JP2003151569A - アルカリ亜鉛一次電池およびアルカリ亜鉛二次電池 - Google Patents

アルカリ亜鉛一次電池およびアルカリ亜鉛二次電池

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JP2003151569A JP2001343625A JP2001343625A JP2003151569A JP 2003151569 A JP2003151569 A JP 2003151569A JP 2001343625 A JP2001343625 A JP 2001343625A JP 2001343625 A JP2001343625 A JP 2001343625A JP 2003151569 A JP2003151569 A JP 2003151569A
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cationic organic
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Gentaro Kano
巌大郎 狩野
Masahiro Aoki
正裕 青木
Takuya Endo
琢哉 遠藤
Goro Shibamoto
悟郎 柴本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保存時における水素ガスの発生を抑制し、高
い耐漏液性を有するアルカリ亜鉛一次電池を提供する。
また、保存時および充電時における水素ガスの発生を抑
制すると共に、亜鉛のデンドライト成長を抑制し、高い
耐漏液性および優れたサイクル寿命を有するアルカリ亜
鉛二次電池を提供する。 【解決手段】 正極缶11の内部に、中空円筒状の正極
12と、セパレータ13を介して充填された負極14
と、これらに含浸されたアルカリ性の電解液とを有す
る。負極14は負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を
含む。電解液には第4級アンモニウム塩などのカチオン
性有機物が添加されている。カチオン性有機物はそれ自
身が持つ正電荷の影響により負極14の電流集中部に選
択的に移動して吸着し、反応活性点をマスキングして、
水分子の還元反応を抑制する。また、反応活性点におい
て亜鉛がデンドライト成長することを防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、負極活物質として
亜鉛または亜鉛合金を含む負極と、正極と、アルカリ性
の電解液とを備えたアルカリ亜鉛一次電池またはアルカ
リ亜鉛二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】負極活物質として亜鉛あるいは亜鉛合金
を使用したアルカリ亜鉛電池はエネルギー密度が高く、
近年の電子機器の小型化および軽量化において有効であ
るため、ニッケル−亜鉛電池あるいは酸化銀−亜鉛電池
などについて種々の検討が行われてきた。特に、ニッケ
ル−亜鉛二次電池は、ニッケル−カドミウム二次電池あ
るいはニッケル−水素二次電池と比較してエネルギー密
度が高くかつ安価であり、加えてカドミウム(Cd)の
ような有害な材料が使用されておらず低公害であるとい
った利点を有することから、その実用化に対して大きな
期待が寄せられている。
【0003】ところが、アルカリ亜鉛電池では、マンガ
ン乾電池と同様に、保存時に負極において水素発生を伴
う腐食反応が激しく起こり、電池内圧が上昇して電池の
膨張あるいは漏液を引き起こすという問題があった。特
に、アルカリ亜鉛二次電池では、これ加えて、過充電時
に負極表面で生じる水分子の還元反応によっても水素ガ
スが発生し、電池内圧が上昇してしまうという問題もあ
った。また、アルカリ亜鉛二次電池では、放電時の反応
生成物がアルカリ電解液に可溶であるので、充放電に伴
い亜鉛が溶解・析出を繰り返すこととなり、このため、
充電時に亜鉛が負極表面に樹枝状あるいは海綿状に析出
し、これらが充放電を繰り返すにつれて成長してセパレ
ータを貫通し、正極に到達して内部短絡を引き起こして
サイクル寿命を短くするという問題もあった。
【0004】そこで、これらの問題を解決する方法がこ
れまでも検討されてきた。例えば、負極の腐食反応を抑
制する方法としては、水銀(Hg)による亜鉛のアマル
ガム化が有効であることが知られている。ところが、廃
電池の水銀による環境汚染に対する社会的な関心の高ま
りと共に、電池の無水銀化技術が強く要望されるように
なってきている。このため、水銀に代えて耐食性亜鉛合
金,無機系インヒビターあるいは有機系インヒビターな
どを用いることが検討されている。
【0005】例えば、インジウム(In)あるいはビス
マス(Bi)などの元素は水素過電圧が高いことが知ら
れており、耐食性亜鉛合金の合金添加元素として、ま
た、それらの化合物が無機系インヒビターとして用いら
れている(特開平1−105466号公報参照)。ま
た、有機系インヒビターとしては、アミン,ジエタノー
ルアミン,オレイン酸,ラウリルエーテルあるいはエチ
レンオキサイド重合体などが提案されている。更に、無
機系インヒビターと有機系インヒビターとの複合添加の
例として、水酸化インジウムとエトキシフルオロアルコ
ール系ポリフッ化化合物との複合添加が提案されている
(特開平2−79367号公報参照)。
【0006】また、過充電に伴う水素ガス発生を抑制す
る方法としては、正極容量を規制した電池設計を行うの
が一般的である。
【0007】更に、亜鉛の析出による内部短絡を防止す
る方法としては、酸化マグネシウムの多孔性層を負極表
面に密着形成することにより亜鉛酸イオンの電解液への
溶出を防止し、デンドライト成長を抑制することが検討
されている(特開昭57−163963号公報参照)。
また、セパレータに第4級アンモニウム基を有する高分
子を含浸させることにより亜鉛の樹枝状あるいは海綿状
成長を抑制することが提案されている(特開平6−20
3819号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、耐食性
