JP2001098331A - {100}集合組織珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

{100}集合組織珪素鋼板の製造方法

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JP2001098331A
JP2001098331A JP27486599A JP27486599A JP2001098331A JP 2001098331 A JP2001098331 A JP 2001098331A JP 27486599 A JP27486599 A JP 27486599A JP 27486599 A JP27486599 A JP 27486599A JP 2001098331 A JP2001098331 A JP 2001098331A
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annealing
texture
decarburization
silicon steel
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JP27486599A
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Toshiro Tomita
俊郎 富田
Naoyuki Sano
直幸 佐野
Shigeo Kaminotani
繁雄 上野谷
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 {100}集合組織珪素鋼板を得るための、
冷間圧延後に脱炭、もしくは脱炭と脱Mnを伴う高温焼
鈍による最終焼鈍を施す製造方法において、{100}
集合組織を安定かつ十分に発達させ、安定して磁気特性
に優れた{100}集合組織珪素鋼板の製造方法を提供
する。 【解決手段】 Si:1.5〜4.5%、Mn:0.2
0〜2.0%、C:0.01〜0.20%を含有する鋼
を表面粗さが算術平均粗さRaで0.3:μm以下の鋼
板に冷間圧延し、脱炭促進物質、もしくは脱炭促進物質
と脱Mn促進物質を含有する焼鈍分離材を用いてタイト
コイル焼鈍もしくは積層焼鈍する。冷間圧延工程が中間
焼鈍を挟むものであればなおよく、最終焼鈍時の雰囲気
を減圧雰囲気とすればさらによい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鋼板面に平行に{1
00}集合組織を有する珪素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より電動機、発電機、変圧器などの
磁心材料には珪素鋼板が用いられている。この珪素鋼板
には、交流磁界中で磁気的なエネルギー損失が少ないこ
と、実用的な磁界中での磁束密度が高いことが求めら
れ、このような性能を実現するには、鋼の電気抵抗を高
め、その集合組織を磁化容易方向である体心立方格子の
<001>軸が使用磁界方向に集積したものとすること
が有効とされている。
【0003】図1は、体心立方格子の<001>軸が集
積した集合組織の例を示す概念図である。
【0004】図1(a)は{110}面が板面に平行で
<001>軸が圧延方向に平行に集積した組織であり、
一方向性珪素鋼板と称される。これは変圧器に用いられ
る巻き鉄心のように圧延方向のみに磁束が流れる用途に
適する。
【0005】同図(b)は{100}面が板面に平行
で、かつ、板面内の結晶軸に特定方向への配向性のない
ものであり、{100}面無方向組織と呼ばれるもので
ある。これは板面内の複数の方向に磁束が流れる回転機
の鉄心に理想的な集合組織である。
【0006】同図(c)は{100}面が板面に平行
で、かつ、板面内の8方向に<001>軸が集積した
{100}<021>集合組織である。これも回転機の
鉄心に適する。同図(d)は{100}面が板面に平行
で、かつ、板面内の圧延方向と幅方向に<001>軸が
集積したものであり、{100}<001>集合組織と
称される。これは、変圧器の積み鉄心のように圧延方向
と板幅方向に磁束が流れる用途に好適である。
【0007】図1(b)〜(d)に示した{100}面
が板面と平行な集合組織を有する珪素鋼板は{100}
集合組織珪素鋼板と総称される。特に同図(d)のよう
