JP3440043B2 - 糸条交絡処理装置 - Google Patents
糸条交絡処理装置Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮流体の作用に
よってマルチフィラメントからなる糸条に交絡を付与す
る糸条交絡処理装置に関し、特に圧縮流体の消費が少な
く、低噴射圧にもかかわらず優れた交絡処理を安定して
付与することができるとともに、糸条へのダメージが少
ない糸条交絡処理装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、合成繊維等の製造工程において、
マルチフィラメントからなる糸条に圧縮流体を噴出して
交絡処理を施し、交絡部と紡錘形に開繊された開繊部と
が交互に連続してなる交絡糸を形成することが行われて
おり、この交絡糸を形成する糸条交絡処理装置として、
これまでさまざまなものが提案されている。 【0003】図8(a)(b)に示す従来の糸条交絡処
理装置21は、両端にそれぞれ糸ガイド29a,29b
を有する取付金具30の中央に、図9(a)に示すノズ
ルプレート22を水平に固定し、このノズルプレート2
2上にスペーサ28a,28bを介して図9(b)に示
すカバープレート25を設置することにより、ノズルプ
レート22の平面24とカバープレート25の平面26
とを対向配置するとともに、前記ノズルプレート22の
平面24には2つの噴射孔23a,23bを有し、これ
ら噴射孔23a,23bからカバープレート25の平面
26に対して鉛直に引いた垂線により囲まれる領域を糸
処理領域Sとしたものがあった。なお、27は糸条Wを
糸処理領域Sへ導くための開口部である(米国特許第
3,115,691号、特開昭59−66532号公報
参照)。 【0004】そして、この糸交絡処理装置21により糸
条Wに交絡を付与するには、糸条Wを開口部27からカ
バープレート25とノズルプレート22との隙間に導
き、両端に糸ガイド29a,29bによって糸条Wが糸
処理領域Sを走行するように規制するとともに、走行す
る糸条Wに対して2つの噴射孔23a,23bより圧縮
流体を噴出することによって糸条Wに交絡を付与するよ
うになっていた。 【0005】また、図9(a)(b)に示すノズルプレ
ート22やカバープレート25以外に、噴射孔23a,
23bより噴出した圧縮流体を効率良く排出させて糸条
Wの走行を安定させるため、図11(a)(b)に示す
ように、ノズルプレート22の平面24に、糸条Wの走
行方向に沿った曲面状の溝34を形成したものや、図1
2(a)(b)に示すように、ノズルプレート22の平
面24における糸条Wの入口側と出口側にそれぞれ外側
に向かって広がる曲面状の切り欠き部35a,35bを
形成するとともに、カバープレート25の平面26にお
ける糸条Wの入口側と出口側にそれぞれ外側に向かって
広がる曲面状の切り欠き部36a,36bを形成したも
のが提案されている(特開昭61−194243号公
報、特表平5−503963号公報、特開平6−136
631号公報参照)。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、均質な交絡
処理を安定して得るには、糸条Wの品質、品種、特性に
もよるが、噴射孔23a,23bより噴出する圧縮流体
の流量を多くすれば良く、流量を多くすることで、交絡
部の交絡度合いを高め、交絡を更に安定したものとする
ことができる。 【0007】一方、噴射圧力と噴射流量とは正比例の関
係にあり、噴出させる圧縮流体は、予め圧縮機等により
準備しておく必要があるため、噴射孔23a,23bよ
り噴出させる圧縮流体の流量が多いと、逆に電力などの
エネルギー消費が多くなり、結果として製造コストが高
くなるといった問題があった。 【0008】しかも、圧縮流体の流量が多くなると、糸
処理領域Sを走行する糸条Wは、より激しく振動を行な
い、ノズルプレート22の平面24やカバープレート2
5の平面26と過剰に摺接するため、糸条Wに毛羽やル
ープ等が発生し、ダメージを与え易いといった問題もあ
った。 【0009】その為、今日では低噴射圧でも効率良く糸
条Wに交絡を付与することが可能な糸条交絡処理装置2
1が要求されていた。 【0010】しかしながら、この種の糸条交絡処理装置
21は、2つの噴射孔23a,23bより噴出される圧
縮流体が交差、衝突する相互作用によって糸条Wに交絡
を付与する構造であることから、図9(a)(b)に示
すノズルプレート22とカバープレート25を有するも
のでは、噴出圧が0.2MPaより低くなると、噴射孔
23a,23bよりそれぞれ噴出された圧縮流体の流速
が十分に上がらず、交絡が不安定になるといった課題が
あった。 【0011】このメカニズムは明らかでないが、本件発
明者の研究によれば、図10に従来の糸条交絡処理装置
21における糸処理領域Sに作用する流体の流れを説明
する模式図を示すように、2つの噴射孔23a,23b
より噴出された圧縮流体の流れFは、糸処理領域Sにて
互いに交差、衝突し、流れの向きを変えて糸条Wの走行
方向に流れるため、糸処理領域Sの近傍が負圧状態とな
る。その結果、糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に
は、外部から糸処理領域Sに向かって流れる吸引流fが
発生し、この吸引流fが交絡の安定性に関与しているこ
とを知見した。そして、図9(a)(b)に示すノズル
プレート22とカバープレート25からなるものでは、
吸引流fが発生する糸条Wの走行方向に対して垂直な方
向の隙間が長くかつ狭いことから、吸引流fの流れが弱
く、圧縮流体Fの流速が上がらないため、安定した交絡
処理が得られないものと思われる。 【0012】一方、図11(a)(b)や図12(a)
(b)に示すノズルプレート22やカバープレート25
を備えたものでは、糸条Wの走行方向における圧縮流体
の排出作用はあるものの、吸引流fが発生する糸条Wの
走行方向に対して垂直な方向の構造が、図9(a)
(b)と同様の構造であるこから、圧縮流体の流速を高
めるのに重要な吸引流fの流れが弱く、その結果、0.
