JP3460569B2 - 残留磁束密度が低い珪素鋼板 - Google Patents

残留磁束密度が低い珪素鋼板

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JP3460569B2 JP07862198A JP7862198A JP3460569B2 JP 3460569 B2 JP3460569 B2 JP 3460569B2 JP 07862198 A JP07862198 A JP 07862198A JP 7862198 A JP7862198 A JP 7862198A JP 3460569 B2 JP3460569 B2 JP 3460569B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、偏磁による突入電
流が間題となるトランス、リアクトル、変成器(CT)
やモータなどの鉄心として用いられる残留磁束密度の低
い珪素鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】トランス、モータ等の鉄心に使用される
珪素鋼板は、磁束密度を高め、鉄損を低下させる方向で
研究が行われ、角形比の大きい材料が開発されてきた。
しかし、その結果、残留磁束密度が大きくなり、トラン
ス等の機器とした場合、偏磁によりさまざまな問題が発
生している。
【0003】そこで、本発明者らは、先に、偏磁の原因
である残留磁束密度を低下させるには板厚方向にSiの
濃度勾配を形成することが有効なことを見出し、特許出
願した(特開平9−184051号公報)。また、板厚
方向にSiの濃度勾配を形成することは特開昭62−2
27033号から特開昭62−227036号公報、お
よび特開平4−246157号公報に開示されている。
【0004】しかし、特開平9−184051号公報に
開示されたように確かに残留磁束密度は低下するもの
の、珪素鋼板において所望の低残留磁束密度を達成する
ために必要なSi濃度勾配の値自体は不明であった。こ
のため、Si濃度勾配が形成されていても十分な低残留
磁束密度が達成されない場合や、低残留磁束密度は達成
されるものの鉄損が増大し、透磁率が低下する問題が発
生する場合がある。
【0005】一方、上記特開昭62−227033号か
ら特開昭62−227036号公報、および特開平4−
246157号公報において板板厚方向にSi濃度勾配
を形成する目的は、浸珪法(CVD法)で製造する6.
5wt.%珪素鋼板の生産効率の向上、鉄損の向上、お
よび加工性の向上であり、低残留密度特性については全
く触れられていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、安定して低い残留磁束密
度を示し、磁気特性バランスの優れた珪素鋼板を提供す
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、所望の低
残留磁束密度を達成するために必要なSi濃度勾配の解
析と実験とを行った。上記特開平9−184051号公
報に開示されている残留磁束密度低下のメカニズムは磁
区構造から検討したものである。そこに開示されたよう
な磁区構造となる理由を磁気弾性エネルギーから解析し
た。その結果、エネルギー的見地からはSi濃度勾配に
より低残留磁束密度化するのは以下のような理由による
と推定される。
【0008】Siの濃度勾配により板厚方向に磁歪の分
布が形成される。磁歪に分布があると、磁化された時に
板厚方向の表層と内部で応力が発生し、磁気弾性エネル
ギーが高まる。残留磁化も磁化状態であるため残留磁気
が大きいとエネルギー的に不利となるため、磁歪分布す
なわち濃度勾配があると残留磁気が小さい磁区構造とな
ると推定される。
【0009】このように、低残留磁束密度化する上で、
Siの濃度勾配の値自体が重要な因子の一つであり、本
発明はこのような検討結果に基づき、所望の低残留磁束
密度を得ることができるSi濃度勾配を把握したもので
ある。
【0010】すなわち、本発明は、C≦0.02wt.
%、0.05wt.%≦Mn≦0.5wt.%、P≦
0.01wt.%、S≦0.02wt.%、0.001
wt.%≦sol.Al≦0.06wt.%、N≦0.
01wt.%であり、Siを平均7wt.%以下含有
し、残部実質的にFeからなり、板厚方向にSiの濃度
勾配を有し、濃度勾配が3wt.%/mm以上であるこ
とを特徴とする、残留磁束密度が低い珪素鋼板を提供す
る。Siの濃度勾配のさらに好ましい範囲は、4.5w
t.%/mm以上である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。上述したように、鉄心材料として用いられる珪
素鋼板は残留磁束密度が低いことが必要であり、そのた
めに本発明では板厚方向のSiの濃度勾配を規定する。
すなわち、上述したようにSi濃度勾配が存在すると残
留磁気が小さい磁区構造となる推定され、低残留磁束密
度化する上で、Si濃度勾配の値自体が重要な因子とな
る。
【0012】そこで、どの程度のSi濃度勾配があれば
所望の低残留磁束密度が得られるかを検討した。その結
果を表1に示す。なお、表1に示す濃度勾配(wt.%
/mm)はSi濃度が傾斜している部分における板厚方
向のSi濃度差(wt.%)を板厚方向の距離(mm)
で割った値であり、その例を図1または図2に示す。図
1は鋼板表層部と中心部にSi濃度一定の領域がある場
合であり、図2はSi濃度一定の領域がない場合であ
る。
【0013】
【表1】
【0014】表1に示すように、残留磁束密度を実用的
な0.4T以下とするためにはSi濃度勾配が3wt.
%/mm以上であればよい。また、Si濃度勾配が4.
5wt.%/mm以上であれば、残留磁束密度は0.3
