JP3663072B2 - 密閉型アルカリ亜鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、正極と、亜鉛を活物質とする負極と、アルカリ電解液と、セパレータと、負極集電体とからなる発電要素体が電池缶内容積の75%以上を占める、放電スタートの密閉型アルカリ亜鉛蓄電池に係わり、詳しくは充放電サイクルにおける放電容量の減少が小さく、しかも電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出が起こりにくい密閉型アルカリ蓄電池を提供することを目的とした、正極活物質及びそれに添加する導電剤の改良に関する。ここに、放電スタートの電池とは、予め充電することなく初回の放電を行うことが可能な電池をいう。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
亜鉛を負極の活物質とする密閉型アルカリ亜鉛蓄電池の正極の導電剤としては、例えば、リン状黒鉛とアセチレンブラックとの混合物(特公昭57−57822号公報参照)及びスピネル型の酸化物で粒子表面を部分的に被覆したグラファイトが提案されている(特開昭61−158667号公報参照)。
【0003】
しかしながら、上記の導電剤を、γ型オキシ水酸化ニッケル(γ−NiOOH)を正極活物質とする放電スタートの密閉型アルカリ亜鉛蓄電池の正極の導電剤として使用すると、充放電サイクルの経過に伴い、γ型オキシ水酸化ニッケルの放電後の結晶構造がα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2 )から、これに比べて酸素過電圧が低いβ型水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2 )に変化するために、充電時に酸素が発生し、酸素により導電剤が酸化されて正極の導電性が低下して、放電容量が短サイクル裡に減少する。また、充電時に発生した酸素により電池内圧が上昇し、アルカリ電解液が漏出し易くなる。斯かる電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出は、電池缶内の空間部分の体積が小さい高密度充填型の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池において、特に発生し易い。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、充放電サイクルにおける放電容量の減少が小さく、しかも電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出が起こりにくい密閉型アルカリ亜鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る密閉型アルカリ蓄電池は、正極と、亜鉛を活物質とする負極と、アルカリ電解液と、セパレータと、負極集電体とからなる発電要素体が電池缶内容積の75%以上を占める密閉型アルカリ亜鉛蓄電池において、前記正極の活物質が、γ型オキシ水酸化ニッケルにマンガンが固溶した固溶体粉末であり、当該固溶体粉末に、炭素粉末の粒子表面をオキシ水酸化マンガンで部分的に被覆してなる導電剤粉末が、添加されていることを特徴とする。
【0006】
炭素粉末の粒子表面をオキシ水酸化マンガン(MnOOH)で部分的に被覆することにより、炭素粉末が充電時に正極で発生する酸素により酸化されにくくなる。このため、炭素粉末の導電剤としての機能が、充放電サイクルの長期にわたって維持され、放電容量の減少が抑制される。また、マンガンをγ型オキシ水酸化ニッケルに固溶させることにより、正極の酸素過電圧が増大して、充電時の正極側での酸素の発生量が減少する。このため、充電時の電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出が抑制される。
【0007】
本発明が、発電要素体が電池缶内容積の75%以上を占める密閉型アルカリ亜鉛蓄電池電池を対象とするのは、電池内圧はこの種の密閉型アルカリ蓄電池において特に上昇しやすく、充放電を繰り返した際にアルカリ電解液が漏出し易いからである。
【0008】
導電剤粉末の好適な添加量は、γ型オキシ水酸化ニッケルに対する比率で、3〜12重量%である。同添加量が、3重量%未満の場合は、正極の導電性が不充分となるため、一方同添加量が、12重量%を越えた場合は、γ型オキシ水酸化ニッケルの充填量が減少するため、いずれの場合も充分な電池容量が得られない。
【0009】
炭素粉末に対するオキシ水酸化マンガンの好適な比率は、2〜10重量%である。同比率が2重量%未満の場合は、被覆部分が過少になり炭素粉末が充電時に酸化され易くなるため、一方同比率が10重量%を越えた場合は、被覆部分が過多になり炭素粉末の導電剤としての本来の機能が発現されにくくなるため、いずれの場合も正極の導電性が低下して、充放電サイクル特性が低下し易くなる。
【0010】
