JP3445059B2 - 巨大フラーレンの製造方法および膜状巨大フラーレン構造体 - Google Patents

巨大フラーレンの製造方法および膜状巨大フラーレン構造体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な製法による
フラーレンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】C60に代表されるフラーレンは、分子間
力によって結合しており、高い対称性を持ったサッカー
ボール型の分子である。分子中の全てのカーボン原子は
等価であって、互いに共有結合しており、非常に安定な
結晶体である。C60等のフラーレンは、結晶構造的には
fcc構造をとると見なすことができ、塑性変形能や加工
硬化性等の金属的な力学特性を示すことから、新しい炭
素系材料として各種用途への応用が期待されている。ま
た、フラーレン自体の特性に基いて、超伝導材料、触
媒、非線形光学材料等への応用も研究されている。
【0003】従来、C60等のフラーレンは、炭素棒や粒
状炭素を電極としたアーク放電法や紫外レーザをグラフ
ァイト表面に照射するレーザアブレーション法等によっ
て作製されている。フラーレンはスス中に混在した状態
で生成されるため、フィルタやベンゼン等を用いた捕集
装置により抽出している。
【0004】上述したアーク放電時に陰極側に堆積した
物質中には、カーボンナノカプセルやカーボンナノチュ
ーブと呼ばれる高次フラーレン(巨大フラーレン)が含
まれており、陰極側の堆積物を粉砕した後にエタノール
等の有機溶媒を用いて精製することにより、上述したカ
ーボンナノカプセルやカーボンナノチューブが得られて
いる。カーボンナノカプセルやカーボンナノチューブ
は、いずれも中空形状を有すると共に、例えば潤滑性や
耐候性等に優れることから、それらの中空部内に他の金
属原子や微細結晶等を閉じ込めることによって、新物質
の合成や新機能の探索等が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
巨大フラーレンは、上述したようにアーク放電法により
60等を作製する際に陰極側に副次的に生成される堆積
物中に含まれるものであるため、黒鉛状物質やアモルフ
ァスカーボン等の不純物との分離自体が困難であるとい
う難点を有している。また、上記したような製造方法に
由来して、巨大フラーレンの形状や物性等の制御、さら
には上述した他の金属原子等との合成(内包)制御等を
容易に行うことはできないという。
【0006】特に、巨大フラーレンの新機能材料等への
応用展開を考えた場合、巨大フラーレンの大きさや形成
位置等の個々の形成状態、さらには複数の巨大フラーレ
ンの合成制御等を可能にすることが重要と考えられる
が、従来の製造方法ではそのような制御を到底容易に行
うことはできない。
【0007】また、巨大フラーレンの一種として、C60
等からなるコアの外殻にさらに大きな分子量を持つフラ
ーレンが同心円状に重なりあった、たまねぎ状グラファ
イトと呼ばれる物質も発見されているが、現状では存在
が確認された程度であって、その形状や物性等の制御は
十分には行われておらず、さらにはその再現性のある製
造方法についても十分には確認されていない。
【0008】このように、フラーレンに関する研究は各
所で行われているものの、フラーレンの形状や形成位置
等の形成状態の制御や製造方法等を十分に開発するまで
には至っていない。特に、たまねぎ状グラファイト等の
巨大フラーレンに関しては、現状では製造法の開発自体
も十分とは言えず、従って形状や物性等の制御に関する
研究等を十分に行えるほど、制御性の高い条件下で再現
性よく巨大フラーレンを得るまでには至っていない。そ
こで、巨大フラーレンを制御された条件下で作製するこ
とを可能にする技術が望まれており、さらには巨大フラ
ーレンの形状や形成位置等の形成状態の制御を可能にす
る技術が望まれている。
【0009】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、比較的簡易な工程で、かつ制御され
た条件下で再現性よく得ることを可能にした巨大フラー
レン製造方法、また形状や形成位置等の形成状態の制
御等を可能にした巨大フラーレン製造方法、さらにこ
のような巨大フラーレンの製造方法を適用して作製した
巨大フラーレンの膜状構造体を提供することを目的とし
ている。
【0010】
【0011】
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の巨大フラーレン
の製造方法は、非晶質炭素上に、Pt、Au、Cuまた
はAlの単体金属からなると共に、細孔を有するターゲ
ット材を配置する工程と、真空雰囲気中にて前記ターゲ
