JP3432676B2 - 表面明度および耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方法 - Google Patents
表面明度および耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板の表層に金属
クロム、その上層にクロム水和酸化物を有する電解クロ
メート処理鋼板の製造方法に関するものである。電解ク
ロメート処理鋼板はティンフリースチールクロムタイプ
（以下ＴＦＳと略称する）と称される。特に、本発明の
方法で製造したＴＦＳは、缶胴をポリアミド樹脂で接合
する接着缶やポリエステルフィルムを熱ラミネートした
後にＤＴＲ加工で成形する両面樹脂被覆ＴＦＳ鋼板な
ど、表面明度と耐レトルト処理性を要求される飲料缶用
材料として好適である。 【０００２】 【従来の技術】ＴＦＳを用いた缶の用途が拡大し、炭酸
飲料やビールなど内容物の充填が低温状態でなされる低
温パック用のみならず、果汁やコーヒーなどのように内
容物を高温殺菌して充填するいわゆるホットパック用ま
たはパック後高温で殺菌処理を行うレトルト処理が必要
な缶にも使用されるようになり、レトルト処理後の樹脂
皮膜−ＴＦＳ界面の二次密着性（耐レトルト処理性）の
改善が必要になった。二次密着性が劣化するのは、従来
からクロムめっき浴、電解クロム酸浴に助剤として添加
されていた硫酸が水和酸化クロム皮膜中に共析し、レト
ルト処理時にこれが溶出するためである。そのため、硫
酸を添加しない方法が種々提案されたが、その方法では
析出効率が悪く製造能率を著しく低下させること、適性
電流密度範囲が狭いこと、製品品質が不安定であること
などにより生産性や歩留りを大きく低下させ、工業的に
は大きな問題が残っていた。 【０００３】この欠点を解消する方法として、クロム酸
を主成分とする硫酸系水溶液でクロムメッキを行う工程
と非硫酸系水溶液で電解クロム酸処理を行う工程との間
に、鋼板を陽極としてアノード溶解処理を施す工程を挿
入することが提案されている（特開昭５９−１７０２９
８号公報）。しかし、アノード溶解処理を行う場合、電
解クロム酸処理工程で硫酸根やフッ素化合物等の有害物
質を含まない良好な水和酸化クロム皮膜を適性量形成さ
せるためには、アノード溶解処理を行わない場合に比較
して多くの電気量が必要となり、生産性を低下させる原
因となる。 【０００４】更に、近年飲料缶の印刷外観に対する要求
の高まりにより、表面明度のより高いＴＦＳ皮膜が求め
られているが、クロム酸を主成分とする硫酸系水溶液で
のクロムめっきでは、工業的に一般に行われる断続通電
で金属クロムが粒状に析出し、表面明度を著しく低下さ
せることが新たに判明し、上記のアノード溶解処理では
解決できない問題となっている。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を解決し、生産性を低下させることなく、粒状金属ク
ロムの生成による明度低下や耐レトルト処理性の劣化を
防止し、高い表面明度と良好な耐レトルト処理性を有す
るＴＦＳを製造する方法を提供するものである。 【０００６】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、クロム
酸を主成分とする水溶液からなるクロムめっき浴中で薄
鋼板に陰極電解により金属クロムを主体とするクロムめ
っきを行う工程と、前記クロムめっき鋼板にクロム酸、
クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの１種または２種
以上を主成分とする非硫酸系水溶液中で電解クロム酸処
理を行う工程からなるティンフリー鋼板の製造方法にお
いて、該めっき浴中に助剤としてハロゲン化物の１種以
上、更に、硫化物の１種以上を添加し、そのめっき浴組
成が、ハロゲン化物／Ｃｒのモル比で１／１００〜１／
１０、硫化物／Ｃｒのモル比で１／２０００〜１／５０
０、硫化物／ハロゲン化物のモル比が１／５０以下及び
