JP3417090B2 - 固体電解質用電極材料 - Google Patents

固体電解質用電極材料

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JP3417090B2
JP3417090B2 JP26722394A JP26722394A JP3417090B2 JP 3417090 B2 JP3417090 B2 JP 3417090B2 JP 26722394 A JP26722394 A JP 26722394A JP 26722394 A JP26722394 A JP 26722394A JP 3417090 B2 JP3417090 B2 JP 3417090B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体電解質用電極材料
に関し、特に固体電解質型ガスセンサ、例えば酸素セン
サや天然ガス等の燃焼による固体電解質型燃料電池のジ
ルコニアやセリア等の固体電解質の電極材料として用い
ることができる触媒作用を有するペロブスカイト型複合
酸化物を用いた固体電解質用電極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、固体電解質型ガスセンサ、特に酸
素センサや天然ガス等の燃焼による固体電解質型燃料電
池の電極材料としては、白金、ロジウム及びパラジウム
等の貴金属が用いられているが、コストが高く、使用環
境によっては特性劣化が生じていた。特に、燃料電池の
電極材料として用いる場合には、1,200℃以上で用
いられることがしばしば想定されることから、耐久性と
いう面からも耐熱性に優れた電極材料が要望される。こ
のため、耐熱性に優れた電極特性と高い電気伝導性を有
するペロブスカイト型複合酸化物が電極材料として検討
されている。
【0003】最近、酸素センサ用電極材料としては、ペ
ロブスカイト電極材料を用いるとセンサの作動開始温度
を低温化することができ、特性の改善が図れることが明
らかとなっている(Y.Takeda、R.Kanno 、M.Noda、Y.To
mida、and O.Yamamoto、J.Electrochem.Soc.,134, 11,
2656, (1987)) 。通常、酸素センサ用電極材料として白
金などの金属電極を用いた場合には、酸素イオンの固体
電解質への侵入が気相−電極−電解質の接する三相界面
という限られたところでのみ起きる。
【0004】一方、電子−イオン混合導電体電極では、
電極と電解質とが接する二相界面でも酸素イオンが侵入
することができるので、ペロブスカイトを電極材料とす
ることにより、固体電解質/ペロブスカイト界面の電極
反応抵抗を減少させることができ、低温で作動可能な高
性能電極が可能となることが明らかとなっている(H.Ar
ai、K.Eguchi、and T.Inoue 、Proc.of the Symposiu o
n Chemical Sensors (Hawaii) 、87-9 (1987) 、p.224
7.)。このようなセンサをエンジン制御用として用いる
と、エンジン始動時、特にコールドスタート時からのエ
ンジン制御を可能とし、排ガスエミッションを低減させ
ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ペロブ
スカイトを電極材料として用いる場合には、高活性な材
料(La−Co−O系)ほど高温度領域や還元雰囲気下
での長時間の使用により、ジルコニア系やセリア系固体
電解質とペロブスカイトとが反応し、固体電解質/ペロ
ブスカイト界面の反応抵抗が増加する。その結果、燃料
電池においては発電効率を低下せしめる。また、センサ
として用いた場合にも、高温領域での使用による応答速
度の低下と異常な出力を発生させ、最悪の場合には、作
動しなくなるという状態が発生する。
【0006】このようにペロブスカイト電極材料を用い
た場合には、安定した作動を保証するうえで、使用する
温度領域や環境に制限が生じる場合がある。特に酸素セ
ンサにおいては欧州の排ガス規制強化に伴うセンサ取り
付け位置の高温化や、エンジンのコールドスタート時か
らのエンジン制御が可能なことにより、低温活性に優れ
た酸素センサが望まれる。
【0007】このようにペロブスカイトは、燃料電池や
センサの電極材料として、特にその触媒作用と電気伝導
性を利用することになるが、この際、酸素イオン導電
体、即ち固体電解質と電極材料間における界面抵抗を減
少させ、かつ密着性を確保しつつ、固体電解質/電極材
料界面での化学反応による特性劣化や熱応力による剥離
等を抑制することが必要である。
【0008】従って本発明の目的は、所定の組成を有す
るAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物を用いるこ
とにより、ペロブスカイトと接する酸化物との間で固相
反応を抑制し、触媒作用を有するペロブスカイト型複合
酸化物の耐性や耐久性を改善し、更に触媒作用に重要
な貢献をする原子価を有効に制御することのできるAサ
