JP3710206B2 - 液体吐出ヘッド、液体吐出装置、および記録方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出装置、および記録方法 Download PDF

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    • B41J2/14048Movable member in the chamber

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッド液体吐出装置および記録方法に関する。
【0002】
特に本発明は、複数の基板または(および)複数の分離壁を有する液体吐出ヘッド、該液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置および記録方法に関する。
【0003】
また本発明は紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に対し記録を行うプリンター、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明である。
【0004】
なお、本発明における、「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0005】
【従来の技術】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。このバブルジェット記録方法を用いる記録装置には、米国特許第4,723,129号等の公報に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が一般的に配されている。
【0006】
この様な記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができると共に、この記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができるため、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができるという多くの優れた点を有している。このため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンター、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0007】
このようにバブルジェット技術が多方面の製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近年さらにたかまっている。
【0008】
例えば、エネルギー効率の向上の要求に対する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0009】
また、高画質な画像を得るために、インクの吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したものも提案されている。
【0010】
この流路形状の内、流路構造として図38(a),(b)に示すものが、特開昭63−199972号公報等に記載されている。この公報に記載されている流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0011】
図38、(a),(b)に示す発明は、基板400上発熱素子402が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱素子402に関して吐出口411とは反対側に位置する弁410を開示する。
【0012】
図38(b)においては、この弁410は、板材等を利用する製造方法によって、流路403の天井に貼り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流路403内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発明は、上述したバック波の一部を弁410によって制御することでエネルギー損失を抑制するものとして開示されている。
【0013】
しかしながら、この構成において、吐出すべき液体を保持する流路403内部に、気泡が発生した際を検討するとわかるように、弁410によるバック波の一部を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なものでないことがわかる。
【0014】
もともとバック波自体は、前述したように吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路403内に発生した時点では、図38(a)に示すように、気泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路403から液体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のうち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に大きな影響を与えないことは明らかである。
【0015】
また、高速記録を行う手段として吐出ノズルの数を増やすものがある。しかし、それに用いる各部品が大型化するため、単一部品で構成することが困難となる。この場合、いくつかの複数に分割された部品を結合して用いることで、複数の基板または(および)複数の分離壁を有する液体吐出ヘッドに対応していた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、複数部品を結合した構成のヘッドの場合には、部品の結合部で生ずる吐出特性の変化のため、ムラ等の記録画像品位の劣化の要因は増大することになる。これは、複数の基板または(および)複数の分離壁を有する液体吐出ヘッド化に伴い、隣接する基板間の境界領域あるいは隣接する分離壁間の境界領域に位置するノズルと、該境界領域以外の部分に位置するノズルが同じ設計である場合、境界部に対応する吐出量と境界部以外に対応する吐出量との間でバラツキが生ずるからである。すなわち、境界部に対応する部分の吐出量低下、それによって生ずる画像濃度の低下により、記録画像のムラ等の品位低下が生ずる。
【0017】
そこで、本発明は上記問題点を解決し、複数の基板または(および)複数の分離を有する液体吐出ヘッドをいても、上記境界部における吐出量低下等を引き起こすことなく、つねに安定した画像品位を得ることが可能な液体吐出ヘッド、該ヘッドを用いた液体吐出装置、および記録方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、液体を吐出する複数の吐出口が形成された液体吐出ヘッドであって、液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる複数の発熱体が連続的に配置されるように配列された複数の基板と、該発熱体に沿った該発熱体より上流側から前記発熱体上に液体を供給するための供給路とを有する液流路と、前記複数の発熱体にそれぞれ面して設けられ、吐出口側に自由端を有するとともに前記気泡の発生による圧力に基づいて前記自由端を変位させて前記圧力を吐出口側に導く可動部を有する少なくとも1つの分離壁と、を有するとともに、さらに、少なくとも前記複数の基板間の境界に位置する発熱体に対応する可動部が、他の可動部の寸法および位置の少なくともどちらか一つが異なることで前記それぞれ吐出口から吐出される液体の吐出特性のばらつきが補正されていることを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、前記分離壁は 前記基板に対応して複数設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、前記分離壁は、前記液流路を、吐出口に連通した第1の液流路と、液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する第2の液流路と、に区分するものであることを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、前記液体吐出ヘッドは それぞれの吐出口に対応して直接連通する複数の第1の液流路を構成するための複数の溝と、前記複数の第1の液流路に液体を供給するための第1の共通液室を構成する凹部とを一体的に有する溝付き部材を有し 前記液流路は該溝付部材と前記分離壁を介して前記基板と接合することにより形成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項8発明は、前記被記録媒体は、記録紙、布帛、プラスチック、金属、木材、および皮革からなる群から選択されることを特徴とする。
【0026】
請求項9の発明は、前記液体吐出ヘッドから複数色の記録液体を吐出し、被記録媒体に前記複数色の記録液体を付着させることでカラー記録を行うことを特徴とする。
【0027】
請求項10の発明は、前記吐出口が被記録媒体の記録可能領域の全幅に渡って、複数配されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明にもとづく液体吐出記録方法は、上記液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明にもとづく液体吐出装置は、上記の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出させるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段と、を有する。
【0030】
また、本発明にもとづく液体吐出装置は、上記の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから吐出された液体を受ける被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、を有する。
【0031】
なお、本発明の説明で用いる「上流」「下流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(又は可動部材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関して、又はこの構成上の方向に関しての表現として表されている。
【0032】
また、気泡自体に関する「下流側」とは、主として液体の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出口側部分を代表する。より具体的には気泡の中心に対して、上記流れ方向や上記構成上の方向に関する下流側、又は、発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気泡を意味する。
【0033】
また、本発明の説明で用いる「実質的に密閉」とは、気泡が成長するとき、可動部材が変位する前に可動部材の周囲の隙間(スリット)から気泡がすり抜けない程度の状態を意味する。
【0034】
さらに、本発明でいう「分離壁」とは、広義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路を吐出口に直接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液体の混合を防止するものを意味する。
【0035】
【発明の実施の形態】
<実施態様例1>
図1は、本発明における第1の実施態様例を示す液体吐出ヘッドの一部の分解斜視図である。
【0036】
図1において、溝付部材50と分離壁30aおよび30bと基板1aおよび1bと支持体70が接合された状態で構成されている。液体を吐出する吐出口18は溝付部材50のフェイス面51に形成され前記吐出口18に対応して溝付部材50に形成された溝(不図示)に連通する。複数の前記溝は前記溝付部材50に形成された凹部(不図示)に連通し、これらの溝および凹部は分離壁30aおよび30bと接合して第1液流路および第1共通液室を形成する。前記分離壁30aおよび30bには可動部材31aおよび31bと第2液流路壁72が前記溝に対応して形成されており、前記分離壁30aおよび30bは支持体70に接着された基板1aおよび1bと接合して、第2液流路を形成する。基板1aおよび1bには発熱体2が形成されており前記第2液流路に対応して配されている。前記第2液流路は分離壁30a,30bと基板1a,1bとの接合で形成された第2共通液室(不図示)に連通する。第2液流路には第2液導入路21から、分離壁貫通口22および前記第2共通液室を介し発泡液が供給される。前記第1液流路には第1液導入路20より前記第1共通液室を介し吐出液が供給される。分離壁30aと30bの間および基板1aと1bの間には、封止剤や接着剤で一部または全て満たされている。
【0037】
図2は図1の断面図である。
【0038】
本実施態様例においては、溝付部材50は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流路14に共通して連通し、各第1液流路3に液体(吐出液)を供給するための第1共通液室15を構成する凹部とから概略構成されている。
【0039】
この溝付部材50の下側に分離壁30aおよび30bを接合することにより複数の第1液流路14を形成することができる。このような溝付部材50は、その上部から第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を有している。また、溝付部材50は、その上部から分離壁30aおよび30bを突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2液体供給路21を有している。
【0040】
第1の液体(吐出液)は、図2の矢印Cで示すように、第1液体供給路20を経て、第1共通液室15、次いで第1液流路14に供給され、第2の液体(発泡液)は、図2の矢印Dで示すように、第2液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2液流路16に供給されるようになっている。