不可避的不純物からなることを特徴とする表面明度およ
び耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方
法である。 【０００７】本発明者らは、クロムめっき浴とＴＦＳの
性状について種々検討した結果、クロムめっき浴に、助
剤としてハロゲン属元素の化合物（ハロゲン化物と称
す）を主体とし微量の硫化物を添加することで、析出効
率を低下させることなく、水和酸化クロム層への硫化物
の共析を減少せしめることで、耐レトルト処理性と表面
明度の優れたティンフリー鋼板の製造が可能であること
を新たに見出して、本発明を成し遂げたものである。 【０００８】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、薄鋼板に片面５０〜２００ｍｇ／ｍ2 の金属
クロムめっきを施し、この金属クロム層表面に金属Ｃｒ
量換算で５〜３０ｍｇ／ｍ2 の水和酸化クロム層を形成
したＴＦＳの製造方法として、又は、ＴＦＳに樹脂を被
覆する樹脂被覆素材としてのＴＦＳの製造方法として好
適である。金属クロム層は５０ｍｇ／ｍ 2 未満では耐食
性が劣ることがあり、また２００ｍｇ／ｍ2 以上でも耐
食性の著しい向上は望めないため、通常のＴＦＳは５０
〜２００ｍｇ／ｍ2 の金属クロム層を有していることが
多い。一方、水和酸化クロム皮膜は５ｍｇ／ｍ2 未満で
は十分な樹脂密着性を得ることが容易でなく、また３０
ｍｇ／ｍ2 を超えると外観が悪くなりやすく、又、加工
時に水和酸化クロム層にクラックが入りやすいので好ま
しくない。更に言えば、水和酸化クロム皮膜としては金
属Ｃｒ量換算で８〜２０ｍｇ／ｍ2 が最も望ましい。 【０００９】ＴＦＳを製造するために用いるクロムめっ
き浴には、無水クロム酸、クロム酸塩または重クロム酸
塩の水溶液に種々の助剤が加えられている。これらの助
剤の中には、硫酸イオン、フッ素を含むイオンなどの陰
イオンを単独または混合で含まれており、これらの陰イ
オンはＴＦＳの表面に形成される水和酸化クロム層に多
量に共析する。 【００１０】特に、前記水和酸化クロム層中に共析した
硫酸根は、耐レトルト処理性と表面明度を低下させる原
因となり有害である。耐レトルト処理性の低下は、レト
ルト時に硫酸根が溶出して樹脂とＴＦＳの界面剥離を起
こすためであり、表面明度の低下は、通電と非通電を繰
り返す断続通電を行う場合に、通電で生成した水和酸化
クロム中に共析した硫酸根が非通電時に水和酸化クロム
を不均一溶解させることにより、再通電時に粒状金属ク
ロムが生成するためである。しかし、非硫酸系めっき浴
では金属クロムの析出効率が低下すること、適性電流密
度範囲が狭いこと、製品品質が不安定であることから操
業性を低下させることが知られている。 【００１１】本願発明者らは、クロム酸を主成分とする
水溶液中で薄鋼板に陰極電解により金属クロムを主体と
するクロムめっきを行う工程と、前記クロムめっき鋼板
をクロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの１
種または２種以上を主成分とする非硫酸系水溶液中で電
解クロム酸処理を行う工程からなるティンフリー鋼板の
製造方法において、クロムめっき浴の浴組成について詳
細な検討を行った結果、クロム酸を主成分としフッ素，
塩素，臭素等のハロゲン化物の少なくとも１種以上、更
に硫酸，チオシアン基，スルホン酸系等の硫化物の少な
くとも１種以上を助剤として含むクロムめっき浴で、そ
の浴組成が、ハロゲン化物／Ｃｒのモル比で１／１００
〜１／１０、硫化物／Ｃｒのモル比で１／２０００〜１
／５００、硫化物／ハロゲン化物のモル比が１／５０以
下及び不可避的不純物からなることを特徴とする新たな
ＴＦＳの製造方法を見出して本発明を完成した。 【００１２】析出効率を高くする効果のある硫化物を微
量添加することで、析出効果を低下させることなく電解
時に水和酸化クロム層に共析する硫化物量を減少せし
