JP3433035B2 - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

密閉型アルカリ蓄電池

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JP3433035B2 JP03312797A JP3312797A JP3433035B2 JP 3433035 B2 JP3433035 B2 JP 3433035B2 JP 03312797 A JP03312797 A JP 03312797A JP 3312797 A JP3312797 A JP 3312797A JP 3433035 B2 JP3433035 B2 JP 3433035B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛を活物質とす
る負極を備えた放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池に
係わり、詳しくは充放電サイクルの長期にわたって電解
液が外部へ漏出しにくい、信頼性の高い密閉型アルカリ
蓄電池を提供することを主たる目的とした、正極活物質
の改良に関する。放電スタートの電池とは、予め充電す
ることなく初回の放電を行うことができる電池のことで
ある。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】亜鉛を
負極活物質とする密閉型アルカリ蓄電池の正極活物質と
して、二酸化マンガンが提案されている(特公昭45−
3570号公報参照)。また、亜鉛を負極活物質とする
アルカリ一次電池の正極活物質として、酸化ニッケルと
二酸化マンガンとの混合物が提案されている(特開昭4
9−114741号公報参照)。
【0003】しかしながら、二酸化マンガンは、充放電
サイクルにおける可逆性が悪く、初回の放電を行ったの
ち充電しても当初の二酸化マンガンに戻らないので、充
放電サイクルにおいて放電容量が急激に低下する。ま
た、二酸化マンガンの酸素発生電位が低いために、充電
時に正極側で酸素ガス(水の分解による)が発生して電
池内圧が上昇し、それに伴い電池外装部材の接合部の密
着性が低下して、電解液が外部に漏出し易い。
【0004】一方、酸化ニッケルと二酸化マンガンとの
混合物は、これを蓄電池(二次電池)に使用すると、そ
の酸素発生電位が低いために、二酸化マンガンを使用し
た場合と同様に、電池内圧が上昇し易く、漏液が起こり
易い。このように、いずれの正極活物質も、密閉型アル
カリ蓄電池用の正極活物質としては問題があった。
【0005】したがって、本発明は、正極活物質を改良
することにより、充放電サイクルの長期にわたって電解
液が外部へ漏出しにくい、信頼性の高い、亜鉛を活物質
とする負極を備えた放電スタートの密閉型アルカリ蓄電
池を提供することを主たる目的とする。
【0006】
〔式中、Aは複合体粒子中のオキシ水酸化ニッケル粒子のNi原子換算重量であり、Bは複合体粒子中のナトリウム含有コバルト化合物のCo原子換算重量である。〕
【0007】本発明電池においては、導電層率Pが0.
5〜20%の複合体粒子が正極活物質として使用され
る。導電層率Pが0.5%未満の場合は、複合体粒子の
酸素発生電位が低くなり、酸素ガスが発生し易くなる。
一方、導電層率Pが20%を超えた場合は、複合体粒子
のかさ比重が大きくなるため、単位容積当たりの正極活
物質の充填量が減少して、正極容量ひいては電池容量が
減少する。
【0008】本発明における複合体粒子は、例えば、オ
キシ水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルト層、酸
化コバルト層等のコバルト化合物層を形成してなる複合
体粒子を、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた状態
で、50〜200°Cで加熱処理することにより得るこ
とができる。オキシ水酸化ニッケル粒子として、オキシ
水酸化ニッケルに、コバルト、亜鉛、カドミウム、カル