【0041】
本実施形態例では、第2液体供給路21は、第1液体供給路20と平行して配されているが、これに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配された分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通するように形成されればどのように配されてもよい。
【0042】
また、第2液体供給路21の太さ(直径)に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、矩形状等でもよい。
【0043】
また、第2共通液室17は、溝付部材50を分離壁30aおよび30bで仕切ることによって形成することができる。形成の方法としては、図2で示す本実施態様例の分解斜視図のように、基板上にドライフィルムで共通液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付部材50と分離壁30aおよび30bとの結合体と基板1aおよび1bとを貼り合わせることにより第2共通液室17や第2液流路16を形成してもよい。
【0044】
本実施形態例では、アルミニュウム等の金属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生する発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた基板1aおよび1bが配されている。
【0045】
発熱体2はアルミニウム等の導電体の電極5によって電圧を印加され発熱する。
【0046】
符号50は、溝付部材である。この溝付部材50は、分離壁30aおよび30bと接合されることで吐出液流路(第1液流路)14を構成する溝と、この吐出液流路に連通し、それぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1共通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐出液供給路)20と、第2共通液室17に発泡液を供給するための第2供給路(発泡液供給路)21とを有している。第2供給路21は、第1共通液室15の外側に配された分離壁30を貫通して第2共通液室17に連通する連通路に繋がっており、この連通路によって吐出液と混合することなく発泡液を第2共通液室15に供給することができる。
【0047】
なお、基板1aおよび基板1b、分離壁30aおよび分離壁30b、溝付天板50の配置関係は、基板1aおよび基板1bの発熱体に対応して可動部材31aおよび可動部材31bが配置されており、この可動部材31aおよび可動部材31bに対応して吐出液流路14が配されている。また、本実施形態例では、第2供給路を1つ溝付部材に配した例を示したが、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比例して決めればよい。
【0048】
このような流路断面積の最適化により溝付部材50等を構成する部品をより小型化することも可能である。
【0049】
ところで、吐出ノズルを多数化する際、製造上の都合等の理由により、大型の基板を用いるよりも小型の基板を複数結合して用いることが好ましい。したがって、本実施例ではすでに説明したように、2つの基板を用いている。しかし、図1に示すように基板1aと基板1bとの間には隙間35が生じている。この隙間35を介して上記発泡圧力が逃げる場合がある。また、隙間35を封止剤でうめる等の方法があるが、この封止剤を用いる場合、発熱体2の表面状態を不均一にて、上記発泡が小さくなる場合がある。このような理由以外にも様々な理由により、基板の端部の発熱体2の圧力が吐出に際して十分に伝わらない場合があり、このため、本実施例の基板端部の発熱体に対応して可動部材31bの形状を発泡圧力をより十分うけられ吐出効率を高めるものにしてある。具体的には、他の可動部材よりもサイズを大きくしている。これにより、各ノズルの吐出特性が均一化され、基板端部のみの効率低下による吐出量減少で、この部分で記録画像に濃度薄となるムラを生ずることがない。
【0050】
また、本実施例においては、分離壁30aおよび30bの間の隙間36も同様に存在しているため、上記の基板1aと基板1bとの隙間35と同様にムラ要因となる。しかし、前述と同様に可動部材の一部の形状を対応させることで画像品位を向上させることが可能となる。
【0051】
また、可動部材の対応も、サイズの他、支点や自由端の位置など、吐出特性を変えることのできる他の設計パラメータによってもよい。
【0052】
また逆に、この部分の吐出量が大きくなった場合も同様に対応して、吐出特性が均一化するように可動部材の設計を変えればよい。
【0053】
以上説明したように本実施態様例によれば、基板間の境界部に位置する発熱体の寸法を他の部分に位置する発熱体の寸法よりも大きなものとすることによって、境界部における吐出特性の低下を防ぐことができる。
【0054】
<実施態様例2>
本実施態様例を図3を用いて説明する。
【0055】
この図における基本的な説明は図1と同様のため省略する。
【0056】
本実施態様例においては、分離壁30a,30bにおけるムラ要因、たとえば分離壁30aと分離壁30bとの間の隙間36によるものの対応を溝付部材50で行なっている。具体的には、分離壁30aと分離壁30bとの間の隙間36に対応して吐出口18bの開口面積を大きくして、ヘッド内の各ノズルの吐出特性や吐出量を均一化している。
【0057】
吐出口の加工は、レーザー等で遮光マスクを用いて行なう場合、マスクのサイズを調整することで吐出口サイズを部分的に異ならせることが出来る。このため、吐出特性のバラツキに応じて対応しやすい。
【0058】
<実施態様例3>
本実施態様例を図4で説明する。
【0059】
図4における基本的な説明も図1と同様なため省略する。
【0060】
本実施態様例において、ムラ要因は分離壁30a,30bの隙間36に対応した発熱体を2aおよび2bの複数個1液流路について設けることで、吐出特性の均一化をはかっている。
【0061】
この場合、吐出特性バラツキのレベルに応じて、2aのみ発熱したり2bのみ発熱したり両方を発熱する等駆動で対応可能である。
【0062】
<実施態様例4>
図5で本実施態様例4を説明する。
【0063】
図5(a)は図1等における分離壁30a,30bに対応するものである。図11(a)において、可動部材31のサイズがすべて均一の場合前実施態様例で説明したように、隙間36付近の吐出特性は隙間36の影響で吐出量が低く(あるいは高く)なる。この様子を図5(b)に示す。
【0064】
しかしながら、本実施態様例においては図5(a)に示すように、可動部材31のサイズが各々異なっており、したがって吐出特性はランダムにバラツキを持っている。この場合、図5(b)の特性と重なり、図5(c)のような吐出量のバラツキになる。
【0065】
このようにこまかく意図的にバラツキをもたせることで図5(b)のように大きく規則的なムラパターンのような視覚的に認識しやすい発熱体を認識しずらいものにすることが出来る。
【0066】
本実施態様例は、ムラの発生する場所にかかわらずランダムにバラツかせるためムラパターンが発生する場所が特定しずらい場合に有効な手段である。
【0067】
<実施態様例5>
図6は、複数の基板1aおよび1bと、複数の可動部材を有する1つの分離壁30との組合せと、それらの吐出量の分布の相対的なレベルを示したものである。この実施態様例のヘッド全体の構成は実施態様例またはと同様である。
【0068】
図6(a)は複数の基板1aおよび基板1bの配置を示すものであり、この基板の吐出ヒータ2は均一な形状からなる(例えば矩形状)。この場合、他の部材による各ノズルの特性差がないものとすると、2つの基板間のギャップ35の近傍のヒータ2は、ギャップへの発泡圧力に逃げや部品の精度や、封止剤のまわり込み等があり、このヒータ2による吐出量は低下する場合がある。これは図6(c)のように、吐出量バラツキが相対的に存在する。
【0069】
いま、分離壁内の可動部材31をこのヒータに対応した部分のみ、サイズを大きくした場合、この可動部材のみの効果による吐出量分布は図6(d)のようになる。
【0070】
これらの部品を組み合わせたヘッドは、吐出量のバラツキが相殺され、図6(e)のように均一な吐出量または吐出特性となり、画像品位が向上する。
【0071】
以上説明したように本発明によってヘッド内の様々なバラツキ要因、たとえば溝付き天板の吐出口やノズルのバラツキ、複数分離壁の隙間や複数基板の隙間によるもの等で記録画像にみだれが生じるのを防止し、製造上の歩留りやコストダウンをはかることが出来た。
【0072】
つぎに、上記実施態様例1ないし5に適用可能な本発明の具体的構成例を説明する。
【0073】
<実施態様例6>
以下、図面を参照して本発明の実施形態例を詳細に説明する。
【0074】
まず本実施形態例では液体を吐出するための、気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制御することで吐出力や吐出効率の向上を図る場合の例を説明する。
【0075】
図7はこのような本実施形態例の液体吐出ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を示しており、図8はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0076】
本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に熱エネルギーを作用させる発熱体2(本実施形態例においては40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出口から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室13から受け取る。
【0077】
この液流路10の素子基板上には、前述の発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有する材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニングして形成した土台(支持部材)34等に固定されている。これによって、可動部材は保持されると共に支点(支点部分)33を構成している。
【0078】
この可動部材31は、液体の吐出動作によって共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状および配置であればよい。なお、上述した液流路10は、後に取り上げる液体の流れの説明のため、可動部材31を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の液流路14とし、気泡発生領域11や液体供給路12を有する第2の液流路16の2つの領域に分けて説明する。
【0079】
発熱体2を発熱させることで可動部材31と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用し、液体にUSP4,723,129に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用し、可動部材31は図7(b)、(c)もしくは図7で示されるように支点33を中心に吐出口側に大きく開くように変位する。可動部材31の変位若しくは変位した状態によって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口側に導かれる。
【0080】
ここで、本発明の基本的な吐出原理の一つを説明する。本発明において最も重要な原理の1つは、気泡に対面するように配された可動部材が気泡の圧力あるいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1の位置から変位後の位置である第2の位置へ変位し、この変位する可動部材31によって気泡の発生に伴う圧力や気泡自身を吐出口18が配された下流側へ導くことである。
【0081】
この原理を可動部材を用いない従来の液流路構造を模式的に示した図9と本発明の図10とを比較してさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向への圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬方向をVBとして示した。
【0082】
図9で示されるような従来のヘッドにおいては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制する構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1〜V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼすVA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V4即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにV1は吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく働き、逆にV4はVAに向かう方向成分は比較的少ない。
【0083】
これに対して、図10で示される本発明の場合には、可動部材31が図8の場合のように様々な方向を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V4を下流側(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に変換するものであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力また吐出速度等の根本的な向上を達成することができる。
【0084】
次に図7に戻って、本実施形態例の液体吐出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0085】