イト欠損型ペロブスカイト複合酸化物を用いた固体電解
質用電極材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、一般式A1-αBO
3-δで表わされるペロブスカイト複合酸化物において、
αのとりうる範囲が0<α<0.2であり、かつ、δの
とりうる範囲が0δ≦1であることを特徴とするAサ
イト欠損型ペロブスカイト複合酸化物を用いることによ
り、電極作用に重要な貢献をするBサイト元素の原子価
を有効に制御させ、電子−イオン混合伝導体の伝導特性
を高め、電極特性の向上を図ることを可能とし、更にペ
ロブスカイトと接する酸化物との間で固相反応を抑制
し、電極作用を有するペロブスカイト型複合酸化物の耐
久性や耐熱性を改善することができることを見い出し、
本発明に到達した。
【0010】本発明の上記の目的は、一般式A1-αBO
3-δで表わされるAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸
化物において、式中のAがA′とA″、BがB′とB″
の2種類の構成元素からなる一般式(A′1-x A″x
1-α(B′1-y B″y )O3-δで表わされ、式中のA′
はLa、Nd及びYから成る群から選ばれた少なくとも
1種から構成され、A″は、Ba、Sr及びCaから成
る群から選ばれた少なくとも1種から構成され、B′は
Coであり、B″はFe、Ni及びCuから成る群から
選ばれた少なくとも1種から構成され、α、δ、x、y
のとりうる範囲がそれぞれ0<α<0.2、0<δ≦
1、0<x<1、0<y<1であることを特徴とする固
体電解質用Aサイト欠損型ペロブスカイト電極材料によ
り達成された。
【0011】
【作用】請求項1〜4記載の固体電解質用Aサイト欠損
型ペロブスカイト電極材料が優れた効果を発揮するメカ
ニズムについては、未だ必ずしも明らかに成っていない
が、次のように考えられる
【0012】請求項1記載の固体電解質用Aサイト欠損
型ペロブスカイト電極材料の作用 本発明の電極材料は、一般式A1-αBO3-δで表わされ
るAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物において、
式中のAがA′とA″、BがB′とB″の2種類の構成
元素からなる一般式(A′1-x A″x1-α(B′1-y
B″y )O3-δで表わされ、式中のA′はLa、Nd及
びYから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成さ
れ、A″は、Ba、Sr及びCaから成る群から選ばれ
た少なくとも1種から構成され、B′はCoであり、
B″はFe、Ni及びCuから成る群から選ばれた少な
くとも1種から構成され、α、δ、x、yのとりうる範
囲がそれぞれ0<α<0.2、0<δ≦1、0<x<
1、0<y<1とすることにより、特にxを変化させる
ことにより原子価制御によるBサイトの電子状態を制御
し、Aサイト欠損型ペロブスカイト構造を構成すること
により、酸素の放出吸収能を向上させ、固体電解質/電
極材料界面の内部抵抗を減少させ、且つ、耐熱性及び耐
久性を改善させることができる。
【0013】請求項2記載の固体電解質用Aサイト欠損
型ペロブスカイト電極材料の作用 本発明の電極材料は、一般式A1-αBO3-δで表わされ
るAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物において、
式中のAがA′とA″、BがB′とB″の2種類の構成
元素からなる一般式(A′1-x A″x1-α(B′1-y
B″y )O3-δで表わされ、式中のA′はLa、Nd及
びYから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成さ
れ、A″はBa、Sr及びCaから成る群から選ばれた
少なくとも1種から構成され、B′はMnであり、B″
はCuから構成され、α、δ、x、yのとりうる範囲が
それぞれ0<α<0.2、0<δ≦1、0<x<1、0
<y<1とすることにより、触媒活性に有効な元素の組
合せをx及びyを変化させ原子価制御によるBサイトの
電子状態を制御し、Aサイト欠損型ペロブスカイト構造
を構成することにより、触媒活性の向上と酸素の放出吸
収能を向上させることによる固体電解質/電極材料界面
の内部抵抗を減少させ、更に耐熱性及び耐久性を改善さ
せることができる。
【0014】請求項3記載の固体電解質用電極材料の作
用 本発明の電極材料は、 請求項1記載の一般式(A′
1-x A″x1-α(B′1-y B″y )O3-δで表わさ
れ、式中のA′はLa、Nd、Gd及びYから成る群か
ら選ばれた少なくとも1種から構成され、A″はBa、
Sr及びCaから成る群から選ばれた少なくとも1種か
ら構成され、B′はCoであり、B″はFe、Ni及び
Cuから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成さ
れ、α、δ、x、yのとりうる範囲がそれぞれ0<α<
