JP7477748B2 - 無方向性電磁鋼板および熱延鋼板 - Google Patents

無方向性電磁鋼板および熱延鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板および熱延鋼板に関する。
近年、電気機器、特に、無方向性電磁鋼板がその鉄心材料として使用されるモータ、回転機、中小型変圧器、電装品等の分野においては、世界的な電力・エネルギー節減、CO削減等に代表される地球環境保全の動きの中で、高効率化、小型化の要請がますます強まりつつある。このような社会環境下において、当然、無方向性電磁鋼板に対しても、その性能向上は、喫緊の課題である。
無方向性電磁鋼板が積層されたモータの特性向上に関して無方向性電磁鋼板に求められる特性のひとつに層間抵抗がある。これまでは、無方向性電磁鋼板の表面に絶縁被膜を塗布することで層間抵抗を改善してきた。
例えば、特許文献1には、連続焼鈍ラインで焼鈍を行った後、鋼板表面に絶縁被膜を形成する無方向性電磁鋼板の製造方法において、前記絶縁被膜形成のための表面処理剤として、コロイド状シリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾルの1種または2種以上よりなる無機コロイド状物質100重量部(無機物質換算)に対して、水溶性またはエマルジョンタイプの樹脂の1種または2種以上からなる有機物を15~400重量部(有機物質換算)加えた水溶液を用いて、塗布量を乾燥後の重量で片面当たり0.2~1.5g/mとして鋼板に塗布した後、昇温速度10℃/秒以上、冷却速度50℃/秒以下、焼付け雰囲気の露点20℃以下で板温100~250℃の温度範囲で、かつ鋼板と焼付け雰囲気ガスとの相対速度が3m/秒以上10m/秒以下で焼付け処理することを特徴とする耐食性に優れた歪取り焼鈍が可能なクロム化合物を含まない絶縁被膜の形成方法が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、所定のシラン化合物と、シランカップリング剤と、シリカ粒子とを含む表面処理剤を用いて、電磁鋼板表面に形成してなる絶縁被膜を有する電磁鋼板が開示されている。
特開平10-46350号公報 特開2015-10242号公報
しかしながら、特許文献1、2の技術では、無方向性電磁鋼板の鉄損が著しく劣化することが課題であった。さらに、モータの稼働中にステータとロータが触れた場合、絶縁被膜が剥がれることで層間抵抗は下がり、モータ効率が劣化することも課題であった。すなわち、無方向性電磁鋼板の層間抵抗の向上と鉄損低減を両立することは困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低鉄損と層間抵抗向上を両立する無方向性電磁鋼板および熱延鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、無方向性電磁鋼板において、低鉄損と層間抵抗を両立させる手法について鋭意研究を重ねた。その結果、母材鋼板(地鉄)の表面側に位置する内部酸化層を発生させるタイミングとその厚みおよび内部酸化層による地鉄の被覆率を制御することで、低鉄損かつ層間抵抗に優れた材料を実現できることを究明した。すなわち、熱間圧延後の鋼板に対して表面スケールを付着させたまま焼鈍することで、表面スケールに含まれる酸素を活用して内部酸化層を鋼板全面に形成し、さらには、冷間圧延後に仕上げ焼鈍を行うことで低鉄損な鋼板を得ることを知見した。
上記知見に基づいてなされた本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
母材鋼板の化学組成が、質量%で、
C:0.0040%以下、
Si:1.9%以上4.0%以下、
Al:0.1%以上3.0%以下、
Mn:0.1%以上2.0%以下、
P:0.09%以下、
S:0.005%以下、
N:0.0040%以下、
B:0.0023%以上0.0060%以下、
を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
前記母材鋼板は、前記母材鋼板の表面に位置する内部酸化層を有し、
前記内部酸化層のSiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、
前記内部酸化層の平均厚みが、0.10~5.0μmであり、
前記母材鋼板の表面を覆う前記内部酸化層の被覆率が90%以上である、ことを特徴とする、無方向性電磁鋼板。
[2]
前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
Sn:0.01%以上0.50%以下、
Sb:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下
の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、[1]に記載の無方向性電磁鋼板。
[3]
前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
REMから選択される1種または2種以上:0.00050%以上0.040%以下、
Ca:0.00050%以上0.040%以下、
Mg:0.00050%以上0.040%以下
の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、[1]または[2]に記載の無方向性電磁鋼板。
[4]
母材鋼板の化学組成が、質量%で、
C:0.0040%以下、
Si:1.9%以上4.0%以下、
Al:0.1%以上3.0%以下、
Mn:0.1%以上2.0%以下、
P:0.09%以下、
S:0.005%以下、
N:0.0040%以下、
B:0.0023%以上0.0060%以下、
を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
