JP5229117B2 - マルチフィラメント糸の交絡付与装置および交絡付与方法 - Google Patents

マルチフィラメント糸の交絡付与装置および交絡付与方法 Download PDF

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Description

本発明は、マルチフィラメント糸の交絡付与装置および交絡付与方法に関する。
従来、溶融紡糸されてくる合成繊維マルチフィラメント糸の製造プロセスにおいて、該マルチフィラメント糸に集束性を与えるために、比較的、交絡数が少なめで交絡の弱い、所謂、原糸交絡と呼ばれる交絡の付与処理を施すこと行われている。
この交絡の付与は、本来、集束性を伴わずに溶融紡糸されてくる合成繊維マルチフィラメント糸に集束性を与えて取扱い性を向上させるために行うものである。
かかる交絡の付与は、合成繊維の溶融紡糸速度の著しい高速化や多繊条化(フィラメント本数の多数化)に伴い、近年でも、均斉かつ均一に効率良く行う手法の検討がされ具体的な提案もなされている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1においてされている提案は、流体噴射交絡装置の上流および下流にそれぞれ設ける糸道規制ガイドの位置の適正化に関するものであるが、その目標レベルの前提は、高速ではあるものの(特許文献1の段落0026)、実施例などに表されている如くに、特に、せいぜい、フィラメント本数は50本以下、単繊維太さ(単フィラメント太さ)は4デニール(約4.4dtex)以上というものであって、近年のより多繊条化(フィラメント本数の多数化)には十分に対応できたものと言えず、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度、より実際工業的には0.6〜1.5dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要求されるものには十分でなかった。
本発明は、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上500本以下)、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸の原糸交絡についてのものである。
一方、流体交絡処理装置としても、さまざまなものが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
しかし、これらのものは原糸交絡というべきものでなく、加工糸としての交絡マルチフィラメント糸、例えば、ループ等を形成させ、かつそのループの発生を均一にさせること等をねらいとするものであり、それぞれの実施例などの記載からも明らかなように、交絡数では糸1m当たり80個/m程度から、さらには100個/m以上というレベルのものであり、糸速度も300〜600m/分程度というレベルのものであって、糸速度が3000m/分程度の合成繊維の溶融紡糸プロセスとしての処理ではなく、加工以前の原糸に対する交絡処理に関するものではなかった。
特開2002−69780号公報 特開平8−92839号公報 特開2001−248031号公報
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、近年の、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上500本以下)、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度)であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸において、好適な原糸交絡を与え得る新規な合成繊維マルチフィラメント糸を提供すること、さらに、該合成繊維マルチフィラメント糸を製造するのに好適に用いられるマルチフィラメント糸の交絡付与装置と交絡付与方法を提供することにある。
上述した目的を達成する本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与装置は、以下の(1)の構成からなる。
(1)糸条に交絡を付与する糸処理部と、該糸処理部を挟むように開口する少なくとも2つの流体噴射孔と、前記少なくとも2つの流体噴射孔が開口する開口部を有する開口壁面と、該開口壁面に対向し前記糸処理部と外部とを連通するスリット部を前記開口壁面とで構成する対向壁面を有し、前記開口壁面と前記対向壁面の間を走行させる糸条に、前記少なくとも2つの流体噴射孔から流体を噴射させて集束性を付与するマルチフィラメント糸の交絡付与装置において、前記流体噴射孔の軸線および該軸線の交点を糸条走行方向に垂直な面内に設けるとともに、前記開口壁面と前記対向壁面との間隔が前記糸条走行方向上流側の糸入り口部から前記糸条走行方向下流側の糸出口部に向かって広がるように前記対向壁面が傾斜していることを特徴とするしマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
