JP3456168B2 - 油圧制御装置 - Google Patents

油圧制御装置

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JP3456168B2
JP3456168B2 JP17955399A JP17955399A JP3456168B2 JP 3456168 B2 JP3456168 B2 JP 3456168B2 JP 17955399 A JP17955399 A JP 17955399A JP 17955399 A JP17955399 A JP 17955399A JP 3456168 B2 JP3456168 B2 JP 3456168B2
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  • Cooling, Air Intake And Gas Exhaust, And Fuel Tank Arrangements In Propulsion Units (AREA)
  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)
  • Control Of Transmission Device (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧制御装置に関
し、詳しくは、内燃機関からの動力を駆動軸に伝達する
係合手段を作動させるのに必要な油圧を発生可能な電動
式油圧発生手段を有し、所定の条件が成立したときに必
要な油圧の発生の停止または油圧の低下となるよう電動
式油圧発生手段を制御すると共に、油圧の発生の条件が
成立したときに必要な油圧が発生するよう電動式油圧発
生手段を制御する油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の油圧制御装置としては、
内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車用の油圧制
御装置であって、トランスミッションの変速段の変更お
よび動力の断続を行なう油圧駆動のクラッチを駆動する
ための油圧を与えるポンプとして、内燃機関が運転され
ることにより駆動する第1オイルポンプと二次電池から
電力の供給を受けて駆動する第2オイルポンプとを備え
るものが提案されている(例えば、特開平第6−383
03号公報など)。この油圧制御装置では、トランスミ
ッションの変速段の変更が必要ないときには、車両全体
のエネルギー効率を高める必要から電動オイルポンプの
運転を停止している。なお、この油圧制御装置では、内
燃機関が運転されているときには第1オイルポンプによ
り油圧を確保し、内燃機関が運転されていないときには
第2オイルポンプにより油圧を確保する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうし
た油圧制御装置では、駆動軸を急加速するときに一時的
にエンジンが吹き上がる場合を生じるといった問題があ
った。このエンジンの一時的な吹き上がりは、電動オイ
ルポンプの運転が停止されているときに駆動軸が急加速
されると、十分な油圧が供給されていないためにトラン
スミッションのクラッチやブレーキなどの係合が不十分
となることにより生じる。こうした問題に対し、電動オ
イルポンプの運転の停止を禁止し、動力伝達装置の運転
中は電動オイルポンプを常に運転するものも考えられる
が、電動オイルポンプの劣化を早めると共に装置全体の
エネルギー効率を低下させてしまう。
【0004】本発明の油圧制御装置は、内燃機関の吹き
上げを伴わずに駆動軸を加速することを目的の一つとす
る。また、本発明の油圧制御装置は、車両全体のエネル
ギー効率を向上させることを目的の一つとする。更に、
本発明の油圧制御装置は、機器の劣化を防止することを
目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の油圧制御装置は、上述の目的の少なくとも一部を
達成するために以下の手段を採った。
【0006】本発明の第1の油圧制御装置は、内燃機関
からの動力を駆動軸に伝達する係合手段を作動させる油
圧を確保するための電動式油圧発生手段を有し、該電動
式油圧発生手段は該油圧の駆動源として回転数を可変な
駆動モータを備える油圧制御装置であって、停止されて
いた電動式油圧発生手段の駆動開始時における前記駆動
モータの目標回転数を通常駆動される回転数より高い回
転数に設定する目標回転数設定手段と、 該設定された目
標回転数で前記駆動モータが駆動されるよう該駆動モー
タを駆動制御する駆動モータ制御手段とを備えることを
要旨とする。
【0007】この本発明の第1の油圧制御装置では、
止されていた電動式油圧発生手段の起動時に、駆動モー
タの目標回転数を通常駆動される回転数より高い回転数
に設定することにより迅速に油圧を発生させることがで
きる。この結果、油圧の不足により生じる内燃機関や電
動機が吹き上がるといった不都合を防止することができ
る。また、電動式油圧発生手段により常に必要な油圧を
発生させているタイプの油圧制御装置に比してエネルギ
効率を向上させることができる。なお、「係合手段」に
は、トルクコンバーターと有段変速機とから構成される
ものが含まれるほか、無段変速機により構成されるもの
も含まれる。
【0008】こうした本発明の第1の油圧制御装置にお
いて、前記駆動軸の状態を判定する状態判定手段を備
え、前記目標回転数設定手段は、前記状態判定手段によ
り判定された駆動軸の状態に基づいて前記電動式油圧発
生手段の駆動開始時における前記駆動モータの目標回転
数を設定する手段であるものとすることもできる。こう
すれば、電動式油圧発生手段の駆動開始時に駆動軸の状
態に基づいて電動式油圧発生手段により油圧を発生させ
ることができる。
【0009】この駆動軸の状態に基づいて目標回転数を
設定する態様の本発明の第1の油圧制御装置において、
前記状態判定手段は操作者による前記駆動軸の急加速の
要求の発生が予測される状態であるかを判定する手段で
あり、前記目標回転数設定手段は、前記状態判定手段に
より前記駆動軸の状態が前記急加速の要求の発生が予測
される状態であると判定されなかったときには前記駆動
モータの目標回転数を第1の回転数に設定し、前記状態
判定手段により前記駆動軸の状態が前記急加速の要求の
発生が予測される状態であると判定されたときには前記
駆動モータの目標回転数を前記第1の回転数より大きい
第2の回転数に設定する手段であるものとすることもで
きる。こうすれば、駆動軸の急加速時には駆動モータの
目標回転数が大きな第2の回転数に設定されているか
ら、素早く油圧を発生させて係合手段を有効に機能させ
ることができ、油圧の不足により生じる不都合を防止す
ることができる。
【0010】この駆動軸の急加速の要求の発生が予測さ
れる状態を判定する状態判定手段を備える態様の本発明
の第1の油圧制御装置において、前記状態判定手段は、
少なくとも前記係合手段を介して駆動軸に動力を伝達可
能な状態のときに前記急加速の要求の発生が予測される
状態であると判定する手段であるものとすることもでき
る。
【0011】また、駆動軸の急加速の要求の発生が予測
される状態を判定する状態判定手段を備える態様の本発