め、水和酸化クロムの不均一溶解を抑制して粒状金属ク
ロムの生成を防止することにより、耐レトルト処理性と
表面明度の優れたＴＦＳの製造を可能にするものであ
る。この製造方法は、ＴＦＳに溶接性を付与するために
粒状金属クロムを多量に生成させる溶接缶用ＴＦＳの製
造方法とは、その思想が全く異なるものである。 【００１３】次に浴組成について述べる。クロム酸濃度
は、高析出効率を得るために無水クロム酸として５０〜
３００ｇ／ｌが望ましい。硫化物濃度は低すぎると析出
効率が低下し、高すぎると水和酸化クロム層への共析量
が増加するため、硫化物／Ｃｒのモル比は１／２０００
〜１／５００、ハロゲン化物濃度は低すぎても高すぎて
も析出効率を低下させるため、ハロゲン化物／Ｃｒのモ
ル比は１／１００〜１／１０とする必要がある。また、
ハロゲン化物に対し硫化物のモル比が高くなると水和酸
化クロム層への硫化物の共析量が増加し耐レトルト処理
性が劣化するため、硫化物／ハロゲン化物のモル比は１
／５０以下とする必要がある。 【００１４】上記組成のめっき浴で電解を続けると電解
液中にＣｒ3+が生成する。Ｃｒ3+が多量に生成すると浴
電圧が上り、電力消費が大きくなるので、通常は１０ｇ
／ｌ以下に保たれる。これは、陰極側でのＣｒ3+の生成
と陽極側でのＣｒ3+のＣｒ6+への酸化によるＣｒ3+の消
費量とがバランスして上記範囲に保たれるものである。
また、良好な耐レトルト処理性を得るためには、上記浴
組成でのクロムめっきそして電解クロム酸処理後に、８
０℃以上の熱水で０．５秒以上の洗浄を行うことが好ま
しい。本発明に用いるめっき素材の鋼板は、特に規定す
るものはなく、アルミキルド鋼および極低炭素鋼ともに
良好なめっき品質が得られる。 【００１５】以下に本発明の実施例と比較例を述べる。
０．１８ｍｍの鋼板を５％ＮａＯＨ溶液中にて電解脱
脂、１０％Ｈ2 ＳＯ4 溶液中で酸洗後、下記の条件で本
処理を行った。本処理は（１）クロムめっき工程→
（２）電解クロム酸処理工程の順に行い、（１）と
（２）工程の間および（２）終了後に水洗を行った。 【００１６】 （１）クロムめっき 液組成 無水クロム酸 １〜２ｍｏｌ／ｌ ハロゲン化物 ０．０５〜０．４ｍｏｌ／ｌ 硫化物 ０．０００５〜０．００４ｍｏｌ／ｌ Ｃｒ3+ ０．０５ｍｏｌ／ｌ めっき条件 浴温４０℃、電流密度８５Ａ／ｄｍ2 ０．１秒の陰極電解後非通電浴浸漬０．２秒を５回繰り返した。 【００１７】 【００１８】得られたＴＦＳについて、Ｔピール剥離試
験による耐レトルト処理性および表面明度の評価を行っ
た結果を表１に示す。実施例１〜１８はいづれも析出効
率（≧２０％）、Ｔピール強度（＞３ｋｇ／ｍｍ）、表
面明度（≧１１０）であり、樹脂被覆用ＴＦＳとして好
適である。評価方法の詳細を下記に述べる。 【００１９】 【表１】【００２０】・Ｔピール剥離試験 ＴＦＳの試料表面にエポキシフェノール系塗料を５０ｍ
ｇ／ｍ2 塗布後、１８０℃で１０分間焼付けた後、反対
面に同じ塗料を同じ量塗布し、２１０℃で１０分間焼き
付けた。この試料を幅５ｍｍ、長さ１２０ｍｍに切断
し、先行塗装面と反対面を重ね、その間に厚さ１００μ
ｍのナイロン系接着剤をはさみ、ホットプレスを用いて
２００℃で４５秒の予熱を行った後、３ｋｇ／ｃｍ2 の
加圧下で２００℃で３０秒の圧着を行い、試験片を作製
した。この試験片を、９０℃に保持した０．６％ＮａＣ
ｌ水溶液中に７日間浸漬した後、引張試験機を用い、２
００ｍｍ／ｍｉｎ．の一定引張速度でＴ型剥離試験を行
い、剥離強度を測定した。試験はテストピースを９個ず
つ用いて行い、その平均値を試験結果として示す。 【００２１】・表面明度の評価 島津製分光測色計ＵＶ−２１００Ｓを用い、Ｃ光源・視
野角１０°の条件で拡散反射光と鏡面反射光の測色を行
い、Ｌａｂ表色系のＬ値を明度の指標とし、拡散反射と
鏡面反射のＬ値の合計により表面明度を評価した。 【００２２】 【発明の効果】本発明によりはじめて、析出効率を低下
させることなく電解時に水和酸化クロム層に共析する硫
