JP3445318B2 - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物Info
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Description
脂組成物に関し、さらに詳しくは、耐衝撃性、特に耐低
温衝撃性および剛性に優れた成形体を提供することがで
きる、成形性に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
に関する。 【0002】 【発明の技術的背景】ポリブチレンテレフタレート等の
熱可塑性ポリエステル樹脂は、その機械的強度、剛性、
耐熱性、耐薬品性、耐油性等の優れた性能を生かしてエ
ンジニアリングプラスチックとして、一部機械部品、電
気器具部品、自動車部品への応用が図られている。しか
しながら、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポ
リエステル樹脂は、上記のような優れた特性を有するも
のの、ポリカーボネート等と比較すると耐衝撃性に劣る
ため、高い耐衝撃性を必要とする分野には従来あまり用
いられていない。 【0003】耐衝撃性の改良された熱可塑性ポリエステ
ル樹脂組成物として、たとえば特公昭46−5225号
公報には、線状ポリアルキレンテレフタレートとエチレ
ン・プロピレンラバー、ポリイソブテンあるいはポリブ
テン等とからなるポリエステル樹脂組成物が提案されて
いる。また、耐衝撃性の改良された熱可塑性ポリエステ
ル樹脂組成物の製造法として、特公昭57−54058
号公報、特公昭57−59261号公報には、エチレン
重合体またはエチレンと炭素原子数3以上のα- オレフ
ィンとの共重合体に、α,β- 不飽和カルボン酸または
その誘導体をグラフト重合した結晶化度75%以下の変
性エチレン重合体と、熱可塑性ポリエステルとを溶融混
合する方法が提案されている。さらに、特公昭59−2
8223号公報には、熱可塑性ポリエステル樹脂と、
α,β- 不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和エ
ポキシド等極性基を有する特定のランダム共重合体とか
らなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物などが提案され
ている。 【0004】しかしながら、特公昭46−5225号公
報で提案されている熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
は、上記ポリエステルとエチレン・プロピレンラバー等
との相溶性が劣るため、耐衝撃性の改良効果は不十分で
ある。また、特公昭57−54058号公報、特公昭5
7−59261号公報で提案されている製造法により得
られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および特公昭5
9−28223号公報で提案されている熱可塑性ポリエ
ステル樹脂組成物は、いずれも耐衝撃性がかなり改良さ
れるものの、いまだ不十分であり、十分な衝撃強度を得
るためには、熱可塑性ポリエステル樹脂に配合する柔軟
な樹脂成分の量を増やす必要がある。しかしながら、こ
の柔軟な樹脂成分の配合量を増やすと、得られる熱可塑
性ポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹
脂が本来有している剛性が失われるという問題がある。 【0005】また、特開昭58−17148号公報に
は、芳香族ポリエステル、α- オレフィンとα,β- 不
飽和酸のグリシジルエステルとの共重合体、およびエチ
レンと炭素原子数3以上のα- オレフィンとの共重合体
からなるポリエステル樹脂組成物が提案されたおり、ま
た、特開昭60−28446号公報には、熱可塑性ポリ
エステル樹脂、不飽和カルボン酸またはその無水物をグ
ラフトしたエチレンと炭素原子数3〜6のα- オレフィ
ンとの共重合体、およびポリエポキシ化合物を溶融混合
してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温での耐
衝撃性に優れることが開示されている。 【0006】しかしながら、特開昭58−17148号
公報および特開昭60−28446号公報で提案されて
いる組成物は、いずれも低温時の耐衝撃性はかなり改良
されるものの、用途によっては不十分である場合があ
り、十分な衝撃強度を得るためには、熱可塑性ポリエス
テル樹脂に配合する柔軟な樹脂成分の量を増やす必要が
ある。しかしながら、この柔軟な樹脂成分の配合量を増
やすと、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、
熱可塑性ポリエステル樹脂が本来有している剛性が失わ
れるという問題があり、しかも、溶融流動性が低下し、
成形性が悪いという問題がある。 【0007】そこで、耐衝撃性、特に耐低温衝撃性およ
び剛性に優れた成形体を提供することができる、成形性
に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の出現が従来
より望まれている。 【0008】 【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う
問題点を解決しようとするものであって、耐衝撃性、特
に耐低温衝撃性および剛性に優れた成形体を付与するこ
とができる、成形性に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂
組成物を提供することにある。 【0009】 【発明の概要】本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂
組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量