シウム、マンガン、マグネシウムなどのニッケル極の膨
化を抑制する作用を有する元素を固溶させたものを用い
てもよい。コバルト化合物層は、例えば、硫酸コバルト
水溶液に、オキシ水酸化ニッケルを投入し、水酸化ナト
リウム水溶液を加えて、コバルト化合物をオキシ水酸化
ニッケルの粒子表面に化学的に析出させることにより形
成される。オキシ水酸化ニッケルと、酸化コバルト、水
酸化コバルト又は金属コバルトとを混練するメカニカル
チャージ法によっても、コバルト化合物層をオキシ水酸
化ニッケル粒子の表面に形成することができる。加熱処
理温度が50〜200°Cに規制されるのは、この範囲
を外れると、電導率の高い導電層が形成されにくくなる
からである。これは次の理由によると考えられる。
【0009】すなわち、本発明における導電層は、例え
ば水酸化コバルトを出発物質に用いた場合、下記の反応
経路により形成される。
【0010】Co(OH)2 ⇔ HCoO2 - ⇔ Co
HO2 ⇒Na含有コバルト化合物(導電層)
【0011】しかるに、加熱処理温度が50°C未満の
場合は、CoHO2 ⇒Na含有コバルト化合物の反応が
充分に進行しにくくなるため、電導率の低いCoHO2
が多く生成する。一方、加熱処理温度が200°Cを越
えた場合は、電導率の低い四酸化三コバルト(Co3
4 )が多く生成する。これらが、加熱処理温度が50〜
200°Cを外れた場合に電導率の高い導電層が形成さ
れにくくなる理由と考えられる。
【0012】加熱処理時間は、水酸化ナトリウム水溶液
の量、濃度、加熱処理温度などによって異なる。一般的
には、0.5〜10時間である。
【0013】導電層を形成するナトリウム含有コバルト
化合物としては、下式で定義されるNa含有率Qが、
0.1〜10%のものが好ましい。Na含有率Qが、こ
の範囲を外れると、導電層の導電性が悪くなり正極の活
物質利用率が低下して、正極容量ひいては電池容量が低
下するからである。 Na含有率Q(%)=(D/C)×100 〔式中、Cはナトリウム含有コバルト化合物のCo含有
量(重量)であり、Dはナトリウム含有コバルト化合物
のNa含有量(重量)である。〕
【0014】ナトリウム含有コバルト化合物の化学構造
は、本発明者らにおいても現在のところ定かでないが、
これが極めて高い電導度を有することから、コバルト化
合物とナトリウムとの単なる混合物ではなく、コバルト
化合物の結晶中にナトリウムが取り込まれた形の特殊な
結晶構造を有する化合物ではないかと推察される。
【0015】本発明は、亜鉛を負極活物質とする放電ス
タートの密閉型アルカリ蓄電池に適用される。
【0016】本発明は、負極活物質及び正極活物質が総
量で電池缶内容積に対して75体積%以上充填された密
閉型アルカリ蓄電池に適用した場合に、特に有意義であ
る。負極活物質及び正極活物質が多量に充填され、電池
内圧の上昇が大きいこれらの電池では、本発明で規定す
る酸素過電圧の大きい正極活物質を使用することによ
り、電池内圧の上昇が顕著に抑制されるからである。
【0017】上述の如く、本発明電池は、オキシ水酸化
ニッケル粒子の表面に所定割合のナトリウム含有コバル
ト化合物からなる導電層を形成して成る複合体粒子を正
極活物質として使用しているので、充電時に電池内圧が
上昇しにくく、充放電サイクルの長期にわたって電解液
が漏出しにくい。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるも
のではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変
更して実施することが可能なものである。
【0019】(予備実験)水酸化コバルトと、5重量
%、10重量%、15重量%、25重量%、35重量
%、40重量%、45重量%又は50重量%水酸化ナト
リウム水溶液とを、重量比1:10で混合し、80°C
で8時間加熱処理した。加熱処理後、水洗し、60°C
で乾燥して、ナトリウム含有コバルト化合物を作製し
た。これらのナトリウム含有コバルト化合物のNa含有
