JP3453123B2 - ジッタ測定装置及び方法 - Google Patents

ジッタ測定装置及び方法

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JP3453123B2 JP2000597635A JP2000597635A JP3453123B2 JP 3453123 B2 JP3453123 B2 JP 3453123B2 JP 2000597635 A JP2000597635 A JP 2000597635A JP 2000597635 A JP2000597635 A JP 2000597635A JP 3453123 B2 JP3453123 B2 JP 3453123B2
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    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01RMEASURING ELECTRIC VARIABLES; MEASURING MAGNETIC VARIABLES
    • G01R29/00Arrangements for measuring or indicating electric quantities not covered by groups G01R19/00 - G01R27/00
    • G01R29/26Measuring noise figure; Measuring signal-to-noise ratio

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 この発明は例えばマイクロコンピュータ (microcompu
te) 内の各種クロック信号やデータ信号、その他、情報
通信におけるデータ信号、画像信号などの繰返し信号の
ジッタを測定する装置及び方法に関する。
背景技術 以下では主としてマイクロコンピュータのクロック信
号のジッタについて述べるが、一般の信号ジッタの測定
にもこの発明は適用できるものである。
過去30年の間にVLSI (Very Large Scale Integrated
Circuit) チップ上のトランジスタの数は、Mooreの法則
に従って指数関数的に増加し続けており、マイクロコン
ピュータのクロック周波数もMooreの法則に従って指数
関数的に増加し続けている。現時点ではこのクロック周
波数は1.0GHzの限界を超えようとしている。(For
example, see: Naoaki Aoki, H. P. Hofstee, and S.
Dong; “GHz MICROPROCESSOR", IPSJ Magazine vol. 3
9, No. 7, July 1988)。図1はSemiconductor Industry
Association: “The National Technology Roadmap for
Semiconductors, 1977" に開示されているマイクロコ
ンピュータのクロック周期の推移を示すものである。こ
の図1にはRMSジッタ (root mean square jitter)
もプロットされている。
通信システムでは、受信信号に対して自乗操作及び微
分操作のような非線形操作を施し、これを位相同期ルー
プ (phase-locked loop: PLL) 回路へ入力することによ
り、搬送波の周波数と位相やシンボル・タイミングを再
生する。この再生は最尤推定 (maximum likelihood est
imation) に対応する。しかし、雑音などの影響により
受信信号から搬送波やデータを正しく再生できないとき
には、送信側へ再送信を要求することができる。通信シ
ステムにおいては、クロック発生器は他の部品とは別の
チップになっている。このクロック発生器は、バイポー
ラ、GaAsやCMOSデバイス技術を用いてVLSI化されてい
る。
多くのマイクロコンピュータにおいては、命令の実行
は一定周期のクロック信号により制御される。このクロ
ック信号のクロック周期はマイクロコンピュータのサイ
クル時間 (cycle time) に対応する。(For example, se
e: Mike Johnson;“Superscale Microprocessor Desig
n", Prentice-Hall, Inc., 1991)。クロック周期が短か
過ぎると、同期が取れなくなり、システムはロックして
しまう。マイクロコンピュータにおいては、クロック発
生器は他の論理回路と同一のチップ上に集積される。一
例として図2にPentiumチップを示す。図2において白
い四角 (□) はクロック発生回路を示している。これら
マイクロコンピュータはCMOS (complementary meta
l-oxide semiconductor) プロセスを利用して生産され
る。
通信システムでは平均ジッタ (RMS jitter) 又はRMS
ジッタが重要である。RMSジッタは信号対雑音比の平均
雑音に寄与し、誤り率を増加させる。一方、マイクロコ
ンピュータでは最悪の瞬時値が,動作周波数を決めてし
まう。ピークジッタは、ピークジッタ (peak-to-peak j
itter;ジッタの最悪値) がその動作周波数の上限を決め
てしまう。
従って、マイクロコンピュータのPLL回路のテストに
は、ジッタの瞬時値を正確に、短時間で測定できる手法
が必要である。しかしながら、ジッタの測定は通信領域
で発展して来たため、マイクロコンピュータの領域にお
いてはこの要求に対応する測定手法は存在していないの
が現状である。この発明の目的は、マイクロコンピュー
タのジッタの瞬時値を正確に、短時間で測定できる手法
を提供することにある。
これに対し、通信システムのPLL回路のテストには、R
MSジッタを正確に測定できる手法が必要である。測定時
間は10分程度を要するが、実際に測定手法が存在し、実
用化されている。図3にマイクロコンピュータと通信シ
ステムのクロック発生器の比較をまとめて示す。
位相同期ループ回路 (PLL回路) はフィードバック
系である。与えられた基準信号の周波数及び位相θ
iを、内部信号源の周波数及び位相θ0と比較し、周波数
差又は位相差が最小になるように内部信号源を差分で制
御する。このため、PLL回路の内部信号源である電圧制
御発振器 (VCO) は遅延時間を可変できる素子から構成
されている。この発振器に直流電圧を入力すると、直流
値に比例した一定周期の繰り返し波形を出力する。
この発明に関係するPLL回路は、位相周波数検出器 (p
hase-frequency detector)、チャージポンプ回路 (char
ge pump circuit)、ループフィルタ (loop filter)、及
びVCOから構成される。図4にPLL回路の基本回路構成を
ブロック図で示す。次に、各回路構成素子の動作を簡単
に説明する。
位相周波数検出器はデジタルの順序回路である。図5
は位相周波数検出器の回路構成を示すブロック図であ
り、2つのD形フリップフロップD−FF1、D−FF
2と1つのANDゲートより構成されている。第1のD
形フリップフロップD−FF1のクロック端子ckには
基準クロック (Reference Clock) が、また、第2のD形
フリップフロップD−FF2のクロック端子ckにはPL
Lクロック (PLL Clock) が印加される。各データ入力端
子Dには論理値‘1’が供給されている。
上記回路構成において、両フリップフロップの2つの
Q出力が同時に‘1’となると、ANDゲートが両フリップ
フロップをリセットする。位相周波数検出器は、2つの
入力信号間の位相差と周波数差に依存して、周波数を高
くするUP信号と、周波数を低くするDOWN信号を出
力する。(For example, see: R. Jacob Baker, Harry
W. Li, and David E. Boyce; “CMOS Circuit Design,
Layout, and Simulation", IEEE Press, 1998)。
位相周波数検出器 (PFD) の状態遷移図を図6に示
す。位相周波数検出器は、基準クロックとPLLクロック
の立ち上がりエッジにより状態遷移する。例えば図7に
示すように、40MHzの基準クロック (Ref Clock) に対
しPLLクロックが37MHzのときには、周波数を高くする
ために2つの立ち上がりエッジにより構成される時間間
隔の間、UP信号が出力される。基準クロックとPLLク
ロックとの間に位相差があるときにも同様である。排他
的論理和を用いた位相検出器と比較すると、位相周波数
検出器は次の特徴を有する。(For example, see: R. Ja
cob Baker, Harry W.Li, and David E. Boyce: “CMOS
Circuit Design, Layout, and Simulation", IEEE Pres
s, 1988)。
(i) 入力クロックの立ち上がりエッジにより動作す
る。クロックのパルス幅などの波形の形状には関係しな
い。
(ii) 基準周波数の高調波にロックしない。
(iii) ループがロック中は2つの出力は共に論理値
‘0’であるから、ループフィルタの出力にリップルを
生じない。
位相周波数検出器はエッジに高い感度を持つ。基準値
クロックのエッジが雑音のため識別できないと、ある状
態にハングアップ (hang-up) してしまう。一方、排他
的論理和をベースにした位相検出器はエッジを識別でき
なくても、平均出力は0 (ゼロ) である。従って、 (iv) 位相周波数延出器は雑音に敏感である。
チャージポンプ回路は、位相周波数検出器 (PFD)
からの論理信号UP、DOWNを特定のアナログ信号レ
ベル (ip, −ip, 0) に変換する。その理由は、デジタ
ル回路における信号振幅は大きな許容幅を持っているた
め、特定のアナログ信号レベルへの変換が必要となるか
らである。(For example, see: Floyd M. Gardner: “P
haselock Techniques", 2nd edition, John Wiley & So
ns, 1979; and Heinrich Meyr and Gerd Ascheid; “Sy
nchronization in Digital Communications", vol. 1,
John Wiley & Sons, 1990)。
図8aに示すように、チャージポンプ回路は2つの電
流源から構成される。ここでは、モデル回路を簡単にす
るためにこれら電流源は同じ電流値IPを持つものとし
た。さらに、チャージポンプ回路の出力電流iを簡潔
に記述するために、図8bに示すように負のパルス幅を
導入する。論理信号UPとDOWNが電流源のスイッチ
とSをそれぞれ開閉する。即ち、論理信号UPが
スイッチSを正のパルス幅τの時間間隔だけ閉じ、論
理信号DOWNがスイッチSを負のパルス幅τの時間
間隔だけ閉じる。従って、パルス幅τの時間間隔の間は ip=Ipsgn(τ) (2.1.1) となる。それ以外のときには、 ip=0 (2.1.2) となる。(For example, see: Mark Van Paemel; “Anal
ysis of a Charge-Pump PLL: A New Model", IEEE Tran
s. Commun., vol. 42, pp. 2490-2498, 1994)。
ここで、sgn(τ)は符号関数である。τが正のときに
+1の値を取り、負のτに対しては−1の値を取る。2
つのスイッチS、Sが開いているときには、電流は
流れない。そのため、出力ノードは高インピーダンスに
なっている。
ループフィルタはチャージポンプ回路の電流iをア
ナログの電圧値VCTRLへ変換する。図9aに示すよう
に,抵抗R2と容量Cを直列に接続すると1次のループフ
ィルタを構成できる。(2.1.1)、(2.1.2)式で
与えられる定電流ipがフィルタに入力すると,時間に比
例した電荷が容量Cにはチャージされる。即ち,図9b
に示すように、制御電圧VCTRLは時間τの間リニアに変
化する。他の時間においては,制御電圧VCTRLは一定の
値のままである (例えば、上記Mark Van Paemelの文献
参照)。
ループフィルタの抵抗値や容量値は,減衰係数や固有
周波数を最適にするように選ばれる。(For example, se
e: Jose Alvarez, Hector Sanchez, Gianfranco Gerosa
and Roger Countryman: “A Wide-bandwidth Low-volt
age PLL for Power PC Microprocessors", IEEE J. Sol
id-State Circuits, vol.30, pp.383-391, 1995; and B
ehzad Razavi; “Monolithic Phase-Locked Loops and
Clock Recovery Circuits: Theory and Design", IEEE
Press, 1996)。この発明においてはRonald E. Bestの次
の論文に従い,ループフィルタを図10に示す受動ラグ
フィルタとした。(see: Ronald E. Best; “Phase-Lock
ed Loops", 3rd edition, McGraw-Hill, 1977)。何故な
らば、このRonald E. Bestの文献に開示されているよう
に、位相周波数検出器と受動ラグフィルタの組み合わせ
は,無限大のプルインレンジとホールドレンジを持つた
め,他のタイプのフィルタを用いてもメリットがないか
らである。図10においてC=250 pF, R1=920Ω,R2
360Ωと設定した。VCOは,図11に示すように、13段
のCMOSインバータIN・ 1、IN・ 2、・・・、IN・
13により構成されている。電源電圧は5Vである。
電圧制御発振器VCOの線形特性は次式で与えられる。
fVCO=KVCOCTRL (2.3) ここで,KVCOはVCOの利得であり、その単位はHz/Vであ
る。
PLLが同期状態 (基準クロックとPLLクロックの立ち上
がりエッジが一致している状態) のとき,位相周波数検
出器は何ら信号を出力しない。後段のチャージポンプ回
路やループフィルタやVCOは信号をやり取りせず,それ
までの内部状態を維持し続ける。これに対し,基準クロ
ックとPLLクロックの立ち上がりエッジが一致していな
いときには (非同期状態), VCOの発振周波数を変更する
ために,位相周波数検出器はUp又はDown信号を出力す
る。その結果,後段のチャージポンプ回路やループフィ
ルタやVCOは,信号をやり取りして対応する状態へ遷移
する。従って,PLL回路の内部雑音を測定するには,PLL
回路を同期状態にする必要があることが分かる。一方,
PLL回路の短絡故障や遅延故障をテストするためには,P
LL回路を状態遷移させる必要がある。
次に、ランダム・ジッタについて記載する。
クロックにおいてジッタは,クロックパルス列の立ち
上がり時間と立ち下がり時間の揺らぎとして現れる。こ
のためクロック信号を伝送するときに,その到着時間や
クロックパルスのパルス幅が不確かになる。(For examp
le, see: Ron K. Poon; “Complter Circuits Electric
al Design", Prentice-Hall, Inc., 1995)。図12に,
クロックパルス列の立ち上がり時間と立ち下がり時間の
ジッタを示す。
図4に示したどのブロックの構成素子もジッタを与え
る可能性がある。そのうち最も大きなジッタの要因は,
VCOを構成するインバータの熱雑音やショット雑音であ
る。(For example, see: Todd C. Weigandt, Beomsup K
im and Pal R. Gray; “Analysis of Timing Jitter in
CMOS Ring Oscillators", International Symposium o
n Circuits and System, 1994)。このため,このVCOか
ら発生されるジッタはランダム揺らぎであり,入力に依
存しない。この発明においては,主なジッタ源はVCOで
あるとして、VCOの発振波形のランダム・ジッタ測定を重
要な課題とする。
VCOの発振波形のランダム・ジッタのみを測定するに
は,VCO以外の構成素子がアクティブにならない状態をP
LL回路に維持させる必要がある。従って,既に述べたよ