前記母材鋼板は、前記母材鋼板の表面に位置する内部酸化層を有し、
前記内部酸化層のSiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、
前記内部酸化層の平均厚みが、0.10~20.0μmであり、
前記母材鋼板の表面を覆う前記内部酸化層の被覆率が90%以上である、ことを特徴とする、熱延鋼板。
[5]
前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
Sn:0.01%以上0.50%以下、
Sb:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下
の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、[4]に記載の熱延鋼板。
[6]
前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
REMから選択される1種または2種以上:0.00050%以上0.040%以下、
Ca:0.00050%以上0.040%以下、
Mg:0.00050%以上0.040%以下
の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、[4]または[5]に記載の熱延鋼板。
本発明によれば、低鉄損と層間抵抗向上を両立する無方向性電磁鋼板および熱延鋼板を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板の内部酸化層を示す圧延方向断面の光学顕微鏡写真である。 内部酸化層の平均厚みと層間の電流値の関係を示すグラフ図である。 内部酸化層の平均厚みと鉄損の関係を示すグラフ図である。 内部酸化層の平均厚みの測定方法を説明するための母材鋼板の板厚方向断面の模式図である。 内部酸化層の被覆率と層間の電流値との関係を示すグラフ図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を説明するための模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
<無方向性電磁鋼板>
[化学成分]
まず、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が有する母材鋼板の化学成分について説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」の表記は、「質量%」を表すものとする。
(C:0.0040%以下)
Cは、鉄損を増大させ、また、磁気時効の原因となる。母材鋼板のC含有量は、0.0040%以下である。C含有量は、好ましくは0.0030%以下であり、より好ましくは、0.0020%以下である。C含有量の下限は、0%を含むが、生産技術上C含有量を0%にすることは困難であり、実用上、0.0001%が実質的な下限である。
(Si:1.9%以上4.0%以下)
Siは、電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させることにより、鉄損を低減する効果を有する。また、Siは、降伏比を増大させることにより、鉄心への打ち抜き加工精度を向上させる効果も有する。母材鋼板のSi含有量が1.9%以上であれば、上記効果を得ることができる。Si含有量は、好ましくは2.0%以上である。一方、Si含有量が過剰であると、無方向性電磁鋼板の磁束密度が低下し、かつ、無方向性電磁鋼板の製造工程そのものにおいても、降伏比の増大による冷延等の作業性の低下、コスト高ともなるので、Si含有量は、4.0%以下である。Si含有量は、好ましくは3.9%以下であり、より好ましくは、3.8%以下である。
(Al:0.1%以上3.0%以下)
Alは、Siと同様に、無方向性電磁鋼板の電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させることにより鉄損を低減する作用を有するが、Siと比較して降伏強度の上昇が小さい。Al含有量が0.1%以上であれば、鉄損を低減し、かつ、降伏強度が上昇し、降伏比が増大して鉄心への打ち抜き加工性が向上する。母材鋼板のAl含有量は、好ましくは、0.2%以上である。一方、母材鋼板のAl含有量が過剰であると、飽和磁束密度が低下し、磁束密度の低下を招く。さらに、母材鋼板のAl含有量が過剰であると、降伏比が減少し、打ち抜き精度が低下する。よって、母材鋼板のAl含有量は、3.0%以下である。母材鋼板のAl含有量は、好ましくは2.5%以下である。
(Mn:0.1%以上2.0%以下)
Mnは、電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させるとともに、一次再結晶集合組織を改善して圧延方向磁気特性の向上に望ましい{110}<001>結晶方位を発達させる効果を有する。さらに、Mnは、結晶粒成長に有害なMnS等の微細硫化物の析出を抑制する。これらの目的のためには、Mn含有量は、0.1%以上である。Mn含有量は、好ましくは0.2%以上である。一方、Mn含有量が過剰であると、焼鈍時の結晶粒成長性そのものが低下し、鉄損が増大する。そのため、Mn含有量は、2.0%以下である。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下である。
(P:0.09%以下)
Pは、無方向性電磁鋼板の打ち抜き精度を上げる効果があるが、P含有量が増えると非常に脆くなる。Si≧2%の鋼板では、その傾向が顕著である。そのため、母材鋼板のP含有量は、0.09%以下である。母材鋼板のP含有量は、好ましくは0.05%以下である。
(S:0.005%以下)
Sは、MnS等の硫化物として微細析出し、仕上焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害する。そのため、母材鋼板のS含有量は、0.005%以下である。母材鋼板のS含有量は、好ましくは0.004%以下である。