率Qを原子吸光法により元素分析して求めたところ、順
に0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重
量%、5重量%、10重量%、12重量%、15重量%
であった。以下に記すナトリウム含有コバルト化合物の
Na含有率Qは、上記の分析結果に基づき、使用した水
酸化ナトリウム水溶液の濃度から推定した値である。
【0020】(実験1)この実験では、亜鉛を負極活物
質とする密閉型アルカリ蓄電池の正極活物質として、そ
れぞれオキシ水酸化ニッケルを水酸化コバルトで被覆し
て成る複合体粒子、二酸化マンガン及び酸化ニッケルと
二酸化マンガンとの混合物を使用した場合の各電池の種
々の充放電サイクルにおける容量維持率及び漏液電池数
を調べた。
【0021】(実施例1) 〔正極の作製〕10モル/リットル濃度の水酸化ナトリ
ウム水溶液500mlと10重量%次亜塩素酸ナトリウ
ム(NaClO)水溶液500mlとを混合し、得られ
た混合水溶液1000mlを60°Cに加熱し、水酸化
ニッケル粉末100gを攪拌しながら投入して、1時間
混合した後、濾過し、水洗し、60°Cで乾燥して、オ
キシ水酸化ニッケルを得た。
【0022】次いで、硫酸コバルト1.31gを水に溶
かした水溶液1000mlに、先に得たオキシ水酸化ニ
ッケル10gを投入し、次いで1モル/リットル濃度の
水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下して液のp
Hを11に調整した後、1時間攪拌混合した。この間、
自動温度補償付pHメータにて液のpHを監視して、必
要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を滴下して液のpH
を常時ほぼ11に保持した。
【0023】次いで、生成せる沈殿物を濾別し、水洗
し、室温(約25°C)で真空乾燥して、オキシ水酸化
ニッケルを水酸化コバルトで被覆して成る複合体粒子粉
末を得た。
【0024】次いで、これらの複合体粒子粉末と、25
重量%水酸化ナトリウム水溶液とを、重量比1:10で
混合し、80°Cで8時間加熱処理した後、水洗し、6
0°Cで乾燥して、オキシ水酸化ニッケル粒子の表面に
ナトリウム含有コバルト化合物からなる導電層を形成し
てなる複合体粒子を得た。これらの複合体粒子の導電層
率Pを原子吸光法により求めたところ、5%であった。
なお、導電層を形成するナトリウム含有コバルト化合物
のNa含有率Qは、1%(予備実験からの推定値)であ
る。
【0025】上記の複合体粒子粉末100重量部と、3
0重量%水酸化カリウム水溶液10重量部とを、らいか
い機にて30分間混合し、加圧成型して、円筒中空体状
の正極を作製した。
【0026】〔負極の作製〕負極活物質としての亜鉛粉
末65重量部と、酸化亜鉛(ZnO)を飽和量含む40
重量%水酸化カリウム水溶液34重量部と、ゲル化剤と
してのアクリル酸樹脂1重量部とを混合して、ゲル状の
負極を作製した。
【0027】〔電池の作製〕上記の正極及び負極を用い
て、通称「インサイドアウト型」と呼ばれている構造
(電池缶側が正極側、電池蓋側が負極側)で、AAサイ
ズのニッケル−亜鉛蓄電池(本発明電池)eを作製し
た。ここに、インサイドアウト型電池とは、円筒中空体
状の正極の中空部に、円筒フィルム状のセパレータを介
して、ゲル状の負極が装填された構造の電池をいう。な
お、電池容量が正極容量により規定されるようにするた
めに、正極と負極との電気化学的な容量比を1:1.2
とした(以下の電池も全てこれと同じ容量比にした)。
また、負極活物質及び正極活物質の電池缶内への総充填
量を、電池缶内容積に対して80体積%とした(以下の
電池も全てこれと同じ充填率にした)。
【0028】図1は、作製したニッケル−亜鉛蓄電池の
部分断面図である。図示のニッケル−亜鉛蓄電池eは、
有底円筒状の正極缶(正極外部端子)1、負極蓋(負極
外部端子)2、絶縁パッキング3、真鍮製の負極集電棒
4、円筒中空体状の正極(ニッケル極)5、ビニロンを
主材とする円筒フィルム状のセパレータ6、ゲル状の負