亜鉛合金を用いた負極では、未放電時の亜鉛腐食反応は
抑制されるものの、一部放電した後のガス発生までは十
分に抑制されないので、実用上十分な耐漏液性を確保す
ることはできない。特に、二次電池では、充電に伴う析
出反応においてインジウムあるいはビスマスなどの添加
元素が亜鉛と均一に析出せずに合金組成が変化してしま
うので、腐食抑制効果が低下し、耐漏液性を確保するこ
とが難しい。しかも、亜鉛合金のみでは亜鉛の析出形態
を制御することができないので、充放電の繰り返しによ
る内部短絡を防止することはできない。
【0009】インジウムあるいはビスマスなどの化合物
を無機インヒビターとして添加した電池においても、耐
食性亜鉛合金の場合と同様に、十分な耐漏液性の確保お
よび内部短絡の防止はできない。従来の有機系インヒビ
ターを添加した電池、または無機系インヒビターと有機
系インヒビターとを複合添加した電池ではある程度の効
果を期待できるものもあるが、実用上十分と言える程度
ではない。
【0010】また、正極容量を規制することにより過充
電を防止する設計とした電池についても、実際の電池内
部では充放電時における電流密度の分布が不均一である
ので、電流密度の高い箇所においては負極の過充電状態
が起こってしまう。特に、充放電サイクルが進んだ電池
では、この電流密度の不均一性が更に増大し、過充電状
態による水素ガスの発生が増大するので、耐漏液性を確
保することはできない。
【0011】更に、酸化マグネシウムの多孔性層を負極
表面に形成し亜鉛酸イオンの電解液への溶出を防止する
方法は、亜鉛酸イオンを吸着固定することにより亜鉛の
デンドライト成長を防止するものであるが、この技術で
は亜鉛酸イオンから亜鉛自身が樹枝状あるいは海綿状に
析出することを防止することはできないので、充放電サ
イクル時、特に深い充放電を繰り返す場合にはデンドラ
イト成長を十分に抑制することができない。加えて、こ
の方法では水素ガスの発生を十分に抑制することができ
ない。
【0012】また、セパレータに第4級アンモニウム基
を有する高分子を含浸させることにより亜鉛の樹枝状あ
るいは海綿状成長を抑制する方法では、セパレータに達
するまでは亜鉛がデンドライト成長を続けるので、成長
したデンドライトが負極から脱落し、それにより容量が
低下してしまうという問題がある。しかも、セパレータ
が目詰まりし、電池性能が低下してしまうという問題も
ある。更に、負極表面での水素ガスの発生を抑制するこ
ともできない。
【0013】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その第1の目的は、保存時における負極表面での
水素ガスの発生を抑制することにより、高い耐漏液性を
有するアルカリ亜鉛一次電池を提供することにある。
【0014】また、本発明の第2の目的は、保存時ある
いは充電時における負極表面での水素ガスの発生を抑制
すると共に、亜鉛の樹枝状あるいは海綿状の析出を抑制
することにより、高い耐漏液性および優れたサイクル寿
命を有するアルカリ亜鉛二次電池を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明による第1のアル
カリ亜鉛一次電池は、負極活物質として亜鉛または亜鉛
合金を含む負極と、正極と、アルカリ性の電解液とを備
えたものであって、負極および電解液のうちの少なくと
も一方に、カチオン性有機物を含むものである。
【0016】本発明による第2のアルカリ亜鉛一次電池
は、負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を含む負極
と、正極と、アルカリ性の電解液と、負極と正極との間
に介在されたセパレータとを備えたものであって、セパ
レータの負極側表面に、カチオン性有機物を含む被膜を
有するものである。
【0017】本発明による第1のアルカリ亜鉛二次電池
は、負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を含む負極
と、正極と、アルカリ性の電解液とを備えたものであっ
て、負極および電解液のうちの少なくとも一方に、カチ
オン性有機物を含むものである。
【0018】本発明による第2のアルカリ亜鉛二次電池
は、負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を含む負極
と、正極と、アルカリ性の電解液と、負極と正極との間
に介在されたセパレータとを備えたものであって、セパ
レータの負極側表面に、カチオン性有機物を含む被膜を
有するものである。
【0019】本発明による第1または第2のアルカリ亜
鉛一次電池では、負極および電解質のうちの少なくとも
一方に含まれたカチオン性有機物、またはセパレータ表
面に有するカチオン性有機物により、保存時における水
素ガスの発生が抑制される。
【0020】本発明による第1または第2のアルカリ亜
鉛二次電池では、負極および電解質のうちの少なくとも
一方に含まれたカチオン性有機物、またはセパレータ表
面に有するカチオン性有機物により、保存時または充電
時における水素ガスの発生が抑制されると共に、充電時
の負極における亜鉛の析出が均一となる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して詳細に説明する。
【0022】[第1の実施の形態]図1は本発明の第1
の実施の形態に係るアルカリ亜鉛一次電池の断面構造を
表すものである。このアルカリ亜鉛一次電池は、いわゆ
るインサイドアウト型といわれる構造のものであり、正
極缶11の内部に、中空円筒状の正極12と、正極12
の中空部にフィルム状のセパレータ13を介して充填さ
れた負極14とを有している。正極缶11は正極12の
集電体としての機能も兼ね備えており、正極缶11の円
筒部内周面には正極12の外周面が当接されている。
【0023】正極缶11の開口部には負極蓋15が絶縁
パッキング16を介して取り付けられており、正極缶1
1の開口端が内側にかしめられることにより正極缶11
の内部は密閉されている。負極蓋15には、負極14の