(N:0.0040%以下)
Nは、熱延板焼鈍や仕上げ焼鈍時に生成するAlN等の窒化物の微細析出により、母材鋼板の表面側に生成する内部酸化層の被覆率を下げ、さらに仕上焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害する。そのため、母材鋼板のN含有量は、0.0040%以下である。母材鋼板のN含有量は、好ましくは0.0030%以下である。
(B:0.0060%以下)
Bは、BN等の窒化物の微細析出により、仕上焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害する。そのため、母材鋼板のB含有量は、0.0060%以下である。母材鋼板のB含有量は、好ましくは0.0040%以下である。
母材鋼板は、さらに、質量%で、Sn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有することが好ましい。以下に、各元素の含有量について説明する。なお、Sn、SbおよびCuは、母材鋼板において必須ではないことから、その含有量の下限値は0%である。
Sn、SbおよびCuは、母材鋼板の一次再結晶集合組織を改善し、当該集合組織を圧延方向磁気特性の向上に望ましい{110}<001>集合組織に、より一層発達させ、かつ、磁気特性に望ましくない{111}<112>集合組織等をより一層抑制する効果を有する。一方、Sn含有量、Sb含有量またはCu含有量が増えても上記効果は飽和し、むしろ、熱延鋼板の靱性を低下させることがある。よって、母材鋼板は、Sn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有することが好ましい。
母材鋼板は、さらに、質量%で、REMから選択される1種または2種以上:0.00050%以上0.040%以下、Ca:0.00050%以上0.040%以下、Mg:0.00050%以上0.040%以下の1種または2種以上を含有することが好ましい。REMから選択される1種または2種以上、Ca、およびMgの1種または2種以上の含有量が0.00050%以上であれば、粒成長がより一層促進される。REMから選択される1種または2種以上、Ca、およびMgの1種または2種以上の含有量は、好ましくはそれぞれ0.0010%以上であり、より好ましくは0.0050%以上である。一方、REMから選択される1種または2種以上、Ca、およびMgの1種または2種以上の含有量が、それぞれ0.0400%以下であれば、無方向性電磁鋼板の磁気特性の低下がより一層抑制される。REMから選択される1種または2種以上、Ca、およびMgの1種または2種以上の含有量は、好ましくは0.0300%以下であり、より好ましくは0.0200%以下である。なお、REM、CaおよびMgは、熱延鋼板において必須ではないことから、その含有量の下限値は0%である。なお、REMとは、Rare Earth Metalの略であり、Sc、Y及びランタノイド系列に属する元素をさす。
[内部酸化層]
続いて、図1を参照して、本実施形態に係る母材鋼板が有する内部酸化層を説明する。図1は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の内部酸化層を示す圧延方向断面の光学顕微鏡写真である。
(酸化物粒子)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、母材鋼板の表面に位置する内部酸化層を有する。本発明に係る内部酸化層とは、Si、AlまたはMnなどが粒子状の酸化物を形成し、それが母材鋼板内部の表面側に分散した層を言う。内部酸化層は、例えば、図1に示すように、母材鋼板の表面側に形成されている。Si、AlまたはMnなどの粒子状の酸化物は、少なくとも、SiOおよびAlであり、これらに加えてMnO等を含んでもよい。内部酸化層は、鋼板の断面を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察することにより、その存在を確認することができる。断面写真において、板厚方向に引いた直線上の酸化物粒子の割合が60%以上となる領域を内部酸化層とする。簡易的な内部酸化層の観察手段として、鏡面研磨した鋼板断面を光学顕微鏡で1000倍程度の倍率で観察することで、内部酸化層を確認することができる。また、SEM観察の場合は、二次電子像または反射電子像のいずれでも内部酸化層の存在を確認することができるが、反射電子像の方が二次電子像よりも明瞭に内部酸化層を観察することができる。
(含有成分)
内部酸化層は、SiOを100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Alを200mg/m以上500mg/m以下の濃度で含有する。SiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であれば、層間抵抗が向上し、かつ製品板の外観が改善される効果が得られる。SiO濃度は、好ましくは110mg/m以上240mg/m以下であり、より好ましくは、120mg/m以上230mg/m以下である。Al濃度は、好ましくは210mg/m以上490mg/m以下であり、より好ましくは、220mg/m以上480mg/m以下である。
内部酸化層のSiO濃度およびAl濃度は、以下の方法で測定することができる。すなわち、臭素メタノールにより無方向性電磁鋼板から内部酸化層を剥離し、濾紙にて抽出する。その後、抽出された内部酸化層をICP(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により分析する。
(平均厚み)