な集合組織を有する珪素鋼板は圧延方向と板幅方向に優
れた磁気特性を示すので二方向性珪素鋼板とも称され
る。
【0008】本発明者等は上記{100}集合組織珪素
鋼板を製造する方法として、冷間圧延後の最終焼鈍とし
て、脱炭、もしくは脱炭と脱Mnを伴う高温焼鈍をおこ
なう製造方法を開示した。
【0009】例えば、特開平7−173542号公報に
は質量%で、C:1%以下、Si:0.2〜6.5%、
Mn:0.05〜5.0%を含む冷間圧延珪素鋼板間
に、焼鈍分離材として脱炭を促進する物質(以下、単に
「脱炭促進物質」とも記す)、もしくは、脱炭促進物質
と脱マンガンを促進する物質(以下、単に「脱Mn促進
物質」とも記す)とを含有する焼鈍分離材を介在させ
て、コイル焼鈍法もしくは積層焼鈍法による最終焼鈍を
施すことを特徴とする{100}集合組織珪素鋼板の製
造方法を開示した。
【0010】また、特開平9−20966号公報および
WO98/20179号公報では、上記方法による珪素
鋼板製造時の冷間圧延工程を、中間焼鈍を挟んだ複数回
の冷間圧延とすることにより二方向性珪素鋼板が得られ
ることを開示した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らによるその
後の研究結果によれば、上述の従来の製造方法では、最
終焼鈍後の鋼板の{100}集合組織の発達が不安定か
つ不十分で、優れた磁気特性を有する{100}集合組
織珪素鋼板を安定して製造出来ないことが判明した。
【0012】本発明の目的は、{100}集合組織珪素
鋼板を得るための、冷間圧延後に脱炭、もしくは脱炭と
脱Mnを伴う高温焼鈍による最終焼鈍を施す製造方法に
おいて、{100}集合組織を安定かつ十分に発達さ
せ、安定して磁気特性に優れた{100}集合組織珪素
鋼板を製造することができる方法を提供することにあ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、{10
0}集合組織珪素鋼板を得るための、冷間圧延後に脱
炭、もしくは脱炭と脱Mnを伴う最終焼鈍を施す際の
{100}集合組織の発達に影響する要因について種々
研究を重ねた結果以下に述べる新たな知見を得た。
【0014】脱炭促進物質、もしくは脱炭促進物質と脱
Mn促進物質とを含有する焼鈍分離材(以下、単に「反
応性焼鈍分離材」とも記す)を用いて最終焼鈍する際
に、上記最終焼鈍の初期段階で鋼板の表面近傍で{10
0}集合組織を有する再結晶粒が生成し、脱炭や脱Mn
の進行に伴ってこれが鋼板表面から厚さ方向中心に向か
って成長する。
【0015】上記{100}集合組織発生の過程は鋼板
の表面粗さに大きく影響され、これを安定して発達させ
るには最終焼鈍に供する鋼板の表面粗さを一定値以下に
管理することが重要である。従来の方法では最終焼鈍に
供する冷間圧延鋼板の表面粗さについては特に言及され
ていない。
【0016】上記集合組織の発達が鋼板の表面粗さに大
きく影響される理由は以下のように推定される。結晶粒
の表面エネルギーは、{100}面が鋼板表面と平行に
なった場合に最も低くなる。{100}集合組織を有す
る再結晶粒が鋼板表面近傍で発生するのは、この表面エ
ネルギーの低下が影響している。
【0017】このような表面エネルギーの状態は、鋼板
の温度と表面状態を特定の状態にしたときに初めて得ら
れる。例えば、鋼板表面を極めて清浄にして焼鈍する場
合には、如何なる温度においても{110}面が表面に
平行となったときに表面エネルギーは最低になる。従っ
てこのような場合には鋼板表面に{100}集合組織は
形成されない。また、鋼板表面に酸化皮膜が形成される
ような場合であっても、その酸化皮膜が厚く形成される
ような条件下では結晶方位による表面エネルギーの差異
がなくなり、鋼板表面での{100}集合組織の形成は
ない。
【0018】900℃以上の高温で、かつ数nm程度の
薄い酸化膜、もしくは酸素の薄い吸着層が鋼板表面を覆
うような条件では、{100}面が鋼板表面と平行とな
った場合に鋼板の表面エネルギーが最も小さくなる。そ
れは、酸化膜や酸素の吸着層が薄い場合には結晶面方位
によりその構造が異なり、{100}面が鋼板表面と平
行となった時に特に安定な構造になるためである。
【0019】従って、{100}集合組織を有する再結
晶粒を得るには、数nm程度の薄い酸化膜、もしくは酸