炭素粉末の好適なメジアン径は3〜15μmである。メジアン径が15μmを越えた場合は、導電剤としての機能が低下するため、正極の導電性が低下して、充放電サイクル特性が低下し易くなる。一方、メジアン径が3μm未満の場合は、二次凝集により粒径が大きくなるため、メジアン径が15μmを越えた場合と同様に、正極の導電性が低下して、充放電サイクル特性が低下し易くなる。導電剤としての炭素粉末は特に限定されないが、導電性の高い黒鉛が好ましい。
【0011】
固溶体粉末としては、下式で定義されるマンガン固溶率が5〜50%のものが好ましい。マンガン固溶率が5%未満の場合は、正極の酸素過電圧を充分に増大させることができないために、電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出を充分に抑制できなくなり、一方マンガン固溶率が50%を越えた場合は、活物質たるγ型オキシ水酸化ニッケルの充填量が減少するため、充分な電池容量が得られなくなる。
【0012】
マンガン固溶率(%)={マンガンの原子数/(マンガンとニッケルとの総原子数)}×100
【0013】
γ型オキシ水酸化ニッケルとしては、満充電状態でのニッケルの価数が3.4〜3.8のものが好ましい。満充電状態でのニッケルの価数が3.4未満のγ型オキシ水酸化ニッケルでは、充分な電池容量が得られにくく、一方満充電状態でのニッケルの価数が3.8より大きいγ型オキシ水酸化ニッケルは、存在しないからである。満充電後さらに充電、すなわち過充電しても、水が分解して酸素が発生するだけであり、ニッケルの価数が3.8を越えることはない。
【0014】
γ型オキシ水酸化ニッケルは、水酸化ニッケルを次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等の酸化剤にて酸化することにより、得ることができる。固溶体粉末は、水酸化ニッケルとして、マンガンが固溶した水酸化ニッケルを使用することにより得ることができる。マンガンが固溶した水酸化ニッケルは、マンガン塩とニッケル塩を含む水溶液に、アルカリを添加してpHを9〜12に調整した後、所定時間混合することにより(アルカリ共沈法)、得ることができる。
【0015】
固溶体粉末として、マンガン(Mn)の外にさらに、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)及び希土類元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を固溶元素として含有するものを使用してもよい。これらの元素をさらに固溶させることにより、正極の酸素過電圧を一層高めることができる。
【0016】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能なものである。
【0017】
(実験1)
本発明電池及び比較電池を作製し、容量維持率及び耐漏液性を調べた。
【0018】
(本発明電池(A1)の作製)
下記の手順により本発明電池(A1)を作製した。
【0019】
〔導電剤粉末の作製〕
硫酸マンガン(MnSO4 )4.51gの水溶液5000mlに、攪拌しながらメジアン径5μmの黒鉛50gを投入し、水酸化ナトリウムの1モル/リットル水溶液を滴下しpHを13に調整した。pHはpHメータにて測定した。pHが一定になった後、1時間混合して、黒鉛粒子の表面に水酸化マンガン(Mn(OH)2 )を析出させた。析出した水酸化マンガンは、溶存酸素により酸化されてオキシ水酸化マンガンに変化する。混合後、ろ過し、水洗した後、80°Cで乾燥して、オキシ水酸化マンガンで黒鉛粒子の表面を部分的に被覆してなる導電剤粉末(a1)を作製した。この導電剤粉末(a1)の黒鉛に対するオキシ水酸化マンガンの比率は5重量%である。
【0020】
〔正極の作製〕
硫酸マンガン40.4g及び硫酸ニッケル154.8gの水溶液5000mlに、10重量%アンモニア水と10重量%水酸化ナトリウム水溶液との重量比1:1の混合水溶液を滴下し、pHを9.5±0.3に調整した。pHが一定になった後、1時間混合し、ろ過し、水洗した後、80°Cで乾燥して、マンガンが固溶した水酸化ニッケル粉末を作製した。この水酸化ニッケル粉末のマンガン固溶率を原子吸光分析により求めたところ、20%であった。
【0021】
次いで、水酸化ナトリウムの10モル/リットル水溶液500mlと10重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液1450mlとの混液に、上記のMnが固溶した水酸化ニッケル粉末100gを攪拌しながら投入し、1時間攪拌混合し、沈殿物をろ別し、水洗し、80°Cで乾燥して、γ型オキシ水酸化ニッケル(γ−NiOOH)にマンガンが固溶した固溶体粉末を得た。この固溶体粉末のニッケルの価数を鉄の2価・3価の酸化還元滴定法により求めたところ、3.5であった。
【0022】
上記の固溶体粉末(正極活物質)100重量部と、上記の導電剤粉末(a1)10重量部と、水酸化カリウムの30重量%水溶液10重量部とを、らいかい機にて30分間混合し、加圧成型して、外径13.3mm、内径9mm、高さ13.7mmの円筒状の成形体を作製した。電池の作製においては、この円筒状の成形体を3個直列に接続して、全体として1個の円筒状をなす正極として使用した。