2MPaより低い噴射圧では、糸条Wに安定した交絡処
理を施すことができなかった。 【0013】 【発明の目的】本発明の目的は、圧縮流体の消費が少な
く、低噴射圧においても優れた交絡処理を安定して付与
することができるとともに、糸条へのダメージが少ない
糸条交絡処理装置を提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、カバープレートの平面とノズルプレートの平
面とを隙間を設けて対向配置し、上記ノズルプレートの
平面には複数の噴射孔を備えるとともに、最外に位置す
る2つの噴射孔から前記カバープレートの平面に対して
鉛直に引いた垂線により囲まれる領域を糸処理領域とし
て成り、該糸処理領域を走行する糸条に対して前記噴射
孔より圧縮流体を噴出させることにより、前記糸条に交
絡を付与する糸条交絡処理装置において、前記カバープ
レートの平面に前記糸条の走向方向に対して垂直な方向
で前記糸処理領域の噴射孔の最大外側点を始点として5
mm以内を始点として外側に向かって広がるテーパ状の
切り欠き部及び/又は前記ノズルプレートの平面に前記
糸処理領域の噴射孔の最大外側点より5mm以内を始点
として外側に向かって広がるテーパ状の切り欠き部を設
けたことを特徴とする。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。 【0016】図1は本発明に係る糸条交絡処理装置を示
す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X線断
面図であり、図2(a)は図1の糸条交絡処理装置を形
成するノズルプレートのみを示す斜視図、図2(b)は
図1の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートのみ
を示す斜視図である。 【0017】この糸条交絡処理装置1は、両端にそれぞ
れ糸ガイド9a,9bを備えた取付金具10の中央に、
前記糸ガイド9a,9bによって規制される糸条Wの走
行方向に対して垂直な方向から圧縮流体を噴出する2つ
の噴射孔3a,3bを備えた平面4を有するノズルプレ
ート2を固定するとともに、該ノズルプレート2の平面
4には、スペーサ8a,8bを介してカバープレート5
の平面6を対向配置してあり、前記各噴射孔3a,3b
からカバープレート5の平面6に対して各々鉛直に引い
た垂線により囲まれる領域を糸処理領域Sとしてある。
なお、7は糸条Wを糸処理領域Sへ導くための開口部で
あり、また、糸ガイド9a,9bのガイド面は、糸条W
が糸処理領域Sのほぼ中央を走行するように設定してあ
る。 【0018】また、ノズルプレート2の平面4に開口す
る2つの噴射孔3a,3bは、糸条Wに向かって噴出す
るように傾斜させてあり、各噴射孔3a,3bは、各々
の軸線の交差角度が60°〜120°となるようにして
ある。 【0019】さらに、ノズルプレート2の平面4には、
糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に、糸処理領域S
近傍から外側に向かって広がるテーパ状の切り欠き部1
2a,12bを形成するとともに、カバープレート5の
平面6にも、糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に、
糸処理領域S近傍から外側に向かって広がるテーパ状の
切り欠き部13a,13bを形成してある。 【0020】そして、この糸条交絡処理装置1により糸
条Wに交絡を付与するには、開口部7より糸条Wをノズ
ルプレート2とカバープレート5との隙間に導き、両端
の糸ガイド9a,9bによって糸条Wが糸処理領域Sを
走行するように規制するとともに、走行する糸条Wに対
して2つの噴射孔3a,3bより圧縮流体を噴出するこ
とによって糸条Wに交絡を付与するようになっている。 【0021】そして、本発明によれば、ノズルプレート
2の平面4及びカバープレート5の平面6に、糸条Wの
走行方向に対して垂直な方向に、糸処理領域Sの近傍か
ら外部に広がる切り欠き部12a,12b,13a,1
3bを形成してあることから、噴射孔3a,3bより噴
出される圧縮流体がスムーズに流れ、低い噴射圧でも安
定した交絡処理を実現することができる。 【0022】即ち、図3に本発明に係る糸条交絡処理装
置1における糸処理領域Sに作用する流体の流れを説明
する模式図を示すように、2つの噴射孔3a,3bより
噴出された圧縮流体の流れFは、糸処理領域Sにて互い
に交差、衝突して糸条Wの走行方向に変わり、糸処理領
域Sの近傍が負圧となる。その為、糸条Wの走行方向に
対して垂直な方向には外部から糸処理領域Sへ流れる吸
引流fが発生するのであるが、ノズルプレート2の平面
4に形成した切り欠き部12a,12b、及びカバープ
レート5の平面6に形成した切り欠き部13a,13b
によって、吸引流fを外部から糸処理領域Sへスムーズ
に導くことができるため、噴射孔3a,3bから噴出さ
れる圧縮流体の流速を高めることができ、0.2MPa
より低い噴出圧でも安定した交絡処理を施すことができ
る。 【0023】その結果、圧縮流体の消費が少ないにもか
かわらず、糸条Wへの交絡数や交絡率を向上させること
ができ、交絡糸の集束性を高めることができるととも
に、ノズルプレート2の平面4やカバープレート5の平
面6と摺接する糸条Wに与える毛羽やループ等のダメー
ジを大幅に低減することができ、以て糸品質を高めるこ
とができる。さらに、圧縮流体の消費が少ないことか
ら、圧縮機等にて圧縮流体を準備する電力等のエネルギ
ー消費を低減できるため、製造コストを抑えることがで
きる。 【0024】ところで、このような効果を奏するために
は、ノズルプレート2に形成する切り欠き部12a,1
2bの始点L1を、最外に位置する噴射孔3a,3bの