明の第1の油圧制御装置において、前記駆動軸を回転の
停止した状態で固定可能な駆動軸固定手段を備え、前記
状態判定手段は、前記駆動軸固定手段により前記駆動軸
が固定されていないときには前記急加速の要求の発生が
予測される状態であると判定する手段であるものとする
こともできる。
【0012】更に、駆動軸の急加速の要求の発生が予測
される状態を判定する状態判定手段を備える態様の本発
明の第1の油圧制御装置において、前記駆動軸に制動力
を作用可能な駆動軸制動手段を備え、前記状態判定手段
は、前記駆動軸制動手段により前記駆動軸に作用させて
いる制動力に基づいて前記急加速の要求の発生が予測さ
れる状態であるか否かを判定する手段であるものとする
こともできる。こうすれば、駆動軸に作用している制動
力に基づいて油圧の制御を行なうことができる。この態
様の本発明の第1の油圧制御装置において、前記状態判
定手段は、前記駆動軸制動手段により前記駆動軸に作用
させている制動力が所定力以下となったときに前記急加
速の要求の発生が予測される状態であると判定する手段
であるものとしたり、前記駆動軸制動手段により前記駆
動軸に作用させている制動力の負の方向の変化率が所定
値以上のときに前記急加速の要求の発生が予測される状
態であると判定する手段であるものとすることもでき
る。
【0013】駆動軸の状態に基づいて目標回転数を設定
する態様の本発明の第1の油圧制御装置において、前記
油圧に用いる油の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記目標回転数設定手段は、前記温度検出手段により検
出された前記油の温度にも基づいて前記目標回転数を設
定する手段であるものとすることもできる。こうすれ
ば、油の温度に基づく物性に対応することができ、より
素早く油圧を発生させることができる。この態様の本発
明の第1の油圧制御装置において、前記目標回転数設定
手段は、前記油の温度が低いほど大きな回転数を前記目
標回転数として設定する手段であるものとすることもで
きる。通常、油は温度が低くなるにつれて粘性が高くな
るからである。
【0014】本発明の第1の油圧制御装置において、前
記電動式油圧発生手段は前記係合手段に至る油圧ライン
のライン圧を変更するライン圧変更手段を備え、前記起
動時制御手段は前記油圧ラインのライン圧が高くなるよ
う前記ライン圧変更手段を制御する手段であるものとす
ることもできる。こうすれば、素速く油圧を高くするこ
とができる。
【0015】本発明の参考例の油圧制御装置は、内燃機
関からの動力を駆動軸に伝達する係合手段を作動させる
のに必要な油圧を発生可能な電動式油圧発生手段を有
し、所定の条件が成立したときに前記必要な油圧の発生
の停止または油圧の低下となるよう該電動式油圧発生手
段を制御すると共に、油圧の発生の条件が成立したとき
に前記必要な油圧が発生するよう該電動式油圧発生手段
を制御する油圧制御装置であって、前記所定の条件が成
立して前記必要な油圧の停止または油圧の低下となる状
態にあるときに所定時間に亘って前記油圧の発生の条件
が成立しないとき、該油圧の発生の条件が成立しないに
も拘わらず、前記必要な油圧を発生させるよう前記電動
式油圧発生手段を制御する油圧再生制御手段を備えるこ
とを要旨とする。
【0016】この本発明の参考例の油圧制御装置では、
所定時間に亘って油圧の発生の条件が成立しないときに
は、油圧の発生の条件が成立しないにも拘わらず、必要
な油圧を発生させるから、油圧の著しい抜けによる低下
を防止することができ、油圧の発生の条件が成立したと
きに、迅速に必要な油圧を得ることができる。
【0017】こうした本発明の参考例の油圧制御装置に
おいて、前記油圧再生制御手段は、前記必要な油圧を発
生させるまで、前記所定の条件が成立しているにも拘わ
らず、前記必要な油圧が発生するよう前記電動式油圧発
生手段を制御する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、確実に必要な油圧を発生させることができ
る。
【0018】また、本発明の参考例の油圧制御装置にお
いて、前記油圧に用いる油の温度を検出する温度検出手
段を備え、前記油圧再生手段は、前記温度検出手段によ
り検出された前記油の温度に基づいて前記所定時間を設
定する所定時間設定手段を備えるものとすることもでき
る。こうすれば、油の温度に基づく物性に応じて所定時
間を設定することができ、より適切な所定時間を設定す
ることができる。この態様の本発明の参考例の油圧制御
装置において、前記所定時間設定手段は、前記油の温度
が所定温度範囲外のときには前記所定時間を短く設定す
る手段であるものとすることもできる。油は、温度が低
いときには粘性が高すぎる傾向があり、温度が高いとき
には粘性が低すぎる傾向があるからである。
【0019】本発明の参考例の油圧制御装置は、内燃機
関からの動力を駆動軸に伝達する係合手段を作動させる
のに必要な油圧を発生可能な電動式油圧発生手段を有
し、所定の条件が成立したときに前記必要な油圧の発生
の停止または油圧の低下となるよう該電動式油圧発生手
段を制御すると共に、油圧の発生の条件が成立したとき
に前記必要な油圧が発生するよう該電動式油圧発生手段
を制御する油圧制御装置であって、前記油圧に用いる油
の温度を検出する温度検出手段と、該検出された温度に
基づいて前記必要な油圧の発生の停止または油圧の低下
の状態を設定する状態設定手段と、該設定された状態と
なるよう前記電動式油圧発生手段を制御する状態制御手
段とを備えることを要旨とする。
【0020】この本発明の参考例の油圧制御装置では、
油の温度に基づいて必要な油圧の発生の停止または油圧
の低下を行なうことができる。この結果、油圧が必要な
ときには、迅速に必要な油圧を得ることができる。
【0021】こうした本発明の参考例の油圧制御装置に
おいて、前記状態設定手段は、前記油の温度が所定温度
範囲外のときには前記必要な油圧が発生する状態を設定
する手段であるものとすることもできる。油は、温度が
低いときには粘性が高すぎる傾向があり、温度が高いと
きには粘性が低すぎる傾向があるから、こうしたときに
は、油圧の発生の停止または油圧の低下が好ましくない
場合があるからである。この結果、必要な油圧を迅速に
得ることができる。
【0022】本発明の参考例の油圧制御装置は、内燃機
関からの動力を駆動軸に伝達する係合手段を作動させる
のに必要な油圧を発生可能な電動式油圧発生手段を有
し、所定の条件が成立したときに前記必要な油圧の発生
の停止または油圧の低下となるよう該電動式油圧発生手
段を制御すると共に、油圧の発生の条件が成立したとき
に前記必要な油圧が発生するよう該電動式油圧発生手段
を制御する車両に搭載される油圧制御装置であって、前
記車両の現在位置の勾配を検出する勾配検出手段と、該
検出された勾配に基づいて前記必要な油圧の発生の停止
または油圧の低下の状態を設定する状態設定手段と、該
設定された状態となるよう前記電動式油圧発生手段を制
御する状態制御手段とを備えることを要旨とする。
【0023】この本発明の参考例の油圧制御装置では、
車両の現在位置の勾配に基づいて必要な油圧の発生の停
止または油圧の低下を行なうことができる。この結果、
油圧が必要なときには、迅速に必要な油圧を得ることが
