中に深い不純物準
位を作り、低い対称性のため希土類金属不純物の内殻f
電子と価電子帯の波動関数の混じりが一桁以上増大する
ことにより、希土類金属不純物のf電子内殻遷移発光が
増大する。
【0013】さらに、従来の方法では希土類金属不純物
を単独にドープしているため、半導体ギャップ中に浅い
不純物準位しか作ることができず、電子と正孔の再結合
中心となりにくく、さらに電子と正孔の再結合エネルギ
ーと発光エネルギーに大きなミスマッチがあるために発
光効率が極めて低かったが、本発明の方法では、希土類
金属不純物とドナーとアクセプターを結晶成長域に同時
にドーピングすることにより、深い不純物準位を形成
し、またこれらの不純物準位を同時ドーパントの濃度を
変えることにより制御できるため、電子と正孔の再結合
エネルギーと発光エネルギーのミスマッチを解消するこ
とができ、発光効率を大きく上昇させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】MBE法で結晶成長させる場合に
は、図2に示すように真空チャンバ1に基板2をセット
し、基板2にIn(又はGa)源3およびP(又はA
s)源8を臨ませる。In(又はGa)源3およびP
(又はAs)源8は、ヒータ5で加熱され、In(又は
Ga)およびP(又はAs)蒸気となって基板2へ送ら
れ、基板2上で、InP,InAs,GaAs,GaP
結晶6としてエピタキシャル成長する。
【0015】このとき、Er等の希土類金属源10で
は、ヒータ5で発生した希土類金属の原子状になったビ
ームを結晶成長空間に送り込む。また、アクセプター源
9もヒータ5で加熱され、アクセプターのZnは原子状
の蒸気となって基板2へ送られる。またドナー(又は
O)はRFコイル7で加熱され、原子状の蒸気となって
基板2へ送られる。これらをエピタキシャル結晶成長中
に同時にドーピングすることにより、希土類金属不純
物、アクセプター、そしてドナーの原子ビームの流量を
調整すると、基板2上に成長する結晶6は、高濃度で希
土類金属不純物、アクセプター、そしてドナーをドープ
した高輝度発光半導体結晶となる。
【0016】MOCVD法では、図3に示すように真空
チャンバ1に基板2をセットし、基板2にIn(又はG
a)を含む有機金属ガス源g1およびP(又はAs)を
含む有機金属ガス源g2を臨ませる。
【0017】In(又はGa)を含む有機金属ガス源g
1およびP(又はAs)を含む有機金属ガス源g2は、
RFコイル7で発生した電磁波で分解し、In(又はG
a)およびP(又はAs)の原子状ビームを作り、基板
2へ送られ、基板2上で、InP,InAs,GaA
s,GaP結晶6としてエピタキシャル成長する。
【0018】このとき、希土類金属、例えばErを含む
有機金属ガス源g3は、RFコイル7で発生した電磁波
RFにより分解し、原子状になったErの原子ビームを
結晶成長空間に送り込む。また、アクセプターZnを含
む有機金属ガス源g4も電磁波により分解し、原子状ビ
ームとなって基板2へ送られる。またドナーOを含む有
機金属ガス源g5も電磁波により分解され、原子状ビー
ムとなって基板2へ送られる。これらをエピタキシャル
結晶成長中に同時にドーピングすることにより、希土類
金属不純物、アクセプター、そしてドナーの原子ビーム
の流量を調整すると、基板2上に成長する結晶6は、高
濃度で希土類金属不純物、アクセプター、そしてドナー
をドープした高輝度発光半導体結晶となる。
【0019】このように、 III−V 族半導体やシリコン
半導体結晶に希土類金属不純物をドープする際に、希土
類金属不純物と同時に、ドナーとアクセプターを、結晶
成長域に導入し、これらを同時にドーピングすることに
より、対称性の低い不純物複合体(A−D−RE−D−
A)を結晶中に導入することが可能になる。
【0020】対称性の低い不純物複合体(A−D−RE
−D−A)が形成されることにより希土類金属不純物の
溶解度が上昇し、しかも、不純物準位のエネルギーを希
土類金属不純物のf電子内殻遷移エネルギーにマッチン
グすることができるため高輝度発光半導体結晶材料を製
造できる。
【0021】希土類金属不純物:ドナー:アクセプター
=1:2:2または1:2:3に調整した原子状混合ガ
スは、希土類金属酸化物をオーブンで加熱して蒸発させ
て分子ビームを作り、ドナーやアクセプターは分子ガス
原料を電磁波で分解し原子状のガスと両者を混合するこ
とにより調製する。
【0022】
【実施例】InP結晶成長用基板2としてInP単結晶
を、真空度10-10 トールに維持された真空チャンバ1
にセットした。流量10-6ト−ルでIn蒸気を、流量1
-6ト−ルで原子状Pを、流量2×10-7トールでEr
蒸気を、流量7×10-7ト−ルでO蒸気とZn蒸気を基
板2上に流しながら、500〜800℃でInP結晶を
エピタキシャル成長させた。表1にErとOとZnの同
時ドーピングがErドーピング濃度と発光効率に及ぼす
影響を示した。
【0023】
【表1】 得られたInP結晶は、表1に示すように結晶成長温度
に応じてEr濃度と発光効率が異なっていた。しかし、
Er単独ドーピングと比べて、O蒸気(ドナー)とZn
蒸気(アクセプター)とErの同時ドーピングにより、
いずれの結晶成長温度でも高いドーピング濃度と高い発
光効率を示した。
【0024】Oドナーに替えSeドナーを、Znアクセ
プターに替えCd又はSiアクセプターをErと同時ド
ーピングした場合にも、同様にErを単独ドーピングし
た場合と比べてErを高濃度にドーピングすることがで
きた。また、発光効率についても単独ドーピングと比較
して大きいものが得られた。