最大外側点11a,11bから5mm以内、好ましくは
4mm以内の範囲に設けるとともに、カバープレート5
に形成する切り欠き部13a,13bの始点L2を、最
外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点11a,1
1bからカバープレート5の平面6に対して鉛直に引い
た垂線との交点から5mm以内、好ましくは4mm以内
の範囲に設けることが好ましい。これは、ノズルプレー
ト2に形成する切り欠き部12a,12bの始点L
1が、最外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点1
1a,11bから5mmを超えて離れた位置や、カバー
プレート5に形成する切り欠き部13a,13bの始点
L2が、最外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点
11a,11bからカバープレート5の平面6に対して
鉛直に引いた垂線との交点から5mmを超えて離れた位
置にあると、吸引流fの流れが糸処理領域Sで阻害さ
れ、圧縮流体の流速を高める効果が低下するからであ
る。 【0025】なお、好ましくは、ノズルプレート2に形
成する切り欠き部12a,12bの始点L1が、最外に
位置する噴射孔3a,3bの最大外側点11a,11b
から5mm以内の位置にあり、かつ最外に位置する噴射
孔3a,3bの最大外側点11a,11bから外側に5
mm離れた位置における平面4からの深さが0.5mm
以上であるとともに、カバープレート5に形成する切り
欠き部13a,13bの始点L2が、最外に位置する噴
射孔3a,3bの最大外側点11a,11bからカバー
プレート5の平面6に対して鉛直に引いた垂線との交点
から5mm以内の位置にあり、かつ最外に位置する噴射
孔3a,3bの最大外側点11a,11bからカバープ
レート5の平面6に対して鉛直に引いた垂線との交点か
ら5mm以内の位置における平面6からの深さが0.5
mm以上深いものが良い。 【0026】また、図1(b)に示すように、テーパ状
の切り欠き部12a,12b,13a,13bを形成す
る場合、各平面4,6に対するテーパー角度θは10°
以上にすれば、糸処理領域Sへの吸引流fのスムーズな
流れが得られ、以て噴射孔3a,3bより噴出される圧
縮流体の流速を高めることができる。 【0027】さらに、各切り欠き部12a,12b,1
3a,13bの切り欠き幅Kは、噴射孔3a,3bの孔
径よりも大きくすることが好ましく、実質的には5mm
以上あれば良い。 【0028】ただし、切り欠き部12a,12b,13
a,13bの形状としては、図2(a)(b)に示した
テーパ状以外に、図4(a)(b)に示すような糸処理
領域Sから外部に向かって広がる曲面状をしたものでも
良く、さらには図示していないが、糸処理領域Sの近傍
まで完全に切り欠いた凹部を備えたものであっても構わ
ない。 【0029】また、切り欠き部12a,12b,13
a,13bは必ずしもノズルプレート2とカバープレー
ト5の両方に形成してある必要はなく、ノズルプレート
2かカバープレート5のいずれか一方に形成してあれば
良い。 【0030】なお、糸条Wが走行する方向のノズルプレ
ート2及びカバープレート5の全長は、約10〜40m
m程度あれば良く、また、各糸ガイド9a,9bからノ
ズルプレート2の端部までの距離は100mm以下の範囲
で設定してあれば良い。 【0031】ところで、糸処理領域Sを形成するノズル
プレート2及びカバープレート5の少なくとも平面4,
6は、糸条Wと高速度で摺動することから耐摩耗性に優
れたアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、窒化
アルミニウムを主成分とするセラミックスにより形成す
ることが好ましく、各プレート2,5全体を上記セラミ
ックスによって形成しても構わない。 【0032】また、ノズルプレート2の平面4及びカバ
ープレート5の平面6の面粗度は、糸条Wの種類にもよ
るが、例えば、フラットヤーンのような滑らかな表面を
有する糸条Wに対しては、中心線平均粗さ(Ra)で
0.8μm程度の凹凸を有する梨地とすれば良く、加工
糸やテクスチャードヤーンのような表面に凹凸を有する
糸条Wに対しては、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μ
m以下の平滑面とすれば良い。 【0033】以上、本実施形態について説明したが、本
発明は実施形態に示したものだけに限定されるものでは
なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更する
ことができることは言うまでもない。 【0034】 【実施例】(実施例1)ここで、図2(a)(b)に示
すノズルプレート2とカバープレート5を備えた本発明
の糸条交絡処理装置1と、比較例として図9(a)
(b)及び図11(a)(b)に示すノズルプレート2
2とカバープレート25を備えた従来の糸条交絡処理装
置21とを用意し、ポリエステルマルチフィラメントに
交絡処理を施して、交絡特性(交絡率)を調べる実験を
行った。 【0035】実施例1における交絡加工条件は、150
d/48fのポリエステルマルチフィラメントからなる
糸条Wを、加工速度600m/分で糸処理領域Sを走行
させ、噴射孔3a,3b,23a,23bの圧縮空気の
噴射圧力を0.1〜0.4MPaの範囲に設定した。 【0036】なお、各糸条交絡処理装置1,21を構成
する基本寸法はいずれも以下に示す寸法とした。 噴射孔3a,3b,23a,23bの孔径:1.1mm 噴射孔3a,3b,23a,23bの数:2 噴射孔3a,3b,23a,23bの交差角度:90° 噴射孔3a,3b,23a,23bの中心間距離:4.