素の薄い吸着層が鋼板表面を覆うような製造条件を選択
する必要がある。
【0020】酸素分圧が低い雰囲気であっても、鋼板の
表面粗度がある限界値を超えて大きくなると900℃未
満の低温域の昇温過程で酸化膜の生成が著しく、焼鈍過
程での{100}集合組織の形成が阻害される。鋼板粗
度を小さくすることにより、昇温中の酸化膜の生成が抑
制でき、均熱領域での脱炭や脱Mn反応を活発化し、鋼
板表面の還元が進み、{100}集合組織の形成に対す
る昇温中に形成される酸化膜の悪影響を排除することが
できる。
【0021】このことは{100}面の集積度を高める
のに加えて、{100}方位の再結晶粒の発生頻度が増
して焼鈍後の結晶粒径が微細になり渦電流損が低減する
という効果も得られる。
【0022】上記の限界となる表面粗さは算術平均粗さ
Raで0.30μmである。従って、最終焼鈍に供する
鋼板の表面粗度を事前に検査し、上記限界値以下の鋼板
を選択して最終焼鈍することにより磁気特性に優れた
{100}集合組織珪素鋼板を安定して得ることができ
る。
【0023】本発明はこれらの知見を基にして完成され
たものであり、その要旨は下記(1)〜(3)に記載の
{100}集合組織珪素鋼板の製造方法にある。
【0024】(1)質量%で、Si:1.5〜4.5
%、Mn:0.20〜2.0%、C:0.01〜0.2
0%を含有する鋼を冷間圧延する工程と、脱炭促進物
質、もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを含有す
る焼鈍分離材を用いてタイトコイル焼鈍もしくは積層焼
鈍する最終焼鈍工程とを有する{100}集合組織珪素
鋼板の製造方法であって、最終焼鈍工程前の鋼板の表面
粗さを算術平均粗さRaで0.30μm以下とすること
を特徴とする{100}集合組織珪素鋼板の製造方法。
【0025】(2)冷間圧延する工程が、中間焼鈍を挟
む複数回の圧延よりなるものであることを特徴とする上
記(1)に記載の{100}集合組織珪素鋼板の製造方
法。
【0026】(3)最終焼鈍工程の雰囲気が減圧された
雰囲気であることを特徴とする上記(1)または(2)
に記載の{100}集合組織珪素鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を詳細に述べ
る。なお、以下に記す%表示は質量%を意味する。
【0028】a.鋼板の化学組成 Si:鋼の電気抵抗を高めて渦電流損失を低減する作用
があるので、1.5%以上含有させる。本発明の製造方
法での最終焼鈍は、最終焼鈍工程初期の脱炭と脱Mn反
応が生じる前段階はα相(フェライト相)とγ相(オー
ステナイト相)が共存する(α+γ)2相混合域もしく
はγ相単相域でおこない、脱炭と脱Mn後はα単相とな
る温度域で焼鈍する必要がある。
【0029】Siには高温におけるα相の安定性を高め
る作用があり、Si含有量を高めると1000℃以上の
高温での効率的な脱炭が可能となる。このため、好まし
くはSiを2.0%以上含有させる。より好ましくは
2.3%以上である。
【0030】Siは鋼を脆化させ、冷間圧延を困難にす
るうえ、飽和磁束密度を減少させる。このような不都合
を避けるためにSi含有量は4.5%以下とする。好ま
しくは4%以下である。
【0031】特に{100}集合組織珪素鋼板を二方向
性珪素鋼板として製造する場合には、組織制御の容易性
や磁束密度と鉄損のバランスをよくする観点から、さら
に好ましいSi含有量は2.3以上、3.6%以下であ
る。
【0032】Mn:鋼の電気抵抗を高めて渦電流損失を
低減する作用がある。また、最終焼鈍の際に脱Mn反応
を生じさせれば、{100}集合組織の形成が促進され
る。これらの効果を得るためにMnは0.20%以上含
有させる。脱Mn反応による{100}集合組織の形成
を顕著にするためには0.3%以上とするのが好まし
い。より好ましくは0.5%以上である。
【0033】Mnを過度に含有させると飽和磁束密度が
低下するうえ、最終焼鈍の均熱時のα相の安定性も低下
する。これらの不都合を避けるためにMn含有量は2%
以下とする。特に{100}集合組織珪素鋼板を二方向
性珪素鋼板として製造する場合には、組織制御の容易性
や磁束密度と鉄損のバランスをよくする観点から、Mn
含有量を1.5%以下とするのがよい。
【0034】C:最終焼鈍の際に脱炭反応を利用して組
