JP3423534B2 - 液体吐出方法、該方法に用いられる液体吐出ヘッド、および該液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジ - Google Patents

液体吐出方法、該方法に用いられる液体吐出ヘッド、および該液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジ

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JP3423534B2
JP3423534B2 JP14624896A JP14624896A JP3423534B2 JP 3423534 B2 JP3423534 B2 JP 3423534B2 JP 14624896 A JP14624896 A JP 14624896A JP 14624896 A JP14624896 A JP 14624896A JP 3423534 B2 JP3423534 B2 JP 3423534B2
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    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
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    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
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    • B41J2/14048Movable member in the chamber

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを液
体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望
の液体を吐出する液体吐出方法、液体吐出ヘッド、液体
吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジ、液体吐出装
置、液体吐出ヘッドの製造方法に関する。さらにこれら
の液体吐出ヘッドを有するインクジェットヘッドキット
に関する。
【0002】特に本発明は、気泡の発生を利用して変位
する可動部材を有する液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッド
を用いたヘッドカートリッジ、液体吐出装置に関する。
【0003】また本発明は紙、糸、繊維、布帛、皮革、
金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の
被記録媒体に対し記録を行う、プリンタ、複写機、通信
システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワ
ードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合
的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明であ
る。
【0004】なお、本発明における、「記録」とは、文
字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与
することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像
を付与することをも意味するものである。
【0005】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわ
ゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。この
バブルジェット記録方法を用いる記録装置には、USP
4,723,129等の公報に開示されているように、
インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通す
るインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出
するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が
一般的に配されている。
【0006】この様な記録方法によれば、品位の高い画
像を高速、低騒音で記録することができると共に、この
記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出
口を高密度に配置することができるため、小型の装置で
高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得る
ことができるという多くの優れた点を有している。この
ため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンタ、
複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用さ
れており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで
利用されるようになってきている。
【0007】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらに高まっている。
【0008】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発
熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した
熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0009】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆
動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐
出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速
い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したもの
も提案されている。
【0010】この流路形状の内、流路構造として図45
(a),(b)に示すものが、特開昭63−19997
2号公報等に記載されている。この公報に記載されてい
る流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発
生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向
かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発
明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギ
ーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0011】図45(a),(b)に示す発明は、発熱
素子2が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱
素子2に関して吐出口11とは反対側に位置する弁10
を開示する。
【0012】図45(b)においては、この弁10は、
板材等を利用する製造方法によって、流路3の天井に貼
り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流
路3内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発
明は、上述したバック波の一部を弁10によって制御す
ることでエネルギー損失を抑制するものとして開示され
ている。
【0013】しかしながら、この構成において、吐出す
べき液体を保持する流路3内部に、気泡が発生した際を
検討するとわかるように、弁10によりバック波の一部
を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なもので
ないことがわかる。
【0014】もともとバック波自体は、前述したように
吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路
3内に発生した時点では、図45(a)に示すように、
気泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路3から
液体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のう
ち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に
大きな影響を与えないことは明らかである。
【0015】他方、バブルジェット記録方法において
は、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すた
め、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生す
るが、インクの種類によってはこの堆積物が多く発生す
ることで、気泡の発生を不安定にしてしまい、良好なイ
ンクの吐出を行うことが困難な場合があった。また、吐
出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十
分に発泡が得られにくい液体の場合においても、吐出す
べき液体を変質させず、良好に吐出するための方法が望
まれていた。
【0016】このような観点から、熱により気泡を発生
させる液体(発泡液)と吐出する液体(吐出液)とを別
液体とし、発泡による圧力を吐出液に伝達することで吐
出液を吐出する方法が、特開昭61−69467号公
報、特開昭55−81172号公報、米国特許第4,4
80,259号明細書等の公報に開示されている。これ
らの公報では、吐出液であるインクと発泡液とをシリコ
ンゴムなどの可撓性膜で完全分離し、発熱体に吐出液が
直接接しないようにすると共に、発泡液の発泡による圧
力を可撓性膜の変形によって吐出液に伝える構成をとっ
ている。このような構成によって、発熱体表面の堆積物
の生成の防止や、吐出液体の選択自由度の向上等を達成
している。
【0017】しかしながら、前述のように吐出液と発泡
液とを完全分離する構成のヘッドにおいては、発泡時の
圧力を可撓性膜の伸縮変形によって吐出液に伝える構成
であるため、発泡による圧力を可撓性膜がかなり吸収し
てしまう。また、可撓性膜の変形量もあまり大きくない
ため、吐出液と発泡液とを分離することによる効果を得
ることはできるものの、エネルギー効率や吐出力が低下
してしまう虞があった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、基本的に従
来の気泡(特に膜沸騰に伴う気泡)を液流路中に形成し
て液体を吐出する方式の、根本的な吐出特性を、従来で
は考えられなかった観点から、従来では予想できない水
準に高めることを主たる課題とする。
【0019】本発明者達の一部は、先に液滴吐出の原理
に立ち返り、従来では得られなかった気泡を利用した新
規な液滴吐出方法及びそれに用いられるヘッド等を提供
すべく鋭意研究を行った。このとき、流路中の可動部材
の機構の原理を解析すると言った液流路中の可動部材の
動作を起点とする第1技術解析、及び気泡による液滴吐
出原理を起点とする第2技術解析、さらには、気泡形成
用の発熱体の気泡形成領域を起点とする第3解析を行う
ことにした。これらの解析によって、可動部材の支点と
自由端の配置関係を吐出口側つまり下流側に自由端が位
置する関係にすること、また可動部材を発熱体もしく
は、気泡発生領域に面して配することで積極的に気泡を
制御する全く新規な技術を確立するに至り、本出願人
は、これらの発明につき先に出願を行った。この出願の
他の特徴は、気泡自体が吐出量に与えるエネルギーを考
慮すると気泡の下流側の成長成分を考慮することが吐出
特性を格段に向上できる要因として最大であるとの知見
に基づき、気泡の下流側の成長成分を吐出方向へ効率よ
く変換させることこそ吐出効率、吐出速度の向上をもた
らす発明であり、気泡の下流側の成長成分を積極的に可
動部材の自由端側に移動させるという従来の技術水準に
比べ極めて高い技術水準の発明である。
【0020】本発明は、先行発明の画期的な吐出原理や
作用効果を一層優れたものにできる新たな吐出方法およ
び吐出原理を提供すべく新たな知見に基づいてなされた
発明である。
【0021】すなわち、新たな知見とは、可動部材の自
由端の変位開始時の挙動につき、気泡発生領域から得ら
れるパワーのさらなる有効利用を目指し、総合的に形成
される気泡の吐出口側への一層の成長あるいは誘導を可
能ならしめる技術を追求したことである。
【0022】本発明は、可動部材と気泡との物理的な状
態関係に着目してなされた発明であり、新たな吐出原
理、構造的特徴等多くの発明を含むものである。
【0023】本発明の主たる目的は以下の通りである。
その第1の目的は、発生した気泡を根本的に制御するこ
とで極めて新規な液体吐出原理を提供することにある。
【0024】本発明の第2の目的は、発泡圧をより損出
なく吐出圧として伝え、吐出圧を効率よく吐出口方向へ
向けることで、高速での液体の吐出を行いうる液体吐出
方法、液体吐出ヘッド等を提供することにある。
【0025】本発明の第3の目的は、バック波による液
体供給方向とは逆方向への慣性力が働くのを抑えると同
時に、可動部材の弁機能によって、メニスカス後退量を
低減させることで、リフィル周波数を高め、印字スピー
ド等を向上することのできる液体吐出方法、液体吐出ヘ
ッド等を提供することにある。
【0026】本発明の第4の目的は、吐出液と発泡液と
の混ざり合いを防ぐことで、発熱体上への堆積物を低減
すると共に、吐出用液の用途範囲を広げることができ、
しかも吐出効率や吐出力が十分に高い液体吐出方法、液
体吐出ヘッド等を提供することにある。
【0027】本発明の第5の目的は、前述のような液体
吐出ヘッドの製造を容易に成しうる液体吐出ヘッドの製
造方法を提供することにある。
【0028】本発明の第6の目的は、本発明の吐出方法
を用いて良好な画像の記録物を得ることにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】上述のような目的を達成
するための本発明の代表的な要件は、次のようなもので
ある。
【0030】請求項1の発明は、気泡発生領域に気泡を
発生させるための発熱体と、気泡発生領域に面して配さ
れ、液体の流れ方向の下流側に自由端を持つ可動部材
と、前記発熱体の上流に発熱体と実質的に平坦につなが
る内壁を持つ液体供給路と、を有する液体吐出へッドを
用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させることで生じ
る圧力に基づいて、前記可動部材の自由端を変位させ、
該可動部材によって前記圧力を吐出口側に導くことで、
前記吐出口から液体を吐出する液体吐出方法であって、
前記気泡発生領域に対して実質的に密閉状態を形成して
いる前記可動部材の自由端を、該可動部材と前記気泡と
が非接触状態のまま気泡形成に伴う圧力波を前記吐出口
側に誘導すべく、変位させる工程を有することを特徴と
する。
【0031】請求項2の発明は、前記気泡発生領域で形
成され、体積膨張しているあるいは吐出口方向へ案内さ
れている気泡に対して、変位後自然状態に向かって移動
している可動部材が初めて実質的に接触する工程を有す
ることを特徴とする。
【0032】請求項3の発明は、前記可動部材の前記気
泡発生領域に面する面と他の面とは撥液性が異なること
を特徴とする。
【0033】請求項4の発明は、前記可動部材の他の面
が前記気泡発生領域に面する面よりも撥液性能が高いこ
とを特徴とする。
【0034】請求項5の発明は、前記可動部材の前記他
の面は撥水剤層を有することを特徴とする。
【0035】請求項6の発明は、前記可動部材が撥液性
能の異なる2部材から構成されていることを特徴とす
る。
【0036】請求項7の発明は、前記2部材から構成さ
れている可動部材のうち前記他の面側の可動部材は前記
気泡発生領域に面する側の可動部材よりも撥液性能
い部材の層であることを特徴とする。
【0037】請求項8の発明は、前記2部材から構成さ
れている可動部材のうち前記気泡発生領域に面する側の
可動部材は前記他の面側の可動部材よりも撥液性低い
部材の層であることを特徴とする。
【0038】請求項9の発明は、前記可動部材の前記気
泡発生領域に面する側の表面が前記他の面側の表面より
も粗面化されていることを特徴とする。
【0039】請求項10の発明は、吐出口に連通する第
1の液流路と、該第1の液流路に隣接して配され気泡発
生領域を有する第2の液流路と、該気泡発生領域に気泡
を発生させるための発熱体と、前記吐出口側に自由端を
有し前記第1の液流路と前記第2の液流路の前記気泡発
生領域との間に配された可動部材と、を備え、前記第2
液流路が、前記発熱体の上流に発熱体と実質的に平坦に
つながる内壁を持つ液体供給路を有する液体吐出へッド
を用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の
発生に伴う圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記
第1の液流路側に変位させて、液体を吐出する液体吐出
方法であって、前記気泡発生領域に対して実質的に密閉
状態を形成している前記可動部材の自由端を、該可動部
材と前記気泡とが非接触状態のまま気泡形成に伴う圧力
波を前記吐出口側に誘導すべく、変位させる工程を有す
ることを特徴とする。
【0040】請求項11の発明は、前記気泡発生領域で
形成され、体積膨張しているあるいは吐出口方向へ案内
されている気泡に対して、変位後自然状態に向かって移
動している可動部材が初めて実質的に接触する工程を有
することを特徴とする。
【0041】請求項12の発明は、前記可動部材の前記
気泡発生領域に面する面と他の面とは撥液性が異なるこ
とを特徴とする。
【0042】請求項13の発明は、前記可動部材の前記
第1の液流路側の面が前記第2の液流路側の面よりも撥
液性能が高いことを特徴とする。
【0043】請求項14の発明は、前記可動部材の前記
第1の液流路側の面は撥水剤層を有することを特徴とす
る。
【0044】請求項15の発明は、前記可動部材が撥液
性能の異なる2部材から構成されていることを特徴とす
る。
【0045】請求項16の発明は、前記2部材から構成
されている可動部材のうち前記第1の液流路側の可動部
材は前記第2の液流路側の可動部材よりも撥液性能
い部材の層であることを特徴とする。
【0046】請求項17の発明は、前記2部材から構成
されている可動部材のうち前記第2の液流路側の可動部
材は前記第1の液流路側の可動部材よりも撥液性低い
部材の層であることを特徴とする。
【0047】請求項18の発明は、前記可動部材の第2
の液流路側の表面が前記第1の液流路側の表面よりも粗
面化されていることを特徴とする。
【0048】請求項19の発明は、気泡発生領域に気泡
を発生させるための発熱体と、気泡発生領域に面して配
され、液体の流れ方向の下流側に自由端を持つ可動部材
と、前記発熱体の上流に発熱体と実質的に平坦につなが
る内壁を持つ液体供給路と、を有する液体吐出へッドを
用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させることで生じ
る圧力に基づいて、前記可動部材の自由端を変位させ、
該可動部材によって前記圧力を吐出口側に導くことで、
前記吐出口から液体を吐出する液体吐出方法であって、
前記気泡発生領域で形成され、体積膨張しているあるい
は吐出口方向へ案内されている気泡に対して、変位後自
然状態に向かって移動している可動部材が初めて実質的
に接触する工程を有することを特徴とする。
【0049】請求項20の発明は、吐出口に連通する第
1の液流路と、該第1の液流路に隣接して配され気泡発
生領域を有する第2の液流路と、該気泡発生領域に気泡
を発生させるための発熱体と、前記吐出口側に自由端を
有し前記第1の液流路と前記第2の液流路の前記気泡発
生領域との間に配された可動部材と、を備え、前記第2
液流路が、前記発熱体の上流に発熱体と実質的に平坦に
つながる内壁を持つ液体供給路を有する液体吐出へッド
を用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の
発生に伴う圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記
第1の液流路側に変位させて、液体を吐出する液体吐出
方法であって、前記気泡発生領域で形成され、体積膨張