【0023】
〔負極の作製〕
負極活物質としての亜鉛粉末65重量部と、飽和量の酸化亜鉛(ZnO)を含む水酸化カリウムの40重量%水溶液34重量部と、ゲル化剤としてのアクリル酸樹脂(日本純薬社製、商品コード「ジュンロンPW150」)1重量部とを混合して、ゲル状の負極を作製した。
【0024】
〔電池の作製〕
上記の正極及び負極を用いて、通称「インサイドアウト型」と呼ばれている構造を有するAAサイズの密閉型アルカリ亜鉛蓄電池A1(本発明電池)を作製した。ここに、インサイドアウト型電池とは、筒状の正極の筒内に、セパレータを介して、負極を配した構造の電池をいい、この種の電池では、電池缶が正極側、電池蓋が負極側となる。なお、電池容量が正極容量により規制されるようにするために、正極と負極との電気化学的な容量比を1:1.2とした(以下の電池についても同容量比を1:1.2とした。)。また、正極と、負極と、アルカリ電解液と、セパレータと、負極集電棒とからなる発電要素体の電池缶内容積(絶縁パッキングの内側部分の体積)に占める体積比率を80%とした(以下の電池についても同比率を全て80%とした)。
【0025】
図1は、作製した密閉型アルカリ亜鉛蓄電池の断面図である。図示の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池A1は、有底円筒状の電池缶(正極外部端子)1、電池蓋(負極外部端子)2、絶縁パッキング3、真鍮製の負極集電棒4、円筒状の正極(ニッケル極)5、ビニロンを主材とする円筒状のセパレータフィルム6、ゲル状負極(亜鉛極)7などからなる。
【0026】
電池缶1には、円筒の外周面を電池缶1の内周面に当接させて正極5が収納されており、正極5の内周面には、外周面を当接させて円筒状のセパレータフィルム6が圧接されており、セパレータフィルム6の内側には、ゲル状の負極7が充填されている。負極7の円形断面の中央部には、電池缶1と電池蓋2とを電気的に絶縁する絶縁パッキング3により一端を支持された負極集電棒4が挿入されている。電池缶1の開口部は、電池蓋2により閉蓋されている。電池の密閉は、電池缶1の開口部に絶縁パッキング3をはめこみ、その上に電池蓋2を載置した後、電池缶の開口端を内側にかしめることによりなされている。
【0027】
(参考電池(A2)の作製)
硫酸コバルト(CoSO4 )4.21gの水溶液5000mlに、攪拌しながらメジアン径5μmの黒鉛50gを投入し、水酸化ナトリウムの1モル/リットル水溶液を滴下しpHを13に調整した。pHが一定になった後、24時間混合して、黒鉛粒子の表面に水酸化コバルト(Co(OH)2 )を析出させた。析出した水酸化コバルトは、溶存酸素により酸化されてオキシ水酸化コバルト(CoOOH)に変化する。混合後、ろ過し、水洗した後、80°Cで乾燥して、オキシ水酸化コバルトで黒鉛粒子の表面を部分的に被覆してなる導電剤粉末(a2)を作製した。この導電剤粉末(a2)の黒鉛に対するオキシ水酸化コバルトの比率は5%である。正極の作製において、導電剤粉末(a1)に代えて、導電剤粉末(a2)を使用したこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、参考電池(A2)を作製した。
【0028】
(比較電池(C1)の作製)
本発明電池(A1)に使用したものと同じ固溶体粉末(正極活物質)150重量部と、リン状黒鉛27重量部と、アセチレンブラック3重量部と、撥水剤としてのパラフィン0.06重量部とを、らいかい機にて30分間混合し、加圧成型して、外径13.3mm、内径9mm、高さ13.7mmの円筒状の正極を作製した。電池の作製においては、この円筒状の正極を3個直列に接続して、全体として1個の円筒状をなす正極として使用した。この正極を使用したこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、比較電池(C1)を作製した。
【0029】
(比較電池(C2)の作製)
硝酸コバルト(Co(NO3 )2 ・6H2 O)36.2gを100mlの水に溶かし、得られた水溶液に、黒鉛190gを水300mlに懸濁させた懸濁液を投入し、液のpHが11になるまで38重量%アンモニア水溶液を添加した。次いで、液中の水を37.78°Cで蒸発させ、得られた粉末を空気対流オーブン内にて250°Cで2時間加熱して、スピネル型のコバルト化合物で黒鉛粒子の表面を部分的に被覆してなる導電剤粉末(c2)を作製した。導電剤粉末(a1)に代えて、導電剤粉末(c2)を使用したこと以外は、本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、比較電池(C2)を作製した。
【0030】
(各電池の容量維持率及び漏液電池数)