内部酸化層の平均厚みは、0.10~5.0μmである。内部酸化層の厚みが薄いと層間抵抗値を上げる効果が得られない。図2に内部酸化層の平均厚みと層間の電流値の関係を示す。層間の電流値が高いと層間抵抗値は低く、層間の電流値が低いと層間抵抗値は高い。層間の電流値は、JIS C 2550-4:2019に準拠して表面の抵抗を測定した。図2に示すように、内部酸化層の平均厚みが0.10μm以上であれば、層間の電流値は小さい。すなわち、内部酸化層の平均厚みが0.10μm以上であれば、高い層間抵抗値が得られる。よって、内部酸化層の平均厚みの下限は、好ましくは0.10μmである。
一方、内部酸化層の厚みが厚すぎるとモータコアにした際の占積率が著しく下がり、鉄損が増大する。図3に内部酸化層の平均厚みと鉄損の関係を示す。鉄損は、単板試験機(Single Sheet Tester:SST)により、鋼板を50Hzで磁束密度1.5Tに磁化したときの鉄損W15/50を測定した。
図3に示すように、5.0μm以下では、鉄損W15/50が低い値に維持される。内部酸化層の平均厚みが5.0μm以下であれば、絶縁コーティングは内部酸化の影響を受けず均一に塗れるが、5.0μm超では均一に塗れなくなるため、絶縁コーティングの厚い箇所が現れ、占積率が急激に劣化すると考えられる。内部酸化層の平均厚みの上限は、好ましくは4.5μmである。
ここで、図4を参照して、内部酸化層の平均厚みの測定方法を説明する。図4は、内部酸化層の平均厚みの測定方法を説明するための母材鋼板の板厚方向断面の模式図である。無方向性電磁鋼板の板厚方向断面をナイタールを用いて研磨し、SEMにより内部酸化層の表面から100μm以上の範囲の断面写真を取得する。例えば、1000倍以上の倍率の研磨後の断面写真を取得する。取得された断面写真において、鋼板の板厚方向に10本以上の直線を引き、それぞれの直線における内部酸化層部分と重なる部分の長さl、l、・・・、lを測定し、それぞれの測定値l、l、・・・、lから平均値laveを算出する。10視野について平均値laveを算出し、laveの平均値を内部酸化層の平均厚みとする。
(被覆率)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、母材鋼板の表面に対する内部酸化層の被覆率が90%以上である。被覆率は、光学顕微鏡またはSEMで断面観察し、母材鋼板の面積に対する内部酸化層で当該母材鋼板が覆われている面積の比率を被覆率とした。具体的には、断面を1000倍の倍率で10視野取得した顕微鏡像を用いて、各視野の被覆率から平均値を算出し、算出した平均値を被覆率とした。最表面箇所の内部酸化層の有部と無部それぞれについて、断面観察写真の横方向(板厚方向に垂直な方向)の長さを測ることで、被覆率を計算した。
内部酸化層は、母材鋼板に比べて電気抵抗値が高いため、被覆率が高いほど層間抵抗値が増大する。すなわち、内部酸化層の被覆率が高いほど電流値が減少する。ここで、図5に内部酸化層の被覆率と層間の電流値との関係を示す。層間電流値は、JIS C 2550-4:2019に準拠して表面の抵抗を測定した値である。
図5に示すように、被覆率が90%未満であると、内部酸化層で被覆されていない箇所で電流値が流れやすく、電流値が大きくなる。一方、被覆率が90%以上であると、電流値が急激に減少する。被覆率が90%以上であると、酸化物粒子が存在しない箇所(内部酸化層で被覆されていない箇所)の面積が十分に小さくなるため、電流が流れにくくなり、電流値が急激に低くなっていると考えられる。
以上のように、本発明によれば、層間抵抗の向上と低鉄損を両立する無方向性電磁鋼板および熱延鋼板を提供することが可能となる。本発明は、電気機器鉄心材料、特に、回転機、中小型変圧器、電装品等の鉄心材料として望ましい、層間抵抗に優れかつ低鉄損である無方向性電磁鋼板を提供できるので、無方向性電磁鋼板がその鉄心材料として使用されるこれら電気機器の分野における喫緊の高効率化、小型化要請に十分に応えることができ、その工業的価値は極めて高いものである。
なお、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、絶縁性を付与するため、母材鋼板上に絶縁被膜を有していてもよい。絶縁被膜の成分は、鋼板に絶縁性が付与されれば特段制限されず、公知の成分であってよい。
本発明に係る無方向性電磁鋼板は、例えば、後述する製造方法で製造され、無方向性電磁鋼板が備える内部酸化層は、熱延板焼鈍工程を経て熱延鋼板に形成された内部酸化層が残存したものである。そのため、本発明に係る熱延鋼板は、上記の化学成分を有し、熱延板焼鈍工程後に実施される冷間圧延工程前の熱延鋼板が備える内部酸化層は、SiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、内部酸化層の平均厚みが、0.10~20.0μmであり、母材鋼板の表面に対する前記内部酸化層の被覆率が90%以上である。熱延板焼鈍工程後の熱延鋼板が備える内部酸化層の平均厚みが20μm以下であれば、当該熱延鋼板を用いて製造された無方向性電磁鋼板の内部酸化層の平均厚みは5μm以下となる。
また、最終製品である無方向性電磁鋼板において磁気特性に悪影響を及ぼす{111}方位の結晶粒を低減させるため、熱延鋼板の平均結晶粒径は、20μm以上であることが好ましい。熱延鋼板の平均結晶粒径が20μm以上であれば、最終製品である無方向性電磁鋼板の磁気特性、特に磁束密度が向上し、かつ、無方向性電磁鋼板の製造工程であり、熱間圧延工程より後に実施される冷間圧延工程での冷間圧延性が向上する。熱延鋼板の平均結晶粒径は、より好ましくは、30μm以上である。なお、平均結晶粒径は、JIS G 0551:2013に記載の方法で測定する。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法は、上記化学組成を有するスラブを熱間圧延する熱間圧延工程、熱間圧延工程後の鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、保熱工程、酸洗工程、冷間圧延工程、仕上げ焼鈍工程、および絶縁被膜形成工程を有する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造するには、冷間圧延工程前の鋼板に上記の内部酸化層を残存させておくことが極めて重要である。冷間圧延工程前の鋼板に内部酸化層を残存させるため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、熱間圧延工程後に、熱延板焼鈍工程、または保熱工程を実施する。また、酸洗工程は、内部酸化層の平均厚みの調整のため、必要に応じて実施される工程である。また、絶縁被膜形成工程についても必要に応じて実施されてよい工程である。