中央部に一部を挿入させた棒状の負極集電体17が当接
して設けられている。負極集電体17は、負極14の内
側に設けられた支持板18により絶縁パッキング16を
介して支持されている。正極缶11の内部には、また、
アルカリ性の電解液が添加されており、正極12,セパ
レータ13および負極14に含浸されている。
【0024】正極12は、例えば、正極活物質および導
電剤を含んでおり、必要に応じて結着剤を含んでいても
よい。正極活物質としては、例えば、オキシ水酸化ニッ
ケル,酸化銀,二酸化マンガンあるいは酸素が挙げら
れ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合
して用いられる。導電剤としては、例えば、金属コバル
トあるいは酸化コバルトなどの無機導電剤、または炭素
材料導電剤が挙げられ、これらのうちのいずれか1種ま
たは2種以上が混合して用いられる。炭素材料導電剤と
しては、例えば、ファーネスブラック,アセチレンブラ
ックあるいはサーマルブラックなどのカーボンブラッ
ク、または鱗片状もしくは繊維状の天然黒鉛あるいは人
造黒鉛が挙げられる。結着剤としては、例えば、ポリテ
トラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0025】セパレータ13は、例えば、耐アルカリ性
を有すると共に、ある程度の機械的強度があり、かつ電
気抵抗が大きく保液性が良好な材料により構成されるこ
とが好ましい。このような材料としては、例えば、ナイ
ロン,ポリプロピレンあるいはジカルボン酸などにより
架橋したポリビニルアルコールなどの微孔を有する合成
樹脂の薄膜、またはこれらの繊維を織った織布あるいは
不織布、またはセルロース繊維あるいはガラス繊維を用
いたものが挙げられる。セパレータ13は、単層膜によ
り構成してもよいが、2種以上の多孔質膜を積層して用
いてもよい。
【0026】負極14は、例えば、負極活物質として亜
鉛または亜鉛合金のうちの少なくとも一方を含んでお
り、必要に応じて酸化亜鉛などの亜鉛化合物を含んでい
てもよい。また、負極14は、電解液とアクリル樹脂な
どのゲル化剤とが混合されることにより、ゲル状とされ
ている。
【0027】電解液には、例えば、水酸化カリウムなど
のアルカリを含む水溶液が用いられる。なお、正極12
にニッケル電極を用いる場合には、アルカリの濃度を3
0重量%以上40重量%以下とすることが好ましい。こ
の範囲において電解液の導電率が最も高く、放電時に液
間抵抗による作動電圧の低下が小さくなるからである。
【0028】また、この電解液には、カチオン性有機物
が添加され含まれている。保存時における水素ガスの発
生を抑制するためである。そのメカニズムについては明
らかではないが、次のように推察される。
【0029】アルカリ亜鉛一次電池では、保存時に負極
14から亜鉛が溶出して生成した電子が負極14の表面
突起部などの電流が集中しやすい箇所に集中し、反応活
性点ができる。この反応活性点では水分子が還元反応を
受けやすく、水素ガスが発生してしまうが、カチオン性
有機物はそれ自身が持つ正電荷の影響で電流集中部に選
択的に移動して吸着し、反応活性点をマスキングするこ
とにより、水分子の還元反応を抑制することができるも
のと考えられる。
【0030】よって、カチオン性有機物としては、例え
ば、正電荷を持った分子であるアンモニウム塩,ホスホ
ニウム塩またはスルホニウム塩が好ましく、これらのう
ちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられ
る。これらのカチオン性有機物は、ヘテロ原子と、この
ヘテロ原子に結合した水素原子あるいは置換基とを有し
ているが、中でもヘテロ原子に水素原子が結合していな
いものが好ましい。例えば、第4級アンモニウム塩,第
4級ホスホニウム塩および第3級スルホニウム塩のうち
の少なくとも1種が好ましい。強アルカリ電解液中では
ヘテロ原子に結合した水素原子はプロトンとして失わ
れ、アンモニウム塩からカチオン性を有していないアミ
ンに変化してしまうからである。
【0031】第4級アンモニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム,塩化ステアリ
ルトリエチルアンモニウム,臭化ステアリルトリメチル
アンモニウム,臭化ステアリルトリエチルアンモニウ
ム,水酸化ステアリルトリメチルアンモニウム,水酸化
トリエチルアンモニウム,塩化ラウリルトリメチルアン
モニウム,塩化ラウリルジメチルペンジルアンモニウ
ム,塩化ステアリルジメチルペンジルアンモニウム,塩
化ドデシルトリメチルアンモニウム,塩化ドデシルトリ
エチルアンモニウムあるいは臭化ドデシルトリメチルア
ンモニウムが挙げられる。
【0032】第4級ホスホニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルトリメチルホスホニウム,塩化ドデシル
トリメチルホスホニウム,塩化アセトニルトリフェニル
ホスホニウム,臭化メチルトリフェニルホスホニウム,
ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウムあるいは塩化ド
デシルトリメチルホスホニウムが挙げられる。
【0033】第3級スルホニウム塩としては、例えば、
塩化ステアリルジメチルスルホニウム,臭化トリメチル
スルホニウム,臭化トリフェニルスルホニウムあるいは
塩化ドデシルジメチルスルホニウムが挙げられる。
【0034】これらカチオン性有機物において、ヘテロ
原子に結合した置換基のうちの1つは炭素数3以上20
以下の直鎖アルキル基であるものが好ましい。反応活性
点と水分子との反応を抑制するためには、カチオン性有
機物がある程度の大きさをもって立体障害とならねばな
らず、また逆に立体障害が大きすぎると、必要以上に負
極14の表面の被膜抵抗が増大してしまい、放電容量が
低下するからである。これに対して、ヘテロ原子に結合
した上記直鎖アルキル基以外の他の置換基は炭素数が2
以下であるものが好ましい。カチオン性有機物が有効に
負極14の表面に吸着するためには、正電荷を有するヘ