できる。
【0024】こうした本発明の参考例の油圧制御装置に
おいて、前記状態設定手段は、前記勾配が所定勾配以上
のときには前記必要な油圧が発生する状態を設定する手
段であるものとすることもできる。車両が坂道などのあ
る程度の勾配を有する場所で停止した場合に電動式油圧
発生手段による油圧の発生を停止すると、運転者がブレ
ーキを少し緩めただけで車両が予期しない方向に移動し
てしまうことがあり、この移動は予期しないことから好
ましくない場合が多い。本発明の参考例の油圧制御装置
では、こうした予期しない車両の移動を防止することが
できるのである。
【0025】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施
例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例である
油圧制御装置を備える動力伝達装置20を車両に搭載し
た際の概略構成を模式的に示す構成図である。図示する
ように、実施例の動力伝達装置20は、流体の作用によ
りトルクを増幅するトルクコンバータ50と、回転数を
所定の変速比で減速あるいは増速する変速機60と、装
置全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以
下、HVECUという)80とを備える。
【0026】エンジン30は、ガソリンを燃料として動
力を出力する内燃機関であり、その運転は、エンジン用
電子制御ユニット(以下、EGECUと呼ぶ)38によ
り制御されている。EGECU38によるエンジン30
の運転制御は、図示しないスロットルバルブの開度の制
御と図示しない燃料噴射弁の開弁時間の制御により行な
われるが、その詳細は省略する。
【0027】モータ40は、同期電動発電機として構成
され、外周面に複数個の永久磁石43を有するロータ4
2と、回転磁界を形成する三相コイル45が巻回された
ステータ44とを備える。モータ40の運転は、内部に
図示しないインバータ回路を備えるモータ用電子制御ユ
ニット(以下、MGECUという)46により制御され
ている。MGECU46によるモータ40の運転制御
は、バッテリ48に接続されたインバータ回路の各トラ
ンジスタのON時間の割合を順次制御して三相コイル4
5の各コイルに流れる電流を制御することによって行な
われる。なお、実施例ではモータ40を同期電動発電機
としたから、制動時やエンジン30による駆動時にモー
タ40を発電機として動作させることにより、バッテリ
48の充電が行なえるようになっている。このモータ4
0を発電機として動作させる制御もMGECU46によ
りなされる。
【0028】本ハイブリッド車においては、図2の駆動
力源走行領域を例示する説明図に示すように、バッテリ
48の充電状態が良好であって、車両に対する要求負荷
が小さい場合、エンジン30は運転が停止された状態で
モータ40の動力で車両が駆動される(図2中「モー
タ」で示される領域)。この時エンジン30は燃料供給
および点火が行なわれていない状態でモータ40により
連れ回されることになる。バッテリ48の充電状態が良
好であって、車両に対する要求負荷が大きい場合、エン
ジン30は運転されこのエンジン30の動力で車両が駆
動される(図2中「エンジン」で示される領域)。バッ
テリ48の充電状態が良好であって、車両の減速時には
モータ40を発電機として作動させバッテリ48へ発電
電力を充電する回生制動を行なう。車両が停止している
場合、バッテリ48の充電状態が良好であれば、エンジ
ン30の運転は停止(燃料供給および点火停止)されて
いるが、バッテリ48からの電力消費が続き途中で充電
状態が低下してくると、このモータ40によりエンジン
30が駆動されると共に燃料供給および点火が開始さ
れ、エンジンの運転が再開される。車両が低速でモータ
40により駆動されている時でもバッテリ48の充電状
態が低下してくると、同様に燃料供給および点火が再開
され、エンジン30の運転が再開される。
【0029】トルクコンバータ50は、循環するオイル
の作用によりトルクを増幅して後方に伝達する周知の流
体式のトルクコンバータであり、クランクシャフト32
に接続されたポンプインペラ52、変速機60に接続さ
れるタービンライナ54および固定部にワンウェイクラ
ッチ56を介して連結されるステータ58を備える。ポ
ンプインペラ52の軸部は延出しており、ここに機械式
オイルポンプ70が取り付けられている。機械式オイル
ポンプ70についての詳細な説明は後述する。
【0030】変速機60は、トルクコンバータ50の出
力軸にその入力軸が接続され、回転数を所定の変速比で
減速あるいは増速する。さらにこの変速機60の出力軸
は駆動軸66に連結され、駆動軸66はディファレンシ
ャルギヤ67を介して駆動輪68,69に接続されてい
る。本実施例の変速機60は、前進5段、後進1段のも
のとして構成されている。具体的には、変速機60は、
複数の遊星歯車とクラッチやブレーキを備える遊星歯車
機構62と、車両の前進後進の切換や動力の断続を行な
うクラッチC1,C2とを備える。ここで、車両を前進
させるときにはクラッチC1を係合させると共にクラッ
チC2を非係合とし、逆に車両を後進させるときにはク
ラッチC1を非係合とすると共にクラッチC2を係合さ
せる。ニュートラルやパーキングのときには両クラッチ
C1,C2を非係合とすることによって、動力伝達が断
たれる。遊星歯車機構62の詳細な説明は、本発明の説
明では冗長となるため、その説明は省略する。遊星歯車
機構62の図示しないクラッチやブレーキ,クラッチC
1,C2は、油圧を動力源として動作しており、その油
圧の作用は図示しないソレノイドバルブの開閉によりな
されている。こうしたソレノイドバルブの開閉制御はオ
ートマチックトランスミッション用電子制御ユニット
(以下、ATECUという)64により行なわれてい
る。油圧は、前述の機械式オイルポンプ70を駆動する
か、バッテリ48から供給される電力により駆動する電
動オイルポンプ72を駆動することにより確保されるよ
うになっている。
【0031】機械式オイルポンプ70は、図示しない
が、ドリブンギヤとドライブギヤとにより構成されるギ
ヤ式オイルポンプとして構成されている。機械式オイル
ポンプ70は、前述したようにポンプインペラ52の軸
部に取り付けられており、駆動軸66の回転の有無に拘
わらず、クランクシャフト32の回転により駆動され
る。したがって、駆動軸66が回転していないとき、即
ち車両が停止しているときには、機械式オイルポンプ7
0は、エンジン30が運転されていれば駆動されてお
り、エンジン30の運転が停止されているときには停止
していることになる。勿論、モータ40によりクランク
シャフト32を強制的に回転させることによっても機械
式オイルポンプ70は駆動されるが、この駆動はエネル
ギの効率の観点から見れば、好ましくない。
【0032】電動オイルポンプ72は、駆動手段として
回転数制御のオイルポンプモータ73を備えており、オ
イルポンプモータ73の回転数を変化させることにより
電動オイルポンプ72の吐出量を変化できるようになっ
ている。オイルポンプモータ73には、その回転数Nm
を検出するモータ回転数センサ74が取り付けられてい
る。