ット材の細孔内壁に高エネルギービームを斜め方向から
照射し、この高エネルギービームの照射により前記ター
ゲット材の構成原子を前記非晶質炭素表面に衝突させ、
この衝突点を核生成点として前記非晶質炭素の表層部に
閉殻構造の層状カーボン組織を有する巨大フラーレンを
前記ターゲット材の細孔位置に対応させて形成する工程
とを有することを特徴としている。
【0013】さらに、本発明の巨大フラーレンの製造方
法は、前記閉殻構造の層状カーボン組織を有する巨大フ
ラーレンを形成した後に、さらに同一または異なる高エ
ネルギービームを前記非晶質炭素に照射し、前記巨大フ
ラーレンを成長させることを特徴としている。また、本
発明の膜状巨大フラーレン構造体は、非晶質炭素膜と、
前記非晶質炭素膜の表層部に形成され、閉殻構造の層状
カーボン組織を有する複数の巨大フラーレンを有し、か
つ隣接する前記複数の巨大フラーレンが相互に連結して
膜状構造を成している膜状巨大フラーレンとを具備する
ことを特徴としている。
【0014】すなわち本発明は、非晶質炭素上に細孔を
有するターゲット材(Pt、Au、CuまたはAlの単
体金属からなる)を配置して、このターゲット材の細孔
内壁に対して高エネルギービームを斜め方向から照射
し、ターゲット材の構成原子を離脱させて非晶質炭素に
付着させることによって、このターゲット材の構成原子
の付着物を核生成点として大フラーレンを再現性よく
形成し得ること、および巨大フラーレンの形成後にさら
に同一または異なる高エネルギービームを非晶質炭素に
照射することによって、得られた巨大フラーレンを成長
させることが可能であることを見出したことに基いて成
されたものである。
【0015】上述したように、本発明の巨大フラーレン
の製造方法によれば、制御された条件下で再現性よく
大フラーレンを得ることができると共に、ターゲット材
から離脱して非晶質炭素表面に付着した構成原子を核生
成点として形成することから、ターゲット材の細孔形状
等により巨大フラーレンの形成位置等を制御することが
できる。さらに、巨大フラーレンの形成後に高エネルギ
ービームを非晶質炭素に照射することによって、得られ
た巨大フラーレンを成長させることが可能であることか
ら、巨大フラーレンの形状等を制御することができ、さ
らには複数の巨大フラーレンを相互に連結させて膜状構
造等を得ることができる。このように、本発明によれば
巨大フラーレンの各種制御や操作等が実現可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0017】図1は、本発明の巨大フラーレンの製造過
程の一部を模式的に示す断面図である。同図において、
1は支持部材2上に配置された非晶質炭素膜であり、こ
の非晶質炭素としては例えばi-カーボン等が用いられ
る。このような非晶質炭素膜1上に、図に示すよう
に、複数の細孔3を有するターゲット材4を配置し、細
孔3の内壁3aに対して高エネルギービーム5を上方斜
め方向から照射する。
【0018】ターゲット材4には、Pt、Au、Cu、
Al単体金属用いられるが、ターゲット材4の高エ
ネルギービーム5に対する耐衝撃性、言い換えるとター
ゲット材4の結晶の結合エネルギーによりほぼ決定され
る、ターゲット材4からの構成原子の離脱性等を考慮し
て、各種条件を設定するものとする。このようなターゲ
ット材4としてはいわゆるメッシュ材を用いたり、また
目的材料からなるフィルム等にエッチング等の化学的方
法や電気化学的方法で細孔3を形成したり、あるいはレ
ーザビーム等で細孔3を形成したものを使用することが
できる。
【0019】ここで、ターゲット材4の細孔3は、巨大
フラーレンの形成位置を提供すると共に、その内壁3a
が核生成物質の形成材料、すなわちターゲット材4の構
成原子の供給面となる。従って、細孔3の形状や配置、
さらにはターゲット材4の厚さ等は、得ようとする巨大
フラーレンの形状や配置、高エネルギービーム5の入射
角θ等を考慮して設定するものとする。
【0020】具体的には、細孔3の直径は 0.1〜 1×10
3 μm 程度、ターゲット材4の厚さは 0.2〜 1×103 μ
m 程度とすることが好ましい。細孔3の直径があまり小
さかったり、またターゲット材4があまり薄いと、高エ
ネルギービーム5の入射角θが制限を受けてフラーレン
の形成が困難となり、また細孔3の直径があまり大きす
ぎたり、またターゲット材4があまり厚くても、フラー
レンの形成が困難となる。
【0021】また、細孔3の直径dとターゲット材4の
厚さtは、高エネルギービーム5の入射角θに影響を及
ぼし、この高エネルギービーム5の入射角θは20〜45°
の範囲となるように設定することが好ましいことから、
細孔3の直径dおよびターゲット材4の厚さtは、ta
-1(t/d)が20〜45°の範囲となるように設定する