また、かかる本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与装置において、より具体的に好ましくは、以下の(2)〜(5)の構成を有するものである。
(2)前記糸処理部の前記糸条走行方向の糸道長さ(L)と、前記糸条走行方向に対して垂直方向の断面において前記流体噴射孔の中心軸線と前記開口面とが交わる点と、前記流体噴射孔の中心軸線と前記対向壁面とが交わる点を結ぶ距離をギャップ(G)とした場合、前記糸道長さ(L)と前記ギャップ(G)が以下の(1)および(2)式の範囲を満足することを特徴とする上記(1)に記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
3mm≦L≦20mm …(1)
0.3mm≦G≦2mm …(2)
(3)前記糸処理部において糸条が導入される入り口部の稜線および糸条が排出される出口部の稜線に付与されたR取り(R)と、前記糸道長さ(L)との関係が以下の(3)式の範囲を満足することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置
L/50≦R≦L/3 …(3)
(4)加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記加圧流体導入路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも2つの流体噴射ノズル部材及び1つの側板部材を備え、該少なくとも2つの流体噴射ノズル部材は、隣接する他の流体噴射ノズル部材或いは隣接する1つの側板部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、前記それぞれの流体噴射ノズル部材には、糸処理部を挟むように開口する少なくとも2つの流体噴射孔が穿孔されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
(5)前記少なくとも2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部を有することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
また、本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与方法は、以下の(6)の構成からなる。
(6)上記(1)〜(5)のうちのいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置を用いてマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与方法。
また、かかる本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与方法において、より具体的に好ましくは、以下の(7)の構成を有するものである。
(7)単糸繊度が2dtex以下のマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とする上記(6)記載のマルチフィラメント糸の交絡付与方法。
請求項1から5にかかる本発明によれば、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上500本以下)、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸を製造することができる優れたマルチフィラメント糸の交絡付与装置が提供される。
また、請求項6、請求項7にかかる本発明によれば、特に上述の優れた合成繊維マルチフィラメント糸を製造することができる交絡付与方法が提供される。
本発明にかかるマルチフィラメント糸の交絡付与装置の構造を概略的に示した概略斜視図である。 図1に示した流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の走行方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。 図1と図2に示した交絡付与装置1の概略平面モデル図である。 多糸条を同時に集中して処理可能な一体の流体処理装置として組立てられた本発明にかかる交絡付与装置の構造の一例を示したもので、(a)が概略斜視図、(b)が図2と同様に、流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の走行方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。 実施例で採用したポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を溶融紡糸して流体交絡処理に供して、流体交絡マルチフィラメント糸を製造するプロセスの一例をモデル的に示したものである。
