JP3427356B2 - 積層装置および積層方法 - Google Patents

積層装置および積層方法

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JP3427356B2
JP3427356B2 JP2002239116A JP2002239116A JP3427356B2 JP 3427356 B2 JP3427356 B2 JP 3427356B2 JP 2002239116 A JP2002239116 A JP 2002239116A JP 2002239116 A JP2002239116 A JP 2002239116A JP 3427356 B2 JP3427356 B2 JP 3427356B2
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昭彦 小川
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株式会社名機製作所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層装置および積
層方法に関し、特に、被積層材と積層材とを積層空間内
の真空雰囲気下で膜体により加圧すると共に加熱手段に
より加熱する積層装置および積層方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来の積層装置として、図3に示すよう
な真空積層装置31が知られている。この真空積層装置
31では、連続したフィルム状の搬送体3b上に載置さ
れた被積層材5と積層材3aとを加圧および加熱するた
め相対向して相対的に近接遠退移動可能に設けられた上
側の熱板(上板)31a及び下側の熱板(下板)31b
と、上板31a及び下板31bの対向面の少なくとも一
方に設けられた膜体(図示を省略した)と、積層材3a
および被積層材5を加熱するための加熱手段(図示を省
略した)と、膜体間に挟持されて積層空間を形成する枠
体(図示を省略した)と、膜体を加圧、吸引する加圧吸
引手段(図示を省略した)と、前記積層空間内を減圧す
る減圧手段(図示を省略した)と、により概略構成され
ている。また、積層装置は、連続したフィルム状の搬送
体3bを引っ張ることにより送る搬送チャック7または
テンションローラ8等の搬送手段を備えている。なお、
この真空積層装置31の説明においては、被積層材5が
載置される連続したフィルム状の搬送体3bを、積層材
3aと同様の積層材として被積層材5に積層される、す
なわち、搬送体として機能する積層材3bを使用し、ま
た、積層材3aを、積層材3bと同様に連続したフィル
ム状のものを使用する場合により説明する。
【0003】このように構成された積層装置を用いて積
層材3a,3bと被積層材5とを積層する際には、積層
材3b上に個々の被積層材5と積層材3aとを重合させ
た状態で載置し、積層材3a,3bの側縁を搬送チャッ
ク7により把持してこの搬送チャック7を搬送方向に移
動させ、また、これと同期して積層品52’を挟持した
一対のテンションローラ8を回転させることにより積層
材3a,3bを引っ張って、積層材3a,3bの間に挟
まれた被積層材5を上板31aと下板31bとの間に搬
入し、上板31a及び下板31bを相対的に近接移動さ
せてその対向面に膜体を介して枠体を挟持して、積層材
3a,3bおよび被積層材5が収容された積層空間を形
成し、加圧吸引手段により膜体を設けられたその対向面
に吸着させた状態で積層空間内を減圧し、その後、加圧
吸引手段により膜体を膨張させて積層材3a,3bおよ
び被積層材5を加圧すると共に加熱手段により加熱し、
溶融された積層材3a,3bと被積層材5とを附型する
と共に融着する。
【0004】続いて、膜体を膨張させて積層材3a,3
bと被積層材5との加圧を維持した状態で加熱手段によ
る加熱を停止して、溶融した積層材3a,3bが熱変形
温度のうちのガラス転移温度を下回るまで冷却されて安
定した状態となるのを待つ。そして、積層材3a,3b
が安定した状態となった後に、加圧吸引手段による膜体
の膨張を停止させると共に、減圧されていた積層空間内
を大気圧に戻して、真空積層装置31の上板31aと下
板31bとを相対的に離間移動させて積層空間を開放す
る。なお、積層空間が形成されてから開放されるまでの
間に、搬送チャック7は上板31aおよび下板31bの
近傍に復帰移動されている。そして、積層空間が開放さ
れると、搬送チャック7が積層材3a,3bの側縁を把
持して搬送方向に移動すると共にテンションローラ8が
回転駆動し、積層品52’を真空積層装置31から搬出