0.2、0δ≦1、0<x<1、0<y<1であるこ
とを特徴とするAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化
物100重量部に加えて、蛍石型構造を有する酸化物
(Ce0.9 Ca0.12-x 等のセリア系やZr0.9
0.12-x 等のジルコニア系又はこれらの混合物)を2
〜20重量部の範囲で混合させたことによりなる固体電
解質用電極材料を用いることにより、固体電解質/電極
材料界面の内部抵抗のより一層の低減を行い、作動温度
の低温化を図り、更にペロブスカイト自体のシンタリン
グを抑制することにより耐熱性及び耐久性を改善させる
ことができる。
【0015】請求項4記載の固体電解質用電極材料の作
用 本発明の電極材料は、請求項2記載の一般式(A′1-x
A″x1-α(B′1-y B″y )O3-δで表わされ、式
中のA′はLa、Nd、Gd及びYから成る群から選ば
れた少なくとも1種から構成され、A″はBa、Sr及
びCaから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成
され、B′はMnであり、B″はCuから構成され、
α、δ、x、yのとりうる範囲がそれぞれ0<α<0.
2、0δ≦1、0<x<1、0<y<1であることを
特徴とするAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物1
00重量部に加えて、蛍石型構造を有する酸化物(Ce
0.9Ca0.12-x 等のセリア系やZr0.90.12-x
等のジルコニア系又はこれらの混合物)を2〜20重
量部の範囲で混合させたことによりなる固体電解質用電
極材料を用いることにより、固体電解質/電極材料界面
の内部抵抗のより一層の低減を行い、更に、ペロブスカ
イト自体のシンタリングを抑制することにより、1,2
00℃以上の高温域での使用においても耐久性の向上を
図ることが可能となる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳述する
が、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0017】参考例1 La0.81Sr0.09CoO3-δで示されるペロブスカイト
粉末を、以下に示す方法(特開平2−74505号公報
に記載された方法と同様である)により製造した。ラン
タン、ストロンチウム及びコバルトの炭酸塩(平均粒径
約2〜3μmの粉末を使用)を出発原料として、それぞ
れモル比でLa:Sr:Co=81:9:100と成る
ように加え、ボールミルで粉砕混合した(粉砕後、混合
粉の平均粒径約1μm)。得られた混合物100重量部
に対してクエン酸約64重量部及び純水400重量部を
加え、60±5℃で反応させた。反応が終了した後、得
られたスラリーを120℃で脱水して複合クエン酸塩を
得た。得られた複合クエン酸塩を600℃で1時間大気
中仮焼した後、800℃で5時間本焼を行い、La0.81
Sr0.09CoO3-δ複合酸化物粉末を製造した。尚、以
下の実施例及び比較例においても、特に断らない限り、
出発原料である炭酸塩の種類や混合比を変更した他は、
実施例1と全く同様な方法によりペロブスカイト粉末を
製造した。
【0018】参考例2 La0.54Sr0.36CoO3-δ〔(La0.6 Sr0.4
0.9 CoO3-δ〕で示されるペロブスカイト粉末を参考
例1と全く同様にして製造した。
【0019】実施例1 La0.54Sr0.36Co0.8 Fe0.23-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.8 Fe0.23-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。ただし、鉄の出発原料として水酸化物を用いた。
【0020】参考例3 La0.54Sr0.36Co0.8 Mn0.23-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.8 Mn0.23-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0021】参考例4 La0.54Sr0.36Co0.5 Mn0.53-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.5 Mn0.53-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0022】参考例5 La0.54Sr0.36Co0.2 Mn0.83-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.2 Mn0.83-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0023】実施例2 La0.81Ba0.09Co0.5 Fe0.53-δ〔(La0.9