以下、更に詳しく本発明について、説明する。
本発明は、糸条に交絡を付与する糸処理部と、該糸処理部を挟むように開口する少なくとも2つの流体噴射孔と、前記少なくとも2つの流体噴射孔が開口する開口部を有する開口壁面と、該開口壁面に対向し前記糸処理部と外部とを連通するスリット部を前記開口壁面とで構成する対向壁面とを有し、前記開口壁面と前記対向壁面の間を走行させる糸条に、前記少なくとも2つの流体噴射孔から流体を噴射させて集束性を付与するマルチフィラメント糸の交絡付与装置において、前記流体噴射孔の軸線および該軸線の交点を糸条走行方向に垂直な面内に設けるとともに、前記開口壁面と前記対向壁面との間隔が前記糸条走行方向上流側の糸入り口部から前記糸条走行方向下流側の糸出口部に向かって広がるように前記対向壁面が傾斜していることを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与装置である。
図1は、本発明にかかるマルチフィラメント糸の交絡付与装置の構造の一例を概略的に示した概略斜視図であり、交絡付与装置1は、流体供給部2、流体噴射ノズル部材3、側板部材4およびスペーサー5からなっており、矢印Yで示したのがマルチフィラメント糸の走行方向である。
この図1に示した流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の走行方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図を、図2に示した。図2において、交絡付与装置1は、2の流体供給部、3の流体噴射ノズル部材、4の側板部材とからなり、7は流体噴射孔であり、2つの流体噴射孔は糸処理部6に向かう方向の各々の流体噴射孔の中心軸線上で交差角を呈して交叉するように糸処理部6に向かって開口している。
同図において、6は糸処理部であり、糸が走行する空間であるとともにこの部分で走行糸が振動挙動を起こして空気交絡が施される。
8はスリット部であり、9は流体導入通路である。スリット部8は交絡付与装置1に走行する連続マルチフィラメント糸を糸通しする際に糸導入部として用いられるものである。
流体導入通路9は、交絡処理に使用される圧空を供給する通路であり、圧縮空気は流体噴射ノズル部材3内に設けられた空間に導かれ、さらに2つの流体噴射孔から空気流が噴射される。
図3は、図1と図2に示した交絡付与装置1の概略平面モデル図であり、図2における糸条走行方向Yの縦断面であるA−A断面を示したものである。流体噴射孔7の中心軸線および中心軸線の交点を糸条走行方向Yに垂直な面内に設ける、すなわち、図2のA−A断面を表した図3において前記流体噴孔の開口部(O)を有する開口壁面(FO)に対する穿孔角(θ°)が直角に穿孔されているとともに、糸処理部6を介して流体噴射孔開口壁面(FO)と対向する位置にある対向壁面(FP)が流体噴射孔7の中心軸線に対し糸条走行方向上流側の糸入り口部から糸条走行方向下流側の糸出口部に向かって対向壁面(FP)が広がるように傾斜している関係を説明する概略モデル図であり、糸処理部6の軸線方向(糸条走行方向)の長さL(mm)と、糸条走行方向Yに対し垂直方向の断面において前記流体噴射孔の中心軸線と前記開口壁面(FO)とが交わる点と、前記流体噴射孔の中心軸線と前記対向壁面(FP)とが交わる点を結ぶ距離(G)との関係を説明するための概略モデル図でもある。
本発明において、穿孔装置により流体噴射孔を開口面に加工する際、開口面に対し穿孔角(θ°)が直角にではなく僅かでも傾斜して穿孔した場合においては、穿孔装置の工具が糸条の走行方向に平行な方向に流されるため開口位置が定まらず、その結果、2つの流体噴射孔から噴射される空気流が糸条の走行方向に平行な方向に対して僅かにずれてしまうことで交絡付与を阻害する仮よりの原因となる旋回流が生じるため、交絡性能にバラツキが発生し安定した交絡性能を得られなくなる。なお、図2に示すように、糸条の走行方向に垂直方向の断面における2つの流体噴射孔から噴射される空気流が交叉する交叉角は、僅かにずれ対称性が崩れても、旋回流を発生させたり空気流を乱したりすることが少ないため交絡性能にはそれほど影響を及ぼさない。
また、流体噴射孔に対し対向壁面が垂直であり、糸入り口側から出口側に向かって広がるように傾斜していないと、糸条に噴射された後の流体は、糸条の走行方向およびそれと反対方向の両方に強く流れるため、マルチフィラメントからなる糸条には、走行方向に対し反対方向に流れる強い空気の力により、糸条の入り口方向に糸条を戻そうとする力が働くことで、マルチフィラメントからなる糸条の一部の単糸繊維が弛んだり、弛んだ単糸繊維が糸道壁面との擦過により切断し毛羽となり、糸条の品位を低下させてしまうという問題がある。