化物量を減少せしめ、水和酸化クロムの不均一溶解を抑
制して粒状金属クロムの生成を防止することにより、耐
レトルト処理性と表面明度の優れたティンフリースチー
ルの製造が可能になる。
クロム、その上層にクロム水和酸化物を有する電解クロ
メート処理鋼板の製造方法に関するものである。電解ク
ロメート処理鋼板はティンフリースチールクロムタイプ
（以下ＴＦＳと略称する）と称される。特に、本発明の
方法で製造したＴＦＳは、缶胴をポリアミド樹脂で接合
する接着缶やポリエステルフィルムを熱ラミネートした
後にＤＴＲ加工で成形する両面樹脂被覆ＴＦＳ鋼板な
ど、表面明度と耐レトルト処理性を要求される飲料缶用
材料として好適である。 【０００２】 【従来の技術】ＴＦＳを用いた缶の用途が拡大し、炭酸
飲料やビールなど内容物の充填が低温状態でなされる低
温パック用のみならず、果汁やコーヒーなどのように内
容物を高温殺菌して充填するいわゆるホットパック用ま
たはパック後高温で殺菌処理を行うレトルト処理が必要
な缶にも使用されるようになり、レトルト処理後の樹脂
皮膜−ＴＦＳ界面の二次密着性（耐レトルト処理性）の
改善が必要になった。二次密着性が劣化するのは、従来
からクロムめっき浴、電解クロム酸浴に助剤として添加
されていた硫酸が水和酸化クロム皮膜中に共析し、レト
ルト処理時にこれが溶出するためである。そのため、硫
酸を添加しない方法が種々提案されたが、その方法では
析出効率が悪く製造能率を著しく低下させること、適性
電流密度範囲が狭いこと、製品品質が不安定であること
などにより生産性や歩留りを大きく低下させ、工業的に
は大きな問題が残っていた。 【０００３】この欠点を解消する方法として、クロム酸
を主成分とする硫酸系水溶液でクロムメッキを行う工程
と非硫酸系水溶液で電解クロム酸処理を行う工程との間
に、鋼板を陽極としてアノード溶解処理を施す工程を挿
入することが提案されている（特開昭５９−１７０２９
８号公報）。しかし、アノード溶解処理を行う場合、電
解クロム酸処理工程で硫酸根やフッ素化合物等の有害物
質を含まない良好な水和酸化クロム皮膜を適性量形成さ
せるためには、アノード溶解処理を行わない場合に比較
して多くの電気量が必要となり、生産性を低下させる原
因となる。 【０００４】更に、近年飲料缶の印刷外観に対する要求
の高まりにより、表面明度のより高いＴＦＳ皮膜が求め
られているが、クロム酸を主成分とする硫酸系水溶液で
のクロムめっきでは、工業的に一般に行われる断続通電
で金属クロムが粒状に析出し、表面明度を著しく低下さ
せることが新たに判明し、上記のアノード溶解処理では
解決できない問題となっている。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を解決し、生産性を低下させることなく、粒状金属ク
ロムの生成による明度低下や耐レトルト処理性の劣化を
防止し、高い表面明度と良好な耐レトルト処理性を有す
るＴＦＳを製造する方法を提供するものである。 【０００６】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、クロム
酸を主成分とする水溶液からなるクロムめっき浴中で薄
鋼板に陰極電解により金属クロムを主体とするクロムめ
っきを行う工程と、前記クロムめっき鋼板にクロム酸、
クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの１種または２種
以上を主成分とする非硫酸系水溶液中で電解クロム酸処
理を行う工程からなるティンフリー鋼板の製造方法にお
いて、該めっき浴中に助剤としてハロゲン化物の１種以
上、更に、硫化物の１種以上を添加し、そのめっき浴組
成が、ハロゲン化物／Ｃｒのモル比で１／１００〜１／
１０、硫化物／Ｃｒのモル比で１／２０００〜１／５０
０、硫化物／ハロゲン化物のモル比が１／５０以下及び
不可避的不純物からなることを特徴とする表面明度およ
び耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方