織形成させるため、最終焼鈍前の鋼板においてはCを
0.01%以上含有させる。{100}集合組織の発達
をより安定化し促進させるために好ましくは0.025
%以上含有させるのがよい。より好ましくは0.035
%以上である。
【0035】Cを過剰に含有させると脱炭完了までに長
時間要し焼鈍工程での生産性を損なうのでその上限は
0.2%とする。鋼の加工性を良くして効率的な冷間圧
延をおこなうために、C含有量は、好ましくは0.15
%以下とするのがよい。より好ましくは0.1%以下で
ある最終焼鈍後の製品ではCは炭化物として析出して製
品の磁気特性を損なうので少ない程よく、0.003%
以下にするのがよい。
【0036】Al:Al含有量は特に限定するものでは
ないが、Alは酸化傾向が強く、最終焼鈍の際に鋼板表
面を過度に酸化させて{100}面を有する再結晶粒の
生成を妨げるのでその含有量は少ない程よい。好ましく
は0.05%以下がよい。より好ましくは0.01%以
下、なお好ましくは0.005%以下である。
【0037】P、S:これらの元素は不可避的不純物で
あり、燐化物や硫化物などの析出物を形成し磁気特性を
損なう。従ってP、S共に好ましくは0.02%以下と
するのがよい。より好ましくはそれぞれ0.005%以
下である。
【0038】b.冷間圧延工程 上記の化学組成を有する鋼は、公知の方法で溶解し、鋳
造し、スラブまたは鋳片とされ、熱間圧延し、酸洗して
冷間圧延母材とされる。酸洗までの間の製造方法やその
条件は特に限定する必要はなく、公知の方法及び条件を
適用することができる。例えば鋳造して得た鋳塊を分塊
圧延して得たスラブや、連続鋳造して得たスラブなどを
熱間圧延し、酸洗した熱延鋼板やストリップキャスティ
ングなどの方法で得た薄鋳片、あるいはそれらに熱間圧
延を施したものなどを用いることができる。冷間圧延母
材には最終焼鈍工程における集合組織形成を安定化させ
るために熱延板焼鈍を施しても構わない。
【0039】冷間圧延工程での圧延母材の厚さと最終製
品の厚さから計算される圧下率は、最終焼鈍時に{10
0}集合組織を十分に発達させるための結晶組織の微細
化と表面平坦度を確保し、鉄心材料として必要な板厚精
度を確保するため、および、熱延鋼板の表面粗さの影響
を除くために、少なくとも50%以上のとなるようにす
るのがよい。この圧下率の調整は圧延母材の厚さを選択
することでおこなえる。
【0040】特に最終製品を{100}<021>型の
{100}集合組織を有するものとするには、中間焼鈍
を挟まないで80%以上の圧下率で圧延する冷間圧延を
施すのがよい。
【0041】最終製品を{100}<001>型の{1
00}集合組織を有するものとするには、冷間圧延工程
を、中間焼鈍を挟んで複数回の中間圧延による冷間圧延
としておこなうのがよい。この場合の中間圧延の圧下率
は特に限定するものではないが40〜80%の範囲とす
るのがよい。中間焼鈍条件は特に限定するものではない
が、例えば均熱温度は再結晶温度以上1200℃以下、
均熱時間は10秒以上12時間以下とするのがよい。
【0042】鋼板の表面粗度:最終焼鈍時に{100}
集合組織を十分に発達させるため、最終焼鈍に供する鋼
板は、その表面粗度がJIS−B0601に記載されて
いる算術平均粗さRaで0.30μm以下であるものを
用いる。好ましくは0.25μm以下である。ここで、
Raは板の圧延方向と板幅方向に測定した値の平均値で
あり、Ra測定時の評価長さとカットオフ値は上記JI
S規格に記載の標準値を用いる。
【0043】表面粗さの下限は特に限定するものではな
いが、表面粗さが小さくなるにつれて{100}集合組
織強化作用が飽和するうえ、鋼板製造コストが高くな
る。従って表面粗さは、好ましくはRaで0.1μm以
上とするのがよい。より好ましくは0.15μm以上で
ある。
【0044】最終焼鈍前にの鋼板の表面粗度を0.30
μm以下にするための方法は特に限定するものではない
が、冷間圧延時の圧延母材の厚さと最終製品の厚さから
計算される圧下率を50%以上とし、ワークロールとし
ては表面粗度が小さいもの、例えばRaで0.5μm以
下のもの、を使用し、さらに潤滑性の良い圧延油を使用
して冷間圧延するなどの方法が好適である。また、冷間
圧延素材となる熱間圧延鋼板の表面粗さが小さくなるよ
うにその表面を研磨などの方法で調整したり、冷間圧延