また、本発明は、前記糸処理部の前記糸条走行方向の糸道長さ(L)と、前記糸条走行方向に対して垂直方向の断面において前記流体噴射孔の軸線と前記開口面とが交わる点と、前記流体噴射孔の軸線と前記対向壁面とが交わる点を結ぶ距離をギャップ(G)とした場合、前記糸道長さ(L)と前記ギャップ(G)が以下の(1)および(2)式の範囲を満足するようにすることが好ましい。
3mm≦L≦20mm …(1)
0.3mm≦G≦2mm …(2)
Lが3mm以上20mm以下の範囲にすることで、糸道壁面と非処理糸との接触する時間が短くなるため毛羽やたるみの発生を抑制するとともに、適度に集束性のある安定した交絡が付与できる。
また、Gが0.3mm以上2mm以下の範囲とすることで噴射された空気の排出が損なわれることがないとともに、噴射された空気が糸処理部から糸条が飛び出す方向に流れないので、糸条の長手方向に均一に交絡処理できる。
また、本発明は、前記糸処理部において糸条が導入される入り口部の稜線および糸条が排出される出口部の稜線に付与されたR取り(R)と、前記糸道長さ(L)との関係が以下の(3)式の範囲を満足するようにすることが好ましい。
L/50≦R≦L/3 …(3)
RがL/50以上L/3以下の範囲とすることで、糸条が糸処理部の糸出入り口部で擦過することを和らげることができるので、毛羽やたるみの発生を抑制するとともに、糸条の長手方向において交絡抜けのない均一で安定した交絡が付与できる。
本発明の流体交絡付与装置は、図4(a)、(b)に示したように、複数本のマルチフィラメント糸を平行同時的に、かつ物理的に一つの処理装置に集中させて処理が可能なように一体の流体処理装置として組立てられた多糸条用流体交絡処理ノズルとして使用される場合に、より高い実際的効果を発揮する。
ここで、図4の(a)が該多糸条用流体交絡付与装置の概略斜視図、(b)が図2と同様に、図4(a)の多糸条用流体交絡付与装置におけるマルチフィラメント糸の走行方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。
すなわち、一糸条に対する流体噴射孔を有する流体噴射ノズル部材3が、一方でその背面壁部において隣の糸条の糸処理部6の一部をなす壁を形成していて、そのような兼用構造で多糸条分が連立して一つのユニット体を形成しているという基本的構造を有する流体交絡処理ノズルである。図4において、14、15は一体化のためのボルトである。
上記多糸条用流体交絡付与装置1’は、流体導入通路9を内部に設けた流体供給部2と、該流体供給部2の加圧流体導入通路18の方向に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも2つの流体噴射ノズル部材3A,3,3・・とからなり、該少なくとも2つの流体噴射ノズル部材は、隣接する他の流体噴射ノズル部材との間に、糸処理部6と、この糸処理部6と外部とを連通する糸掛けスリット部8とが介在するように離間させられ、該各々の流体噴射ノズル部材には、前記糸処理部6に向かって開口する流体噴射孔7が穿設されているとともに、前記流体供給部2の加圧流体導入通路18から分岐され流体噴射孔7に連通する流体通路19が設けられている。
この多糸条流体処理装置1’は、流体噴射孔7のみを有する流体噴射ノズル部材3A、流体噴射孔7と糸処理部6を有する流体噴射ノズル部材3、糸処理部6のみを有する側板部4を少なくとも有し、また、これらを一つのユニットに構成するハウジング部材16、流体噴射孔7に流体を供給する流体供給部2から構成される。
図4(a)(b)に示すように、流体噴射ノズル部材3A、流体噴射ノズル部材3、側板部材4及びこれらの流体噴射ノズル部材間に糸処理部6へ糸条を挿入させるための糸掛けスリット部8を構成するスペーサ5をハウジング部材16を両側から挟み込みボルト14で固定する。上記ユニットと流体供給部2は、2本のボルト15により固定され、この間のシールを行うために、Oリング17が設置されている。
コンプレッサなどの流体源(図示せず)から供給される圧縮空気は流体導入通路9を介して加圧流体導入路18へ供給され、流体噴射ノズル部材3,3・・、3A内に形成された流体通路19を介して流体噴射孔7から糸条へ衝突させる。
この多糸条用流体交絡付与装置1’においても、図3に示すように、流体噴射孔7の中心軸線および中心軸線の交点を糸条走行方向Yに垂直な面内に設ける、すなわち、図2のA−A断面を表した図3において前記流体噴孔の開口部Oを有する開口壁面(FO)に対し直角に穿孔されているとともに、糸処理部6を介して流体噴射孔が開口する開口壁面(FO)と対向する位置にある対向壁面(FP)が流体噴射孔7の中心軸線に対し糸条走行方向Yの上流側の糸入り口部から糸条走行方向Yの下流側の糸出口部に向かって対向壁面(FP)が広がるように傾斜させている。