うに,PLL回路へ供給する基準入力信号は一定周期を厳
密に維持し続け,被試験PLL回路が位相誤差を誘起しな
いようにすることが重要である。この測定手法の概念を
図13に示す。
位相雑音を議論する準備として,ゼロクロスを定義す
る。コサイン波Acos(2πf0t)の振幅の最小値−Aを0
%,その最大値+Aを100 %とすると,50%のレベルは
振幅ゼロである。波形がゼロレベルを横切るポイントを
ゼロクロス (zero crossings) と呼ぶ。
発振器 (oscillator) から発生されるコサイン波を例
として位相雑音 (phasenoise) を議論する。理想発振器
(ideal oscillator) の出力信号XIDEAL(t)は歪みのな
い理想的コサイン波となる。
IDEAL(t)=Accos(2πfct+θc) (2.4) ここで,Acとfcはそれぞれ振幅と周波数の公称値であ
り,θcは初期位相角である。周波数領域でXIDEAL(t)
を観測すると図14に示したように線スペクトルにな
る。実際の発振器には公称値からのずれが存在する。そ
の出力信号は XOSC(t)=[Ac+ε(t)]cos(2πfct+θc+Δφ(t)) (2.5.1) XOSC(t)=Accos(2πfct+θc+Δφ(t)) (2.5.2) となる。ε(t)は振幅の揺らぎを表す。この発明では,
式(2.5.2)に示すように発振器の振幅揺らぎε(t)をゼロ
として議論を進める。Δφ(t)は位相の揺らぎを表す。
即ち,Δφ(t)は理想的なコサイン波を位相変調する項
である。初期位相角θcは区間(0,2π)の範囲で一様分布
に従う。一方,位相揺らぎΔφ(t)はランダムデータで
あり,例えば,ガウス分布に従う。このΔφ(t)は位相
雑音と呼ばれる。
図15に理想的発振器の出力信号XIDEAL(t)と実際の
振幅器の出力信号XOSC(t)をプロットした。これらの信
号を比較すると,Δφ(t)のためにXOSC(t)のゼロクロ
スが変化しているのが分かる。
一方,図16に示すように発振信号XOSC(t)を周波数
領域に変換すると,位相雑音の影響は公称周波数 f0
傍のスペクトル拡散として観察される。図15と図16
を比べると,周波数領域の方が,位相雑音の影響を観測
し易いと言える。しかし、図12に示したクロックパル
スを周波数領域に変換しても、パルス幅の揺らぎの最大
値を推定できない。何故ならば、変換は、ある周波数に
ついての平均値を求める処理でり、加算過程において最
大値と最小値が互いにキャンセルさせられてしまうから
である。従って、この発明が目的とするピークジッタ推
定方法は時間領域の処理を核にする必要がある。
ここで、PLL回路への基準入力端の付加雑音は,ルー
プフィルタ入力端の付加雑音に等しいことを明らかにす
る。(see: Floyd M. Gardner; “Phaselock Technique
s", 2nd edition, John Wiley & Sons, 1979; and John
G. Proakis;“Digital Communications", 2nd editio
n, McGraw-Hill, 1989)。PLL回路への基準入力端の付加
雑音を図17に示す。計算を簡単にするために,PLL回
路の位相検出器をサイン波位相検出器 (ミキサー) と仮
定する。
PLL回路は,与えられた基準信号 Xref(t)=Accos(2πfct) (2.6) に位相同期する。このとき,基準信号Xref(t)には次
の付加雑音が加わっているものと仮定する。
noise(t)=ni(t)cos(2πfct)-nq(t)sin(2πfct) (2.7) VCOの発振波形 XVCO(t)=cos(2πfct+Δφ) (2.8) と基準信号Xref(t)+Xnoise(t)は位相検出器に入力
し,差周波数成分に変換する。
ここで,KPDは位相比較器のゲインである。従って,基
準信号の付加雑音は,ループフィルタの入力端に付加雑
が印加されるのと等価であることが分かる。図18は,
ループフィルタ入力端の付加雑音を示す。PLL回路の基
準入力端の付加雑音のパワースペクトル密度を,N0[V2/
Hz]と仮定すると,式(2.10)から、このループフ
ィルタ入力端の付加雑音のパワースペクトル密度G
nn(f)は となる。
さらに,式(2.9)よりVCOの発振波形と基準信号の位相
差Δφがπ/2になると,位相検出器の出力はゼロにな
るのことが分かる。即ち,サイン波位相検出器を用いる
と,基準入力の位相とVCO出力の位相は90度シフトして
位相同期する。なお、この導出において付加雑音は無視
した。
次に、図17に示した等価付加雑音のモデルを用い
て,付加雑音が与えるジッタ量を明らかにする (see: H
einrich Meyr and Gerd Ascheid; “Synchronization i
n Digital Communications", vol. 1, John Wiley & So
ns,1990)。簡単のために,θi=0とすると,出力信号の
位相θ0は誤差に対応する。VCOの発振波形の位相スペク
トルは となる。ここで,H(f)はPLL回路の伝達関数である。
位相誤差は−θoであるから,位相誤差の分散は で与えられる。式(2.11)を式(2.14)に代入すると となる。即ち,ループの信号対雑音比 が大きいと,位相雑音は小さくなる。ここで,Beはルー
プの等価雑音帯域幅である。
このように、PLL回路の基準入力端の付加雑音又はル
ープフィルタの入力端の付加雑音は,ループ特性に対応
した低域通過フィルタを通った成分が出力の位相雑音と
して観測されることになる。位相雑音のパワーは,PLL
ループの信号対雑音比に反比例する。
次に、VCOの内部雑音による位相揺らぎがPLL出力信号
の位相にどのように影響するかについて検討する (see:
Heinrich Meyr and Gerd Ascheid; “Synchronization
in Digital Communications", vol. 1, John Wiley &
Sons, 1990)。VCOの出力信号を と仮定する。ここで,θp(t)は理想VCOの位相である。
内部の熱雑音などがΨ(t)を発生する。Ψ(t)は内部位相
雑音であり,ランダムにVCOの位相を揺るがす。図19
は,VCOの内部位相雑音モデルを示している。理想VCOの
出力端での位相θp(s)は で与えられる。ここで,Ψ(t)は位相誤差であり、位相
検出器の出力に対応する。
Φ(s)=θi(s)-θo(s)=θi(s)-(θp(s)+Ψ(s)) (2.18) 式(2.17)のθp(s)を式(2.18)に代入すると となる。整理すると となる。式 (2.13) を式 (2.20.1) に代入す
ると Φ(s)=(1-H(s))(θi(s)-Ψ(s)) (2.20.2) を得る。従って,VCOの内部雑音による位相揺らぎは となる。即ち,VCOの内部位相雑音は,高域通過フィル
タを通った成分がPLL回路の出力信号の位相雑音として
観測されることになる。この高域通過フィルタはループ
の位相誤差伝達関数に対応する。
このように、VCOの内部熱雑音はVCOの発振波形の位相
雑音になる。さらに,ループ位相誤差に対応する高域通
過フィルタを通った成分が出力の位相雑音として観測さ
れることになる。
PLL回路の付加雑音やVCOの内部熱雑音は,VCOの発振
波形の位相雑音に変換される。発生ブロックからPLL回
路の出力までのパスに対応して,低周波成分又は高周波
成分の位相雑音として観測される。従って,PLL回路の
雑音はVCOの発振波形の位相に揺らぎを与える効果を持
つことが分かる。これは、VCO入力端の電圧変動と等価
である。この発明においては,VCOの入力端に付加雑音
を加え,VCOの発振波形の位相をランダムに変調するこ
とによりジッタをシミュレーションする。図20はジッ
タをシミュレーションする方法を示している。
次に,クロックのジッタを測定する手法について説明
する。ピークジッタは時間領域で測定され,RMSジッタ
は周波数領域で測定される。これらのジッタ測定手法は
従来10分程度のテスト時間を要する。一方,VLSIのテス
トでは,テスト項目当たり100msec程度のテスト時間し
か割り当てられない。従って,従来のジッタ測定手法は
VLSIの製造ラインでのテストには適用できない。
ジッタ測定手法の研究においてゼロクロスは重要な概
念である。周期測定の観点から,波形のゼロクロスとそ
の基本波のゼロクロスの関係について考える。「波形の
基本波は元の波形のゼロクロス情報を保持している」こ
とを証明する。この発明では基本波のこの性質を「ゼロ
クロスの定理」と呼ぶことにする。図21に示すデュー
ティ比50%の理想クロック波形Xd50%(t)を例に取って説
明する。このクロック波形の周期をT0とすると,そのFo
urier変換は となる (例えば文献c1を参照)。即ち,基本波の周期
はクロックの周期に等しい。
クロック信号の基本波を抽出すると,そのゼロクロスは
元のクロック波形のゼロクロスに対応する。従って,基
本波のゼロクロスからクロック波形の周期を推定でき
る。このとき,いくつかの高調波を加えても周期の推定
精度は向上しない。ただし,高調波と周期の推定精度に
ついては後で検証する。
次に、Hilbert変換と解析信号 (analytic signal) に
ついて説明する (例えば文献c2を参照)。
式(3.1)から分かるように、波形Xa(t)のFourier変換
を計算すると,正の周波数と負の周波数にわたるパワー
スペクトルSaa(f)が得られる。これは両側スペクトル
(two-sided power spectrum) と呼ばれる。負の周波数
のスペクトルは正の周波数のスペクトルをf=0の軸に
関して折り返した鏡映である。従って,両側スペクトル
はf=0の軸に関して対称である。即ち、Saa(-f)=Saa
(f)。しかし,負の周波数のスペクトルを観測すること
はできない。負の周波数成分をゼロにカットし,観測で
きる正の周波数成分を2倍にしたスペクトルGaa(f)も
定義できる。これは,片側スペクトル (one-sided powe
r spectrum) と呼ばれる。
Gaa(f) = 2Saa(f) f>0 (3.3.1) Gaa(f) = 0 f<0 Gaa(f) = Saa(f)[1 + sgn(f)] (3.3.2) ここで,sgn(f)は符号関数である。fが正のとき+1の
値を取り,負のfに対しては−1の値を取る。この片側
スペクトルが,解析信号z(t)のスペクトルに対応する。
解析信号z(t)を時間領域で表すと なる。実数部は元の波形xa(t)に対応する。虚数部は元
の波形のHilbert変換a(t)で与えられる。式(3.5)で示
したように,ある波形xa(t)のHilbert変換a(t)は,波
形xa(t)と1/πtの畳込み (convolution) で与えられ
る。
この発明で扱う波形のHilbert変換を求めてみる。最
初に,コサイン波のHilbert変換を導出する。
第1項の積分はゼロ,第2項の積分はπであるから, H[cos(2πf0)]=sin(2πf0t) (3.6) となる。同様に H[sin(2πf0t)]=-cos(2πf0t) (3.7) である。
次に,クロック波形に対応する方形波のHilbert変換
を導出する。(例えば文献c3を参照)。図21の理想クロ
ック波形のFourier級数は である。Hilbert変換は,式(3,6)を用いると となる。図22はクロック波形とそのHilbert変換の例
を示す。これらの波形は,それぞれ第11次までの部分和
である。この例の周期T0は20 nsecである。
解析信号z(t)は,J. Dugundjiが波形の包絡線 (envel
ope) を一意的に求めるために導入した。(例えば文献c4
を参照)。解析信号を極座標表示で表すと となる。A(t)はXa(t)の包絡線を表す。このため,J. D
ugundjiはz(t)をプリ包絡線 (pre-envelope) と呼んで
いる。Θ(t)はXa(t)の瞬時位相 (instantaneousphase)
を表す。この発明のジッタ測定手法は,この瞬時位相
を推定する方法が核となる。
測定した波形を複素数として扱うと,その包絡線や瞬
時位相を簡単に求めることができる。Hilbert変換は,
波形を解析信号へ変換するためのツールである。次のア
ルゴリズム1の手順により解析信号を得ることができ
る。
アルゴリズム1(実波形を解析信号に変換する手順) 1.高速Fourier変換を用いて波形を周波数領域へ変換
する。
2.負の周波数成分をゼロにカットし,正の周波数成分
を2倍にする。
3.高速Fourier逆変換を用いてスペクトルを時間領域
へ変換する。
次に、位相を連続位相に変換する位相アンラップの方
法を概説する。
位相アンラップ手法は複素ケプストラム (complex ce
pstrum) を求めるために提案されたものである。(例え
ば文献c5を参照)。複素対数関数log(z)をelog(z)=zとな
る任意の複素数と定義すると、 log(z)=log|z|+jARG(z) (3.11) となる (例えば文献c6を参照)。時間波形Xa(n)のFou
rier変換をSa(ej ω)とする。その対数振幅スペクトルl
og|Sa(ej ω)|と位相スペクトルARG[Sa(ej ω)]を複素ス
ペクトルの実数部と虚数部に対応させ,Fourier逆変換
を行なうと,複素ケプストラムca(n)が得られる。
ここで,ARGは位相の主値を表す。位相の主値は,区間
[−π,+π]で定義される。第2項の位相スペクトルに
は-πと+πに不連続点が存在する。この不連続点の影響
がFourier逆変換を通じて時間領域全体に拡散するた
め,複素ケプストラムを正しく求められない。位相を連
続位相に変換するため,アンラップ位相 (unwrapped ph
ase) が導入された。アンラップ位相は,位相の導関数
を積分することにより一意的に与えられる。
arg[Sa(ej0)]=0 (3.13.2) ここで,argはアンラップ位相を表す。Ronald W. Schaf
erやDonald G.Childersにより,周波数領域の位相スペ
クトルから不連続点を除き,アンラップ位相を求めるア
ルゴリズムが開発された (例えば文献c7を参照)。
アルゴリズム2: 上記アルゴリズム2によりアンラップ位相を求める。
まず、隣り合う位相の主値の差を求めて不連続点が存在
するか否かを判断する。不連続点が存在するときには,
主値に±2πを加え,位相スペクトルから不連続点を除
いていく (文献c7を参照)。
上記アルゴリズム2においては,隣り合う位相の変化
はπより小であると仮定している。即ち,位相スペクト
ルを観測するときの周波数分解能は十分小である必要が
ある。ところが,極 (共振周波数) 近傍の周波数では隣
り合う位相がπより大きく変化する。位相スペクトルを
観測するときの周波数分解能が粗いと,位相が2π以上
増加したのか減少したのかを判定できなくなる。その結
果,アンラップ位相を正しく求めることができない。こ
の課題は,Jose M. Triboletにより解決された。即ち,
式(3.12)の位相の導関数積分を台形則による数値積分で
近似し、2π以上増加したか減少したかを判定できる位
相推定値が求まるまで,積分区間の分割幅を適応的に細
かくしていく手法を提案した (例えば文献c8を参
照)。このようにして,次式 arg[Sa(ej Ω)]=ARG[Sa(ej Ω)]÷2πl(Ω) (3.14) の整数lを求める。Triboletのアルゴリズムは,Kuno
P. Zimmermannにより時間領域の位相アンラップアルゴ
リズムへ拡張されている (例えば文献c9を参照)。
この発明では,時間領域の瞬時位相波形から−πと+
πの不連続点を除き,連続位相に変換するためにこの位
相アンラップを用いる。時間領域で一意的に位相アンラ
ップを行えるための標本化条件は後で検討することにす
る。
次に,連続位相からリニア位相を求めるために利用す
る線形トレンド推定法について概説する (例えば、文献
c10及びc11を参照)。
目標は,位相データyiに適合するリニア位相 g(x) = a + bx (3.15) を見つけることである。ここで,aとbは求める定数で
ある。g(xi)と各データ(xi, yi)の間の2乗誤差Rは で与えられる。ここで,Lは位相データの数である。2
乗誤差を最小にするリニア位相を求める。式(3.16)の未
知定数aとbについての偏微分を計算し、ゼロと置くと が得られる。変形すると となる。従って, となる。即ち, から,リニア位相を推定することができる。
この発明では,連続位相からリニア位相を推定すると