極(亜鉛極)7などからなる。
【0029】正極缶1には、円筒中空体の外周面を正極
缶1の円筒部の内周面に当接させて正極5が収納されて
おり、該円筒中空体の内周面には、外周面を当接させて
セパレータ6が圧接されており、セパレータ6の内側に
は、ゲル状の負極7が充填されている。負極7の円形断
面の中央部には、正極缶1と負極蓋2とを電気的に絶縁
する絶縁パッキング3により一端を支持された負極集電
棒4が挿入されている。正極缶1の開口部は、負極蓋2
により閉蓋されている。電池の密閉は、正極缶1の開口
部に絶縁パッキング3を嵌め込み、その上に負極蓋2を
載置した後、正極缶の開口端を内側にかしめることによ
りなされている。
【0030】(比較例1)2モル/リットル濃度の硝酸
ニッケル水溶液500mlと、10重量%次亜塩素酸ナ
トリウム水溶液1500mlとを、14モル/リットル
濃度の水酸化カリウム水溶液2000mlに滴下混合し
た後、1時間徐冷した。次いで、生成せる沈殿物を濾別
し、2モル/リットル濃度の水酸化カリウム水溶液で洗
浄した後、水洗し、90°Cで乾燥して、正極活物質と
しての酸化ニッケル粉末を得た。
【0031】上記の酸化ニッケル粉末50gと、二酸化
マンガン粉末30gと、黒鉛粉末15gと、ポリエチレ
ン樹脂5gとを混合し、さらにこれに7モル/リットル
濃度の水酸化カリウム水溶液20mlを混合し、加圧成
型して、正極を作製した。
【0032】この正極を使用したこと以外は実施例1と
同様にして、密閉型アルカリ蓄電池Xを作製した。
【0033】(比較例2)二酸化マンガン粉末100g
と、黒鉛粉末15gと、ポリエチレン樹脂5gとを混合
し、さらにこれに7モル/リットル濃度の水酸化カリウ
ム水溶液20mlを混合し、加圧成型して、正極を作製
した。
【0034】この正極を使用したこと以外は実施例1と
同様にして、密閉型アルカリ蓄電池Yを作製した。
【0035】〔各電池の種々の充放電サイクルにおける
容量維持率及び漏液電池数〕正極活物質のみが異なる上
記の3種の密閉型アルカリ蓄電池e,X,Yについて、
3.9Ωの抵抗を接続して電池電圧が0.9Vになるま
で放電した後、150mAで15時間充電する工程を1
サイクルとする充放電サイクル試験を行って、各電池の
5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目及び5
0サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べ
た。各電池それぞれ10個について容量維持率及び漏液
電池数を調べた。結果を表1に示す。表1中の各充放電
サイクルにおける容量維持率は、各電池の1サイクル目
の放電容量に対する比率(%)であり、且つ電解液が漏
出しなかった電池の容量維持率の平均値である。また、
表1中の漏液電池の割合の欄に示した分数の分子が電解
液が漏出した漏液電池の個数を表す。
【0036】
【表1】
【0037】表1に示すように、密閉型アルカリ蓄電池
e(本発明電池)では、25サイクル目及び50サイク
ル目における容量維持率がそれぞれ100及び96と高
く、50サイクル目においても漏液電池数が0である。
一方、密閉型アルカリ蓄電池X(比較電池)では、25
サイクル目及び50サイクル目における容量維持率はそ
れぞれ95及び93と密閉型アルカリ蓄電池eに比べて
若干低い程度であるが、10サイクル目、25サイクル
目及び50サイクル目における漏液電池数がそれぞれ
2、4及び6とかなり多い。密閉型アルカリ蓄電池Y
(比較電池)では、5サイクル目、10サイクル目、2
5サイクル目及び50サイクル目における容量維持率が
それぞれ60、50、45及び40と極めて低く、また
漏液電池数がそれぞれ3、5、7及び8と極めて多い。
【0038】(実験2)この実験では、導電層率Pと漏
液の関係、導電層率Pと電池容量の関係及び導電層率P
とかさ比重の関係を調べた。
【0039】硫酸コバルトの水1000mlに溶かす量
を、1.31gに代えて、0.0262g、0.078
6g、0.131g、0.262g、2.62g、3.