Ba0.10.9 Co0.5 Fe0.53-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。ただし、鉄の出発原料としては水酸化物を用いた。
【0024】参考例6 Nd0.54Sr0.36Mn0.8 Fe0.23-δ〔(Nd0.6
Sr0.40.9 Mn0.8 Fe0.23-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。ただし、鉄の出発原料としては水酸化物を用いた。
【0025】実施例3 La0.54Sr0.36Mn0.8 Cu0.23-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Mn0.8 Cu0.23-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0026】参考例7 Y0.81Ca0.09Mn0.8 Co0.23-δ〔(Y0.9 Ca
0.10.9 Mn0.8 Co0.23-δ〕で示されるペロブ
スカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造した。
【0027】実施例4 La0.54Sr0.36Co0.9 Ni0.13-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.9 Ni0.13-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0028】参考例8 La0.54Sr0.36CoO3-δ〔(La0.6 Sr0.4
0.9 CoO3-δ〕で示されるペロブスカイト粉末を参考
例1と全く同様にして製造した。更に、この粉末100
重量部に対してセリア(CeO2-x )粉末を5重量部を
加え、混合した。
【0029】参考例9 La0.54Sr0.36Co0.8 Mn0.23-δ〔(La0.6
Sr0.40.9 Co0.8 Mn0.23-δ〕で示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。更に、この粉末100重量部に対してセリア(Ce
2-x )粉末を5重量部を加え、混合した。
【0030】参考例10 La0.54Sr0.36CoO3-δ〔(La0.6 Sr0.4
0.9 CoO3-δ〕で示されるペロブスカイト粉末を参考
例1と全く同様にして製造した。更に、この粉末100
重量部に対してセリア(CeO2-x )粉末5重量部及び
ジルコニア(Zr0.90.12-x )粉末5重量部を加
え、混合した。
【0031】比較例1 La1.0 CoO3-δで示されるペロブスカイト粉末を参
考例1と全く同様にして製造した。
【0032】比較例2 La0.8 Sr0.2 CoO3-δで示されるペロブスカイト
粉末を参考例1と全く同様にして製造した。
【0033】比較例3 La0.6 Sr0.4 CoO3-δで示されるペロブスカイト
粉末を参考例1と全く同様にして製造した。
【0034】比較例4 La0.6 Sr0.4 Co0.8 Fe0.23-δで示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。ただし、鉄の出発原料としては水酸化物を用いた。
【0035】比較例5 La0.5 Sr0.5 Co0.5 Mn0.53-δで示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。ただし、鉄の出発原料としては水酸化物を用いた。
【0036】比較例6 La0.9 Ba0.1 Co0.5 Fe0.53-δで示されるペ
ロブスカイト粉末を参考例1と全く同様にして製造し
た。
【0037】比較例7 Y0.9 Ca0.1 Mn0.8 Co0.23-δで示されるペロ
ブスカイト粉末を参考例1と同様にして製造した。
【0038】比較例8 La0.6 Sr0.4 CoO3-δで示されるペロブスカイト
粉末を参考例1と全く同様にして製造した。更に、この
粉末100重量部に対してセリア(CeO2-x)粉末を
5重量部を加え、混合した。
【0039】試験例1 実施例1〜4、参考例1〜10及び比較例1〜7で得ら
れたペロブスカイトについて、固体電解質(Ce0.9
0.12-δ)にペロブスカイト粉末を焼き付けて評価
用セルとし、起電力の測定を行い、本発明によるAサイ
ト欠損型と従来のペロブスカイトにおける起電力が、N
ernstの式による理論起電力に一致する温度を素子
の作動開始温度TNe(℃)とし、このTNe(℃)を用い
て、電極としてペロブスカイトの特性評価を行なった。
以下に、評価方法及び条件を示す。
【0040】(起電力測定評価法) 1)評価試料の作製 測定評価用セルの模式図を図1に示す。このような電気
化学的測定セルの形成方法を以下に示す。 (1)ペロブスカイト粉末とテレピン油を適度に混合し
ペーストを作製した。 (2)このペーストを固体電解質に塗布し、乾燥した。 (3)電極を850℃1時間大気中で加熱処理により焼
き付けた。