【0033】ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、
HVECUという)80は、動力伝達装置20全体をコ
ントロールするユニットである。HVECU80は、C
PU82を中心として構成されたワンチップマイクロプ
ロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶
したROM84と、一時的にデータを記憶するRAM8
6と、入出力ポート(図示せず)と、EGECU38や
MGECU46,ATECU64と通信を行なうシリア
ル通信ポート(図示せず)とを備える。このHVECU
80には、クランクシャフト32に取り付けられたエン
ジン回転数センサ34により検出されるエンジン30の
回転数Ne(正確にはクランクシャフト32の回転数)
や変速機60に併設されたオイルパンに取り付けられた
オイル温度センサ76により検出される油温T,モータ
回転数センサ74により検出されるオイルポンプモータ
73の回転数Nm,スタータスイッチ87からのスター
タスイッチST,勾配センサ89により検出される車両
の現在位置における勾配RG,アクセルペダルポジショ
ンセンサ91により検出されるアクセルペダル90の踏
み込み量としてのアクセルペダルポジションAP,ブレ
ーキペダルポジションセンサ93により検出されるブレ
ーキペダル92の踏み込み量としてのブレーキペダルポ
ジションBP,ブレーキ油圧センサ95により検出され
るブレーキマスターシリンダ94の作用によるブレーキ
油圧PB,シフトポジションセンサ97により検出され
るシフトレバー96のポジションであるシフトポジショ
ンSP,ブレーキスイッチ99により検出されるサイド
ブレーキレバー98のオンオフとしてのブレーキスイッ
チBP,駆動輪68,69に取り付けられた車輪速セン
サ68a,69aからの車輪速V1,V2などが入力ポ
ートを介して入力されている。また、HVECU80か
らはオイルポンプモータ73への駆動信号CPやインジ
ケータ88への点灯信号CIが出力されている。
【0034】こうして構成された動力伝達装置20は、
図示しない駆動制御ルーチンにより、駆動軸66に要求
される動力や駆動軸66の状態,バッテリ48の状態な
どに基づいて定まるエンジン30から出力される動力の
みにより駆動軸66を駆動するエンジン駆動モードやモ
ータ40から出力される動力のみにより駆動軸66を駆
動するモータ駆動モード,エンジン30とモータ40と
から出力される動力により駆動軸66を駆動するハイブ
リッド駆動モード,エンジン30から出力される動力で
駆動軸66を駆動すると共にエンジン30から出力され
る動力の一部をモータ40によって回生してバッテリ4
8を充電する充電駆動モードなど種々のモードで駆動軸
66を駆動する。こうした駆動モードのうちエンジン3
0が運転される駆動モードでは、エンジン30の運転に
伴って機械式オイルポンプ70が駆動するから、電動オ
イルポンプ72の運転は停止される。また、エンジン3
0が運転されない駆動モードでも、変速機60の変速段
の変更が行なわれないときには、油圧は不要であるか
ら、電動オイルポンプ72の運転が停止される。
【0035】次に、運転の停止された電動オイルポンプ
72の駆動を開始する際の動力伝達装置20について説
明する。図3は、実施例の動力伝達装置20のHVEC
U80が備えるCPU82により実行される電動オイル
ポンプ駆動開始時処理ルーチンの一例を示すフローチャ
ートである。このルーチンは、図示しない駆動制御ルー
チンにより停止されていた電動オイルポンプ72の駆動
開始信号を検出したときに実行されるものである。
【0036】この電動オイルポンプ駆動開始時処理ルー
チンが実行されると、CPU82は、まずシフトポジシ
ョンセンサ97により検出されるシフトポジションSP
とブレーキスイッチ99により検出されるブレーキスイ
ッチBSとオイル温度センサ76により検出される油温
Tと車速Vとを読み込む処理を実行する(ステップS1
00)。ここで、車速Vには、実施例では車輪速センサ
68a,69aにより検出される駆動輪68,69の車
輪速V1,V2から演算により求められるものを用い
た。具体的には、車速Vの読み込みは、図示しない車速
演算処理ルーチンにより車輪速V1,V2から演算され
RAM86の所定アドレスに記憶された車速Vをこの所
定アドレスから読み込むものとした。なお、車速Vにつ
いては駆動軸66の回転数から求めるものや対地速度セ
ンサを用いて求めるものなどから読み込むものとしても
よい。
【0037】続いて、読み込んだシフトポジションSP
がニュートラルのNレンジやパーキングのPレンジであ
るか否かを判定する(ステップS102)。Nレンジや
Pレンジであるときには、運転者による車両の急発進の
可能性はないと判断し、オイルポンプモータ73の駆動
開始時の目標回転数Nm*に通常の回転数Nsetを設
定し(ステップS108)、オイルポンプモータ73の
回転数Nmが設定された目標回転数Nm*となるようオ
イルポンプモータ73を駆動制御して(ステップS11
2)、本ルーチンを終了する。
【0038】一方、シフトポジションSPがNレンジや
Pレンジにないときには、車速Vが値0であるか否かを
判定する(ステップS104)。車速Vが値0でないと
きには、車両は走行中であるから運転者による車両の急
加速の可能性があると判定し、読み込んだ油温Tに基づ
いてオイルポンプモータ73の駆動開始時の目標回転数
Nm*を設定し(ステップS110)、オイルポンプモ
ータ73の回転数Nmが設定された目標回転数Nm*と
なるようオイルポンプモータ73を駆動制御して(ステ
ップS112)、本ルーチンを終了する。ここで、実施
例では、通常の回転数Nsetに油温Tに基づく補正項
f(T)を加えたものを目標回転数Nm*に設定した。
補正項f(T)は油温Tとオイルの粘性との関係に基づ
いて設定されるものであり、実施例では、その関係を図
4に例示するマップとして予めROM84に記憶させて
おき、油温Tが与えられるとこれに対応する補正項f
(T)を導出するものとした。このように通常の回転数
Nsetより高い回転数を目標回転数Nm*に設定する
から、通常の回転数Nsetを目標回転数Nm*に設定
した場合に比して油圧を迅速に高めることができる。
【0039】車速Vが値0のときには、ブレーキスイッ
チ99により検出されるブレーキスイッチBSを調べ
(ステップS106)、ブレーキスイッチBSがオンの
ときには、サイドブレーキレバー98が引かれている状
態なので、運転者による車両の急発進の可能性はないと
判断して、オイルポンプモータ73の駆動開始時の目標
回転数Nm*に通常の回転数Nsetを設定し(ステッ
プS108)、オイルポンプモータ73の回転数Nmが
設定された目標回転数Nm*となるようオイルポンプモ
ータ73を駆動制御して(ステップS112)、本ルー
チンを終了する。ブレーキスイッチBSがオフのときに
は、車両は停止中でも運転者による急発進の可能性があ
ると判断して、油温Tに基づいてオイルポンプモータ7
3の駆動開始時の目標回転数Nm*を設定し(ステップ
S110)、オイルポンプモータ73の回転数Nmが設
定された目標回転数Nm*となるようオイルポンプモー
タ73を駆動制御して(ステップS112)、本ルーチ