図7(a)は、発熱体2に電気エネルギー等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで可動部材31が配されている。
【0086】
図7(b)は、発熱体2に電気エネルギー等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0087】
このとき可動部材31は気泡40の発生に基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。ここで重要なことは前述したように、可動部材31の自由端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡の下流部分に対面させることである。
【0088】
図7(c)は気泡40がさらに成長した状態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材31はさらに変位している。発生した気泡は上流より下流に大きく成長すると共に可動部材の第1の位置(点線位置)を越えて大きく成長している。このように気泡40の成長に応じて可動部材31が徐々に変位して行くことで気泡40の圧力伝搬方向や堆積移動のしやすい方向、すなわち自由端側への気泡の成長方向を吐出口に均一的に向かわせることができることも吐出効率を高めると考えられる。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制御することができる。
【0089】
図7(d)は気泡40が、前述した膜沸騰の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態を示している。
【0090】
第2の位置まで変位していた可動部材31は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性による復元力によって図7(a)の初期位置(第1の位置)に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域11での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために上流側(B)、すなわち共通液室側から流れのVD1、VD2のように、また、吐出口側から流れのVcのように液体が流れ込んでくる。
【0091】
以上、気泡の発生に伴う可動部材の動作と液体の吐出動作について説明したが、以下に本発明の液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについて詳しく説明する。
【0092】
図7を用いて本発明における液供給メカニズムをさらに詳しく説明する。
【0093】
図7(c)の後、気泡40が最大体積の状態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込む。可動部材31を持たない従来の液流路構造においては、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものである。)。
【0094】
このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さい場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くなって高速印字を妨げることとなっていた。
【0095】
これに対して本実施形態例は可動部材31を設けたため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場合、消泡時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニスカスの後退は止まり、その後残ったW2の体積分の液体供給は主に第2流路16の流れVD2からの液供給によって成される。これにより、従来、気泡Wの体積の半分程度に対応した量がメニスカスの後退量になっていたのに対して、それより少ないW1の半分程度のメニスカス後退量に抑えることが可能になった。
【0096】
さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿って、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0097】
ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカスの振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっていたが、本実施形態例の高速リフィルにおいては可動部材によって吐出口側の第1液流路14の領域と、気泡発生領域11との吐出口側での液体の流通が抑制されるためメニスカスの振動を極めて少なくすることができることである。
【0098】
このように本発明は、第2流路16の液供給路12を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィルを達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、また記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実現することができる。
【0099】
本発明の構成においてはさらに次のような有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の発生による圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制することである。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液室13側(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、上流側に向かって液体を押し戻す力(バック波)になっていた。このバック波は、上流側の圧力と、それによる液移動量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、これらは液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動の妨げにもなっていた。本発明においては、まず可動部材31によって上流側へのこれらの作用を抑えることでもリフィル供給性の向上をさらに図っている。
【0100】
次に、本実施形態例の更なる特徴的な構造と効果について、以下に説明する。
【0101】
本実施形態例の第2液流路16は、発熱体2の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体表面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路12を有している。このような場合、気泡発生領域11および発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31の気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD2のように行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀むことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出や、消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易く、また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。従って、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行うことができる。なお、本実施形態例では実質的に平坦な内壁を持つ液体供給路12を持つもので説明したが、これに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、なだらかな内壁を有する液供給路であればよく、発熱体上に液体の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない形状であればよい。
【0102】
また、気泡発生領域への液体の供給は、可動部材の側部(スリット35)を介してVD1から行われるものもある。しかし、気泡発生時の圧力をさらに有効に吐出口に導くために図6で示すように気泡発生領域の全体を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材を用い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、気泡発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域との液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述のVD1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れが妨げられる。しかし、本発明のヘッド構造においては、気泡発生領域に液体を供給するための流れVD1があるため、液体の供給性能が非常に高くなり、可動部材31で気泡発生領域11を覆うような吐出効率向上を求めた構造を取っても、液体の供給性能を落とすことがない。
【0103】
ところで、可動部材31の自由端32と支点33の位置は、例えば図10で示されるように、自由端が相対的に支点より下流側にある。このような構成のため、前述した発泡の際に気泡の圧力伝搬方向や成長方向を吐出口側に導く等の機能や効果を効率よく実現できるのである。さらに、この位置関係は吐出に対する機能や効果のみならず、液体の供給の際にも液流路10を流れる液体に対する流抵抗を小さくしでき高速にリフィルできるという効果を達成している。これは図11に示すように、吐出によって後退したメニスカスMが毛管力により吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供給が行われる場合に、液流路10(第1液流路14、第2液流路16を含む)内を流れる流れS1、S2、S3に対し、逆らわないように自由端と支点33とを配置しているためである。
【0104】
補足すれば、本実施形態例図7においては、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3(発熱体の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向に直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱体2に対して延在している。これによって発熱体の面積中心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大きく寄与する圧力、又は気泡を可動部材31が受け、この圧力及び気泡を吐出口側に導くことができ、吐出効率や吐出力を根本的に向上させることができる。
【0105】
さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用して多くの効果を得ている。
【0106】
また、本実施形態例の構成においては可動部材31の自由端が瞬間的な機械的変位を行っていることも、液体の吐出に対して有効に寄与している考えられる。
【0107】
<実施形態例7>
図12に本発明の実施形態例を示す。この図12において、Aは可動部材が変位している状態を示し(気泡は図示せず)、Bは可動部材が初期位置(第1位置)の状態を示し、このBの状態をもって、発泡領域11を吐出口18に対して実質的に密閉しているとする。(ここでは、図示していないがA、B間には流路壁があり流路と流路を分離している。)
図12における可動部材31は土台34を側部に2点設け、その間に液供給路12を設けている。これにより、可動部材の発熱体側の面に沿って、また、発熱体の面と実質的に平坦もしくは、なだらかにつながる面を持つ液供給路から液体の供給を成すことができる。
【0108】
ここで、可動部材31の初期位置(第1位置)では、可動部材31は発熱体2の下流側および横方向に配された発熱体下流壁36と発熱体側壁37に近接または密着しており、気泡発生領域11の吐出口18側に実質的に密閉されている。このため、発泡時の気泡の圧力、特に気泡の下流側の圧力を逃がさず可動部材の自由端側に集中的に作用させることができる。
【0109】
また、消泡時には、可動部材31は第1位置に戻り、発熱体上への消泡時の液供給は気泡発生領域31の吐出口側が実質的に密閉状態になるため、メニスカスの後退抑制等、先の実施形態例で説明した種々の効果を得ることができる。また、リフィルに関する効果においても先の実施形態例と同様の機能、効果を得ることができる。
【0110】
また、本実施形態例においては、図8や図12のように、可動部材31を支持固定する土台34を発熱体2より離れた上流に設けると共に液流路10より、小さな幅の土台34とすることで前述のような液供給路12への液体の供給を行っている。また、土台34の形状のこれに限らず、リフィルをスムースに行えるものであればよい。
【0111】
なお、本実施形態例においては可動部材31と発熱体2の間隔を15μm程度としたが、気泡の発生に基づく圧力が十分に可動部材に伝わる範囲であればよい。
【0112】
<実施形態例8>
図13は、本発明の基本的な概念の一つを示すもので、本発明の実施形態例となる。図13は、一つの液流路中に気泡発生領域、そこで発生する気泡および可動部材との位置関係を示していると共に、本発明の液体吐出方法やリフィル方法をより分かり易くした実施形態例である。
【0113】
前述の実施形態例の多くは、可動部材の自由端に対して、発生する気泡の圧力を集中して、急峻な可動部材の移動と同時に気泡の移動を吐出口側に集中させることを達成している。これに対して、本実施形態例は、発生する気泡の自由度を与えながら、滴吐出に直接作用する気泡の吐出口側である気泡の下流側部分を可動部材の自由端側で規制するものである。
