JP3446150B2 - ハードコーティング方法 - Google Patents

ハードコーティング方法

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JP3446150B2
JP3446150B2 JP18792494A JP18792494A JP3446150B2 JP 3446150 B2 JP3446150 B2 JP 3446150B2 JP 18792494 A JP18792494 A JP 18792494A JP 18792494 A JP18792494 A JP 18792494A JP 3446150 B2 JP3446150 B2 JP 3446150B2
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武嗣 貫田
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義仁 長田
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Tsukishima Kikai Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明なプラスチック素
材表面のハードコーティング方法に関わり、さらに詳細
には、透明なプラスチック素材の表面を硬い被膜で被覆
するためのプラズマ重合によるハードコーティング方法
に関わる。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】プラスチ
ック素材の表面は、一般に、その物性から耐擦傷性が硝
子に比して劣る。透明性の大きいプラスチック素材は、
一般に軽量であり、耐衝撃性が大きく、しかも、加工が
容易であるなどの種々の長所を有しており、これらの長
所を活用して眼鏡のレンズおよび時計のカバーグラスな
どとして硝子に代えて広く使用されている。しかしなが
ら、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂およびCR−
39樹脂(ジエチレングリコールビスアリルカーボネー
ト重合体 以下同様)などから得られた透明なプラスチ
ック素材は、その使用、特に光学上の使用に際しては、
透明性が大きいことが重視されることから、その表面に
傷が付き難いことが当然に要求され、そのための種々の
表面硬化法がある。
【0003】従来のプラスチック素材の表面硬化法の1
つとして、薬液をプラスチック素材の表面に付着させた
後に、加熱によるゲル化反応もしくは紫外線照射による
硬化反応によって硬化させて耐擦傷性の被膜を形成させ
る湿式法がある。この耐擦傷性被膜を形成させる材料と
して、通常は、シリコーン系化合物、メラミン系化合物
およびアクリル系化合物などのハードコート材が用いら
れている。
【0004】たとえば、眼鏡プラスチックレンズの表面
にハードコーティングする方法に、表面の硬度を増大さ
せるためのコロイダルシリカと特定の有機珪素化合物と
の混合物を塗布し、加熱処理によって硬化させて耐摩耗
性に優れているとともに可撓性、耐熱性、耐薬品性にも
優れているコーティング膜を得る方法(たとえば、特公
平4−55615号公報)に開示されている方法があ
る。しかしながら、このような方法で得られたコーティ
ング膜よりもさらに硬く耐擦傷性が大きいコーティング
膜の出現が、実用上、期待されている。
【0005】また、従来のプラスチック素材の表面硬化
法の他の1つとして、プラズマ重合法がある。プラズマ
重合法は、真空反応容器中において気体で存在するよう
な高い蒸気圧を有する有機化合物であれば、これらの有
機化合物のほとんど全ては真空反応容器中でプラズマ励
起させることによって重合せしめられて、ピンホールの
ような欠陥のない被膜が形成されることを利用するもの
である。プラズマ重合法は、たとえば、逆浸透膜、気体
分離膜および液体分離膜などのような分離膜の製造、分
光器などの光学エレメントの除湿性、屈折率および透過
率を改善するためのコーティング、ガスバリアー膜、金
属保護膜およびプラスチック材料などの表面保護、コン
タクトレンズなどの高分子材料の濡れ性および適合性の
改善、マイクロエレクトロニクス素子表面の絶縁保護膜
およびアモルファス膜を形成させるためのコーティン
グ、センサーの表面保護および分析効率改善のためのコ
ーティングならびに人工臓器の生体適合性を高めるため
のコーティングなどへの適用が試みられている。
【0006】真空中でのプラズマ重合法における反応
は、比較的低温での反応であり、プラスチックの耐用温
度よりも低い温度で被膜を形成させることができるとい
う利点がある。しかも、このプラズマ重合法における反
応は比較的低温で行われながら、電子温度が高いので、
化学反応では高温でしか起こらないような反応を行わせ
ることができるために、架橋度が高く、高い硬度を有す
る膜を形成させることができるという利点がある。
【0007】この利点を活かして、たとえば、モノシラ
ン(SiH4)ガスを用いて、耐摩耗性に優れたセラミック
ス多層膜を形成させている(和田 徹也,J.C.Rostaing
および H.Chevrel 日経ニューマテリアルス−NIKKEI
NEW MATERIALS−1992年10月26日 第50〜58頁 )。ま