ことがより好ましい。さらに好ましいtan-1(t/
d)は30〜45°の範囲となるように設定することであ
る。
【0022】上述したようなターゲット材4の細孔内壁
3aに対して高エネルギービーム5を上方斜め方向から
照射すると、図に示したように、ターゲット材4の構
成原子が離脱(図中、点線矢印で示す)して、これらが
非晶質炭素膜1に衝突および付着(付着物6)する。こ
のターゲット材4の構成原子の衝突点を核生成点とし
て、言い換えると付着物6を核生成物質として巨大フラ
ーレン7が誘起される。この巨大フラーレン7は、上記
したターゲット材4の構成原子の衝突点が核生成点とし
て有効に作用すると共に、照射した高エネルギービーム
5が非晶質炭素膜1の活性化効果や局所加熱効果等をも
たらすことによって誘起されるものである。このように
して誘起される巨大フラーレン7は閉殻構造の層状カー
ボン組織を有するものである
【0023】ここで、照射する高エネルギービーム5
は、特に限定されるものではなく、ターゲット材4から
構成原子を離脱させ得るエネルギーを有していればよ
い。例えば、加速電圧2〜5kV、ビーム電流0.1〜1mA程度
のアルゴンイオンビームのようなイオンビーム、このイ
オンビームと同等の衝撃をターゲット材4に与えること
ができる電子線、レーザビーム、X線、γ線、中性子線
等が挙げられる。
【0024】高エネルギービーム5としてイオンビーム
を用いる場合、加速電圧やビーム電流が小さすぎると、
ターゲット材4から構成原子を効率よく離脱させること
ができず、一方加速電圧やビーム電流が大きすぎると、
ターゲット材4の損傷のみが増大して構成原子の離脱状
態を制御することが困難となり、いずれもおいても核生
成点を有効に形成することができないおそれが強い。高
エネルギービーム5として電子線、レーザビーム、X
線、γ線、中性子線等を用いる場合についても同様であ
る。なお、高エネルギービーム5の照射雰囲気は、使用
ビームに応じて設定すればよく、例えば真空雰囲気、ア
ルゴン雰囲気のような不活性雰囲気等が挙げられ、また
場合によっては酸素含有雰囲気や窒素雰囲気等を用いる
こともできる。
【0025】そして、高エネルギービーム5の照射を一
定時間行うことによって、非晶質炭素膜1の表層部に目
的とする巨大フラーレン7を形成することができる。な
、細孔3に対応した各位置に形成される核生成物質
(付着物)6の数は、細孔3の直径や高エネルギービー
ム5の照射条件等により制御することができ、単体とし
て分離された複数の付着物6を核生成点として形成する
こともできる。この場合には、細孔3に対応した各位置
に複数の巨大フラーレン7形成される
【0026】上記した工程は、非晶質炭素膜1の表層部
に誘起(形成)した巨大フラーレン7の成長工程と見な
すこともでき、照射した高エネルギービーム5が巨大フ
ラーレン7の周囲の非晶質炭素膜1を活性化することに
よって、巨大フラーレン7が成長する。この巨大フラー
レン7の成長工程(もしくは目的形状への形成工程)
は、ターゲット材4の細孔内壁3aへの高エネルギービ
ーム5の斜め照射を継続して行うことで実施してもよい
し、あるいはターゲット材4を取り除いた後に高エネル
ギービーム5を照射することによっても実施可能であ
る。この場合の高エネルギービーム5は、斜め照射時と
同一のものであってもよいし、また異なる高エネルギー
ビームを用いてもよい。高エネルギービーム5の照射時
間は、高エネルギービーム5の強度や目的する巨大フラ
ーレン7の大きさ等に応じて適宜設定するものとする。
【0027】なお、上記した高エネルギービーム照射時
の非晶質炭素膜1は、室温に保持した状態でよく、制御
が可能な室温ステージ上で巨大フラーレン7を形成する
ことができる。また、上記した高エネルギービーム5を
照射する際に、非晶質炭素膜1を回転させてもよく、こ
れにより効率よく核生成物質6を形成することができ
る。
【0028】このようにして得られる巨大フラーレン7
は、非晶質炭素膜1の表層部における位置がターゲット
材4の細孔3に対応するため、その形成位置を制御する
ことができる。また、高エネルギービーム5の強度や照
射時間、非晶質炭素膜1の回転の有無および回転速度、
ターゲット材4の高エネルギービーム5対する耐衝撃
性、ターゲット材4の厚さ、細孔3の直径等によって、
得られる巨大フラーレン7の数や状態を制御することが
できる。
【0029】そして、複数の細孔3を有するターゲット
材4を用いることによって、形成位置を制御した複数の
巨大フラーレン7を選択的にかつそれぞれ分離した状態
で形成することができる。従って、このような巨大フラ
ーレン7を用いることによって、巨大フラーレン7の物
性掌握、各種操作や制御、各種の応用展開等を実現する
ことが可能となる。本発明による巨大フラーレン7は、
半導体材料、超伝導材料、触媒、潤滑剤、非線形光学材