きに,線形トレンド推定法を用いる。
以上の説明で明白なように、従来のジッタ測定手法に
おいては、ピークジッタはオシロスコープを用いて時間
領域で測定され、RMSジッタはスペクトラム・アナライザ
を用いて周波数領域で測定されている。
時間領域におけるジッタ測定手法においてはクロック
信号のピークジッタJppは時間領域において測定され
る。ゼロクロス間の相対的ゆらぎがピークジッタJpp
して問題となる。よって例えばコンピュータなどにおけ
るクロック信号の図81aに示すように、ジッタのない
クロック信号が点線の波形の時、ジッタがあるクロック
信号はその例えば立上り点についてみると点線波形の立
上りを中心にその前後にゆらぐ、その各1つの立上り点
から次の立上り点の間隔Tintがゆらぎ、この瞬時間隔T
intをピークジッタJppとして求められる。図23及び図
24にオシロスコープを用いたピークジッタ測定例と測
定系をそれぞれ示す。位相検出器の基準入力へ被試験ク
ロック信号を印加する。ここで,位相検出器と信号発生
器は位相同期ループを構成する。信号発生器の信号を被
試験クロック信号に同期させ,トリガー信号としてオシ
ロスコープへ供給する。この例では,クロック信号の立
ち上がりエッジのジッタを観測している。四角いゾーン
を用いて,信号がクロスするレベルを指定する。ジッタ
は,「被試験クロック信号がこの指定レベルをクロスす
る時間」と「トリガー信号が与える基準時間」の時間差の
変動成分として測定される。この方式は測定に時間を要
する。このため,被試験クロック信号の周波数ドリフト
が測定に影響しないように,トリガー信号を被試験クロ
ック信号に位相同期させる必要がある。
時間領域におけるジッタ測定は,信号があるレベルを
横切る時刻の揺らぎを測定することに対応する。この発
明ではこれをゼロクロス法と呼ぶ。波形変化率はゼロク
ロスにおいて最大となるから,時刻測定のタイミング誤
差は最小となる。
図25(a)に,小さい円で波形のゼロクロスを示す。
ある立ち上がりエッジのゼロ振幅をクロスする時刻ti
ら,次の立ち上がりエッジのゼロ振幅をクロスするまで
の時刻ti+2までの時間間隔は,このコサイン波の周期を
与える。図25(b)はゼロクロスから求めた瞬時周期p
instを示す (隣り合うゼロクロスti+1とti+2から求め
た)。瞬時周波数finstはpinstの逆数で与えられる。
Pinst(ti+2)=ti+2-ti,pinst(ti+2)=2(ti+2-ti+1) (3.22.1) finst(ti+2)=1/pinst(ti+2) (3.22.2) 時間領域におけるジッタ測定の問題点を述べる。ジッ
タ測定のため,オシロスコープを用いて被試験クロック
信号xc(t) xc(t)=Accos(2πfct+θc +Δφ(t)) (3.23) をその立ち上がりエッジをゼロクロスのタイミングで捕
捉する。これは,次の位相角の条件 を満たすxc(t)のみが収集されることを意味する。立ち
上がりエッジのゼロクロスに対応するサンプルの確率密
度関数は で与えられる (例えば文献c10を参照)。従って,被
試験クロック信号をランダムに標本化してNポイントの
位相雑音Δφ(t3 π/2)を集めるのに要する時間は (2πAc)(NT0) (3.26) となる。即ち,ゼロクロスのサンプルしかジッタ推定に
利用できないため,通常の測定に比べて少なくとも(2π
Ac)倍のテスト時間を必要とする。
図26に示すように,ゼロクロス法によりサプリング
され得る位相雑音の集合の大きさは,位相雑音の全集合
の大きさより小さい。従って,推定し得るピークジッタ
Jpp,3 π /2は真のピークジッタJpp以下である。
ゼロクロス法の最大の欠点は,被測定信号の周期と独
立に周期測定の時間分解能を選べないことである。この
方式の時間分解能は,被測定信号の周期,即ち、ゼロク
ロス,によって決められてしまう。図27は,立ち上が
りエッジのゼロクロスを複素平面上にプロットしたもの
である。ゼロクロス法のサンプルは,矢印で示した1ポ
イントのみであり,周期当たりのサンプル数を増やすこ
とはできない。立ち上がりエッジのゼロクロスにniとい
う番号を与えると,ゼロクロス法は ni(2π) (3.28) なる位相差を測定している。その結果,ゼロクロス法で
測定した瞬時周期は,図25(b)に示したように、ステ
ップ関数を用いた近似になる。
1988年,David Chuはタイムインターバルアナライザ
を発明した (例えば文献c12及びc13を参照)。こ
れは,被測定信号のゼロクロスni(2π)の整数値niを計
数するとき,経過時間tiも同時に計数するものである。
この方法により,経過時間に対しゼロクロスの時間変動
をプロットすることが可能になった。さらに,(ti, ni)
を用いると測定データの間をスプライン関数 (spline f
unctions) で滑らかに補間できる。その結果,高い次数
で近似された瞬時周期を観測できるようになった。しか
し,David Chuのタイムインターバルアナライザも,被
測定信号のゼロクロス測定に基づいていることに注意す
る必要がある。スプライン関数で補間することにより物
理的意味を解釈し易くしているが,これは瞬時周期の近
似の程度を上げているにすぎない。何故ならば,ゼロク
ロスの間に存在するデータは依然として,測定されてい
ないからである。即ち,タイムインターバルアナライザ
もゼロクロス法の限界を超えるものではない。この瞬時
データを補間する方式に対する反例は後述する。
次に、周波数領域におけるジッタ測定法について記載
する。
クロック信号のRMSジッタJRMSは周波数領域において
測定される。例えばデータ通信において理想タイミング
ポイントからのずれがRMSジッタJRMSとして問題とな
る。よって図81bに示すように、ジッタのない方形波
信号が点線波形の場合、ジッタがある場合、その立上り
のタイミングがゆらぐが、正規の立上り点 (点線) に対
する実際の立上り点 (実線) のずれ幅がRMSジッタJRMS
として求められる。図28及び図29にスペクトラム・
アナライザを用いたRMSジッタ測定例と測定系をそれぞ
れ示す。被試験クロック信号を基準周波数として位相検
出器へ入力する。ここで,位相検出器と信号発生器は位
相同期ループを構成する。位相検出器で検出した被試験
クロック信号と信号発生器からの信号の位相差信号をス
ペクトラム・アナライザへ入力し,位相雑音スペクトル
密度関数を観測する。図28に示す位相雑音スペクトル
曲線より下側の面積がRMSジッタJRMSに対応する。周波
数軸は,クロック周波数からのオフセット周波数を表し
ている。即ち,0Hzはクロック周波数に対応する。
位相検出器から,式(3.23)の被試験クロック信号x
c(t)と基準信号 Xref(t) = Acos(2πfct+ θ0) (3.29) の位相差信号Δφ(t)が出力される。このとき被試験位
相同期ループ回路 (PLL回路) へ印加している基準信号
は一定周期であるから,位相差信号Δφ(t)は位相雑音
波形に対応する。Δφ(t)を有限時間Tの間観測し,周
波数領域に変換すると、位相雑音パワースペクトル密度
関数GΔφΔφ(f)が得られる。
Parsevalの定理から,位相雑音波形の2乗平均値 (mean
square value) は となる (例えば文献c14参照)。即ち,パワースペク
トルの和を測定することにより,位相雑音波形の2乗平
均値を推定できることが分かる。2乗平均値の正の平方
根 (実効値) をRMS (root mean square) ジッタJRMS
呼ぶ。
平均値がゼロのとき,2乗平均値は分散と等価であり,
RMSジッタは標準偏差に等しい。
図28に示したように,JRMSはクロック周波数近傍の
GΔφΔφ(f)の和で正確に近似され得る (例えば文献c
15参照)。実際は,式 (3.33) において加算するG
ΔφΔφ(f)の周波数の上限値fMAXは (2f−ε) で
ある。何故ならば,クロック周波数より広い周波数範囲
のGΔφΔφ(f)を加算すると,クロック周波数の高調波
もJRMSに含まれてしまうからである。
周波数領域におけるRMSジッタ測定には,位相検出器
と位相雑音が小さい信号発生器,スペクトラム・アナラ
イザを必要とする。式(3.33)や図28から分かるように
低い周波数範囲を周波数掃引して位相雑音スペクトルを
測定する。このため,10分程度の測定時間を必要とし,
マイクロプロセッサのテストには適用できない。さら
に,周波数領域におけるRMSジッタ測定では,位相情報
が失われてしまっているため,ピークジッタを推定でき
ない。
このように、従来のジッタ測定手法においては、ピー
クジッタはオシロスコープを用いて時間領域で測定され
る。時間領域でのジッタ測定の基本は,ゼロクロス法で
ある。その最大の欠点は,被測定信号の周期と独立に周
期測定の時間分解能を小さくできないことである。この
ため,被測定信号のゼロクロスni(2π)の整数値niとそ
の経過時間tiを同時に計数するタイムインターバルアナ
ライザが発明された。しかし,ゼロクロスの間に存在す
るデータは測定されていない。即ち,タイムインターバ
ルアナライザもゼロクロス法の限界を超えるものではな
い。
一方、RMSジッタはスペクトラム・アナライザを用いて
周波数領域で測定される。位相情報は失われてしまって
いるため,ピークジッタを測定できない。
その上、時間領域でのジッタ測定も周波数領域でのRM
Sジッタ測定も,10分程度の測定時間を必要とする。VLS
Iのテストでは,テスト項目当たり100msec程度のテスト
時間しか割り当てられない。従って,従来のジッタ測定
手法はVLSIの製造プロセスでのテストには適用できない
という重大な欠点があった。
マイクロコンピュータのクロック周波数は5年毎に約
2.5倍の割合でより高い周波数へシフトしている。した
がって、クロックジッタ測定手法も測定時間分解能につ
いてスケーラブルでなければ、マイクロコンピュータの
クロックジッタを測定できなくなってしまう。従来、ピ
ークジッタはオシロスコープやタイムインターバルアナ
ライザをもちいて時間領域で測定される。より高い周波
数のクロック信号のピークジッタをこれらの測定器をも
ちいて測定するには、サンプリングレート (1秒あたり
のサンプル数) を大きくしたり,サンプリングインター
バルを小さくする必要がある。すなわち、ハードウェア
を少なくとも5年毎に再度開発する必要がある。
CDやDVDにおけるジッタ測定の課題を説明する。CDやD
VDは、光ビームをディスクに集光し、ビットから戻って
くる反射光を光ピックアップで検出し、フォトダイオー
ドでRF信号 (電気信号) に変換する。ディスク上のピッ
トは、その長さ方向に少々長く伸びたり、短く縮んだり
した状態で形成されている。この結果、RF信号の立ち上
がりと立ち下がり特性が非対称になってしまう (デュー
ティ比)。たとえば、オシロスコープをもちいて、RF信
号のアイパターンを観測すると、中心がy軸にそってズ
レてしまう。したがって、ディスクのジッタを評価する
には、RF信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを
区別する必要がある。スペクトラム・アナライザをもち
いたRMSジッタ測定においては、RF信号の立ち上がりエ
ッジと立ち下がりエッジを区別できない。
また先にも述べたように、マイクロコンピュータのク
ロック周波数は5年毎に約2.5倍の割合で高くなってい
る。より高い周波数のクロック信号のピークジッタを測
定するにはデジタルオシロスコープに入力するためのAD
変換器として、クロック信号が高速になる毎に、高速動
作し、かつ8ビット以上の分解能を必要とした。
この発明の1つの目的は,100msec程度の短いテスト
時間でピークジッタあるいはRMSジッタを測定できるジ
ッタ測定方法及び装置を提供することである。
この発明の他の目的は,従来のRMSジッタ測定やピー
クジッタ測定で得られたデータを利用することができる
ジッタ測定方法及び装置を提供することにある。
この発明の更に他の目的はスケーラブルなジッタ測定
装置及び方法を提供することにある。
この発明の更に他の目的は波形の立ち上りエッジ又は
立ち下りエッジに対応したピークジッタ又は/及びRMS
ジッタを測定できるジッタ測定装置及び方法を提供する
ことにある。
この発明の更に他の目的はAD変換器を必要としないジ
ッタ測定装置を提供することにある。
この発明の更に他の目的は図24に示した従来のゼロ
クロス方式のピークジッタ測定方法及び/又は図29に
示した位相検出方式のRMSジッタ測定方法と互換性のあ
るジッタ測定装置を提供することにある。
この発明の更に他の目的はサイクル・ツウ・サイクル
ジッタを測定できるジッタ測定装置を提供することにあ
る。
この発明の更に他の目的はジッタのヒストグラムを測
定できるジッタ測定装置を提供することにある。
発明の開示 上記目的を達成するために、この発明の一面において
は、解析信号変換手段を用いて被測定波形xc(t)を複素
数の解析信号に変換し、この解析信号の瞬時位相からリ
ニア位相を除去した変動項、つまり位相雑音波形Δφ
(t)をリニア位相除去手段により得、この位相雑音波形
から被測定波形のジッタをジッタ検出手段で求めるジッ
タ測定装置が提供される。
この発明の他の面においては、被測定波形xc(t)を複
素数の解析信号に変換する段階と、この解析信号の瞬時
位相からリニア位相を除去した変動項、つまり位相雑音
波形Δφ(t)を推定する段階と、その位相雑音波形から
ジッタを求める段階とを含むジッタ測定方法が提供され
る。
上記位相雑音波形からRMSジッタを求める。また上記
位相雑音波形を解析信号の実数部のゼロクロス点付近を
サンプリングし、そのサンプル位相雑音波形の差分波形
を計算し、その差分位相雑音波形からピークジッタを求
める。
被測定波形を分周器にて分周した後解析信号に変換す
るように構成して、スケーラブルなジッタ測定装置及び
方法が提供される。
この発明の更に他の面においては被測定波形は基準ア
ナログ量とコンパレータで比較され、コンパレータの出
力信号が解析信号に変換される。
図面の簡単な説明 図1はマイクロコンピュータのクロック周期とRMS
ジッタとの関係を示す図である。
図2はPentiumとそのオンチップ・クロックドライバ
回路を示す図である。
図3はコンピュータシステムと通信システムのPLL
の比較を示す図である。
図4はPLL回路の基本構成を示す図である。
図5は位相周波数検出器の一例を示すブロック図であ
る。
図6は位相周波数検出器の状態遷移図である。
図7は周波数誤差が負のときの位相周波数検出器の動
作波形を示す。
図8aはチャージポンプ回路を示す図である。図8b
はチャージポンプ回路のスイッチ制御信号と出力電流の
関係を示す図である。
図9aはループフィルタ回路を示す図である。図9b
は図9aの回路へ入力された定電流と出力制御電圧との
関係を示す図である。
図10は受動ラグフィルタを示す回路図である。
図11はVCO回路の一例を示す。
図12はロジックのジッタの一例を示す。
図13はジッタの測定方法を説明するための図であ
る。
図14は理想的発振器の出力信号のスペクトルを示す
図である。
図15は位相雑音によるゼロクロスの変化を示す図で
ある。
図16は位相雑音によるスペクトルの拡散を示す図で
ある。
図17は入力端に雑音を付加したVCO回路を示すブ
ロック図である。
図18は入力端に雑音を付加したVCO回路と等価な
他のVCO回路を示すブロック図である。
図19は内部位相雑音を有するVCO回路を示すブロ
ック図である。
図20はジッタをシミュレーションしたPLL回路を
示すブロック図である。
図21は理想クロック波形を示す図である。
図22はクロック波形とそのHilbert変換を示す波形
図である。
図23は時間領域におけるピークジッタの測定例を示
す図である。
図24はピークジッタの測定系を示す模式図である。
図25aはクロック信号のゼロクロス点を示す図であ
る。図25bはそのゼロクロス点の瞬時周期を示す図で
ある。
図26は位相雑音の集合とゼロクロス法により標本化
され得る位相雑音の集合を示す図である。
図27は複素平面でのゼロクロスを示す図である。
図28は周波数領域におけるRMSジッタの測定例を
示す波形図である。
図29はRMSジッタの測定系を示す模式図である。
図30aはランダム位相変調信号の実数部が取出され
る機能構成を示す図である。図30bは解析信号として
ランダム位相変調信号が取出される機能構成を示す図で
ある。
図31は解析信号としてのVCOの発振波形を示す図
である。
図32はこの発明によるジッタ測定装置の第1の実施
例を示すブロック図である。