する。
【0005】一方、別の従来の技術として、特公昭59
−43311号公報や特公昭61−53925号公報に
開示されているように、ホットプレスとコールドプレス
を設け、ホットプレスにてホットプレス加工を行った
後、コールドプレスにてコールドプレス加工を行うこと
が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図3に
示した真空積層装置31にあっては、溶融した積層材3
a,3bがガラス転移温度を下回って安定した状態とな
るのを待つ間は、真空積層装置31の稼働が停止するこ
ととなり、積層サイクルタイムが長くなるという問題が
ある。そして、積層サイクルタイムを短縮するため、早
期の段階で、すなわち、積層材3a,3bおよび被積層
材5への加圧・加熱を完了したら直ちに真空積層装置3
1の上板31aと下板31bとを離間移動させて積層空
間を開放し、被積層材5との積層が完了した積層材3
a,3bの両端縁を搬送チャック7により把持して移動
させ、および/またはテンションローラ8を回転駆動し
て積層品52’を搬出することも考えられる。しかし、
この場合には、積層品52’を搬出するときに積層材3
a,3bが十分に冷却されていないため安定した状態と
なっていない。しかも、搬送チャック7は積層材3a,
3bの両側縁を把持して移動するのみであり、積層材3
a,3bの両側縁の間には張力が与えられることがな
い。また、テンションローラ8も積層材3a,3bの両
側縁の間に張力を与ることがないのは搬送チャック7と
同様である。そのため、積層材3a,3bの長手方向
(搬送方向)に皺が発生する。また、テンションローラ
8が十分に冷却されていない積層材3a,3bを挟持す
ることによって積層品の表面にテンションローラ8の跡
が残る等の不要な附型が行われるという問題が生じる。
その結果、積層品が積層不良となり、積層品の歩留が悪
化するという問題が生じる。さらに、膜体によって加圧
された積層品52’は、積層材3a,3bに被積層材5
が埋め込まれ、表面が平滑ではなくある程度附型された
状態となっている。
【0007】そこで、溶融された積層材3a,3bを早
期に安定させる手段として、上板31a及び下板31b
に冷媒流体通路を形成し、冷媒流体通路に冷媒を通すこ
とにより、真空積層装置31内で積層材3a,3bを冷
却することも考えられる。しかし、同一の熱板31a,
31bに加熱手段と冷却手段を設けて加熱と冷却を行う
ことは非常に熱効率が悪く、この場合には1積層サイク
ルに少なくとも2〜5分必要となり、積層サイクルタイ
ムを大幅に短縮することは困難であった。また、これに
加えて加熱と冷却の温度制御が困難であるという問題も
あった。
【0008】さらに、特公昭59−43311号公報や
特公昭61−53925号公報に開示されたものにあっ
ては、個別の積層加工対象をローダおよびアンローダに
よって搬送するものであり、フィルム状に形成された連
続した搬送体を搬送チャックにより把持して移動させた
り、テンションローラを回転駆動することにより搬送体
を引っ張って送るものではない。したがって、図3に示
した真空積層装置のように、積層材3a,3bの長手方
向(搬送方向)に皺が発生したり、積層品の表面に不要
な附型が行われる等、積層品が積層不良となって歩留が
悪化するというような問題が生じることはない。
【0009】本発明の目的は、上記従来の課題を解決し
て、連続したフィルム状の搬送体上に載置された被積層
材と積層材とを積層空間内の真空雰囲気下で膜体により
加圧すると共に加熱手段により加熱することにより積層
し、この積層品を支持する連続したフィルム状の搬送体
を搬送手段により引っ張って搬送する積層装置および積
層方法において、簡単な構造および工程により表面が平
滑で且つ安定した状態の積層品を得ることができ、積層
不良を生じさせることなく積層材と被積層材を積層する
ことができ、しかも、積層サイクルタイムを短縮化する
ことができる積層装置および積層方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の積層装置に係
る発明は、上記目的を達成するため、相対向して相対的
に近接遠退移動可能に設けられた加熱手段を有する熱
板、熱板の少なくとも一方に設けられた膜体、積層空間
を形成する枠体、膜体を加圧・吸引することにより熱板
の対向面に密着および膨張させるための加圧吸引手段、
および積層空間内を減圧するための減圧手段、を有して
おり、被積層材と積層材とを積層空間内の真空雰囲気下
で膜体により加圧すると共に前記加熱手段によって加熱
して、表面がある程度附型された積層中間品を成形する