後に鋼板表面を研磨する等の方法を用いても一向に差し
支えない。
【0045】c.最終焼鈍 冷間圧延した鋼板は、これが鋼帯である場合にはコイル
状に巻き、切り板状の短かい鋼板である場合には積層す
るなどして、かつ、鋼板間には反応性焼鈍分離材を介在
させた状態で最終焼鈍する。反応性焼鈍分離材を介在さ
せることにより、脱炭、もしくは脱炭と脱Mnを生じさ
せ、γ→α変態を進展させるとともに、{100}面が
鋼板面と平行な結晶粒が優先的に鋼板表面から内部へと
成長し、{100}面集合組織を有する鋼板が得られ
る。また、{100}面集合組織の発達と同時に炭素含
有量も容易に減少させることができる。
【0046】脱炭促進物質としては、例えばSi酸化物
(SiO2 )がある。その場合の脱炭促進作用は以下の
機構によると考えられる。
【0047】Si酸化物は室温では安定であるが、10
00℃程度の高温では不安定になり、Si02 →Si0
+Oなる分解反応により酸素を発生する。この酸素が鋼
中の炭素と反応して一酸化炭素となり、脱炭が進行す
る。また、上記のようにSiOを生じることなく、酸化
物中のSiが鋼板中に固溶し、次式の反応により鋼板中
の炭素が一酸化炭素として除去される反応も生じるもの
と思われる。
【0048】 SiO2+2C(鋼板中)→Si(鋼板中)+CO 脱炭促進物質としてはSi酸化物の他に、Cr23、T
iO2 、FeO、V2 3、V25、VOなど、高温か
つ低酸素分圧の雰囲気下で比較的不安定な性質を備えた
酸化物、すなわち、焼鈍温度で分解して酸素を発生す
る、もしくは焼鈍温度で鋼中の炭素によって容易に還元
され脱炭を促進する物質を使用することができる。
【0049】これらの酸化物は1種類を使用してもよい
し、2種類以上を混合して使用してもよい。また、脱炭
反応速度の調整や焼鈍後の鋼板からの剥離性を向上させ
るために、高温で安定な無機物、例えばAl23などの
酸化物、BNやSiCなどの安定な窒化物や炭化物を上
記酸化物に混合しても構わない。
【0050】脱Mn促進物質としては、例えば、TiO
2 がある。鋼板中のMnは130Pa以下の減圧雰囲気
など、適切な雰囲気条件下において鋼板表面から昇華
し、鋼板表面近傍にMnの欠乏した層(脱Mn層)を形
成する。TiO2 は鋼板から昇華するMnを吸収して複
合酸化物(TiMnO3 )を形成する。これにより鋼板
表面のMn蒸気圧が減少し、脱Mnが促進される。
【0051】脱Mn促進物質としては、上記のように焼
鈍中に鋼板から昇華するMnを吸収する性質を有し、さ
らに、脱炭反応や、鋼板の表面エネルギー状態に悪影響
を及ぼさないものが適用でき、TiO2 以外にZrO2
やTi23を用いても構わない。特にTiO2 は脱炭を
も促進する作用があり、TiO2 単独でも脱炭と脱Mn
の双方を促進することができるので好適である。
【0052】上記反応性焼鈍分離材の形態は任意であ
り、例えば板状、粉末状、繊維状、繊維をシート状にし
たもの、これらの繊維やシートにさらに粉末を混入させ
たものなどがある。最も望ましい形態は繊維状または繊
維をさらにシート状に加工したものである。このような
形態にすれば取り扱いが容易であるうえ、繊維間に多量
の空隙があるので脱炭反応によって生じた一酸化炭素の
系外への排出やMnの昇華が容易になるという利点があ
る。
【0053】{100}面集積度を高めるために、焼鈍
雰囲気は水素ガス、不活性ガス、又は両者の混合ガスを
主体とする雰囲気とするか、または真空に近い減圧雰囲
気とするのが良い。減圧雰囲気としては1.3×104
Pa以下がよい。なお好ましくは130Pa以下であ
る。
【0054】脱炭反応は高温ほど促進されるので、最終
焼鈍時の保持温度は950℃以上とするのがよい。より
好ましくは1050℃以上のα+γ二相共存温度域もし
くはγ相単相温度域である。1300℃を超える高温度
は工業的に実現するのが困難であるので、最終焼鈍時の
保持温度は1300℃以下とするのがよい。より好まし
くは1150℃以下である。
【0055】焼鈍のための均熱保持時間は、30分から
100時間の範囲が良い。30分未満では脱炭、脱Mn
が不十分となり、100時間を超えると生産性が悪化す
る。 d.製品形態 鋼板を積層して使用する際の鋼板の間の電気的絶縁を確
保するため、鋼板表面に公知の絶縁皮膜を設けるのが好
ましい。絶縁皮膜の材質には、リン酸塩系やクロム酸塩