料、生体材料等の各種材料への応用可能性を有してい
る。
【0030】上述した実施形態では、非晶質炭素膜1の
表層部に分離した状態で複数の巨大フラーレン7を形成
した場合について述べたが、本発明の製造方法では複数
の巨大フラーレンを相互に連結させて膜状構造とするこ
とも可能である。
【0031】すなわち、非晶質炭素膜1の表層部に分離
した状態で複数形成した巨大フラーレン7に対して、さ
らに高エネルギービーム5例えば強度が1×1018e/cm2
sec以上の電子線を照射する。なお、この際に電子線に
限らず、他の高エネルギービーム5を照射してもよい。
【0032】上記した高エネルギービーム5の照射によ
って、巨大フラーレン7の周囲の非晶質炭素膜1が活性
化して巨大フラーレン7が成長し続け、隣接する巨大フ
ラーレン7同士が連結、言い換えると融合する。すなわ
ち、隣接する複数の巨大フラーレン7の外殻側の炭素原
子が共通化された巨大フラーレンの融合体が得られる。
このような高エネルギービーム5の照射を一定時間以上
行うことによって、晶質炭素膜1の表層部に巨大フラ
ーレンが相互に連結した膜状構造体、すなわち膜状巨大
フラーレン得られる。なお、高エネルギービーム5の
照射時間は、高エネルギービーム5の強度や当初の巨大
フラーレン7の大きさ等に応じて適宜設定するものとす
る。
【0033】このような膜状巨大フラーレン(巨大フラ
ーレンの膜状構造体)、巨大フラーレンの性質を利用
して応用展開を図る上で有効に利用し得るものである
【0034】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について述べ
る。
【0035】実施例 まず、図1に示した巨大フラーレンの製造工程におい
て、非晶質炭素膜1としてi-カーボンからなる非晶質カ
ーボン膜を用い、この非晶質カーボン膜上にターゲット
材4として、直径 200μm の細孔3を多数有するCuメ
ッシュ(厚さ:400μm)を配置した。これらを真空室内の
室温ステージ上にセットした。
【0036】次に、非晶質カーボン膜をCuメッシュと
共に 2rpm で回転させながら、Cuメッシュの細孔内壁
に加速電圧 3.0kV、ビーム電流0.25mAのArイオンビー
ムを斜め方向から 300秒間照射した。Arイオンビーム
の入射角θは40°とした。また、Arイオンビーム照射
時の雰囲気は 1×10-3Pa程度の真空(Arを含む)とし
た。
【0037】上記したArイオンビームの斜め照射によ
って、Cuメッシュの細孔内壁からCu原子が離脱して
非晶質カーボン膜に衝突する。このことは、Arイオン
ビームの照射後に非晶質カーボン膜のCuメッシュの細
孔に対応した位置に、平均直径 3nmのCu超微粒子がそ
れぞれ形成されていることから確認された。
【0038】Arイオンビームの照射後に、非晶質カー
ボン膜の状態をTEM観察したところ、Arイオンビー
ムの照射により形成されたCu超微粒子の下部に相当す
る非晶質カーボン膜の表層部に、それぞれ同心円状のカ
ーボン組織が誘起していた。この同心円状のカーボン組
織は層間隔が約0.35nmであ閉殻構造の層状カーボン
組織を有する巨大フラーレンあることが確認された。
閉殻構造の層状カーボン組織を有する巨大フラーレン
は、非晶質カーボン膜の表層部に複数形成されているこ
とが確認された。この段階の巨大フラーレンの平均直径
は約20nmであった。なお、巨大フラーレンの周囲は非晶
質カーボンの状態を維持していた。このように、Cuメ
ッシュにArイオンビームを斜め方向から照射すること
によって、CuメッシュからCu原子が離脱して非晶質
カーボン膜に衝突するため、この衝突点を核生成点とし
て非晶質カーボン膜の表層部に閉殻構造の層状カーボン
組織を有する巨大フラーレンを形成することができる。
従って、分離した状態で存在する多数の巨大フラーレン
を、形成位置等を制御した上で容易に得ることができ
る。
【0039】次に、上述した非晶質カーボン膜の表層部
に分離した状態で存在する多数の巨大フラーレンに対し
て、さらに1×10-5Paの真空雰囲気中で1×1020e/cm2・s
ecの電子線を100秒間照射した。この電子線の照射後
に、非晶質カーボン膜の状態をTEM観察したところ、
隣接する閉殻構造の層状カーボン組織を有する巨大フラ
ーレン同士が連結して、膜状巨大フラーレンが形成され
ていることが確認された。この膜状巨大フラーレンの厚
さは約20nmであった。このように、分離した状態で多数
形成した巨大フラーレンにさらに電子線を照射すること
によって、膜状巨大フラーレンを得ることができる。
【0040】一方、本発明との比較例として、Cu等の
金属超微粒子を配置していないi-カーボンからなる非晶
質カーボン膜に、上記実施例と同一条件で電子線を照射