している、あるいは、吐出口方向へ案内されている気泡
に対して、変位後自然状態に向かって移動している可動
部材が初めて実質的に接触する工程を有することを特徴
とする。
【0050】請求項21の発明は、前記可動部材の前記
気泡発生領域に面する面と他の面とは撥液性が異なるこ
とを特徴とする。
【0051】請求項22の発明は、前記可動部材の他の
面が前記気泡発生領域に面する面よりも撥液性能が高い
ことを特徴とする。
【0052】請求項23の発明は、前記可動部材の前記
他の面は撥水剤層を有することを特徴とする。
【0053】請求項24の発明は、前記可動部材が撥液
性能の異なる2部材から構成されていることを特徴とす
る。
【0054】請求項25の発明は、前記2部材から構成
されている可動部材のうち前記他の面側の可動部材は
気泡発生領域に面する側の可動部材よりも撥液性能
高い部材の層であることを特徴とする。
【0055】請求項26の発明は、前記2部材から構成
されている可動部材のうち前記気泡発生領域に面する側
可動部材は前記他の面側の可動部材よりも撥液性
い部材の層であることを特徴とする。
【0056】請求項27の発明は、前記可動部材の前記
気泡発生領域に面する側の表面が前記他の面側の表面よ
りも粗面化されていることを特徴とする。
【0057】請求項28の発明は、発熱体が発生した熱
を液体に伝えることで、液体に膜沸騰現象を生じさせ、
該膜沸騰現象によって前記気泡の発生が成されることを
特徴とする。
【0058】請求項29の発明は、前記可動部材の変位
に伴って、前記気泡発生領域で発生した気泡が第1の液
流路中に延在することを特徴とする。
【0059】請求項30の発明は、前記第2の液流路に
は、前記第1の液流路に供給される液体と異なる液体で
あり、前記第1の液流路に供給される液体に対して、低
粘度性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質で優
れている液体が供給されることを特徴とする。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】上述したような、可動部材を用いる新規な
吐出原理に基づく本発明の液体吐出方法、ヘッド等によ
ると、発生する気泡とこれによって変位した後、戻り変
位する可動部材との相乗効果を得ることができ、吐出口
近傍の液体を高速で方向性よく吐出できるため、従来の
バブルジェット方式の吐出方法、ヘッド等に比べてリフ
ィル周波数を高くすることができ、さらに、被記録媒体
への着弾精度が向上し、高画質が得られる。
【0070】そして、特に、本発明の可動部材の自由端
の変位開始が、気泡が可動部材に接する前に生じるとす
る発明は、可動部材の弾性係数や吐出液体および発泡液
体の圧力伝達性能や気泡形成用の駆動条件あるいは各液
路構造等の相互のバランスを考慮することで実施され、
弾性変形し易く、圧力伝達し易く、気泡成長速度が速い
程、また、(可動部材の移動に対する)流路抵抗が小さ
い程、得易いものである。この発明では、気泡発生時の
圧力波が吐出口側に導かれることになるので、追従して
くる気泡の成長が吐出口側に向かって、より確実、か
つ、効率よく案内できる。
【0071】また、本発明の可動部材の降下状態で初め
て成長する気泡と実質的に接触する発明は、前記可動部
材の弾性係数が大きい程生じ易い。この発明では、成長
状態の気泡を降下する可動部材によって一層規制するこ
とができ、吐出口側への気泡の成長をより確実なものに
できる。従って、本発明にとって、前者と後者との総合
は、より一層優れた発明となることは理解できよう。
【0072】また、可動部材を具備した分離壁の吐出用
インク側の面の撥液性能を高くし、発泡液側の面の撥液
性能を低くした本発明の特徴的な構成によれば、吐出用
インクが発泡液室側に流入するのを防止し、また、発泡
液のリフィルを行い易くして、常に安定した記録を行う
ことができる。
【0073】この発明の特徴的な構成によれば、低温や
低湿で長期放置を行った場合であっても不吐出になるこ
とを防止でき、仮に不吐出になっても、予備吐出や吸引
回復といった回復処理をわずかに行うだけで正常状態に
即座に復帰できる利点もある。
【0074】具体的には64個の吐出口を持つ従来のバ
ブルジェット方式のヘッドの大半が不吐出になるような
長期放置条件においても、本発明のヘッドでは約半分以
下の吐出口が吐出不良になるだけである。また、これら
のヘッドを予備吐出で回復した場合、各吐出口に対して
従来ヘッドで数千発の予備吐出を行う必要があったが、
本発明では100発程度の予備吐出で回復を行うだけで
十分であった。これは、回復時間の短縮や回復による液
体の損失を低減でき、ランニングコストも大幅に下げる
ことが可能であることを意味する。
【0075】また、特に本発明のリフィル特性を向上し
た構成によれば、連続吐出時の応答性、気泡の安定成
長、液滴の安定化を達成して、高速液体吐出による高速
記録また高画質記録を可能にすることができた。
【0076】本発明のその他の効果については、各実施
の形態の記載から理解される。
【0077】なお、本発明の説明で用いる「上流」「下
流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(又は可動部
材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関して、
又はこの構成上の方向に関しての表現として表されてい
る。
【0078】また、気泡自体に関する「下流側」とは、
主として液滴の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出
口側部分を代表する。より具体的には気泡の中心に対し
て、上記流れ方向や上記構成上の方向に関する下流側、
又は、発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気
泡を意味する。
【0079】また、本発明の説明で用いる「実質的に密
閉」とは、気泡が成長するとき、可動部材が変位する前
に可動部材の周囲の隙間(スリット)から気泡がすり抜
けない程度の状態を意味する。
【0080】さらに、本発明でいう「分離壁」とは、広
義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区
分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を
意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路と吐出口に直
接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液
体の混合を防止するものを意味する。
【0081】加えて、本発明でいう「実質的に接触」と
は、物理的に気泡と可動部材とが少なくとも一部で接触
している状態、および、わずかな液膜が気泡と可動部材
との間に介在するが、気泡の成長あるいは可動部材の移
動を規制する状態をも含むものとする。
【0082】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)以下、図面を参照して本発明の第1の
実施の形態を詳細に説明する。
【0083】まず本実施の形態では液体を吐出するため
の、気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制
御することで吐出力や吐出効率の向上を図る場合の例を
説明する。
【0084】図1はこのような本実施の形態の液体吐出
ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を示してお
り、図2はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示し
ている。
【0085】本実施の形態の液体吐出ヘッドは、液体を
吐出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に
熱エネルギーを作用させる発熱体2(本実施の形態にお
いては40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素
子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2
に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐
出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液
体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出
口から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室
13から受け取る。
【0086】この液流路10の素子基板上には、前述の
発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有す
る材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31
が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液
流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニ
ングして形成した土台(支持部材)34等に固定されて
いる。これによって、可動部材は保持されると共に支点
(支点部分)33を構成している。
【0087】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から所定の距離
を隔てて配されている。この発熱体と可動部材との間が
気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の種類や形
状および配置はこれに限られることなく、後述するよう
に気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状および配置
であればよい。なお、上述した液流路10は、後に取り
上げる液体の流れの説明のため、図1(a)および
(e)に示される状態の可動部材31を境にして直接吐
出口18に連通している部分を第1の液流路14とし、
気泡発生領域11や液体供給路12を有する第2の液流
路16の2つの領域に分けて説明する。
【0088】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体にUSP4,723,129に記載されている
ような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発
生に基づく圧力と気泡は液体を介して可動部材に優先的
に作用し、可動部材31は図1(b)、(c)もしくは
図2で示されるように支点33を中心に吐出口側に大き
く開くように変位する。可動部材31の変位若しくは変
位した状態によって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気
泡自身の成長が吐出口側に導かれる。
【0089】ここで、本発明の基本的な吐出原理の一つ
を説明する。本発明において最も重要な原理の1つは、
気泡に対面するように配された可動部材が気泡の成長に
伴い気泡が可動部材に接触する前に、気泡の圧力に基づ
いて、定常状態の第1の位置から最大変位後の位置であ
る第2の位置へ変位し、可動部材が最大変位位置から弾
性により元の位置に戻る期間の一部で成長途上にある気
泡に初めて接触し、この戻り変位する可動部材31によ
って気泡の発生に伴う圧力や気泡自身を吐出口18が配
された下流側へ導くことである。
【0090】この原理を可動部材を用いない従来の液流
路構造を模式的に示した図3と本発明の図4とを比較し
てさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向への
圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬方向をV
Bとして示した。
【0091】図3で示されるような従来のヘッドにおい
ては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制す
る構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1
〜V8のように気泡表面の法線方向となり様々な方向を
向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼす
VA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V
4即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧
力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出
速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにV1は
吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく働き、逆に
V4はVAに向かう方向成分は比較的少ない。
【0092】これに対して、図4で示される本発明の場
合には、可動部材31が図3の場合のように様々な方向
を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V4を戻り変位
しつつ下流側(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向
に変換するものであり、これにより気泡40の圧力が直
接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気
泡の成長方向自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下
流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。この
ように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御
し、気泡の圧力伝搬方向を制御することで、吐出効率や
吐出力また吐出速度等の根本的な向上を達成することが
できる。
【0093】次に図1に戻って、本実施の形態の液体吐
出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0094】図1(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が
熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可
動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対
し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に
設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可
動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも
発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通
って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで
可動部材31が配されている。
【0095】図1(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0096】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40が可動部材31に接触する
前に変位を開始する。ここで重要なことは前述したよう
に、可動部材31の自由端32を下流側(吐出口側)に
配置し、支点33を上流側(共通液室側)に位置するよ
うに配置して、可動部材の少なくとも一部を発熱体の下
流部分すなわち気泡の下流部分に対面させることであ
る。
【0097】図1(c)は気泡40がさらに成長を続
け、気泡40と可動部材31との間に液体が介在された
まま可動部材が変位している状態である。気泡40の発
生に伴う圧力に応じて可動部材31はさらに変位し破線
で示す最大変位位置の第2の位置まで変位する。
【0098】図1(d)は、気泡40が成長し続けると
共に、可動部材31がその最大変位した第2の位置から
戻る過程で気泡40に実質的に接触している状態を示し
ている。発生した気泡40は上流より下流に大きく成長
すると共に可動部材の第1の位置(点線位置)を越えて
大きく成長し続ける。この気泡40の成長と共に可動部
材31が戻り変位して行くことで気泡40の圧力伝搬方
向や体積移動のしやすい方向、すなわち自由端側への気
泡の成長方向を吐出口に均一的に向かわせることができ
ることも吐出効率を高めると考えられる。可動部材は気
泡や発泡圧を吐出口方向へ導くのに積極的に寄与し、効
率よく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制御すること
ができる。
【0099】図1(e)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態
を示している。
【0100】可動部材31は、気泡の収縮による負圧と
可動部材自身のばね性による復元力によって図1(a)
の初期位置(第1の位置)に復帰する。また、消泡時に
は、気泡発生領域11での気泡の収縮体積を補うため、
また、吐出された液体の体積分を補うために上流側
(B)、すなわち共通液室側からの流れVD1、VD2
のように、また、吐出口側からの流れVcのように液体
が流れ込んでくる。以上、気泡の発生に伴う可動部材3
1の動作と液体の吐出動作について説明したが、以下に
本発明の液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについ
て詳しく説明する。
【0101】図1を用いて本発明における液供給メカニ
ズムをさらに詳しく説明する。
【0102】図1(d)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出
口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込
む。可動部材31を持たない従来の液流路構造において
は、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液
室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に
近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに対
応する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものである)。
【0103】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスMの後退量が大きくなり、リフィル時間が長く
なって高速印字を妨げることとなっていた。
【0104】これに対して本実施の形態は可動部材31
を設けたため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置
を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場
合、消泡時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニス
カスの後退は止まり、その後残ったW2の体積分の液体
供給は主に第2流路16の流れVD2からの液供給によ
って成される。これにより、従来、気泡Wの体積の半分
程度に対応した量がメニスカスの後退量になっていたの
に対して、それより少ないW1の半分程度のメニスカス
後退量に抑えることが可能になった。
【0105】さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時
の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行
うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0106】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を利用したリフィルを行った場合、メニスカ
スの振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につなが
っていたが、本実施の形態の高速リフィルにおいては可