系の溶液を鋼板に塗布し焼き付ける無機質系の絶縁皮膜
や、上記無機質系溶液にポリアクリルタイプエマルジョ
ン等の有機樹脂を混合したものを鋼板に塗布し焼き付け
る有機−無機混合皮膜が考えられる。この表面コーティ
ングは最終焼鈍の後、焼鈍分離材を除去した後、塗布す
る。
【0056】本発明では結晶組織的な面から製品板厚に
上限を設ける必要はない。しかし、製品板厚が厚いと最
終焼鈍における脱炭に長時間を要し、渦電流損失が増大
するので好ましくは0.5mm以下とする。一方、板厚
の下限は特に限定されず、冷間圧延で製造可能な厚さで
あれば良い。
【0057】本発明の製造方法は、電磁鋼板製造などに
際して通常使用される公知の装置を用いておこなうこと
ができる。
【0058】
【実施例】(実施例1)種々の化学組成を有する鋼を溶
製し、熱間圧延して厚さが4mmの熱延鋼板を作製し
た。化学組成を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】これらの熱延鋼板を酸洗して表面の酸化層
を除去した後、中間焼鈍をしないで0.35mmの厚さ
まで冷間圧延した。冷間圧延に際してはワークロールの
表面粗度を種々変更し、冷間圧延後の鋼板の表面粗度を
種々のレベルに変化させた。得られた冷間圧延鋼板の表
面粗度(JIS−B0601に記載のRa)を接触式の
表面粗さ計を用いて測定した。Ra測定時のカットオフ
値と評価長さは、Raが0.1μm以下の時は各々0.
25mmと1.25mmとし、Raが0.1μmを超え
る場合は各々0.8mmと4mmとした。測定は圧延方
向とそれに直角の方向の2方向についておこない2方向
の平均値をその鋼板のRaとした。
【0061】上記冷間圧延鋼板から150mm角の最終
焼鈍用試験片を採取した。さらに、SiO2 とAl23
を質量比で48:52で含有する非晶質繊維:51質量
%、TiO2 粉末:40質量%、有機物バインダー:9
質量%からなるシート状の反 応性焼鈍分離材を用意し
た。その厚さは約200μmであった。上記試験片とシ
ート状の反応性焼鈍分離材を交互に積層し、0.13P
aの真空中で、加熱速度1℃/分で、1000〜110
0℃の範囲の均熱温度に加熱し、種々の時間保持した。
その後冷却し、反応性焼鈍分離材を除去し、最終焼鈍後
の鋼板の炭素含有量、鋼板表面に平行な{100}面の
面密度、および磁化特性を測定した。
【0062】炭素含有量は化学分析により求めた。{1
00}面密度は、Co−kα線を用いたX線による{2
00}積分強度を測定し、集合組織を持たないランダム
試料の{200}積分強度に対する比(比強度)として
求めた。
【0063】磁気特性は最終焼鈍後の試験片から内径3
3mm、外径45mmのリング状試験片を打ち抜き、歪
み取り焼鈍を施した後、絶縁紙をはさんで積層し、1次
コイルと2次コイルを各々100ターン巻き付けて磁化
測定用の試料とした。磁化測定は50Hzの正弦波交番
磁束密度条件化で行い、5000A/mの磁化力におけ
る磁束密度B50を求めた。製造条件および得られた測定
結果を表2に記す。
【0064】
【表2】
【0065】表2に示されているように、いずれの条件
のものも焼鈍により炭素含有量が0.003%以下とな
っていた。冷間圧延後の鋼板の表面粗度Raが0.30
μm以下であった試験片はいずれの鋼とも最終焼鈍後の
{100}面ランダム強度比が高く良好なB50を有して
いた。中でもRaが0.25μm以下のもののB50は良
好であり、Raが0.08μmであった試験番号5では
さらに良好なB50を有していた。しかしながら冷間圧延
後の鋼板の表面粗度Raが0.30μmを超えたものは
いずれの鋼においても{100}面密度が低く、B50
よくなかった。
【0066】(実施例2)表1に示した鋼Cから厚さ:
3.0mmの熱間圧延鋼板を作製した。酸洗して表面の
酸化物を除去した後、厚さ:0.7mmまで一次冷間圧
延した。その後、水素雰囲気中で1000℃まで加熱し
30秒間保持する中間焼鈍を施し、さらに厚さ:0.3
0mmまで二次冷間圧延した。二次冷間圧延時のワーク
ロールの表面粗度を種々変更し、冷間圧延鋼板の表面粗
度を変化させた。また比較例として冷間圧延後研磨紙で
表面を粗くした鋼板も準備した。これらの冷間圧延鋼板
のRaを実施例1に記載したのと同様の条件で測定し
た。