図33はジッタ測定のための一定周波数信号を示す図
である。
図34はこの発明によるジッタ測定装置を使用したジ
ッタ測定システムを示す模式図である。
図35aはHilbert変換対生成器を示す図である。図
35bはHilbert変換対生成器の入力波形を示す図であ
る。図35cはHilbert変換対生成器の出力波形を示す
図である。
図36aはクロック波形を示す図である。図36bは
図36aのクロック波形をFFTしたスペクトルを示す
図である。図36cは図36bのスペクトルに対し帯域
通過フィルタリングした図である。図36dは図36c
スペクトルを逆FFTした波形図である。
図37aは瞬時位相推定器の入力信号を示す図であ
る。図37bは瞬時位相を示す図である。図37cはア
ンラップ位相を示す図である。図37dは瞬時位相推定
器を示す図である。
図38aはリニア位相除去器の入力位相φ(t)を示す
図である。図38bはリニア位相除去器の出力Δφ(t)
を示す図である。図38cはリニア位相除去器を示す図
である。
図39aは入力クロック波形を示す図である。図39
bはそのΔφ(t)法の出力を示す図である。図39cは
ゼロクロス法の出力周期を示す図である。
図40aは解析信号変換手段に直行変調方式を用いた
ジッタ測定装置を示すブロック図である。図40bは入
力段にヘテロダイン方式を用いたジッタ測定装置を示す
ブロック図である。
図41はゼロクロス法とこの発明の方法との標本化手
法の相違を示す図である。
図42aは基本波スペクトルを示す図である。図42
bはそのクロック波形を示す図である。
図43aは13次高調波までの部分和スペクトルを示
す図である。図43bはそのクロック波形を示す図であ
る。
図44aはある次数までの復元波形から推定した周期
の相対誤差を示す図である。図44bはある次数までの
元のクロック波形の実効値に対する復元波形から推定し
た実効値の相対誤差を示す図である。
図45はMOS・FETのパラメータを示す図であ
る。
図46はジッタがないPLL回路を示すブロック図で
ある。
図47aはジッタがないPLL回路のVCOの入力に
おける波形を示す図である。図47bはその出力におけ
る波形を示す図である。
図48aはジッタがないPLL回路のVCOの出力波
形を示す図である。図48bはその位相雑音の波形を示
す図である。
図49aはジッタがないPLL回路の位相雑音の瞬時
周期を示す図である。図49bはその波形を示す図であ
る。
図50はジッタがあるPLL回路を示すブロック図で
ある。
図51aはジッタがあるPLL回路のVCOの入力に
おける波形を示す図である。図51bはその出力におけ
る波形を示す図である。
図52aはジッタがあるPLL回路のVCOの出力波
形を示す図である。図52bはその位相雑音の波形を示
す図である。
図53aはジッタがあるPLL回路の位相雑音の瞬時
周期を示す図である。図53bはその波形を示す図であ
る 図54aはスペクトル法により推定したRMSジッタ
を示す図である。図54bは位相雑音波形推定法により
推定したΔφ(t)を示す図である。
図55はRMSジッタの推定値を比較する図である。
図56aはゼロクロス法により推定したピークジッタ
を示す図である。図56bは位相雑音波形推定法により
推定したピークジッタを示す図である。
図57はピークジッタの推定値を比較する図である。
図58aはゼロクロス法によりPLLクロックの瞬時
周期を測定した結果を示す図である。図58bはΔφ
(t)法により推定した位相雑音を示す波形図である。
図59は分周されたクロックのRMSジッタの推定値
を比較する図である。
図60は分周されたクロックのピークジッタの推定値
を比較する図である。
図61aは3σが0.15Vの時の位相雑音スペクトルを
示す波形図である。図61bは3σが0.10Vの時の位相
雑音スペクトルを示す波形図である。
図62はHilbert変換対の一例を示す波形図である。
図63はHilbert変換対の他の例を示す波形図であ
る。
図64はピークジッタの相違を説明するための波形図
である。
図65はピークジッタの推定値をプロットした図であ
る。
図66aは遅延故障がないPLL回路のVCO入力を
示す波形図である。図66bは遅延故障がないPLL回
路のPLLクロックを示す波形図である。
図67は解析信号変換手段11の具体例を示すブロッ
ク図である。
図68は瞬時位相推定器12およびリニア位相除去器
13の各具体例を示すブロック図である。
図69は解析信号変換器11の他の具体例と、スペク
トル解析部を付加した例を示すブロック図である。
図70aは2分の1分周器を示す図である。図70b
は図70aの分周器の入力波形Tと出力波形Qを示す図
である。
図71は分周したクロック波形のジッタをデジタルオ
シロスコープで測定するシステム構成を示すブロック図
である。
図72は図71のシステムで測定したピークジッタ
と、分周器の分周数Nとの関係を示す図である。
図73は図71のシステムで測定したRMSジッタと分
周器の分周数Nとの関係を示す図である。
図74は分周したクロック波形のジッタを、Δφ評価
器を用いてジッタを測定するシステムの構成を示すブロ
ック図である。
図75は図74のシステムで測定したピークジッタと
分周器の分周数Nとの関係を示す図である。
図76は図74のシステムで測定したRMSジッタと分
周器の分周数Nとの関係を示す図である。
図77は正弦波に近いクロック信号をアナログデジタ
ル変調器とコンパレータへそれぞれ供給してそれぞれピ
ークジッタを測定した結果を示す図である。
図78は正弦波に近いクロック信号をアナログデジタ
ル変換器とコンパレータにそれぞれ供給して、それぞれ
RMSジッタを測定した結果を示す図である。
図79は方形波状クロック信号をアナログデジタル変
換器とコンパレータのそれぞれ供給してそれぞれピーク
ジッタを測定した結果を示す図である。
図80は方形波状クロック信号をアナログデジタル変
換器とコンパレータへそれぞれ供給してそれぞれRMSジ
ッタを測定した結果を示す図である。
図81aはゼロクロスの相対時間のジッタを示す図で
ある。図81bは理想タイミングに対するジッタを示す
図である。
図82はピークジッタの測定にこの発明を適用した実
施例の機能構成を示すブロック図である。
図83は図82に示した実施例における近似ゼロクロ
ス点と位相雑音波形のサンプルと、その差分を示す図で
ある。
図84は従来のタイムインターバル解析装置を用いた
ピークジッタの測定実験の構成を示す図である。
図85は図82に示した実施例の装置を用いたピーク
ジッタの測定実験の構成を示す図である。
図86はピークジッタの測定実験結果をジッタのピー
ク値により示す図である。
図87はピークジッタの測定実験結果をジッタの自乗
平均値により示す図である。
図88はこの発明の更に他の実施例を示す図である。
図89はRMSジッタの測定実験結果をジッタのピーク
値により示す図である。
図90はRMSジッタの測定実験結果をジッタの自乗平
均値より示す図である。
図91はサイクル・ツウ・サイクルジッタの測定にこ
の発明を適用した実施例を示す図である。
図92はサイクル・ツウ・サイクルジッタの測定実験
の結果を示す図である。
図93は従来装置により測定したサイン波ジッタのヒ
ストグラムを示す図である。
図94は図82に示した実施例により測定したサイン
波ジッタのヒストグラムを示す図である。
図95は図68に示した実施例により測定した位相雑
音波形Δφ(t)のヒストグラムを示す図である。
図96は図91に示した実施例により測定したサイク
ル・ツウ・サイクルジッタのヒストグラムを示す図であ
る。
図97は従来装置により測定したランダムジッタのヒ
ストグラムを示す図である。
図98は図82に示した実施例により測定したランダ
ムジッタのヒストグラムを示す図である。
図99aは解析信号実数部の波形を示す図である。図
99bは位相雑音波形とそのゼロクロスサンプル値を示
す図である。図99cはTs=Tinの場合の差分計算によ
り求めたピークジッタを示す図である。
図100はTs<Tinの場合の差分計算に必要な各位相
雑音波形Δφ(t)のサンプリング時点と、そのサンプル
値とその差分値が得られた時点の関係を示す図である。
図101aは解析信号実数部の波形を示す図である。
図101bは位相雑音波形とこのゼロクロスサンプル値
を示す図である。図101cはTs=1、Tin=17の場
合の差分計算により求めたピークジッタを示す図であ
る。
図102aはサイン波ジッタについてTs=Tinの場合
に求めたピークジッタを示す図である。図102bはサ
イン波ジッタについて、Ts=1、Tin=17の場合に求
めたピークジッタを示す図である。
図103aは通常のAD変換を行う場合の構成を示す
図である。図103bはアンダーサンプリングでAD変
換を行う場合の構成を示す図である。
図104aは入力信号を、その高周波状態で通常のサ
ンプリングをしたサンプル値系列の波形を示す図であ
る。図104bは入力信号をアンダーサンプリングした
サンプル値系列を示す図である。
図105aは図104aのサンプル値系列のスペクト
ラムを示す図である。図105bは図104bのサンプ
ル値系列のスペクトラムを示す図である。
発明を実施するための最良の形態 PLL回路の研究開発では従来のジッタ測定手法が依然
として利用されており,テスト段階のデータと開発段階
のデータの互換性は重要な問題となる。特に,短期間で
設計変更を行ったり,プロセスを改良して歩留まりの向
上を実現するためには,テスト結果を共有できるテスト
手法がキーポイントにある。この観点から,この発明は
クロックテストの手法として妥当である方法及び装置を
提供するものである。
RMSジッタとの互換性を実現するには,周波数領域に
おいて位相雑音パワースペクトルの形状が保存されなけ
ればならない。これは、既に論じた解析信号を用いれば
解決できる。次に,ピークジッタ測定との互換性を実現
するには,波形のゼロクロスを保存する手法が必要であ
る。ところで,既に明示したように,クロック波形の基
本波は元のクロックのゼロクロス情報を保持している
(「ゼロクロスの定理」)。従って,ピークジッタ測定のた
めには,クロック波形の基本波のみを利用して位相角を
推定すればよい。例えば,上記式(2.5.2)又は式(3.23)
はこの基本波に対応する。
式(2.5.2)又は式(3.23)から,位相雑音波形Δφ(t)は
クロック周波数に対応する搬送波の位相をランダムに変
化させていると解釈できる。このランダム位相変調の結
果,搬送波の周期が揺らぎ,よって,ジッタが生じる。
実際に観測可能な量は,図30(a)に示すように、ラン
ダム位相変調信号の実数部のみである (例えば文献c1
6を参照)。しかし,もし虚数部を同時に観測できれ
ば,位相角を簡単に求めることができる。この概念は,
クロック波形を前述した解析信号とみなすことに対応す
る。図30(b)は解析信号とみなすときのブロック図を
図示している。PLL回路の内部を考えると,図31に示
すように電圧制御発振器 (voltage-controlled oscilla
tor; VCO) の発振波形を解析信号として扱えばよい。
Δφ(t)がクロック波形をランダムに位相変調してい
る。従って,この発明の1つの目的は、クロック波形か
らΔφ(t)を取り出す手法を提供することである。この
発明によるジッタ測定装置の第1の実施例を図32にブ
ロック図で示す。例えば被試験PLL回路17からのアナ
ログのクロック波形はアナログデジタル変換器ADCによ
りデジタルのクロック信号とされて、解析信号変換手段
11としてのHilbert変換対生成器へ供給され、これよ
り複素数の解析信号に変換される。この解析信号は瞬時
位相推定器12により解析信号の瞬時位相が推定され、
その瞬時位相がリニア位相除去手段13でリニア位相が
除去され、瞬時位相の変動分、つまり位相雑音波形が求
められ、その位相雑音波形からピークツウピーク検出器
14でピークジッタが検出され、また位相雑音波形から
自乗平均検出器15で自乗平均ジッタが検出される。
既に述べたように,被試験PLL回路へは一定周期を厳
密に維持し続ける基準クロック信号が印加される。基準
クロック信号を図33に示す。その結果,被試験PLL回
路は内部で位相誤差を生ぜず,VCOに起因するランダム・
ジッタのみがクロック波形に現れる。取り込んだクロッ
ク波形を解析信号に変換し,その瞬時位相を推定し,線
形位相からのばらつきよりジッタを測定する。図34は
この発明を適用したジッタ試験システムを示している。
各ブロックはアナログ信号処理によっても実現可能で
ある。しかし,この発明においては,各ブロックをデジ
タル信号処理により実現する。何故ならば,デジタル信
号処理はアナログ信号処理より柔軟であり,スピードや
精度はハードウェアコストに対応して簡単に変更できる
からである。本発明者が TV 映像信号の雑音解析装置を
開発した経験から推測すると,クロック波形の量子化ビ
ット数は10ビット以上を必要とすると思われる。
次に,この発明に使用されたジッタ測定アルゴリズム
について説明する。
図32及び図35に示す解析信号変換手段11として
のHilbert変換対生成器はクロック波形x(t)を解析信
号z(t)に変換する。式(3.6)より、xc(t)のHilbert変
換は c(t)= H[xc(t)]=Acsin(2πfct+θc +Δφ(t)) (3.34) となる。xc(t)とc(t)を複素数の実数部と虚数部とす
ると,解析信号 zc(t)=xc(t)+jc(t) = Accos(2πfct+θc +Δφ(t))+ jAcsin(2πfct+θc +Δφ(t)) (3.35) が得られる。この場合、図35aに示すようにクロック
波形xc(t)を帯域通過フィルタ21aを通して、高調波
成分と直流成分を除去し、そのフィルタ出力を解析信号
(t)の実部とし、フィルタ出力をヒルベルト変換器
21でヒルベルト変換した出力を解析信号z(t)の虚
部とすることが好ましい。クロック波形xc(t)の基本波
周波数f0に対し、帯域通過フィルタ21aの通過帯域は
f0/2〜1.5f0とする。なおヒルベルト変換器21内に
帯域通過フィルタを備えたものがあり、その場合は、ク
ロック波形xc(t)をそのヒルベルト変換器21へ供給し
て、その内部の帯域通過フィルタに通された後、ヒルベ
ルト変換されて、虚数部とされ、一方、クロック波形xc
(t)が帯域通過フィルタを通されて実数部とされる。
下記のアルゴリズム3は、「ゼロクロスの定理 (波形
の基本波は元の波形のゼロクロス情報を保持してい
る)」を利用した計算手順である。即ち、このアルゴリ
ズム3は,この証明を利用した計算手順である。即ち,
このアルゴリズム3はクロック波形の基本波のみを解析
信号へ変換する。図36aは元のクロック波形であり、
方形波に近い形である。つまり、この解析信号へ変換す
る手段11は図67に示すようにFFT部21によりクロ
ック波形をFourier変換する。その変換結果の両側スペ
クトルを図36bに示す。次に,帯域フィルタ22によ
り負の周波数成分をカットする。同時に,図36cに示
すようにクロック波形の基本波のみを帯域通過フィルタ
22により取り出す。即ち,このステップはHilbert変
換と帯域通過フィルタリングを同時に行なう。図36c
のスペクトルを逆FFT部23によりFourierに逆変換する
と解析信号が得られる。帯域通過フィルタリングにより
基本波の近傍の周波数成分のみを取り出したから,図3
6dの解析信号はクロック波形の基本波に対応し,実線
で示したxc(t)はサイン波の和になっている。
アルゴリズム3 (実波形をその基本波の解析信号に変換
する手順) 1.高速Fourier変換を用いてxc(t)を周波数領域へ変換
する。
2.負の周波数成分をゼロにカットする。クロック周波
数付近の周波数成分のみを帯域通過フィルタリングによ
り取り出し,他の正の周波数成分をゼロにカットする。
3.高速Fourier逆変換を用いてスペクトルを時間領域
へ変換する。
瞬時位相推定器12は、zc(t)を用いてxc(t)の瞬時位
相を推定する。即ち Θ(t)=[2πfct+θc+Δφ(t)] mod 2π (3.36.1) となる。次に,瞬時位相推定器12は既に記載した位相
アンラップ法をΘ(t)に施す。つまり図68に示すよう
に瞬時位相推定器12は解析信号zc(t)の瞬時位相を推
定する瞬時位相評価部24と、その推定した瞬時位相Θ
(t)に対し位相アンラップ法を適用して連続位相θ(t)と
する連続位相変換部25とよりなる。その連続位相変換
の結果 θ(t)=2πfct+θc+Δφ(t) (3.36.2) が得られる。瞬時位相及びアンラップ位相を図37b及