ンを終了する。
【0040】次に、こうした電動オイルポンプ72の駆
動開始時の制御を行なうことによる油圧の変化について
説明する。図5は、オイルポンプモータ73の駆動開始
時における回転数Nmと油圧との関係を模式的に時系列
で例示したタイムチャートである。図示するように、時
間t1で電動オイルポンプ72の駆動開始信号が検出さ
れて、図3に例示した電動オイルポンプ駆動開始時処理
ルーチンにより油温Tに基づいて目標回転数Nm*が設
定されてオイルポンプモータ73が駆動制御される。い
ま、油温Tが高い方から順に油温T1,T2,T3であ
ったとすると、この油温Tに対して補正項f(T)はそ
れぞれf(T1),f(T2),f(T3)となり、目
標回転数Nm*は通常の回転数Nsetに補正項が加え
られて回転数N1,N2,N3が設定される。そして、
この目標回転数Nm*となるようオイルポンプモータ7
3が駆動制御されて時間t3にオイルポンプモータ73
の回転数Nmが目標回転数Nm*になる。一方、油圧は
オイルポンプモータ73の駆動開始から若干遅れて立ち
上がり始め、補正項を通常の回転数Nsetに加えて目
標回転数Nm*として制御したときには時間t3で目標
圧力Ptに到達し、通常の回転数Nsetを目標回転数
Nm*として制御したときには時間t3より若干遅れた
時間t4で目標圧力Ptに到達する。したがって、補正
項を通常の回転数Nsetに加えた目標回転数Nm*を
用いてオイルポンプモータ73を駆動制御することによ
り油圧を迅速に目標圧力Ptに到達させることができる
のである。
【0041】以上説明した実施例の動力伝達装置20に
よれば、電動オイルポンプ72を駆動開始する際に運転
者による車両の急発進や急加速が行なわれる可能性があ
るか否かを判定し、可能性があるときにはオイルポンプ
モータ73の目標回転数Nm*を大きく設定して駆動制
御することにより、油圧を素早く立ち上げることができ
る。この結果、エンジン30やモータ40が吹き上がる
といった不都合を防止することができる。しかも、油温
Tに基づいて目標回転数Nm*を設定するから、オイル
の粘性による油圧の立ち上がりのバラツキをなくすこと
ができ、不必要にオイルポンプモータ73を高回転させ
ないから、オイルポンプモータ73の劣化を防止するこ
とができる。もとより、変速機60の変速段の変更の必
要がないときには電動オイルポンプ72を停止するか
ら、電動オイルポンプ72の劣化を早めることもなく、
動力伝達装置20全体のエネルギー効率を向上させるこ
とができる。
【0042】実施例の動力伝達装置20では、運転者に
よる車両の急発進や急加速の可能性をシフトポジション
SPと車速VとブレーキスイッチBSとにより判定した
が、シフトポジションSPだけにより判定したり、ブレ
ーキスイッチBSだけで判定するものとしても差し支え
ない。また、駆動軸66に制動力を作用させるブレーキ
の状態に基づいて運転者による車両の急発進や急加速の
可能性を判定するものとしてもよい。この場合、図3の
電動オイルポンプ駆動開始処理ルーチンに代えて図6の
電動オイルポンプ駆動開始処理ルーチンを実行すればよ
い。以下、この図6のルーチンを用いて駆動軸66に制
動力を作用させるブレーキの状態に基づいて運転者によ
る車両の急発進や急加速の可能性を判定する処理につい
て簡単に説明する。
【0043】この電動オイルポンプ駆動開始時処理ルー
チンが実行されると、CPU82は、まずブレーキ油圧
センサ95により検出されるブレーキ油圧PBとオイル
温度センサ76により検出される油温Tと車速Vとを読
み込み(ステップS120)、読み込んだ車速Vが値0
であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS1
22)。車速Vが値0でないときには、車両は走行中で
あるから運転者による車両の急加速の可能性があると判
定し、読み込んだ油温Tに基づいてオイルポンプモータ
73の駆動開始時の目標回転数Nm*を設定し(ステッ
プS130)、オイルポンプモータ73の回転数Nmが
設定された目標回転数Nm*となるようオイルポンプモ
ータ73を駆動制御して(ステップS132)、本ルー
チンを終了する。
【0044】車速Vが値0のときには、ステップS12
0で読み込んだブレーキ油圧PBを閾値Prefと比較
する(ステップS124)。ここで、閾値Prefは、
若干の勾配を有する道路上で停車状態を継続できる程度
の制動力を生じるブレーキ油圧として設定されるもので
ある。ブレーキ油圧PBが閾値Pref以上のときに
は、運転者による車両の急発進の可能性はないと判断し
て、オイルポンプモータ73の駆動開始時の目標回転数
Nm*に通常の回転数Nsetを設定し(ステップS1
28)、オイルポンプモータ73の回転数Nmが設定さ
れた目標回転数Nm*となるようオイルポンプモータ7
3を駆動制御して(ステップS132)、本ルーチンを
終了する。一方、ブレーキ油圧PBが閾値Pref未満
のときには、運転者による急発進の可能性があると判断
して、油温Tに基づいてオイルポンプモータ73の駆動
開始時の目標回転数Nm*を設定し(ステップS13
0)、オイルポンプモータ73の回転数Nmが設定され
た目標回転数Nm*となるようオイルポンプモータ73
を駆動制御して(ステップS132)、本ルーチンを終
了する。
【0045】以上説明した図6の電動オイルポンプ駆動
開始処理ルーチンを実行するものとすれば、ブレーキ油
圧PBに基づいて運転者による車両の急加速の可能性を
判定することができ、この判定を用いて油圧を素早く立
ち上げることができる。この結果、エンジン30やモー
タ40が吹き上がるといった不都合を防止することがで
きる。もとより、油温Tに基づいて目標回転数Nm*を
設定するから、オイルの粘性による油圧の立ち上がりの
バラツキをなくすことができると共にオイルポンプモー
タ73の劣化を防止することができる。
【0046】こうした図6のルーチンを実行する変形例
の動力伝達装置20では、ブレーキ油圧PBを閾値Pr
efと比較して運転者による車両の急加速の可能性を判
定したが、ブレーキ油圧PBの負の方向の変化率が所定
値以上のときに運転者による車両の急加速の可能性を判
定するものとしてもよい。ブレーキ油圧PBの負の方向
の変化率は、踏み込んでいるブレーキペダル92を緩め
る変化に対応するものであり、その値が大きいときは踏
み込んでいるブレーキペダル92を急に離したことにな
る。そして、その後の動作としてアクセルペダル90が
踏み込まれる動作が予測されるからである。
【0047】実施例や変形例の動力伝達装置20では、
運転者による車両の急発進の可能性が判定されたときの
再起動時には、電動オイルポンプ72の回転数を通常の
回転数Nsetより高い回転数を目標回転数Nm*に設
定したが、運転者による車両の急発進や急加速の可能性
を判定することなく、再起動時は常に通常の回転数Ns
etより高い回転数を目標回転数Nm*に設定するもの
としてもよい。
【0048】また、実施例の動力伝達装置20では、油
温Tに基づいてオイルポンプモータ73の目標回転数N
m*を設定するものとしたが、油温Tに拘わらず通常の
回転数Nsetより高い回転数を目標回転数Nm*に設
定するものとしてもよい。
【0049】更に、実施例の動力伝達装置20では、オ