た、テトラエトキシシランと酸素との混合ガスを用いて
商業的な単一ウエファー(半導体)の表面に、SiOx膜が
作られている(ウイリアム ジェイ.パトリック,ジェ
ラルディン コギン シュワルツ,ジョナサン ディー
チャップル−ソコール,ロイ カラザース およびカ
ート オルセン 「ジャーナル オブエレクトロケミカ
ル ソサイティ 第139巻,第9号,第2604〜2613頁(19
92年)」 William J. Patrick, Geraldine Cogin Schw
altz, Jonathan D. Chapple-Sokol, Roy Carruthers, a
nd Kurt Olsen “J. Electrochem. Soc., ”Vol. 139,
No,9,2604−2613,(1992))。さらに、ビニルトリ
メトキシシランを用いてプラズマ重合させて被膜を形成
させた後に、この被膜の表面を、酸素プラズマで処理す
ることによって、さらに硬度の高い被膜を形成させるこ
とも知られている(米国特許第4,137,365号明細書)。
【0008】しかしながら、これらのシラン類には、安
全性に問題があり、取扱いが容易でないものがある。ま
た、これらの従来技術においては、被コーティング素材
の温度を高くする方法があるが、この方法は、高温に加
熱することができないプラスチック素材をコーティング
する方法には適さない場合が多い。また、さらに、前記
の従来技術によって表面がコートされたプラスチック透
明体において、透明度、硬さおよび形成された被膜の密
着性などに優れ、特に、光学上の用途に適するプラスチ
ック透明体は得られていない。従って、高温に加熱する
ことができないプラスチック素材をコーティングするた
めに比較的低温で行われ、使用される原料が安全性に問
題がなく、取扱いが容易なものであり、かつ、光学上の
用途に適するように、透明性が高いことはいうまでもな
いが、硬くて密着性が大きく耐擦傷性が大きい被膜を形
成させることが望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段、作用】本発明者らは、従
来の技術における課題を解決し、プラズマ重合での温度
が比較的低く、取扱いの容易な原料を使用し、従来の被
膜よりも硬くて密着性が大きく耐擦傷性の大きい被膜を
形成させることができ、しかも、操作が簡単なプラスチ
ック素材表面のハードコーティング方法を開発すべく鋭
意研鑚を重ねた結果、次のような新知見が得られた。
【0010】すなわち、プラズマ重合によるハードコー
ティング方法の原料として、オルガノシランおよびオル
ガノシロキサンなどの有機珪素化合物の蒸気とともに酸
素ガスを併用することにより、透明なプラスチック素材
の表面に形成された被膜の硬さおよび密着性は向上せし
められることが、それぞれ、テーバー式摩耗試験による
摩耗処理の前後の被膜の表面のヘイズ値の測定および碁
盤目テープ法による測定によって実験的に確認された。
【0011】さらに、プラズマ重合によるハードコーテ
ィング方法の原料としてオルガノシランおよびオルガノ
シロキサンなどの有機珪素化合物の蒸気とともに酸素ガ
スを併用することにより、形成された被膜中の酸素、炭
素および珪素のそれぞれの含有率ならびに酸素および炭
素のそれぞれと珪素との原子比が、原料として有機珪素
化合物のみを使用した場合に比して大きく相違してい
る。たとえば、プラズマ重合によるハードコーティング
方法おいて、原料としてビニルトリメトキシシランとと
もに酸素を併用して透明なプラスチック素材の表面に形
成された被膜とビニルトリメトキシシランのみを原料と
して使用して透明なプラスチック素材の表面に形成され
た被膜とを、ESCA法(電子分光法 以下同様)によ
って分析して比較した。この分析結果を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】なお、表1において、試料No.1および試
料No.2は、それぞれ、プラズマ重合によるハードコー
ティング方法おいて、原料としてビニルトリメトキシシ
ラン蒸気とともに酸素ガスを併用して形成された被膜お
よび原料としてビニルトリメトキシシランのみを使用し
て形成された被膜を示す。また、ESCA法では水素の
分析はできないので、この結果では、酸素、炭素および
珪素のそれぞれの含有率のみが示されており、この三者
の含有率の合計が100アトム%(以下単に % と記
載することがある)となるように表示してある。
【0014】表1に示された結果によると、原料として
ビニルトリメトキシシランとともに酸素を併用したプラ
ズマ重合反応によって透明なプラスチック素材の表面に
形成された被膜は、原料としてビニルメトキシシランの
みを使用してプラズマ重合反応によって形成された被膜
と比較して、炭素含有率が減少せしめられ、反面、酸素
含有率および珪素含有率はいずれも増大せしめられ、か
つ、炭素の対珪素比率(炭素/珪素の原子比、以下 炭
素比率 と記すこともある)が減少せしめられているこ
とが判る。すなわち、ビニルトリメトキシシランのみを
原料として使用した場合(試料No.2)には、形成され
た被膜中の酸素含有率、炭素含有率および珪素含有率
は、それぞれ、41%、43%および16%となり、ま
た、酸素の対珪素比率および炭素の珪素比率は、それぞ
れ2.56および2.68であった。