部と、不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト量
が0.01〜10重量%のグラフト変性エチレン・1-ブ
テンランダム共重合体(B)5〜200重量部とからな
り、該グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合
体(B)は、(a)1-ブテン含量が15〜25モル%で
あり、(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度
[η]が0.5〜3.5dl/gであり、(c)ガラス
転移温度(Tg)が−50℃以下であり、(d)X線回
折法により測定した結晶化度が20%未満であり、か
つ、(e)13C−NMR法により求めた、共重合モノマ
ー連鎖分布のランダム性を示すパラメータ(B値)が
1.0〜1.4であるエチレン・1-ブテンランダム共重
合体のグラフト変性物であることを特徴としている。 【0010】 【発明の具体的説明】以下、本発明に係る熱可塑性ポリ
エステル樹脂組成物について具体的に説明する。 【0011】本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組
成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と特定のグラ
フト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)と
を特定の割合で含有してなる。 【0012】熱可塑性ポリエステル樹脂(A) 本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル(A)は、成
形品を形成するのに十分な分子量を有していればよく、
メルトフローレート(ASTM D 1238,250
℃、荷重325g)が通常0.01〜100g/10
分、好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ま
しくは0.1〜30g/10分である。 【0013】本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル
樹脂(A)としては、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコ
ール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール
ビスフェノールなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、ある
いはこれらの2種以上から選ばれたジヒドロキシ化合物
と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタリンジカ
ルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク
酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等
の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の
脂環族ジカルボン酸、あるいはこれらの2種以上から選
ばれたジカルボン酸化合物とから形成されるポリエステ
ルが挙げられる。 【0014】また、これらのポリエステルは、熱可塑性
を示す限り、少量のトリオールやトリカルボン酸のよう
な3価以上のポリヒドロキシ化合物またはポリカルボン
酸などで変性されていてもよい。 【0015】これらの熱可塑性ポリエステルの具体例と
しては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ
ブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソ
フタレート・テレフタレート共重合体などが挙げられ
る。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレートが機械的特性、成形性に優れているの
で好ましい。 【0016】グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム
共重合体(B) 本発明で用いられるグラフト変性エチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体(B)は、特定のエチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体(以下、未変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体と称する場合がある)に、特定量の不飽和
カルボン酸またはその誘導体がグラフトされてなる。 【0017】上記未変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体は、1-ブテン含量が15〜25モル%、好ましく
は18〜22モル%である。1-ブテン含量が上記のよう
な範囲にある未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合
体を用いると、成形性に優れるとともに、柔軟性が良好
で取扱いが容易なグラフト変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体(B)を得ることができる。しかも、この
グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
(B)を用いると、耐低温衝撃性および剛性に優れた成
形体を提供し得る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得
ることができる。 【0018】また、この未変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘
度[η]が、0.5〜3.5dl/g、好ましくは1.