【0114】
構成上で説明すると、図13では、前述の図8(第6実施形態例)に比較すると、図8の素子基板1上に設けられた気泡発生領域の下流端に位置するバリヤーとしての凸部(図8における斜線部分LP)が本実施形態例では設けられていない。つまり、可動部材の自由端領域および両側端領域は、吐出口領域に対して気泡発生領域を実質的に密閉せずに開放しており、この構成が本実施形態例である。
【0115】
本実施形態例では、気泡の液滴吐出に直接作用する下流側部分のうち、下流側先端部の気泡成長が許容されているので、その圧力成分を吐出に有効に利用している。加えて少なくともこの下流側部分の上方へ向かう圧力(図9のVB、VB、VBの分力)を可動部材の自由端側部分が、この下流側先端部の気泡成長に加えられるように作用するため吐出効率を上述した実施形態例と同様に向上する。前記実施形態例に比較して本実施形態例は、発熱体の駆動に対する応答性が優れている。
【0116】
また、本実施形態例は、構造上簡単であるため製造上の利点がある。
【0117】
本実施形態例の可動部材31の支点部は、可動部材の面部に対して小さい幅の1つの土台34に固定されている。従って、消泡時の気泡発生領域11への液体供給は、この土台の両側を通って供給される(図の矢印参照)。この土台は供給性を確保するものであればどのような構造でもよい。
【0118】
液体の供給時におけるリフィルは、本実施形態例の場合には、可動部材の存在によって気泡の消泡にともなって上方から気泡発生領域へ流れ込む流れが制御されるので、従来の発熱体のみの気泡発生構造に対して優れたものとなる。無論、これによって、メニスカスの後退量を減じることもできる。
【0119】
本第実施形態例の変形実施形態例としては、可動部材の自由端に対する両側端(一方でも可)のみを気泡発生領域11に対して実質的に密閉状態とすることは好ましいものとして挙げられる。この構成によれば、可動部材の側方へ向かう圧力をも先に説明した気泡の吐出口側端部の成長に変更して利用することができるので、一層吐出効率が向上する。
【0120】
<実施形態例9>
前述した機械的変位による液体の吐出力をさらに向上させた例を本実施形態例で説明する。図14はこのようなヘッド構造の横断面図である。図14においては、可動部材31の自由端の位置が発熱体のさらに下流側に位置するように、可動部材が延在している実施形態例を示している。これによって自由端位置での可動部材の変位速度を高くすることができ、可動部材の変位による吐出力の発生をさらに向上させることができる。
【0121】
また、自由端が先の実施形態例に比較して吐出口側に近づくことになるので気泡の成長をより安定した方向成分に集中できるので、より優れた吐出を行うことができる。
【0122】
また、気泡の圧力中心部の気泡成長速度に応じて、可動部材31は変位速度R1で変位するが、この位置より支点33に対して、遠い位置の自由端32はさらに速い速度R2で変位する。これにより、自由端32を高い速度で機械的に液体に作用せしめ液移動を起こさせることで吐出効率を高めている。
【0123】
また、自由端形状は、図13と同じように液流れに対して垂直な形状をすることにより、気泡の圧力や可動部材の機械的な作用をより効率的に吐出に寄与させることができる。
【0124】
<実施形態例10>
図15(a)、(b)、(c)は本発明の実施形態例である。
【0125】
本実施形態例の構造は先の実施形態例と異なり、吐出口と直接連通する領域は液室側と連通した流路形状となっておらず、構造の簡略化が図れるものである。
【0126】
液供給は全て、可動部材31の発泡領域側の面に沿った液供給路12からのみ行われるもので、可動部材31の自由端32や支点33の吐出口18に対する位置関係や発熱体2に面する構成は前述の実施形態例と同様である。
【0127】
本実施形態例は、吐出効率や液供給性等、前述した効果を実現するものであるが、特にメニスカスの後退を抑制し消泡時の圧力を利用して、ほとんど全ての液供給を消泡時の圧力を利用して、強制リフィルを行うものである。
【0128】
図15(a)は発熱体2により液体を発泡させた状態を示しており、図15(b)は、前記発泡が収縮しつつある状態で、このとき可動部材31の初期位置への復帰とS3による液供給が行われる。
【0129】
図15(c)では、可動部材が初期部材が初期位置に復帰する際のわずかなメニスカス後退Mを、消泡後に吐出口18付近の毛細管力によって、リフィルしている状態である。
【0130】
<実施形態例11>
以下、図面を参照して本発明の他の実施形態例について説明する。
【0131】
本実施形態例においても主たる液体の吐出原理については先の実施形態例と同じであるが、本実施形態例においては液流路を複流路構成にすることで、さらに熱を加えることで発泡させる液体(発泡液)と、主として吐出される液体(吐出液)とを分けることができるものである。
【0132】
図16は、本実施形態例の液体吐出ヘッドの流路方向の断面模式図を示しており、図17はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0133】
本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体2が設けられた素子基板1上に、発泡用の第2液流路16があり、その上に吐出口18に直接連通した吐出液用の第1液流路14が配されている。
【0134】
第1液流路の上流側は、複数の第1液流路に吐出液を供給するための第1共通液室15に連通しており、第2液流路の上流側は、複数の第2液流路に発泡液を供給するための第2共通液室に連通している。
【0135】
但し、発泡液と吐出液を同じ液体とする場合には、共通液室を一つにして共通化させてもよい。
【0136】
第1と第2の液流路の間には、金属等の弾性を有する材料で構成された分離壁30が配されており、第1液流路と第2の液流路とを区分している。なお、発泡液と吐出液とができる限り混ざり合わない方がよい液体の場合には、この分離壁によってできる限り完全に第1液流路14と第2液流路16の液体の流通を分離した方がよいが、発泡液と吐出液とがある程度混ざり合っても、問題がない場合には、分離壁に完全分離の機能を持たせなくてもよい。
【0137】
発熱体の面方向上方への投影空間(以下吐出圧発生領域という。;図16中のAの領域とBの気泡発生領域11)に位置する部分の分離壁は、スリット35によって吐出口側(液体の流れの下流側)が自由端で、共通液室(15、17)側に支点33が位置する片持梁形状の可動部材31となっている。この可動部材31は、気泡発生領域11(B)に面して配されているため、発泡液の発泡によって第1液流路側の吐出口側に向けて開口するように動作する(図中矢印方向)。図17においても、発熱体2としての発熱抵抗部と、この発熱抵抗部に電気信号を印加するための配線電極5とが配された素子基板1上に、第2の液流路を構成する空間を介して分離壁30が配置されている。
【0138】
可動部材31の支点33、自由端32の配置と、発熱体との配置の関係については、先の実施形態例と同様にしている。
【0139】
また、先の実施形態例で液供給路12と発熱体2との構造の関係について説明したが、本実施形態例においても第2液流路16と発熱体2との構造の関係を同じくしている。
【0140】
次に図18を用いて本実施形態例の液体吐出ヘッドの動作を説明する。
【0141】
ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させた。
【0142】
発熱体2が発生した熱が、第2液流路の気泡発生領域内の発泡液に作用することで、先の実施形態例で説明したのと同様に発泡液に米国特許第4,723,129号に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡40を発生させる。
【0143】
本実施形態例においては、気泡発生領域の上流側を除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、この気泡発生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された可動部材6側に集中して伝搬し、気泡の成長をともなって可動部材6が図18(a)の状態から図18(b)のように第1液流路側に変位する。この可動部材の動作によって第1液流路14と第2液流路16とが大きく連通し、気泡の発生に基づく圧力が第1液流路の吐出口側の方向(A方向)に主に伝わる。この圧力の伝搬と、前述のような可動部材の機械的変位によって液体が吐出口から吐出される。
【0144】
次に、気泡が収縮するに伴って可動部材31が図18(a)の位置まで戻ると共に、第1液流路14では吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出液体が上流側から供給される。本実施形態例においても、この吐出液体の供給は前述の実施形態例と同様に可動部材が閉じる方向であるため、吐出液体のリフィルを可動部材で妨げることがない。
【0145】
本実施形態例は、可動部材の変位に伴う発泡圧力の伝搬、気泡の成長方向、バック波の防止等に関する主要部分の作用や効果については先の第1実施形態例等と同じであるが、本実施形態例のような2流路構成をとることによって、さらに次のような長所がある。
【0146】
すなわち、上述の実施形態例の構成によると、吐出液と発泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生じた圧力によって吐出液を吐出することができる。このため従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出力が不十分であったポリエチレングリコール等の高粘度の液体であっても、この液体を第1の液流路に供給し、発泡液に発泡が良好に行われる液体(エタノール:水=4:6の混合液1〜2cP程度等)や低沸点の液体を第2の液流路に供給することで良好に吐出させることができる。
【0147】
また、発泡液として、熱を受けても発熱体の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択することで、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができる。
【0148】
さらに、本発明のヘッドの構造においては先の実施形態例で説明したような効果をも生じるため、さらに高吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体を吐出することができる。
【0149】
また、加熱に弱い液体の場合においてもこの液体を第1の液流路に吐出液として供給し、第2の液流路で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる液体を供給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与えることなく、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で吐出することができる。
【0150】
<その他の実施形態例>
以上、本発明の液体吐出ヘッドや液体吐出方法の要部の実施形態例について説明を行ったが、以下にこれらの実施形態例に好ましく適用できる実施態様例について図面を用いて説明する。但し、以下の説明においては前述の1流路形態の実施形態例と2流路形態の実施形態例のいずれかを取り上げて説明する場合があるが特に記載しない限り、両実施形態例に適用しうるものである。
【0151】
<液流路の天井形状>
図19は本発明の液体吐出ヘッドの流路方向断面図であるが、第1液流路13(若しくは図1における液流路10)を構成するための溝が設けられた溝付き部材50が分離壁30上に設けられている。本実施形態例においては可動部材の自由端32位置近傍の流路天井の高さが高くなっており、可動部材の動作角度θをより大きく取れるようにしている。この可動部材の動作範囲は、液流路の構造、可動部材の耐久性や発泡力等を考慮して決定すればよいが、吐出口の軸方向の角度を含む角度まで動作することが望ましいと考えられる。
【0152】
また、この図で示されるように吐出口の直径より可動部材の自由端の変位高さを高くすることで、より十分な吐出力の伝達が成される。また、この図で示されるように、可動部材の自由端32位置の液流路天井の高さより可動部材の支点33位置の液流路天井の高さの方が低くなっているため、可動部材の変位よる上流側への圧力波の逃げがさらに有効に防止できる。
【0153】
<第2液流路と可動部材との配置関係>
図20は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配置関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁30、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方から見た図である。そして、同図(c)は、可動部材6と第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重ねることで模式的に示した図である。なお、いずれの図も図面下方が吐出口が配されている前面側である。
【0154】
本実施形態例の第2の液流路16は発熱体2の上流側(ここでの上流側とは第2共通液室側から発熱体位置、可動部材、第1流路を経て吐出口に向う大きな流れの中の上流側のことである。)に狭窄部19を持っており、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に容易に逃げることを抑制するような室(発泡室)構造となっている。
【0155】
従来のヘッドのように、発泡する流路と液体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮して、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない構成を採る必要があった。
【0156】