25mm ノズルプレート2,22とカバープレート5,25との
隙間の距離:1.2mm ノズルプレート2,22及びカバープレート5,25の
全長:20mm また、本発明に係る糸条交絡処理装置1に備える切り欠
き部12a,12b,13a,13bは以下の寸法とし
た。 噴射孔3a,3bの最大外側点11a,11b から切り欠き始点L1,L2までの距離 :2.0mm 切り欠き部のテーパー角度θ :30° 切り欠き幅K :10mm さらに、図11(a)(b)のノズルプレート22とカ
バープレート25とを備えた従来の糸条交絡処理装置2
1に備える溝34は以下の寸法とした。 溝34の曲率半径R :5.0mm 溝34の最大深さ :3.0mm また、交絡特性の評価にあたっては、交絡処理後、糸条
Wに1d(デニーア)当たり0.1g(グラム)の荷重
を付与して伸ばした状態を基準長とし、この基準長内で
交絡している数と、上手く交絡していない数を数回測定
した。そして、交絡している数と上手く交絡していない
数との総和に対する交絡している数の割合を百分率で求
めたものを交絡率として評価した。 【0037】この結果、図5に各糸条交絡処理装置1,
21における噴射圧力と交絡率との関係を示すように、
曲線1の本発明に係る糸条交絡処理装置1が、少ない噴
射圧力にて高い交絡率を得ることができ、最も優れた交
絡特性を有していた。 【0038】かくして、ノズルプレート2及びガイドプ
レート5の表面4,6にそれぞれ糸条処理領域S近傍か
ら糸条の走行方向に対して垂直な方向に切り欠き部12
a,12b,13a,13bを設けることで、糸条に安
定して交絡を付与できることが判る。 【0039】(実施例2)そこで、本発明の糸条交絡処
理装置1において、噴射孔3a,3bの最大外側点11
a,11bを基準点とし、切り欠き始点L1,L2を−2
mm〜10mmの範囲で異ならせた時の交絡特性(交絡
率)について調べる実験を行った。 【0040】なお、交絡加工条件は、150d/48f
のポリエステルマルチフィラメントからなる糸条Wを、
加工速度600m/分で糸処理領域Sを走行させ、噴射
孔3a,3bの圧縮空気の噴射圧力を0.1MPaに設
定した。 【0041】この結果、図6に切り欠き始点L1,L2の
開始位置と交絡特性(交絡率)との関係を示すように、
基準点から切り欠き始点L1,L2までの距離が5mm以
内であれば、安定して高い交絡率が得られ、特に、切り
欠き始点L1,L2を4mm以内とすれば更に高い交絡率
が安定して得られることが判る。 【0042】(実施例3)次に、本発明の糸条交絡処理
装置1において、切り欠き部12a,12b,13a,
13bの切り欠き角度θを0°〜45°の範囲で異なら
せた時の交絡特性(交絡率)について、実施例2と同様
の交絡加工条件にて調べた。 【0043】この結果、図7に切り欠き角度θと交絡特
性(交絡率)の関係を示すように、切り欠き角度θを1
0°以上とすることにより安定した高い交絡率が得られ
ることが判る。 【0044】 【発明の効果】以上のように、カバープレートの平面と
ノズルプレートの平面とを隙間を設けて対向配置し、上
記ノズルプレートの平面には複数の噴射孔を備えるとと
もに、最外に位置する2つの噴射孔から前記カバープレ
ートの平面に対して鉛直に引いた垂線により囲まれる領
域を糸処理領域として成り、該糸処理領域を走行する糸
条に対して前記噴射孔より圧縮流体を噴出させることに
より、前記糸条に交絡を付与する糸条交絡処理装置にお
いて、前記カバープレートの平面に前記糸条の走向方向
に対して垂直な方向で前記糸処理領域の噴射孔の最大外
側点を始点として5mm以内を始点として外側に向かっ
て広がるテーパ状の切り欠き部及び/又は前記ノズルプ
レートの平面に前記糸処理領域の噴射孔の最大外側点よ
り5mm以内を始点として外側に向かって広がるテーパ
状の切り欠き部を設けたことによって、0.2MPaよ
り低い噴射圧力においても優れた交絡処理を安定して付
与することができる。 【0045】しかも、低い噴射圧力にて交絡処理を施せ
ば、圧縮流体の消費が少ないにもかかわらず、交絡数や
交絡率を向上させ、交絡糸の集束性を高めることができ
るとともに、ノズルプレートやカバープレートとの衝突
に伴って発生する毛羽やループ等のダメージを大幅に低
減することができ、以て糸品質を高めることができる。 【0046】さらに圧縮流体の消費が少ないので、エア
ーコンプレッサー等にて圧縮流体を準備するエネルギー
消費を低減でき、製造コストを抑えることができる。
よってマルチフィラメントからなる糸条に交絡を付与す
る糸条交絡処理装置に関し、特に圧縮流体の消費が少な
く、低噴射圧にもかかわらず優れた交絡処理を安定して
付与することができるとともに、糸条へのダメージが少
ない糸条交絡処理装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、合成繊維等の製造工程において、
マルチフィラメントからなる糸条に圧縮流体を噴出して
交絡処理を施し、交絡部と紡錘形に開繊された開繊部と
が交互に連続してなる交絡糸を形成することが行われて
おり、この交絡糸を形成する糸条交絡処理装置として、
これまでさまざまなものが提案されている。 【0003】図8(a)(b)に示す従来の糸条交絡処
理装置21は、両端にそれぞれ糸ガイド29a,29b
を有する取付金具30の中央に、図9(a)に示すノズ
ルプレート22を水平に固定し、このノズルプレート2
2上にスペーサ28a,28bを介して図9(b)に示
すカバープレート25を設置することにより、ノズルプ
レート22の平面24とカバープレート25の平面26
とを対向配置するとともに、前記ノズルプレート22の
平面24には2つの噴射孔23a,23bを有し、これ
ら噴射孔23a,23bからカバープレート25の平面
26に対して鉛直に引いた垂線により囲まれる領域を糸
処理領域Sとしたものがあった。なお、27は糸条Wを
糸処理領域Sへ導くための開口部である(米国特許第
3,115,691号、特開昭59−66532号公報
参照)。 【0004】そして、この糸交絡処理装置21により糸
条Wに交絡を付与するには、糸条Wを開口部27からカ
バープレート25とノズルプレート22との隙間に導
き、両端に糸ガイド29a,29bによって糸条Wが糸
処理領域Sを走行するように規制するとともに、走行す
る糸条Wに対して2つの噴射孔23a,23bより圧縮
流体を噴出することによって糸条Wに交絡を付与するよ
うになっていた。 【0005】また、図9(a)(b)に示すノズルプレ
ート22やカバープレート25以外に、噴射孔23a,
23bより噴出した圧縮流体を効率良く排出させて糸条
Wの走行を安定させるため、図11(a)(b)に示す
ように、ノズルプレート22の平面24に、糸条Wの走
行方向に沿った曲面状の溝34を形成したものや、図1
2(a)(b)に示すように、ノズルプレート22の平