動部材によって吐出口側の第1液流路14の領域と、気
泡発生領域11との吐出口側での液体の流通が抑制され
るためメニスカスの振動を極めて少なくすることができ
ることである。
【0107】このように本発明は、第2流路16の液供
給路12を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述
したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィル
を達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、ま
た記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実
現することができる。
【0108】本発明の構成においてはさらに次のような
有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の発生によ
る圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制することで
ある。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液室13側
(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、上流側に
向かって液体を押し戻す力(バック波)になっていた。
このバック波は、上流側の圧力と、それによる液移動
量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、これらは
液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動の妨げ
にもなっていた。本発明においては、まず可動部材31
によって上流側へのこれらの作用を抑えることでもリフ
ィル供給性の向上をさらに図っている。
【0109】次に、本実施の形態の更なる特徴的な構造
と効果について、以下に説明する。
【0110】本実施の形態の第2液流路16は、発熱体
2の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体
表面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路
12を有している。このような場合、気泡発生領域11
および発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31
の気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD2のよ
うに行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀
むことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出
や、消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易
く、また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。
従って、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行う
ことができる。なお、本実施の形態では実質的に平坦な
内壁を持つ液体供給路12を持つもので説明したが、こ
れに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、なだらか
な内壁を有する液供給路であればよく、発熱体上に液体
の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない形状であ
ればよい。
【0111】また、気泡発生領域への液体の供給は、可
動部材の側部(スリット35)を介してVD1から行わ
れるものもある。しかし、気泡発生時の圧力をさらに有
効に吐出口に導くために図1で示すように気泡発生領域
の全体を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材
を用い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、
気泡発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域
との液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述
のVD1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れ
が妨げられる。しかし、本発明のヘッド構造において
は、気泡発生領域に液体を供給するための流れVD1が
あるため、液体の供給性能が非常に高くなり、可動部材
31で気泡発生領域11を覆うような吐出効率向上を求
めた構造を取っても、液体の供給性能を落とすことがな
い。
【0112】ところで、可動部材31の自由端32と支
点33の位置は、例えば図5で示されるように、自由端
が相対的に支点より下流側にある。このような構成のた
め、前述した発泡の際に気泡の圧力伝搬方向や成長方向
を吐出口側に導く等の機能や効果を効率よく実現できる
のである。さらに、この位置関係は吐出に対する機能や
効果のみならず、液体の供給の際にも液流路10を流れ
る液体に対する流抵抗を小さくでき高速にリフィルでき
るという効果を達成している。これは図5に示すよう
に、吐出によって後退したメニスカスMが毛管力により
吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供給が行
われる場合に、液流路10(第1液流路14、第2液流
路16を含む)内を流れる流れS1、S2、S3に対
し、逆らわないように自由端と支点33とを配置してい
るためである。
【0113】補足すれば、本実施の形態の図1において
は、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体
2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3
(発熱体の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向に
直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱体
2に対して延在している。これによって発熱体の面積中
心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大きく寄与
する圧力、又は気泡を可動部材31が受け、この圧力及
び気泡を吐出口側に導くことができ、吐出効率や吐出力
を根本的に向上させることができる。
【0114】さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用
して多くの効果を得ている。
【0115】また、本実施の形態の構成においては可動
部材31の自由端が瞬間的な機械的変位を行っているこ
とも、液体の吐出に対して有効に寄与していると考えら
れる。
【0116】(実施の形態2)図6に本発明の第2の実
施の形態を示す。この図6において、Aは可動部材が変
位している状態を示し(気泡は図示せず)、Bは可動部
材が初期位置(第1位置)の状態を示し、このBの状態
をもって、発泡領域11を吐出口18に対して実質的に
密閉しているとする。(ここでは、図示していないが
A、B間には流路壁があり流路と流路を分離してい
る。) 図6における可動部材31は土台34を側部に2点設
け、その間に液供給路12を設けている。これにより、
可動部材の発熱体側の面に沿って、また、発熱体の面と
実質的に平坦もしくは、なだらかにつながる面を持つ液
供給路から液体の供給を成すことができる。
【0117】ここで、可動部材31の初期位置(第1位
置)では、可動部材31は発熱体2の下流側および横方
向に配された発熱体下流壁36と発熱体側壁37に近接
または密着しており、気泡発生領域11の吐出口18側
に実質的に密閉されている。このため、発泡時の気泡の
圧力、特に気泡の下流側の圧力を逃がさず可動部材の自
由端側に集中的に作用させることができる。
【0118】また、消泡時には、可動部材31は第1位
置に戻り、発熱体上への消泡時の液供給は気泡発生領域
11の吐出口側が実質的に密閉状態になるため、メニス
カスの後退抑制等、先の実施の形態で説明した種々の効
果を得ることができる。また、リフィルに関する効果に
おいても先の実施の形態と同様の機能、効果を得ること
ができる。
【0119】また、本実施の形態においては、図2や図
6のように、可動部材31を支持固定する土台34を発
熱体2より離れた上流に設けると共に液流路10より、
小さな幅の土台34とすることで前述のような液供給路
12への液体の供給を行っている。また、土台34の形
状はこれに限らず、リフィルをスムースに行えるもので
あればよい。
【0120】(実施の形態3)図7は、本発明の基本的
な概念の一つを示すもので、本発明の第3の実施の形態
となる。図7は、一つの液流路中に気泡発生領域、そこ
で発生する気泡および可動部材との位置関係を示してい
ると共に、本発明の液体吐出方法やリフィル方法をより
分かり易くした実施の形態である。
【0121】前述の実施の形態の多くは、可動部材の自
由端に対して、発生する気泡の圧力を集中して、急峻な
可動部材の移動と同時に気泡の移動を吐出口側に集中さ
せることを達成している。これに対して、本実施の形態
は、発生する気泡の自由度を与えながら、液滴吐出に直
接作用する気泡の吐出口側である気泡の下流側部分を可
動部材の自由端側で規制するものである。
【0122】構成上で説明すると、図7では、前述の図
2(第1実施の形態)に比較すると、図2の素子基板1
上に設けられた気泡発生領域の下流端に位置するバリヤ
ーとしての凸部(図2の24)が本実施の形態では設け
られていない。つまり、可動部材の自由端領域および両
側端領域は、吐出口領域に対して気泡発生領域を実質的
に密閉せずに開放しており、この構成が本実施の形態で
ある。
【0123】本実施の形態では、気泡の液滴吐出に直接
作用する下流側部分のうち、下流側先端部の気泡成長が
許容されているので、その圧力成分を吐出に有効に利用
している。加えて少なくともこの下流側部分の上方へ向
かう圧力(図3のVB2、VB3、VB4の分力)を可
動部材の自由端側部分が、この下流側先端部の気泡成長
に加えられるように作用するため、吐出効率を上述した
実施の形態と同様に向上する。前記実施の形態に比較し
て本実施の形態は、発熱体の駆動に対する応答性が優れ
ている。
【0124】また、本実施の形態は、構造上簡単である
ため製造上の利点がある。
【0125】本実施の形態の可動部材31の支点部は、
可動部材の面部に対して小さい幅の1つの土台34に固
定されている。従って、消泡時の気泡発生領域11への
液体供給は、この土台の両側を通って供給される(図の
矢印参照)。この土台は供給性を確保するものであれば
どのような構造でもよい。
【0126】液体の供給時におけるリフィルは、本実施
の形態の場合には、可動部材の存在によって気泡の消泡
にともなって上方から気泡発生領域へ流れ込む流れが制
御されるので、従来の発熱体のみの気泡発生構造に対し
て優れたものとなる。無論、これによって、メニスカス
の後退量を減じることもできる。
【0127】本第3実施の形態の変形実施の形態として
は、可動部材の自由端に対する両側端(一方でも可)の
みを気泡発生領域11に対して実質的に密閉状態とする
ことは好ましいものとして挙げられる。この構成によれ
ば、可動部材の側方へ向かう圧力をも先に説明した気泡
の吐出口側端部の成長に変更して利用することができる
ので、一層吐出効率が向上する。
【0128】(実施の形態4)前述した機械的変位によ
る液体の吐出力をさらに向上させた例を本実施の形態で
説明する。図8はこのようなヘッド構造の横断面図であ
る。図8においては、可動部材31の自由端の位置が発
熱体のさらに下流側に位置するように、可動部材が延在
している実施の形態を示している。これによって自由端
位置での可動部材の変位速度を高くすることができ、可
動部材の変位による吐出力の発生をさらに向上させるこ
とができる。
【0129】また、自由端が先の実施の形態に比較して
吐出口側に近づくことになるので気泡の成長をより安定
した方向成分に集中できるので、より優れた吐出を行う
ことができる。
【0130】また、可動部材31は最大変位の第2の位
置からその弾性復元力により戻り速度R1で戻り変位す
るが、この位置より支点33に対して、遠い位置の自由
端32はさらに速い戻り速度R2で戻り変位する。これ
により、自由端32を高い速度で機械的に成長中または
成長完了後の気泡40に作用せしめ気泡40より下流側
の液に吐出口方向に液移動を起こさせることで吐出の方
向性を向上させ吐出効率を高めている。
【0131】また、自由端形状は、図7と同じように液
流れに対して垂直な形状とすることにより、気泡の圧力
や可動部材の機械的な作用をより効率的に吐出に寄与さ
せることができる。
【0132】(実施の形態5)図9(a)、(b)、
(c)は本発明の第5の実施の形態である。
【0133】本実施の形態の構造は先の実施の形態と異
なり、吐出口と直接連通する領域は液室側と連通した流
路形状となっておらず、構造の簡略化が図れるものであ
る。
【0134】液供給は全て、可動部材31の発泡領域側
の面に沿った液供給路12からのみ行われるもので、可
動部材31の自由端32や支点33の吐出口18に対す
る位置関係や発熱体2に面する構成は前述の実施の形態
と同様である。
【0135】本実施の形態は、吐出効率や液供給性等、
前述した効果を実現するものであるが、特にメニスカス
の後退を抑制し消泡時の圧力を利用して、ほとんど全て
の液供給を消泡時の圧力を利用して、強制リフィルを行
うものである。
【0136】図9(a)は発熱体2により液体を発泡さ
せ可動部材31の戻り過程で気泡40に接触した状態を
示しており、図9(b)は、前記発泡が収縮しつつある
状態で、このとき可動部材31の初期位置への復帰とS
3による液供給が行われる。
【0137】図9(c)では、可動部材が初期部材が初
期位置に復帰する際のわずかなメニスカスMの後退を、
消泡後に吐出口18付近の毛細管力によって、リフィル
している状態である。
【0138】(実施の形態6)以下、図面を参照して本
発明のさらに他の実施の形態について説明する。
【0139】本実施の形態においても主たる液体の吐出
原理については先の実施の形態と同じであるが、本実施
の形態においては液流路を複流路構成にすることで、さ
らに熱を加えることで発泡させる液体(発泡液)と、主
として吐出される液体(吐出液)とを分けることができ
るものである。
【0140】図10は、本実施の形態の液体吐出ヘッド
の流路方向の断面模式図を示しており、図11はこの液
体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0141】本実施の形態の液体吐出ヘッドは、液体に
気泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体2
が設けられた素子基板1上に、発泡液用の第2液流路1
6があり、その上に吐出口18に直接連通した吐出液用
の第1液流路14が配されている。
【0142】第1液流路の上流側は、複数の第1液流路
に吐出液を供給するための第1共通液室15に連通して
おり、第2液流路の上流側は、複数の第2液流路に発泡
液を供給するための第2共通液室17に連通している。
【0143】但し、発泡液と吐出液を同じ液体とする場
合には、共通液室を一つにして共通化させてもよい。
【0144】第1と第2の液流路の間には、金属等の弾
性を有する材料で構成された分離壁30が配されてお
り、第1液流路と第2の液流路とを区分している。な
お、発泡液と吐出液とができる限り混ざり合わない方が
よい液体の場合には、この分離壁によってできる限り完
全に第1液流路14と第2液流路16の液体の流通を分
離した方がよいが、発泡液と吐出液とがある程度混ざり
合っても、問題がない場合には、分離壁に完全分離の機
能を持たせなくてもよい。
【0145】発熱体の面方向上方への投影空間(以下吐
出圧発生領域という。;図10中のAの領域とBの気泡
発生領域11)に位置する部分の分離壁は、スリット3
5によって吐出口側(液体の流れの下流側)が自由端
で、共通液室(15、17)側に支点33が位置する片
持梁形状の可動部材31となっている。この可動部材3
1は、気泡発生領域11(B)に面して配されているた
め、発泡液の発泡によって第1液流路側の吐出口側に向
けて開口するように動作する(図中矢印方向)。図11
においても、発熱体2としての発熱抵抗部(電気熱変換
体)と、この発熱抵抗部に電気信号を印加するための配
線電極5とが配された素子基板1上に、第2の液流路を
構成する空間を介して分離壁30が配置されている。
【0146】可動部材31の支点33、自由端32の配
置と、発熱体との配置の関係については、先の実施の形
態と同様にしている。
【0147】また、先の実施の形態で液供給路12と発
熱体2との構造の関係について説明したが、本実施の形
態においても第2液流路16と発熱体2との構造の関係
を同じくしている。
【0148】次に図12を用いて本実施の形態の液体吐
出ヘッドの動作を説明する。
【0149】ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液
流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給
される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させ
た。
【0150】発熱体2が発生した熱が、第2液流路の気
泡発生領域内の発泡液に作用することで、先の実施の形
態で説明したのと同様に発泡液にUSP4,723,1
29に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡4
0を発生させる。
【0151】本実施の形態においては、気泡発生領域の
上流側を除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、こ
の気泡発生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された可
動部材31側に集中して伝搬し、気泡の成長をともなっ
て可動部材31が図12(a)の状態からその最大変位
位置まで変位する。そして、可動部材31はその弾性力
により図12(b)のように第2液流路側に戻り変位す
る。この可動部材31の一連の動作によって第1液流路
14と第2液流路16とが大きく連通し、気泡の発生に
基づく圧力が可動部材31の戻り変位に制御されて第1
液流路の吐出口18側の方向に主に伝わる。この圧力の
伝搬と、前述のような可動部材31の機械的変位によっ
て液体が吐出口から吐出される。
【0152】次に、気泡が収縮するに伴って可動部材3
1が図12(a)の位置まで戻ると共に、第1液流路1
4では吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出液体が
上流側から供給される。本実施の形態においても、この
吐出液体の供給方向は前述の実施の形態例と同様に可動
部材が閉じる方向であるため、吐出液体のリフィルを可
動部材で妨げることがない。
【0153】本実施の形態は、可動部材31の変位に伴
う発泡圧力の伝搬、気泡の成長方向、バック波の防止等
に関する主要部分の作用や効果については先の第1実施
の形態等と同じであるが、本実施の形態のような2流路
構成をとることによって、さらに次のような長所があ
る。
【0154】すなわち、上述の実施の形態の構成による
と、吐出液と発泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生
じた圧力によって吐出液を吐出することができる。この
ため従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出
力が不十分であったポリエチレングリコール等の高粘度
の液体であっても、この液体を第1の液流路に供給し、
発泡液に発泡が良好に行われる液体(エタノール:水=
4:6の混合液1〜2cP程度等)や低沸点の液体を第
2の液流路に供給することで良好に吐出させることがで
きる。
【0155】また、発泡液として、熱を受けても発熱体
の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択すること
で、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができる。
【0156】さらに、本発明のヘッドの構造においては
先の実施の形態で説明したような効果をも生じるため、