しかし、本実施形態例の場合、吐出される液体の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、発熱体が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消費されないようにできるため、第2液流路の気泡発生領域11への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上述の狭窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常に狭くできるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力をあまり周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して可動部材側に向けることができる。そしてこの圧力を可動部材31を介して吐出力として利用することができるため、より高い吐出効率、吐出力を達成することができる。ただ、第1液流路16の形状は上述の構造に限られるものではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可動部材側に伝えられる形状であれば良い。
【0157】
なお、図20(c)で示されるように可動部材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆っており、このことで、可動部材31の第2液流路への落ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液と発泡液との分離性をさらに高めることができる。また、気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さらに吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、前述の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果を高めることができる。
【0158】
なお、図18(b)や図19においては、可動部材6の第1の液流路14側への変位に伴って第2の液流路4の気泡発生領域で発生した気泡の一部が第1の液流路14側に延在しているが、この様に気泡が延在するような第2流路の高さにすることで、気泡が延在しない場合に比べ更に吐出力を向上させることができる。この様に気泡が第1の液流路14に延在するようにするためには、第2の液流路16の高さを最大気泡の高さより低くすることが望ましく、この高さを数μm〜30μmとすることが望ましい。なお、本実施形態例においてはこの高さを15μmとした。
【0159】
<可動部材および分離壁>
図21は可動部材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設けられたスリットであり、このスリットによって、可動部材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状であり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が広くなっており、可動部材の耐久性が向上する形状である。動作の容易性と耐久性が良好な形状として、図20(a)で示したように、支点側の幅が円弧状に狭くなっている形態が望ましいが、可動部材の形状は第2の液流路側に入り込むことがなく、容易に動作可能な形状で、耐久性に優れた形状であればよい。
【0160】
先の実施形態例においては、板状可動部材31をおよびこの可動部材を有する分離壁5は厚さ5μmのニッケルで構成したが、これに限られることなく可動部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作するための弾性を有し、微細なスリットが形成できるものであればよい。
【0161】
可動部材の材料としては、耐久性の高い、銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、およびその合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐インク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングしたもの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポキシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等のアミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラミックおよびその化合物が望ましい。
【0162】
分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もしくは表面にチタンや金をコーティングしたものが望ましい。
【0163】
また、分離壁の厚さは、分離壁としての強度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0164】
なお、可動部材31を形成するためのスリット35の幅は本実施形態例では2μmとしたが、発泡液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカスを形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑制すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポアズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混液を防止することができるが、3μm以下にすることが望ましい。
【0165】
本発明における可動部材としてはμmオーダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオーダーの厚さの可動部材は意図していない。μmオーダーの厚さの可動部材にとって、μmオーダーのスリット幅(Wμm)を対象とする場合、製造のバラツキをある程度考慮することが望ましい。
【0166】
スリットを形成する可動部材の自由端あるいは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部材の厚みと同等の場合(図18、図19等)、スリット幅と厚みの関係を製造のバラツキを考慮して以下のような範囲にすることで発泡液と吐出液の混液を安定的に抑制することができる。このことは限られた条件ではあるが設計上の観点として、3cp以下の粘度の発泡液に対して高粘度インク(5cp、10cp等)を用いる場合、W/t≦1を満足するようにすることで、2液の混合を長期にわたって抑制することが可能な構成となった。
【0167】
本発明の「実質的な密閉状態」を与えるスリットとしては、このような数μmオーダであればより確実である。
【0168】
上述のように、発泡液と吐出液とに機能分離させた場合、可動部材がこれらの実質的な仕切部材となる。この可動部材が気泡の生成に伴って移動する際に吐出液に対して発泡液がわずかに混入することが見られる。画像を形成する吐出液は、インクジェット記録の場合、色材濃度を3%乃至5%程度有するものが一般的であることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴に対して20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化をもたらさない。従って、このような混液としては、吐出液滴に対して20%以下となるような発泡液と吐出液との混合を本発明に含むものとする。
【0169】
尚、上記構成例の実施では、粘性を変化させても上限で15%の発泡液の混合であり、5cP以下の発泡液では、この混合比率は、駆動周波数にもよるが、10%程度を上限とするものであった。
【0170】
特に、吐出液の粘度を20cP以下にすればする程、この混液は低減(例えば5%以下)できる。
【0171】
次に、このヘッドにおける発熱体と可動部材の配置関係について、図を用いて説明する。ただし、可動部材と発熱体の形状および寸法,数は、以下に限定されるものではない。発熱体と可動部材の最適な配置によって、発熱体による発泡時の圧力を吐出圧として有効に利用することが可能となる。
【0172】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法の従来技術においては、図22に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在していることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0173】
したがって、発泡圧を有効利用するためには、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域の直上が可動部材の可動領域で覆われるように、可動部材を配置するのが効果的であると、言える。本実施形態例においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm以上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によっては、これに限定されるものではない。
【0174】
図23に、58×150μmの発熱体2に可動領域の総面積が異なる可動部材301((a)図)、可動部材302((b)図)を配置したときの上部から見た模式図を示す。
【0175】
可動部材301の寸法は、53×145μmで、発熱体2の面積よりも小さいが、発熱体2の発泡有効領域と同じ程度の寸法であり、該発泡有効領域を覆うように、配置されている。一方、可動部材302の寸法は、53×220μmで発熱体2の面積よりも大きく(幅寸法を同じにした場合、支点〜可動先端間の寸法が発熱体の長さよりも長い)、可動部材301と同じように発泡有効領域を覆うように配置されている。上記2種の可動部材301、302に対し、それらの耐久性と吐出効率について測定を行った。測定条件は以下の通りである。
【0176】
発泡液 : エタノール40%水溶液
吐出用インク : 染料インク
電圧 : 20.2V
周波数 : 3kHz
この測定条件で実験を行った結果、可動部材の耐久性に関しては、(a)可動部材301の方は、1×107 パルス印加したところで可動部材301の支点部分に損傷が見られた。(b)可動部材302の方は、3×108 パルス印加しても、損傷は見られなかった。また、投入エネルギーに対する吐出量と吐出速度からもとまる運動エネルギーも約1.5〜2.5倍程度向上することが確認された。
【0177】
以上の結果から、耐久性、吐出効率の両面からみても、発泡有効領域の真上を覆うように可動部材を設け、該可動部材の面積が発熱体の面積よりも大きい方が、優れていることがわかる。
【0178】
図24に発熱体のエッジから可動部材の支点までの距離と、可動部材の変位量の関係を示す。また、図25に、発熱体2と可動部材31との位置関係を側面方向から見た断面構成図を示す。発熱体2は40×105μmのものを用いた。発熱体2のエッジから可動部材31の支点33までの距離lが大きい程、変位量が大きいことがわかる。したがって、要求されるインクの吐出量や吐出液の流路構造および発熱体形状などによって、最適変位量を求め、可動部材の支点の位置を決めることが望ましい。
【0179】
また、可動部材の支点が発熱体の発泡有効領域直上に位置する場合は、可動部材の変位による応力に加え、発泡圧力が直接支点に加わるため可動部材の耐久性が低下してしまう。本発明者の実験によると、発泡有効領域の真上に支点を設けたものでは、1×106 パルス程度で、可動壁に損傷が生じており、耐久性が低下してしまうことが分かっている。したがって、可動部材の支点は、発熱体の発泡有効領域直上外に配置することで耐久性がそれ程高くない形状や材質の可動部材であっても実用可能性が高くなる。ただし、前記発泡有効領域直上に支点がある場合でも形状や材質を選択すれば、良好に用いることができる。かかる構成において、高吐出効率および耐久性に優れた液体吐出ヘッドが得られる。
【0180】
<素子基板>
以下に液体に熱を与えるための発熱体が設けられた素子基板の構成について説明する。
【0181】
図26は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図を示したもので、図26(a)は後述する保護膜があるヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0182】
素子基板1上に第2液流路16、分離壁30、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた溝付き部材50が配されている。
【0183】
素子基板1には、シリコン等の気体107に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体を構成するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)を図17のようにパターニングされている。この2つの配線電極104から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等の保護層を0.1〜2.0μm厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテーション層(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、インク等の各種の液体から抵抗層105を保護している。
【0184】
特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層として用いられる。
【0185】