【0041】2)特性評価条件 基準極に1atmの酸素を流し、測定極側に10%O2
−N2 ガスを流した時の起電力を測定し、特性評価を行
なった。 3)測定セルの耐久は大気中1000℃又は1200℃
2時間アニールすることにより行なった。
【0042】Aサイト欠損型とすることにより、触媒作
用に重要な貢献をする原子価制御を有効に働かせること
が可能であることを、格子欠陥論を用いた理論的考察か
ら論証することが可能である。LaCoO3-δを例にと
り、ペロブスカイトの触媒活性の向上に用いられる原子
価制御を説明すると、Aサイトをしめる+3価のLaの
一部を電荷の異なる+2価のSrで置換することにより
酸化活性が大きく向上するが、これは雰囲気中の酸素濃
度により La3+ 1-x Sr2+ x Co3+ 1-x Co4+ x3 <====> La3+ 1-x Sr2+ x Co3+ 1-x+2 δCo4+ x-2 δO3-δ +(1/2)δO2 という化学反応式に従い、酸素が可逆的に出入りするこ
とによると考えられる〔田中、高橋:自動車技術、Vo
l.47、p51(1993)〕。
【0043】しかし、実際には酸素空孔の導入と同時に
Coの価数の変化も想定することができる。もし、酸素
空孔を発生させることなしに原子価制御がされれば、上
式中の酸素欠損量δの減少を伴い、同時にCoの価数の
上昇が見られ、結果的に金属的な電子状態が実現され
る。これを光電子分光(紫外線光電子分光:UPS)測
定を用いて検討した結果を図2に示す。
【0044】図2に示すように、半導体的なLaCoO
3-δとLa0.8 Sr0.2 CoO3-δの状態密度に比べL
0.81Sr0.09CoO3-δではフェルミエネルギー(図
中の結合エネルギーが0eVのところ)付近の電子状態
密度が増加することから、金属的な状態にあることが明
らかである。このようにAサイト欠損型とすることによ
り、効果的にキャリアの導入が行え、半導体から金属的
状態へ遷移させることが可能であることを示している。
このことは電極材料の電気伝導性を高め、固体電解質界
面との接触抵抗を軽減し電極反応抵抗を低下させ、酸素
センサの電極材料として用いる場合には、作動温度の低
温化を可能にすると考えられる。そこで、以下に、本発
明と比較例を用いて、本発明の有効性を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】表1に示すように、比較例1〜7に示す組
成に対して、実施例1〜4にあるような組成、一般的に
は化学式(A′1-x A″x1-α(B′1-y B″y )O
3-δで表わされ、α、δ、x、yのとりうる範囲がそれ
ぞれ0<α<0.2、0<δ≦1、0<x<1、0<y
<1であることを特徴とするAサイト欠損型ペロブスカ
イト複合酸化物とすることにより、酸素センサの作動開
始温度を低温化することを可能にすることを示してい
る。
【0047】次に、耐久性について検討した結果を表2
に示す。
【表2】
【0048】加熱耐久後も、比較例7に示す組成に対し
て実施例3にあるような一般式(A′1-x A″x1-α
(B′1-y B″y )O3-δで表わされるAサイト欠損型
ペロブスカイト複合酸化物を電極材料とすることにより
固体電解質/電極界面の特性劣化を抑制し、電極反応抵
抗の上昇を抑えることにより、作動開始温度の著しい劣
化を抑制し、耐久性を向上させることが可能となる。
【0049】また、耐久性の向上を目的としてペロブス
カイトに加え蛍石型酸化物であるセリアやジルコニアを
添加した効果に付いて検討した結果を表3に示す。
【表3】
【0050】蛍石型酸化物を第二成分として添加するこ
とにより、作動開始温度の低温化を図ることができる
が、耐久することにより特性の劣化が見られる。しか
し、表3に示すように比較例8の電極材料組成に対し
て、参考例8〜10にあるAサイト欠損型ペロブスカイ
ト複合酸化物と蛍石型酸化物を電極材料として用いるこ
とにより、耐久後の特性劣化を抑えることが可能となり
耐熱性の向上を図ることが可能となった。
【0051】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1及び
2の本発明の固体電解質用Aサイト欠損型ペロブスカイ
ト電極材料によれば、その構成を少なくとも一般式
(A′1-xA″x1-α(B′1-y B″y )O3-δで表
わされ、α、δ、x、yのとりうる範囲がそれぞれ0<
α<0.2、0δ≦1、0<x<1、0<y<1であ
ることを特徴とするAサイト欠損型ペロブスカイト複合
酸化物とすることにより、電極作用に重要な貢献をする
Bサイト元素の原子価制御を効果的に働かせ、電子−イ
オン混合伝導体の伝導特性を高め、電極特性の向上を図
ることを可能にし、更に、ペロブスカイトと接する固体
電解質及び第二成分として添加された蛍石型酸化物との
間での固相反応を抑制し、耐久性や耐熱性を有した電極
特性に優れたペロブスカイト複合酸化物を供給すること
が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 起電力測定用電気化学セルの模式図である。