真空積層装置と、表面が平滑に成形されてなり、前記真
空積層装置により成形された前記積層中間品を加圧する
と共に前記積層中間品の積層材を熱変形温度以上に加熱
してその表面を平滑に整形する上部板および下部板と、
積層空間が開放されると共に上部板および下部板が離間
した状態で、前記被積層材と積層材とが載置された連続
したフィルム状の搬送体を引っ張ることにより送る搬送
手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】請求項2の積層装置に係る発明は、上記目
的を達成するため、請求項1に記載の積層装置におい
て、前記上部板と下部板の少なくとも一方は、直接通電
されることにより抵抗発熱するものであることを特徴と
するものである。
【0012】請求項3の積層方法に係る発明は、上記目
的を達成するため、連続したフィルム状の搬送体上に被
積層材と積層材とを載置し、前記連続したフィルム状の
搬送体を引っ張ることにより送り前記被積層材と積層材
とを相対向して設けられた熱板間に位置させ、前記被積
層材と積層材とを真空雰囲気下とされた積層空間内で膜
体により加圧すると共に前記熱板の加熱手段により加熱
して表面がある程度まで附型された積層中間品を成形
し、前記積層空間を開放して、連続したフィルム状の搬
送体を引っ張ることにより送り、前記積層中間品を熱変
形温度以上に加熱された上部板および下部板により加圧
して、その表面を平滑に整形することを特徴とするもの
である。
【0013】請求項4の積層方法に係る発明は、上記目
的を達成するため、請求項3に記載の積層方法におい
て、上部板および下部板の温度を熱変形温度以上から熱
変形温度以下に変化させることを特徴とするものであ
る。
【0014】請求項1の積層装置に係る発明では、連続
したフィルム状の搬送体上に被積層材と積層材とを重合
させた状態で載置し、真空積層装置の相対向して設けら
れた熱板間に搬送する。この搬送は、連続したフィルム
状の搬送体を搬送手段により引っ張って送ることにより
行われる。次いで、熱板を近接させて枠体により積層空
間を形成し、加圧吸引手段により膜体を熱板に密着させ
た状態で減圧手段により積層空間内を真空雰囲気下と
し、次いで、加圧吸引手段により膜体を熱板から離間さ
せるように膨張させて被積層材および積層材を加圧する
と共に、加熱手段によって加熱して積層中間品を得る。
この積層中間品は、被積層材が積層材に埋め込まれて、
その表面がある程度まで附型された平滑ではない状態と
なっている。その後、熱板を離間させて積層空間を開放
し、次に積層される被積層材および積層材と積層された
積層中間品とを支持した連続したフィルム状の搬送体を
搬送手段によって引っ張って送り、真空積層装置と上部
板および下部板の間とに搬送する。そして、積層中間品
が上部板および下部板の間に搬送されると、上部板およ
び下部板が近接して積層中間品を加圧する。このとき上
部板および下部板が積層中間品の積層材の熱変形温度以
上に加熱されており、またその表面が平滑に成形されて
いるため、積層中間品の積層材が熱変形温度以上に加熱
されると共に加圧されて、その表面が安定して平滑に整
形される。そのため、積層品の寸法精度や附型された表
面等の状態が向上する。そして、積層と整形とが別体で
行われることにより、積層品が適切な温度勾配で効率よ
く整形される。さらには、上部板および下部板を真空積
層装置とは別体に設けたことにより、被積層材および積
層材の積層と積層中間品の表面の整形とを並行して行う
ことが可能である。
【0015】請求項2の積層装置に係る発明では、請求
項1に記載の発明において、上部板と下部板の少なくと
も一方が、直接通電されることにより抵抗発熱し、積層
中間品の表面を熱変形温度以上に加熱して平滑に整形す
るのに適切な温度に調整する。
【0016】請求項3の積層方法に係る発明では、被積
層材と積層材とを連続したフィルム状の搬送体上に載置
して、搬送手段によりフィルム状の搬送体を引っ張って
送ることにより熱板間に搬送して、真空雰囲気下とされ
た積層空間内で膜体により加圧すると共に加熱手段によ
り加熱し、積層中間品を成形する。この積層中間品は、
被積層材が積層材に埋め込まれて、その表面がある程度
まで附型された平滑ではない状態となっている。その
後、熱板を離間させて積層空間を開放し、次に積層され
る被積層材および積層材と積層された積層中間品とを支
持した連続したフィルム状の搬送体を搬送手段によって
引っ張り送って、真空積層装置と上部板および下部板の
間とに搬送する。そして、積層中間品を上部板および下
部板の間に搬送すると、上部板および下部板を近接させ