また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよくその例を図26(b)に示す。このような保護層を必要としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル−アルミ合金等が挙げられる。
【0186】
このように、前述の各実施形態例における発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含むものでもよい。
【0187】
本実施形態例においては、発熱体として電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0188】
なお、前述の素子基板1には、前述の発熱部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供給するための配線電極104で構成される電気熱変換体の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていてもよい。
【0189】
また、前述のような素子基板1に設けられている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出するためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介して図27で示されるような矩形パルスを印加し、配線電極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施形態例のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パルス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHzで加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作によって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。しかしながら、駆動信号の条件はこれに限られることなく、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号であればよい。
【0190】
<2流路構成のヘッド構造>
以下に、第1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0191】
図28は、このような液体吐出ヘッドの構造を示す模式図であり、先の実施形態例と同じ構成要素については同じ符号を用いており、詳しい説明はここでは省略する。
【0192】
本実施形態例においては、溝付き部材50は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流路14に共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐出液)を供給するための第1の共通液室15を構成する凹部とから概略構成されている。
【0193】
この溝付部材50の下側部分に分離壁30を接合することにより複数の第1液流路14を形成することができる。このような溝付部材50は、その上部から第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を有している。また、溝付部材50は、その上部から分離壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2の液体供給路21を有している。
【0194】
第1の液体(吐出液)は、図28の矢印Cで示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の液体(発泡液)は、図28の矢印Dで示すように、第2液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2液流路16に供給されるようになっている。
【0195】
本実施形態例では、第2液体供給路21は、第1液体供給路20と平行して配されているが、これに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配された分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通するように形成されればどのように配されてもよい。
【0196】
また、第2液体供給路21の太さ(直径)に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、矩形状等でもよい。
【0197】
また、第2共通液室17は、溝付部材50を分離壁30で仕切ることによって形成することができる。形成の方法としては、図29で示す本実施形態例の分解斜視図(この図では説明を容易とするために単一ヒータボードとしている)のように、素子基板上にドライフィルムで共通液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付部材50と分離壁30との結合体と素子基板1とを貼り合わせることにより第2共通液室17や第2液流路16を形成してもよい。
【0198】
本実施形態例では、アルミニュウム等の金属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生する発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた素子基板1が配されている。
【0199】
この素子基板1上には、第2液路壁により形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数の発泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を供給するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構成する凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁30とが配されている。
【0200】
符号50は、溝付部材である。この溝付部材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、それぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐出液供給路)20と、第2の共通液室17に発泡液を供給するための第2の供給路(発泡液供給路)21とを有している。第2の供給路21は、第1の共通液室15の外側に配された分離壁30を貫通して第2の共通液室17に連通する連通路に繋がっており、この連通路によって吐出液と混合することなく発泡液を第2の共通液室15に供給することができる。
【0201】
なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板50の配置関係は、素子基板1の発熱体に対応して可動部材31が配置されており、この可動部材31に対応して吐出液流路14が配されている。また、本実施形態例では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示したが、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比例して決めればよい。
【0202】
このような流路断面積の最適化により溝付部材50等を構成する部品をより小型化することも可能である。
【0203】
以上説明したように本実施形態例によれば、第2液流路に第2液体を供給する第2の供給路と、第1液流路に第1液体を供給する第1の供給路とが同一の溝付部材としての溝付天板からなることにより部品点数が削減でき、工程の短縮化とコストダウンが可能となる。
【0204】
また第2液流路に連通した第2の共通液室への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離する分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわれる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出することができる。
【0205】
また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第2液体共通液室へ供給されるため、第2液流路に第2液体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるため、安定した吐出が可能となる。
【0206】
<吐出液体、発泡液体>
先の実施形態例で説明したように本発明においては、前述のような可動部材を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出することができる。本実施形態例の内、発泡液と吐出液とに同じ液体を用いる場合には、発熱体から加えられる熱によって劣化せずに、また加熱によって発熱体上に堆積物を生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状態変化を行うことが可能であり、さらに液流路や可動部材や分離壁等を劣化させない液体であれば種々の液体を用いることができる。
【0207】
このような液体の内、記録を行う上で用いる液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0208】
一方、本発明の2流路構成のヘッドを用い、吐出液と発泡液を別液体とした場合には、発泡液として前述のような性質の液体を用いればよく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0209】
吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用できる。
【0210】
ただし、吐出液の性質として吐出液自身、又は発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。
【0211】
記録用の吐出液体としては、高粘度インク等をも利用することができる。その他の吐出液体としては、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもできる。
【0212】
本発明においては、吐出液と発泡液の両方に用いることができる記録液体として以下のような組成のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向上によってインクの吐出速度が高くなったため、液滴の着弾精度が向上し非常に良好な記録画像を得ることができた。
【0213】
染料インク(粘度2cP)の組成
(C.I.フードブラック2)染料 3重量%
ジエチレングリコール 10重量%
チオジグリコール 5重量%
エタノール 5重量%
水 77重量%
また、発泡液と吐出液に以下で示すような組成の液体を組み合わせて吐出させて記録を行った。その結果、従来のヘッドでは吐出が困難であった十数cP粘度の液体はもちろん150cPという非常に高い粘度の液体でさえも良好に吐出でき、高画質な記録物を得ることができた。
【0214】
発泡液1の組成
エタノール 40重量%
水 60重量%
発泡液2の組成
水 100重量%
発泡液3の組成
イソプロピルアルコール 10重量%
水 90重量%
吐出液1顔料インク(粘度約15cP)の組成
カーボンブラック 5重量%
スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1重量%
(酸価140、重量平均分子量8000)
モノエタノールアミン 0.25重量%
グリセリン 69重量%
チオジグリコール 5重量%
エタノール 3重量%
水 16.75重量%
吐出液2(粘度55cP)の組成
ポリエチレングリコール200 100重量%
吐出液3(粘度150cP)の組成
ポリエチレングリコール600 100重量%
ところで、前述したような従来吐出されにくいとされていた液体の場合には、吐出速度が低いために、吐出方向性のバラツキが助長され記録紙上のドットの着弾精度が悪く、また吐出不安定による吐出量のバラツキが生じこれらのことで、高品位画像が得にくかった。しかし、上述の実施形態例の構成においては、気泡の発生を発泡液を用いることで充分に、しかも安定して行うことができる。このことで、液滴の着弾精度向上とインク吐出量の安定化を図ることができ記録画像品位を著しく向上することができた。
【0215】
<液体吐出ヘッドの製造>
次に、本発明の液体吐出ヘッドの製造工程について説明する。
【0216】
図7で示したような液体吐出ヘッドの場合には、素子基板1上に可動部材31を設けるための土台34をドライフィルム等をパターニングすることで形成し、この土台34に可動部材31を接着、もしくは溶着固定した。その後、各液流路10を構成する複数の溝と吐出口18と共通液室13を構成する凹部を有する溝付部材を、溝と可動部材が対応するような状態で素子基板1に接合することで形成した。
【0217】
次に、図16や図29で示されるような2流路構成の液体吐出ヘッドの製造工程について説明する。
【0218】
大まかには、素子基板1上に第2液流路16の壁を形成し、その上に分離壁30を取り付け、さらにその上に第1液流路14を構成する溝等が設けられた溝付き部材50を取り付ける。もしくは、第2液流路16の壁を形成した後、この壁の上に分離壁30を取り付けた溝付き部材50を接合することでヘッドの製造を行った。
【0219】
さらに第2液流路の作製方法について詳しく説明する。
【0220】
図30(a)〜(e)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の第1の実施態様例を説明するための概略断面図である。
【0221】
本実施態様例においては、(a)に示すように、素子基板(シリコンウエハ)1上に半導体製造工程で用いるのと同様の製造装置を用いてハフニュウムボライドやチッ化タンタル等からなる発熱体2を有する電気熱変換用素子を形成した後、次工程における感光性樹脂との密着性の向上を目的として素子基板1の表面に洗浄を施した。さらに、密着性を向上させるには、素子基板表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、例えばシランカップリング剤(日本ユニカ製:A189)をエチルアルコールで1重量%に希釈した液を上記改質表面上にスピンコートすることで達成される。