法である。 【０００７】本発明者らは、クロムめっき浴とＴＦＳの
性状について種々検討した結果、クロムめっき浴に、助
剤としてハロゲン属元素の化合物（ハロゲン化物と称
す）を主体とし微量の硫化物を添加することで、析出効
率を低下させることなく、水和酸化クロム層への硫化物
の共析を減少せしめることで、耐レトルト処理性と表面
明度の優れたティンフリー鋼板の製造が可能であること
を新たに見出して、本発明を成し遂げたものである。 【０００８】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、薄鋼板に片面５０〜２００ｍｇ／ｍ2 の金属
クロムめっきを施し、この金属クロム層表面に金属Ｃｒ
量換算で５〜３０ｍｇ／ｍ2 の水和酸化クロム層を形成
したＴＦＳの製造方法として、又は、ＴＦＳに樹脂を被
覆する樹脂被覆素材としてのＴＦＳの製造方法として好
適である。金属クロム層は５０ｍｇ／ｍ 2 未満では耐食
性が劣ることがあり、また２００ｍｇ／ｍ2 以上でも耐
食性の著しい向上は望めないため、通常のＴＦＳは５０
〜２００ｍｇ／ｍ2 の金属クロム層を有していることが
多い。一方、水和酸化クロム皮膜は５ｍｇ／ｍ2 未満で
は十分な樹脂密着性を得ることが容易でなく、また３０
ｍｇ／ｍ2 を超えると外観が悪くなりやすく、又、加工
時に水和酸化クロム層にクラックが入りやすいので好ま
しくない。更に言えば、水和酸化クロム皮膜としては金
属Ｃｒ量換算で８〜２０ｍｇ／ｍ2 が最も望ましい。 【０００９】ＴＦＳを製造するために用いるクロムめっ
き浴には、無水クロム酸、クロム酸塩または重クロム酸
塩の水溶液に種々の助剤が加えられている。これらの助
剤の中には、硫酸イオン、フッ素を含むイオンなどの陰
イオンを単独または混合で含まれており、これらの陰イ
オンはＴＦＳの表面に形成される水和酸化クロム層に多
量に共析する。 【００１０】特に、前記水和酸化クロム層中に共析した
硫酸根は、耐レトルト処理性と表面明度を低下させる原
因となり有害である。耐レトルト処理性の低下は、レト
ルト時に硫酸根が溶出して樹脂とＴＦＳの界面剥離を起
こすためであり、表面明度の低下は、通電と非通電を繰
り返す断続通電を行う場合に、通電で生成した水和酸化
クロム中に共析した硫酸根が非通電時に水和酸化クロム
を不均一溶解させることにより、再通電時に粒状金属ク
ロムが生成するためである。しかし、非硫酸系めっき浴
では金属クロムの析出効率が低下すること、適性電流密
度範囲が狭いこと、製品品質が不安定であることから操
業性を低下させることが知られている。 【００１１】本願発明者らは、クロム酸を主成分とする
水溶液中で薄鋼板に陰極電解により金属クロムを主体と
するクロムめっきを行う工程と、前記クロムめっき鋼板
をクロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの１
種または２種以上を主成分とする非硫酸系水溶液中で電
解クロム酸処理を行う工程からなるティンフリー鋼板の
製造方法において、クロムめっき浴の浴組成について詳
細な検討を行った結果、クロム酸を主成分としフッ素，
塩素，臭素等のハロゲン化物の少なくとも１種以上、更
に硫酸，チオシアン基，スルホン酸系等の硫化物の少な
くとも１種以上を助剤として含むクロムめっき浴で、そ
の浴組成が、ハロゲン化物／Ｃｒのモル比で１／１００
〜１／１０、硫化物／Ｃｒのモル比で１／２０００〜１
／５００、硫化物／ハロゲン化物のモル比が１／５０以
下及び不可避的不純物からなることを特徴とする新たな
ＴＦＳの製造方法を見出して本発明を完成した。 【００１２】析出効率を高くする効果のある硫化物を微
量添加することで、析出効果を低下させることなく電解
時に水和酸化クロム層に共析する硫化物量を減少せし
め、水和酸化クロムの不均一溶解を抑制して粒状金属ク
ロムの生成を防止することにより、耐レトルト処理性と
表面明度の優れたＴＦＳの製造を可能にするものであ
る。この製造方法は、ＴＦＳに溶接性を付与するために