て積層中間品を加圧する。このとき、上部板および下部
板が積層中間品の積層材の熱変形温度以上に加熱されて
おり、またその表面が平滑に成形されているため、積層
中間品は、その積層材が熱変形温度以上に加熱されると
共に加圧されて、その表面が安定して平滑に整形され、
寸法精度や附型された表面等の状態が向上した積層品が
得られる。そして、積層と整形とが別体で行われること
により、積層品が適切な温度勾配で効率よく整形され
る。さらには、真空積層装置による被積層材および積層
材の積層と上部板および下部板による積層中間品の表面
の整形とを並行して行うことができる。
【0017】請求項4の積層方法に係る発明では、請求
項3に記載の発明において、上部板および下部板の温度
を熱変形温度以上から熱変形温度以下に変化させること
により、積層中間品は、確実に熱変形温度以上となり、
その表面が安定して確実に平滑に整形される。
【0018】
【発明の実施の形態】最初に、本発明の積層装置の実施
の一形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。な
お、同一符号は同一部分または相当部分とする。本発明
の積層装置の概要は、図1に示すように、相対向して設
けられた上下の熱板1a,1bを有しており、連続した
フィルム状の搬送体3b上に載置された被積層材5と積
層材3aとを積層空間内の真空雰囲気下で膜体により加
圧すると共に熱板1a,1bの加熱手段により加熱し
て、表面がある程度附型された積層中間品51を成形す
る真空積層装置1と、前記連続したフィルム状の搬送体
3bを引っ張って送るための搬送手段としての搬送チャ
ック7およびテンションローラ8と、前記熱板1a,1
b間で膜体により加圧されると共に熱板1a,1bの加
熱手段により加熱された積層材3a、3bと被積層材5
との積層中間品51を加圧すると共に熱変形温度以上に
加熱するための、上側の整形板(上部板)9aおよび下
側の整形板(下部板)9bからなる整形板9と、を備え
ている。整形板9は、前記熱板1a,1bと前記搬送チ
ャック7またはテンションローラ8との間に相対向して
設けられ、さらに、表面が平滑に成形された薄状板から
なり、上部板9aと下部板9bの少なくとも一方が直接
通電されることにより抵抗発熱するものとなっている。
なお、フィルム状の搬送体3bは、所謂離型フィルムや
キャリアフィルムと呼ばれているもののほかに、積層材
3aと同様に積層材として被積層材5に積層されるもの
を使用することができる。また、積層材3aは、搬送体
または積層材3bと同様に連続したフィルム状に形成さ
れたものの他に、被積層材5と略同じ大きさの連続して
いないものを使用することができる。この実施の形態に
おいては、連続したフィルム状の積層材を搬送体3bと
して使用し(以下、搬送体を積層材3bという)、積層
材3aを積層材3bと同様に連続したフィルム状に形成
されたものを使用する場合により説明する。また、被積
層材5としては、回路基板等が使用され、これに積層す
るための積層材としては、フィルム支持体の一方の面に
接着されたフォトレジスト形成層等が使用される。そし
て、被積層材5の一方の面のみに積層材を積層する場合
には、積層材3a,3bのうちの一方に離型フィルムあ
るいはキャリアフィルムが使用される。また、他の例と
しては、被積層材としてICチップ等が使用され、積層
材としてポリエチレンテレフタレートあるいは塩化ビニ
ル樹脂等からなるフィルムが使用される。この場合にお
いては、ICチップ等を積層材の中に埋設して積層品の
表面が平滑面となるように附型される。ここでいう熱変
形温度とは、被積層材5に積層される積層材3a,3b
が溶融した状態となる融点と、溶融した積層材3a,3
bが固化し安定した状態となるガラス転移温度との間の
範囲の温度を意味する。また、附型温度とは、被積層材
5に積層される積層材3a,3bの表面を適切に附型す
ることができる温度を意味する。これら熱変形温度の範
囲および附型温度は、積層材3a,3bの材質特性によ
って異なる。
【0019】真空積層装置1の上側の熱板(上板)1a
と下側の熱板(下板)1bは、相対向して相対的に近接
遠退移動可能に設けられている。上板1aと下板1bの
少なくとも一方には、その対向面に膜体(図示を省略し
た)が設けられ、上板1aと下板1bの相対的な近接移
動により膜体を介して対向面の間で挟持されて積層空間
を形成する枠体(図示を省略した)を備えている。ま
た、上板1aおよび/または下板1bには、その対向面
に設けられた膜体を加圧、吸引することにより対向面に
密着させ、あるいは膨張させるための加圧吸引手段(図