【0222】
次に、表面洗浄を行い、密着性を向上した基板1上に、(b)に示すように、紫外線感光性樹脂フィルム(東京応化製:ドライフィルム オーディルSY−318)DFをラミネートした。
【0223】
次に、(c)に示すように、ドライフィルムDF上にフォトマスクPMを配し、このフォトマスクPMを介してドライフィルムDFのうち、第2の流路壁として残す部分に紫外線を照射した。この露光工程は、キヤノン(株)製:MPA−600を用いて行い、約600mJ/cm2 の露光量で行った。
【0224】
次に、(d)に示すように、ドライフィルムDFを、キシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液(東京応化製:BMRC−3)で現像し、未露光部分を溶解させ、露光して硬化した部分を第2液流路16の壁部分として形成した。さらに、素子基板1表面に残った残渣を酸素プラズマアッシング装置(アルカンテック社製:MAS−800)で約90秒間処理して取り除き、引き続き、150℃で2時間、さらに紫外線照射100mJ/cm2 を行って露光部分を完全に硬化させた。
【0225】
以上の方法により、上記シリコン基板から分割、作製される複数のヒータボード(素子基板)に対し、一様に第2の液流路を精度よく形成することができる。シリコン基板を、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシン(東京精密製:AWD−4000)で各々のヒータボード1に切断、分離した。分離されたヒータボード1を接着剤(東レ製:SE4400)でアルミベースプレート70上に固定した(図33)。次いで、予めアルミベースプレート70上に接合しておいたプリント配線基板71と、ヒータボード1とを直径0.05mmのアルミワイヤ(図示略)で接続した。
【0226】
次に、このようにして得られたヒータボード1に、図30(e)に示すように、上述の方法で溝付部材50と分離壁30との接合体を位置決め接合した。すなわち、分離壁30を有する溝付部材とヒータボード1とを位置決めし、押さえバネ78により係合、固定した後、インク・発泡液用供給部材80をアルミベースプレート70上に接合固定し、アルミワイヤ間、溝付部材50とヒータボード1とインク・発泡液用供給部材80との隙間をシリコーンシーラント(東芝シリコーン製:TSE399)で封止して完成させた。
【0227】
以上の製法で、第2の液流路を形成することにより、各ヒータボードのヒータに対して位置ズレのない精度の良い流路を得ることができる。特に、溝付部材50と分離壁30とをあらかじめ先の工程で接合しておくことで、第1液流路14と可動部材31の位置精度を高めることができる。
【0228】
そして、これらの高精度製造技術によって、吐出安定化が図られ印字品位が向上する。また、ウエハ上に一括で形成することが可能なため、多量に低コストで製造することが可能である。
【0229】
なお、本実施態様例では、第2の液流路を形成するために紫外線硬化型のドライフィルムを用いたが、紫外域、特に248nm付近に吸収帯域をもつ樹脂を用い、ラミネート後、硬化させ、エキシマレーザで第2の液流路となる部分の樹脂を直接除去することによっても得ることが可能である。
【0230】
図31(a)〜(d)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の第2の実施態様例を説明するための概略断面図である。
【0231】
本実施態様例においては、(a)に示すように、SUS基板100上に厚さ15μmのレジスト101を第2の液流路の形状でパターニングした。
【0232】
次に、(b)に示すように、SUS基板100に対して電気メッキを行ってSUS基板100上にニッケル層102を同じく15μm成長させた。メッキ液としては、スルフォミン酸ニッケルに応力減少剤(ワールドメタル社製:ゼロオール)とほう酸、ピット防止剤(ワールドメタル社製:NP−APS)、塩化ニッケルを使用した。電着時の電界のかけ方としては、アノード側に電極を付け、カソード側に既にパターニングしたSUS基板100を取り付け、メッキ液の温度を50℃とし、電流密度を5A/cm2 とした。
【0233】
次に、(c)に示すように、上記のようなメッキを終了したSUS基板100に超音波振動を与え、ニッケル層102の部分をSUS基板100から剥離し、所望の第2の液流路を得た。
【0234】
一方、電気熱変換用素子を配設したヒータボードを、半導体と同様の製造装置を用いてシリコンウエハに形成した。このウエハを先の実施態様例と同様に、ダイシングマシンで各々のヒータボードに分離した。このヒータボード1を、予めプリント基板104が接合されたアルミベースプレート70に接合し、プリント基板71とアルミワイヤ(図示略)とを接続することで電気的配線を形成した。このような状態のヒータボード1上に、図31(d)に示すように、先の工程で得た第2液流路と位置決め固定した。この固定に際しては、後工程で第1の実施態様例と同様に分離壁を固定した天板と押さえバネによって係合・密着されるため、天板接合時に位置ズレが発生しない程度に固定されていれば十分である。
【0235】
本実施態様例では、上記位置決め固定に紫外線硬化型接着剤(グレースジャパン製:アミコンUV−300)を塗布し、紫外線照射装置を用い、露光量を100mJ/cm2 として約3秒間で固定を完了した。
【0236】
本実施態様例の製法によれば、発熱体に対して位置ズレのない精度の高い第2の液流路を得ることができることに加え、ニッケルで流路壁を形成しているため、アルカリ性の液体に強く、信頼性の高いヘッドを提供することが可能となる。
【0237】
図32(a)〜(d)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の第3の実施態様例を説明するための概略断面図である。
【0238】
本実施態様例においては、(a)に示すように、アライメント穴あるいはマーク100aを有する厚さ15μmのSUS基板100の両面にレジスト103を塗布した。ここで、レジストとしては、東京応化製のPMERP−AR900を使用した。
【0239】
この後、(b)に示すように、素子基板100のアライメント穴100aに合わせて、露光装置(キヤノン(株)製:MPA−600)を用いて露光し、第2の液流路を形成すべき部分のレジスト103を除去した。露光は800mJ/cm2 の露光量で行った。
【0240】
次に、(c)に示すように、両面のレジスト103がパターニングされたSUS基板100を、エッチング液(塩化第2鉄または塩化第2銅の水溶液)に浸漬し、レジスト103から露出している部分をエッチングした後、レジストを剥離した。
【0241】
次に、(d)に示すように、先の製造方法の実施態様例と同様に、ヒータボード1上に、エッチングされたSUS基板100を位置決め固定して第2の液流路4を有する液体吐出ヘッドを組み立てた。
【0242】
本実施態様例の製法によれば、ヒータに対し位置ズレのない精度の高い第2液流路4を得ることができることに加え、SUSで流路を形成しているため、酸やアルカリ性の液体に強く信頼性の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0243】
以上説明したように、本実施態様例の製造方法によれば、素子基板状に予め第2液流路の壁を配設することによって、電気熱変換体と第2液流路とが高精度に位置決めすることが可能となる。また、切断、分離前の基板上の多数の素子基板に対して第2の液流路を同時に形成することができるので、多量に、かつ、低コストの液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0244】
また、本実施態様例の製造方法の液体吐出ヘッドの製造方法を実施することによって得られた液体吐出ヘッドは、発熱体と第2液流路とが高精度に位置決めされているので、電気熱変換体の発熱による発泡の圧力を効率よく受けることができ、吐出効率に優れたものとなる。
【0245】
<液体吐出ヘッドカートリッジ>
次に、上記実施形態例に係る液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出ヘッドカートリッジを概略説明する。
【0246】
図33は、前述した液体吐出ヘッドを含む液体吐出ヘッドカートリッジの模式的分解斜視図であり、液体吐出ヘッドカートリッジは、主に液体吐出ヘッド部200と液体容器80とから概略構成されている。
【0247】
液体吐出ヘッド部200は、素子基板1、分離壁30、溝付部材50、押さえバネ78、液体供給部材90、支持体70等から成っている。素子基板1には、前述のように発泡液に熱を与えるための発熱抵抗体が、複数個、列状に設けられており、また、この発熱抵抗体を選択的に駆動するための機能素子が複数設けられている。この素子基板1と可動壁を持つ前述の分離壁30との間に発泡液路が形成され発泡液が流通する。この分離壁30と溝付天板50との接合によって、吐出される吐出液体が流通する吐出流路(不図示)が形成される。
【0248】
押さえバネ78は、溝付部材50に素子基板1方向への付勢力を作用させる部材であり、この付勢力により素子基板1、分離壁30、溝付部材50と、後述する支持体70とを良好に一体化させている。
【0249】
支持体70は、素子基板1等を支持するためのものであり、この支持体70上にはさらに素子基板1に接続し電気信号を供給するための回路基板71や、装置側と接続することで装置側と電気信号のやりとりを行うためのコンタクトパッド72が配置されている。
【0250】
液体容器90は、液体吐出ヘッドに供給される、インク等の吐出液体と気泡を発生させるための発泡液とを内部に区分収容している。液体容器90の外側には、液体吐出ヘッドと液体容器との接続を行う接続部材を配置するための位置決め部94と接続部を固定するための固定軸95が設けられている。吐出液体の供給は、液体容器の吐出液体供給路92から接続部材の供給路84を介して液体供給部材80の吐出液体供給路81に供給され、各部材の吐出液体供給路83,71,21を介して第1の共通液室に供給される。発泡液も同様に、液体容器の供給路93から接続部材の供給路を介して液体供給部材80の発泡液供給路82に供給され、各部材の発泡液体供給路84,71,22を介して第2液室に供給される。
【0251】
以上の液体吐出ヘッドカートリッジにおいては、発泡液と吐出液が異なる液体である場合も、供給を行いうる供給形態および液体容器で説明したが、吐出液体と発泡液体とが同じである場合には、発泡液と吐出液の供給経路および容器を分けなくてもよい。
【0252】
なお、この液体容器には、各液体の消費後に液体を再充填して使用してもよい。このためには液体容器に液体注入口を設けておくことが望ましい。又、液体吐出ヘッドと液体容器とは一体であってもよく、分離可能としてもよい。
【0253】
<液体吐出装置>
図34は、前述の液体噴射ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示している。本実施態様例では特に吐出液体としてインクを用いたインク吐出記録装置を用いて説明する液体吐出装置のキャリッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と液体吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0254】
不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液体が吐出される。
【0255】
また、本実施態様例の液体吐出装置においては、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャリッジに伝えるためのギア112、113キャリッジ軸115等を有している。この記録装置及びこの記録装置で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対して液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ることができた。
【0256】
図35は、本発明の液体吐出方法および液体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるための装置全体のブロック図である。
【0257】
記録装置は、ホストコンピュータ300より印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力される。CPU302はROM303に保存されている制御プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0258】
またCPU302は前記画像データを記録用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モータを駆動するための駆動データを作る。画像データおよびモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミングで駆動され画像を形成する。
【0259】
上述のような記録装置に適用でき、インク等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用いられるプラスチック材、布帛、アルミニュウムや銅等の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0260】
また上述の記録装置として、各種の紙やOHPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパクトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミックス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等をも含むものである。