イルポンプモータ73の回転数を高くすることにより油
圧を速く立ち上げるものとしたが、この回転数の変更に
代えて、あるいはこの回転数の変更に加えて、ライン圧
を高くすることにより油圧を速く立ち上げるものとして
もよい。この種の油圧回路には、通常、そのライン圧を
制御するライン圧制御装置が設けられているから、電動
オイルポンプ72の起動時には、ライン圧を通常の圧力
より高くなるよう制御することができる。そして、これ
により油圧を素速く立ち上げることができるのである。
【0050】次に本発明の第2の実施例としての油圧制
御装置を備える動力伝達装置20Bについて説明する。
第2実施例の動力伝達装置20Bが備えるハード構成
は、第1実施例の動力伝達装置20が備えるハード構成
と同一である。したがって、第2実施例の動力伝達装置
20Bのハード構成については、第1実施例の動力伝達
装置20のハード構成と同一の符号を付し、その説明は
省略する。
【0051】第2実施例の動力伝達装置20Bでは、図
7および図8に例示する電動オイルポンプ制御ルーチン
により電動オイルポンプ72の運転が制御されている。
以下、このルーチンを用いて電動オイルポンプ72の制
御について説明する。なお、この電動オイルポンプ制御
ルーチンは、動力伝達装置20Bが始動されてから所定
時間毎(例えば、10msec毎)に繰り返し実行され
る。
【0052】この電動オイルポンプ制御ルーチンが実行
されると、HVECU80のCPU82は、まず駆動信
号を読み込む処理を実行する(ステップS200)。こ
の駆動信号は、電動オイルポンプ72を駆動させるか停
止させるかを値として持つフラグである。第2実施例の
動力伝達装置20Bでも、第1実施例で説明したよう
に、駆動モードや変速機60の状態などに基づいて電動
オイルポンプ72を運転したりその運転を停止する。そ
の際、その電動オイルポンプ72に要求する状態をRA
M86の所定アドレスに書き込むから、この駆動信号の
読み込み処理は、RAM86の所定アドレスのデータを
読み込む処理となる。
【0053】読み込んだ駆動信号が駆動状態であるとき
には、電動オイルポンプ72が現在駆動状態であるか否
かを値として持つ運転状態判定フラグFMの値を調べ
(ステップS204)、運転状態判定フラグFMが値0
のときには、まだ運転状態にないと判断し、オイルポン
プモータ73の目標回転数Nm*に通常の回転数Nse
tに所定回転数ΔNを加えた値を設定すると共に目標ラ
イン圧P*に通常のライン圧Psetより所定圧ΔPだ
け高い値を設定する(ステップS206)。そして、運
転状態判定フラグFMに値1を、起動時であることを判
定する起動判定フラグFSに値1を、カウンタC1に値
0を設定し(ステップS208)、オイルポンプモータ
73が設定した目標回転数Nm*で回転するよう制御す
ると共にライン圧制御装置が設定した目標ライン圧P*
になるよう制御して(ステップS218)、本ルーチン
を終了する。このように、起動時の目標回転数Nm*と
目標ライン圧P*とを高く設定することにより油圧を素
速く立ち上げることができる。
【0054】一方、ステップS204で運転状態判定フ
ラグFMが値1のとき、即ち、ステップS206および
S208の処理を行なった後に継続して駆動信号が駆動
状態を要求しているときには、カウンタC1が閾値CR
1以上であるか否かを判定する(ステップS210)。
ここで閾値CR1は、電動オイルポンプ72の起動開始
から十分な油圧が得られるまでに要する時間として設定
されるものであり、電動オイルポンプ72の特性や油圧
回路の特性およびこのルーチンの起動時間などにより設
定される。カウンタC1が閾値CR1未満のときには、
まだ十分な油圧が得られていないと判断し、カウンタC
1をインクリメントして、以前に設定された目標回転数
Nm*や目標ライン圧P*でオイルポンプモータ73や
ライン圧制御装置が動作するよう制御して(ステップS
218)、本ルーチンを終了する。
【0055】カウンタC1が閾値CR1になると、目標
回転数Nm*に通常の回転数Nsetを設定すると共に
目標ライン圧P*に通常のライン圧Psetを設定し
(ステップS214)、起動判定フラグFSに起動時で
なくなったことを意味する値0を設定して(ステップS
216)、オイルポンプモータ73やライン圧制御装置
が設定した目標回転数Nm*や目標ライン圧P*で動作
するよう制御して(ステップS218)、本ルーチンを
終了する。こうして電動オイルポンプ72の起動を終了
する。
【0056】ステップS202で駆動信号が停止状態を
要求する信号であるときには、運転状態判定フラグFM
の値を調べ(ステップS220)、運転状態判定フラグ
FMが値1のときには、運転の停止処理が必要と判断
し、まず、起動判定フラグFSを調べる(ステップS2
22)。起動判定フラグFSが値1のときには、現在電
動オイルポンプ72は起動中であるから、駆動信号の停
止状態の要求に拘わらず、起動が完了するまで停止処理
を行なわない。具体的には、図7のステップS210に
移動して、起動処理を引き続き実行する。
【0057】起動判定フラグFSが値0のときには、電
動オイルポンプ72は起動中ではないと判断し、オイル
温度センサ76により検出される油温Tを読み込み(ス
テップS224)、読み込んだ油温Tが閾値Tr1と閾
値Tr2との範囲以内にあるかを判定する(ステップS
226)。油圧の立ち上がり性は、油温Tが低いときに
は、その粘性が高いことから悪化し、油温Tが高いとき
には、その粘性の低下により調圧系の漏れ量が増加する
ことから悪化する。したがって、油温Tが低すぎても高
すぎても、油圧の立ち上がり性は悪くなるから、ステッ
プS226では、その温度範囲を閾値Tr1と閾値Tr
2により判定しているのである。したがって、閾値Tr
1と閾値Tr2は、用いる油の特性や油圧回路の特性な
どにより定まる。
【0058】油温Tが閾値Tr1と閾値Tr2との範囲
以内にあるときには、再起動時の立ち上がり性は良好で
あると判断し、勾配センサ89により検出される車両の
現在位置の勾配RGを読み込み(ステップS227)、
読み込んだ勾配RGの絶対値を閾値RG1と比較する
(ステップS228)。ここで、閾値RG1は、ブレー
キを作動させていないと停止状態を維持できない勾配の
値かこれより若干大きめの値として設定されるものであ
る。車両の現在位置の勾配RGの絶対値が閾値RG1未
満のときには、安定して停止状態を維持できる状態と判
断し、電動オイルポンプ72を停止する処理を実行する
(ステップS229)。具体的には、オイルポンプモー
タ73への電力の供給を停止すればよい。そして、運転
状態判定フラグFMに停止状態であることを意味する値
0を、カウンタC2に値0を、閾値CR2に油温Tに基
づいて定まる値を設定して(ステップS230)、本ル
ーチンを終了する。閾値CR2については後述する。な
お、ステップS226で油温Tが閾値Tr1と閾値Tr
2との範囲以内にないときには再起動時の立ち上がり性
は良好でないと判断し、ステップS228で車両の現在
位置の勾配RGの絶対値が閾値RG1以上のときには車
両はブレーキの作用なしに安定して停止状態を維持する
ことができない状態にあると判断し、電動オイルポンプ
72の停止処理を行なわず、そのまま本ルーチンを終了
する。このように、油温Tに基づいて電動オイルポンプ