したところ、巨大フラーレンは生成しなかった。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
形状や形成位置等の形成状態を制御した巨大フラーレン
を、制御された条件下で再現性よく得ることができ、さ
らには膜状巨大フラーレン等を形成することもできる。
従って、このような本発明巨大フラーレン応用展開
等に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による巨大フラーレンの製造工程の一
を模式的に示す断面図である
【符号の説明】
1……非晶質炭素膜 3……細孔 3a…細孔内壁 4……ターゲット材 5……高エネルギービーム 6……ターゲット材の構成分子または構成分子からなる
超微粒子 7……巨大フラーレ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−217431(JP,A) 特開 平8−91818(JP,A) 特開 平8−277103(JP,A) B.S.XU et al,Form ation of giant oni on−like fullerenes under Al nanopart icles by electron irradiation,ACTA M ATER.,1998年,Vol.46,N o.15,p.5249−5257 DANIEL UGARTE,Cur ling and closure o f graphitic networ ks under electron− beam irradiation,, NATURE,1992年,Vol.359, p.707−709 D.UGARTE,Onion−li ke graphitic parti cles,CARBON,1995年,Vo l.33,NO.7,p.989−993 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 31/02 C01B 31/04 JICSTファイル(JOIS) INSPEC(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非晶質炭素上に、Pt、Au、Cuまた
    はAlの単体金属からなると共に、細孔を有するターゲ
    ット材を配置する工程と、 真空雰囲気中にて前記ターゲット材の細孔内壁に高エネ
    ルギービームを斜め方向から照射し、この高エネルギー
    ビームの照射により前記ターゲット材の構成原子を前記
    非晶質炭素表面に衝突させ、この衝突点を核生成点とし
    て前記非晶質炭素の表層部に閉殻構造の層状カーボン組
    織を有する巨大フラーレンを前記ターゲット材の細孔位
    置に対応させて形成する工程とを有することを特徴とす
    る巨大フラーレンの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の巨大フラーレンの製造方
    法において、 前記巨大フラーレンを形成した後に、さらに同一または
    異なる高エネルギービームを前記非晶質炭素に照射し、
    前記巨大フラーレンを成長させることを特徴とする巨大
    フラーレンの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の巨大フラーレンの製造方
    法において、 前記ターゲット材の複数の細孔内壁に、前記高エネルギ
    ービームを同時に斜め方向から照射することにより、前
    記非晶質炭素の表層部に複数の前記巨大フラーレンを形
    成することを特徴とする巨大フラーレンの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の巨大フラーレンの製造方
    法において、 前記複数の巨大フラーレンを形成した後に、さらに同一
    または異なる高エネルギービームを前記非晶質炭素に照
    射し、前記複数の巨大フラーレンを相互に連結させて膜
    状構造を形成することを特徴とする巨大フラーレンの製
    造方法。
  5. 【請求項5】 非晶質炭素膜と、 前記非晶質炭素膜の表層部に形成され、閉殻構造の層状
    カーボン組織を有する複数の巨大フラーレンを有し、か
    つ隣接する前記複数の巨大フラーレンが相互に連結して
    膜状構造を成している膜状巨大フラーレンとを具備する
    ことを特徴とする膜状巨大フラーレン構造体。
JP12664396A 1996-05-22 1996-05-22 巨大フラーレンの製造方法および膜状巨大フラーレン構造体 Expired - Fee Related JP3445059B2 (ja)

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