本発明において、この図4に示したような流体処理装置を用いる場合、同時に処理されるマルチフィラメント糸は、3本以上であることが好ましい。
すなわち、本発明において、好ましくは、加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記流体通路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも2つの流体噴射ノズル部材及び1つの側板部材とを備え、該少なくとも2つの流体噴射ノズル部材は、隣接する他の流体噴射ノズル部材或いは1つの側板部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、該それぞれの流体噴射ノズル部材には、糸処理部に向かって開口する少なくとも2つの流体噴射孔が穿孔されている交絡付与装置であることである。
本発明の交絡付与装置において、2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部6A(糸処理部としてみれば、V字形形状の凸部)を有することが好ましい。該V字形形状部を有することにより、走行フィラメント糸の振動挙動が定常的な安定したものとなり糸質や糸品位を均一あるいは均質化する上で好ましいものである。
図5は本発明にかかる交絡付与装置を用いマルチフィラメント糸を製造するためのマルチフィラメント糸の製造装置の概略図であり、13は図示しない紡糸口金より紡出された熱可塑性溶融ポリマーに工程通過性を向上させるためマルチフィラメント糸に油剤付与する給油ガイドである。10、11は3000m/分前後の引き取り速度においてマルチフィラメント糸を延伸し搬送する第1、第2ゴデットローラで、12は延伸し搬送されたマルチフィラメント糸を巻き取る巻取機である。
以下の実施例において、交絡数の測定と判定、毛羽数の測定と判定、バラツキの測定と判定は以下の手法によったものである。
(1)交絡数の測定と評価:
本発明の各実施例および比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸について、ロッシールド社製自動連続交絡度試験器R−2072を用い、プリテンションを10cN、トリップテンションを17cNと設定し、設定計数交絡部数を20個として試料糸を走行させて、交絡部が20個カウントされるまでに要した糸長さ(走行糸長さ)を測定し、交絡部から次の交絡部までの長さの平均値を、まず求めた。
さらに、上記長さの平均値から糸長さ1mあたりの交絡の個数に換算し、該換算値を「糸長さ1mあたり交絡数」として求めた。測定に当たっては、n数を20回としてその平均値を求めた。
交絡数についての判定は、糸1m長さ当たりの交絡数が、2個未満を「不良」として表1では「×」で表記し、2個以上10個未満を「良」として表1では「○」で表記し、10個以上を「最良」として表1では「◎」で表記し、「良」以上を合格とし、「不良」は不合格とした。
(2)毛羽数の測定と判定
本発明の各実施例・比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸について、東レ・エンジニアリング株式会社製毛羽計数装置DT−105を用いて、S型検出器により検出高さを0.5mmに設定し、パッケージの解舒速度を500m/分として、50000mの糸長さについて測定して、そのまま糸50000m長さ当たりに存在する毛羽数として求めた。
毛羽数についての判定は、糸50000m長さ当たりの毛羽数が、7個を越えるものを「不良」とし「×」で表記し、3個を超え7個以下のものを「良」として「○」で表記し、3個以下を「最良」として「◎」で表記し、「良」以上を合格とし、「不良」は不合格とした。
(3)交絡バラつきの評価
上記(1)と同様にロッシールド社製自動連続交絡度試験器R−2072を用い、プリテンションを10cN、トリップテンションを17cNと設定し、設定計数交絡部数を20個として試料糸を走行させて、交絡部から次の交絡部までの長さを20回測定し、変動計数(CV値)を求めた。測定に当たっては、n数を20回としてその平均値を求めた。
バラツキについての判定は、75%をこえるものを「不良」として表1では「×」で表記し、75%以下のものを「良」として表1では「○」で表記した。
上記(1)から(3)の各項目の評価において、「×」が一つでもあるものは「不良」として表1の総合評価の欄に「×」で表記し、「○」または「◎」のときは表1の総合評価の欄に「良」として「○」で表記し、「×」がなく「◎」が2つ以上のものを優秀として表1の総合評価の欄に「◎」で表記した。
実施例1〜10、比較例1〜2