示を省略した)が接続され、また、積層空間を形成した
際に積層空間内を減圧するための減圧手段(図示を省略
した)が接続されている。これらの構成により、この実
施の形態における積層装置1は、積層材3a,3bと被
積層材5とを真空雰囲気下で加熱・加圧する真空積層装
置として機能することが可能となっている。上板1aと
下板1bの搬入側(図1において、上板1aと下板1b
の右側)に隣接してセットテーブル2が配設され、ま
た、上板1aと下板1bの搬出側(図1において、上板
1aと下板1bの左側)に積層材3a,3bの側縁をそ
れぞれ把持する一対の搬送チャック7が搬送方向に移動
可能に設けられ、さらには、一対からなるテンションロ
ーラ8が設けられている。搬送チャック7の移動とテン
ションローラ8の回転とは同期して等速度で駆動される
よう制御される。なお、この実施の形態では、フィルム
状の搬送体3bを引っ張って送るための搬送手段は、搬
送チャック7とテンションローラ8とを設けた場合によ
って説明するが、搬送チャック7とテンションローラ8
のいずれか一方のみ、あるいは、他の構成とすることも
できる。
【0020】上板1aおよび下板1bと搬送チャック7
との間の上板1aおよび下板1bと隣接する位置には門
形フレーム14が配設され、この門形フレーム14に上
部板9aおよび下部板9bからなる整形板9が支持され
ている。図2に示すように、上部板9aおよび下部板9
bは、ステンレス等からなる板状体により構成され、そ
の対向面は、搬送方向(図1の左右方向)が被積層材5
の長さよりも長く、巾方向(図2の左右方向)が積層材
3a、3bの巾よりもわずかに広く形成された略矩形形
状をなしており、表面が平滑に形成されている。上部板
9aおよび下部板9bの内部には、所定温度に調節され
た温調流体が供給循環される温調溝10が形成されてお
り、加熱・加圧された被積層材5と積層材3a,3bと
をその熱変形温度以上に加熱することができる温度調整
手段が構成されている。なお、上部板9aおよび/また
は下部板9bの一部の温調溝10にカートリッジ型の棒
状ヒーターを挿入し、熱変形温度以上に上部板9aおよ
び/または下部板9bを加熱することも可能である。ま
た、上部板9a及び下部板9bを薄状板により構成し、
上部板9aおよび/または下部板9bを直接通電して抵
抗発熱させることにより熱変形温度以上の温度に加熱す
ることも可能である。
【0021】上部板9aは、門形フレーム14の上方に
固定されている。門形フレーム14の高さ方向の中間位
置には固定板13が設けられ、この固定板13上にエア
シリンダ11およびガイド12が設置されている。そし
て、下部板9bは、その下面中央にエアシリンダ11が
取付けられていると共に下面四隅にガイド12が設けら
れており、エアシリンダ11の伸長・退縮駆動により、
上部板9aに対して近接遠退移動可能に昇降するように
支持されている。このように、上板1aおよび下板1b
と別体の整形板9は、固定された上部板9aと昇降移動
可能な下部板9bとの間で加熱・加圧された被積層材5
および積層材3a,3bを挟持し加圧することが可能な
ように構成されている。さらに、下部板9bの下面とエ
アシリンダ11及びガイド12の取付部との間には、下
部板9bからエアシリンダ11及びガイド12への熱伝
達を減少せさて、下部板9bの温度を一定の狭い範囲に
制御することができるように、断熱板15が介装されて
いる。
【0022】なお、この実施の形態においては、上部板
9aを固定し、下部板9bを昇降移動させるように構成
した場合によって説明したが、本発明はこれに限定され
ることなく、上部板9aを昇降移動可能とし、下部板9
bを固定してもよく、また、上部板9aおよび下部板9
bの双方を昇降移動可能としてもよい。また、上部板9
aおよび/または下部板9bの一端側をヒンジ手段など
により回動可能に支持し、上部板9aおよび/または下
部板9bの他方の自由端側をエアシリンダ等の駆動手段
により開閉可能として加熱・加圧された被積層材5およ
び積層材3a,3bを挟持し加圧することができるよう
に構成することもできる。
【0023】次に、上述したように構成された積層装置
を用いて、本発明の積層方法の実施の一形態を説明す
る。なお、この実施の形態においては、連続したフィル
ム状の積層材3a,3bの一例として、塩化ビニル樹脂
からなるものとして温度、圧力、および時間等を記載す
る。本発明の積層方法の概要は、連続したフィルム状の
搬送体として機能する積層材3b上に被積層材5と積層
材3aを載置し、連続したフィルム状の積層材3a,3
bを搬送手段である搬送チャック7やテンションローラ
8により引っ張って送り、被積層材5と積層材3a,3