さらに高吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体を吐
出することができる。
【0157】また、加熱に弱い液体の場合においてもこ
の液体を第1の液流路に吐出液として供給し、第2の液
流路で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる液体を供
給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与えることな
く、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で吐出す
ることができる。
【0158】<その他の実施の形態>以上、本発明の液
体吐出ヘッドや液体吐出方法の要部の実施の形態につい
て説明を行ったが、以下にこれらの実施の形態に好まし
く適用できる実施態様例について図面を用いて説明す
る。但し、以下の説明においては前述の1流路形態の実
施形態例と2流路形態の実施形態例のいずれかを取り上
げて説明する場合があるが特に記載しない限り、両実施
の形態に適用しうるものである。
【0159】<液流路の天井形状>図13は本発明の液
体吐出ヘッドの流路方向断面図であるが、第1液流路1
4(若しくは図1における液流路10)を構成するため
の溝が設けられた溝付き部材50が分離壁30上に設け
られている。本実施の形態においては可動部材31の自
由端32位置近傍の流路天井14aの高さが高くなって
おり、可動部材31の動作角度θをより大きく取れるよ
うにしている。この可動部材の動作範囲は、液流路の構
造、可動部材の弾力性や発泡力等を考慮して決定すれば
よいが、吐出口の軸方向の角度を含む角度まで動作する
ことが望ましいと考えられる。
【0160】また、この図で示されるように吐出口18
の直径より可動部材31の自由端の変位高さを高くする
ことで、より十分な吐出力の伝達が成される。また、こ
の図で示されるように、可動部材31の自由端32位置
の液流路天井14aの高さより可動部材の支点33位置
の液流路天井14bの高さの方が低くなっているため、
可動部材の変位よる上流側への圧力波の逃げがさらに有
効に防止できる。
【0161】<第2液流路と可動部材との配置関係>図
14は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配
置関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁
30、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図
(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方か
ら見た図である。そして、同図(c)は、可動部材31
と第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重
ねることで模式的に示した図である。なお、いずれの図
も図面下方が吐出口が配されている前面側である。
【0162】本実施の形態の第2の液流路16は発熱体
2の上流側(ここでの上流側とは第2共通液室側から発
熱体位置、可動部材、第1液流路を経て吐出口に向う大
きな流れの中の上流側のことである。)に狭窄部19を
持っており、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に
容易に逃げることを抑制するような室(発泡室)構造と
なっている。
【0163】従来のヘッドのように、発泡する流路と液
体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側
に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を
設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮し
て、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない
構成を採る必要があった。
【0164】しかし、本実施の形態の場合、吐出される
液体の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、
発熱体が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消費
されないようにできるため、第2液流路の気泡発生領域
11への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上述
の狭窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常に
狭くできるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力を
あまり周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して可
動部材側に向けることができる。そしてこの圧力を可動
部材31を介して吐出力として利用することができるた
め、より高い吐出効率、吐出力を達成することができ
る。ただ、第1液流路16の形状は上述の構造に限られ
るものではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可動部
材側に伝えられる形状であれば良い。
【0165】なお、図14(c)で示されるように可動
部材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆
っており、このことで、可動部材31の第2液流路への
落ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液
と発泡液との分離性をさらに高めることができる。ま
た、気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さ
らに吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、
前述の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果
を高めることができる。
【0166】特に、本発明の可動部材の自由端の変位開
始が、気泡が可動部材に接する前に生じるとする発明
は、可動部材の弾性係数や吐出液体および発泡液体の圧
力伝達性能や気泡形成用の駆動条件あるいは各液路構造
等の相互のバランスを考慮することで実施され、弾性変
形し易く、圧力伝達し易く、気泡成長速度が速い程、ま
た、(可動部材の移動に対する)流路抵抗が小さい程、
得易いものである。この発明では、気泡発生時の圧力波
が吐出口側に導かれることになるので、追従してくる気
泡の成長が吐出口側に向かって、より確実、かつ、効率
よく案内できる。
【0167】<可動部材および分離壁>図15は可動部
材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設け
られたスリットであり、このスリット35によって、可
動部材31が形成されている。同図(a)は長方形の形
状であり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動
部材の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が
広くなっており、可動部材の弾性力および耐久性が向上
する形状である。動作の容易性と耐久性とが良好な形状
として、図14(a)で示したように、支点側の幅が円
弧状に狭くなっている形態が望ましいが、可動部材の形
状は第2の液流路側に入り込むことがなく、容易に動作
可能な形状で、耐久性に優れた形状であればよい。
【0168】先の実施の形態においては、板状可動部材
31をおよびこの可動部材を有する分離壁5は厚さ5μ
mのニッケルで構成したが、これに限られることなく可
動部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液
に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作す
るための弾性を有し、微細なスリットが形成できるもの
であればよい。
【0169】可動部材の材料としては、耐久性の高い、
銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白
金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、および
その合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、ス
チレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のア
ミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシ
ル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を
持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、
そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐イ
ンク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケ
ル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および
耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングした
もの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、
ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエー
テルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイ
ミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水
酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する
樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポ
キシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等の
アミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を
持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラ
ミックおよびその化合物が望ましい。
【0170】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0171】なお、可動部材31を形成するためのスリ
ット35の幅は本実施の形態では2μmとしたが、発泡
液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止
したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカス
を形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑
制すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポ
アズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上
の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混
液を防止することができるが、3μm以下にすることが
望ましい。
【0172】本発明における可動部材としてはμmオー
ダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオーダー
の厚さの可動部材は意図していない。μmオーダーの厚
さの可動部材にとって、μmオーダーのスリット幅(W
μm)を対象とする場合、製造のバラツキをある程度考
慮することが望ましい。
【0173】スリットを形成する可動部材の自由端ある
いは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部材の厚み
と同等の場合(図12、図13等)、スリット幅と厚み
の関係を製造のバラツキを考慮して以下のような範囲に
することで発泡液と吐出液の混液を安定的に抑制するこ
とができる。このことは限られた条件ではあるが設計上
の観点として、3cp以下の粘度の発泡液に対して高粘
度インク(5cp、10cp等)を用いる場合、W/t
≦1を満足するようにすることで、2液の混合を長期に
わたって抑制することが可能な構成となった。
【0174】本発明の「実質的な密閉状態」を与えるス
リットとしては、このような数μmオーダであればより
確実である。
【0175】上述のように、発泡液と吐出液とに機能分
離させた場合、可動部材がこれらの実質的な仕切部材と
なる。この可動部材が気泡の生成に伴って移動する際に
吐出液に対して発泡液がわずかに混入することが見られ
る。画像を形成する吐出液は、インクジェット記録の場
合、色材濃度を3%乃至5%程度有するものが一般的で
あることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴に対して
20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化をもたら
さない。従って、このような混液としては、吐出液滴に
対して20%以下となるような発泡液と吐出液との混合
を本発明に含むものとする。
【0176】尚、上記構成例の実施では、粘性を変化さ
せても上限で15%の発泡液の混合であり、5cP以下
の発泡液では、この混合比率は、駆動周波数にもよる
が、10%程度を上限とするものであった。
【0177】特に、吐出液の粘度を20cP以下にすれ
ばする程、この混液は低減(例えば5%以下)できる。
【0178】次に、このヘッドにおける発熱体と可動部
材の配置関係について、図を用いて説明する。ただし、
可動部材と発熱体の形状および寸法,数は、以下に限定
されるものではない。発熱体と可動部材の最適な配置に
よって、発熱体による発泡時の圧力を吐出圧として有効
に利用することが可能となる。
【0179】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆ
るバブルジェット記録方法の従来技術においては、図1
6に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係
にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが
存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様
子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在し
ていることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の
約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0180】したがって、発泡圧を有効利用するために
は、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域
の直上が可動部材の可動領域で覆われるように、可動部
材を配置するのが効果的であると、言える。本実施の形
態においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm
以上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によって
は、これに限定されるものではない。
【0181】図17に、58×150μmの発熱体2に
可動領域の総面積が異なる可動部材301((a)
図)、可動部材302((b)図)を配置したときの上
部から見た模式図を示す。
【0182】可動部材301の寸法は、53×145μ
mで、発熱体2の面積よりも小さいが、発熱体2の発泡
有効領域と同じ程度の寸法であり、該発泡有効領域を覆
うように、配置されている。一方、可動部材302の寸
法は、53×220μmで発熱体2の面積よりも大きく
(幅寸法を同じにした場合、支点〜可動先端間の寸法が
発熱体の長さよりも長い)、可動部材301と同じよう
に発泡有効領域を覆うように配置されている。上記2種
の可動部材301、302に対し、それらの耐久性と吐
出効率について測定を行った。測定条件は以下の通りで
ある。
【0183】 発泡液 : エタノール40%水溶液 吐出用インク : 染料インク 電圧 : 20.2V 周波数 : 3kHz この測定条件で実験を行った結果、可動部材の耐久性に
関しては、(a)可動部材301の方は、1×107
ルス印加したところで可動部材301の支点部分に損傷
が見られた。(b)可動部材302の方は、3×108
パルス印加しても、損傷は見られなかった。また、投入
エネルギーに対する吐出量と吐出速度からもとまる運動
エネルギーも約1.5〜2.5倍程度向上することが確
認された。
【0184】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設けられた素子基板の構成について説明す
る。
【0185】図20は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面
図を示したもので、図20(a)は後述する保護膜があ
るヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0186】素子基板1上に第2液流路16、分離壁3
0、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた
溝付き部材50が配されている。
【0187】素子基板1には、シリコン等の基体107
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチ
ッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体を構成
するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタ
ル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵
抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウ
ム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)104とが図
11のようにパターニングされている。この2つの配線
電極104から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に
電流を流し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸
化シリコンやチッ化シリコン等の保護層103を0.1
〜2.0μm厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等
の耐キャビテーション層(0.1〜0.6μm厚)10
2が成膜されており、インク等の各種の液体から抵抗層
105を保護している。
【0188】特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧
力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性
を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)
等が耐キャビテーション層102として用いられる。
【0189】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく
その例を図20(b)に示す。このような保護層を必要
としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル
−アルミ合金等が挙げられる。
【0190】このように、前述の各実施の形態における
発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱
部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含