面24における糸条Wの入口側と出口側にそれぞれ外側
に向かって広がる曲面状の切り欠き部35a,35bを
形成するとともに、カバープレート25の平面26にお
ける糸条Wの入口側と出口側にそれぞれ外側に向かって
広がる曲面状の切り欠き部36a,36bを形成したも
のが提案されている(特開昭61−194243号公
報、特表平5−503963号公報、特開平6−136
631号公報参照)。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、均質な交絡
処理を安定して得るには、糸条Wの品質、品種、特性に
もよるが、噴射孔23a,23bより噴出する圧縮流体
の流量を多くすれば良く、流量を多くすることで、交絡
部の交絡度合いを高め、交絡を更に安定したものとする
ことができる。 【0007】一方、噴射圧力と噴射流量とは正比例の関
係にあり、噴出させる圧縮流体は、予め圧縮機等により
準備しておく必要があるため、噴射孔23a,23bよ
り噴出させる圧縮流体の流量が多いと、逆に電力などの
エネルギー消費が多くなり、結果として製造コストが高
くなるといった問題があった。 【0008】しかも、圧縮流体の流量が多くなると、糸
処理領域Sを走行する糸条Wは、より激しく振動を行な
い、ノズルプレート22の平面24やカバープレート2
5の平面26と過剰に摺接するため、糸条Wに毛羽やル
ープ等が発生し、ダメージを与え易いといった問題もあ
った。 【0009】その為、今日では低噴射圧でも効率良く糸
条Wに交絡を付与することが可能な糸条交絡処理装置2
1が要求されていた。 【0010】しかしながら、この種の糸条交絡処理装置
21は、2つの噴射孔23a,23bより噴出される圧
縮流体が交差、衝突する相互作用によって糸条Wに交絡
を付与する構造であることから、図9(a)(b)に示
すノズルプレート22とカバープレート25を有するも
のでは、噴出圧が0.2MPaより低くなると、噴射孔
23a,23bよりそれぞれ噴出された圧縮流体の流速
が十分に上がらず、交絡が不安定になるといった課題が
あった。 【0011】このメカニズムは明らかでないが、本件発
明者の研究によれば、図10に従来の糸条交絡処理装置
21における糸処理領域Sに作用する流体の流れを説明
する模式図を示すように、2つの噴射孔23a,23b
より噴出された圧縮流体の流れFは、糸処理領域Sにて
互いに交差、衝突し、流れの向きを変えて糸条Wの走行
方向に流れるため、糸処理領域Sの近傍が負圧状態とな
る。その結果、糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に
は、外部から糸処理領域Sに向かって流れる吸引流fが
発生し、この吸引流fが交絡の安定性に関与しているこ
とを知見した。そして、図9(a)(b)に示すノズル
プレート22とカバープレート25からなるものでは、
吸引流fが発生する糸条Wの走行方向に対して垂直な方
向の隙間が長くかつ狭いことから、吸引流fの流れが弱
く、圧縮流体Fの流速が上がらないため、安定した交絡
処理が得られないものと思われる。 【0012】一方、図11(a)(b)や図12(a)
(b)に示すノズルプレート22やカバープレート25
を備えたものでは、糸条Wの走行方向における圧縮流体
の排出作用はあるものの、吸引流fが発生する糸条Wの
走行方向に対して垂直な方向の構造が、図9(a)
(b)と同様の構造であるこから、圧縮流体の流速を高
めるのに重要な吸引流fの流れが弱く、その結果、0.
2MPaより低い噴射圧では、糸条Wに安定した交絡処
理を施すことができなかった。 【0013】 【発明の目的】本発明の目的は、圧縮流体の消費が少な
く、低噴射圧においても優れた交絡処理を安定して付与
することができるとともに、糸条へのダメージが少ない
糸条交絡処理装置を提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、カバープレートの平面とノズルプレートの平
面とを隙間を設けて対向配置し、上記ノズルプレートの
平面には複数の噴射孔を備えるとともに、最外に位置す
る2つの噴射孔から前記カバープレートの平面に対して
鉛直に引いた垂線により囲まれる領域を糸処理領域とし
て成り、該糸処理領域を走行する糸条に対して前記噴射
孔より圧縮流体を噴出させることにより、前記糸条に交
絡を付与する糸条交絡処理装置において、前記カバープ
レートの平面に前記糸条の走向方向に対して垂直な方向
で前記糸処理領域の噴射孔の最大外側点を始点として5
mm以内を始点として外側に向かって広がるテーパ状の
切り欠き部及び/又は前記ノズルプレートの平面に前記
糸処理領域の噴射孔の最大外側点より5mm以内を始点
として外側に向かって広がるテーパ状の切り欠き部を設
けたことを特徴とする。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。 【0016】図1は本発明に係る糸条交絡処理装置を示
す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X線断
面図であり、図2(a)は図1の糸条交絡処理装置を形
成するノズルプレートのみを示す斜視図、図2(b)は
図1の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートのみ
を示す斜視図である。 【0017】この糸条交絡処理装置1は、両端にそれぞ
れ糸ガイド9a,9bを備えた取付金具10の中央に、
前記糸ガイド9a,9bによって規制される糸条Wの走
行方向に対して垂直な方向から圧縮流体を噴出する2つ
の噴射孔3a,3bを備えた平面4を有するノズルプレ
ート2を固定するとともに、該ノズルプレート2の平面
4には、スペーサ8a,8bを介してカバープレート5
の平面6を対向配置してあり、前記各噴射孔3a,3b
からカバープレート5の平面6に対して各々鉛直に引い
た垂線により囲まれる領域を糸処理領域Sとしてある。
なお、7は糸条Wを糸処理領域Sへ導くための開口部で
あり、また、糸ガイド9a,9bのガイド面は、糸条W
が糸処理領域Sのほぼ中央を走行するように設定してあ
る。 【0018】また、ノズルプレート2の平面4に開口す
る2つの噴射孔3a,3bは、糸条Wに向かって噴出す
るように傾斜させてあり、各噴射孔3a,3bは、各々
の軸線の交差角度が60°〜120°となるようにして
ある。 【0019】さらに、ノズルプレート2の平面4には、
糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に、糸処理領域S
近傍から外側に向かって広がるテーパ状の切り欠き部1
2a,12bを形成するとともに、カバープレート5の
平面6にも、糸条Wの走行方向に対して垂直な方向に、
糸処理領域S近傍から外側に向かって広がるテーパ状の