【0067】上記冷間圧延鋼板から採取した150mm
角の最終焼鈍用試験片と、実施例1に記載したのと同一
の化学組成および厚さの反応性焼鈍分離材とを、交互に
挟みながら積層した。得られた積層体には、0.13P
aの真空中で1℃/分の加熱速度で1100℃に加熱し
16時間保持する最終焼鈍を施した。一部の積層体はは
真空度を13Paにして最終焼鈍した。これらを冷却し
た後、反応性焼鈍分離材を除去し、得られた鋼板の炭素
含有量、鋼板表面に平行な{100}面の面密度、平均
結晶粒径、及び磁化特性の測定を行った。
【0068】炭素含有量と{100}面の面密度の測定
方法は実施例1記載したのと同様の条件でおこなった。
平均結晶粒径は鋼板表面から組織を観察し、切断法によ
り求めた。さらに、最終焼鈍試験片から、長手方向を圧
延方向または板幅方向とした100mmx30mmの短
冊試験片を採取し、歪み取り焼鈍を施したのち、単板磁
化測定装置を用いて1000A/mの磁化力における磁
束密度B10を測定した。製造条件および得られた測定結
果を表3に記す。
【0069】
【表3】
【0070】表3に示されているように、いずれの条件
のものも焼鈍により炭素含有量が0.003%以下とな
っていた。最終焼鈍前の鋼板表面のRaが0.30μm
以下であった試験番号23〜26は、圧延方向と板幅方
向の磁束密度B10が共に1.80T以上と良好な二方向
性方向性珪素鋼板としての特性を有していた。中でも最
終焼鈍前の鋼板表面のRaが0.25μm以下の場合は
圧延方向と板幅方向の磁束密度は共に1.85T以上で
あり、かつ、両方向ともほぼ等しいB10を有しており極
めて良好な特性であった。最終焼鈍時の真空度が13P
aであった試験番号26は、最終焼鈍前の鋼板表面のR
aが同一である試験番号25に比較するとB10がやや劣
った。
【0071】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、{100}
面が板面と平行な集合組織が十分に発達し、優れた磁気
特性を備えた{100}集合組織珪素鋼板を安定して製
造することができる。従って本発明の製造方法は、回転
機や変圧器の高効率化に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】体心立方格子の<001>軸が集積した集合組
織の例を示す概念図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上野谷 繁雄 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金 属工業株式会社内 Fターム(参考) 4K033 RA02 SA02 TA01 TA04 5E041 AA02 AA19 BC01 CA02 CA04 HB05 HB11 NN01 NN06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、Si:1.5〜4.5%、M
    n:0.20〜2.0%、C:0.01〜0.20%を
    含有する鋼を冷間圧延する工程と、脱炭促進物質、もし
    くは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを含有する焼鈍分
    離材をコイル状もしくは積層状にした鋼板間に介在させ
    て焼鈍する最終焼鈍工程とを有する{100}集合組織
    珪素鋼板の製造方法であって、最終焼鈍工程前の鋼板の
    表面粗さを算術平均粗さRaで0.30μm以下とする
    ことを特徴とする{100}集合組織珪素鋼板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 冷間圧延する工程が、中間焼鈍を挟む複
    数回の圧延よりなるものであることを特徴とする請求項
    1に記載の{100}集合組織珪素鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 最終焼鈍工程の雰囲気が減圧された雰囲
    気であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    {100}集合組織珪素鋼板の製造方法。
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