bとを相対向して設けられた熱板1a,1b間に形成さ
れる積層空間内に位置させ、真空雰囲気下で被積層材5
と積層材3a,3bとを膜体により加圧すると共に加熱
手段によって加熱して積層材3a,3bの表面がある程
度まで附型された積層中間品51を成形し、積層空間を
開放して連続したフィルム状の搬送体3bを引っ張るこ
とにより送り、積層中間品51を熱変形温度以上に加熱
された上部板9a,下部板9bにより加圧して、その表
面を平滑に整形するものである。
【0024】まず、被積層材5が上下の熱板1a,1b
の搬入側(図1の右側)に設けられたセットテーブル2
上の、第1基材ロール4より巻出された積層材3b上に
載置され、積層材3bと、第2基材ロール6より巻かれ
た積層材3aとが搬送チャック7により把持されて図1
の左方向に移動すると共に、これと同期してテンション
ローラ8が回転駆動されることにより引っ張られるよう
にして送られ、被積層材5が上下の積層材3a及び3b
間に位置した状態で、真空積層装置1の上側の熱板1a
と下側の熱板1bとの間に配置される。
【0025】次いで、上下の熱板1aおよび1bの相対
的な近接移動により、上下の熱板1aおよび1bの少な
くとも一方の対向面に設けられた膜体を介して図示しな
い枠体が対向面の間で挟持され、内部に被積層材5およ
び積層材3a,3bが収容される積層空間が形成され
る。そして、膜体が被積層材5および積層材3a,3b
を加圧しないように、図示しない加圧吸引手段により熱
板1aおよび1bの対向面に膜体を吸着させた状態で、
減圧手段によって積層空間内を一定の圧力に減圧する。
【0026】その後、被積層材5および積層材3a,3
bを、上下の熱板1a及び1bに設けられた加熱手段に
より、融点付近またはこれを越える約160度に加熱す
ると共に、加圧吸引手段により空気圧を加圧して熱板1
aおよび1bの対向面から膜体を離すように膨張させ
て、膜体により熱板1aまたは1bの間等で加圧する。
膜体を膨張させるための空気圧の圧力は、約5Kg/c
2であり、この加熱・加圧の状態は、約50秒間持続
される。このとき、被積層材5がICチップであるよう
な場合には、一体となるように融着した積層材3a,3
bの中にICチップが埋め込まれる。積層材3a,3b
にICチップが埋め込まれ、積層材3a,3bの表面は
ある程度まで附型された積層中間品51となっている。
【0027】被積層材5および積層材3a,3bに対す
る加熱・加圧が完了し積層中間品5 1ができると、積層
装置1の上側の熱板1aと下側の熱板1bを相対的に離
間移動させて積層空間を開放する。積層空間が形成され
てから開放されるまでの間に、搬送チャック7は上板1
aおよび下板1bの近傍に復帰移動されている。そし
て、搬送チャック7により積層材3a,3bの両側縁を
把持して図1の左方に移動させ、これと同期して積層品
2を挟持したテンションローラ8を回転駆動し、加熱
・加圧することにより溶融されると共にある程度附型さ
れた積層中間品5 1を、熱板1a,1bの搬出側に隣接
して別体で設けられた上部板9aと下部板9bとの間に
セットする。なお、次に加圧・加熱される被積層材5が
セットテーブル2上の積層材3b上に載置されており、
この被積層材5は、搬送チャック7の移動およびテンシ
ョンローラ8の回転による積層中間品51の搬送に伴
い、積層材3aと共に上側の熱板1aと下側の熱板1b
との間に搬入されることとなる。
【0028】次いで、エアシリンダ11に圧縮空気を供
給して伸長駆動し、下部板9bを上部板9aに近接移動
させることにより、搬入された被積層材5および積層材
3a,3b、すなわち積層中間品51を挟持し加圧す
る。この際のエアシリンダに供給される圧縮空気の圧力
は、約5Kg/cm2である。そして、上部板9aおよ
び下部板9bの対向面は、この実施の形態の場合、積層
材3a,3bのガラス転移温度以下の一定の温度に調整
されている。上下の熱板1a,1bで約160度に加熱
された積層材3a,3bおよび被積層材5は、上部板9
aと下部板9bとの間に搬送されるまでの間に附型に適
した温度に降下しており、上部板9aと下部板9bの間
でガラス転移温度以下となるまで冷却されて安定した状
態となる。さらには、加圧により附型・冷却された積層
品52の厚さ方向の寸法精度も安定する。この、上部板
9aと下部板9bによる積層材3a,3bおよび被積層
材5の加圧(附型)・冷却は、積層材3a,3bおよび
被積層材5が確実にガラス転移温度まで冷却されて安定
した状態となるように約50秒程度行われる。
【0029】積層材3a,3bが安定した状態となった
後は、エアシリンダ11を退縮駆動して下部板9bを上