テロ原子と負極14の表面とが接近する必要があるから
である。
【0035】また、カチオン性有機物は耐アルカリ性の
高いものが好ましく、ヘテロ原子に結合した炭素数2以
下の置換基としてはメチル基よりもエチル基の方が好ま
しい。更に、フッ化アルキル基などの置換基を有するも
のも好ましい。
【0036】これらカチオン性有機物の電解液における
含有量は、0.0001mol/l以上0.1mol/
l以下の範囲内であることが好ましい。過小であると負
極14の表面における反応活性点のマスキングが不十分
なために水素ガスの発生を十分に抑制することがでず、
反対に過大であるとカチオン性有機物が負極14の表面
に過剰に吸着することにより内部抵抗が必要以上に増大
してしまうからである。
【0037】この電解液には、更に、酸化亜鉛などの亜
鉛化合物が添加され含まれていることが好ましい。電解
液中の亜鉛酸イオン濃度を増大させることにより、保存
時における亜鉛の溶解反応による腐食反応が抑制される
ので、カチオン性有機物が負極14の表面の反応活性点
に付着する前に起こる腐食反応を抑制することができ、
また、この腐食反応により発生した水素ガスが負極14
の表面に付着することを抑制し、カチオン性有機物の反
応活性点への吸着を促進することができるからである。
【0038】亜鉛化合物の電解液における含有量は、
0.1mol/l以上であることが好ましい。含有量が
過小であると十分な効果が得られないからである。な
お、亜鉛化合物の含有量は溶液の飽和濃度以上であって
もよい。大きくしても電解液中の亜鉛酸イオン濃度は変
化しないので、目的とする効果を得ることができるから
である。
【0039】電解液には、更に必要に応じて、正極12
の性能を向上させるなどの各種目的に応じた水酸化リチ
ウムなどの添加剤が含まれていてもよい。
【0040】このアルカリ亜鉛一次電池は、例えば、次
のようにして製造することができる。
【0041】まず、例えば、正極活物質と導電剤と電解
液とを混合したのち、この混合物を加圧成型し、中空円
筒状の成型体を形成し、正極12を作製する。次いで、
例えば、負極活物質と電解液とゲル化剤とを混合して、
負極14を作製する。
【0042】正極12および負極14を作製したのち、
例えば、正極缶11に正極12を収納し、その中空部に
セパレータ13を挿入して電解液を注入し、負極14を
充填する。続いて、正極缶11の開口部に絶縁パッキン
グ16をはめ込み、その上に負極集電体17を有する負
極蓋15を載置したのち、正極缶11の開口端を内側に
かしめる。これにより、図1に示したアルカリ亜鉛一次
電池が形成される。
【0043】このように本実施の形態によれば、電解液
にカチオン性有機物を含むようにしたので、反応活性点
をマスキングすることができ、水分子の還元を抑制する
ことができる。よって、水素ガスの発生を抑制すること
ができ、電池の漏液,膨張および破裂を防止することが
できる。
【0044】特に、電解液におけるカチオン性有機物の
含有量を、0.0001mol/l以上0.1mol/
l以下の範囲内とするようにすれば、内部抵抗を増大さ
せることなく、水分子の還元反応を効果的に抑制するこ
とができる。
【0045】また、電解液に亜鉛化合物を含むようにす
れば、カチオン性有機物が反応活性点に付着する前に起
こる腐食反応を抑制することができると共に、この腐食
反応により発生した水素ガスが負極14の表面に付着す
ることを抑制し、カチオン性有機物の反応活性点への吸
着を促進することができる。よって、水素ガスの発生を
より効果的に抑制することができる。
【0046】更に、ヘテロ原子に結合した置換基のうち
の1つが炭素数3以上20以下の直鎖アルキル基であ
り、他の置換基が炭素数1または2のアルキル基である
カチオン性有機物を含むようにすれば、立体障害として
反応活性点への水分子の接近を防止することができると
共に、ヘテロ原子を負極14に接近させ、吸着させるこ
とができる。よって、より高い効果を得ることができ
る。
【0047】[第2の実施の形態]本発明の第2の実施
の形態は、アルカリ亜鉛二次電池に本発明を適用したも
のである。このアルカリ亜鉛二次電池は、第1の実施の
形態と同様の構成を有しており、同様にして製造するこ
とができる。よって、ここでは、同一の構成要素には同
一の符合を付し、図1を参照して、同一部分についての
詳細な説明を省略する。
【0048】本実施の形態では、カチオン性有機物が次
のように機能するものと推察される。
【0049】アルカリ亜鉛二次電池では、保存時に負極
14から亜鉛が溶出して生成した電子、または充電時に
負極14に流れ込んだ電子が負極14の表面突起部など
の電流が集中しやすい箇所に集中し、反応活性点ができ
る。この反応活性点では保存時および充電時に水分子が
還元反応を受けやすく、また充電時に亜鉛が析出しやす
くなるが、カチオン性有機物は電流集中部に選択的に移
動して吸着し、反応活性点をマスキングすると考えられ
る。よって、水分子の還元反応が抑制され、水素ガスの
発生が抑制されると共に、反応活性点と亜鉛酸イオンと
の反応が抑制され、亜鉛のデンドライト成長が防止され
る。
【0050】なお、本実施の形態においても、カチオン
性有機物の種類、カチオン性有機物の含有量、および電
解液に酸化亜鉛などの亜鉛化合物を含ませた方がより高
い効果を得られる点などは、第1の実施の形態と全く同
一である。ちなみに、カチオン性有機物においてヘテロ
原子に結合した置換基のうちの1つは炭素数3以上20
以下の直鎖アルキル基であるものが好ましい理由として
は、第1の実施の形態において説明した理由に加えて、
反応活性点と亜鉛酸イオンとの反応を抑制するにはある
程度の大きさが必要ではあるが、大きすぎると亜鉛の析
出反応を必要以上に阻害してしまうということも挙げら
れる。また、カチオン性有機物の含有量が過大であると
好ましくない理由としては、カチオン性有機物が負極1
4の表面に過剰に吸着することにより亜鉛の析出反応を
必要以上に阻害してしまうことも挙げられる。
【0051】このように本実施の形態によれば、電解液
にカチオン性有機物を含んでいるので、反応活性点をマ