72の運転を停止するか否かを判断することにより、再
起動時の油圧の立ち上げを素速く行なうことができ、ま
た、車両の現在位置の勾配RGに基づいて電動オイルポ
ンプ72の運転を停止するか否かを判断することによ
り、車両の状態を考慮したものとすることができる。
【0059】一方、ステップS220で運転状態判定フ
ラグFMが値0のとき、即ち、ステップS228で電動
オイルポンプ72の停止処理を行なった後に引き続いて
駆動信号が停止状態を要求しているときには、カウンタ
C2が閾値CR2未満か否かを判定する(ステップS2
32)。この閾値CR2は、電動オイルポンプ72の運
転が停止された状態が継続しているときに、駆動信号が
停止状態を要求しているにも拘わらず、電動オイルポン
プ72を起動するために用いられるものである。電動オ
イルポンプ72を長時間に亘って停止させた後に起動す
る場合と、短時間停止させた後に起動する場合では、各
部のアクチュエータからのオイルの落下の程度が異なる
ことにより、油圧の立ち上がりに必要な時間が変化す
る。油圧の立ち上がりに必要な時間が大きくバラツクと
運転の滑らかさに欠けることになる。このため、運転を
停止して所定時間が経過したときには、一旦起動させる
のである。ここで、アクチュエータからのオイルの落下
の程度は油温Tによって変化するから、実施例では、油
温Tに基づいて閾値CR2を設定し、電動オイルポンプ
72を強制的に起動するタイミングを油温Tに基づかせ
ている。なお、油温Tと閾値CR2との関係は、実施例
では、油温Tが高くなるほどアクチュエータからオイル
の抜けが容易になることから、油温Tが高くなるほど閾
値CR2の値は小さくなるようにしている。
【0060】カウンタC2が閾値CR2未満のときに
は、まだ停止状態を継続していてもよいと判断し、カウ
ンタC2をインクリメントし(ステップS234)、油
温Tを再び読み込んで(ステップS236)、油温Tに
基づいて閾値SCR2を設定して(ステップS23
8)、本ルーチンを終了する。このように閾値CR2を
変更するのは、時間の変化に応じて油温Tも変化するか
らである。
【0061】カウンタC2が閾値CR2以上のときに
は、再起動が必要と判断し、ステップS206以降の起
動処理を行なう。こうした強制起動が開始されると、ス
テップS208で起動判定フラグFSに値1が設定され
るから、駆動信号が停止状態を要求していても、起動が
終了するまで停止処理は行なわれない。もとより、起動
が終了したときに駆動信号がまだ停止状態を要求してい
れば、ステップS224以降の停止処理に従って停止処
理がなされる。
【0062】以上説明した第2実施例の動力伝達装置2
0Bによれば、電動オイルポンプ72の運転を停止した
後に所定時間経過したときには、運転状態を要求してい
ないにも拘わらず、電動オイルポンプ72を起動するこ
とにより、油圧の立ち上がり性が大きくバラツクのを防
止することができる。この結果、常に油圧を素速く立ち
上げることができる。しかも、強制的な起動を油温Tに
基づいて判断するから、不必要に起動することがない。
また、起動中は、起動が完了するまで停止処理は行なわ
れないから、処理を一貫して行なうことができ、電動オ
イルポンプ72に無理な負荷をかけることもない。
【0063】また、第2実施例の動力伝達装置20Bに
よれば、油温Tが所定温度範囲にないときには、電動オ
イルポンプ72の運転を停止しないから、起動時の油圧
の立ち上がり性が悪化する状態での起動を回避すること
ができる。さらに、第2実施例の動力伝達装置20Bに
よれば、車両の現在位置の勾配RGが大きく、ブレーキ
の作用なしには車両が安定して停止状態を維持すること
ができないときには電動オイルポンプ72を停止しない
から、勾配に基づいて運転者が予期しない車両の移動を
防止することができる。
【0064】もとより、第2実施例の動力伝達装置20
Bによれば、起動時には、一時的に、オイルポンプモー
タ73の目標回転数Nm*を通常の回転数Nsetより
大きな回転数に設定すると共に目標ライン圧P*を通常
のライン圧Psetより大きな圧力に設定するから、油
圧を素速く立ち上げることができる。
【0065】第2実施例の動力伝達装置20Bでは、油
温Tに基づいて閾値CR2を設定するものとしたが、予
め定めた所定値を閾値CR2とするものとしても差し支
えない。また、油温Tが所定範囲以内にないときには、
停止処理を行なわないものとしたが、油温Tに拘わら
ず、停止処理を行なうものとしてもよい。
【0066】第2実施例の動力伝達装置20Bでは、起
動時に、一時的に目標回転数Nm*に通常の回転数Ns
etより大きな回転数を設定すると共に目標ライン圧P
*に通常のライン圧Psetより大きな圧力を設定した
が、目標回転数Nm*にだけ通常の回転数Nsetより
大きな回転数を設定するものとしたり、目標ライン圧P
*にだけ通常のライン圧Psetより大きな圧力を設定
するものとしてもよい。
【0067】第2実施例の動力伝達装置20Bでは、起
動中は駆動信号が停止状態を要求するものとなっても起
動を完了させたが、起動中に停止処理を行なうものとし
てもよい。ただし、電動オイルポンプ72の運転を停止
した状態で所定時間経過したときに行なう強制起動につ
いては起動を完了させるのが好ましい。
【0068】第1実施例の動力伝達装置20や第2実施
例の動力伝達装置20Bでは、電動オイルポンプ72を
運転するか停止するかによる制御としたが、電動オイル
ポンプ72を通常に運転するか、回転数を落とした状態
で運転するかによる制御とし、これに適用するものとし
てもよい。この場合、運転の停止に代えて回転数を落と
した運転とすればよい。
【0069】第1実施例の動力伝達装置20や第2実施
例の動力伝達装置20Bでは、流体式のトルクコンバー
タ50と有段式の変速機60とを備えたが、これに代え
て変速比が連続的に変更可能であり油圧制御式のクラッ
チを有する無段変速機(CVT)を備えるものとしても
よい。また、第1実施例の動力伝達装置20や第2実施
例の動力伝達装置20Bでは、エンジン30とモータ4
0とにより車両を駆動するハイブリッド自動車に搭載す
るものとして構成したが、車両を駆動するモータを有し
ていなくて、車両が停止中で所定の条件を満たされれば
自動的にエンジンを停止し、前記所定の条件が満たされ
なくなると自動的にエンジンを始動して運転を再開させ
るエンジン自動停止装置を有するものとして構成しても
よい。
【0070】第1実施例の動力伝達装置20や第2実施
例の動力伝達装置20Bでは、モータ40として同期電
動機を用いたが、クランクシャフト32に動力を出力で
きる電動機であれば如何なる種類のものであってもかま
わない。
【0071】第1実施例の動力伝達装置20や第2実施
例の動力伝達装置20Bでは、動力伝達装置20を自動
車に搭載するものとしたが、自動車以外の列車などの車
両や、船舶、航空機などに搭載するものとしてもよい。
【0072】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内におい
て、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である動力伝達装置20を
車両に搭載した際の概略構成を模式的に示す構成図であ