【0015】他方、原料としてビニルトリメトキシシラ
ンとともに酸素を併用した場合(試料No.1)には、形
成された被膜中の酸素含有率、炭素含有率および珪素含
有率は、それぞれ、64%、11%および25%とな
り、また、酸素の対珪素比率および炭素の対珪素比率
は、それぞれ、2.56および0.44であった。このよ
うに、透明なプラスチック素材の表面のプラズマ重合に
よるハードコーティング方法において、原料としてオル
ガノシランまたはオルガノシロキサンとともに酸素を併
用した場合には、原料としてオルガノシランまたはオル
ガノシロキサンのみを使用した場合に比して、炭素含有
率は著しく減少せしめられ、珪素含有率は大きく増大せ
しめられ、その結果、この両者から算出された炭素比率
は著しく減少せしめられる。なお、他のオルガノシロキ
サンおよびオルガノシランとともに酸素を併用してプラ
ズマ重合させて形成させた被膜についても同様な傾向が
認められた。
【0016】さらに、オルガノシロキサンおよびオルガ
ノシランなどの有機珪素化合物とともに酸素を併用して
プラズマ重合させることによって、透明なプラスチック
素材の表面に形成された被膜は、炭素比率の減少に伴っ
てその硬さを増大せしめられる傾向があることが判明し
た。すなわち、原料としてオクタメチルシクロテトラシ
ロキサンのような有機珪素化合物と酸素とを併用したプ
ラズマ重合によって、透明なプラスチック素材の表面に
形成された被膜中の炭素比率と、形成された被膜の耐擦
傷性(硬さ)との関係を調べた。
【0017】耐擦傷性は、プラスチック素材の表面に形
成された被膜の外表面を、テーバー式摩耗試験機で処理
した後、処理された外表面のヘイズ値(Haze value)を
測定し、この値から処理前の外表面のヘイズ値を控除し
た差(%)をヘイズ値の変化とし、このヘイズ値の変化
で表わされている。この処理はASTM D1044−
56に準拠して、荷重500g、CS−10の摩耗輪を
60回転/分で100回転させて行った。また、被膜中
の炭素比率は、ESCA分析法で測定して得られた炭素
含有率および珪素含有率から算出した。
【0018】図1に、オクタメチルシクロテトラシロキ
サンと酸素とを併用したプラズマ重合によって形成させ
た被膜中の炭素比率とヘイズ値の変化との関係を示す。
図1は、ヘイズ値の変化が小さいほど、形成された被膜
が硬く、耐擦傷性が大きいことを示している。この結果
によれば、膜中の炭素比率が小さくなるに伴って、ヘイ
ズ値の変化が小さくなり、形成された被膜が硬く、耐擦
傷性が大きくなることを示している。さらに、他のオル
ガノシロキサンおよびオルガノシランと酸素とを併用し
てプラズマ重合させて形成させた被膜についても同様な
傾向があることが判った。
【0019】これらのことから、透明なプラスチック素
材表面のプラズマ重合によるハードコーティング方法に
おいて、その原料としてオルガノシロキサンおよびオル
ガノシランなどの有機珪素化合物とともに酸素を併用す
ることにより、透明なプラスチック素材表面に形成され
た被膜は硬くなり、耐擦傷性が向上せしめられるととも
に、この被膜中の酸素含有率および珪素含有率はいずれ
も増加せしめられ、炭素含有率は減少せしめられ、これ
によって炭素比率は著しく減少せしめられることと、か
つ、この炭素比率の減少に伴って形成された被膜は逐次
硬さを増し、耐擦傷性が向上せしめられる傾向があるこ
とが判る。
【0020】透明なプラスチックの表面をプラズマ重合
によってハードコーティングするに際して、原料とし
て、オルガノシロキサンおよびオルガノシランのような
有機珪素化合物とともに酸素を併用することによって、
透明なプラスチック素材の表面に形成された被膜が硬く
耐擦傷性が増大せしめられる一方で、炭素比率が減少せ
しめられ、かつ、炭素比率の減少に伴って形成された膜
の耐擦傷性が大きくなる傾向があるという事実から、こ
のようにしてプラスチック素材の表面に形成された被膜
が硬くなり、耐擦傷性が増大せしめられたのは、珪素と
酸素との結合が多く高度に架橋せしめられた重合生成物
によって形成されていることによるものであると推察さ
れる。
【0021】他方、米国特許第4,137,365号明細書で
は、ビニルトリメトキシシランのみを原料として使用し
てプラズマ重合によって形成された膜の表面を、酸素ガ
スのみを用いた酸素プラズマで処理しており、その結
果、処理された被膜の炭素、酸素、珪素および水素の含
有率がアトム%で“Table III”に示されている。この
“Table III”を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2に示された被膜中の炭素および珪素の
各含有率(アトム%)から算出された炭素比率は、酸素
プラズマ処理をしない場合には1.63、成膜後に酸素
プラズマ処理した場合には1.50であり、この成膜後
の酸素プラズマ処理によって、炭素比率は僅かに減少せ
しめられているに過ぎない。しかしながら、膜中の炭素
比率は、この表2から算出された成膜後に酸素プラズマ
で処理された場合では1.50に減少せしめられている
が、表1で示された有機珪素化合物と酸素とを併用した
プラズマ重合によって形成された場合における0.44
よりも大きい。
【0024】このことは、前記の図1に示されたような
傾向によれば、この成膜後の酸素プラズマ処理による被