各電池10個について、100mAで1Vまで放電した後、100mAで1.95Vまで充電する充放電を100サイクル行って、5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目、50サイクル目、75サイクル目及び100サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べた。結果を表1に示す。表1中の容量維持率は、各電池の1サイクル目の放電容量に対する各サイクルにおける放電容量の比率(%)であり、且つアルカリ電解液が漏出しなかった電池の容量維持率の平均値である(以下の表に登場する容量維持率も同様である。)。また、表1中の漏液電池数の欄に示した分数の分子がアルカリ電解液が漏出した漏液電池数を表す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、本発明電池(A1)及び参考電池(A2)は、比較電池(C1)及び(C2)に比べて、容量維持率が大きいことがわかる。比較電池(C1)及び(C2)の容量維持率が低いのは、正極活物質の放電後の結晶構造がα型水酸化ニッケルからβ型水酸化ニッケルに変化して、正極の酸素過電圧が減少したために、充電時に酸素が発生し、導電剤が酸化されて、正極の導電性が低下したためと考えられる。
【0033】
(実験2)
導電剤粉末の添加量と容量維持率及び耐漏液性の関係を調べた。
【0034】
正極の作製において、導電剤粉末(a1)の添加量を10重量部に代えて、2重量部、3重量部、5重量部、12重量部又は15重量部としたこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、本発明電池(E1)〜(E5)を作製した。各電池について、実験1で行ったものと同じ充放電サイクル試験を行い、5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目、50サイクル目、75サイクル目及び100サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べた。結果を表2に示す。表2には、本発明電池A1についての結果も表1より転記して示してある。
【0035】
【表2】
【0036】
表2より、固溶体粉末に対する導電剤粉末の添加量は、γ型オキシ水酸化ニッケルに対する比率で、3〜12重量%が好ましいことが分かる。
【0037】
(実験3)
導電剤粉末の黒鉛に対するオキシ水酸化マンガンの比率と容量維持率及び耐漏液性の関係を調べた。
【0038】
導電剤粉末の作製において、硫酸マンガンの使用量を、4.51gに代えて、0.86g、1.72g、8.60g又は10.3gとしたこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、本発明電池(F1)〜(F4)を作製した。各電池に使用した導電剤粉末の黒鉛に対するオキシ水酸化マンガンの比率は、順に、1重量%、2重量%、10重量%及び12重量%である。各電池について、実験1で行ったものと同じ充放電サイクル試験を行い、5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目、50サイクル目、75サイクル目及び100サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べた。結果を表3に示す。表3には、本発明電池A1(使用した導電剤粉末の黒鉛に対するオキシ水酸化マンガンの比率:5重量%)についての結果も表1より転記して示してある。
【0039】
【表3】
【0040】
表3より、導電剤粉末の黒鉛に対するオキシ水酸化マンガンの比率は、2〜10重量%が好ましいことが分かる。
【0041】
(実験4)
炭素粉末のメジアン径と容量維持率及び耐漏液性の関係を調べた。
【0042】
導電剤粉末の作製において、メジアン径5μmの黒鉛に代えて、メジアン径2μm、3μm、10μm、15μm及び17μmの黒鉛を使用したこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、本発明電池(G1)〜(G5)を作製した。各電池について、実験1で行ったものと同じ充放電サイクル試験を行い、5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目、50サイクル目、75サイクル目及び100サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べた。結果を表4に示す。表4には、本発明電池A1(使用した炭素粉末のメジアン径:5μm)についての結果も表1より転記して示してある。
【0043】
【表4】
【0044】
表4より、炭素粉末のメジアン径は3〜15μmが好ましいことが分かる。
【0045】
(実験5)
固溶体粉末のマンガン固溶率と容量維持率及び耐漏液性の関係を調べた。
【0046】
正極の作製において、硫酸マンガンの使用量を、40.4gに代えて、5.1g、10.2g、20.2g、60.4g、101g及び121gとしたこと以外は本発明電池(A1)の作製方法と同様にして、本発明電池(H1)〜(H6)を作製した。各電池に使用した固溶体粉末のマンガン固溶率は、順に、2.5%、5%、10%、30%、50%、60%である。各電池について、実験1で行ったものと同じ充放電サイクル試験を行い、5サイクル目、10サイクル目、25サイクル目、50サイクル目、75サイクル目及び100サイクル目における容量維持率及び漏液電池数を調べた。結果を表5に示す。表5には、本発明電池A1(使用した固溶体粉末のマンガン固溶率:20%)についての結果も表1より転記して示してある。