93g、5.24g、5.895g及び6.55gとし
たこと以外は実施例1と同様にして、オキシ水酸化ニッ
ケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト化合物からな
る導電層を形成してなる複合体粒子を得た。これらの複
合体粒子の導電層率Pを原子吸光法により求めたとこ
ろ、順に0.1%、0.3%、0.5%、1%、10
%、15%、20%、22.5%、25%であった。な
お、導電層を形成するナトリウム含有コバルト化合物の
Na含有率Qは、いずれも1%(予備実験からの推定
値)である。
【0040】上記の複合体粒子粉末を正極活物質として
用いたこと以外は実施例1と同様にして、順に密閉型ア
ルカリ蓄電池a,b,c,d,f,g,h,i,jを作
製した。
【0041】〔導電層率Pと漏液の関係〕密閉型アルカ
リ蓄電池a,b,c,d,f,g,h,i,jについ
て、実験1におけるものと同じ条件の充放電サイクル試
験を行い、各電池の種々の充放電サイクルにおける漏液
電池数を調べた。結果を表2に示す。表2には、密閉型
アルカリ蓄電池eの結果も、表1より転記して示してあ
る。
【0042】
【表2】
【0043】表2より、信頼性の高い密閉型アルカリ蓄
電池を得るためには、導電層率Pがが0.50%以上の
ものを使用する必要があることが分かる。
【0044】〔導電層率Pと電池容量の関係〕上記の密
閉型アルカリ蓄電池a〜jに、3.9Ωの抵抗を接続
し、電池電圧が0.9Vになるまで放電して、各電池の
電池容量(1サイクル目の放電容量)を調べた。結果を
図2に示す。図2は、導電層率Pと電池容量の関係を、
縦軸に電池容量を、横軸に導電層率Pをとって示したグ
ラフである。図2の縦軸の電池容量は、密閉型アルカリ
蓄電池eの電池容量を100とした指数である。
【0045】図2に示すように、導電層率Pが0.5%
未満の正極活物質を使用した密閉型アルカリ蓄電池a,
b及び導電層率Pが20%を超える密閉型アルカリ蓄電
池i,jは、電池容量が極めて小さい。この事実から、
電池容量の点で、導電層率Pが0.5〜20%のものを
使用する必要があることが分かる。導電層率Pが20%
を超える密閉型アルカリ蓄電池i,jの電池容量が小さ
いのは、次の〔導電層率Pとかさ比重の関係〕に示す如
く、正極活物質のかさ比重が小さいために、正極活物質
の充填量が減少したためである。
【0046】〔導電層率Pとかさ比重の関係〕上記の密
閉型アルカリ蓄電池a〜jに使用した正極活物質(複合
体粒子粉末)のかさ比重を、JIS K 5101に準
拠して求めた。結果を図3に示す。図3は、導電層率P
とかさ比重の関係を、縦軸にかさ比重を、横軸に導電層
率Pをとって示したグラフである。図3の縦軸のかさ比
重は、密閉型アルカリ蓄電池eに使用した正極活物質の
かさ比重を100とした指数である。
【0047】図3に示すように、導電層率Pが20%を
超える正極活物質を使用した密閉型アルカリ蓄電池i,
jは、かさ比重が極めて小さい。
【0048】この実験1の結果から、導電層率Pが0.
5〜20%のものを正極活物質として使用する必要があ
ることが分かる。
【0049】(実験3)この実験では、オキシ水酸化ニ
ッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト化合物から
なる導電層を形成して成る複合体粒子を合成する際の加
熱処理温度と電池容量の関係を調べた。
【0050】上記の複合体粒子を合成する際の加熱処理
温度を、80°Cに代えて、45°C、50°C、60
°C、100°C、150°C、200°C、220°
C、250°Cとしたこと以外は実施例1と同様にし
て、密閉型アルカリ蓄電池A,B,C,D,E,F,
G,Hを作製した。なお、各加熱処理温度で得たナトリ
ウム含有コバルト化合物のNa含有率Qは、順に0.0
5%、1%、1%、1%、1%、1%、0.05%、
0.02%である。
【0051】上記の密閉型アルカリ蓄電池A〜Gに、
3.9Ωの抵抗を接続し、電池電圧が0.9Vになるま
で放電して、各電池の電池容量(1サイクル目の放電容
量)を調べた。結果を図4に示す。図4は、加熱処理温
度と電池容量の関係を、縦軸に電池容量を、横軸に加熱
処理温度(°C)をとって示したグラフである。図4の
縦軸の電池容量は、密閉型アルカリ蓄電池eの電池容量
を100とした指数である。
【0052】図4に示すように、加熱処理温度が50°
C未満の正極活物質を使用した密閉型アルカリ蓄電池A
及び加熱処理温度が200°Cを超える正極活物質を使
用した密閉型アルカリ蓄電池G,Hは、電池容量が極め
て小さい。この事実から、加熱処理温度は50〜200
°Cが好ましいことが分かる。
【0053】(実験4)この実験では、ナトリウム含有
コバルト化合物のNa含有率Qと電池容量の関係を調べ
た。
【0054】上記のナトリウム含有コバルト化合物(導