むものでもよい。
【0191】本実施の形態においては、発熱体として電
気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有
するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液
を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるもの
であればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受
けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受ける
ことで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0192】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供
給するための配線電極104で構成される電気熱変換体
(素子)の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動す
るためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレ
ジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって
作り込まれていてもよい。
【0193】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介し
て図21で示されるような矩形パルスを印加し、配線電
極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施
の形態のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パル
ス幅7μsec、電流150mAの電気信号を6kHz
で加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作に
よって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。し
かしながら、駆動信号の条件はこれに限られることな
く、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号で
あればよい。
【0194】<2流路構成のヘッド構造>以下に、第
1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入
でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする
液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0195】図22は、このような液体吐出ヘッドの構
造を示す模式図であり、先の実施形態例と同じ構成要素
については同じ符号を用いており、詳しい説明はここで
は省略する。
【0196】本実施の形態においては、溝付き部材50
は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複
数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流
路14に共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐
出液)を供給するための第1の共通液室15を構成する
凹部とから概略構成されている。
【0197】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を
有している。また、溝付部材50は、その上部から分離
壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2
の液体供給路21を有している。
【0198】第1の液体(吐出液)は、図22の矢印C
で示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通
液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の
液体(発泡液)は、図22の矢印Dで示すように、第2
液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2
液流路16に供給されるようになっている。
【0199】本実施の形態では、第2液体供給路21
は、第1液体供給路20と平行して配されているが、こ
れに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配され
た分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通する
ように形成されればどのように配されてもよい。
【0200】また、第2液体供給路21の太さ(直径)
に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。
第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、
矩形状等でもよい。
【0201】また、第2共通液室17は、溝付部材50
を分離壁30で仕切ることによって形成することができ
る。形成の方法としては、図23で示す本実施の形態の
分解斜視図のように、素子基板1上にドライフィルムで
共通液室枠71と第2液路壁72とを形成し、分離壁を
固定した溝付部材50と分離壁30との結合体と素子基
板1とを貼り合わせることにより第2共通液室17や第
2液流路16を形成してもよい。
【0202】本実施の形態では、アルミニュウム等の金
属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液
に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生
する発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた素
子基板1が配されている。
【0203】この素子基板1上には、第2液路壁72に
より形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数
の発泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を
供給するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構
成する凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁
30とが配されている。
【0204】溝付部材50は、分離壁30と接合される
ことで吐出液流路(第1液流路)14を構成する溝と、
吐出液流路に連通し、それぞれの吐出液流路に吐出液を
供給するための第1の共通液室(共通吐出液室)15を
構成するための凹部と、第1共通液室に吐出液を供給す
るための第1供給路(吐出液供給路)20と、第2の共
通液室17に発泡液を供給するための第2の供給路(発
泡液供給路)21とを有している。第2の供給路21
は、第1の共通液室15の外側に配された分離壁30を
貫通して第2の共通液室17に連通する連通路に繋がっ
ており、この連通路によって吐出液と混合することなく
発泡液を第2の共通液室17に供給することができる。
【0205】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体に対応して可動
部材31が配置されており、この可動部材31に対応し
て吐出液流路14が配されている。また、本実施の形態
では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示した
が、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供
給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比
例して決めればよい。
【0206】このような流路断面積の最適化により溝付
部材50等を構成する部品をより小型化することも可能
である。
【0207】以上説明したように本実施の形態によれ
ば、第2液流路に第2液体を供給する第2の供給路と、
第1液流路に第1液体を供給する第1の供給路とが同一
の溝付部材としての溝付天板からなることにより部品点
数が削減でき、工程の短縮化とコストダウンが可能とな
る。
【0208】また第2液流路に連通した第2の共通液室
への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離す
る分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわ
れる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形
成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが
向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出
することができる。
【0209】また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第
2液体共通液室17へ供給されるため、第2液流路に第
2液体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるた
め、安定した吐出が可能となる。
【0210】<吐出液体、発泡液体>先の実施の形態で
説明したように本発明においては、前述のような可動部
材を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも
高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出するこ
とができる。本実施の形態の内、発泡液と吐出液とに同
じ液体を用いる場合には、発熱体から加えられる熱によ
って劣化せずに、また加熱によって発熱体上に堆積物を
生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状態変化を
行うことが可能であり、さらに液流路や可動部材や分離
壁等を劣化させない液体であれば種々の液体を用いるこ
とができる。
【0211】このような液体の内、記録を行う上で用い
る液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置
で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0212】一方、本発明の2流路構成のヘッドを用
い、吐出液と発泡液を別液体とした場合には、発泡液と
して前述のような性質の液体を用いればよく、具体的に
は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ
プロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オク
タン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレ
ン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジ
オキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、
アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれらの混
合物が挙げられる。
【0213】吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質
に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従
来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変
質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用で
きる。
【0214】ただし、吐出液の性質として吐出液自身、
又は発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材
の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。
【0215】記録用の吐出液体としては、高粘度インク
等をも利用することができる。その他の吐出液体として
は、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもで
きる。
【0216】本発明においては、吐出液と発泡液の両方
に用いることができる記録液体として以下のような組成
のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向上によっ
てインクの吐出速度が高くなったため、液滴の着弾精度
が向上し非常に良好な記録画像を得ることができた。
【0217】 染料インク(粘度2cP)の組成 (C.I.フードブラック2)染料 3重量% ジエチレングリコール 10重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 5重量% 水 77重量% また、発泡液と吐出液に以下で示すような組成の液体を
組み合わせて吐出させて記録を行った。その結果、従来
のヘッドでは吐出が困難であった十数cP粘度の液体は
もちろん150cPという非常に高い粘度の液体でさえ
も良好に吐出でき、高画質な記録物を得ることができ
た。
【0218】 発泡液1の組成 エタノール 40重量% 水 60重量% 発泡液2の組成 水 100重量% 発泡液3の組成 イソプロピルアルコール 10重量% 水 90重量% 吐出液1顔料インク(粘度約15cP)の組成 カーボンブラック 5重量% スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1重量% (酸価140、重量平均分子量8000) モノエタノールアミン 0.25重量% グリセリン 69重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 16.75重量% 吐出液2(粘度55cP)の組成 ポリエチレングリコール200 100重量% 吐出液3(粘度150cP)の組成 ポリエチレングリコール600 100重量% ところで、前述したような従来吐出されにくいとされて
いた液体の場合には、吐出速度が低いために、吐出方向
性のバラツキが助長され記録紙上のドットの着弾精度が
悪く、また吐出不安定による吐出量のバラツキが生じこ
れらのことで、高品位画像が得にくかった。しかし、上
述の実施の形態の構成においては、気泡の発生を発泡液
を用いることで充分に、しかも安定して行うことができ
る。このことで、液滴の着弾精度向上とインク吐出量の
安定化を図ることができ記録画像品位を著しく向上する
ことができた。
【0219】<液体吐出ヘッドの製造>次に、本発明の
液体吐出ヘッドの製造工程について説明する。
【0220】図2で示したような液体吐出ヘッドの場合
には、素子基板1上に可動部材31を設けるための土台
34をドライフィルム等をパターニングすることで形成
し、この土台34に可動部材31を接着、もしくは溶着
固定した。その後、各液流路10を構成する複数の溝と
吐出口18と共通液室13を構成する凹部を有する溝付
部材を、溝と可動部材が対応するような状態で素子基板
1に接合することで形成した。
【0221】次に、図10や図23で示されるような2
流路構成の液体吐出ヘッドの製造工程について説明す
る。
【0222】大まかには、素子基板1上に第2液流路1
6の壁を形成し、その上に分離壁30を取り付け、さら
にその上に第1液流路14を構成する溝等が設けられた
溝付き部材50を取り付ける。もしくは、第2液流路1
6の壁を形成した後、この壁の上に分離壁30を取り付
けた溝付き部材50を接合することでヘッドの製造を行
った。
【0223】さらに第2液流路の作製方法について詳し
く説明する。
【0224】図24(a)〜(e)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第1の実施の形態を説明するため
の概略断面図である。
【0225】本実施の形態においては、(a)に示すよ
うに、素子基板(シリコンウエハ)1上に半導体製造工
程で用いるのと同様の製造装置を用いてハフニュウムボ
ライドやチッ化タンタル等からなる発熱体2を有する電
気熱変換用素子を形成した後、次工程における感光性樹
脂との密着性の向上を目的として素子基板1の表面に洗
浄を施した。さらに、密着性を向上させるには、素子基
板表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、
例えばシランカップリング剤(日本ユニカ製:A18
9)をエチルアルコールで1重量%に希釈した液を上記
改質表面上にスピンコートすることで達成される。
【0226】次に、表面洗浄を行い、密着性を向上した
基板1上に、(b)に示すように、紫外線感光性樹脂フ
ィルム(東京応化製:ドライフィルム オーディルSY
−318)DFをラミネートした。
【0227】次に、(c)に示すように、ドライフィル
ムDF上にフォトマスクPMを配し、このフォトマスク
PMを介してドライフィルムDFのうち、第2の流路壁
として残す部分に紫外線を照射した。この露光工程は、
キヤノン(株)製:MPA−600を用いて行い、約6
00mJ/cm2 の露光量で行った。
【0228】次に、(d)に示すように、ドライフィル
ムDFを、キシレンとブチルセルソルブアセテートとの
混合液からなる現像液(東京応化製:BMRC−3)で
現像し、未露光部分を溶解させ、露光して硬化した部分
を第2液流路16の壁部分として形成した。さらに、素
子基板1表面に残った残渣を酸素プラズマアッシング装
置(アルカンテック社製:MAS−800)で約90秒
間処理して取り除き、引き続き、150℃で2時間、さ
らに紫外線照射100mJ/cm2 を行って露光部分を
完全に硬化させた。
【0229】以上の方法により、上記シリコン基板から
分割、作製される複数のヒータボード(素子基板)に対
し、一様に第2の液流路を精度よく形成することができ
る。シリコン基板を、厚さ0.05mmのダイヤモンド
ブレードを取り付けたダイシングマシン(東京精密製:
AWD−4000)で各々のヒータボード1に切断、分
離した。分離されたヒータボード1を接着剤(東レ製:
SE4400)でアルミベースプレート240上に固定
した(図42)。次いで、予めアルミベースプレート2
40上に接合しておいたプリント配線基板241と、ヒ
ータボード1とを直径0.05mmのアルミワイヤ(図
示略)で接続した。
【0230】次に、このようにして得られたヒータボー
ド1に、図24(e)に示すように、上述の方法で溝付
部材50と分離壁30との接合体を位置決め接合した。
すなわち、分離壁30を有する溝付部材50とヒータボ
ード1とを位置決めし、押さえバネ220により係合、
固定した後、インク・発泡液用供給部材230をアルミ
ベースプレート240上に接合固定し、アルミワイヤ
間、溝付部材50とヒータボード1とインク・発泡液用
供給部材230との隙間をシリコーンシーラント(東芝
シリコーン製:TSE399)で封止して完成させた。
【0231】以上の製法で、第2の液流路を形成するこ
とにより、各ヒータボードのヒータに対して位置ズレの
ない精度の良い流路を得ることができる。特に、溝付部
材50と分離壁30とをあらかじめ先の工程で接合して
おくことで、第1液流路14と可動部材31の位置精度
を高めることができる。
【0232】そして、これらの高精度製造技術によっ
て、吐出安定化が図られ印字品位が向上する。また、ウ
エハ上に一括で形成することが可能なため、多量に低コ
ストで製造することが可能である。
【0233】なお、本実施の形態では、第2の液流路を
形成するために紫外線硬化型のドライフィルムを用いた
が、紫外域、特に248nm付近に吸収帯域をもつ樹脂
を用い、ラミネート後、硬化させ、エキシマレーザで第
2の液流路となる部分の樹脂を直接除去することによっ
ても得ることが可能である。
【0234】図25(a)〜(d)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第2の実施の形態を説明するため
の概略断面図である。
【0235】本実施の形態においては、(a)に示すよ
うに、SUS基板100上に厚さ15μmのレジスト1
01を第2の液流路の形状でパターニングした。
【0236】次に、(b)に示すように、SUS基板1