一般の無方向性電磁鋼板の製造方法において熱延板焼鈍工程を実施する場合、内部酸化層による磁気特性の劣化を防ぐため、熱間圧延工程後であって熱延板焼鈍工程前に、熱間圧延工程で鋼板表面に形成する外部酸化層を除去する酸洗、または、熱延板焼鈍工程後の酸洗工程において、酸洗促進剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム等)を添加して酸洗液を用いて、内部酸化層を除去している。一方、本発明は、従来、不要としていた内部酸化層を、熱延鋼板に、SiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、内部酸化層の平均厚みが、0.10~20.0μmであり、母材鋼板の表面に対する前記内部酸化層の被覆率が90%以上となるように存在させるものであり、従来の技術思想とは全く異なるものである。
図6を参照して、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の概要を説明する。図6は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を説明するための模式図である。図6(A)に示すように、熱間圧延工程後の鋼板は通常、外部酸化層と地鉄(母材鋼板)で構成される。熱間圧延工程後の鋼板に外部酸化層が存在する状態で、700℃以上1000℃以下での焼鈍(熱延板焼鈍工程)または500℃以上850℃以下での保熱(保熱工程)を実施すると、外部酸化層の酸素の一部が地鉄側に拡散し、図6(B)に示すように母材鋼板の表面側に内部酸化層を形成する。その後、内部酸化層を残したまま外部酸化層のみ除去するように酸洗工程を実施する(図6(C))。酸洗工程後の鋼板を圧延率が50%以上90%以下となるように冷間圧延すると、内部酸化層および母材鋼板は延ばされる(図6(D))。冷間圧延工程後、仕上げ焼鈍を行うことで、所定の内部酸化層を有する無方向性電磁鋼板が製造される。図6(A)に示すように、熱間圧延工程後の鋼板表面に接して配されている酸化物層は外部酸化層と呼び、本発明に係る内部酸化層と区別する。本実施形態の内部酸化層は、熱延板焼鈍を施すことにより母材鋼板の表面側に形成される。以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を詳細に説明する。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、上記化学成分を含有するスラブを熱間圧延して熱延鋼板とする。スラブの加熱温度は、1080℃以上1200℃以下である。スラブの加熱温度が1200℃以下であれば、硫化物等の固溶または微細析出が抑制され、鉄損の増大が抑制される。スラブの加熱温度の上限は、好ましくは、1180℃である。一方、スラブの加熱温度が1080℃以上であれば、高い熱間加工性が得られる。スラブの加熱温度の下限は、好ましくは、1100℃である。
仕上げ温度は、850℃以上1000℃以下である。仕上げ温度が850℃未満であると、熱間加工性が低下し、板幅方向の板厚精度が低下する。仕上げ温度の下限は、好ましくは、860℃である。一方、仕上げ温度が1000℃超であると、優れた磁気特性を有する{100}集合組織が減少する。仕上げ温度の上限は、好ましくは、990℃である。
熱間圧延工程により、母材鋼板表面に、マグネタイトを主とし、ウスタイト、ヘマタイトを含有する外部酸化層が形成する。上記のとおり、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、熱間圧延工程に引き続く外部酸化層の除去は行わずに熱延板焼鈍工程または保熱工程を実施する。
(熱延板焼鈍工程)
熱延板焼鈍工程では、熱間圧延工程後の熱延鋼板に対して焼鈍を行う。焼鈍温度は、700℃以上1000℃以下であることが好ましい。焼鈍温度が700℃以上であれば、外部酸化層を酸素源として、酸素を母材鋼板に拡散させることが可能となる。また、焼鈍温度が700℃未満であると、十分な再結晶が起こらず、再結晶が不十分な鋼板を用いて電磁鋼板を製造した場合、{111}方位の結晶粒が発達して磁気特性が低下することがある。焼鈍温度の下限は、より好ましくは750℃である。一方、焼鈍温度が1000℃以下であれば、結晶粒径の粗大化を抑制することが可能となる。内部酸化層の形成をより一層促進させるためには、焼鈍温度の上限は、より好ましくは900℃であり、より一層好ましくは800℃である。
焼鈍時間は、1秒以上100秒以下であることが好ましい。より安定して内部酸化層を形成するために、焼鈍時間の下限は、より好ましくは10秒である。一方、焼鈍時間が100秒超であると、靭性が低下することがある。焼鈍時間の上限は、より好ましくは95秒である。
また、熱延板焼鈍工程における焼鈍条件は、さらに好ましくは、下記式(1)で示されるPAP(K・hour)が17000以上23000以下である。
AP=(T+273)×(20+log(t)) ・・・式(1)
上記式(1)中、Tは、焼鈍温度(℃)であり、tは、焼鈍時間(hour)である。また、上記式(1)は、ラーソン・ミラー・パラメータに基づく式である。