部板9aから離間移動させ、搬送チャック7により積層
材3a,3bの両側縁を把持して図1の左方に移動さ
せ、これと同期してテンションローラ8を回転駆動させ
る。附型・冷却を完了した積層品52は上部板9aと下
部板9bとの間から搬出され、熱板1a,1b間で膜体
により加圧・加熱された積層中間品51は上部板9aと
下部板9bとの間に搬入され、セットテーブル2上で上
下の積層材3a及び3b間に位置された被積層材5は熱
板1a,1bの間に搬入されることとなる。
【0030】附型・冷却が完了した積層品52は、積層
材3a,3bが安定した状態となっているため、搬送チ
ャック7により積層材3a,3bの両側縁の間に張力が
与えられることなく把持され、また、テンションローラ
8の間に挟持されて搬送されても、皺等が発生して積層
不良となることがない。また、積層材3a,3bおよび
被積層材5を、上側の熱板1aおよび下側の熱板1bの
間で加圧・加熱する工程と、上部板9aおよび下部板9
bの間で附形・冷却する工程とが同時間で並行して行わ
れるため、積層サイクルタイムを短縮することができ
る。
【0031】次に、本発明の積層方法の別の実施の形態
について説明する。なお、この説明では、上述した実施
の形態と異なる工程についてのみを説明することとし、
同様の工程については説明を省略する。この積層方法の
概要は、上部板9aと下部板9bの対向面の温度を、上
述したようにガラス転移温度以下の一定の温度に保持す
る実施の形態と異なり、熱変形温度のうち、附型温度か
らガラス転移温度に変化させるものである。
【0032】積層材3a,3bおよび被積層材5を上下
の熱板1a,1bで約160度に加熱してから、積層空
間を開放して上部板9aと下部板9bとの間で加圧され
るまでの間に、その温度が降下することは上述したとお
りであるが、この温度が積層材3a,3bによっては、
その表面を平滑に附型するのに適する温度以下に降下す
る場合もあり得る。また、積層材3a,3bと被積層材
5との熱容量が異なる場合、例えば、被積層材5がIC
チップである場合において、このICチップ5の熱容量
が積層材3a,3bよりも大きいため、ICチップ5の
温度降下が積層材3a,3bよりも遅くなり、ICチッ
プ5の周辺における積層材3a,3bが収縮することに
よりひけたり表面が荒れることとなる。
【0033】この実施の形態においては、上部板9aと
下部板9bの対向面の温度は、温調溝10に循環供給さ
れる温調流体や棒状ヒーター等により、積層材3a,3
bおよび被積層材5への加圧を開始する時点でICチッ
プ5に積層される積層材3a,3bである塩化ビニル樹
脂の附型に適した温度(この実施の形態の場合、約95
度)に調節されている。そして、上部板9aと下部板9
bの対向面の温度は、積層材3a,3bおよび被積層材
5への加圧を開始した後、所定のプログラムにしたがっ
て約80度(ガラス転移温度)以下まで変化するように
制御される。これにより、積層材3a,3bの表面は、
加圧開始時点で軟化して、平滑となるように整形、すな
わち附型されつつガラス転移温度を下回り安定した状態
となるまで所定の速度で冷却されることとなる。なお、
この上部板9aと下部板9bの対向面の温度を変化させ
る工程は、冷却速度が早過ぎると冷却収縮による歪み等
が生ずるため、上側の熱板1a及び下側の熱板1bの温
度を考慮して約50秒程度行われる。
【0034】ここで、上部板9aと下部板9bの間の附
形と冷却時間を約50秒程度としているが、この時間
は、次に被積層材5および積層材3a,3bが上側の熱
板1aと下側の熱板1bとの間で加圧・加熱される時間
と同時間であり、すでに加圧・加熱された被積層材5お
よび積層材3a,3bの加圧・加熱−冷却と、次の被積
層材5および積層材3a,3bの加圧・加熱とを同サイ
クルで行うことができる。そして、上側の熱板1aと下
側の熱板1bとの間で行われる加圧・加熱から上部板9
aと下部板9bの間で行われる附形および冷却までの移
行時間を10秒程度とすると、従来の積層装置を用いて
積層した場合に2〜5分の加熱および冷却を必要とした
積層サイクルタイムが1分程度で済むこととなる。
【0035】以上説明したように、上側の熱板1aと下
側の熱板1bとの間で被積層材5および積層材3a,3
bの加熱圧着のみを行い、これと並行して被積層材5お
よび積層材3a,3bの附形と冷却を別個の工程で行う
ようにしたことにより、積層サイクルタイムの短縮が可
能となり、被積層材5および積層材3a,3bの附形・
冷却を効率よく的確に行うことができるので、搬送チャ
ック7あるいはテンションローラ8により積層材3a,
3bを引っ張って附型・冷却が完了した積層品52を搬