粒状金属クロムを多量に生成させる溶接缶用ＴＦＳの製
造方法とは、その思想が全く異なるものである。 【００１３】次に浴組成について述べる。クロム酸濃度
は、高析出効率を得るために無水クロム酸として５０〜
３００ｇ／ｌが望ましい。硫化物濃度は低すぎると析出
効率が低下し、高すぎると水和酸化クロム層への共析量
が増加するため、硫化物／Ｃｒのモル比は１／２０００
〜１／５００、ハロゲン化物濃度は低すぎても高すぎて
も析出効率を低下させるため、ハロゲン化物／Ｃｒのモ
ル比は１／１００〜１／１０とする必要がある。また、
ハロゲン化物に対し硫化物のモル比が高くなると水和酸
化クロム層への硫化物の共析量が増加し耐レトルト処理
性が劣化するため、硫化物／ハロゲン化物のモル比は１
／５０以下とする必要がある。 【００１４】上記組成のめっき浴で電解を続けると電解
液中にＣｒ3+が生成する。Ｃｒ3+が多量に生成すると浴
電圧が上り、電力消費が大きくなるので、通常は１０ｇ
／ｌ以下に保たれる。これは、陰極側でのＣｒ3+の生成
と陽極側でのＣｒ3+のＣｒ6+への酸化によるＣｒ3+の消
費量とがバランスして上記範囲に保たれるものである。
また、良好な耐レトルト処理性を得るためには、上記浴
組成でのクロムめっきそして電解クロム酸処理後に、８
０℃以上の熱水で０．５秒以上の洗浄を行うことが好ま
しい。本発明に用いるめっき素材の鋼板は、特に規定す
るものはなく、アルミキルド鋼および極低炭素鋼ともに
良好なめっき品質が得られる。 【００１５】以下に本発明の実施例と比較例を述べる。
０．１８ｍｍの鋼板を５％ＮａＯＨ溶液中にて電解脱
脂、１０％Ｈ2 ＳＯ4 溶液中で酸洗後、下記の条件で本
処理を行った。本処理は（１）クロムめっき工程→
（２）電解クロム酸処理工程の順に行い、（１）と
（２）工程の間および（２）終了後に水洗を行った。 【００１６】 （１）クロムめっき 液組成 無水クロム酸 １〜２ｍｏｌ／ｌ ハロゲン化物 ０．０５〜０．４ｍｏｌ／ｌ 硫化物 ０．０００５〜０．００４ｍｏｌ／ｌ Ｃｒ3+ ０．０５ｍｏｌ／ｌ めっき条件 浴温４０℃、電流密度８５Ａ／ｄｍ2 ０．１秒の陰極電解後非通電浴浸漬０．２秒を５回繰り返した。 【００１７】 【００１８】得られたＴＦＳについて、Ｔピール剥離試
験による耐レトルト処理性および表面明度の評価を行っ
た結果を表１に示す。実施例１〜１８はいづれも析出効
率（≧２０％）、Ｔピール強度（＞３ｋｇ／ｍｍ）、表
面明度（≧１１０）であり、樹脂被覆用ＴＦＳとして好
適である。評価方法の詳細を下記に述べる。 【００１９】 【表１】【００２０】・Ｔピール剥離試験 ＴＦＳの試料表面にエポキシフェノール系塗料を５０ｍ
ｇ／ｍ2 塗布後、１８０℃で１０分間焼付けた後、反対
面に同じ塗料を同じ量塗布し、２１０℃で１０分間焼き
付けた。この試料を幅５ｍｍ、長さ１２０ｍｍに切断
し、先行塗装面と反対面を重ね、その間に厚さ１００μ
ｍのナイロン系接着剤をはさみ、ホットプレスを用いて
２００℃で４５秒の予熱を行った後、３ｋｇ／ｃｍ2 の
加圧下で２００℃で３０秒の圧着を行い、試験片を作製
した。この試験片を、９０℃に保持した０．６％ＮａＣ
ｌ水溶液中に７日間浸漬した後、引張試験機を用い、２
００ｍｍ／ｍｉｎ．の一定引張速度でＴ型剥離試験を行
い、剥離強度を測定した。試験はテストピースを９個ず
つ用いて行い、その平均値を試験結果として示す。 【００２１】・表面明度の評価 島津製分光測色計ＵＶ−２１００Ｓを用い、Ｃ光源・視
野角１０°の条件で拡散反射光と鏡面反射光の測色を行
い、Ｌａｂ表色系のＬ値を明度の指標とし、拡散反射と
鏡面反射のＬ値の合計により表面明度を評価した。 【００２２】 【発明の効果】本発明によりはじめて、析出効率を低下
させることなく電解時に水和酸化クロム層に共析する硫
化物量を減少せしめ、水和酸化クロムの不均一溶解を抑
制して粒状金属クロムの生成を防止することにより、耐
レトルト処理性と表面明度の優れたティンフリースチー