スキングすることにより、保存時または充電時における
水素ガスの発生を抑制することができ、電池の漏液,膨
張および破裂を防止することができる。また、充電時に
亜鉛が反応活性点においてデンドライト成長することを
防止することができ、亜鉛の析出形態を均一化すること
ができる。よって、内部短絡を防止することができ、寿
命を長くすることができる。
【0052】[第3の実施の形態]本発明の第3の実施
の形態は、電解液に変えて、または電解液と共に、負極
14にカチオン性有機物を含むように構成したことを除
き、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一で
ある。このように構成しても、負極14の反応活性点を
マスキングすることができ、第1の実施の形態および第
2の実施の形態と同一の効果を得ることができる。
【0053】カチオン性有機物の種類、および電解液に
酸化亜鉛などの亜鉛化合物を含ませた方がより高い効果
を得られる点などは、第1の実施の形態および第2の実
施の形態と同一である。また、カチオン性有機物の含有
量は、電池内部に存在する電解液量に対して0.000
1mol/l以上0.1mol/l以下の範囲内となる
ようにすることが好ましい。
【0054】[第4の実施の形態]本発明の第4の実施
の形態は、電解液にカチオン性有機物を含むことに変え
て、セパレータ13の負極側表面にカチオン性有機物を
含む被膜を備えたことを除き、第1の実施の形態および
第2の実施の形態と同一である。このように構成して
も、負極14の反応活性点をマスキングすることがで
き、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一の
効果を得ることができる。
【0055】なお、カチオン性有機物の一部は、被膜か
ら離脱し、電解液中に混在していてもよい。また、第1
の実施の形態ないし第3の実施の形態と組み合わせて構
成するようにしてもよい。カチオン性有機物の種類、お
よび電解液に酸化亜鉛などの亜鉛化合物を含ませた方が
より高い効果を得られる点などは、第1の実施の形態お
よび第2の実施の形態と同一である。
【0056】
【実施例】更に、本発明の具体的な実施例について詳細
に説明する。
【0057】(実施例1−1〜1−16)図1に示した
インサイドアウト型のアルカリ亜鉛一次電池を作製し、
特性を調べた。
【0058】まず、40重量%水酸化カリウム水溶液に
カチオン性有機物である塩化n−ドデシルトリメチルア
ンモニウムおよび亜鉛化合物である酸化亜鉛(ZnO)
を添加し、電解液を作製した。その際、塩化n−ドデシ
ルトリメチルアンモニウムおよび酸化亜鉛の含有量は実
施例1−1〜1−16で表1〜4に示したように変化さ
せた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】次いで、正極活物質であるオキシ水酸化ニ
ッケル(NiOOH)80重量部と、添加剤である水酸
化カルシウム(Ca(OH)2 )1重量部と、導電剤で
ある黒鉛粉末10重量部と、電解液9重量部とをらいか
い乳鉢で30分間混合し、混合物を得た。この混合物を
加圧成型して、外径1.3cm、内径0.9cm、高さ
1.5cmの中空円筒状の成型体を作製し、この成型体
を3個積み重ねて正極12とした。
【0064】また、負極活物質である亜鉛合金粉末(ア
ルミニウム50ppm、ビスマス100ppm、インジ
ウム500ppmを含む)70重量部と、電解液29重
量部と、ゲル化剤であるアルクリル酸樹脂1重量部とを
混合してゲル状の負極14を作製した。
【0065】正極12および負極14をそれぞれ作製し
たのち、正極缶11に正極12を収納し、正極12の中
空部に袋状ポリプロピレン不織布製のセパレータ13を
挿入して、電解液を1g添加したのち、負極14を充填
した。その際、電池容量を正極容量で規制するために、
正極12と負極14との電気化学的な容量比が正極:負
極=1:1.5となるようにした。
【0066】次いで、正極缶11の開口部に、絶縁パッ
キング16をはめ込み、その上に負極集電体18を有す
る負極蓋15を載置したのち、正極缶11の開口端を内
側にかしめ、実施例1−1〜1−16についてアルカリ
亜鉛一次電池を得た。なお、電池内部の空隙率は10体
積%とした。
【0067】得られた実施例1−1〜1−16のアルカ
リ亜鉛一次電池について、100mAの定電流で電池電
圧が1Vに達するまで放電し、その放電に要した時間
(放電時間)を調べた。そののち、放電した電池を60
℃の恒温槽中で60日間保存し、漏液の有無を目視判定
により調べた。試験数は各実施例とも100個とし、1
00個に対する漏液数の百分率を漏液率として求めた。
得られた結果を表1〜4に示す。
【0068】本実施例に対する比較例1−1〜1−4と
して、塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムおよび
酸化亜鉛の含有量を表1〜4に示したように変化させた
ことを除き、他は本実施例と同様にしてアルカリ亜鉛一
次電池を作製した。比較例1−1〜1−4についても、
本実施例と同様にして放電時間および漏液率を調べた。
それらの結果も表1〜4に合わせて示す。
【0069】表1〜4から分かるように、塩化n−ドデ
シルトリメチルアンモニウムを含む実施例1−1〜1−
16の方が、含まない比較例1−1〜1−4よりも、漏
液率が低く、中でも酸化亜鉛を0.1mol/l以上含
む実施例1−9〜1−16は、2%以下と非常に低かっ
た。すなわち、塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウ
ムを含むようにすれば、漏液を抑制することができ、酸
化亜鉛を0.1mol/l以上の含有量で含むようにす
れば、漏液を著しく抑制できることが分かった。
【0070】また、本実施例ではいずれも良好な放電時
間が得られた。但し、塩化n−ドデシルトリメチルアン
モニウムの含有量が0.5mol/l以上となると、若
干の低下が見られた。すなわち、塩化n−ドデシルトリ
メチルアンモニウムの含有量を0.5mol/l未満、