膜の耐擦傷性は、オルガノシロキサンおよびオルガノシ
ランのような有機珪素化合物とともに酸素を併用したプ
ラズマ重合によって形成された被膜の耐擦傷性よりも小
さいものと推測される。また、事実、このことは本発明
者らによる実験によって確認されており、実用するには
十分な硬さの被膜でないものであることが判明してい
る。
【0025】さらに、プラスチック素材の表面を保護す
る被膜は、硬く耐擦傷性が大きくなければならないこと
は当然のことではあるが、形成された被膜のプラスチッ
ク素材表面への密着性が大きい程、好ましいことは云う
までもない。本発明者らは、プラスチック素材の表面
に、前記のような硬くて、耐擦傷性が大きい被膜を形成
させるに際して、この被膜のプラスチック素材表面への
密着性を向上させることについてさらに研鑚を続けて次
のような新知見が得られた。
【0026】すなわち、プラズマ重合時の圧力は安定し
てプラズマが生成される限りにおいて、特に制限はない
が、通常は、電子の運動とその他のイオン化された分子
もしくは中性の分子の運動が非平衡的な状態である低温
プラズマを利用し得ることが判った。この非平衡状態を
成立させる圧力の範囲は、約102Torr(1Torr=133.3
224Pa)以下の圧力であるとされているが、従来、プラ
ズマ重合では、一般に、数10Torrから10-1Torrの範
囲の圧力が採用されている。しかしながら、有機珪素化
合物としてオルガノシロキサンもしくはオルガノシラン
とともに酸素を併用し、このような従来使用されていた
圧力範囲でのプラズマ重合によって形成された被膜は、
プラスチック素材との密着性が不十分であることを知っ
た。このような問題を解決するために、本発明者らは鋭
意研究を重ねて、プラズマ重合時の圧力を1×10-4To
rr〜1×10-2Torrの範囲に制御することによってこの
密着性を向上せしめ得るとの新知見を得た。
【0027】プラズマ重合時の圧力を種々に変化させて
形成させた被膜のプラスチック素材への密着性のを調べ
た。すなわち、ポリカーボネート素材を使用し、オクタ
メチルトリシロキサンおよび酸素のそれぞれの供給速度
を10CCM(立方センチメートル(標準状態)/分以下
同様)および60CCM、高周波投入電力を50Wとし、
プラズマ重合時の圧力を種々に変更して素材表面に被膜
を形成させた。なお、被膜の厚さが2.5μとなるよう
にプラズマ重合の時間を調節した。被膜の密着性は、J
IS K5400の碁盤目テープ法に準拠して測定され
た。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】この実験の結果は、プラズマ重合時の圧力
を、1Torrおよび1×10-1Torrとした場合には、被膜
の密着性が悪く、被膜はプラスチック素材から完全に剥
離し、この圧力を1×10-2Torr以下に制御することに
より、被膜の密着性は向上せしめられ、1×10-3Torr
および1×10-4Torrに制御した場合には、特に大幅に
向上せしめられたことを示している。しかしながら、こ
の圧力を1×10-4Torrよりも低くするためには、その
圧力の低下に伴なって、このように減圧するための真空
排気装置を大型にしなければならなくなるので、実用に
は適さなくなる。従って、プラズマ重合時の圧力は、通
常は、1×10-2Torr以下、実用上、好ましくは、1×
10-4〜1×10-2Torrが好適であることが判明した。
【0030】プラズマ重合時の高周波投入電力を制御す
ることによって耐擦傷性が大きく、さらには、プラスチ
ック素材への密着性が良好な被膜を形成させることがで
きることが判明した。すなわち、高周波投入電力は、装
置の規模などの要因によって異なり、特定し得ないが、
たとえば、本実施例で用いられたような300リットル
程度の内容積の真空反応容器では、高周波投入電力を5
0Wから100Wまでの範囲内に制御すれば、形成され
た被膜のプラスチック素材への密着性が良好となるが、
その反面、被膜の耐擦傷性が低下する。また、高周波投
入電力を150Wから200Wまでの範囲内に制御すれ
ば、形成された被膜の耐擦傷性は向上せしめらるが、他
方で、プラスチック素材への密着性は低下せしめられ
る。
【0031】高周波投入電力を変化させてプラズマ重合
させて形成させた被膜の耐擦傷性およびプラスチック素
材への密着性を調べた。すなわち、ポリカーボネート素
材を使用し、オクタメチルトリシロキサンおよび酸素
を、それぞれ、供給速度を10CCMおよび60CCMとし、
プラズマ重合時の圧力を1×10-3Torrに制御して、高
周波投入電力を変化させて素材表面に被膜を形成させ
た。なお、被膜の厚さが3μとなるようにプラズマ重合
の時間を調整した。被膜の耐擦傷性は、形成された被膜
の表面に、0000番のスチールウールを1000gの
荷重下で10回往復させて、被膜表面を研磨して、傷の
程度を肉眼で観察した。被膜の素材への密着性は、前記
と同様にJIS K5400の碁盤目テープ法に準拠し
て測定された。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】この結果は、高周波投入電力が、50ワッ
ト(W)および100Wのそれぞれに制御された場合に
は、被膜のプラスチック素材への密着性は良好である
が、被膜の耐擦傷性が劣り、他方、高周波投入電力が、