【0261】
またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体を用いればよい。
【0262】
<記録システム>
次に、本発明の液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして用い被記録媒体に対して記録を行う、インクジェット記録システムの一例を説明する。
【0263】
図36は、前述した本発明の液体吐出ヘッド201を用いたインクジェット記録システムの構成を説明するための模式図である。本実施態様例における液体吐出ヘッドは、被記録媒体150の記録可能幅に対応した長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフルライン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応した4つのヘッドをホルダ202によりX方向に所定の間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0264】
これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号供給手段を構成するヘッドドライバ307から信号が供給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成される。
【0265】
各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,Bkの4色のインクがそれぞれ204a〜204dのインク容器から供給されている。なお、符号204eは発泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器から各ヘッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0266】
また、各ヘッドの下方には、内部にスポンジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ203a〜203dが設けられており、非記録時に各ヘッドの吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができる。
【0267】
符号206は、先の各実施態様例で説明したような各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構成する搬送ベルトである。搬送ベルト206は、各種ローラにより所定の経路に引き回されており、モータドライバ305に接続された駆動用ローラにより駆動される。
【0268】
本実施態様例のインクジェット記録システムにおいては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種の処理を行う前処理装置251および後処理装置252をそれぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けている。
【0269】
前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なるが、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によってその表面にゴミが付着しやすく、このゴミによって良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチオ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理として行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であってもよい。
【0270】
一方、後処理は、インクが付与された被記録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残った処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0271】
なお、本実施態様例では、ヘッドとしてフルラインヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述したような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送して記録を行う形態のものであってもよい。
【0272】
<ヘッドキット>
以下に、本発明の液体吐出ヘッドを有するヘッドキットを説明する。図37は、このようなヘッドキットを示した模式図であり、このヘッドキットは、インクを吐出するインク吐出部511を有する本発明のヘッド510と、このヘッドと不可分もしくは分離可能な液体容器であるインク容器520と、このインク容器にインクを充填するためのインクを保持したインク充填手段とを、キット容器501内に納めたものである。
【0273】
インクを消費し終わった場合には、インク容器の大気連通口521やヘッドとの接続部や、もしくはインク容器の壁に開けた穴などに、インク充填手段の挿入部(注射針等)531の一部を挿入し、この挿入部を介してインク充填手段内のインクをインク容器内に充填すればよい。
【0274】
このように、本発明の液体吐出ヘッドと、インク容器やインク充填手段等を一つのキット容器内に納めてキットにすることで、インクが消費されてしまっても前述のようにすぐに、また容易にインクをインク容器内に充填することができ、記録の開始を迅速に行うことができる。
【0275】
なお、本実施態様例のヘッドキットでは、インク充填手段が含まれるもので説明を行ったが、ヘッドキットとしては、インク充填手段を持たず、インクが充填された分離可能タイプのインク容器とヘッドとがキット容器510内に納められている形態のものであってもよい。
【0276】
また、この図37では、インク容器に対してインクを充填するインク充填手段のみを示しているが、インク容器の他に発泡液を発泡液容器に充填するための発泡液充填手段をキット容器内に納めた形態のものであってもよい。
【0277】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば複数の基板および(または)複数の分離壁を有する液体吐出ヘッドにおいて吐出特性分布を均一化することが可能となるので、複数分離壁の隙間や複数基板の隙間によるもの等で記録画像にみだれが生じるのを防止し、製造上の歩留りやコストダウンをはかることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施態様例を示すヘッドの一部の分解斜視図である。
【図2】本発明における第1の実施態様例を示すヘッドの一部の断面図である。
【図3】本発明における第2の実施態様例を示すヘッドの一部の分解斜視図である。
【図4】本発明における第3の実施態様例を示すヘッドの一部の分解斜視図である。
【図5】本発明における第4の実施態様例(a)は各基板に設けられた可動部材の構成を示す模式的平面図、(b)は吐出量を示すグラフ、(c)は総吐出量を示すグラフである。
【図6】本発明における第5の実施態様例(a)および(b)はそれぞれ各基板に設けられた発熱体および可動部材の構成を示す模式的平面図、(c)および(d)は吐出量を示すグラフ、(e)は総吐出量を示すグラフである。
【図7】本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図9】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示す模式図である。
【図10】本発明のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示す模式図である。
【図11】本発明の液体の流れを説明するための模式図である。
【図12】本発明の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図14】本発明のる液体吐出ヘッドの断面図である。
【図15】本発明の液体吐出ヘッドの模式断面図である。
【図16】本発明の液体吐出ヘッド(2流路)の断面図である。
【図17】本発明の第6の実施態様例における液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図18】可動部材の動作を説明するための図である。
【図19】可動部材と第1液流路の構造を説明するための図である。
【図20】可動部材と液流路の構造を説明するための図である。
【図21】可動部材の他の形状を説明するための図である。
【図22】発熱体面積とインク吐出量の関係を示す図である。
【図23】可動部材と発熱体との配置関係を示す図である。
【図24】発熱体のエッジと支点までの距離と可動部材の変位量の関係を示す図である。
【図25】発熱体と可動部材との配置関係を説明するための図である。
【図26】本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図である。
【図27】駆動パルスの形状を示す模式図である。
【図28】本発明の液体吐出ヘッドの供給路を説明するための断面図である。
【図29】本発明のヘッドの分解斜視図である。
【図30】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
【図31】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
【図32】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
【図33】液体吐出ヘッドカートリッジの分解斜視図である。
【図34】液体吐出装置の概略構成図である。
【図35】装置ブロック図である。
【図36】液体吐出記録システムを示す図である。
【図37】ヘッドキットの模式図である。
【図38】従来の液体吐出ヘッドの液流路構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1 素子基板
2 発熱体
3 面積中心
10 液流路
11 気泡発生領域
12 供給路
13 共通液室
14 第1液流路
15 第1共通液室
16 第2液流路
17 第2共通液室
18 吐出口
19 狭窄部
20 第1供給路
21 第2供給路
22 第1液流路壁
23 第2液流路壁
24 凸部
30 分離壁
31 可動部材
32 自由端
33 支点
34 支持部材
35 スリット
36 気泡発生領域前壁
37 気泡発生領域側壁
40 気泡
45 液滴
50 溝付き部材
51 オリフィスプレート
70 支持体
78 ばね
80 供給部材

Claims (10)

  1. 液体を吐出する複数の吐出口が形成された液体吐出ヘッドであって、 液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる複数の発熱体が連続的に配置されるように配列された複数の基板と、該発熱体に沿った該発熱体より上流側から前記発熱体上に液体を供給するための供給路とを有する液流路と、
    前記複数の発熱体にそれぞれ面して設けられ、吐出口側に自由端を有するとともに前記気泡の発生による圧力に基づいて前記自由端を変位させて前記圧力を吐出口側に導く可動部を有する少なくとも1つの分離壁と、を有するとともに、
    さらに、少なくとも前記複数の基板間の境界に位置する発熱体に対応する可動部が、他の可動部の寸法および位置の少なくともどちらか一つが異なることで前記それぞれ吐出口から吐出される液体の吐出特性のばらつきが補正されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記分離壁は、前記基板に対応して複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記分離壁は、前記液流路を、吐出口に連通した第1の液流路と、液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する第2の液流路と、に区分するものであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記液体吐出ヘッドは、それぞれの吐出口に対応して直接連通する複数の第1の液流路を構成するための複数の溝と、前記複数の第1の液流路に液体を供給するための第1の共通液室を構成する凹部とを一体的に有する溝付き部材を有し、前記液流路は該溝付部材と前記分離壁を介して前記基板と接合することにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出記録方法。
  6. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出させるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
  7. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから吐出された液体を受ける被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
  8. 前記被記録媒体は、記録紙、布帛、プラスチック、金属、木材、および皮革からなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
  9. 前記液体吐出ヘッドから複数色の記録液体を吐出し、被記録媒体に前記複数色の記録液体を付着させることでカラー記録を行うことを特徴とする請求項6または7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
  10. 前記吐出口が被記録媒体の記録可能領域の全幅に渡って、複数配されていることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
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