より好ましくは0.1mol/l以下の範囲内とすれ
ば、優れた電池特性を保持しつつ、保存時の漏液を抑制
できることが分かった。
【0071】(実施例1−17〜1−25)カチオン性
有機物として塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウム
に代えて表5に示した第4級アンモニウム塩を用いたこ
とを除き、他は実施例1−14と同様にしてアルカリ亜
鉛一次電池を作製した。実施例1−17〜1−25につ
いても実施例1−14と同様にして、放電時間および漏
液率を調べた。それらの結果を実施例1−14および比
較例1−4の結果と合わせて表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】表5から分かるように、実施例1−14と
同様に、実施例1−17〜1−25の方が、比較例1−
4よりも漏液率が低かった。すなわち、第4級アンモニ
ウム塩を含むようにすれば、漏液を抑制できることが分
かった。
【0074】また、炭素数が3以上の直鎖アルキル基を
有する実施例1−14および実施例1−19〜1−25
は、漏液率が4%以下と低く、中でも、直鎖アルキル基
の炭素数が20以下の実施例1−14および実施例1−
19〜1−24は放電時間も17時間以上と長かった。
これに対して、直鎖アルキル基の炭素数が3未満の実施
例1−17,1−18は、放電時間は18時間と長かっ
たものの、漏液率が27%以上と高かった。すなわち、
炭素数が3以上20以下の直鎖アルキル基を有する第4
級アンモニウム塩を含むようにすれば、優れた電池特性
を保持しつつ、保存時の漏液をより抑制できることが分
かった。
【0075】(実施例1−26,1−27)カチオン性
有機物として塩化ヘキシルトリメチルアンモニウムに代
えて表6に示した第4級アンモニウム塩を用いたことを
除き、他は実施例1−21と同様にしてアルカリ亜鉛二
次電池を作製した。実施例1−26,1−27について
も実施例1−21と同様にして、放電時間および漏液率
を調べた。それらの結果を実施例1−21の結果と合わ
せて表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】表6から分かるようにヘキシル基以外の置
換基の炭素数が2以下の実施例1−21および実施例1
−26では、漏液率が0%と漏液が見られなかった。こ
れに対して、ヘキシル基以外の置換基の炭素数が2より
も多い実施例1−27は漏液率が25%と高かった。す
なわち、炭素数が3以上20以下の直鎖アルキル基以外
の置換基の炭素数を2以下とすれば、漏液をより抑制で
きることが分かった。
【0078】(実施例1−28,29)カチオン性有機
物として、第4級アンモニウム塩であるn−ドデシルト
リメチルアンモニウムに代えて第4級ホスホニウム塩で
ある塩化n−ドデシルトリメチルホスホニウム、または
第3級スルホニウム塩である塩化n−ドデシルジメチル
スルホニウムを用いたことを除き、他は実施例1−14
と同様にしてアルカリ亜鉛一次電池を作製した。実施例
1−28,1−29についても実施例1−1と同様にし
て、放電時間および漏液率を調べた。それらの結果を実
施例1−14および比較例1−4の結果と合わせて表7
に示す。
【0079】
【表7】
【0080】表7から分かるように、実施例1−14と
同様に、実施例1−28,1−29の方が、比較例1−
4よりも、漏液率および内部短絡率が低かった。すなわ
ち、電解液にカチオン性有機物を含むようにすれば、漏
液および内部短絡を著しく抑制できることが分かった。
【0081】(実施例2−1〜2−16)図1に示した
インサイドアウト型のアルカリ亜鉛二次電池を作製し、
特性を調べた。その際、電解液における塩化n−ドデシ
ルトリメチルアンモニウムおよび酸化亜鉛の含有量を実
施例2−1〜2−16で表8〜11に示したように変化
させたことを除き、他は実施例1−1と同一とした。
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】得られた実施例2−1〜2−16につい
て、100mAの定電流で電池電圧が1Vに達するまで
放電し、その放電に要した時間(初期放電時間)を調べ
た。得られた結果を表8〜11に示す。
【0087】また、実施例2−1〜2−16について、
充放電を20サイクル行ったのち、60℃の恒温槽中で
60日間保存し、目視判定で漏液を観察した。その際、
充電は、200mAの定電流で電池電圧が1.90Vに
達するまで行ったのち、1.90Vの定電圧で充電時間
の総計が10時間に達するまで行い、放電は100mA
の定電流で電池電圧が1.0Vに達するまで行った。試
験数は各実施例とも100個とし、100個に対する漏
液数の百分率を漏液率として求めた。得られた結果を表
8〜11に示す。
【0088】更に、実施例2−1〜2−16について内
部短絡率を調べた。その際、上述した条件で30サイク
ル充放電を行ったのち、再度充電したものを2時間室温
にて放置して開回路電圧を測定した。また、2時間放電
した後、更に24時間室温にて放置して開回路電圧を測
定した。そして、2時間放置した後の開回路電圧と、2
4時間放置した後の開回路電圧との差、すなわち電圧降
下幅ΔVが100mV以上の場合に内部短絡が起こって
いるものと判断した。測定数は各実施例とも100個と
し、100個に対する内部短絡数の百分率を求めた。得
られた結果を表8〜11に示す。
【0089】本実施例に対する比較例2−1〜2−4と
して、塩化n−ドデシルトリメチルアンモニウムおよび
酸化亜鉛の含有量を表8〜11に示したように変化させ
たことを除き、他は本実施例と同様にしてアルカリ亜鉛
二次電池を作製した。比較例2−1〜2−4のアルカリ
亜鉛二次電池についても、実施例2−1〜2−16と同
様にして放電時間,漏液率および内部短絡率を調べた。
それらの結果も表8〜11に合わせて示す。
【0090】表8〜11から分かるように、塩化n−ド
デシルトリメチルアンモニウムを含む実施例2−1〜2
−16の方が、含まない比較例2−1〜2−4よりも、
漏液率および内部短絡率が低く、中でも酸化亜鉛を0.