表1に示した各種ディメンジョンの条件の流体交絡付与装置を用いて、図5に示した装置および工程により130dtex、フィラメント本数144本のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を溶融紡糸して流体交絡処理に供して巻取り速度3000m/分で巻き取り、流体交絡マルチフィラメント糸を製造した。
流体交絡付与装置は、表1に示した条件の他、噴射孔径1.0mmとしたものを用い、流体(圧空)噴射圧力を0.2MPaとし、交絡処理を施した。このときの紡糸張力は50gであった。
各実施例および比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸の糸質を表1に示した。
Figure 0005229117
1:交絡付与装置
1’:多糸条用流体交絡付与装置
2:流体供給部
3、3A:流体噴射ノズル部材
4:側板部材
5:スペーサ
6:糸処理部
6A:V字形形状の凹部
7:流体噴射孔
8:スリット部
9:流体導入通路
10:第1ゴデットロール
11:第2ゴデットロール
12:巻取機
13:給油ガイド
14:ボルト
15:ボルト
16:ハウジング部材
17:Oリング
18:加圧流体導入路
19:流体通路
Y:マルチフィラメント糸条の走行方向
L:糸処理部の軸線方向の長さ
θ:開口壁面と2つの流体噴射孔の軸線がなす角(穿孔角)
O:流体噴射孔の開口部
FO:流体噴射孔の開口部を有する開口壁面
FP:流体噴射孔の開口部と対向する対向壁面

Claims (7)

  1. 糸条に交絡を付与する糸処理部と、該糸処理部を挟むように開口する少なくとも2つの流体噴射孔と、前記少なくとも2つの流体噴射孔が開口する開口部を有する開口壁面と、該開口壁面に対向し前記糸処理部と外部とを連通するスリット部を前記開口壁面とで構成する対向壁面とを有し、前記開口壁面と前記対向壁面の間を走行させる糸条に、前記少なくとも2つの流体噴射孔から流体を噴射させて集束性を付与するマルチフィラメント糸の交絡付与装置において、前記流体噴射孔の軸線および該軸線の交点を糸条走行方向に垂直な面内に設けるとともに、前記開口壁面と前記対向壁面との間隔が前記糸条走行方向上流側の糸入り口部から前記糸条走行方向下流側の糸出口部に向かって広がるように前記対向壁面が傾斜していることを特徴とするしマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
  2. 前記糸処理部の前記糸条走行方向の糸道長さ(L)と、前記糸条走行方向に対して垂直方向の断面において前記流体噴射孔の中心軸線と前記開口面とが交わる点と、前記流体噴射孔の中心軸線と前記対向壁面とが交わる点を結ぶ距離をギャップ(G)とした場合、前記糸道長さ(L)と前記ギャップ(G)が以下の(1)および(2)式の範囲を満足することを特徴とする請求項1記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
    3mm≦L≦20mm …(1)
    0.3mm≦G≦2mm …(2)
  3. 前記糸処理部において糸条が導入される入り口部の稜線および糸条が排出される出口部の稜線に付与されたR取り(R)と、前記糸道長さ(L)との関係が以下の(3)式の範囲を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
    L/50≦R≦L/3 …(3)
  4. 加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記加圧流体導入路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも2つの流体噴射ノズル部材及び1つの側板部材とを備え、該少なくとも2つの流体噴射ノズル部材は、隣接する他の流体噴射ノズル部材或いは1つの側板部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、前記それぞれの流体噴射ノズル部材には、糸処理部を挟むように開口する少なくとも2つの流体噴射孔が穿孔されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
  5. 前記少なくとも2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置を用いてマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与方法。
  7. 単糸繊度が2dtex以下のマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とする請求項6に記載のマルチフィラメント糸の交絡付与方法。
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