切り欠き部13a,13bを形成してある。 【0020】そして、この糸条交絡処理装置1により糸
条Wに交絡を付与するには、開口部7より糸条Wをノズ
ルプレート2とカバープレート5との隙間に導き、両端
の糸ガイド9a,9bによって糸条Wが糸処理領域Sを
走行するように規制するとともに、走行する糸条Wに対
して2つの噴射孔3a,3bより圧縮流体を噴出するこ
とによって糸条Wに交絡を付与するようになっている。 【0021】そして、本発明によれば、ノズルプレート
2の平面4及びカバープレート5の平面6に、糸条Wの
走行方向に対して垂直な方向に、糸処理領域Sの近傍か
ら外部に広がる切り欠き部12a,12b,13a,1
3bを形成してあることから、噴射孔3a,3bより噴
出される圧縮流体がスムーズに流れ、低い噴射圧でも安
定した交絡処理を実現することができる。 【0022】即ち、図3に本発明に係る糸条交絡処理装
置1における糸処理領域Sに作用する流体の流れを説明
する模式図を示すように、2つの噴射孔3a,3bより
噴出された圧縮流体の流れFは、糸処理領域Sにて互い
に交差、衝突して糸条Wの走行方向に変わり、糸処理領
域Sの近傍が負圧となる。その為、糸条Wの走行方向に
対して垂直な方向には外部から糸処理領域Sへ流れる吸
引流fが発生するのであるが、ノズルプレート2の平面
4に形成した切り欠き部12a,12b、及びカバープ
レート5の平面6に形成した切り欠き部13a,13b
によって、吸引流fを外部から糸処理領域Sへスムーズ
に導くことができるため、噴射孔3a,3bから噴出さ
れる圧縮流体の流速を高めることができ、0.2MPa
より低い噴出圧でも安定した交絡処理を施すことができ
る。 【0023】その結果、圧縮流体の消費が少ないにもか
かわらず、糸条Wへの交絡数や交絡率を向上させること
ができ、交絡糸の集束性を高めることができるととも
に、ノズルプレート2の平面4やカバープレート5の平
面6と摺接する糸条Wに与える毛羽やループ等のダメー
ジを大幅に低減することができ、以て糸品質を高めるこ
とができる。さらに、圧縮流体の消費が少ないことか
ら、圧縮機等にて圧縮流体を準備する電力等のエネルギ
ー消費を低減できるため、製造コストを抑えることがで
きる。 【0024】ところで、このような効果を奏するために
は、ノズルプレート2に形成する切り欠き部12a,1
2bの始点L1を、最外に位置する噴射孔3a,3bの
最大外側点11a,11bから5mm以内、好ましくは
4mm以内の範囲に設けるとともに、カバープレート5
に形成する切り欠き部13a,13bの始点L2を、最
外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点11a,1
1bからカバープレート5の平面6に対して鉛直に引い
た垂線との交点から5mm以内、好ましくは4mm以内
の範囲に設けることが好ましい。これは、ノズルプレー
ト2に形成する切り欠き部12a,12bの始点L
1が、最外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点1
1a,11bから5mmを超えて離れた位置や、カバー
プレート5に形成する切り欠き部13a,13bの始点
L2が、最外に位置する噴射孔3a,3bの最大外側点
11a,11bからカバープレート5の平面6に対して
鉛直に引いた垂線との交点から5mmを超えて離れた位
置にあると、吸引流fの流れが糸処理領域Sで阻害さ
れ、圧縮流体の流速を高める効果が低下するからであ
る。 【0025】なお、好ましくは、ノズルプレート2に形
成する切り欠き部12a,12bの始点L1が、最外に
位置する噴射孔3a,3bの最大外側点11a,11b
から5mm以内の位置にあり、かつ最外に位置する噴射
孔3a,3bの最大外側点11a,11bから外側に5
mm離れた位置における平面4からの深さが0.5mm
以上であるとともに、カバープレート5に形成する切り
欠き部13a,13bの始点L2が、最外に位置する噴
射孔3a,3bの最大外側点11a,11bからカバー
プレート5の平面6に対して鉛直に引いた垂線との交点
から5mm以内の位置にあり、かつ最外に位置する噴射
孔3a,3bの最大外側点11a,11bからカバープ
レート5の平面6に対して鉛直に引いた垂線との交点か
ら5mm以内の位置における平面6からの深さが0.5
mm以上深いものが良い。 【0026】また、図1(b)に示すように、テーパ状
の切り欠き部12a,12b,13a,13bを形成す
る場合、各平面4,6に対するテーパー角度θは10°
以上にすれば、糸処理領域Sへの吸引流fのスムーズな
流れが得られ、以て噴射孔3a,3bより噴出される圧
縮流体の流速を高めることができる。 【0027】さらに、各切り欠き部12a,12b,1
3a,13bの切り欠き幅Kは、噴射孔3a,3bの孔
径よりも大きくすることが好ましく、実質的には5mm
以上あれば良い。 【0028】ただし、切り欠き部12a,12b,13
a,13bの形状としては、図2(a)(b)に示した
テーパ状以外に、図4(a)(b)に示すような糸処理
領域Sから外部に向かって広がる曲面状をしたものでも
良く、さらには図示していないが、糸処理領域Sの近傍
まで完全に切り欠いた凹部を備えたものであっても構わ
ない。 【0029】また、切り欠き部12a,12b,13
a,13bは必ずしもノズルプレート2とカバープレー
ト5の両方に形成してある必要はなく、ノズルプレート
2かカバープレート5のいずれか一方に形成してあれば
良い。 【0030】なお、糸条Wが走行する方向のノズルプレ
ート2及びカバープレート5の全長は、約10〜40m
m程度あれば良く、また、各糸ガイド9a,9bからノ
ズルプレート2の端部までの距離は100mm以下の範囲
で設定してあれば良い。 【0031】ところで、糸処理領域Sを形成するノズル
プレート2及びカバープレート5の少なくとも平面4,
6は、糸条Wと高速度で摺動することから耐摩耗性に優
れたアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、窒化
アルミニウムを主成分とするセラミックスにより形成す
ることが好ましく、各プレート2,5全体を上記セラミ
ックスによって形成しても構わない。 【0032】また、ノズルプレート2の平面4及びカバ
ープレート5の平面6の面粗度は、糸条Wの種類にもよ
るが、例えば、フラットヤーンのような滑らかな表面を
有する糸条Wに対しては、中心線平均粗さ(Ra)で
0.8μm程度の凹凸を有する梨地とすれば良く、加工
糸やテクスチャードヤーンのような表面に凹凸を有する
糸条Wに対しては、中心線平均粗さ(Ra)で0.2μ
m以下の平滑面とすれば良い。 【0033】以上、本実施形態について説明したが、本
発明は実施形態に示したものだけに限定されるものでは
なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更する
ことができることは言うまでもない。 【0034】 【実施例】(実施例1)ここで、図2(a)(b)に示
すノズルプレート2とカバープレート5を備えた本発明
の糸条交絡処理装置1と、比較例として図9(a)
(b)及び図11(a)(b)に示すノズルプレート2
2とカバープレート25を備えた従来の糸条交絡処理装
置21とを用意し、ポリエステルマルチフィラメントに
交絡処理を施して、交絡特性(交絡率)を調べる実験を
行った。 【0035】実施例1における交絡加工条件は、150
d/48fのポリエステルマルチフィラメントからなる
糸条Wを、加工速度600m/分で糸処理領域Sを走行
させ、噴射孔3a,3b,23a,23bの圧縮空気の
噴射圧力を0.1〜0.4MPaの範囲に設定した。 【0036】なお、各糸条交絡処理装置1,21を構成
する基本寸法はいずれも以下に示す寸法とした。 噴射孔3a,3b,23a,23bの孔径:1.1mm 噴射孔3a,3b,23a,23bの数:2 噴射孔3a,3b,23a,23bの交差角度:90° 噴射孔3a,3b,23a,23bの中心間距離:4.
25mm ノズルプレート2,22とカバープレート5,25との
隙間の距離:1.2mm ノズルプレート2,22及びカバープレート5,25の
全長:20mm また、本発明に係る糸条交絡処理装置1に備える切り欠
き部12a,12b,13a,13bは以下の寸法とし
た。 噴射孔3a,3bの最大外側点11a,11b から切り欠き始点L1,L2までの距離 :2.0mm 切り欠き部のテーパー角度θ :30° 切り欠き幅K :10mm さらに、図11(a)(b)のノズルプレート22とカ
バープレート25とを備えた従来の糸条交絡処理装置2
1に備える溝34は以下の寸法とした。 溝34の曲率半径R :5.0mm 溝34の最大深さ :3.0mm また、交絡特性の評価にあたっては、交絡処理後、糸条
Wに1d(デニーア)当たり0.1g(グラム)の荷重
を付与して伸ばした状態を基準長とし、この基準長内で
交絡している数と、上手く交絡していない数を数回測定
した。そして、交絡している数と上手く交絡していない
数との総和に対する交絡している数の割合を百分率で求
めたものを交絡率として評価した。 【0037】この結果、図5に各糸条交絡処理装置1,
21における噴射圧力と交絡率との関係を示すように、
曲線1の本発明に係る糸条交絡処理装置1が、少ない噴
射圧力にて高い交絡率を得ることができ、最も優れた交
絡特性を有していた。 【0038】かくして、ノズルプレート2及びガイドプ
レート5の表面4,6にそれぞれ糸条処理領域S近傍か
ら糸条の走行方向に対して垂直な方向に切り欠き部12
a,12b,13a,13bを設けることで、糸条に安
定して交絡を付与できることが判る。 【0039】(実施例2)そこで、本発明の糸条交絡処
理装置1において、噴射孔3a,3bの最大外側点11
a,11bを基準点とし、切り欠き始点L1,L2を−2
mm〜10mmの範囲で異ならせた時の交絡特性(交絡
率)について調べる実験を行った。 【0040】なお、交絡加工条件は、150d/48f
のポリエステルマルチフィラメントからなる糸条Wを、
加工速度600m/分で糸処理領域Sを走行させ、噴射
孔3a,3bの圧縮空気の噴射圧力を0.1MPaに設
定した。 【0041】この結果、図6に切り欠き始点L1,L2の
開始位置と交絡特性(交絡率)との関係を示すように、
基準点から切り欠き始点L1,L2までの距離が5mm以
内であれば、安定して高い交絡率が得られ、特に、切り
欠き始点L1,L2を4mm以内とすれば更に高い交絡率
が安定して得られることが判る。 【0042】(実施例3)次に、本発明の糸条交絡処理
装置1において、切り欠き部12a,12b,13a,
13bの切り欠き角度θを0°〜45°の範囲で異なら
せた時の交絡特性(交絡率)について、実施例2と同様
の交絡加工条件にて調べた。 【0043】この結果、図7に切り欠き角度θと交絡特
性(交絡率)の関係を示すように、切り欠き角度θを1
0°以上とすることにより安定した高い交絡率が得られ
ることが判る。 【0044】 【発明の効果】以上のように、カバープレートの平面と
ノズルプレートの平面とを隙間を設けて対向配置し、上
記ノズルプレートの平面には複数の噴射孔を備えるとと
もに、最外に位置する2つの噴射孔から前記カバープレ
ートの平面に対して鉛直に引いた垂線により囲まれる領
域を糸処理領域として成り、該糸処理領域を走行する糸
条に対して前記噴射孔より圧縮流体を噴出させることに
より、前記糸条に交絡を付与する糸条交絡処理装置にお
いて、前記カバープレートの平面に前記糸条の走向方向
に対して垂直な方向で前記糸処理領域の噴射孔の最大外
側点を始点として5mm以内を始点として外側に向かっ
て広がるテーパ状の切り欠き部及び/又は前記ノズルプ
レートの平面に前記糸処理領域の噴射孔の最大外側点よ
り5mm以内を始点として外側に向かって広がるテーパ
状の切り欠き部を設けたことによって、0.2MPaよ
り低い噴射圧力においても優れた交絡処理を安定して付
与することができる。 【0045】しかも、低い噴射圧力にて交絡処理を施せ
ば、圧縮流体の消費が少ないにもかかわらず、交絡数や
交絡率を向上させ、交絡糸の集束性を高めることができ
るとともに、ノズルプレートやカバープレートとの衝突
に伴って発生する毛羽やループ等のダメージを大幅に低
減することができ、以て糸品質を高めることができる。 【0046】さらに圧縮流体の消費が少ないので、エア
ーコンプレッサー等にて圧縮流体を準備するエネルギー
消費を低減でき、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る糸条交絡処理装置を示す図で、
(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図であ
る。 【図2】(a)は図1の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートを示す斜視図であり、(b)は図1の糸条
交絡処理装置を形成するカバープレートを示す斜視図で
ある。 【図3】本発明の糸条交絡処理装置における糸処理領域
に作用する流体の流れを説明するための模式図である。 【図4】(a)は図1の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートの他の例を示す斜視図であり、(b)は図
1の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートの他の
例を示す斜視図である。 【図5】実施例1における噴射圧力と交絡率との関係を
示すグラフである。 【図6】実施例2における切り欠き開始位置と交絡率と