1mol/l以上含む実施例2−9〜2−16は、漏液
率が3%以下、内部短絡率が4%以下と共に非常に低か
った。すなわち、塩化n−ドデシルトリメチルアンモニ
ウムを含むようにすれば、漏液および内部短絡を抑制す
ることができ、酸化亜鉛を0.1mol/l以上の含有
量で含むようにすれば漏液および内部短絡を著しく抑制
できることが分かった。
【0091】また、本実施例ではいずれも良好な放電時
間が得られた。但し、塩化n−ドデシルトリメチルアン
モニウムの含有量が0.5mol/l以上となると、若
干の低下が見られた。すなわち、塩化n−ドデシルトリ
メチルアンモニウムの含有量を0.5mol/l未満、
より好ましくは0.1mol/l以下の範囲内とすれ
ば、優れた電池特性を保持しつつ、保存時の漏液および
内部短絡を抑制できることが分かった。
【0092】(実施例2−17〜2−25)第4級アン
モニウム塩として塩化n−ドデシルトリメチルアンモニ
ウムに代えて表12に示した化合物を用いたことを除
き、他は実施例2−14と同様にしてアルカリ亜鉛二次
電池を作製した。実施例2−17〜2−25についても
実施例2−14と同様にして、放電時間,漏液率および
内部短絡率を調べた。それらの結果を実施例2−14お
よび比較例2−4の結果と合わせて表12に示す。
【0093】
【表12】
【0094】表12から分かるように、実施例2−14
と同様に、実施例2−17〜2−25の方が、比較例2
−4よりも漏液率および内部短絡率が低かった。すなわ
ち、第4級アンモニウム塩を含むようにすれば、漏液お
よび内部短絡を抑制できることが分かった。
【0095】また、炭素数が3以上の直鎖アルキル基を
有する実施例2−14および実施例2−19〜2−25
は、漏液率および内部短絡率が共に3%以下と低く、中
でも、直鎖アルキル基の炭素数が20以下の実施例2−
14および実施例2−19〜2−24は放電時間も17
時間以上と長かった。これに対して、直鎖アルキル基の
炭素数が3未満の実施例2−17,2−18は、放電時
間は18時間以上と長かったものの、漏液率は70%以
上、内部短絡率は30%以上と高かった。すなわち、炭
素数が3以上20以下の直鎖アルキル基を有する第4級
アンモニウム塩を含むようにすれば、優れた電池特性を
保持しつつ、漏液および内部短絡をより抑制できること
が分かった。
【0096】(実施例2−26,2−27)第カチオン
性有機物として塩化ヘキシルトリメチルアンモニウムに
代えて表13に示した第4級アンモニウム塩を用いたこ
とを除き、他は実施例2−21と同様にしてアルカリ亜
鉛二次電池を作製した。実施例2−26,2−27につ
いても実施例2−21と同様にして、放電時間,漏液率
および内部短絡率を調べた。それらの結果を実施例2−
21の結果と合わせて表13に示す。
【0097】
【表13】
【0098】表13から分かるようにヘキシル基以外の
置換基の炭素数が2以下の実施例2−21および実施例
2−26では、漏液率が0%と漏液が見られず、内部短
絡率も1%以下であった。これに対して、ヘキシル基以
外の置換基に炭素数が2よりも多いものを有する実施例
2−27は漏液率が70%、内部短絡率が30%と共に
高かった。すなわち、炭素数が3以上20以下の直鎖ア
ルキル基以外の置換基の炭素数を2以下とすれば、漏液
および内部短絡をより抑制できることが分かった。
【0099】(実施例2−28,2−29)カチオン性
有機物として、第4級アンモニウム塩であるn−ドデシ
ルトリメチルアンモニウムに代えて第4級ホスホニウム
塩である塩化n−ドデシルトリメチルホスホニウム、ま
たは第3級スルホニウム塩である塩化n−ドデシルジメ
チルスルホニウムを用いたことを除き、他は実施例2−
14と同様にしてアルカリ亜鉛二次電池を作製した。実
施例2−28,2−29についても実施例2−14と同
様にして、放電時間,漏液率および内部短絡率を調べ
た。それらの結果を実施例2−14および比較例2−4
の結果と合わせて表14に示す。
【0100】
【表14】
【0101】表14から分かるように、実施例2−14
と同様に、実施例2−28,2−29の方が、比較例2
−4よりも、漏液率および内部短絡率が低かった。すな
わち、電解液にカチオン性有機物を含むようにすれば、
漏液および内部短絡を著しく抑制できることが分かっ
た。
【0102】以上、実施の形態および実施例を挙げて本
発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施
例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例
えば、上記実施の形態および実施例では、カチオン性有
機物について具体例を挙げて説明したが、他のカチオン
性有機物を用いてもよい。
【0103】また、上記実施の形態および実施例では、
インサイドアウト型の電池について説明したが、本発明
は、電極およびセパレータからなる積層体を渦巻状に巻
回したスパイラル型電池あるいはコイン型電池などの他
の形状を有する電池についても適用することができる。
【0104】なお、スパイラル型電池の場合、正極とし
ては、例えば、正極活物質と導電剤との混合物を発砲ニ
ッケルなどの正極集電体上に塗布したのち加圧成型した
ものが用いられる。また、負極としては、例えば、亜鉛
粉末、酸化亜鉛および水酸化亜鉛などをカルボキシメチ
ルセルロースなどの結着剤を溶解した水で混合したもの
を負極集電体上に充填して成型したのち電解して作製し
たペースト式のもの、または亜鉛粉末あるいは亜鉛化合
物を不活性雰囲気で焼結して作製する焼結式のものが用
いられる。負極集電体には、高導電度で水素過電圧が高
いものであればよく、例えば、銅あるいはニッケルのメ
ッシュまたはパンチングメタルにスズをめっきしたもの
が挙げられる。
【0105】更に、上記第1および第2の実施の形態お
よび実施例では、電解液にカチオン性有機物を添加して
含ませるようにしたが、電解液に直接添加するのではな
く、正極12または負極14にカチオン性有機物を添加
することにより、または、セパレータ13の表面にカチ
オン性有機物を塗布することにより、電解液に含ませる
ようにしてもよい。
【0106】
【発明の効果】以上説明したように請求項1ないし請求
項6のいずれか1に記載のアルカリ亜鉛一次電池によれ
ば、負極および電解液のうちの少なくとも一方にカチオ