電層)を形成する際に、25重量%水酸化ナトリウム水
溶液に代えて、5重量%、10重量%、15重量%、3
5重量%、40重量%、45重量%及び50重量%の水
酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ使用したこと以外は
実施例1と同様にして、密閉型アルカリ蓄電池I,J,
K,L,M,N,Oを作製した。形成されたナトリウム
含有コバルト化合物のNa含有率Qは、順に0.05
%、0.1%、0.5%、5%、10%、12%、15
%である。
【0055】上記の密閉型アルカリ蓄電池I〜Oに、
3.9Ωの抵抗を接続し、電池電圧が0.9Vになるま
で放電して、各電池の電池容量(1サイクル目の放電容
量)を調べた。結果を図5に示す。図5は、Na含有率
Qと電池容量の関係を、縦軸に電池容量を、横軸にNa
含有率Qをとって示したグラフである。図5の縦軸の電
池容量は、密閉型アルカリ蓄電池eの電池容量を100
とした指数である。
【0056】図5に示すように、Na含有率Qが0.1
%未満の正極活物質を使用した密閉型アルカリ蓄電池I
及びNa含有率Qが10%を超える正極活物質を使用し
た密閉型アルカリ蓄電池N,Oは、電池容量が極めて小
さい。この事実から、Na含有率Qは0.1〜10%が
好ましいことが分かる。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、充放電サイクルの長期
にわたって電解液が漏出しにくい、信頼性の高い密閉型
アルカリ蓄電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製したニッケル−亜鉛蓄電池(本発
明電池)の部分断面図である。
【図2】導電層率Pと電池容量の関係を示すグラフであ
る。
【図3】導電層率Pとかさ比重の関係を示すグラフであ
る。
【図4】加熱処理温度と電池容量の関係を示すグラフで
ある。
【図5】Na含有率Qと電池容量の関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
a ニッケル−亜鉛蓄電池(本発明電池) 1 正極缶 2 負極蓋 3 絶縁パッキング 4 負極集電棒 5 正極(ニッケル極) 6 セパレータ 7 負極(亜鉛極)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤谷 伸 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 西尾 晃治 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−329942(JP,A) 特開 平8−148146(JP,A) 特開 平4−94058(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/30 H01M 4/24 - 4/34 H01M 4/52

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】亜鉛を活物質とする負極を備えた、予め充
    電することなく初回の放電を行うことができる密閉型ア
    ルカリ蓄電池において、正極活物質として、オキシ水酸
    化ニッケル粒子の表面に、ナトリウム含有コバルト化合
    物からなる導電層を、下式で定義される導電層率Pが
    0.5〜20%になるように形成して成る複合体粒子が
    用いられていることを特徴とする密閉型アルカリ蓄電
    池。 導電層率P(%)=(B/A)×100 〔式中、Aは複合体粒子中のオキシ水酸化ニッケル粒子
    のNi原子換算重量であり、Bは複合体粒子中のナトリ
    ウム含有コバルト化合物のCo原子換算重量である。〕
  2. 【請求項2】前記ナトリウム含有コバルト化合物の下式
    で定義されるNa含有率Qが、0.1〜10%である請
    求項1記載の密閉型アルカリ蓄電池。 Na含有率Q(%)=(D/C)×100 〔式中、Cはナトリウム含有コバルト化合物のCo含有
    量(重量)であり、Dはナトリウム含有コバルト化合物
    のNa含有量(重量)である。〕
  3. 【請求項3】前記複合体粒子が、オキシ水酸化ニッケル
    粒子の表面にコバルト化合物層を形成してなる複合体粒
    子を、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた状態で、
    50〜200°Cで加熱処理して作製したものである請
    求項1又は2記載の密閉型アルカリ蓄電池。
  4. 【請求項4】電池缶内に負極活物質及び正極活物質が総
    量で電池缶内容積に対して75体積%以上充填された請
    求項1〜3のいずれかに記載の密閉型アルカリ蓄電池。
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