る。
【図2】 実施例のハイブリッド車における駆動力源走
行領域を例示する説明図である。
【図3】 実施例の動力伝達装置20のHVECU80
が備えるCPU82により実行される電動オイルポンプ
駆動開始時処理ルーチンの一例を示すフローチャートで
ある。
【図4】 油温Tと補正項f(T)との関係の一例を示
すマップである。
【図5】 オイルポンプモータ73の駆動開始時におけ
る回転数Nmと油圧との関係を模式的に時系列で例示し
たタイムチャートである。
【図6】 変形例の電動オイルポンプ駆動開始時処理ル
ーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】 第2実施例の動力伝達装置20BのHVEC
U80で実行される電動オイルポンプ制御ルーチンの一
例を示すフローチャートの一部である。
【図8】 第2実施例の動力伝達装置20BのHVEC
U80で実行される電動オイルポンプ制御ルーチンの一
例を示すフローチャートの一部である。
【符号の説明】
20,20B 動力伝達装置、30 エンジン、32
クランクシャフト、34 エンジン回転数センサ、38
EGECU、40 モータ、42 ロータ、43 永
久磁石、44 ステータ、45 三相コイル、46 M
GECU、48バッテリ、50 トルクコンバータ、5
2 ポンプインペラ、54 タービンライナ、56 ワ
ンウェイクラッチ、58 ステータ、60 変速機、6
2 遊星歯車機構、64 ATECU、66 駆動軸、
67 ディファレンシャルギヤ、68,69 駆動輪、
68a,69a 車輪速センサ、70 機械式オイルポ
ンプ、72 電動オイルポンプ、73 オイルポンプモ
ータ、74 モータ回転数センサ、76 オイル温度セ
ンサ、80 HVECU、82 CPU、84ROM、
86 RAM、87 スタータスイッチ、88 インジ
ケータ、89勾配センサ、90 アクセルペダル、91
アクセルペダルポジションセンサ、92 ブレーキペ
ダル、 93 ブレーキペダルポジションセンサ、94
ブレーキマスターシリンダ、95 ブレーキ油圧セン
サ、96 シフトレバー、97シフトポジションセン
サ、98 サイドブレーキレバー、99 ブレーキスイ
ッチ、C1,C2 クラッチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 正弥 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 遠藤 弘淳 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 星屋 一美 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 大庭 秀洋 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−26651(JP,A) 特開 昭52−61669(JP,A) 特開 昭49−45266(JP,A) 特開 昭57−97942(JP,A) 特開 昭61−88056(JP,A) 特開 昭61−105341(JP,A) 特開 昭61−167762(JP,A) 特開 昭64−40759(JP,A) 特開 昭48−6415(JP,A) 特開 昭52−109217(JP,A) 特開 昭61−201960(JP,A) 特開2000−18377(JP,A) 実開 昭63−14055(JP,U) 実開 昭55−112082(JP,U) 実開 昭59−77647(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 59/00 - 61/12 F16H 61/16 - 61/24 F16H 63/40 - 63/48 B60K 6/02 - 6/04 B60K 17/04 B60K 11/02 - 11/14 B60K 15/20

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関からの動力を駆動軸に伝達する
    係合手段を作動させる油圧を確保するための電動式油圧
    発生手段を有し、該電動式油圧発生手段は該油圧の駆動
    源として回転数を可変な駆動モータを備える油圧制御装
    置であって、 停止されていた電動式油圧発生手段の駆動開始時におけ
    る前記駆動モータの目標回転数を通常駆動される回転数
    より高い回転数に設定する目標回転数設定手段と、 該設定された目標回転数で前記駆動モータが駆動される
    よう該駆動モータを駆動制御する駆動モータ制御手段と
    を備える油圧制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の油圧制御装置であって、 前記駆動軸の状態を判定する状態判定手段を備え、 前記目標回転数設定手段は、前記状態判定手段により判
    定された駆動軸の状態に基づいて前記電動式油圧発生手
    段の駆動開始時における前記駆動モータの目標回転数を
    設定する手段である油圧制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の油圧制御装置であって、 前記状態判定手段は、操作者による前記駆動軸の急加速
    の要求の発生が予測される状態であるかを判定する手段
    であり、 前記目標回転数設定手段は、前記状態判定手段により前
    記駆動軸の状態が前記急加速の要求の発生が予測される
    状態であると判定されなかったときには前記駆動モータ
    の目標回転数を第1の回転数に設定し、前記状態判定手
    段により前記駆動軸の状態が前記急加速の要求の発生が
    予測される状態であると判定されたときには前記駆動モ
    ータの目標回転数を前記第1の回転数より大きい第2の
    回転数に設定する手段である油圧制御装置。
  4. 【請求項4】 前記状態判定手段は、少なくとも前記係
    合手段を介して駆動軸に動力を伝達可能な状態のときに
    前記急加速の要求の発生が予測される状態であると判定
    する手段である請求項3記載の油圧制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項3または4記載の油圧制御装置で
    あって、 前記駆動軸を回転の停止した状態で固定可能な駆動軸固
    定手段を備え、 前記状態判定手段は、前記駆動軸固定手段により前記駆
    動軸が固定されていないときには前記急加速の要求の発
    生が予測される状態であると判定する手段である油圧制
    御装置。
  6. 【請求項6】 請求項2ないし5いずれか記載の油圧制
    御装置であって、 前記油圧に用いる油の温度を検出する温度検出手段を備
    え、 前記目標回転数設定手段は、前記温度検出手段により検
    出された前記油の温度にも基づいて前記目標回転数を設
    定する手段である油圧制御装置。
  7. 【請求項7】 前記目標回転数設定手段は、前記油の温
    度が低いほど大きな回転数を前記目標回転数として設定
    する手段である請求項6記載の油圧制御装置。
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