焼鈍雰囲気は、特段制限されず、一般の熱延板焼鈍が実施される雰囲気であればよい。焼鈍雰囲気は、例えば、不活性雰囲気または酸化性雰囲気であればよく、具体的には、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気、大気雰囲気、酸素雰囲気等である。
(保熱工程)
保熱工程は、熱間圧延工程後の鋼板を所定の温度に保持することで、結晶粒径の粗大化と合わせて、熱間圧延工程により母材鋼板の表面に生成する外部酸化層(いわゆるスケール)に含まれる酸素が鋼板中に拡散して内部酸化層を形成する工程である。保熱工程では、具体的には、熱間圧延工程後の鋼板を巻き取って形成したコイルに、当該コイルの熱を維持する保熱カバーをかぶせて、コイルを保熱する。本工程は、結晶粒径の粗大化と内部酸化層の形成とを一つの工程でできるので、好ましい工程である。
保熱温度は、500℃以上850℃以下であることが好ましい。保熱温度が850℃超であると、内部酸化層の厚みが過剰に増大し、後工程の酸洗工程で内部酸化層の厚さを減じるための処理工数が増加する可能性がある。保熱温度の上限は、より好ましくは800℃である。一方、保熱温度が500℃未満であると、結晶粒の粗大化または内部酸化層の形成が進行する速度が遅く、保熱時間が長時間となることがある。保熱温度の下限は、より好ましくは650℃であり、より一層好ましくは700℃である。
母材鋼板がSn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有する場合、これらの元素は、内部酸化層の発達を抑制するので、保熱温度を高くすることができる。そのため、より一層結晶粒の粗大化を促進させ、さらに、より一層適切な厚みの内部酸化層を形成することが可能となる。母材鋼板がSn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有する場合、保熱工程の温度を800℃以上とすることにより、適切な厚みの内部酸化層の形成と、磁束密度の改善をより一層高度に両立させることが可能となる。
もちろん、母材鋼板がSn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有する場合でも、熱間圧延工程における仕上げ温度または保熱温度を高くすると、磁気特性は向上するが、内部酸化層も厚くなりすぎることがある。その場合は、後工程の酸洗工程で酸洗量を制御して、適切な厚さに調整することが可能である。
なお、母材鋼板がSn:0.01%以上0.50%以下、Sb:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有することにより、内部酸化層の発達が抑制されるメカニズムについては、必ずしも明らかではないが、これらの元素が、外部酸化層と母材鋼板との界面に集積し、外部酸化層に含まれる酸素の鋼板内部への拡散を阻害するためと考えられる。
保熱時間は、再結晶の観点から1分以上であることが好ましい。保熱時間の下限は、より好ましくは、15分である。一方、保熱時間が2時間超であると、過度に粒成長し、鋼板表面付近の結晶粒界が脆化し、その後の酸洗工程および冷間圧延工程で、鋼板表面端部の割れ、破断等が生じ易くなる。よって、保熱時間は、2時間以下であることが好ましい。保熱時間は、より好ましくは、1.5時間以下である。
また、保熱条件は、さらに好ましくは、下記式(2)で示されるPSA(K・hour)が18000以上22000以下である。
SA=(T+273)×(20+log(t)) ・・・式(2)
上記式(2)中、Tは、保熱温度(℃)であり、tは、保熱時間(hour)である。また、上記式(2)は、ラーソン・ミラー・パラメータに基づく式である。
保熱雰囲気は、特段制限されず、一般の熱延板焼鈍が実施される雰囲気で行われてよい。保熱雰囲気は、例えば、不活性雰囲気または酸化性雰囲気であればよく、具体的には、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気、大気雰囲気、酸素雰囲気等である。
保熱工程により、内部酸化層をより均一な厚みとなるように厚くすることが可能となる。なお、保熱工程は、熱延板焼鈍工程後に実施してもよい。
(酸洗工程)
次に、本発明電磁鋼板の製造方法において重要な役割を果たす、内部酸化層の平均厚さを制御するための酸洗工程について説明する。
酸洗工程では、外部酸化層を残したまま熱延板焼鈍を行い、意図的に、内部酸化層を形成した後の鋼板に対して、さらに、必要に応じて、酸洗を行って内部酸化層の平均厚みが0.1~20.0μmとなるように、外部酸化層と過剰な内部酸化層を除去する。これにより、最終製品である無方向性電磁鋼板の磁気特性と疲労特性を両立させることが可能となる。酸洗量(酸洗後の鋼板の重量減少)は、鋼板表面の外部酸化層及び内部酸化層の状態と、酸洗に使用する酸種及び濃度や温度により変化する。
酸洗工程では、熱延板焼鈍工程後または保熱工程後の鋼板を酸洗液に浸漬する。酸洗液としては、公知の酸洗液を用いることができるが、内部酸化層の平均厚みを制御するために、酸洗量を減少させる酸洗抑制剤または酸洗量を増加させる酸洗促進剤が公知の酸洗液に添加して用いられる。公知の酸洗液としては、例えば、塩酸、硫酸、フッ酸等が用いられる。以下に、酸洗抑制剤および酸洗促進剤について説明する。
酸洗抑制剤の主成分は、例えば、ポリアミンである。ポリアミンは、鉄原子に付着しやすい性質を持つ。ポリアミンが内部酸化層に存在する鉄原子に付着することで、酸と接する内部酸化層の面積が減り、酸洗速度を抑制することができる。酸洗速度が抑制される結果、酸洗抑制剤を含有しない酸洗液を用いた酸洗の酸洗時間と同一の時間酸洗を行った場合、酸洗抑制剤を含有しない酸洗液を用いた場合と比較して酸洗量が減少する。酸洗量減少の効果を高めるため、たとえば、ポリアミンに蟻酸等を添加してもよい。