5〜3.0dl/gである。極限粘度が上記のような範
囲にある未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体か
ら得られるグラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体(B)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)との
ブレンド性が良好である。しかも、このグラフト変性エ
チレン・1-ブテンランダム共重合体(B)を用いると、
成形性に優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得る
ことができる。 【0019】さらに、この未変性エチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体は、DSC(示差走査熱量計)で求めた
ガラス転移点(Tg)が−50℃以下、好ましくは−6
0℃以下である。ガラス転移点(Tg)が−50℃以下
の未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体から得ら
れるグラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
(B)を用いると、耐低温衝撃性に優れた成形体を提供
し得る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ることがで
きる。また、この未変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体の融点は、60℃以下である。 【0020】さらにまた、この未変性エチレン・1-ブテ
ンランダム共重合体は、X線回折法により測定された結
晶化度が20%未満、好ましくは10%以下である。結
晶化度が20%未満の未変性エチレン・1-ブテンランダ
ム共重合体から得られるグラフト変性エチレン・1-ブテ
ンランダム共重合体(B)を用いると、成形性に優れた
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。 【0021】また、この未変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体は、13C−NMR法により求めた、共重合
モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータ(B
値)が1.0〜1.4である。 【0022】このような未変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体におけるB値は、共重合連鎖中における各
モノマーから誘導される構成単位の組成分布状態を表わ
す指標であり、下式により算出することができる。 【0023】B=PBE/(2PB・PE) (式中、PE およびPB は、それぞれ未変性エチレン・
1-ブテンランダム共重合体中に含有される、エチレン成
分のモル分率および1-ブテン成分のモル分率であり、P
BEは、全ダイアド(dyad)連鎖数に対するエチレン
・1-ブテン交互連鎖数の割合である。)このようなP
E 、PB およびPBE値は、具体的には、下記のようにし
て求められる。 【0024】10mmφの試験管中で約200mgの未
変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体を1mlのヘ
キサクロロブタジエンに均一に溶解させて試料を調製
し、この試料の13C−NMRスペクトルを下記の測定条
件下に測定する。 【0025】測定条件 測定温度:120℃ 測定周波数:20.05MHz スペクトル幅:1500Hz フィルタ幅:1500Hz パルス繰り返し時間:4.2sec パルス幅:7μsec 積算回数:2000〜5000回 PE 、PB およびPBE値は、上記のようにして測定され
る13C−NMRスペクトルから、G.J.Ray (Macromole
cules, 10,773(1977))、J.C.Randall(Macro-molecule
s, 15,353(1982))、K.Kimura (Polymer,25,44181984))
らの報告に基づいて求めることができる。 【0026】なお、上記式より求められるB値は、未変
性エチレン・1-ブテン共重合体が両モノマーが交互に分
布している場合には2となり、両モノマーが完全に分離
して重合している完全ブロック共重合体の場合には0と
なる。 【0027】B値が上記範囲にある未変性エチレン・1-
ブテンランダム共重合体から得られるグラフト変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体(B)を用いると、耐
低温衝撃性に優れた成形体を提供し得る熱可塑性ポリエ
ステル樹脂組成物を得ることができる。 【0028】上記のような特性を有する未変性エチレン
・1-ブテンランダム共重合体は、公知のバナジウム系触
媒またはメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと1-ブ
テンとを共重合させることによって調製することができ
る。 【0029】上述したように、本発明で用いられるグラ
フト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)
は、上記のような未変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体が特定量の不飽和カルボン酸またはその誘導体で
グラフト変性されてなる。 【0030】上記グラフト変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体(B)における不飽和カルボン酸またはそ
の誘導体のグラフト量は、未変性エチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体100重量%に対して、0.01〜10
重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。 【0031】このグラフト量が上記範囲にあるグラフト
変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)は、熱
可塑性ポリエステル樹脂組成物中において分散性に優れ
るとともに、熱安定性に優れ、溶融時に樹脂が着色する
こともない。しかも、このようなグラフト変性エチレン
・1-ブテンランダム共重合体(B)を用いると、機械的
強度に優れた成形体を提供し得る熱可塑性ポリエステル
樹脂組成物を得ることができる。 【0032】ここで使用される不飽和カルボン酸の例と
しては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラ
ヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン
酸、イソクロトン酸およびナジック酸TM(エンドシス-
ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3- ジカルボン酸)な
どが挙げられる。 【0033】また、不飽和カルボン酸の誘導体として
は、たとえば上記不飽和カルボン酸の酸ハライド化合
物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物およびエス
テル化合物などを挙げることができる。具体的には、塩