び図37cに示す。さらに,リニア位相除去器13は,
既に述べた線形トレンド推定法を用いてθ(t)よりリニ
ア位相[2πfct+θc]をリニア位相推定部26で推定す
る。次に,θ(t)からリニア位相を引算部27で除去す
ると,瞬時位相の変動項Δφ(t),即ち位相雑音波形 θ(t)=Δφ(t) (3.36.3) が得られる。図37bはΔφ(t)を示す。この発明に使
用されるジッタ測定アルゴリズムは、Δφ(t)からピー
クジッタJPPとRMSジッタJRMSを、ピークツウピ
ーク検出器14と自乗平均検出器15により同時に推定
することができる。
となる。以後、この発明による手法をΔφ(t)法と呼
ぶ。
次に、この発明による手法とゼロクロス法とを論理的
に比較する。
まず、信号の立ち上がりエッジ (ゼロクロスに等し
い) のみを標本化するとき,Δφ(t)法はゼロクロス法
と等価になることを証明する。今、ゼロクロスの周期を
TZEROと表すと,クロック波形xc(t)は となる。式(3.35)を用いると,解析信号 が得られる。式 (3.10.3) より、z(t)の瞬時周波数
(instantaneousfrequency) は で与えられる。よって, となる。即ち,信号の立ち上がりエッジのみを標本化す
るとき,Δφ(t)法はゼロクロス法と等価であることが
証明された。
ゼロクロス法は周期測定の時間分解能を任意に選べな
い。この方式の時間分解能は被測定信号のゼロクロスに
よって決められてしまう。一方、Δφ(t)法は,周期当
たりのサンプル数を増やすことにより,時間分解能も位
相分解能も向上できる。図39は,従来のゼロクロス法
とΔφ(t)法のデータを比較している。時間軸の時間分
解能も縦軸の位相分解能も向上していることが分かる。
ここで、Δφ(t)法とゼロクロス法の標本化間隔の上
限を比較する。Δφ(t)法の標本化間隔の上限は上述し
た条件から導ける。即ち、位相アンラップが一意的に行
えるためには、隣り合う解析信号z(t)の位相差はπ
より小でなければならない。z(t)がこの条件を満た
すためには、1周期内に少なくとも2つのサンプルが等
間隔で標本化されなければならない。例えば、式 (3.2
3) で与えられるx(t)の周波数はfであるから、標
本化間隔の上限は1/2fとなる。一方、ゼロクロス
法の等価標本化間隔の上限は1/fである。
次に、直交変調 (quadrature modulation) を用いた
標本化手法について説明する。マイクロコンピュータの
クロック周波数は5年毎に約2.5倍の割合でより高い周
波数へとシフトしている。従って、ジッタ測定手法も測
定時間分解能についてスケーラブルでなければ、マイク
ロコンピュータのクロックジッタを測定できなくなって
しまう。ジッタ測定手法をスケーラブルにする方法が直
交変調である。図28及び図16から分かるように、ジ
ッタを持つクロック波形はクロック周波数を中心にして
位相雑音スペクトルが拡散している。即ち、ジッタを持
つクロック波形は帯域制限信号 (bandlimited signal)
である。このため、直交変調と低域通過フィルタを組み
合わせることにより、標本化周波数の下限を小さくでき
る可能性が存在する。
図40aは直交変調方式を用いて、クロック波形のΔ
φ(t)を推定する位相推定器を示すブロック図である。
入力したx(t)は、複素数のミキサにより、 cos(2π(fc+Δf)t+θ)+jsin(2π(fc+Δf)t+θ) (3.43) が乗ぜられる。低域通過フィルタの複素出力は となる。即ち、直交変調と低域通過フィルタにより、x
(t)は解析信号z(t)に変換され、その周波数はΔf
と小さくなる。その後、アナログ信号をデジタル信号に
変換し、x(t)の瞬時位相を瞬時位相推定器により推
定すると、 Θ(t)=[2πΔft+(θ-θc)-Δφ(t)]mod2π (3.45) が得られる。前の事例と同様に、位相アンラップをΘ
(t)に適用し、リニア位相除去器によりリニア位相を除
去すると、 θ(t)=−Δφ(t) (3.46) が得られる。
以上により、直交変調と低域通過フィルタを組み合わ
せることにより、Δφ(t)法の標本化周波数の下限を2
から2(Δf)へと小さくすることができることが証
明された。同様に、ゼロクロス法の等価標本化周波数の
下限もfからΔfへと小さくすることができる。図4
0bに示すヘテロダイン方式と低域通過フィルタを組み
合わせても、同様の効果が得られる。つまり入力クロッ
ク波形x(t)はミキサでcos(2π (f+Δf) t+
θ)が乗算され、そのミキサの出力は低域通過フィルタ
又は帯域通過フィルタにより周波数差成分が取出され、
これがADCでデジタル信号に変換され、そのデジタル信
号は解析信号変換手段11としての例えばHilbert変換
対生成器へ供給される。
最後に、Δφ(t)法とゼロクロス法の測定時間Tmeas
を導出する。ゼロクロス法のTmeas,ZEROは、下限の等
価標本化周波数Δfに対応するNポイントのΔφ(t)を
収集するのに要する時間 で与えられる。一方、Δφ(t)法については周期当たり
のサンプル数をK倍とする場合を考える。よって、Δφ
(t)法がその下限の標本化周波数のK倍の周波数2K(Δ
f)でNポイントのΔφ(t)を標本化するのに要する時間
となる。即ち、Δφ(t)法はゼロクロス法より2K倍高
速にΔφ(t)を測定できる。また、Δφ(t)法はKを調整
することにより、測定時間分解能をスケーラブルに変更
できることが分かる。これに対し、ゼロクロス法の時間
分解能はΔfにより決められてしまっている。図41
に、Δφ(t)法とゼロクロス法の手法の違いを比較して
示す。
次に、位相雑音波形Δφ(t)のパワースペクトル密度
関数を推定する方法について説明する。上記アルゴリズ
ム3は基本波のみを帯域通過フィルタリングで取り出し
ているため,Δφ(t)のスペクトル分布を観測できる周
波数範囲が制限されてしまう欠点を持つ。下記のアルゴ
リズム4は,Δφ(t)のスペクトル分布を観測すること
を目的としているから,帯域通過フィルタリングを用い
ていない。逆に,Δφ(t)の観測には下記のアルゴリズ
ム4を用いることはできない。
解析信号z(t)を推定するときには、高速Fourier変
換を用いる。このとき,xc(t)w(t) (x(t)に窓関数
w(t)を掛けた波形) を高速Fourier変換する。一般にw
(t)の振幅は,その最初の時刻と最後の時刻付近ではゼ
ロに近い値を持つ (例えば文献c17を参照)。このた
め,高速Fourier逆変換によって計算した波形x(t)w
(t)は,最初の時刻と最後の時刻付近において大きな誤
差を持ち,データとして採用できない。zc(t)推定にお
いても,窓関数の中央部 50%程度に対応するzc(t)w
(t)に窓関数の逆数1/w(t)を乗じてzc(t)を推定し,
両端のzc(t)w(t)は捨てざるをえない。
この方法では,1024ポイントのxc(t)から512ポイント
のzc(t)しか推定できない。ここで,xc(t)は波形記録バ
ッファに記録されていると仮定する。zc(t)のサンプル
数を増やすためには,波形記録バッファを一部重複して
(overlap) 区分し,各時間区間に対応するzc(t)を計算
し,最後に合成して全体のzc(t)を求める必要がある。
zc(t)を推定するときには,xc(t)の振幅に最小の変調
しか与えない窓関数を用いるべきである。この条件を満
たす窓関数はHanningである。 (文献c17)。これは上
側波帯と下側波帯に最小,即ち1つのスペクトルしか持
たない。このときは,波形の25%程度を重複させる。
アルゴリズム4 (解析信号のスペクトルを推定する手
順) 1.波形記録バッファ31 (図69) の先頭からxc(t)
を取り出す。
2.xc(t)に窓関数w(t)を窓関数乗算部32で掛ける。
3.高速Fourier変換部33によりxc(t)w(t)を周波数
領域へ変換する。
4.負の周波数成分のみを帯域通過フィルタ34により
ゼロにカットする。
5.高速Fourier逆変換部35によりスペクトルを時間
領域へ変換し,zc(t)w(t)を得る。
6.zc(t)w(t)に窓関数の逆数を,窓関数割算部36で
乗じ、zc(t)を得る。
7.波形記録バッファからxc(t)を取り出す。この場
合、1つ前のxc(t)とは25%程度重複させて取り出す。
8.zc(t)全体を得るまで,上記2−7の過程を繰り返
す。
このように処理されたzc(t)に対しスペクトル解析部
38によりパワースペクトルを推定する。
次に、上述したジッタ測定手法の有効性をシミュレー
ションにより検証した具体例について説明する。
クロック波形のゼロクロスとクロック波形の基本波の関
係 図21に示した理想クロック波形を用いて「波形の基
本波のゼロクロスは元の波形のゼロクロス情報を保持し
ている (ゼロクロスの定理)」ことを検証する。即ち,
クロック波形をFourier変換し,基本波の周波数成分を
残し,2次以上の高調波の周波数成分をゼロとする。こ
のスペクトルをFourier逆変換し時間領域の復元波形を
得る。この波形のゼロクロスから周期を推定する。図4
2aは高調波を除去したスペクトルを示す。図42bに
は復元波形と元のクロック波形を重ねて描いている。同
様に,13次高調波までの部分和スペクトルと復元波形を
図43a及びbにそれぞれプロットした。各復元波形を
元のクロック波形と比較すると,ゼロクロスは不動点に
なっているのが分かる。即ち,部分和に用いる高調波の
次数に関係なく,ゼロクロスの時間は一定である。
高調波の次数を1から13まで変え,「元のクロック信
号の周期」に対する「復元波形から推定した周期」の相
対誤差を求めた。同期の相対誤差の値を図44aに示
す。推定周期の誤差は高調波の次数に依存しない。この
結果,「基本波のゼロクロスは元の信号のゼロクロスに
対するよい近似を与える」ことが検証された。比較のた
め,波形の実効値の相対誤差も与える。図44bは,元
のクロック波形の実効値に対する復元波形から推定した
実効値の相対誤差を示す。実効値は,高い次数の高調波
まで部分和に加えないと,相対誤差は小さくならないこ
とが分かる。
以上の結果をまとめると、「クロック信号の基本波の
みを抽出できれば,元のクロック波形のゼロクロスから
瞬時周期を推定できる。このとき,高調波を加えても瞬
時周期の推定精度は向上しない」 ということになる。即
ち、「ゼロクロスの定理」は検証されたことになる。
次に、上述したこの発明によるジッタ測定手法 (Δφ
(t)法) をジッタがないPLL回路へ適用した場合について
説明する。PLL回路として、従来技術の説明において開
示したPLL回路を用いた。図46に示したPLL回路を0.6
μmのCMOS,電源電圧5Vとし,SPICEシミュレーションに
より各種波形を得た。図45はMOSFETのパラメータ
を示している。VCOの発振周波数は128MHzである。分周
器 (divider) がVCOの発振波形を4分周し、32MHz
のPLLクロックに変換する。SPICEシミュレーション
波形の時間分解能は50psecである。次に、位相雑音波形
Δφ(t)がシミュレーション波形から計算された。Δφ
(t)の推定はMatlabを用いてシミュレーションされた。
図47aはVCOへの入力波形を表す。図47bはVCOの
発振波形である。このVCOの出力パワースペクトルを図
48aに示す。8092ポイントのVCOの発振波形に“ミニ
マム4項窓関数”(例えば文献c18を参照) を掛け,
高速Fourier変換によりパワースペクトル密度関数を推
定した。図48bは,上記アルゴリズム4を用いて推定
したΔφ(t)のパワースペクトル密度関数である。つま
り図69に示すように解析信号変換器11でアルゴリズ
ム4で解析信号zc(t)を作り、この解析信号zc(t)の瞬時
位相θ(t)を瞬時位相推定器12で推定し、その瞬時時
位相θ(t)からリニア位相を、リニア位相検出器13で
除去して位相雑音波形Δφ(t)を求め、その位相雑音波
形Δφ(t)のパワースペクトルをスペクトル解析部37
で求める。高速Fourier変換の条件はVCOの出力パワスペ
クトル密度関数を求めたときと同じである。図48aと
図48bを比較すると,Δφ(t)のパワースペクトルで
は,128MHzのVCOの発振周波数のスペクトルが約120dB減
衰しているのが分かる。Δφ(t)のパワースペクトル密
度関数は,弱い1/f雑音の影響のため,低い周波数ほど
レベルが大きくなっている。
図49は,従来のゼロクロス法とこの発明による手法
とを比較するものである。図49aは,ゼロクロス法に
よりVCOの発振波形の瞬時周期を測定した結果である。
図49bは,この発明による手法のアルゴリズム3を用
いて推定したΔφ(t)を示す。2次高調波を含まない周
波数範囲 (10MHz−200 MHz) のスペクトルを帯域通過
フィルタで取り出し,高速Fourier逆変換によりΔφ(t)
を得た。このPLL回路がジッタを実際に持っていないこ
とは,瞬時周期やΔφ(t)が雑音を示していないことか
らも確認できる。
図47aから,周波数アップ・パルスは約1127 nsecの
時刻にVCOへ印加されているのが分かる。約908 nsecと
約1314 nsecの時刻に2つの周波数ダウン・パルスがVCO
へ印加されている。これはシミュレーションに用いたP
LL回路の性能のためである。図49bのΔφ(t)を観
ると,周波数アップ・パルスの影響による位相変化は約1
140 nsecの時刻に現れている。2つの周波数ダウン・パ
ルスの影響による位相変化が約920 nsecと約1325 nsec
の時刻に現れている。これらは確定的データ (determin
is data) である。一方,図49aの瞬時周期では,周
波数アップ・パルスの影響による瞬時周期の変化は約113
0 nsecの時刻に現れている。周波数ダウン・パルスの影
響による瞬時周期の変化が約910 nsecの時刻に現れてい
るのみである。約1314 nsecの時刻の周波数ダウン・パル
スの影響は瞬時周期の変化には現れていない。
以上の結果をまとめると、この発明によるΔφ(t)法
は,位相雑音がないとき,周波数アップ・パルスや周波
数ダウン・パルスに対応して発振状態が遷移しているの
を観測できる。従来のゼロクロス法より高い分解能であ
る。Δφ(t)のパワースペクトル密度関数は,VCOの発振
周波数のスペクトルの影響を殆ど受けない。
次に、上述したこの発明によるジッタ測定手法 (Δφ
(t)法) をジッタがあるPLL回路へ適用した場合について
説明する。また、ゼロクロス法を用いた瞬時周期推定と
比較し,この発明によるジッタ測定手法が位相雑音推定
に対し有効であることを検証する。
既に述べたように,VCOに付加雑音を加え、VCOの発振
波形の位相をランダムに変調させることによりPLL回路
のジッタをシミュレーションできる。この発明において
は,VCO発振回路の入力端に付加雑音を加えることによ
り,PLL回路のジッタをミュレーションした。ガウス雑
音はMatlabの関数randn0を用いて発生させた。さらに,
SPICEシミュレーションにより図50に示したPLL回路の
VCO入力端にガウス雑音を加えた。
図51aは,ガウス雑音の3σを0.05 VとしたときのV
COへの入力波形を表す。図51bはVCOの発振波形であ
る。図47aと図51aを比べると,ジッタのために、
周波数アップ・パルスは1から4へ,周波数ダウン・パル
スも2から3へ増えているのが分かる。このVCOの出力
パワースペクトルを図52aに示す。雑音のスペクトル
が増加している。図52bは,Δφ(t)のパワースペク
トル密度関数である。図48bと図52bを比較する
と,Δφ(t)のパワーが増加しているのが分かる。Δφ
(t)のパワースペクトル密度関数は,低い周波数ほどレ
ベルが大きくなっている。
図53は,従来のゼロクロス法とこの発明によるジッ
タ測定手法を比較するものである。図53aは,ゼロク
ロス法によりVCOの発振波形の瞬時周期を測定した結果
である。図53bは,この発明によるジッタ測定手法を
用いて推定したΔφ(t)を示す。図53と図49を比較
すると,対応する波形の変化が大きく異なることが分か
る。即ち,ジッタがないとき,瞬時周期やΔφ(t)は低
い周波数成分を示す。一方,ジッタがあるときには,瞬
時周期やΔφ(t)は比較的高い周波数成分を示す。これ
は,図53に示した瞬時周期やΔφ(t)が位相雑音に対
応していることを意味している。さらに,図53aと図
53bを注意深く比べると,次のことが分かる。 (i)
瞬時周期とΔφ(t)はお互いにやや相似である。しか
し,(ii)Δφ(t)は瞬時周期より時間分解能も位相 (周
期) 分解能も高い。