酸洗促進剤の主成分は、例えば、チオ硫酸ナトリウム等である。チオ硫酸ナトリウム酸洗促進剤は、鉄原子にとってのキレート剤、すなわち、鉄イオンに配位結合を形成し易い性質を持つ。酸洗液に含まれる酸は、鉄を溶解させるが、酸洗液中の鉄イオン濃度が高まると鉄の溶解速度が小さくなる。特に、鋼板と接している液は局所的に鉄の溶解速度が低下する。しかし、酸洗促進剤が添加されていると、酸洗液に溶解している鉄がキレート化して酸洗液に含まれる鉄イオン濃度が低下するため、鉄の溶解速度が小さくならず酸洗が進行する。酸洗速度が維持される結果、酸洗促進剤を含有しない酸洗液を用いた酸洗の酸洗時間と同一の時間酸洗を行った場合、酸洗促進剤を含有しない酸洗液を用いた場合と比較して酸洗量が増加する。本工程で、酸洗量を増加させるために使用される酸洗液としては、例えば、7.5質量%塩酸+0.07質量%チオ硫酸ナトリウムの酸洗液が例示される。
酸洗工程における、酸洗液の酸濃度、酸洗抑制剤または酸洗調整剤、酸洗液の温度および酸洗時間等は、内部酸化層の平均厚みが0.1~20.0μmに調整されれば特段制限されない。
なお、上記保熱工程または酸洗工程を行った場合、当該工程を経て得られた鋼板が本発明に係る熱延鋼板に対応する。
(冷間圧延工程)
次に、冷間圧延工程について説明する。冷間圧延工程では、上記熱延鋼板を冷間圧延する。冷間圧延率は、50~90%であることが好ましい。上記冷間圧延率であれば、最終製品である無方向性電磁鋼板の磁束密度をより一層高めることが可能となる。また、冷間圧延温度は、250℃以下であることが好ましい。なお、冷間圧延率は、熱延鋼板の板厚と最終製品の板厚との関係で決定されるものであり、最終製品板厚から逆算して決定することが望ましい。冷間圧延率および冷間圧延温度等の条件は、冷間圧延性等を勘案して決定することが望ましい。
(仕上げ焼鈍工程)
次に、冷間圧延工程後の仕上げ焼鈍工程について説明する。仕上げ焼鈍工程は、冷延後の鋼板の結晶を再結晶させ、かつ、結晶粒径を調整して、磁気特性、特に、良好な磁束密度および鉄損特性を得るための工程である。仕上げ焼鈍工程は、焼鈍雰囲気が重要である。焼鈍雰囲気中の酸素は、鋼板を酸化し、最終製品である無方向性電磁鋼板の磁気特性が低下するので、焼鈍雰囲気中の酸素濃度は、数十ppm以下とすることが好ましい。
雰囲気は、窒素雰囲気またはアルゴン雰囲気が好ましく、必要に応じて、鋼板の酸化を防ぐために、水素を添加してもよい。水素濃度を過度に上昇させると、内部酸化層が還元され、層間抵抗上昇に寄与する微細なSiO相が還元されてしまう。そのため、焼鈍雰囲気に水素が含有する場合、水素濃度は5%以上、30%以下であることが好ましい。
仕上げ焼鈍時の鋼板温度は、700℃以上1200℃以下であることが好ましい。上記の鋼板温度範囲であれば、鋼板の再結晶が起きやすい。鋼板温度が低すぎると、再結晶が不十分である。一方、鋼板温度の上限は、1150℃であることがより好ましい。鋼板温度が1150℃以下であれば、無方向性電磁鋼板の打ち抜き精度が優れたものとなる。
(絶縁被膜形成工程)
絶縁被膜形成工程では、鋼板へ絶縁性付与を目的として、例えば、リン酸アルミニウムまたはコロイダルシリカなどを主成分とした絶縁被膜が鋼板の表面に塗布される。その後、絶縁被膜の焼付を目的として、焼鈍が施される。なお、鋼板に対して絶縁性が付与されるのであれば、絶縁被膜の成分は特に限定されない。また、本工程における焼鈍は、公知の方法で実施することができる。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を説明した。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法によれば、熱間圧延工程後の母材鋼板の表面に形成した外部酸化層を残したまま熱延板焼鈍を行うことで、外部酸化層の酸素が母材鋼板に拡散し、母材鋼板の外部酸化層側に内部酸化層が形成する。この内部酸化層が、SiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、平均厚みが、0.10~20.0μmであり、母材鋼板の表面に対する内部酸化層の被覆率が90%以上であるように制御されることで、その後の工程で本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が製造される。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、低鉄損と層間抵抗向上を両立する。特に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、内部酸化層を有するため、層間抵抗値が高い。そのため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が絶縁被膜を有しており、その絶縁被膜が剥離した場合であっても、内部酸化層により高い層間抵抗が維持される。
なお、鉄損の増大を抑制可能な程度に結晶粒径を制御するために、熱間圧延工程後の鋼板に対して高温仕上げ処理を実施してもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学成分を有する鋼を鋳造し、表2に記載の条件で熱延し、板厚2.0mmの熱延板を作製した。その後、表3に記載の条件での熱延板焼鈍または表4に示す条件での保熱工程を行った。熱延板焼鈍雰囲気および保熱雰囲気は、100%窒素雰囲気とした。次いで、7.5質量%塩酸を酸洗液として使用し、熱延板焼鈍後の鋼板および保熱後の鋼板を30秒浸けて酸洗した。また、製法No.F29、F30については、酸洗促進剤(チオ硫酸ナトリウム)を添加して酸洗した。その後、表5に示す条件で冷間圧延、および、30秒間仕上焼鈍を施した。なお、表1では、Sn、SbおよびCuをA群元素とし、REM、CaおよびMgをB群元素として記載した。
Figure 0007477748000001
Figure 0007477748000002
Figure 0007477748000003
Figure 0007477748000004
Figure 0007477748000005