00に対して電気メッキを行ってSUS基板100上に
ニッケル層102を同じく15μm成長させた。メッキ
液としては、スルフォミン酸ニッケルに応力減少剤(ワ
ールドメタル社製:ゼロオール)とほう酸、ピット防止
剤(ワールドメタル社製:NP−APS)、塩化ニッケ
ルを使用した。電着時の電界のかけ方としては、アノー
ド側に電極を付け、カソード側に既にパターニングした
SUS基板100を取り付け、メッキ液の温度を50℃
とし、電流密度を5A/cm2 とした。
【0237】次に、(c)に示すように、上記のような
メッキを終了したSUS基板100に超音波振動を与
え、ニッケル層102の部分をSUS基板100から剥
離し、所望の第2の液流路を得た。
【0238】一方、電気熱変換用素子を配設したヒータ
ボードを、半導体と同様の製造装置を用いてシリコンウ
エハに形成した。このウエハを先の実施の形態と同様
に、ダイシングマシンで各々のヒータボードに分離し
た。このヒータボード1を、予めプリント基板241が
接合されたアルミベースプレート240に接合し、プリ
ント基板241とアルミワイヤ(図示略)とを接続する
ことで電気的配線を形成した。このような状態のヒータ
ボード1上に、図25(d)に示すように、先の工程で
得た第2液流路16が形成されたニッケル層102と位
置決め固定した。この固定に際しては、後工程で第1の
実施の形態と同様に分離壁を固定した天板と押さえバネ
によって係合・密着されるため、天板接合時に位置ズレ
が発生しない程度に固定されていれば十分である。
【0239】本実施の形態では、上記位置決め固定に紫
外線硬化型接着剤(グレースジャパン製:アミコンUV
−300)を塗布し、紫外線照射装置を用い、露光量を
100mJ/cm2 として約3秒間で固定を完了した。
【0240】本実施の形態の製法によれば、発熱体に対
して位置ズレのない精度の高い第2の液流路を得ること
ができることに加え、ニッケルで流路壁を形成している
ため、アルカリ性の液体に強く、信頼性の高いヘッドを
提供することが可能となる。
【0241】図26(a)〜(d)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第3の実施の形態を説明するため
の概略断面図である。
【0242】本実施の形態においては、(a)に示すよ
うに、アライメント穴あるいはマーク100aを有する
厚さ15μmのSUS基板100の両面にレジスト10
30を塗布した。ここで、レジストとしては、東京応化
製のPMERP−AR900を使用した。
【0243】この後、(b)に示すように、SUS 基板1
00のアライメント穴100aに合わせて、露光装置
(キヤノン(株)製:MPA−600)を用いて露光
し、第2の液流路を形成すべき部分のレジスト1030
を除去した。露光は800mJ/cm2 の露光量で行っ
た。
【0244】次に、(c)に示すように、両面のレジス
ト1030がパターニングされたSUS基板100を、
エッチング液(塩化第2鉄または塩化第2銅の水溶液)
に浸漬し、レジスト1030から露出している部分をエ
ッチングした後、レジストを剥離した。
【0245】次に、(d)に示すように、先の製造方法
の実施の形態と同様に、ヒータボード1上に、エッチン
グされたSUS基板100を位置決め固定して第2の液
流路16を有する液体吐出ヘッドを組み立てた。
【0246】本実施の形態の製法によれば、ヒータに対
し位置ズレのない精度の高い第2液流路16を形成する
ことができることに加え、SUSで流路を形成している
ため、酸やアルカリ性の液体に強く信頼性の高い液体吐
出ヘッドを提供することができる。
【0247】以上説明したように、本実施の形態の製造
方法によれば、素子基板上に予め第2液流路の壁を配設
することによって、電気熱変換体と第2液流路とが高精
度に位置決めすることが可能となる。また、切断、分離
前の基板上の多数の素子基板に対して第2の液流路を同
時に形成することができるので、多量に、かつ、低コス
トの液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0248】また、本実施の形態の製造方法の液体吐出
ヘッドの製造方法を実施することによって得られた液体
吐出ヘッドは、発熱体と第2液流路とが高精度に位置決
めされているので、電気熱変換体の発熱による発泡の圧
力を効率よく受けることができ、吐出効率に優れたもの
となる。
【0249】次に、本発明の液体吐出ヘッドの第7の実
施の形態につき説明する。この実施の形態は分離壁の両
表面部の撥液性能に関するものである。
【0250】図27は第2の液流路としての発泡液流路
をドライフィルムで作製した、複数の吐出口と液流路と
を有する液体吐出ヘッドを示し、(a)はその部分断面
斜視図であり、(b)は分離壁の一部分の断面図であ
る。図27(a)において、液体吐出ヘッドは発熱体2
が複数設けられた基板1と、前述の可動部材31を発熱
抵抗体に対応して持ち、第2の液流路16を区画する分
離壁30と、この分離壁30上に設けられ第1の液流路
14を構成する第1液流路壁22が設けられた溝付き部
材(天板)50とで構成されている。24は凸部、51
はオリフィスプレートである。分離壁30は、図27
(b)に示すように、第1領域に収納された第1液体で
ある吐出液(吐出用インク)と接する第1表面部30A
とこれと対向し、第2領域に収納された第2液体である
発泡液と接する第2表面部30Bとを有し、両表面部の
撥液性能を異ならせてある。第1表面部30Aおよび第
2表面部30Bは分離壁30と一体でも別部材でもよ
い。
【0251】本実施の形態においては、厚さ15μmの
ドライフィルム19を基板上に配し、パターニングする
ことで第2の液流路16を構成する流路壁を形成してい
る。しかし、流路壁の材質としては、これに限られるこ
となく、発泡液に対しての耐溶剤性があり、流路壁形状
を容易に形成できるものであればよい。そのような材質
として、上述のドライフィルムに加えて、液体レジス
ト,ポリサルフォン,ポリエチレン等の樹脂、金,シリ
コン,ニッケル等の金属、ガラスなどが挙げられる。
【0252】また、第1の液流路14等は、吐出口18
を有するオリフィスプレート51と第1の液流路14を
構成する液流路と、複数の第1の液流路14に共通に連
通し第1の液体をそれぞれの液流路に供給するための第
1の共通液室15を構成する凹部とを有する溝付天板5
0を分離壁30と接合することで形成した。
【0253】天板は従来のものに、発泡液体供給口と、
可動部材を有する分離壁を嵌め込むための凸部を有する
形状にすることができる。ただし、可動部材を有する分
離壁を固定するための天板形状としては、上述の構造に
限られるものではなく、可動部を有する分離壁を効果的
に仮止めできる形状であればよい。
【0254】可動部材を有する分離壁30は厚さ5μm
のニッケルで形成したが、分離壁を構成する材質は発泡
液と吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材として良
好に動作するための弾性を有し、微細なスリット35が
形成できるものであればよい。これらの材料としては、
ニッケル,金等の金属やポリエチレン等の樹脂が挙げら
れる。また、分離壁の厚さは、分離壁としての強度を達
成でき、可動部材として良好に動作するという観点から
その材質と形状等を考慮して決定すればよいが、大まか
に0.1μm〜10μmが望ましい。
【0255】また、可動部材を形成するためのスリット
の幅は本実施の形態では2μmとした。
【0256】スリット35の形成はエッチングやレーザ
光線の照射により行うことができる。
【0257】ヘッドの組み立ては図28に示すように行
われる。すなわち、上述のような天板50を逆さに固定
し、その上に可動部材を有する分離壁30を真空ポンプ
(不図示)を用いて設置し、マイクロ微調を行い位置決
めしてから、天板に嵌め込み、場合によっては接着剤で
仮止めする。この場合、分離壁30は可動部材を有する
ものでもよく、あるいは可動部材と発泡液流路および天
板の吐出液流路を位置決めするための溝が形成されたも
のでもよい。次いで、このように可動部材を有する分離
壁を嵌め込んだ天板を、従来の点接機を用いて、アルミ
ベースプレート240上に配されアルミワイヤでPCB
プリント基板241に接続された基板1上のエネルギー
発生素子2の位置をTVカメラ等によって得られた画像
上で計測すると共に所定の位置ステージに装着される天
板150を移動させながらその位置を同様に画像上で計
測し、これにより、エネルギー発生素子2と吐出口18
とを位置合わせし、押えバネ220にて天板105と基
板1とを圧着する。基板1は単なるヒータボードあるい
は発泡液流路付きヒータボードのいずれでもよい。
【0258】また、可動部材を有する分離壁は、発泡液
供給口(図22の213参照)を有する。本実施の形態
ではこの分離壁の発泡液供給口の径を0.8mm、天板
側の発泡液供給口(図22の21参照)の径を0.6m
mとしたが、天板側の発泡液供給口を可動部材を有する
分離壁の発泡液供給口より小さくしておくと、後で封止
剤を流した時に、供給口への封止剤流れ込みを防ぐこと
ができる。
【0259】また、第1の共通液室15および第2の共
通液室17(図30,図27参照)は、封止剤で周囲に
壁を作ることで気密性を保持している。
【0260】本実施の形態では、図27の形態のヘッド
を用いて、発泡液として上述のエタノールと水の混合液
を発泡液とし、吐出液として染料インク(2cP)、顔
料インク(15cP)、ポリエチレングリコール200
(55CP)、ポリエチレングリコール600(150
cP)をそれぞれ用い、電圧25V、2.5kHzで駆
動したところ良好な吐出が得られ、これらのインクの付
与によって良好な画質の記録物を得ることができた。
【0261】(製造方法の第4の実施の形態)図29に
第7の実施の形態によるインクジェット記録ヘッドの断
面図を示す。ヒータ2を有するヒータボード1上に、吐
出用インクを収納した第1の液流路14と発泡液を収納
した第2の液流路16とを分離し、かつ可動部材31を
具備した分離壁30と発泡液用流路壁23とが一体形成
され、この一体形成部材370を可動部材31がヒータ
2の直上に位置するように配置する。撥水剤380の塗
布された分離壁30上に吐出用インク流路(第1の液流
路)14および吐出口18とを予め形成した天板50を
配置し、押さえバネにてこれらを圧着しインクジェット
記録ヘッドを形成した。
【0262】本実施の形態においては、発泡液用流路壁
23と分離壁30とをニッケルの電鋳で一体形成(37
0)し、吐出用インク側に撥水剤380を塗布した。し
かし、これらに限定されたものではなく、レーザ加工、
エッチング、電鋳など、またはこれらの併用によって製
造しても構わない。また、発泡液流路と分離壁を別々に
形成し、接合しても構わない。材質に関しては、ニッケ
ルに限らず、耐溶剤性があり、可動部材31の機能を果
たすものであればよい。例えば、金属、プラスチックな
どの単独あるいは組み合わせでもよい。
【0263】形状、厚みに関しては、ヒータサイズおよ
び形状によって発泡時に可動部材の自由端がインク吐出
に必要なだけ変位するものであればよい。
【0264】本発明においては、可動部材の厚みを5μ
mで形成し、ヒータと可動部材との距離を15μmで形
成したが、十分な機能を果たすことができた。
【0265】撥水剤による撥水性能は撥水剤層の厚みに
ほとんどよらないが、撥水剤層の厚みは通常0.1μm
〜2μm程度で充分である。好ましくは0.1μm〜1
μmである。
【0266】図30に発泡液流路と分離壁を電鋳を繰り
返すことによって形成した例および撥水剤塗布方法を本
発明の液体吐出ヘッドの製造方法の、第4の実施の形態
として示す。
【0267】SUS基板400に発泡液流路となる部分
にレジスト410をパターニングし、15μm厚に形成
する(図30(a))。その後、電気メッキを行いニッ
ケル420を15μm成長させる(図30(b))。
【0268】次に、可動部材となる部分にレジスト43
0をパターニングし(図30(c))、同様にニッケル
440を5μm成長させる(図30(d))。かくて、
ニッケル板450が形成される。
【0269】メッキ終了後、SUS基板400とニッケ
ル板450とを剥がす前に、撥水剤460をニッケル板
450の表面の全面もしくは可動部材およびその周辺部
に塗布する(図30(e))。撥水剤としてサイトップ
(旭硝子社製)を使用したが、これに限らず、フッ素
系、シリコーン系など耐溶剤性があり、吐出用インクに
浸して劣化しないものであればよい。撥水剤塗布後、乾
燥させてから、レジストを除去し、SUS基板400と
ニッケル板450を剥がすと、第2の液流路16とスリ
ット35を有し、可動部材470を有する構造が得られ
る(図30(f))。
【0270】以上のようにして、発泡液流路側が撥液性
が低く、吐出用インク側が撥液性の高い発泡液流路−分
離壁一体部材を形成した。図31に、本実施の形態にお
けるインクジェット記録ヘッドの吐出口側からの断面図
を示す。ニッケル板450,撥水剤460,可動部材4
70はそれぞれ図29の370,380,31に対応す
る。流路壁490は図27(a)の流路壁22に対応す
る。この場合、ニッケルの水に対する接触角は0度で、
非常に濡れやすいのに対し、撥水剤(サイトップ)を塗
布することにより接触角は110度と増大し撥液性能が
高く、図中スリット部35においてメニスカスを保持し
易くなる。
【0271】よって、吐出用インクの可動部材形成のた
めのスリット部における発泡液室側への流入を防ぐこと
ができた。また、発泡液室側は撥液性能が低いので、発
泡液のリフィルが行い易く常に安定した吐出を得られ
た。
【0272】(製造方法の第5の実施の形態)次に、本
発明の液体吐出ヘッドの製造方法の第5の実施の形態を
説明する。
【0273】第7の実施の形態のインクジェット記録ヘ
ッドにおいて、図32に示すように、撥水剤塗布を可動
部材形成用のレジストのみを除去した後に行った。図3
2を参照しながら説明する。前実施の形態と同様に発泡
液流路−分離壁一体部材を形成する。まず、図30
(a)〜(d)に相当する工程を行う。SUS基板50
0に発泡液流路となる部分にレジスト510をパターニ
ングし、15μm厚に形成した後、電気メッキを行いニ
ッケルを15μm成長させ、次に可動部材を形成する部
分(可動部材を画成するスリットとなるべき部分)にレ
ジスト530をパターニングし、同様にニッケルを5μ
m成長させてニッケル板550とする(図32
(a))。次に時間調整を行いながら、可動部材形成用
のレジスト530のみを除去する(図32(b))。そ
して、図32(c)のように撥水剤(サイトップ、旭ガ
ラス)560を全面または可動部材およびその周辺部に
塗布する。このとき、可動部材形成のためのスリット部
の側面にも撥水剤560を塗布する。
【0274】撥水剤乾燥後、残りのレジストを除去し、
SUS基板とニッケル板を剥がすと、可動部570を有
し、第1の液流路に面する側およびスリット部35の側
面に撥水剤560の層を塗布形成し、第2の液流路16
とスリット部35を有する構造体を得た(図32
(d))。
【0275】図33に本実施の形態におけるインクジェ
ット記録ヘッドの吐出口側からの断面図を示す。ニッケ
ル板550,撥水剤560,可動部材570はそれぞれ
図29の370,380,31に対応する。流路壁59
0は図27(a)の流路壁22に対応する。可動部材形
成のためのスリット部35の側面にも撥水剤560を塗
布することにより、スリット幅をさらに狭くすることが
可能となり、よりメニスカスを保持しやすくなる。
【0276】したがって、吐出用インクの発泡液室側へ
の流入をさらに効果的に防止することができた。また、
発泡液のリフィルが行いやすく、常に安定した吐出が得
られた。
【0277】(製造方法の第6の実施の形態)本実施の
形態は、第7の実施の形態のインクジェット記録ヘッド
において、可動部材を具備する分離壁を撥液性能の異な
る2部材によって形成した例である。本実施の形態にお
いては水に対する接触角の異なる2部材、ポリサルフォ
ンとニッケルを用いた(ポリサルフォンの水に対する接
触角は70度、ニッケルの水に対する接触角は0度であ
る)。ポリサルフォンが吐出用インク側、ニッケルが発
泡液側になるように形成した。
【0278】図34にその工程を示す。まず、レジスト
を用いて図30(a)〜(d)のようにニッケルの電鋳
を2回行い、次いでレジストを除去してSUS基板から
ニッケル板を剥がして発泡液流路−分離壁一体部材61
0を形成する(図34(a))。その分離壁部分上にポ
リサルフォン620の薄膜をラミネートし、ニッケル側
からレーザ光を照射する(図34(b))。ニッケルが
レーザマスク代わりになり、ポリサルフォン620のレ
ーザ加工が行われ、スリット35が開けられ、可動部材
部分630を有する2部材からなる分離壁640が形成
される(図34(c))。このようにして得られた分離
壁640をヒータ2を有するヒータボード1上に可動部
材3130がヒータ2の真上になるように位置合わせし
て配置し接合する。
【0279】本工程においては、ニッケル板610上に
ポリサルフォン620の薄膜をラミネートし、ニッケル
板610をレーザマスクとしてレーザ加工をするため、
2部材の位置合わせが不要であり、2部材の接合が容易
に行われる。さらに、ニッケル板610をそのままレー
ザマスクとして使用するため、ポリサルフォンのレーザ
加工のためのレーザマスクを特別に作製する必要がな
く、また、正確にレーザ加工することができる。
【0280】本実施の形態では、撥液性能の異なる2部
材にポリサルフォンとニッケルを用いたが、これに限定
されるものでなく、それぞれ耐溶剤性があり、可動部材
の機能を果たすものであれば、金属、プラスチックなど
のいかなる組み合わせでも構わない。製造方法も特に限
定されるものでなく、エッチング、電鋳、レーザ加工な
ど、またはこれらの併用でも構わない。
【0281】2部材の接合方法も特に限定されたもので
なく、接着、熱溶着、超音波溶着などいかなる手段を用
いても構わない。
【0282】図34(d)に本実施の形態におけるイン
クジェット記録ヘッドの吐出口側からの断面図を示す。
図中、分離壁640,可動部材630,ポリサルフォン
620はそれぞれ図29の370,360,380に対
応する。66は図27(a)の流路壁15に対応する。
この場合、ニッケルの水に対する接触角は0度で、非常
に濡れやすいのに対し、撥水剤(ポリサルフォン)を塗
布することにより接触角は70度と増大し撥液性能が高
く、図中スリット部35においてメニスカスを保持し易
くなる。
【0283】よって、吐出用インクの可動部材形成のた
めのスリット部における発泡液室側への流入を防ぐこと
ができた。また、発泡液室側は撥液性能が低いので、発
泡液のリフィルが行い易く常に安定した吐出を得られ
た。
【0284】上記構成において、吐出用インク側の接触
角が大きく、スリット部35においてメニスカスを保持
しやすく、吐出用インクの発泡液室側への流入を防止す
ることができた。また、発泡液側の面は接触角が小さ
く、発泡液のリフィルが行いやすく、常に安定した吐出
が得られた。
【0285】(製造方法の第7の実施の形態)図35を
参照しながら本発明の製造方法の第7の実施の形態に従
うインクジェット記録ヘッドについて説明する。前実施
の形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、可動部材
を具備する分離壁の第1領域(吐出用インク)側に、分
離壁よりも撥液性能の高い部材をメッキした。本実施の
形態においては、ヒーター2を有するヒーターボード1
上に吐出用インクを収納する第1領域(第1の液流路1
4)と発泡液を収納する第2領域(第2の液流路16)
を区分する分離壁750を、前実施の形態の図32
(a),(b)および(d)に示す工程((c)の撥水
剤塗布工程は除く)と同様にしてニッケルを用い電鋳で
可動部材を有するニッケル板750を形成し、吐出用イ
ンク側になる面およびスリット部の側面にニッケルより
も撥液性の高い金760をメッキした(図35)(ニッ
ケルに対する水の接触角は0度、金に対する水の接触角
は85度である)。これに第1の液流路14を形成した
オリフィスプレートを取り付ける。790は流路壁であ
る。スリット部35により可動部材770が画成されて
いる。
【0286】分離壁はニッケルの電鋳で形成したが、こ
れに限定されたものでなく、耐溶剤性があり、可動部材
の機能を果たすものであれば、金属、プラスチックなど
の単独あるいは組み合わせでもよい。また、電鋳、エッ
チング、レーザ加工などいかなる手段で形成しても構わ
ない。
【0287】メッキする部材もこれに限定されたもので
なく、分離壁の材質によってそれよりも撥液性の高く、
耐溶剤性があれば、いかなるものでも構わない。
【0288】上記構成において、吐出用インク側の撥液
性が高く、メニスカスを保持しやすくなり、吐出用イン
クの発泡液室側への流入を防止することができた。ま
た、発泡液側は撥液性が低いため、発泡液のリフィルが