出する際に積層材3a,3bに皺が発生することがな
い。
【0036】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、真空積
層装置により表面がある程度附型された状態に成形され
た積層中間品を加圧すると共に前記積層中間品の積層材
を熱変形温度以上に加熱してその表面を平滑に整形する
上部板および下部板を設けたことにより、前記積層中間
品の表面が安定して確実に平滑に整形され、積層不良を
防止できると共に、厚さ方向の寸法精度も安定させるこ
とができる。
【0037】請求項2に記載の発明によれば、上部板と
下部板の少なくとも一方を直接通電されることにより抵
抗発熱するものとしたことにより、ある程度附型された
積層中間品の表面を確実に平滑に整形することができ
る。
【0038】請求項3に記載の発明によれば、被積層材
と積層材とを真空雰囲気下とされた積層空間内で膜体に
より加圧すると共に加熱手段により加熱して表面がある
程度まで附型された積層中間品を成形し、該積層中間品
を熱変形温度以上に加熱された上部板および下部板によ
り加圧することとしたことにより、前記積層中間品の表
面を安定して確実に平滑に整形することができ、積層不
良を防止できると共に厚さ方向の寸法精度も安定させる
ことができる。
【0039】請求項4に記載の発明によれば、上部板お
よび下部板の温度を、熱変形温度以上から熱変形温度以
下に変化させることにより、表面がある程度附型された
積層中間品を、確実に平滑に整形することができる温度
から適当な温度勾配で安定した状態とすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層装置の一実施の形態を示す全
体図である。
【図2】本発明における整形板を示す一部断面図であ
る。
【図3】従来例の積層装置を示す説明図である。
【符号の説明】
1a,1b 熱板 3a 積層材 3b 積層材(搬送体) 5 被積層材 7 搬送チャック(搬送手段) 8 テンションローラ(搬送手段) 9a 上部板 9b 下部板 10 温調溝(温度調節手段)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対向して相対的に近接遠退移動可能に
    設けられた加熱手段を有する熱板、熱板の少なくとも一
    方に設けられた膜体、積層空間を形成する枠体、膜体を
    加圧・吸引することにより熱板の対向面に密着および膨
    張させるための加圧吸引手段、および積層空間内を減圧
    するための減圧手段、を有しており、被積層材と積層材
    とを積層空間内の真空雰囲気下で膜体により加圧すると
    共に前記加熱手段によって加熱して、表面がある程度附
    型された積層中間品を成形する真空積層装置と、 表面が平滑に成形されてなり、前記真空積層装置により
    成形された前記積層中間品を加圧すると共に前記積層中
    間品の積層材を熱変形温度以上に加熱してその表面を平
    滑に整形する上部板および下部板と、 積層空間が開放されると共に上部板および下部板が離間
    した状態で、前記被積層材と積層材とが載置された連続
    したフィルム状の搬送体を引っ張ることにより送る搬送
    手段と、を備えたことを特徴とする積層装置。
  2. 【請求項2】 前記上部板と下部板の少なくとも一方
    は、直接通電されることにより抵抗発熱するものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の積層装置。
  3. 【請求項3】 連続したフィルム状の搬送体上に被積層
    材と積層材とを載置し、前記連続したフィルム状の搬送
    体を引っ張ることにより送り前記被積層材と積層材とを
    相対向して設けられた熱板間に位置させ、前記被積層材
    と積層材とを真空雰囲気下とされた積層空間内で膜体に
    より加圧すると共に前記熱板の加熱手段により加熱して
    表面がある程度まで附型された積層中間品を成形し、 前記積層空間を開放して、連続したフィルム状の搬送体
    を引っ張ることにより送り、 前記積層中間品を熱変形温度以上に加熱された上部板お
    よび下部板により加圧して、その表面を平滑に整形する
    ことを特徴とする積層方法。
  4. 【請求項4】 上部板および下部板の温度を熱変形温度
    以上から熱変形温度以下に変化させることを特徴とする
    請求項3に記載の積層方法。
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