仕上げ焼鈍を施した鋼板のそれぞれについて、ICP発光分析装置を用いて化学成分を測定した。
また、仕上げ焼鈍を施した鋼板のそれぞれについて、層間の電流値および鉄損を測定した。層間の電流値は、JIS C 2550-4:2019に準拠して表面の抵抗を測定した。また、鉄損については、仕上げ焼鈍を施した各鋼板から55mm角の試料を採取し、SSTにより鉄損W15/50を測定した。
鉄損W15/50については、2.60W/kg未満である例を評価結果が良好(A)であると判定し、2.60W/kg以上である例を評価結果が不良(B)であると判定した。
層間抵抗については、層間の電流値が130mA未満である例を評価結果が良好(A)であると判定し、130mA超である例を評価結果が不良(B)であると判定した。
また、酸洗後の鋼板および仕上げ焼鈍を施した鋼板のそれぞれについて、板厚方向に切断した断面をアルミナを用いて研磨し、SEMを用いて1000倍の倍率で内部酸化層の表面から100μm以上の範囲の断面写真を取得した。取得された断面写真において、鋼板の板厚方向に10本以上の直線を引き、それぞれの直線における内部酸化層部分と重なる部分の長さl、l、・・・、lを測定し、それぞれの測定値l、l、・・・、lから平均値laveを算出する。10視野について平均値laveを算出し、laveの平均値を内部酸化層の平均厚みとした。
また、酸洗後の鋼板および仕上げ焼鈍を施した鋼板のそれぞれについて、内部酸化層のSiO濃度およびAl濃度を、以下の方法で測定した。すなわち、臭素メタノールにより無方向性電磁鋼板から内部酸化層を剥離し、濾紙にて抽出した。その後、抽出された内部酸化層をICPにより分析した。
また、酸洗後の鋼板および仕上げ焼鈍を施した鋼板のそれぞれについて、母材鋼板の表面に対する内部酸化層の被覆率を以下の方法で測定した。すなわち、SEMで断面観察し、酸化層で覆われている面積の比率を求めた。
鋼板の製造条件と評価結果を表6に示す。
Figure 0007477748000006
表6に示すように、本発明に係る無方向性電磁鋼板は、低鉄損と層間抵抗向上を両立するものであり、このような無方向性電磁鋼板は、本発明に係る熱延鋼板により製造可能であった。

Claims (6)

  1. 母材鋼板の化学組成が、質量%で、
    C:0.0040%以下、
    Si:1.9%以上4.0%以下、
    Al:0.1%以上3.0%以下、
    Mn:0.1%以上2.0%以下、
    P:0.09%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.0040%以下、
    B:0.0023%以上0.0060%以下
    を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
    前記母材鋼板は、前記母材鋼板の表面に位置する内部酸化層を有し、
    前記内部酸化層のSiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、
    前記内部酸化層の平均厚みが、0.10~5.0μmであり、
    前記母材鋼板の表面を覆う前記内部酸化層の被覆率が90%以上である、ことを特徴とする、無方向性電磁鋼板。
  2. 前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
    Sn:0.01%以上0.50%以下、
    Cu:0.01%以上0.50%以下、
    Sb:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
    REMから選択される1種または2種以上:0.00050%以上0.040%以下、
    Ca:0.00050%以上0.040%以下、
    Mg:0.00050%以上0.040%以下
    の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 母材鋼板の化学組成が、質量%で、
    C:0.0040%以下、
    Si:1.9%以上4.0%以下、
    Al:0.1%以上3.0%以下、
    Mn:0.1%以上2.0%以下、
    P:0.09%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.0040%以下、
    B:0.0023%以上0.0060%以下、
    を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
    前記母材鋼板は、前記母材鋼板の表面に位置する内部酸化層を有し、
    前記内部酸化層のSiO濃度が100mg/m以上250mg/m以下、かつ、Al濃度が200mg/m以上500mg/m以下であり、
    前記内部酸化層の平均厚みが、0.10~20.0μmであり、
    前記母材鋼板の表面を覆う前記内部酸化層の被覆率が90%以上である、ことを特徴とする、熱延鋼板。
  5. 前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
    Sn:0.01%以上0.50%以下、
    Sb:0.01%以上0.50%以下、
    Cu:0.01%以上0.50%以下
    の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、請求項4に記載の熱延鋼板。
  6. 前記母材鋼板が、さらに、質量%で、
    REMから選択される1種または2種以上:0.00050%以上0.040%以下、
    Ca:0.00050%以上0.040%以下、
    Mg:0.00050%以上0.040%以下
    の1種または2種以上を含有する、ことを特徴とする、請求項4または5に記載の熱延鋼板。
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