以上の結果をまとめると、この発明によるジッタ測定
手法 (Δφ(t)法) は,高い時間分解能及び位相分解能
で位相雑音を推定できる。勿論、ゼロクロス法も瞬時周
期という形で位相雑音を推定できる。しかし,ゼロクロ
ス法は時間分解能及び周期推定分解能がゼロクロスに制
限されるという難点がある。
次に、従来のジッタ推定法とこの発明によるジッタ測
定法 (Δφ(t)法) とを比較する。ただし、RMSジッタ推
定については、Δφ(t)法とスペクトル法とを比較し、
ピークジッタ推定については,Δφ(t)法とゼロクロス
法とを比較する。
図54はRMSジッタ推定値を比較するための条件を示
している。従来法のスペクトルとして,上述したアルゴ
リズム4を用いて推定したΔφ(t)のパワースペクトル
密度関数を用いた。スペクトル法は、2次高調波を含ま
ない周波数範囲 (10MHz−200 MHz) の位相雑音パワー
スペクトルの和を求め,式(3.33)を用いてRMSジッタJ
RMSを推定した。図54aの黒く塗りつぶした部分がこ
の周波数範囲に対応するスペクトルである。一方、Δφ
(t)は,上記アルゴリズム3と式(3.38)を用いてJRMS
推定した。これは,位相雑音波形Δφ(t)の実効値に対
応する。ガウス雑音の3σを0Vから0.50Vまで変え,
図50に示したPLL回路のVCOの入力端に加え,VCOの発
振波形のRMSジッタ値を推定した。図55に示すよう
に,Δφ(t)法とスペクトル法はほぼ互換のある推定値
を与える。
図56はピークジッタ推定値を比較するものである。
三角形の印はピーク値を示している。Δφ(t)法とゼロ
クロス法とで三角形の位置が異なっている。これは,ピ
ークジッタがゼロクロスにおいて発生するとは限らない
ことを意味している。図57に示すように,Δφ(t)法
とゼロクロス法は互換のある推定値を与える。
以上の結果をまとめると、この発明によるΔφ(t)法
は,RMSジッタ推定については,従来のスペクトル法と
互換のある推定値を与える。ピークジッタ推定について
も,Δφ(t)法は,ゼロクロス法と互換のある推定値を
与える。
次に、4分周されたPLLクロックを用いて、従来の
ジッタ推定法とこの発明によるΔφ(t)法の性能を比較
する。対象とするPLL回路として図50に示したPL
L回路を使用した。この回路の分周器はVCOの発振波
形を4分周し、32MHzのPLLクロックに変換す
る。図66bにPLLクロック波形を示す。また、上記
した事例の結果と比較するために、付加ガウス雑音の3
σは0.05Vとした。
VCOの発振波形の周期をτvcoとすると、4分周P
LLクロックの周期τPLLとなる。ここで、εIは立ち上がりエッジの時間揺らぎ
を表している。式 (3.48) から、分周はクロックのジッ
タを低減する効果があることが分かる。
図58はゼロクロス法とこの発明によるΔφ(t)法を
比較するものである。図58aはゼロクロス法によりP
LLクロックの瞬時周期を測定した結果である。図58
bはこの発明によるΔφ(t)法の上記アルゴリズム3を
用いて推定したΔφ(t)を示す。2次高調波を含まない
周波数範囲(20MHz−59MHz)のスペクトルを
帯域通過フィルタで取り出し、高速Fourier逆変換によ
りΔφ(t)を得た。PLLクロックのΔφ(t)は、図53
bに示すVCOの発振波形から求めたΔφ(t)と大きく
異なることが分かる。PLLクロックのΔφ(t)は位相
不連続点を強調している。これは分周のためである。何
故ならば、位相不連続点が等間隔であり、規則性のある
分周エッジに対応していることを示しているからであ
る。
図59はRMSジッタ推定値を比較するものである。
スペクトル法は、 (i) この発明によるΔφ(t)法のアル
ゴリズム4を用いてPLLクロックからΔφ(t)を推定
し、(ii) 8092ポイントのΔφ(t)に「ミニマム4項
窓関数」(例えば文献c18を参照) を掛け、高速Fouri
er変換によりパワースペクトル密度関数を推定した。次
に、(iii) スペクトル法は2次高調波を含まない周波数
範囲(20MHz−59MHz)の位相雑音パワースペ
クトルの和を求め、式 (3.33) を用いてRMSジッタJ
RMSを推定した。一方、この発明によるΔφ(t)法は、ア
ルゴリズム3と式 (3.38) を用いてRMSジッタJRMS
を推定した。図59に示すように、Δφ(t)法とスペク
トル法はほぼ互換性のある推定値を与えている。ただ
し、付加ガウス雑音の3σが0.05V付近で、Δφ(t)法
で推定したJRMSの値の方が大きくなっている。この理
由はピークジッタJPPについてのテスト結果と一緒に説
明することにする。図59及び図55を比べると、この
具体例における4分周はJRMSを1/3.7にしているのが
分かる。
図60はピークジッタ推定値を比較するものである。
Δφ(t)法とゼロクロス法はほぼ互換性のある推定値を
与えている。ただし、付加ガウス雑音の3σが0.05V付
近で、Δφ(t)法で推定したJPPの値の方が大きくなっ
ている。次に、その理由について説明する。
図61aは3σが0.15V(ゼロクロス法とほぼ同じ推
定値)のときの位相雑音パワースペクトルである。同図
のカーソルはΔφ(t)を推定するときの上限周波数を示
している。このカーソル付近に、弱い位相変調スペクト
ルが認められる。このときの解析信号z(t)を図62
に示す。弱い位相変調スペクトルのために複素正弦波に
なっているのが分かる。このため、瞬時位相は滑らかに
変化する。
図61bは、3σが0.10V(ゼロクロス法より大きい
推定値)のときの位相雑音パワースペクトルである。こ
の位相雑音パワースペクトルは、典型的な1/fノイズ
の形を示している。この1/fノイズの基本周波数はP
LLクロックの周波数32MHzではない。しかし、1
/fノイズのz(t)は既に記載した事例で導出した方
形波のHilbert変換対で与えられる。従って、図63に
示すz(t)は図22のHilbert変換対と同じ形になる。
(t)は複雑な形状を持つため、瞬時位相は大きく変
化する。このため、付加ガウス雑音の3σが0.05V付近
で、Δφ(t)法で推定したJPP及びJRMSは大きな値を取
る。
図60と図57を比べると、この具体例における4分
周はJPPを1/3.2にしているのが分かる。
以上の結果をまとめると、Δφ(t)法は分周クロック
のRMSジッタやピークジッタも推定できることが検証
された。その推定値は従来の測定法と互換性がある。た
だし、位相雑音パワースペクトルが1/fノイズの形の
ときは、Δφ(t)法は従来の測定法よりも大きな推定値
を示す。
以上の説明で明白なように、この発明によるジッタ測
定手法(Δφ(t)法)の有効性はシミュレーションによ
り検証された。また,元の波形のゼロクロスは基本波の
ゼロクロスから推定できることを検証した。これは,Δ
φ(t)法がゼロクロス法と互換のあるピークジッタを推
定できるための重要な基礎を与えた。何故ならば,基本
波だけでなく全周波数範囲のスペクトルを用いてΔφ
(t)を推定すると,図56bに示す波形となる。即ち,
高い周波数のリップルが重畳される。さらに,図57に
示したように,ゼロクロス法との互換性は実現できな
い。さらに,ジッタが発生するPLL回路へΔφ(t)法を適
用すると,このΔφ(t)法が位相雑音推定に対し有効で
あることが検証された。その上、ピークジッタとRMSジ
ッタについて,従来のジッタ推定法とΔφ(t)法は互換
性があることが明らかになった。また、分周クロックの
ジッタも互換性を持って推定できることが検証された。
更にこの発明において、スケーラブルなジッタ測定装
置及び方法を提案する。即ち、例えば図32に破線で示
すように、被試験PLL回路17などからのクロック波形
(t)は可変分周器41で周波数がN(整数)分の1
に分周され、つまりクロック周期がN倍にされる。分周
器41として例えば図70aに示すような立ち上りエッ
ジでトリガされるT (toggle) フリップフロップを用い
ると、図70bに示すように入力クロックTは周期が2
倍とされたクロックQとして出力される。このようにし
て、クロック波形x(t)の周期をN倍(Nは2以上の
整数)にすることによりアナログデジタル変換器ADCと
して、その動作周波数(サンプリング周波数)が比較的
低いものを用いることができる。つまりクロック波形x
(t)の周波数が高くなっても、アナログデジタル変換
器ADCが動作可能な周波数までクロック波形x(t)の周
波数をN分の1にしてジッタを測定すればよい。
クロック波形x(t)のピークジッタとRMSジッタをそ
れぞれJPP1とJRMS1とし、このクロック波形x(t)を
N分の1に分周したクロックのジッタを測定すると、こ
れらジッタJPPN,JRSMNはそれぞれ JPPN =JPP1 /N , JRSMN=JRSM1/N (4.1) なる。このことを図71に示す測定系により検証する。
即ち、ATE(自動試験装置)42内の主クロック発生器
43からのクロック信号がジッタ生成器44にて正弦波
外部ジッタにより位相変調されてジッタが付加され、そ
のジッタが付加されたクロックは可変分周器50でN分
の1に分周され、その分周出力が被測定信号としてデジ
タルオシロスコープ45に入力され、主クロック発生器
43からのクロック信号が分周器50でM分の1に分周
されてトリガ信号としてデジタルオシロスコープ45へ
供給される。デジタルオシロスコープ45でピークジッ
タJPPとRMSジッタJRMSを測定し、これらの測定結果を
図72、図73にそれぞれ示す。これら図72、図73
において横軸は分周数Nを表わし、縦軸はジッタの値を
表わし、Δは測定値を表わし、点線は1/N曲線であ
る。ピークジッタもRMSジッタも共にNを変化させた
時の測定値が1/Nの曲線とほぼ一致しており、式 (4.
1) が成立つことが検証された。
また図74に示すように、主クロック発生器43より
のクロック信号にジッタ生成器44で正弦波fsine又は
帯域制限されたランダム雑音bwrandによりジッタを付
加し、そのジッタが付加されたクロック信号を可変分周
器41で分周し、Δφ評価器46で位相雑音波形Δφ
(t)を求めてピークジッタとRMSジッタとを評価した。Δ
φ評価器46は例えば図32中のアナログデジタル変換
器ADC、解析信号変換器11、瞬時位相推定器12、リ
ニア位相除去器13、ピークツウピーク検出器14、自
乗平均検出器15からなる。この場合の分周数Nを変化
して、求めたピークジッタ、RMSジッタをそれぞれ図7
5、図76に示す。これら図において、○印はΔφ評価
器46で求めた値であり、△印はゼロクロス法で求めた
値であり、図75中の点線は1/N曲線である。これら
図75、図76より、分周器41とΔφ(t)法を組合せ
ることにより精度よくジッタを測定できることが理解さ
れる。
つまり図32において被試験PLL回路17よりのクロ
ック信号x(t)を分周器41でN分の1に周波数分周
し、その分周されたクロック信号をデジタル信号に変換
し、更にこれをHilbert変換対生成器11で複素数の解
析信号に変換し、その解析信号の瞬時位相を求め、その
瞬時位相からリニア成分を除去して位相雑音波形Δφ
(t)を求め、このΔφ(t)のピークツウピーク値を検出
し、その値を乗算器47でN倍することによりクロック
信号x(t)のピークジッタを求めることができ、また
Δφ(t)を自乗平均して、その値を乗算器48でN倍す
ることによりクロック信号x(t)のRMSジッタを求める
ことができる。
この場合クロック信号x(t)の周波数に応じて、ア
ナログデジタル変換器ADCが動作可能なように分周器4
1の分周数Nを選定することにより、スケーラブルな測
定が可能となる。
図40aに示す実施例においても、点線で示すように
被試験PLL回路17よりのクロック信号を可変分周器4
1でN分の1に分周し、その出力をミキサで正弦波信
号、余弦波信号とそれぞれ乗算して解析信号を求めるよ
うにすることもできる。同様に図40bに示す実施例に
おいても被試験PLL回路17よりのクロック信号を可変
分周器41でN分の1に分周し、その出力にミキサで余
弦信号を乗算して低域通過フィルタへ供給するようにし
てもよい。
次にこの発明において、AD変換器をコンパレータに置
きかえた実施例について説明する。例えば図32、図6
8において、点線で示すようにアナログデジタル変換器
ADCの代りにコンパレータ51が用いられる。コンパレ
ータ51に一定周期のパルスを印可し、例えばそのパル
スの立ち上りエッジで基準アナログ量VR と入力された
クロック波形x(t)とが比較され、クロック波形x
(t)のレベルが基準アナログ量Vより大であれば、
例えば所定の高レベルを出力し、クロック波形x(t)
のレベルが基準アナログ量VR より小であれば、所定の
低レベルを出力する。
なお入力クロック波形x(t)が歪んでいて、クロッ
ク波形x(t)の基本波成分より、高調波成分の方が振
幅が大きくなる場合がある。このような点からコンパレ
ータ51の入力側にクロック波形x(t)の基本波成分
を取り出す低域通過(又は帯域通過)フィルタ52を設
けるとよい。このコンパレータ51の出力信号は解析信
号変換手段11へ入力され、アナログデジタル変換器AD
Cの出力信号と同様に処理され、入力アナログ波形x
(t)のジッタが求められる。
サイン波に近い VCO (Voltage Contoll Osclator) の
出力のジッタを、図32に示した測定装置でアナログデ
ジタル変換器ADCを用いた場合と、コンパレータ51を
用いた場合の測定結果を、ピークジッタについて図77
に、RMSジッタについて図78にそれぞれ示す。これら
の図において、黒丸はアナログデジタル変換器ADCを用
いた場合、白丸はコンパレータ51を用いた場合であ
り、横軸はアナログデジタル変換器ADCのビット数であ
る。
図77において、アナログデジタル変換器ADCを用
い、その2ビットの場合のピークジッタは0.9454、8ビ
ットの場合は0.9459であった。コンパレータ51を用い
た場合は0.9532であり、コンパレータ51を用いても、
アナログデジタル変換器ADCを用いた場合の測定結果に
対し、2桁の精度で一致し、この程度の精度での測定が
可能であることが理解される。RMSジッタも図78から
理解されるように、コンパレータ51を用いても、アナ
ログデジタル変換器ADCを用いて測定した場合と、2桁
は一致する精度が得られる。
アナログクロック波形x(t)として方形波に近いPPL
回路17の出力信号を分周器41で分周した出力のピー
クジッタとRMSジッタを同様に測定した結果を図79と
図80にそれぞれ示す。ピークジッタはコンパレータ5
1を用いた場合は0.3429であり、アナログデジタル変換
器ADCを用い、そのADCが2ビットの場合は0.3420、8ビ
ットの場合は0.3474となり、この場合もコンパレータ5
1を用いても、2桁の精度でピークジッタを測定できる
ことが理解される。同様にRMSジッタはコンパレータ5
1を用いた場合は0.0500であり、アナログデジタル変換
器ADCを用いそのADCが2ビットの場合は0.0505、8ビッ
トの場合は0.0510であり、コンパレータ51を用いても
2桁の精度でRMSジッタを測定できることが理解され
る。
コンパレータ51を用いる場合も、アナログクロック
波形x(t)を分周器41で分周してコンパレータ51
へ供給してもよい。また図40a中に点線で示すように
クロック波形x(t)に余弦波をミキサで乗算し、その
低域通過フィルタ出力をアナログデジタル変換する変換
器ADCの代りにコンパレータ51cを用い、クロック波
形x(t)に正弦波をミキサで乗算し、その低域通過フ
ィルタを出力をアナログデジタル変換する変換器ADCの
代りにコンパレータ51sを用いてもよい。この場合も
分周器41を用いる場合、用いない場合の何れにも適用
できる。更に図40b中に点線で示すように、クロック
波x(t)をミキサと低域通過フィルタにより低域周波
数帯に周波数変換した出力をアナログデジタル変換する
変換器ADCの代りにコンパレータ51を用いることもで
きる。この場合も分周器41を用いる場合、用いない場
合の何れにも適用できる。更に図67、図69に示す解
析信号変換器11への入力信号とし、これら図中に点線
で示すようにアナログデジタル変換器ADCの代りにコン
パレータ51を用い、コンパレータ51の出力を解析信
号変換器11へ供給してもよい。これらの場合もコンパ
レータ51へはクロック波形x(t)を分周器41で分
周して供給してもよい。
以上説明したように、この発明によるクロックのジッ
タ測定方法は,解析信号変換手段11を用いてクロック
波形 xc(t)を複素数の解析信号に変換し,瞬時位相の変