150Wおよび200Wのそれぞれに制御された場合に
は、被膜の耐擦傷性は劣るが、被膜のプラスチック素材
への密着性が良好となることを示している。この結果か
ら、高周波投入電力は、実用するに十分な耐擦傷性を有
する被膜を形成させるには、150〜200Wのような
比較的高く実質的に制御されればよく、実用に一応堪え
得るような耐擦傷性および密着性の両者を兼備する被膜
を形成させるには、100〜150Wのような中庸に制
御されればよく、耐擦傷性および密着性の両者をともに
実用するに十分なものとするには、プラズマ重合の前期
において、50〜100W程度に比較的低く保持され、
プラズマ重合の後期には150〜200W程度に比較的
高く保持されればよいことが判る。
【0034】また、プラズマ重合において、酸素ととも
に使用される有機珪素化合物として、多くの有機珪素化
合物からオルガノシロキサンおよびオルガノシランが選
択された。
【0035】これらの新知見に基づいて、プラズマ重合
時の圧力を所定の圧力に制御し、かつ、プラズマ重合時
の高周波投入電力を制御することにより、耐擦傷性に優
れ、しかも、密着性の良好な被膜をプラスチック素材の
表面に形成させることができ、さらには使用される有機
珪素化合物を選択することにより、所望の耐擦傷性およ
び密着性を有する被膜を形成させることが可能となっ
た。
【0036】また、この密着性の増大は、図2で摸式的
に示されるように、プラスチック素材の表面と耐擦傷性
が大きい被膜との間に、この両者に対して親和性の大き
い層(以下 密着層 と記すこともある)を介在させる
ことにより可能であり、しかも、プラスチック素材、密
着層および耐擦傷性が大きい被膜のそれぞれの境界面で
あるべき箇所で化学組成および構造が断絶されてなく
て、明確な境界面はなく、連続的に変化せしめられるこ
とによって密着性はさらに増大されることを知った。本
発明者らは、このような新知見に基づいて本発明に到達
した。
【0037】すなわち、本発明は、透明なプラスチック
素材の表面のプラズマ重合によるハードコーティング方
法において、原料として少なくとも1種類のオルガノシ
ロキサンまたはオルガノシランの蒸気とともに酸素ガス
存在せしめ、投入電力を時間の経過に伴って連続的に
変化させるとともに、少なくとも1種類のオルガノシロ
キサンまたはオルガノシラン(両者を総称して以下 有
機珪素化合物 と記すこともある)の供給速度および酸
素の供給速度の両者を一定に保つか、該両者とも、また
は、該両者のうちのいずれか一方を時間の経過に伴って
連続的に変化させ、該透明なプラスチック素材の表面
擦傷性が大きい被膜および該プラスチック素材の表面
と該耐擦傷性が大きい被膜との間に密着性が大きい層を
形成させることを特徴とするハードコーティング方法で
ある。
【0038】本発明におけるハードコーティング方法に
おいて行われるプラズマ重合は低温プラズマ重合であ
り、それ自体公知の方法で行われる。すなわち、プラズ
マ重合させる装置(以下 プラズマ重合装置 と記す)
としては、装置内において有機珪素化合物蒸気および酸
素ガスをプラズマ励起させるような装置であればよく、
プラズマCVD(化学蒸着)で通常使用される装置を使
用することができる。
【0039】容量結合型の装置が好適に使用され、RF
(ラジオ高周波 以下同様)電極が真空反応容器外に設
置された外部電極方式およびRF電極が真空反応容器内
に設置された内部電極方式のいずれをも使用することが
できる。有機珪素化合物蒸気および酸素ガスをプラズマ
励起させるには、高周波電源が使用されるが、その周波
数は、電波法で工業用周波数帯として指定されている周
波数であればよく、たとえば、13.56メガヘルツ(M
Hz)、27.12MHz、40.66MHz、24.5ギガヘル
ツ(GHz)、5.8GHz、22.125GHzおよび10キロ
ヘルツ(KHz)以下のものがあるが、就中、13.56MH
zのものが好適に使用される。
【0040】RF電源に投入される電力(以下 投入R
F電力、または、投入電力 と記すこともある)は使用
される有機珪素化合物の種類およびプラズマ重合装置の
規模などによって異なり、特定し得ないが、通常は、5
0〜200W程度とされる。投入電力についてさらに具
体的に説明すれば、実用するに十分な耐擦傷性の被膜を
形成させるには、投入電力を150〜200Wのような
比較的高く制御すればよい。実用に一応堪え得るような
耐擦傷性および密着性を兼備する被膜を形成させるに
は、投入電力を100〜150Wのような中庸の電力に
制御すればよい。さらに、耐擦傷性および密着性の両者
をともに実用するに十分なものとするためには、投入電
力をプラズマ重合の前期において、50〜100W程度
に比較的低く保ち、その後、引続いて逐次連続的に増大
させ、プラズマ重合後期には150〜200W程度に比
較的高く保てばよい。
【0041】この場合には、単位時間に対して投入電力
を変化させる割合(以下 投入電力勾配 と記すことも
ある)は、実質的に一定に保たれるが、変化させること
を妨げない。しかして、この投入電力勾配は、プラスチ
ック素材の種類、有機珪素化合物の種類、有機珪素化合
物が2種類以上使用された場合にはこれらの比、有機珪
素化合物に対する酸素の割合および所望とする密着性の
大きさなどによって一概に特定し得ないが、実用上、通