ルの製造が可能になる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 水谷 政昭
愛知県東海市東海町５−３ 新日本製鐵
株式会社 名古屋製鐵所内
(56)参考文献 特開 昭59−170298（ＪＰ，Ａ)
特開 昭59−166695（ＪＰ，Ａ)
特開 昭59−100291（ＪＰ，Ａ)
特開 昭59−74297（ＪＰ，Ａ)
特開 昭50−23346（ＪＰ，Ａ)
特開 平６−184795（ＪＰ，Ａ)
特公 昭43−2846（ＪＰ，Ｂ１)
(58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名)
C25D 3/04
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 クロム酸を主成分とする水溶液からなる
クロムめっき浴中で薄鋼板に陰極電解により金属クロム
を主体とするクロムめっきを行う工程と、前記クロムめ
っき鋼板にクロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩の
うちの１種または２種以上を主成分とする非硫酸系水溶
液中で電解クロム酸処理を行う工程からなるティンフリ
ー鋼板の製造方法において、該めっき浴中に助剤として
ハロゲン化物の１種以上、更に、硫化物の１種以上を添
加し、そのめっき浴組成が、ハロゲン化物／Ｃｒのモル
比で１／１００〜１／１０、硫化物／Ｃｒのモル比で１
／２０００〜１／５００、硫化物／ハロゲン化物のモル
比が１／５０以下及び不可避的不純物からなることを特
徴とする表面明度および耐レトルト処理性に優れたティ
ンフリー鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP10075396A JP3432676B2 (ja) | 1996-04-23 | 1996-04-23 | 表面明度および耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP10075396A JP3432676B2 (ja) | 1996-04-23 | 1996-04-23 | 表面明度および耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH09287090A JPH09287090A (ja) | 1997-11-04 |
| JP3432676B2 true JP3432676B2 (ja) | 2003-08-04 |
Family
ID=14282289
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP10075396A Expired - Lifetime JP3432676B2 (ja) | 1996-04-23 | 1996-04-23 | 表面明度および耐レトルト処理性に優れたティンフリー鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3432676B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| MX350889B (es) * | 2012-03-30 | 2017-09-25 | Tata Steel Ijmuiden Bv | Substrato recubierto para empacar aplicaciones y un metodo para producir dicho substrato recubierto. |
-
1996
- 1996-04-23 JP JP10075396A patent/JP3432676B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH09287090A (ja) | 1997-11-04 |
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