化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラ
コン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、
グリシジルマレエートなどが挙げられる。これらの中で
は、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であ
り、特にマレイン酸、ナジック酸TMまたはこれらの酸無
水物が好適である。 【0034】なお、上記未変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体にグラフトされる不飽和カルボン酸または
その誘導体のグラフト位置に特に限定はなく、このグラ
フト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)を
構成するエチレン・1-ブテンランダム共重合体の任意の
炭素原子に、不飽和カルボン酸またはその誘導体が結合
していればよい。 【0035】上記のようなグラフト変性エチレン・1-ブ
テンランダム共重合体(B)は、従来公知の種々の方
法、たとえば次のような方法を用いて調製することがで
きる。 (1)上記未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
を溶融させて不飽和カルボン酸等を添加してグラフト共
重合させる方法。 (2)上記未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
を溶媒に溶解させて不飽和カルボン酸等を添加してグラ
フト共重合させる方法。 【0036】いずれの方法も、上記不飽和カルボン酸等
のグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるた
めには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を行な
うのが好ましい。 【0037】上記ラジカル開始剤としては、有機ペルオ
キシド、アゾ化合物などが使用される。このようなラジ
カル開始剤としては、具体的には、ベンゾイルペルオキ
シド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペル
オキシド、ジーtertーブチルペルオキシド、2,5ージメチル
ー2,5ー ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシンー3、1,
4ービス(tertー ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼ
ン、ラウロイルペルオキシド、tertー ブチルペルアセテ
ート、2,5ージメチルー2,5ー ジー(tertー ブチルペルオキシ
ド)ヘキシンー3、2,5ージメチルー2,5- ジ(tertー ブチル
ペルオキシド)ヘキサン、tertー ブチルペルベンゾエー
ト、tertー ブチルペルフェニルアセテート、tertー ブチ
ルペルイソブチレート、tertー ブチルペルーsecー オクト
エート、tertー ブチルペルピバレート、クミルペルピバ
レート、tertー ブチルペルジエチルアセテート等の有機
ペルオキシド;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル
アゾイソブチレート等のアゾ化合物などが挙げられる。
これらの中では、ジクミルペルオキシド、ジーtertーブチ
ルペルオキシド、2,5ージメチルー2,5ー ジ(tert- ブチル
ペルオキシ)ヘキシン-3、2,5ージメチルー2,5ー ジ(tert
- ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4ービス(tertー ブチ
ルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキル
ペルオキシドが好ましく用いられる。 【0038】これらのラジカル開始剤は、未変性エチレ
ン・1-ブテンランダム共重合体100量部に対して、通
常は0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜
0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.3重量
部の量で用いられる。 【0039】上記のようなラジカル開始剤を使用したグ
ラフト反応、あるいはラジカル開始剤を使用せずに行な
うグラフト反応における反応温度は、通常60〜350
℃、好ましくは150〜300℃の範囲内に設定され
る。 【0040】本発明においては、上記グラフト変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体(B)は、上記熱可塑
性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して5〜2
00重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好
ましくは10〜60重量部の量で用いられる。上記グラ
フト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)が
上記のような量で用いられると、耐低温衝撃性、剛性に
優れた成形体を提供することができる、成形性に優れた
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。 【0041】その他の添加剤 本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、上
記の熱可塑性ポリエステル樹脂(A)およびグラフト変
性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)の他に、
必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光保護剤、
亜燐酸塩系熱安定剤、過酸化物分解剤、塩基性補助安定
剤、増核剤、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔
料、染料、充填剤などの添加剤を、本発明の目的を損な
わない範囲で配合することができる。また、本発明に係
るポリアミド樹脂組成物には、他の重合体を、本発明の
目的を損なわない範囲で配合することもできる。 【0042】上記充填剤の例としては、カーボンブラッ
ク、アスベスト、タルク、シリカ、シリカアルミナなど
が挙げられる。熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の調製 本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、上記
の熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と、グラフト変性エ
チレン・1-ブテンランダム共重合体(B)と、必要に応
じて配合される添加剤とを、種々の従来公知の方法で溶
融混合することにより調製される。すなわち、本発明に
係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、上記各成分を
同時に、または逐次的に、たとえばヘンシェルミキサ
ー、V型ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレ
ンダー等に装入して混合した後、単軸押出機、多軸押出