常は、10〜50W/分程度が好ましい。また、真空反
応容器の真空度は、通常は、1×10-2Torr程度以下、
実用上、好ましくは、1×10-4〜1×10-2Torr程度
とされる。
【0042】このような条件でプラズマ重合を行った場
合には、このプラズマ重合は低温プラズマであるため、
プラズマ装置の真空反応容器内では熱の発生は実質的に
なく、該真空反応容器内の温度はプラズマ重合開始時の
温度である常温乃至は室温に保持され、高温に達するこ
とはない。また、処理時間は、有機珪素化合物の種類、
有機珪素化合物と酸素との割合およびプラズマ重合の条
件などによって異なり、一概に特定し得ないが、実用
上、通常は、15〜120分程度でよい。
【0043】本発明のハードコーティング方法を適用し
得るプラスチック素材としては、光学用として好適に使
用されるような透明度が高く、硬いものであればよく、
特に制限はないが、実用上、通常は、たとえば、ポリカ
ーボネート樹脂、アクリル樹脂、ジエチレングリコール
ビスアリルカーボネート重合体(CR−39樹脂−商品
名)、含硫黄ウレタン系樹脂(MR-6およびMR-7−商品
名)、ウレタン樹脂、フマル酸エステルアリル系モノ
マー共重合体(NK-55−商品名)、トリアジン環アクリ
ル樹脂、臭素配合系樹脂(TS-26およびTS-66−商品
名)、含硫黄ウレタン−ラジカル樹脂(ML-3−商品名)
およびチオエーテルエステル系樹脂などのそれぞれから
得られたプラスチック素材などが好適に適用される。
【0044】本発明では有機珪素化合物としてオルガノ
シロキサンまたはオルガノシランが使用されるが、これ
らは、いずれも、蒸気圧が比較的高く、プラズマ重合装
置の真空反応容器内で気体となり得るものであればよ
い。本発明において、オルガノシロキサンはシロキサン
結合(Si-O)と珪素原子に結合する有機基とを同一分子
内に有しており、たとえば、一般式R3SiO(R2SiO)nSiR3
または(R2SiO)n〔ただし、式中、Rは鎖状または環状の
炭化水素基を示す〕で示される鎖状または環状の化合物
と定義される。また、オルガノシランは、シラン(SiH4)
の水素原子の少なくとも1個が、鎖状または環状の炭化
水素基(R)で置換され、一般式RnSiH4-n〔式中、nは1〜
4の整数を示す〕で示される化合物と定義される。
【0045】この有機珪素化合物の代表例として、耐擦
傷性を良好にするために、特に好ましくは、テトラメト
キシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタメチル
シクロテトラシロキサンおよびテトラエチルオルトシリ
ケート(テトラエトキシシラン)、好ましくは、ヘキサ
メチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキ
サンおよびヘキサメチルジシロキサンを挙げることがで
き、また、密着性を良好にするために、好ましくは、テ
トラメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびビニ
ルトリメトキシシラン、特に好ましくは、オクタメチル
トリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメ
チルシクロテトラシロキサンおよびヘキサメチルシクロ
トリシロキサンなどを挙げることができるが、その他、
ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシ
ロキサンおよびテトラメチルシランなども好適に使用す
ることができる。これらの有機珪素化合物は、1種類だ
けで使用することができるが、2種類以上を併用するこ
ともでき、耐擦傷性を良好にするための有機珪素化合物
と密着性を良好にするための有機珪素化合物のそれぞれ
の1種類以上づつを併用することにより、被膜の耐擦傷
性および透明なプラスチック素材の表面への密着性の両
者をともに増大させ得る場合もある。
【0046】これらの有機珪素化合物は、酸素ガスとと
もに使用される。また、有機珪素化合物と酸素ガスと
は、プラズマ重合装置の真空反応容器へ、予め混合して
供給されてもよく、また、別々にこの真空反応容器に供
給して該真空反応容器中で互いに混合させることもでき
る。有機珪素化合物は、通常は、気体で供給されるが、
液体で供給され得る。酸素は、通常は、気体で供給され
る。
【0047】有機珪素化合物に対する酸素の割合は、使
用される有機珪素化合物の種類および所望とする被膜の
硬さなどによって異なり一概に特定し得ないが、一般
に、有機珪素化合物の量に対する酸素の量の比を増大さ
せるに伴って、被膜中の炭素比率を減少せしめ、以て、
プラスチック素材表面に形成される被膜を硬くし、耐擦
傷性を増大させる傾向があるが、実用上、通常は、有機
珪素化合物の蒸気に対して標準状態で1〜15容量倍程
度の範囲から適宜選択される。
【0048】プラスチック素材とこの耐擦傷性が向上せ
しめられた被膜との密着性をさら密着層に増大せしめる
ために、該プラスチック素材と該耐擦傷性が向上せしめ
られた被膜との間に、密着性が大きい層(以下 密着層
と記すこともある)を形成させ、さらに、プラスチッ
ク素材、密着層および耐擦傷性が向上せしめられた被膜
との各境界面であるべき箇所において、化学組成および