T以下のより好ましい値となる。
【0015】低残留磁束密度化に必要とされるSi濃度
勾配値は、製品板厚が0.05〜0.65mmの間で変
化しても大きくは変わらないが、板厚が薄い場合はより
大きな値が必要とされる傾向にある。
【0016】本発明において、平均Si濃度は7wt.
%以下とするが、これは7wt.%を超えると加工性が
劣化し、部品加工が不可能となるからである。
【0017】次に、Si以外の元素の限定理由について
説明する。Cは多量に含有されると磁気時効を引き起こ
すため、その上限を0.02wt.%とする。その下限
は特に規定されないが、経済的に除去する観点からはそ
の下限を0.001wt.%とすることが好ましい。
【0018】Mnは多量に含有されると鋼板が脆くなる
ため、その上限を0.5wt.%とする。ただし、その
含有量が低く過ぎると、熱延工程で破断や表面キズを誘
発するため、その下限を0.05wt.%とする。
【0019】Pは磁気特性から見ると好ましい元素であ
るが、多量に含有されると鋼板の加工性を劣化させるた
め、その上限を0.01wt.%とする。その下限は特
に規定されないが、経済的に除去する観点からはその下
限を0.001wt.%とすることが好ましい。
【0020】Sは加工性を劣化させるため、その上限を
0.02wt.%とする必要がある。その下限は特に規
定されないが、経済的に除去する観点からはその下限を
0.001wt.%とすることが好ましい。
【0021】sol.A1は同じく加工性を害するた
め、その上限を0.06wt.%とする。一方、脱酸剤
としての必要性からその下限を0.001wt.%とす
る。
【0022】Nは多量に含有されると窒化物を形成して
磁気特性を劣化させるため、その上限を0.01wt.
%とする必要がある。その下限は特に規定されないが、
現在の製鋼技術を考慮すると事実上0.0001wt.
%が下限となる。
【0023】本発明に係るSiの濃度勾配を有する珪素
鋼板は種々の方法で製造することができ、その製造方法
は限定されない。例えば、化字気相蒸着(CVD、浸珪
処理)法、物理気相蒸着(PVD)法、クラツド技術、
めっき技術によって製造することが可能である。
【0024】例としてCVD法での製造方法を説明す
る。まず、例えば3wt.%珪素鋼の冷間圧延コイルを
通常の鋼板製造プロセスで製造する。このコイルをCV
D処理してSi濃度勾配を有する鋼板とする。すなわ
ち、非酸化性雰囲気中で1100℃以上に加熱してSi
化合物ガス、例えばSiCl4ガスと反応させ表面に高
Si濃度のSi層を形成する。引き続き拡散処理を行
い、Siを鋼板内部に必要量拡散させ、目的とする平均
Si量およびSi濃度勾配を有する珪素鋼板を製造す
る。
【0025】なお、本発明において平均Siとは全板厚
に対するSi濃度の平均値を意味し、例えば製品厚さの
まま化学分析することにより得ることができる値であ
る。また、Si濃度の最大と最小は、全板厚をEPMA
分析して得られるSi濃度プロファイルから決定するこ
とができる。さらに、各元素の濃度は製品での濃度であ
る。さらにまた、残留磁束密度は、直流で1.2T励磁
後の値である。
【0026】
【実施例】表2に示す組成(Si以外は商品となった時
点での組成。SiはCVD処理前の組成)の板厚0.0
5〜0.5mmの鋼板を通常の鉄鋼製造プロセスで製造
した。これをCVD処理して種々のSi平均濃度と濃度
分布を持つ鋼板を得た。表3にその際の平均Si濃度と
Si濃度勾配を示す。そして、これら鋼板の残留磁束密
度を測定した。その結果を表3に併記する。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】表3に示すように、Si濃度勾配が3w
t.%/mm以上の本発明材は、0.4T以下の低い残
留磁束密度を示すことが確認された。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
安定して低い残留磁束密度を示し、磁気特性バランスの
優れた珪素鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板表層および中心部に濃度一定領域を有する
場合のSi濃度勾配の定義を説明するための図。
【図2】濃度一定領域のない場合のSi濃度勾配の定義
を説明するための図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−9705(JP,A) 特開 平5−263198(JP,A) 特開 平8−302449(JP,A) 特開 平9−184051(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 303 C22C 38/02 H01F 27/25

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C≦0.02wt.%、0.05wt.
    %≦Mn≦0.5wt.%、P≦0.01wt.%、S
    ≦0.02wt.%、0.001wt.%≦sol.A
    l≦0.06wt.%、N≦0.01wt.%であり、
    Siを平均7wt.%以下含有し、残部実質的にFe
    からなり、板厚方向にSiの濃度勾配を有し、濃度勾配
    が3wt.%/mm以上であることを特徴とする、残留
    磁束密度が低い珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 Siの濃度勾配が4.5wt.%/mm
    以上であることを特徴とする、請求項1に記載の残留磁
    束密度が低い珪素鋼板。
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