動項Δφ(t)を推定するという信号処理から成ってお
り、次の特徴を持つ。
(i) Δφ(t)法はトリガ信号を必要としない。(ii)
Δφ(t)から,ピークジッタとRMSジッタを同時に推定で
きる。(iii) Δφ(t)を用いて推定したピークジッタ値
は,従来のゼロクロス法の推定値と互換性を持つ。(iv)
Δφ(t)を用いて推定したRMSジッタ値は,従来のゼロ
クロス法の推定値と互換性を持つ。
(v) 従来スペクトラムアナライザによるジッタ測定
においては周波数を掃引させ、しかも分解能を上げるた
めにはゆっく掃引させる必要があり、測定に5〜10分
程度も時間がかかった。しかし、この発明によれば、例
えばクロック信号x(t)の周波数が10MHz で、測定
に1000周期を必要としたとしても測定時間は100ミリ秒
に過ぎず、VLSI試験に割当られた時間で測定することが
できる。(vi)クロック信号x(t)の周波数が高かい場
合はクロック信号x(t)をN分周してΔφ評価器へ供
給することにより、ジッタ測定が可能であり、特にクロ
ック信号x(t)の周波数が異なっても、分周器41の
分周数Nを変更することによりスケーラブルな測定が可
能である。
(vii)図70に示す例では分周クロック信号Qの立ち
上り、立ち下りは、クロック信号Tの立ち上りエッジの
みで決るため、分周器41を用いる場合に分周数Nを2
W(Wは1以上の整数)とすることにより、クロック信
号x(t)の立ち上りエッジ又は立ち下りエッジのみの
ジッタを測定することができる。
(viii)コンパレータ51を用いる場合は、高速のコン
パレータを高速のアナログデジタル変換器ADCより容易
に実現でき、しかも、一般の自動検査装置 (ATE) には
高速のコンパレータが標準で装備されているから、クロ
ック波形x(t)に高速になっても、ATEに設けられてい
るコンパレータにクロック波形x(t)を供給し、その
コンパレータの出力を解析信号変換器11へ供給すれば
よい。
先に図81aを参照して述べたように従来のゼロクロ
ス法やタイムインターバル法は、ゼロクロス点間の相対
的ゆらぎを検出するものである。Δφ(t)法を利用し
て、従来のゼロクロス法で得られたピークジッタJpp
互換性をもつピークジッタJPPを求めることができる。
例えば図82に示すように解析信号変換手段11、瞬時
位相推定器12及びリニア位相除去器13よりなる位相
雑音検出手段61により検出された位相雑音波形Δφ
(t)はゼロクロスサンプラ62へ入力され、解析信号z
c(t)の実数部xc(t)のゼロクロス点に最も近いタイミン
グでサンプリングされる。つまり解析信号の実数部 x
c(t)の波形が図83aに示され、その立上り(又は立下
り)のゼロクロス点に最も近いサンプル点(演算処理時
点)がゼロクロス点検出部63で検出される。図83a
に検出したゼロクロス点に最も近い点を○印で示す。こ
の点を近似ゼロクロス点と呼ぶ。この近似ゼロクロス点
における位相雑音波形Δφ(t)が、図83bの○印で示
すように、ゼロクロスサンプラ62で取出される。この
取出された各値はジッタがない解析信号の実数部xc(t)
の理想タイミング(ゼロクロス点)からのずれ量があ
る。このΔφ(t)の各サンプル値についてその直前のサ
ンプル値との差を求めればゼロクロス間のゆらぎ、つま
りピークジッタJppとなる。図83b中のΔφ(t)のn
番目のサンプル値Δφと(n+1)番目のサンプル値
Δφn+1とよりJpp=Δφn+1−Δφnとして求まる。
図82に示すように差分回路64においてゼロクロス
サンプラ62からの各サンプル値について順次その直前
のサンプル値との差を求めてピークジッタJppが得られ
る。得られたピークジッタJPPの系列はピークツウピー
ク検出器14で最大値と最小値との差が検出され、また
自乗平均検出器15で自乗平均値が演算される。つまり
差分回路64でゼロクロスサンプラ64からのサンプル
位相雑音波形の差分波形が計算され、差分位相雑音波形
が検出器14,15へ供給される。
ゼロクロス点検出部63における近似ゼロクロス点の
検出法を述べる。入力される実数部 xc(t)の波形の最大
値を100%レベル、最小値を0%レベルとし、ゼロク
ロスのレベルとして、前記最大値と最小値の50%レベ
ルV(50%)を算出する。xc(t)の各隣り合うサンプ
ル値と50%レベルV(50%)との差 (xc(j-1)−V
(50%)), (xc)−V (50%)) を求め、更にこれらの積 (xc(j-1)−V (50%)) × (xc(j)−V (50%)) を計算する。xc(t)が50%レベル、つまりゼロレベル
を横切る時は、そのサンプル値xc(j-1), xc(j)が負から
正、又は正から負となるから、前記積が負となった時
は、xc(t)がゼロレベルを横切ったことになり、その時
点におけるサンプル値xc(j-1),xc(j)の絶対値の小さい
方の時刻j-1又はjが近似ゼロクロス点として求められ
る。
図84に示す従来のタイムインターバル解析装置を用
いてジッタ測定し、図82に示した装置を用いて図85
に示すように同様にジッタを測定した。図84におい
て、信号源65からの正弦波信号は分周器66で20の
1に周波数分周されたクロック信号とされ、そのクロッ
ク信号に対しジッタ生成器44で外部からの正弦波信号
により位相変調されてジッタが付加され、そのジッタが
付加されたクロック信号のジッタをタイムインターバル
解析装置67により測定した。図85では図84に示し
たと同様にしてジッタが付加されたクロック信号が作ら
れ、そのクロック信号はAD変換器68によりデジタル
信号に変換されて図82に示したジッタ測定器69によ
りジッタの測定を行った。これらの実験条件は全く同一
とした。
これらの実験結果を図86及び図87に示す。これら
の図において横軸はジッタ生成器44における位相変調
指数J0である。図86は測定したジッタのピークツウピ
ーク(最大値と最小値の差)を示し、◇印はタイムイン
ターバル解析装置67を用いた値を示し、○印はΔφ法
ジッタ測定装置69を用いた値を示す。両測定値がよく
一致していることが理解される。図87は測定したジッ
タの自乗平均値を示したものであり、◇印はタイムイン
ターバル解析装置67を用いた値を示し、○印はΔφ法
ジッタ測定装置69を用いた値を示す。この場合は両測
定値が全く一致していると云える。つまりこの発明の装
置によれば従来法(ゼロクロス法)により求めた値と同
一の値となり、従来法により求めた測定値による評価
と、同様に評価でき、つまり従来法と互換性がある測定
値が得られる。
しかもこのような結果が得られるに必要としたゼロク
ロスサンプル数はタイムインターバル解析装置67によ
る場合は何れも5000であったが、この発明のΔφ法
ジッタ測定装置69による場合は何れも3179であ
り、従来法よりも少ない数であり、それだけこの発明装
置69によれば高速に測定することができる。
また先に図83bを参照して説明したように位相雑音
波形Δφ(t)を近似ゼロクロス点で取出したサンプル値
は各理想タイミングに対するずれ量、つまり従来の位相
検出方式で測定したRMSジッタJRMSと一致しており、こ
のΔφ法ジッタ測定装置は従来の位相検出方式とも互換
性がある。この点から、図88に示すように位相雑音検
出手段61よりの位相雑音波形Δφ(t)からゼロクロス
点と対応するサンプルをゼログロスサンプラ63により
取出して、サンプル位相雑音波形として検出器14,1
5へ供給するようにする。ただし、先に図32に示した
Δφ(t)法ジッタ測定装置について説明したように、ゼ
ロクロスサンプラ62を設けられてもRMSジッタJRMS
測定できるから図88に示すようにスイッチ71により
切換えて、位相雑音波形Δφ(t)を、ゼロクロスサンプ
ラ62を介して又は介することなく検出器14,15へ
供給できるように構成してもよい。なお、ゼロクロスサ
ンプラ62を用いた場合と、用いない場合の同一条件で
ジッタ測定を行い、その時のピークツウピーク検出器1
4の検出値と自乗平均検出器15の演算結果とを図89
及び図90にそれぞれ示す。これらの図において横軸は
ジッタ生成器44における位相変調指数J0を示し、Δは
ゼロクロスサンプラ62を用いた場合、▽はゼロクロス
サンプラ62を用いない場合であり、図80はピークツ
ウピーク検出器14の検出値を、図90は自乗平均検出
器15の演算値をそれぞれ示す。これら図よりゼロクロ
スサンプラ62を用いても用いなくても同様の結果が得
られることが理解される。
次のこのΔφ(t)法によりサイクル・ツウ・サイクル
ジッタJccを測定する装置構成を図91を参照して説明
する。サイクル・ツウ・サイクルジッタJccは、隣り合
うクロックサイクルのジッタ変動、つまり第(N−1)
期間に対する第N期間の変動である。従って図91中の
差分回路64から得られた第(N−1)期間のピークジ
ッタJpp(N-1)(ゼロクロス間の相対的ゆらぎ)に対し、
次に得られた第N期間のピークジッタJpp(N)を差分回路
72により差し引いた値Jpp(N)−Jpp(N-1)を順次求め
ればサイクル・ツウ・サイクルジッタJccが求まる。つ
まり差分回路72は差分回路64の出力に対し、差分波
形を計算して第2差分位相雑音波形として検出器14,
15へ供給される。Jcc の測定結果の例を図92に示
す。図82に示した装置の差分回路64の出力側に差分
回路72を接続してサイクル・ツウ・サイクルジッタを
測定できるようにしてもよい。
従来のジッタ測定方法はヒストグラム測定に基づいて
いるが、この発明のΔφ(t)法においても測定したジッ
タのヒストグラムを作成することができる。従来のタイ
ムインターバル解析装置により測定したサイン波ジッタ
のヒストグラムを図93に示す。横軸はジッタJppの大
きさを表わす。同一サイン波ジッタを図82に示したΔ
φ(t)法によるジッタ測定装置により測定したジッタの
ヒストグラムをヒストグラム作成器73により求めた結
果を図94に示す。両図ともサイン波ジッタのヒストグ
ラムの形状を示していることが理解される。
更に図32に示した位相雑音検出手段61により得ら
れた位相雑音波形Δφ(t)のヒストグラムをヒストグラ
ム作成器73で作成した例を図95に示す。また図91
に示したΔφ(t)法を用いたジッタ測定装置によりサイ
クル・ツウ・サイクルジッタJccを測定し、そのJccのヒ
ストグラムをヒストグラム作成器73により作成した例
を図96に示す。このようにこの発明のΔφ(t)法を用
いたジッタ測定装置により各種のジッタを測定でき、か
つこれらのジッタのヒストグラムを作成することもでき
る。従来のジッタ測定装置により求めたジッタのヒスト
グラムに基づくジッタの評価を同様に行うことが可能で
ある。
サイン波ジッタのみならず、ランダムジッタの測定に
もこの発明は有効である。このことを測定したジッタの
ヒストグラムを示すことにより検証する。マイクロコン
ピュータのクロック信号のランダムジッタのヒストグラ
ムを従来のタイムインターバル解析装置により測定した
結果を図97に示す。同一のクロック信号のランダムジ
ッタを図82に示したΔφ(t)法によるジッタ測定装置
を用いて測定し、そのヒストグラムを作成した結果を図
98に示す。これらの図は何れもランダム信号のヒスト
グラムを示していることが理解される。
入力信号の包絡線が変化し、振幅変調(AM)がかか
った状態の場合は、このAMの側帯波と、ジッタによる
位相変調の側帯波とが区別できず、ジッタの測定結果が
実際の値より大きくなることがある。このような点から
図82においては、位相雑音検出手段61の入力側にク
リッパ74が挿入され、入力信号からAM(振幅変調)
成分を取除き、ジッタに対応するPM(位相変調)成分
を残して位相雑音検出手段61に入力するようにした場
合である。クリッパ74においては、アナログ信号、デ
ジタル信号の何れでも、入力信号の値(大きさ)を定数
倍(増幅)し、その定数倍された信号について予め決め
た第1しきい値Vth1 より大きい信号値は第1しきい値
th1 と置きかえ、予め決めた第2しきい値Vth2(<
th1)より小さい信号値は第2しきい値Vth2 と置き
かえることが行われる。このようにして、時間波形にお
いて包絡線の変動がない一定振幅の入力信号とされ、正
確にジッタを測定することができる。
図82の実施例では差分回路64において、差分をと
る二つのサンプルの間隔(タイムインターバル)T
inと、次に差分をとるべき二つの時刻位置(演算時刻)
を決める移動ステップTsを入力して、これらの値Tin, T
sにより各種の差分をとることを可能とした場合であ
る。図99aは解析信号 zc(t)の実数部 xc(t)の波形
と、その近似ゼロクロス点(○印)を示す。この位相雑
音波形Δφ(t)を図99bに示し、その近似ゼロクロス
点のサンプル値を○印で示す。この例ではΔφ(t)は正
弦波状であり、つまり理想タイミングからのずれが正弦
波状に変化するサイン波ジッタの場合である。この図で
はサイン波ジッタの1周期に、34個のΔφ(t)ゼロク
ロスサンルが存在する。図99は移動ステップTsが17
サンプル点、差分間隔Tinが17サンプル点の場合で、
演算時刻jのΔφ(t)のゼロクロスサンプル値Δφ(j)
と、j+Tinの時刻のゼロクロスサンプルΔφ(j+Tin)
とから差分値Δφ(j+Tin)−Δφ(j)が演算される。
次に時刻(j+Tin)のサンプル値Δφ(j+Tin)と、そのT
in後のサンプル値Δφ(j+2Tin)との差Δφ(j+2Tin)−
Δφ(j+Tin)が求められる。従来のタイムインターバル
解析装置などではこの例のように演算時刻から差分時刻
Tin経過後の時刻が次の演算時刻となり、つまり移動ス
テップTsをTinにより小さくすることができなかった。
この発明では移動ステップTsを差分間隔Tinより、Ts
<Tinとすることができる。つまり図100に示すよう
に、図100aのゼロサンプル時刻系列において、時刻
jから動作を開始した場合に、図100bに示すよう
に、時刻jから移動ステップTsごとの時刻j、j+Ts, j
+2Ts,…でΔφ(t)の各サンプルΔφ(j),Δφ(j+
Ts),Δφ(j+2Ts)…を取出し、第1サンプル系列とし
てバッファメモリに格納し、また、時刻j,j+Ts,j+
2Ts,…に対し、差分間隔Tinだけ遅れた時刻j+Tin,j
+Ts+Tin,j+2Ts+Tin,…で図100cに示すように
Δφ(t)の各サンプルΔφ (j+Tin),Δφ (j+Ts
Tin),Δφ (j+2Ts+Tin),…を取出して第2サンプル
系列をバッファメモリに格納し、図100dに示すよう
にこれら第1サンプル系列と第2サンプル系列の同一順
番のものについて第2サンプル系列のサンプル値から第
1サンプル系列のサンプル値を差しひくことにより、Ts
<Tinの条件で差分出力を得ることができる。
図101は図99に示した解析信号実数部 xc(t)の波
形と位相雑音波形Δφ(t)と、ゼロクロス点とが同一で
あるが、演算移動ステップTsを1ゼロクロス点とし差分
間隔Tinを17ゼロクロス点とした場合の図である。こ
の場合は図101cに示すように各ゼロクロス点ごと
に、差分間隔Tin(17ゼロクロス点)におけるΔφ(t)
の差分、例えばJP(j)=Δφ(j+Tin)−Δφ(j)が得ら
れる。
Δφ(t)の変動を明確に得るにはTinをある程度大きく
する必要があるが、図99に示した従来方式ではTs≧T
inとなり、Tsも大きくなり、同一時間(データ量)から
得られる差分値の数が少なく、分解能が悪くかつピーク
値や平均値が正確な値にならない。
従って、図99に示した差分により得られるピークジ
ッタJpp(t)は得られる差分値の数が少なく、図102a
に示すようになり、そのピークツウピーク値は1883
ps、自乗平均値は638psとなった。しかし同一条件に
ついて図101に示した差分により得られるピークジッ
タJpp(t)は得られる差分値の数が多く、かつ短かい間隔
で得られるため、図102bに示すようになりそのピー
クツウピーク値は1940ps、自乗平均値は650ps
となり、図99の従来の場合より高分解能となり、正確
なジッタ値が得られる。
通常のAD変換器は図103aに示すように、低域通
過フィルタ76により、AD変換器77のサンプリング
周波数の2分の1以上の周波数成分を入力信号から除し
てAD変換器77へ供給している。AD変換器77とし
ては入力信号の周波数の2倍以上のサンプリング周波数
でアナログ−デジナル変換を行う必要がある。しかしこ
の発明装置においては入力信号周波数よりも低い周波数
でサンプリングしてデジタル信号に変換してもよい。こ
のためには例えば図103bに示すように入力信号は帯