構造が連続的に変化せしめられ明確な境界面がない。
【0049】この各境界面において、化学組成が連続的
に変化せしめられており、明確な境界面がない状態を図
2で模式的に示す。すなわち、図2において、炭素比率
はプラスチック素材の表面(素材境界面)近辺では実質
的に一定とされ、この部分に密層が形成される。これ
に引続いて炭素比率は被膜の外表面に至るまでに、逐次
連続的に減少せしめられおり、これに伴って被膜の外表
面に至るまでにその硬さも逐次連続的に増大せしめられ
ており、透明なプラスチック素材、密着層および被膜の
相互の間に明確な境界面は存在していない。
【0050】透明なプラスチック素材の表面に被膜をさ
らに強力に密着させるために、両者の間に、前記のよう
な、密着層を介在させるには、たとえば、 (1) プラズマ励起を発生させる投入RF電力のみを時間
の経過に伴って連続的に変化させる。 (2) プラズマ励起を発生させる投入RF電力を時間の経
過に伴って連続的に変化させるとともに、1種以上の有
機珪素化合物蒸気および/または酸素ガスの供給速度を
時間の経過に伴って連続的に変化させる。 などのうちのいずれかよってなされる。
【0051】図3乃至図5に、密着層を形成させるため
のプラズマ重合反応における反応条件の経時変化の具体
的な態様を模式的に例示する。すなわち、図3では、酸
素ガスおよび有機珪素化合物蒸気のそれぞれの供給速度
を一定にして、酸素ガスと有機珪素化合物蒸気との比を
一定に保ちつつ、RF投入電力のみを時間の経過に伴っ
て、連続的に増加させている。
【0052】図4では、酸素ガスの供給速度を時間の経
過に伴って連続的に増加させ、他方、有機珪素化合物蒸
気の供給速度のみを一定に保って、酸素ガスと有機珪素
化合物蒸気との比を時間の経過に伴って連続的に変化さ
せ、これとともに、投入RF電力も時間の経過に伴って
連続的に増加させている。この変形として酸素ガスの供
給速度のみを一定に保ち、有機珪素化合物蒸気の供給速
度を時間の経過に伴って連続的に増加させて、酸素ガス
と有機珪素化合物蒸気との比を時間の経過に伴って連続
的に変化させることもできる。
【0053】さらに、図5では2種類の有機珪素化合物
を併用する場合を示し、投入RF電力を時間の経過に伴
って連続的に増加させ、酸素ガスの供給速度のみを一定
に保ち、有機珪素化合物1の供給速度を時間の経過に伴
って連続的に減少させるとともに、他方、有機珪素化合
物2の供給速度を時間の経過に伴って連続的に増加させ
ることもできる。なお、この際に、有機珪素化合物1と
有機珪素化合物2との和を、一定に保ってもよいし、ま
た、この和を時間の経過に伴って連続的に変化させても
よい。 従って、たとえば、プラズマ重合の前期には、
一方の有機珪素化合物のみを使用し、プラズマ重合の後
期には、他方の有機珪素化合物のみを使用することもで
きる。
【0054】このようにプラズマ重合において、投入R
F電力を連続的に変化させるとともに、有機珪素化合物
の供給速度および/または酸素の供給速度を連続的に変
化させる間に、プラスチック素材の表面と、硬くて耐擦
傷性の大きい被膜との間に密着層が形成せしめられ、し
かも、これらの間には境界面は存在せず、以て、プラス
チック素材の表面と耐擦傷性の大きい被膜とは強固に密
着せしめられる。
【0055】
【実施例】本発明を実施例によってさらに具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。 実施例1 ポリカーボネート樹脂板を透明なプラスチック素材と
し、容量結合型で外部電極方式のプラズマ重合装置を使
用して、有機珪素化合物の供給速度および酸素の供給速
度をそれぞれ一定に保ちつつ、他方では投入RF電力を
投入電力勾配を一定に保ちつつ連続的に増加させてプラ
ズマ重合を行い、このプラスチック素材の表面に硬い被
膜を形成させた。
【0056】すなわち、プラズマ重合装置の真空反応容
器へ、オクタメチルシクロテトラシロキサン蒸気および
酸素ガスのそれぞれの供給速度を、4.5CCMおよび30
CCMに保ち、該真空反応容器内の圧力を10-3Torrと
し、投入RF電力を、プラズマ重合開始時から5分間は
50Wで一定に保ち、次いで5分間を要して50Wから
200Wに投入電力勾配を一定に保ちつつ連続的に増大
させ、その後、50分間は200Wで一定に保ち、計6
0分間にわたってプラズマ重合させた。なお、このとき
のプラズマ重合装置の真空反応容器中では熱の発生は実
質的になく、温度の上昇は認められなかった。
【0057】透明なカーボネート樹脂板の表面に形成さ
れた被膜の化学組成および厚さを測定し、また、この被
膜の外表面のヘイズ値をテーバー試験機による処理の前
後に測定し、これらのヘイズ値からヘイズ値の変化を求
め、かつ、碁盤目テープ法による被膜の密着性を測定し
た。 測定方法: 化学組成 :ESCA法 厚さ :表面形状測定装置(日本真空株式会社製 DEKTAK 303 0ST型) テーバー式摩耗試験 :ASTM D1044−56に準拠。 荷重 500g CS−10の摩耗輪を使用 摩耗輪の回転数 100回転(60回転/分) 密着性 :碁盤目テープ法 JIS K 5400に準拠。
【0058】
【0059】実施例2 オクタメチルシクロトリシロキサンおよび酸素のそれぞ
れの供給速度を、10CCMおよび60CCMに保った以外
は、実施例1と同様にして行った。結果を次に示す。