【図2】 ペロブスカイト複合酸化物の光電子スペクト
ルである。従来例のペロブスカイトLa1.0 CoO3-δ
(比較例1)、La0.8 Sr0.2CoO3-δ(比較例
2)と本参考例によるLa0.81Sr0.09CoO3-δ(実
施例1)との比較
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G01N 27/409 G01N 27/58 A (56)参考文献 特開 平5−9057(JP,A) 特開 平4−51461(JP,A) 特開 平7−65838(JP,A) 特開 平7−249414(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/86 C01G 49/00 C01G 51/00 C01G 53/00 C04B 35/495 C01N 27/409

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式A1-αBO3-δで表わされるAサ
    イト欠損型ペロブスカイト複合酸化物において、式中の
    AがA′とA″、BがB′とB″の2種類の構成元素か
    らなる一般式(A′1-x A″x1-α(B′1-y B″
    y )O3-δで表わされ、式中のA′はLa、Nd及びY
    から成る群から選ばれた少なくとも1種から構成され、
    A″は、Ba、Sr及びCaから成る群から選ばれた少
    なくとも1種から構成され、B′はCoであり、B″は
    Fe、Ni及びCuから成る群から選ばれた少なくとも
    1種から構成され、α、δ、x、yのとりうる範囲がそ
    れぞれ0<α<0.2、0<δ≦1、0<x<1、0<
    y<1であることを特徴とする固体電解質用Aサイト欠
    損型ペロブスカイト電極材料。
  2. 【請求項2】 一般式A1-αBO3-δで表わされるAサ
    イト欠損型ペロブスカイト複合酸化物において、式中の
    AがA′とA″、BがB′とB″の2種類の構成元素か
    らなる一般式(A′1-x A″x1-α(B′1-y B″
    y )O3-δで表わされ、式中のA′はLa、Nd及びY
    から成る群から選ばれた少なくとも1種から構成され、
    A″はBa、Sr及びCaから成る群から選ばれた少な
    くとも1種から構成され、B′はMnであり、B″はC
    uから構成され、α、δ、x、yのとりうる範囲がそれ
    ぞれ0<α<0.2、0<δ≦1、0<x<1、0<y
    <1であることを特徴とする固体電解質用Aサイト欠損
    型ペロブスカイト電極材料。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の一般式(A′1-x A″
    x1-α(B′1-y B″y)O3-δで表わされ、式中の
    A′はLa、Nd、Gd及びYから成る群から選ばれた
    少なくとも1種から構成され、A″はBa、Sr及びC
    aから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成さ
    れ、B′はCoであり、B″はFe、Ni及びCuから
    成る群から選ばれた少なくとも1種から構成され、α、
    δ、x、yのとりうる範囲がそれぞれ0<α<0.2、
    0<δ≦1、0<x<1、0<y<1であることを特徴
    とするAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物100
    重量部に加えて、蛍石型構造を有する酸化物を2〜20
    重量部の範囲で混合させたことによりなることを特徴と
    する固体電解質用電極材料。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の一般式(A′1-x A″
    x1-α(B′1-y B″y)O3-δで表わされ、式中の
    A′はLa、Nd、Gd及びYから成る群から選ばれた
    少なくとも1種から構成され、A″はBa、Sr及びC
    aから成る群から選ばれた少なくとも1種から構成さ
    れ、B′はMnであり、B″はCuから構成され、α、
    δ、x、yのとりうる範囲がそれぞれ0<α<0.2、
    0<δ≦1、0<x<1、0<y<1であることを特徴
    とするAサイト欠損型ペロブスカイト複合酸化物100
    重量部に加えて、蛍石型構造を有する酸化物を2〜20
    重量部の範囲で混合させたことによりなることを特徴と
    する固体電解質用電極材料。
  5. 【請求項5】 前記螢石型構造を有する酸化物がCe
    0.9 Ca0.12-x および/またはZr0.90.1
    2-x であることを特徴とする請求項3または4記載の固
    体電解質用電極材料。
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