行いやすく常に安定した吐出が得られた。
【0289】(製造方法の第8の実施の形態)図36を
参照しながら本発明の製造方法の第8の実施の形態に従
うインクジェット記録ヘッドを説明する。上述の実施の
形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、可動部材を
具備する分離壁の第2領域(発泡液)側に、分離壁(ニ
ッケル板)750よりも撥液性の低い部材(金)760
をメッキした。これに対して、本実施の形態において
は、図36に示すようにヒーター2を有するヒーターボ
ード1上に、前実施の形態の図34(a)〜(c)と同
様の工程でポリサルフォンをレーザ加工して作製された
分離壁850を配置し、発泡液側になる面にポリサルフ
ォンよりも撥液性能の低いニッケル860をメッキした
(ポリサルフォンに対する水の接触角は70度、ニッケ
ルに対する水の接触角は0度である)。これに第1の液
流路14を形成したオリフィスプレートを取り付ける。
890は流路壁である。
【0290】分離壁850はポリサルフォンをレーザ加
工することによって形成したが、これに限定されたもの
でなく、耐溶剤性があり、可動部材の機能を果たすもの
であれば、金属、プラスチックなどの単独あるいは組み
合わせでもよい。また、電鋳、エッチング、レーザ加工
などいかなる手段で形成しても構わない。メッキする部
材もこれに限定されたものでなく、分離壁の材質によっ
てそれよりも撥液性能の低いものであり、耐溶剤性があ
れば、いかなるものでも構わない。
【0291】上記構成において、吐出用インクの発泡液
室側への流入を防止することができた。また、発泡液の
リフィルも行いやすく、常に安定した吐出が得られた。
【0292】(製造方法の第9の実施の形態)図37を
参照しながら本発明の製造方法の第9の実施の形態に従
うインクジェット記録ヘッドを説明する。前実施の形態
のインクジェット記録ヘッドにおいて、可動部材を具備
する分離壁の第2領域(発泡液)側の表面を粗した(図
37)。本実施の形態においては、ポリサルフォンで形
成した分離壁950の発泡液側の表面をレーザによって
表面を粗して粗面化面960とし撥液性能を低下させ
た。この分離壁950を図37に示すようにヒーター2
を有するヒーターボード1上に配置し、これに第1の液
流路14を形成したオリフィスプレートを取り付ける。
990は流路壁である。
【0293】表面を粗すことにより毛管力が働き、液の
リフィルが行い易くなった。分離壁はポリサルフォンで
形成したが、これに限定されたものでなく、耐溶剤性が
あり、可動部材の機能を果たすものであればよく、金
属、プラスチックなどの単独あるいは組み合わせでもよ
い。形成方法も特に限定されるものでなく、電鋳、エッ
チング、レーザ加工などいかなる手段を用いても構わな
い。
【0294】上記構成において、発泡液のリフィルが行
いやすく、常に安定した吐出が得られた。
【0295】以下に先の実施の形態で説明した液流路構
造および分離壁構造を有する液体吐出ヘッド、ヘッドカ
ートリッジ、液体吐出装置を説明する。
【0296】図38は、図27で示した液体吐出ヘッド
1600とこの液体吐出ヘッド1600に供給するため
の液体(発泡液と吐出液が異なる場合は2種類の液体)
を保持するインク容器とを有するヘッドカートリッジ1
700を示している。なお、このインク容器は、インク
消費後に、インクを再充填して使用することが可能であ
る。
【0297】図39は、前述の液体噴射ヘッドを搭載し
た液体吐出装置の概略構成を示している。本実施の形態
の液体吐出装置のキャリッジHCは、液体タンク部17
0と液体吐出ヘッド部160とが着脱可能なヘッドカー
トリッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送さ
れる被記録媒体1800の幅方向に矢印a,bで示すよ
うに往復移動する。
【0298】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。
【0299】また、本実施の形態の液体吐出装置におい
ては、被記録媒体搬送手段とキャリッジHCを駆動する
ための駆動源としてのモータ181、駆動源からの動力
をキャリッジHCに伝えるためのギア182,183、
キャリッジ軸185を等を有している。この記録装置お
よびこの記録装置で行う液体吐出方法によって、各種の
被記録媒体に液体を吐出することで良好な画像の記録物
を得ることができた。
【0300】図40は、本発明の被記録媒体1800の
記録可能領域にわたって複数の吐出口が配されたいわゆ
るフルラインヘッドおよび装置の概略図を示している。
本図では1610がフルラインヘッドを示しており、被
記録媒体1800に移行する位置に配されている。19
00は被記録媒体搬送手段としての搬送ドラムである。
【0301】以上、本発明の実施の形態を説明したが、
吐出する液体として記録に用いられるインクを使用する
ことで、本発明の液体吐出ヘッド、液体吐出装置のそれ
ぞれが、インク吐出記録ヘッド、インク吐出記録装置に
対応することはいうまでもない。
【0302】このような記録装置としては、各種の紙や
OHPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コン
パクトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラス
チック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装
置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行
う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミ
ックス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対
して記録を行う記録装置等が含まれる。
【0303】また、これらの液体吐出装置に用いる吐出
液としては、それぞれの被記録媒体や記録条件に合わせ
た液体を用いればよい。
【0304】本発明は、上述したようなヒータ面に沿う
方向に設けられた流路の一端に吐出口を有する、いわゆ
るエッジシュータタイプのヘッドに限定されることな
く、例えば図41に示すようなヒータ面に対向する位置
に吐出口を有する、いわゆるサイドシュータタイプのヘ
ッドにも適用可能である。
【0305】図41に示したサイドシュータタイプの液
体吐出ヘッドは、各吐出口ごとに、液体に気泡を発生さ
せるための熱エネルギを与える発熱体2が設けられた基
板1上に、発泡液用の第2の液流路16が形成され、そ
の上に溝付き天板50に設けられた吐出口18に直接連
通した吐出液用の第1の液流路14が形成され、第1の
液流路14と第2の液流路16とは、金属等の弾性を有
する材料で構成された分離壁30により区分されている
点で、上述のエッジシュータタイプの液体吐出ヘッドと
同様である。
【0306】サイドシュータタイプの液体吐出ヘッド
は、上記第1の液流路14上に配された溝付き天板(オ
リフィスプレート)50のうち、発熱体2の直上の部分
に吐出口18が設けられている点に特徴がある。この吐
出口18と発熱体2との間の分離壁30には、観音開き
に開口する一対の可動部材31が設けられている。すな
わち、両可動部材31は支点部31bで支持される片持
梁形状のもので、両方の自由端31a同士は、非吐出時
においては、吐出口18の中央部分の直下に位置するス
リット31Cにより僅かに離間して対向している。吐出
時においては、両可動部31は、図41中の矢印で示す
ように、気泡発生領域Bにおける発泡液の発泡によって
第1の液流路14側に開口し、発泡液の収縮によって閉
口する。この領域Aには、後述の吐出液タンクから吐出
液がリフィルされて吐出可能状態となり、次の発泡液の
発泡に備えることができる。
【0307】第1の液流路14は、他の吐出口18の第
1の液流路と共に、第1の共通液室15を介して吐出液
を貯留するタンク(図示略)に連絡しており、第2の液
流路16も、他の吐出口18の第2の液流路と共に、第
2の共通液室17を介して発泡液を貯留するタンク(図
示略)に連絡している。
【0308】このような構成を有するサイドシュータタ
イプの液体吐出ヘッドにおいても、エッジシュータタイ
プのヘッドとほぼ同様に、吐出液のリフィルを向上させ
つつ、高吐出エネルギー効率、高吐出圧で液体を吐出す
ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0309】また、製造方法については、天板に設けら
れる吐出口の位置が異なることと共通液室15,17の
位置と構造が異なること以外は、エッジシュータタイプ
のヘッドの場合と実質的に同じである。すなわち、可動
部材を有する分離壁30と第2の液流路16を構成する
流路壁との関係は両者とも同じである。
【0310】[ヘッドカートリッジ構成]以下に上述し
た本発明の液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射ヘッドカ
ートリッジの概略説明を行う。図42は、液体噴射ヘッ
ドカートリッジの模式的分解斜視図であり、液体噴射ヘ
ッドカートリッジは、主に液体噴射ヘッド部200と液
体容器520で構成されている。
【0311】液体噴射ヘッド部200は、素子基板1、
分離壁30、溝付き部材50、押さえバネ220、液体
供給部材230、支持体240等から成っている。
【0312】素子基板1には、前述のように発泡液に熱
を与えるための発熱抵抗体が複数個列状に設けられてお
り、また、この発熱抵抗体を選択的に駆動するための機
能素子が複数設けられている。この素子基板1と可動部
を持つ前述の分離壁30との間に発泡液路が形成され発
泡液が流通する。この分離壁30と溝付き部材50との
接合によって、吐出される吐出液体が流通する吐出流路
(不図示)が形成される。
【0313】押さえバネ220は、溝付き部材50に素
子基板1方向への付勢力を作用させる部材であり、この
付勢力により素子基板1、分離壁30、溝付き部材50
と、後述する支持部材240とを良好に一体化させてい
る。
【0314】支持体240は、素子基板1等を支持する
ためのものであり、この支持体240上にはさらに素子
基板に接続し電気信号を供給するための回路基板241
や、装置側と接続することで装置側と電気信号のやりと
りを行うためのコンタクトパッド242が配置されてい
る。
【0315】液体容器520は、液体噴射ヘッドに供給
される、インク等の吐出液体と気泡を発生させるための
発泡液とを内部に収容している。液体容器の外側には、
液体噴射ヘッドと液体容器との接続を行う位置決め部5
24と固定するための固定軸525が設けられている。
吐出液体の供給は、液体容器の吐出液体供給路522か
ら液体供給部材の吐出液体供給路231に供給され、各
部材の吐出液体供給口233,221,211を介して
第1の液室に供給される。発泡液の供給も同様に、液体
容器の供給路523から液体供給部材230の発泡液供
給路232に供給され、各部材の発泡液体供給口23
4,221,212を介して第2の液室に供給される。
【0316】以上の液体吐出ヘッドカートリッジにおい
ては、発泡液と吐出液が異なる液体である場合も、供給
を行いうる供給形態および液体容器で説明したが、吐出
液体と発泡液体とが同じである場合には、発泡液と吐出
液の供給経路および容器を分けなくてもよい。
【0317】なお、この液体容器には、各液体の消費後
に液体を再充填して使用してもよい。このためには液体
容器に液体注入口を設けておくことが望ましい。又、液
体吐出ヘッドと液体容器とは一体であってもよく、分離
可能としてもよい。
【0318】図43は、本発明の液体吐出方法および液
体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録装置を動作させ
るための装置全体のブロック図である。
【0319】記録装置は、ホストコンピュータ300よ
り印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装
置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると
同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘ
ッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力され
る。CPU302はROM303に保存されている制御
プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデ
ータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、
印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0320】またCPU302は前記画像データを記録
用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同
期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モー
タを駆動するための駆動データを作る。画像データおよ
びモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、
モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動
モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミン
グで駆動され画像を形成する。
【0321】上述のような記録装置に適用でき、インク
等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、前述の
ように、各種の紙やOHPシート、コンパクトディスク
や装飾板等に用いられるプラスチック材、布帛、アルミ
ニュウムや銅等の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮
革材、木、合板等の木材、竹材、タイル等のセラミック
ス材、スポンジ等の三次元構造体等を対象とすることが
できる。
【0322】また上述の記録装置として、各種の紙やO
HPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパ
クトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチ
ック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、
皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木
材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミック
ス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して
記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等を
も含むものである。
【0323】またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液
としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体
を用いればよい。
【0324】[液体吐出ヘッド産業用装置・インクジェ
ット記録システム]次に、本発明の液体噴射装置によっ
て被記録媒体に対して記録を行う、インクジェット記録
システムの一例を説明する。
【0325】図44は、前述した本発明の液体噴射ヘッ
ド1201を用いたインクジェット記録システムの構成
を説明するための模式図である。本実施例における液体
噴射ヘッドは、被記録媒体1227の記録幅に対応した
長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフルラ
イン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ
(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応
した4つのヘッドをホルダ1202によりX方向に所定
の間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0326】これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号
供給手段を構成するヘッドドライバ1220から信号が
供給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成され
る。
【0327】各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,
Bkの4色のインクがそれぞれ1204a〜1204d
のインク容器から供給されている。なお、符号1204
eは発泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器か
ら各ヘッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0328】また、各ヘッドの下方には、内部にスポン
ジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ120
3a〜1203dが設けられており、非記録時に各ヘッ
ドの吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができ
る。
【0329】符号1206は、先の各実施例で説明した
ような各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構
成する搬送ベルトである。搬送ベルト1206は、各種
ローラにより所定の経路に引き回されており、モータド
ライバ1221に接続された駆動用ローラにより駆動さ
れる。
【0330】本実施例のインクジェット記録システムに
おいては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種の
処理を行う前処理装置1251および後処理装置125
2をそれぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けて
いる。
【0331】前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体
の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なる
が、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被
記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの
照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着
性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の
静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によ
ってその表面にごみが付着しやすく、このごみによって
良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理
としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去
することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。
また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防
止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、
水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチ
オ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理とし
て行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記
録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であって
もよい。
【0332】一方、後処理は、インクが付与された被記
録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定
着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残っ