【0060】実施例3 オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびテトラメト
キシシランの2種類の有機珪素化合物とともに酸素ガス
を併用してプラズマ重合させてプラスチック素材表面に
被膜を形成させた。すなわち、プラズマ重合装置の真空
反応容器へ、オクタメチルシクロテトラシロキサン蒸気
および酸素ガスの供給速度をそれぞれ4.5CCMおよび3
0CCMとし、該真空反応容器の圧力を10-3TOrrに保
ち、投入RF電力をプラズマ重合開始時から5分間は5
0Wで一定に保ち、その後、引続いて5分間を要して5
0Wから200Wに投入電力勾配を実質的に一定に保ち
つつ連続的に増大させ、その後、プラズマ重合が終了す
るまでの50分間は200Wに保持した。
【0061】なお、オクタメチルシクロテトラシロキサ
ンの供給速度は、RF電力投入開始直後から20分間は
4.5CCMに一定に保ち、その後、引続いて20分間を要
して0CCMまで一定勾配で連続的に減少させた。他方、
オクタチルシクロテトラシロキサンの減少の開始と実質
的に同時に、テトラメトキシシランの供給を開始し、2
0分間を要して9CCMまで一定勾配で連続的に増加さ
せ、プラズマ重合終了までの20分間は9CCMに保たれ
た。酸素ガスの供給速度は、プラズマ重合の開始から終
了まで、実質的に一定に保たれた。その他は実施例1と
同様にして行った。ヘイズ値の変化および密着性は、実
施例1と同様にして測定された。
【0062】結果を次に示す。
【0063】
【発明の効果】本発明の方法は、適用される透明なプラ
スチック素材の範囲の拡大を可能とし、取扱いの容易な
原料を使用し、透明なプラスチック素材の表面に耐擦傷
性の大きい被膜を形成させ、さらには、該プラスチック
素材の表面と該被膜との間の密着性を増大させることが
でき、しかも、操作が簡単なプラスチック素材表面のハ
ードコーティング方法であり、この方法によって表面に
被膜が形成された透明なプラスチック素材は眼鏡のレン
ズおよび時計のカバーグラスなどの各種の用途に好適に
使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】膜中の炭素比率と膜の外表面のヘイズ値の変化
との関係を示すグラフである。
【図2】プラスチック素材の表面から被膜の外表面にか
けての、膜中の炭素比率の変化を摸式的に示すグラフで
ある。
【図3】密着層を形成させるためのプラズマ重合反応条
件としての、投入RF電力および/または原料の供給速
度の経時変化を模式的に示すグラフである。
【図4】密着層を形成させるためのプラズマ重合反応条
件としての、投入RF電力および/または原料の供給速
度の経時変化を模式的に示すグラフである。
【図5】密着層を形成させるためのプラズマ重合反応条
件としての、投入RF電力および/または原料の供給速
度の経時変化を模式的に示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 中丸 和登 東京都中央区佃2丁目17番15号 月島機 械株式会社内 (72)発明者 長田 義仁 北海道札幌市南区北ノ沢1丁目11−17− 3 (56)参考文献 特開 平5−194770(JP,A) 特開 平5−140356(JP,A) 特開 平4−270736(JP,A) 特開 昭63−114978(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 7/00 - 7/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明なプラスチック素材の表面のプラズ
    マ重合によるハードコーティング方法において、原料と
    して少なくとも1種類のオルガノシロキサンまたはオル
    ガノシランの蒸気とともに酸素ガスを存在せしめ、投入
    電力を時間の経過に伴って連続的に変化させるととも
    に、少なくとも1種類のオルガノシロキサンまたはオル
    ガノシランの供給速度および酸素の供給速度の両者を一
    定に保つか、該両者とも、または、該両者のうちのいず
    れか一方を時間の経過に伴って連続的に変化させ、該
    明なプラスチック素材の表面に耐擦傷性が大きい被膜
    よび該プラスチック素材の表面と該耐擦傷性が大きい被
    膜との間に密着性が大きい層を形成させることを特徴と
    するハードコーティング方法。
  2. 【請求項2】 プラズマ重合において、プラズマ重合時
    の圧力を1×10-4Torr乃至1×10-2Torrに制御する
    請求項1記載のハードコーティング方法。
  3. 【請求項3】 透明なプラスチック素材が、ポリカーボ
    ネート樹脂、アクリル樹脂、ジエチレングリコールビス
    アリルカーボネート重合体、含硫黄ウレタン系樹脂、ウ
    レタン系樹脂、フマル酸エステルアリル系モノマー共重
    合体、トリアジン環アクリル樹脂、臭素配合系樹脂、含
    硫黄ウレタン−ラジカル樹脂、またはチオエーテルエス
    テル系樹脂から得られたものである請求項1または2
    載のハードコーティング方法。
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