の関係を示すグラフである。 【図7】実施例3における切り欠き角度と交絡率との関
係を示すグラフである。 【図8】従来の糸条交絡処理装置を示す図で、(a)は
斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。 【図9】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートを示す斜視図であり、(b)は図8の糸条
交絡処理装置を形成するカバープレートを示す斜視図で
ある。 【図10】従来の糸条交絡処理装置における糸処理領域
に作用する流体の流れを説明するための模式図である。 【図11】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成する
ノズルプレートの他の例を示す斜視図であり、(b)は
図8の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートの他
の例を示す斜視図である。 【図12】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成する
ノズルプレートの更に他の例を示す斜視図であり、
(b)は図8の糸条交絡処理装置を形成するカバープレ
ートの更に他の例を示す斜視図である。 【符号の説明】 1・・・糸条交絡処理装置 2・・・ノズルプレート
3a,3b・・・噴射孔4・・・ノズルプレートの平面
5・・・カバープレート 6・・・カバープレートの平面 7・・・開口部 8
a,8b・・・スペーサ 9a,9b・・・糸ガイド 10・・・取付金具 11a,11b・・・噴射孔の最大外側点 12a,12b・・・ノズルプレートの切り欠き部 13a,13b・・・カバープレートの切り欠き部 S・・・糸処理領域 W・・・糸条 L1,L2・・・切
り欠き始点 θ・・・切り欠き角度
(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図であ
る。 【図2】(a)は図1の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートを示す斜視図であり、(b)は図1の糸条
交絡処理装置を形成するカバープレートを示す斜視図で
ある。 【図3】本発明の糸条交絡処理装置における糸処理領域
に作用する流体の流れを説明するための模式図である。 【図4】(a)は図1の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートの他の例を示す斜視図であり、(b)は図
1の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートの他の
例を示す斜視図である。 【図5】実施例1における噴射圧力と交絡率との関係を
示すグラフである。 【図6】実施例2における切り欠き開始位置と交絡率と
の関係を示すグラフである。 【図7】実施例3における切り欠き角度と交絡率との関
係を示すグラフである。 【図8】従来の糸条交絡処理装置を示す図で、(a)は
斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。 【図9】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成するノ
ズルプレートを示す斜視図であり、(b)は図8の糸条
交絡処理装置を形成するカバープレートを示す斜視図で
ある。 【図10】従来の糸条交絡処理装置における糸処理領域
に作用する流体の流れを説明するための模式図である。 【図11】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成する
ノズルプレートの他の例を示す斜視図であり、(b)は
図8の糸条交絡処理装置を形成するカバープレートの他
の例を示す斜視図である。 【図12】(a)は図8の糸条交絡処理装置を形成する
ノズルプレートの更に他の例を示す斜視図であり、
(b)は図8の糸条交絡処理装置を形成するカバープレ
ートの更に他の例を示す斜視図である。 【符号の説明】 1・・・糸条交絡処理装置 2・・・ノズルプレート
3a,3b・・・噴射孔4・・・ノズルプレートの平面
5・・・カバープレート 6・・・カバープレートの平面 7・・・開口部 8
a,8b・・・スペーサ 9a,9b・・・糸ガイド 10・・・取付金具 11a,11b・・・噴射孔の最大外側点 12a,12b・・・ノズルプレートの切り欠き部 13a,13b・・・カバープレートの切り欠き部 S・・・糸処理領域 W・・・糸条 L1,L2・・・切
り欠き始点 θ・・・切り欠き角度
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】カバープレートの平面とノズルプレートの
平面とを隙間を設けて対向配置し、上記ノズルプレート
の平面には複数の噴射孔を備えるとともに、最外に位置
する2つの噴射孔から前記カバープレートの平面に対し
て鉛直に引いた垂線により囲まれる領域を糸処理領域と
して成り、該糸処理領域を走行する糸条に対して前記噴
射孔より圧縮流体を噴出させることにより、前記糸条に
交絡を付与する糸条交絡処理装置において、前記カバー
プレートの平面に前記糸条の走向方向に対して垂直な方
向で前記糸処理領域の噴射孔の最大外側点を始点として
5mm以内を始点として外側に向かって広がるテーパ状
の切り欠き部及び/又は前記ノズルプレートの平面に前
記糸処理領域の噴射孔の最大外側点より5mm以内を始
点として外側に向かって広がるテーパ状の切り欠き部を
設けたことを特徴とする糸条交絡処理装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP34135599A JP3440043B2 (ja) | 1999-11-30 | 1999-11-30 | 糸条交絡処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP34135599A JP3440043B2 (ja) | 1999-11-30 | 1999-11-30 | 糸条交絡処理装置 |
Publications (2)
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---|---|
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JP3440043B2 true JP3440043B2 (ja) | 2003-08-25 |
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ID=18345435
Family Applications (1)
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