【0047】
【表5】
【0048】
表5より、固溶体粉末のマンガン固溶率は、5〜50%が好ましいことが分かる。
【0049】
(実験6)
γ型オキシ水酸化ニッケルのニッケルの価数と電池容量及び耐漏液性の関係を調べた。
【0050】
正極の作製において、10重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を、1450mlに代えて、1350ml、1400ml及び1600mlとしたこと以外は本発明電池A1の作製方法と同様にして、順に、本発明電池(J1)〜(J3)を作製した。各電池の作製において使用したγ型オキシ水酸化ニッケルのニッケルの価数は、順に、3.3、3.4及び3.8である。各電池について、実験1で行ったものと同じ充放電サイクル試験を行い、1サイクル目の電池容量及び100サイクル目の漏液電池数を調べた。結果を表6に示す。表6には、本発明電池A1(使用したγ型オキシ水酸化ニッケルのニッケルの価数:3.5)についての結果も表1より転記して示してある。
【0051】
【表6】
【0052】
表6より、γ型オキシ水酸化ニッケルの満充電状態でのニッケルの価数は、3.4〜3.8が好ましいことが分かる。
【0053】
上記の実施例では、マンガンのみがγ型オキシ水酸化ニッケルに固溶した固溶体粉末を正極活物質として使用したが、マンガンに加えてさらに、亜鉛、コバルト、ビスマス、アルミニウム及び希土類元素(イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、ガドリニウムなど)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素がγ型オキシ水酸化ニッケルに固溶した固溶体粉末を使用した場合にも、優れた充放電サイクル特性及び耐漏液性を有する密閉型アルカリ亜鉛蓄電池が得られることを確認した。
【0054】
【発明の効果】
充放電サイクルにおける放電容量の減少が小さく、しかも電池内圧の上昇乃至アルカリ電解液の漏出が起こりにくい密閉型アルカリ亜鉛蓄電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した密閉型アルカリ亜鉛蓄電池の断面図である。
【符号の説明】
A1 密閉型アルカリ亜鉛蓄電池
1 有底円筒状の電池缶(正極外部端子)
2 電池蓋(負極外部端子)
3 絶縁パッキング
4 真鍮製の負極集電棒
5 円筒状の正極(ニッケル極)
6 円筒状のセパレータフィルム
7 ゲル状負極(亜鉛極)
Claims (7)
- 正極と、亜鉛を活物質とする負極と、アルカリ電解液と、セパレータと、負極集電体とからなる発電要素体が電池缶内容積の75%以上を占める密閉型アルカリ亜鉛蓄電池において、前記正極の活物質が、γ型オキシ水酸化ニッケルにマンガンが固溶した固溶体粉末であり、当該固溶体粉末に、炭素粉末の粒子表面をオキシ水酸化マンガンで部分的に被覆してなる導電剤粉末が、添加されていることを特徴とする密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
- 前記導電剤粉末が、γ型オキシ水酸化ニッケルに対して、3〜12重量%添加されている請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
- 前記炭素粉末に対するオキシ水酸化マンガンの比率が2〜10重量%である請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
- 前記炭素粉末のメジアン径が3〜15μmである請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
- 前記固溶体粉末の下式で定義されるマンガン固溶率が、5〜50%である請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
マンガン固溶率={マンガンの原子数/(マンガンとニッケルとの総原子数)}×100 - γ型オキシ水酸化ニッケルの満充電状態でのニッケルの価数が3.4〜3.8である請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
- 前記固溶体粉末が、さらに、亜鉛、コバルト、ビスマス、アルミニウム及び希土類元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を固溶元素として含有している請求項1記載の密閉型アルカリ亜鉛蓄電池。
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1999
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