ン性有機物を含むようにしたので、または、セパレータ
の負極側表面にカチオン性有機物を含む被膜を有するよ
うにしたので、水分子の還元を抑制することができ、水
素ガスの発生を抑制することができる。よって、電池の
漏液,膨張および破裂を防止することができ、貯蔵性を
改善することができる。
【0107】また、請求項7ないし請求項12のいずれ
か1に記載のアルカリ亜鉛二次電池によれば、負極およ
び電解液のうちの少なくとも一方にカチオン性有機物を
含むようにしたので、または、セパレータの負極側表面
にカチオン性有機物を含む被膜を有するようにしたの
で、保存時または充電時における水素ガスの発生を抑制
することができ、電池の漏液,膨張および破裂を防止す
ることができる。また、充電時に亜鉛がデンドライト成
長することを防止することができ、内部短絡を防止し、
寿命を長くすることができる。すなわち、電池の貯蔵性
および充放電性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアルカリ亜鉛
一次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
11…正極缶、12…正極、13…セパレータ、14…
負極、15…負極蓋、16…絶縁パッキング、17…負
極集電体、18…支持板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 10/26 H01M 10/26 (72)発明者 遠藤 琢哉 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 柴本 悟郎 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5H021 CC04 CC14 EE01 EE04 EE23 5H024 AA02 AA14 CC02 CC14 EE09 FF10 FF36 HH08 5H028 AA06 EE05 EE06 FF04 HH03 5H050 AA07 AA20 BA04 BA11 CA03 CB13 DA03 EA12 EA21 FA04 HA10

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を
    含む負極と、正極と、アルカリ性の電解液とを備えたア
    ルカリ亜鉛一次電池であって、 前記負極および前記電解液のうちの少なくとも一方に、
    カチオン性有機物を含むことを特徴とするアルカリ亜鉛
    一次電池。
  2. 【請求項2】 前記カチオン性有機物は、第4級アンモ
    ニウム塩,第4級ホスホニウム塩および第3級スルホニ
    ウム塩からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを
    特徴とする請求項1記載のアルカリ亜鉛一次電池。
  3. 【請求項3】 前記カチオン性有機物の前記電解液にお
    ける含有量は、0.0001mol/l以上0.1mo
    l/l以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記
    載のアルカリ亜鉛一次電池。
  4. 【請求項4】 前記カチオン性有機物は、ヘテロ原子
    と、このヘテロ原子に結合した置換基とを有し、この置
    換基のうちの1つは炭素数3以上20以下の直鎖アルキ
    ル基であり、他の置換基は炭素数1または2のアルキル
    基であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ亜鉛
    一次電池。
  5. 【請求項5】 前記電解液は、亜鉛化合物を0.1mo
    l/l以上の含有量で含むことを特徴とする請求項1記
    載のアルカリ亜鉛一次電池。
  6. 【請求項6】 負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を
    含む負極と、正極と、アルカリ性の電解液と、前記負極
    と前記正極との間に介在されたセパレータとを備えたア
    ルカリ亜鉛一次電池であって、 前記セパレータの負極側表面に、カチオン性有機物を含
    む被膜を有することを特徴とするアルカリ亜鉛一次電
    池。
  7. 【請求項7】 負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を
    含む負極と、正極と、アルカリ性の電解液とを備えたア
    ルカリ亜鉛二次電池であって、 前記負極および前記電解液のうちの少なくとも一方に、
    カチオン性有機物を含むことを特徴とするアルカリ亜鉛
    二次電池。
  8. 【請求項8】 前記カチオン性有機物は、第4級アンモ
    ニウム塩,第4級ホスホニウム塩および第3級スルホニ
    ウム塩からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを
    特徴とする請求項7記載のアルカリ亜鉛二次電池。
  9. 【請求項9】 前記カチオン性有機物の前記電解液にお
    ける含有量は、0.0001mol/l以上0.1mo
    l/l以下の範囲内であることを特徴とする請求項7記
    載のアルカリ亜鉛二次電池。
  10. 【請求項10】 前記カチオン性有機物は、ヘテロ原子
    と、このヘテロ原子に結合した置換基とを有し、この置
    換基のうちの1つは炭素数3以上20以下の直鎖アルキ
    ル基であり、他の置換基は炭素数1または2のアルキル
    基であることを特徴とする請求項7記載のアルカリ亜鉛
    二次電池。
  11. 【請求項11】 前記電解液は、亜鉛化合物を0.1m
    ol/l以上の含有量で含むことを特徴とする請求項7
    記載のアルカリ亜鉛二次電池。
  12. 【請求項12】 負極活物質として亜鉛または亜鉛合金
    を含む負極と、正極と、アルカリ性の電解液と、前記負
    極と前記正極との間に介在されたセパレータとを備えた
    アルカリ亜鉛二次電池であって、 前記セパレータの負極側表面に、カチオン性有機物を含
    む被膜を有することを特徴とするアルカリ亜鉛二次電
    池。
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