【0025】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、希上類金属不純物、ドナー、アクセプターを同時に
ドーピングすることにより、従来の方法では希土類金属
不純物濃度は溶解度極限のため1018cm-3程度しかド
ーピングすることができかったものを1019〜1021
-3の高濃度にドーピングすることが可能となった。さ
らに、このようにして得られた III−V 族半導体やシリ
コン半導体材料は、従来のErを単独ドーピングした半
導体材料と比較して高い発光効率を呈する。そのため、
強力な半導体レーザの発光素子等の材料として、ガラス
ファイバーによる光通信、等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ErとOドナーとZnアクセプターを同時にド
ーピングしたInP結晶のモデル図。
【図2】ErとS又はOドナーとZnアクセプタを同時
にドーピングしたInP結晶を成長させるMBE法で使
用する装置の概念図。
【図3】ErとOドナーとZnアクセプターを同時ドー
ピングしたInP結晶を成長させるMOCVD法で使用
する装置の概念図。
【図4】Erを単独ドーピングしたInP結晶の電子状
態密度を示すグラフ。
【図5】ErとOドナーとZnアクセプターを同時ドー
ピングしたInP結晶の電子状態密度を示すグラフ。
【符号の説明】
1 真空チャンバ 2 基板 3 In源 4 O源 5 ヒータ 6 InP基板結晶 7 Er源 8 P源 9 Zn源
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−256601(JP,A) 特開 平8−64905(JP,A) 特開 平5−283743(JP,A) 特開 平4−206886(JP,A) 特開 平1−155678(JP,A) 特開 平7−162038(JP,A) 特開 昭49−66283(JP,A) J. Devin MacKenzi e, et al.,Er dopin g of GaN during gr owth by metalorgan ic molecular beam epitaxy,APPLIED PH YSICS LETTERS,米国, 1998年,Vol.72, No.21,P. 2710−2712 Applied Physics L etters,米国,1999年 8月 2 日,Vol.75, No.5,P.647 − 649 Journal of Applie d Physics,米国,1991年,V ol.70,No.5,P.2672−2678 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 33/00 H01L 21/20 - 21/208 H01S 5/00 - 5/50

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 MBE法またはMOCVD法で、 III−V
    族半導体またはシリコン半導体を母体として希土類金属
    不純物をドープし、希土類金属不純物のf電子内殻遷移
    を利用した発光半導体材料を作成する際、O、S、また
    はSeからなるドナーとZn、Cd、またはSiからな
    アクセプターを、結晶成長時に同時にドーピングする
    ことにより、高輝度の発光半導体材料を製造する方法。
  2. 【請求項2】 同時にドーピングすることにより、希土
    類金属不純物とドナーおよびアクセプターの不純物複合
    体を形成することによって、希土類金属不純物の形成エ
    ネルギーを減少させて、不純物の溶解度を上昇させるこ
    とを特徴とする請求項1記載の高輝度の発光半導体材料
    を製造する方法。
  3. 【請求項3】 同時にドーピングする際に、希土類金属
    不純物とドナーおよびアクセプターの濃度を調整するこ
    とにより、半導体ギャップ中の不純物準位の位置を希土
    類金属不純物のf電子内殻遷移エネルギーの直上に調整
    し、エネルギー・マッチングにより発光強度が最高値と
    なるように制御することを特徴とする請求項1記載の高
    輝度の発光半導体材料を製造する方法。
  4. 【請求項4】 同時にドーピングする際に、希土類金属
    不純物とドナーおよびアクセプターの濃度を調整するこ
    とにより、結晶中に出現する希土類金属不純物とドナー
    とアクセプターからなる不純物複合体の形成を制御する
    ことにより、希土類金属不純物の発光強度を制御するこ
    とを特徴とする請求項1記載の高輝度の発光半導体材料
    を製造する方法。
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Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Applied Physics Letters,米国,1999年 8月 2日,Vol.75, No.5,P.647 − 649
J. Devin MacKenzie, et al.,Er doping of GaN during growth by metalorganic molecular beam epitaxy,APPLIED PHYSICS LETTERS,米国,1998年,Vol.72, No.21,P.2710−2712
Journal of Applied Physics,米国,1991年,Vol.70,No.5,P.2672−2678

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