域通過又は低域通過フィルタ78により高周波成分を除
去し、ダイオードからなるサンプリングブリッジ回路7
9において、端子81a,81b間に与えられる入力信
号の周波数よりも低い周波数でサンプリングされ、これ
により正確に得られたサンプリング値が、そのサンプリ
ングごとにAD変換器81でデジタル信号に変換され
る。例えば周波数が10.025MHzのサイン波信号を20kHz
で位相変調した信号を用いて実験した。この入力信号の
周波数よりも高い40.0MHzの周波数でサンプリングした
サンプル値系列のなす波形は図104aに示すようにな
り、そのスペクトルは図105aに示すように10.025MH
zの搬送波成分の大きなピークと上、下に側帯波(変調
成分)のピークが観測された。一方、図103bの構成
で同一実験信号をその搬送波周波数より2桁小さい10
0kHzの周波数でアンダーサンプリングしたサンプル値
系列は図104bに示すようになった。これを図104
a中にも○印で示した。このアンダーサンプリングのサ
ンプル値系列のスペクトルは図105bに示すように2
5kHzの搬送波成分のピークと、25kHz±20kHzの変
調成分(上、下の側帯波)の各ピークとが観測された。
従って、このようにアンダーサンプリングAD変換器を
利用しても、この発明装置によりジッタを測定すること
ができることが理解される。
図82、図88、図91に示した各実施例において、
解析信号変換手段11としては、図40a、図40b、
図67、図69に示した各種のものを使用することがで
きる。またこれらにおいてデジタル信号に変換するAD
変換器を用いる場合に限らず、そのAD変換器の代りに
コンパレータを用いてもよい。つまり一般には被測定入
力信号はAD変換器によりデジタル信号に変換されて、
又はコンパレータにより2値化されて解析信号変換手段
11に入力される。ただ図40bに示した解析信号変換
手段には被測定入力信号にデジタル化されることなく入
力される。更に位相雑音検出手段61の入力、つまり解
析信号変換手段11の入力としては入力信号(被ジッタ
測定信号)を周波数分周器で分周した信号、又は周波数
変換器で周波数変換した信号であってもよい。
上述では主としてクロック信号のジッタ測定について
述べたが、通信に用いられるデータ信号、テレビジョン
信号のような繰返し映像信号など、各種の信号のジッタ
の測定にもこの発明は適用できる。
以上、この発明を例示の好ましい実施例について記載
したが、この発明の精神及び範囲から逸脱することなし
に、上述した実施例に関して種々の変形、変更及び改良
がなし得ることはこの分野の技術者には明らかであろ
う。従って、この発明は図示し、上述した実施例に限定
されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定
められるこの発明の範囲内に入る全てのそのような変
形、変更及び改良を包含するものである。
なお、上記した文献c1〜c18は下記の通りであ
る。
[c1]: Alan V. Oppenheim, Alan S. Willsky and Ian
T. Young, Signals and Systems, Prentice-Hall, In
c., 1983. [c2]: Athanasios Papoulis, ″Analysis for Analog a
nd Digital Signals″, Gendai Kogakusha, 1982. [c3]: Stefan L. Hahn, Hilbert Transforms in Signal
Processing, Artrch House Inc., 1996. [c4]: J. Dugundji, ″Envelopes and Pre-Envelopes o
f Real Waveforms,″ IRE Trans. Inform. Theory, vo
l. IT-4, pp. 53-57, 1958. [c5]: Alan V. Oppenheim and Ronald W. Schafer, Dis
crete-Time Signal Processing, Prentice-Hall, Inc.,
1989. [c6]: Tristan Needham, Visual Complex Analysis, Ox
ford University Press, Inc., 1997. [c7]: Donald G. Childers, David P. Skinner and Rob
ert C. Kemerait, ″The Cepstrum: A Guide to Proces
sing,″ Proc. IEEE, vol. 65, pp. 1428-1442, 1977. [c8]: Jose M. Tribolet, ″A New Phase Unwrapping A
lgorithm,″ IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal Pr
ocessing, vol. ASSP-25, pp. 170-177, 1977. [c9]: Kuno P. Zimmermann, ″On Frequency-Domain an
d Time-Domain Phase Unwrapping,″ Proc. IEEE, vol.
75, pp. 519-520, 1987. [c10]: Julius S. Bendat and Allan G. Piersol, Rand
om Data:Analysis and Measurement Procedures, 2nd e
d., John Wiley & Sons, Inc., 1986. [c11]: Shoichiro Nakamura, Applied Numerical Metho
ds with Software, Prentice-Hall, Inc., 1991. [c12]: David Chu, ″Phase Digitizing Sharpens Timi
ng Measurements,″ IEEE Spectrum, pp. 28-32, 1988. [c13]: Lee D. Cosart, Luiz Peregrino and Atul Tamb
e, ″Time Domain Analysis and Its Practical Applic
ation to the Measurement of Phase Noise and Jitte
r,″IEEE Trans. Instrum.Meas., vol. 46, pp. 1016-1
019, 1997. [c14]: Jacques Rutman, ″Characterization of Phase
and Frequency Instabilities in Precision Frequenc
y Sources: Fifteen Years of Progress,″Proc. IEEE,
vol. 66, pp. 1048-1075, 1977. [c15]: Kamilo Feher, Telecommunications Measuremen
ts, Analysis, and Instrumentation, Prentice-Hall,
Inc.,1987. [c16]: Michel C. Jeruchim, Philip Balaban and K. S
am Shanmugan,Simulation of Communication Systems,
Plenum Press, 1992. [c17]: E. Oran Brigham, The Fast Fourier Transfor
m, Prentice-Hall, Inc., 1974. [c18]: Albert H. Nuttall, ″Some Windows with Very
Good Sidelobe Behavior″, IEEE Trans. Acoust., Sp
eech, Signal Processing,vol. ASSP-29, pp. 84-91, 1
981.
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 隆弘 東京都練馬区旭町一丁目32番1号 株式 会社アドバンテスト内 (72)発明者 石田 雅裕 東京都練馬区旭町一丁目32番1号 株式 会社アドバンテスト内 (72)発明者 古川 靖夫 東京都練馬区旭町一丁目32番1号 株式 会社アドバンテスト内 (72)発明者 渡邊 敏文 東京都練馬区旭町一丁目32番1号 株式 会社アドバンテスト内 (56)参考文献 特開 昭61−19260(JP,A) 特開 平8−262083(JP,A) 特開 平2−171663(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 29/02 G01R 31/00

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定信号を複素数の解析信号に変換す
    る解析信号変換手段と、 上記解析信号の瞬時位相を求める瞬時位相推定手段と、 上記瞬時位相からリニア位相を推定し、 上記瞬時位相から上記推定したリニア位相を除去して位
    相雑音波形を得るリニア位相除去手段と、 上記位相雑音波形が供給され、その位相雑音波形から上
    記被測定信号のジッタを求めるジッタ検出手段と、 よりなるジッタ測定装置。
  2. 【請求項2】 上記位相雑音波形を入力とし、上記解析
    信号の実数部のゼロクロス点に近いタイミングで上記位
    相雑音波形をサンプリングしてサンプル位相雑音波形を
    出力するゼロクロスサンプラを備えることを特徴とする
    請求項1記載のジッタ測定装置。
  3. 【請求項3】 上記サンプル位相雑音波形を入力してそ
    の差分波形を計算して第1差分位相雑音波形を出力して
    上記ジッタ検出手段へ供給する第1差分回路を備えるこ
    とを特徴とする請求項2記載のジッタ測定装置。
  4. 【請求項4】 上記サンプル位相雑音波形を入力してそ
    の差分波形を計算して第1差分位相雑音波形を出力する
    第1差分回路と、上記第1差分位相雑音波形を入力し
    て、その差分波形を計算して第2差分位相雑音波形を出
    力して上記ジッタ検出手段へ供給する第2差分回路を備
    えることを特徴とする請求項2記載のジッタ測定装置。
  5. 【請求項5】 上記被測定信号を基準アナログ量と比較
    して2値化して上記解析信号変換手段へ供給するコンパ
    レータが設けられていることを特徴とする請求項1乃至
    4の何れかに記載のジッタ測定装置。
  6. 【請求項6】 上記解析信号変換手段は、上記被測定信
    号を帯域通過フィルタへ供給し、その出力をヒルベルト
    変換器によりヒルベルト変換して上記解析信号の虚数部
    を求め、上記帯域通過フィルタの出力を上記解析信号の
    実数部とする手段であることを特徴とする請求項1乃至
    4の何れかに記載のジッタ測定装置。
  7. 【請求項7】 上記解析信号変換手段は、上記被測定信
    号を周波数領域の信号に変換する周波数領域変換器と、 その周波数領域変換器の出力より負の周波数成分を遮断
    すると共に上記被測定信号の周波数付近の成分のみを取
    り出す帯域通過処理器と、 上記帯域通過処理器の出力を時間領域の信号に逆変換す
    る時間領域変換器とよりなることを特徴とする請求項1
    乃至4の何れかに記載のジッタ測定装置。
  8. 【請求項8】 上記被測定信号を蓄積するバッファメモ
    リを備え、 上記解析信号変換手段は、 上記バッファメモリより被測定信号を前回取出した分と
    一部重複させながら順次取出す手段と、 その取出された各部分被測定信号に窓関数を乗算して上
    記周波数領域変換器へ供給する手段と、 上記時間領域に変換された信号に上記窓関数の逆数を乗
    じて上記解析信号を得る手段とを備えることを特徴とす
    る請求項7記載のジッタ測定装置。
  9. 【請求項9】 上記解析信号変換手段は、 上記被測定信号に正弦波信号を乗算する第1周波数混合
    器と、 上記被測定信号に、上記正弦波信号と周波数が等しい余
    弦波信号を乗算する第2周波数混合器と、 上記第1周波数混合器の出力が供給される第1低域通過
    フィルタと、 上記第2周波数混合器の出力が供給される第2低域通過
    フィルタと、 上記第1低域通過フィルタの出力をデジタル信号に変換
    する第1AD変換器と、 上記第2低域通過フィルタの出力をデジタル信号に変換
    する第2AD変換器とを備え、上記第1AD変換器の出力信
    号と上記第2AD変換器の出力信号とにより上記解析信号
    が構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか
    に記載のジッタ測定装置。
  10. 【請求項10】 上記解析信号変換手段は、 上記被測定信号に正弦波信号を乗算する第1周波数混合
    器と、 上記被測定信号に、上記正弦波信号と周波数が等しい余
    弦波信号を乗算する第2周波数混合器と、 上記第1周波数混合器の出力が供給される第1低域通過
    フィルタと、 上記第2周波数混合器の出力が供給される第2低域通過
    フィルタと、 上記第1低域通過フィルタの出力を基準アナログ量と比
    較する第1コンパレータと、 上記第2低域通過フィルタの出力を基準アナログ量と比
    較する第2コンパレータとよりなり、上記第1コンパレ
    ータの出力信号と上記第2コンパレータの出力信号とに
    より上記解析信号を構成することを特徴とする請求項1
    乃至4記載のジッタ測定装置。
  11. 【請求項11】 上記ジッタ検出手段は供給された波形
    の最大値と最小値との差をジッタのピーク値として求め
    るピークツウピーク検出手段であることを特徴とする請
    求項1乃至4の何れかに記載のジッタ測定装置。
  12. 【請求項12】 上記ジッタ検出手段は供給された波形
    を自乗平均してジッタの自乗平均値を求める自乗平均検
    出手段であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか
    に記載のジッタ測定装置。
  13. 【請求項13】 上記ジッタ検出手段は供給された波形
    のヒストグラムを求めるヒストグラム推定手段であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のジッタ
    測定装置。
  14. 【請求項14】 上記被測定信号を一定振幅の信号とし
    て上記解析信号変換手段へ供給するクリッパを備えるこ
    とを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のジッタ
    測定装置。
  15. 【請求項15】 上記リニア位相除去手段は入力された
    瞬時位相を連続位相に変換する連続位相変換手段と、そ
    の変換された連続位相についてリニア位相を推定するリ
    ニア位相推定手段と、その推定されたリニア位相を、上
    記連続位相から差し引いて上記位相雑音波形を得る手段
    とよりなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに
    記載のジッタ測定装置。
  16. 【請求項16】 被測定信号を複素数の解析信号に変換
    する解析信号変換過程と、 上記解析信号の瞬時位相を求める瞬時位相推定過程と、 上記瞬時位相からリニア位相を推定し、 上記瞬時位相から上記推定したリニア位相を除去して位
    相雑音波形を得るリニア位相除去過程と、 上記位相雑音波形から上記被測定信号のジッタを求める
    過程と、 を有するジッタ測定方法。
  17. 【請求項17】 上記解析信号の実数部のゼロクロス点
    に近い上記位相雑音波形をサンプリングしてサンプル位
    相雑音波形を求める過程と、 上記サンプル位相雑音波形の差分波形を計算して第1差
    分位相雑音波形を求める過程と、 を有する請求項16記載のジッタ測定方法。
  18. 【請求項18】 上記第1差分位相雑音波形の差分波形
    を計算して第2差分位相雑音波形を求める過程を有する
    ことを特徴とする請求項17記載のジッタ測定方法。
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