た処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0333】なお、本実施例では、ヘッドとしてフルラ
インヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述し
たような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送して
記録を行う形態のものであってもよい。
【0334】さらに、上述した実施例は、可動部材を気
泡発生時の圧力に応じて変位せしめる最も合理的な構成
例であるが、本発明は、可動部材をわずかに変位せしめ
る別の手段によって移動せしめるか、あるいは、この手
段によって先行して移動させつつ気泡生成時の圧力波に
よって移動せしめるようにしても良い。この別の手段と
しては、バイメタル構造の可動部材とし、これを駆動し
て変位させる手段等、多くの可動部材変位手段を利用す
ることができる。
【0335】
【発明の効果】上述したような、可動部材を用いる新規
な吐出原理に基づく本発明の液体吐出方法、ヘッド等に
よると、発生する気泡とこれによって変位した後、戻り
変位する可動部材との相乗効果を得ることができ、吐出
口近傍の液体を高速で方向性よく吐出できるため、従来
のバブルジェット方式の吐出方法、ヘッド等に比べてリ
フィル周波数を高くすることができ、さらに、被記録媒
体への着弾精度が向上し、高画質が得られる。
【0336】そして、特に、本発明の可動部材の自由端
の変位開始が、気泡が可動部材に接する前に生じるとす
る発明は、可動部材の弾性係数や吐出液体および発泡液
体の圧力伝達性能や気泡形成用の駆動条件あるいは各液
路構造等の相互のバランスを考慮することで実施され、
弾性変形し易く、圧力伝達し易く、気泡成長速度が速い
程、また、(可動部材の移動に対する)流路抵抗が小さ
い程、得易いものである。この発明では、気泡発生時の
圧力波が吐出口側に導かれることになるので、追従して
くる気泡の成長が吐出口側に向かって、より確実、か
つ、効率よく案内できる。
【0337】また、本発明の可動部材降下状態で初めて
成長する気泡と実質的に接触する発明は、前記可動部材
の弾性係数が大きい程生じ易い。この発明では、成長状
態の気泡を降下する可動部材によって一層規制すること
ができ、吐出口側への気泡の成長をより確実なものにで
きる。従って、本発明にとって、前者と後者との総合
は、より一層優れた発明となることは理解できよう。
【0338】また、可動部材を具備した分離壁の吐出用
インク側の面の撥液性能を高くし、発泡液側の面の撥液
性能を低くした本発明の特徴的な構成によれば、吐出用
インクが発泡液室側に流入するのを防止し、また、発泡
液のリフィルを行い易くして、常に安定した記録を行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す模式断面
図である。
【図2】本発明の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図であ
る。
【図3】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示
す模式図である。
【図4】本発明のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を
示す模式図である。
【図5】本発明の液体の流れを説明するための模式図で
ある。
【図6】本発明の第2の実施の形態における液体吐出ヘ
ッドの部分破断斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態における液体吐出ヘ
ッドの部分破断斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態における液体吐出ヘ
ッドの断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態における液体吐出ヘ
ッドの模式断面図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態における液体吐出
ヘッド(2流路)の断面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態における液体吐出
ヘッドの部分破断斜視図である。
【図12】可動部材の動作を説明するための図である。
【図13】可動部材と第1液流路の構造を説明するため
の図である。
【図14】可動部材と液流路の構造を説明するための図
である。
【図15】可動部材の他の形状を説明するための図であ
る。
【図16】発熱体面積とインク吐出量の関係を示す図で
ある。
【図17】可動部材と発熱体との配置関係を示す図であ
る。
【図18】発熱体のエッジと支点までの距離と可動部材
の変位量の関係を示す図である。
【図19】発熱体と可動部材との配置関係を説明するた
めの図である。
【図20】本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図である。
【図21】駆動パルスの形状を示す模式図である。
【図22】本発明の液体吐出ヘッドの供給路を説明する
ための断面図である。
【図23】本発明の液体吐出ヘッドの分解斜視図であ
る。
【図24】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明す
るための工程図である。
【図25】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明す
るための工程図である。
【図26】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明す
るための工程図である。
【図27】本発明の複数の液流路を液体吐出ヘッドを示
し、(a)はその部分破断斜視図、(b)は分離壁の一
部断面図である。
【図28】本発明のヘッドの組立図である。
【図29】発泡液流路を一体で作製した本発明の液体吐
出ヘッドの部分断面図である。
【図30】発泡液流路と撥水性能が両面で異なる分離壁
を電鋳を繰り返すことにより形成する分離壁作製工程を
示す模式的断面図であり、(a)は発泡液流路および可
動部材を形成する部分をレジストで形成した段階、
(b)はニッケル板(ニッケルメッキ1層目)を形成し
た段階、(c)はスリットを形成する部分にレジストを
設けた段階、(d)はニッケル板(ニッケルメッキ2層
目)を形成した段階、(e)はニッケル板上の吐出液側
に撥水剤を塗布した段階、(f)はレジストを除去し、
基板とニッケル板を剥がした段階、をそれぞれ示す。
【図31】図30の工程によるインクジェット記録ヘッ
ドを吐出口側から見た断面図である。
【図32】分離壁の他の作製工程を説明する模式的断面
図であり、(a)は発泡液流路−分離壁−一体部材を形
成した段階、(b)は可動部材形成用のレジストのみを
除去した段階、(c)は撥水剤を塗布した段階、(d)
は基板とニッケル板を剥がした状態、をそれぞれ示す。
【図33】図32の工程によるインクジェット記録ヘッ
ドを吐出口側から見た断面図である。
【図34】分離壁のさらに他の作製工程を説明する模式
的断面図であり、(a)は発泡液流路−分離壁−一体部
材を形成した段階、(b)はポリサルフォン層を形成
し、レーザ光を照射した段階、(c)可動部材を形成し
た段階、(d)は上記工程によるインクジェット記録ヘ
ッドを吐出口側から見た状態、をそれぞれ示す。
【図35】他の作製工程によるインクジェット記録ヘッ
ドを吐出口側から見た断面図である。
【図36】さらに他の作製工程によるインクジェット記
録ヘッドを吐出口側から見た断面図である。
【図37】さらに他の作製工程によるインクジェット記
録ヘッドを吐出口側から見た断面図である。
【図38】本発明のヘッドカートリッジの斜視図であ
る。
【図39】本発明の液体吐出装置の一例を示すための模
式的斜視図である。
【図40】本発明のフルラインヘッドを説明するための
模式的斜視図である。
【図41】サイドシュータタイプヘッドの流路構造を説
明するための図である。
【図42】本発明の液体吐出ヘッドカートリッジの一実
施例を示す模式的分解斜視図である。
【図43】本発明の液体吐出装置の制御構成を示すブロ
ック図である。
【図44】本発明の液体吐出装置の一実施例によって記
録を行うためのインクジェット記録システムの一例を示
す概略斜視図である。
【図45】従来技術のヘッドの流路構造を説明するため
の図であって、(a)は斜視図であり、(b)は(a)
のb−b′線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 素子基板 2 発熱体 3 面積中心 10 液流路 11 気泡発生領域 12 供給路 13 共通液室 14 第1液流路 15 第1共通液室 16 第2液流路 17 第2共通液室 18 吐出口 19 狭窄部 20 第1供給路 21 第2供給路 22 第1液流路壁 23 第2液流路壁 24 凸部 30 分離壁 31 可動部材 32 自由端 33 支点 34 支持部材 35 スリット 36 気泡発生領域前壁 37 気泡発生領域側壁 40 気泡 45 液滴 50 溝付き部材(天板) 51 オリフィスプレート 70 、240 支持体(アルミベースプレート) 71 共通液室枠 72 第2流路壁 80 供給部材 200 液体噴射ヘッド部 220 押さえバネ 241 プリント配線基板 242 コンタクトパッド 380、460、560 撥液剤 400、500 SUS基板
フロントページの続き (72)発明者 吉平 文 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 工藤 清光 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 木村 牧子 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 石永 博之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−31918(JP,A) 特開 平5−124189(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05

Claims (30)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気泡発生領域に気泡を発生させるための
    発熱体と、気泡発生領域に面して配され、液体の流れ方
    向の下流側に自由端を持つ可動部材と、前記発熱体の上
    流に発熱体と実質的に平坦につながる内壁を持つ液体供
    給路と、を有する液体吐出へッドを用い、前記気泡発生
    領域に気泡を発生させることで生じる圧力に基づいて、
    前記可動部材の自由端を変位させ、該可動部材によって
    前記圧力を吐出口側に導くことで、前記吐出口から液体
    を吐出する液体吐出方法であって、 前記気泡発生領域に対して実質的に密閉状態を形成して
    いる前記可動部材の自由端を、該可動部材と前記気泡と
    が非接触状態のまま気泡形成に伴う圧力波を前記吐出口
    側に誘導すべく、変位させる工程を有することを特徴と
    する液体吐出方法。
  2. 【請求項2】 前記気泡発生領域で形成され、体積膨張
    しているあるいは吐出口方向へ案内されている気泡に対
    して、変位後自然状態に向かって移動している可動部材
    が初めて実質的に接触する工程を有することを特徴とす
    る請求項1に記載の液体吐出方法。
  3. 【請求項3】 前記可動部材の前記気泡発生領域に面す
    る面と他の面とは撥液性が異なることを特徴とする請求
    項1または2に記載の液体吐出方法。
  4. 【請求項4】 前記可動部材の他の面が前記気泡発生領
    域に面する面よりも撥液性能が高いことを特徴とする請
    求項3に記載の液体吐出方法。
  5. 【請求項5】 前記可動部材の前記他の面は撥水剤層を
    有することを特徴とする請求項3または4に記載の液体
    吐出方法。
  6. 【請求項6】 前記可動部材が撥液性能の異なる2部材
    から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の
    液体吐出方法。
  7. 【請求項7】 前記2部材から構成されている可動部材
    うち前記他の面側の可動部材は前記気泡発生領域に面
    する側の可動部材よりも撥液性能高い部材の層であ
    ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出方法。
  8. 【請求項8】 前記2部材から構成されている可動部材
    うち前記気泡発生領域に面する側の可動部材は前記
    の面側の可動部材よりも撥液性低い部材の層であるこ
    とを特徴とする請求項6に記載の液体吐出方法。
  9. 【請求項9】 前記可動部材の前記気泡発生領域に面す
    る側の表面が前記他の面側の表面よりも粗面化されてい
    ることを特徴とする請求項3または4に記載の液体吐出
    方法。
  10. 【請求項10】 吐出口に連通する第1の液流路と、該
    第1の液流路に隣接して配され気泡発生領域を有する第
    2の液流路と、該気泡発生領域に気泡を発生させるため
    の発熱体と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液
    流路と前記第2の液流路の前記気泡発生領域との間に配
    された可動部材と、を備え、前記第2液流路が、前記発
    熱体の上流に発熱体と実質的に平坦につながる内壁を持
    つ液体供給路を有する液体吐出へッドを用い、前記気泡
    発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生に伴う圧力に
    基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液流路側に
    変位させて、液体を吐出する液体吐出方法であって、 前記気泡発生領域に対して実質的に密閉状態を形成して
    いる前記可動部材の自由端を、該可動部材と前記気泡と
    が非接触状態のまま気泡形成に伴う圧力波を前記吐出口
    側に誘導すべく、変位させる工程を有することを特徴と
    する液体吐出方法。
  11. 【請求項11】 前記気泡発生領域で形成され、体積膨
    張しているあるいは吐出口方向へ案内されている気泡に
    対して、変位後自然状態に向かって移動している可動部
    材が初めて実質的に接触する工程を有することを特徴と
    する請求項10に記載の液体吐出方法。
  12. 【請求項12】 前記可動部材の前記気泡発生領域に面
    する面と他の面とは撥液性が異なることを特徴とする請
    求項10または11に記載の液体吐出方法。
  13. 【請求項13】 前記可動部材の前記第1の液流路側の
    面が前記第2の液流路側の面よりも撥液性能が高いこと
    を特徴とする請求項12に記載の液体吐出方法。
  14. 【請求項14】 前記可動部材の前記第1の液流路側の
    面は撥水剤層を有することを特徴とする請求項12また
    は13に記載の液体吐出方法。
  15. 【請求項15】 前記可動部材が撥液性能の異なる2部
    材から構成されていることを特徴とする請求項14に記
    載の液体吐出方法。
  16. 【請求項16】 前記2部材から構成されている可動部
    材のうち前記第1の液流路側の可動部材は前記第2の液
    流路側の可動部材よりも撥液性能が高い部材の層であ
    ことを特徴とする請求項15に記載の液体吐出方法。
  17. 【請求項17】 前記2部材から構成されている可動部
    材のうち前記第2の液流路側の可動部材は前記第1の液
    流路側の可動部材よりも撥液性が低い部材の層であるこ
    とを特徴とする請求項15に記載の液体吐出方法。
  18. 【請求項18】 前記可動部材の第2の液流路側の表面
    が前記第1の液流路側の表面よりも粗面化されているこ
    とを特徴とする請求項10または11に記載の液体吐出
    方法。
  19. 【請求項19】 気泡発生領域に気泡を発生させるため
    の発熱体と、気泡発生領域に面して配され、液体の流れ
    方向の下流側に自由端を持つ可動部材と、前記発熱体の
    上流に発熱体と実質的に平坦につながる内壁を持つ液体
    供給路と、を有する液体吐出へッドを用い、前記気泡発
    生領域に気泡を発生させることで生じる圧力に基づい
    て、前記可動部材の自由端を変位させ、該可動部材によ
    って前記圧力を吐出口側に導くことで、前記吐出口から
    液体を吐出する液体吐出方法であって、 前記気泡発生領域で形成され、体積膨張しているあるい
    は吐出口方向へ案内されている気泡に対して、変位後自
    然状態に向かって移動している可動部材が初めて実質的
    に接触する工程を有することを特徴とする液体吐出方
    法。
  20. 【請求項20】 吐出口に連通する第1の液流路と、該
    第1の液流路に隣接して配され気泡発生領域を有する第
    2の液流路と、該気泡発生領域に気泡を発生させるため
    の発熱体と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液
    流路と前記第2の液流路の前記気泡発生領域との間に配
    された可動部材と、を備え、前記第2液流路が、前記発
    熱体の上流に発熱体と実質的に平坦につながる内壁を持
    つ液体供給路を有する液体吐出へッドを用い、前記気泡
    発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生に伴う圧力に
    基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液流路側に
    変位させて、液体を吐出する液体吐出方法であって、 前記気泡発生領域で形成され、体積膨張している、ある
    いは、吐出口方向へ案内されている気泡に対して、変位
    後自然状態に向かって移動している可動部材が初めて実
    質的に接触する工程を有することを特徴とする液体吐出
    方法。
  21. 【請求項21】 前記可動部材の前記気泡発生領域に面
    する面と他の面とは撥液性が異なることを特徴とする請
    求項19または20に記載の液体吐出方法。
  22. 【請求項22】 前記可動部材の他の面が前記気泡発生
    領域に面する面よりも撥液性能が高いことを特徴とする
    請求項21に記載の液体吐出方法。
  23. 【請求項23】 前記可動部材の前記他の面は撥水剤層
    を有することを特徴とする請求項21または22に記載
    の液体吐出方法。
  24. 【請求項24】 前記可動部材が撥液性能の異なる2部
    材から構成されていることを特徴とする請求項21に記
    載の液体吐出方法。
  25. 【請求項25】 前記2部材から構成されている可動部
    材のうち前記他の面側の可動部材は前記気泡発生領域に
    面する側の可動部材よりも撥液性能高い部材の層であ
    ることを特徴とする請求項24に記載の液体吐出方法。
  26. 【請求項26】 前記2部材から構成されている可動部
    材のうち前記気泡発生領域に面する側の可動部材は前記
    他の面側の可動部材よりも撥液性低い部材の層であ
    ことを特徴とする請求項24に記載の液体吐出方法。
  27. 【請求項27】 前記可動部材の前記気泡発生領域に面
    する側の表面が前記他の面側の表面よりも粗面化されて
    いることを特徴とする請求項20または21に記載の液
    体吐出方法。
  28. 【請求項28】 発熱体が発生した熱を液体に伝えるこ
    とで、液体に膜沸騰現象を生じさせ、該膜沸騰現象によ
    って前記気泡の発生が成されることを特徴とする請求項
    1ないし27のいずれかに記載の液体吐出方法。
  29. 【請求項29】 前記可動部材の変位に伴って、前記気
    泡発生領域で発生した気泡が第1の液流路中に延在する
    ことを特徴とする請求項1ないし28のいずれかに記載
    の液体吐出方法。
  30. 【請求項30】 前記第2の液流路には、前記第1の液
    流路に供給される液体と異なる液体であり、前記第1の
    液流路に供給される液体に対して、低粘度性、発泡性、
    熱安定性の少なくとも1つの性質で優れている液体が供
    給されることを特徴とする請求項10ないし18および
    20ないし29のいずれかに記載の液体吐出方法。
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