機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練するこ
とによって得られる。 【0043】これらの内でも、多軸押出機、ニーダー、
バンンバリーミキサー等の混練性能に優れた装置を使用
すると、各成分がより均一に分散された高品質の熱可塑
性ポリエステル樹脂組成物が得られる。 【0044】また、これらの任意の段階で必要に応じて
前記添加剤、たとえば酸化防止剤などを添加することも
できる上記のようにして得られる本発明に係る熱可塑性
ポリエステル樹脂組成物は、従来公知の種々の溶融成形
法、たとえば射出成形、押出成形、圧縮成形、発泡成形
などの方法により、種々の形状に成形することができ
る。 【0045】 【発明の効果】本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂
組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と、不飽和
カルボン酸またはその誘導体のグラフト量が0.01〜
10重量%のグラフト変性エチレン・1-ブテンランダム
共重合体(B)とを特定の割合で含有してなり、このグ
ラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(B)
が、1-ブテン含量、極限粘度、ガラス転移温度、結晶化
度およびB値が特定の範囲にあるエチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体のグラフト変性物であるので、溶融流動
性に優れ、すなわち成形性に優れており、耐低温衝撃性
および剛性に優れた成形体を提供することができる。 【0046】次に、本発明を実施例より具体的に説明す
るが、本発明は、これら実施例によって限定されるもの
ではない。 【0047】 【実施例1】 [無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体の調製]1-ブテン含量が19モル%であ
り、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が
2.2dl/gであり、ガラス転移温度が−65℃であ
り、X線回折法によって測定した結晶化度が2%であ
り、13C−NMR法により求めた、共重合モノマー連鎖
分布のランダム性を示すパラメータ(B値)が1.1で
あるエチレン・1-ブテンランダム共重合体10kgと、
無水マレイン酸100gおよびジ-tert-ブチルペルオキ
シド6gを100gのアセトンに溶解させた溶液とをヘ
ンシェルミキサー中でブレンドした。 【0048】次いで、上記のようにして得られたブレン
ド物をスクリュー径40mm、L/D=26の1軸押出
機のホッパーより投入し、樹脂温度260℃、押出量6
kg/時間でストランド状に押し出して水冷した後、ペ
レタイズして無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-
ブテンランダム共重合体を得た。 【0049】得られたグラフト変性エチレン・1-ブテン
ランダム共重合体から未反応の無水マレイン酸をアセト
ンで抽出後、このグラフト変性エチレン・1-ブテンラン
ダム共重合体中における無水マレイン酸グラフト量を測
定したところ、このグラフト量は0.93重量%であっ
た。 [熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の調製]ポリブチレ
ンテレフタレート[東レ(株)製、PBT、1401−
X06、MFR(250℃、325g荷重):5g/1
0分]100重量部と、上記ペレット状の無水マレイン
酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体1
0重量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合してド
ライブレンド物を調製した。 【0050】次いで、このドライブレンド物を255℃
に設定した2軸押出機(L/D=40、30mmφ)に供
給し、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物のペレットを調
製した。 【0051】得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
のペレットを120℃で1昼夜乾燥した後、下記条件で
射出成形を行ない、物性試験用試験片を作製した。ま
た、スパイラルフローは、3.8mmφ、半円のスパイ
ラル状の溝を持った金型を用い、下記条件で射出し、そ
の流動距離を測定した。 【0052】(射出成形条件) シリンダー温度 ・・・・・・ 255℃ 射出圧力 ・・・・・・ 1000kg/cm2 金型温度 ・・・・・・ 80℃ 続いて、下記の方法により、熱可塑性ポリエステル樹脂
組成物の物性評価を行なった。 (1) 曲げ試験:厚み1/8”の試験片を用い、ASTM
D 790に従って、曲げ弾性率(FM;kg/cm2)を測
定した。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃
の温度で2日行なった。 (2) アイゾット衝撃試験:厚み1/8”の試験片を用
い、ASTM D 256に従って、23℃および−40
℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で
2日行なった。 【0053】結果を第1表に示す。 【0054】 【実施例2〜4】実施例1において、実施例1の無水マ
レイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重
合体の配合量をそれぞれ25重量部、40重量部、10
0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、熱可塑
性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのスパイラルフ
ロー、曲げ弾性率および23℃と−40℃におけるノッ
チ付き衝撃強度を測定した。 【0055】結果を第1表に示す。 【0056】 【実施例5】実施例1において、無水マレイン酸150
gを用いた以外は、実施例1と同様にして、無水マレイ
ン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
を得た。得られた無水マレイン酸グラフト変性エチレン
・1-ブテンランダム共重合体の無水マレイン酸のグラフ
ト量は、1.2重量%であった。以下、この無水マレイ
ン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱
可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのスパイラ
ルフロー、曲げ弾性率および23℃と−40℃における
ノッチ付き衝撃強度を測定した。 【0057】結果を第1表に示す。 【0058】 【実施例6】実施例1において、無水マレイン酸200
gを用いた以外は、実施例1と同様にして、無水マレイ
ン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
を得た。得られた無水マレイン酸グラフト変性エチレン
・1-ブテンランダム共重合体の無水マレイン酸のグラフ
ト量は、1.6重量%であった。以下、この無水マレイ
ン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱
可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのスパイラ
ルフロー、曲げ弾性率および23℃と−40℃における
ノッチ付き衝撃強度を測定した。 【0059】結果を第1表に示す。 【0060】 【比較例1】実施例1のポリブチレンテレフタレートの
みのスパイラルフロー、曲げ弾性率、および23℃と−
40℃におけるノッチ付き衝撃強度を実施例1と同様に
して測定した。 【0061】結果を第2表に示す。 【0062】 【比較例2】実施例1において、無水マレイン酸グラフ
ト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体の代わりに
実施例1の未変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱
可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのスパイラ
ルフロー、曲げ弾性率、および23℃と−40℃におけ
るノッチ付き衝撃強度を実施例1と同様にして測定し
た。 【0063】結果を第2表に示す。 【0064】 【比較例3】実施例1において、実施例1の未変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体の代わりに、1-ブテン
含量が10モル%であり、135℃デカリン中で測定し
た極限粘度[η]が2.1dl/gであり、ガラス転移
温度が−50℃であり、X線回折法によって測定した結
晶化度が15%であり、13C−NMR法により求めた、
共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータ
(B値)が1.1であるエチレン・1-ブテンランダム共
重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、無水マ
レイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重
合体を得た。得られた無水マレイン酸グラフト変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体の無水マレイン酸のグ
ラフト量は、0.95重量%であった。以下、この無水
マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にし
て、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのス
パイラルフロー、曲げ弾性率、および23℃と−40℃
におけるノッチ付き衝撃強度を実施例1と同様にして測
定した。 【0065】結果を第2表に示す。 【0066】 【比較例4】実施例1において、実施例1の未変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体の代わりに、1-ブテン
含量が35モル%であり、135℃デカリン中で測定し
た極限粘度[η]が2.0dl/gであり、ガラス転移
温度が−70℃であり、X線回折法によって測定した結
晶化度が0%であり、13C−NMR法により求めた、共
重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータ
(B値)が1.4であるエチレン・1-ブテンランダム共
重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、無水マ
レイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重
合体を得た。得られた無水マレイン酸グラフト変性エチ
レン・1-ブテンランダム共重合体の無水マレイン酸のグ
ラフト量は、0.85重量%であった。以下、この無水
マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共
重合体25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にし
て、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、そのス
パイラルフロー、曲げ弾性率、および23℃と−40℃
におけるノッチ付き衝撃強度を実施例1と同様にして測
定した。 【0067】結果を第2表に示す。なお、上記のように
して得られた無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-
ブテンランダム共重合体は、そのペレット形状を保持す
ることができず、取扱が困難であった。 【0068】 【表1】 【0069】 【表2】
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重
量部と、 不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト量が0.
01〜10重量%のグラフト変性エチレン・1-ブテンラ
ンダム共重合体(B)5〜200重量部とからなり、 該グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体
(B)は、(a)1-ブテン含量が15〜25モル%であ
り、(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度
[η]が0.5〜3.5dl/gであり、(c)ガラス
転移温度(Tg)が−50℃以下であり、(d)X線回
折法により測定した結晶化度が20%未満であり、か
つ、(e)13C−NMR法により求めた、共重合モノマ
ー連鎖分布のランダム性を示すパラメータ(B値)が
1.0〜1.4であるエチレン・1-ブテンランダム共重
合体のグラフト変性物であることを特徴とする熱可塑性
ポリエステル樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19480693A JP3445318B2 (ja) | 1993-08-05 | 1993-08-05 | 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19480693A JP3445318B2 (ja) | 1993-08-05 | 1993-08-05 | 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0748486A JPH0748486A (ja) | 1995-02-21 |
JP3445318B2 true JP3445318B2 (ja) | 2003-09-08 |
Family
ID=16330571
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19480693A Expired - Lifetime JP3445318B2 (ja) | 1993-08-05 | 1993-08-05 | 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3445318B2 (ja) |
-
1993
- 1993-08-05 JP JP19480693A patent/JP3445318B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0748486A (ja) | 1995-02-21 |
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