JP3409276B2 - 熱処理歪の少ない高炭素鋼 - Google Patents

熱処理歪の少ない高炭素鋼

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JP3409276B2 JP30605597A JP30605597A JP3409276B2 JP 3409276 B2 JP3409276 B2 JP 3409276B2 JP 30605597 A JP30605597 A JP 30605597A JP 30605597 A JP30605597 A JP 30605597A JP 3409276 B2 JP3409276 B2 JP 3409276B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱処理歪の少ない高
炭素鋼に関し、詳細には焼入れによる部品の形状変化が
少なく、寸法のばらつきの小さい高炭素鋼に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】自動車や産業機械等で用いられる転がり
軸受け等の軸受けやシャフト等の部品は、耐摩耗性や耐
転動疲労性の改善を目的として、焼入れ処理や、浸炭焼
入れ処理、浸炭窒化焼入れ処理等の硬化処理が施されて
いる。
【0003】但し、これらの硬化処理は高温で加熱した
後に急冷を行う処理であるので、冷却工程において部品
の表層部と内部の温度差に起因する熱応力が発生すると
共に、相変態に伴う体積変化により変態応力が発生する
ものであり、熱処理歪が不可避的に発生する。例えば、
軸受けレース等のリング型部品の場合には、外径の真円
度が悪くなったり、シャフト等の軸型部品の場合には曲
がりが生じたりする。しかも焼入れ処理の後工程は、表
面研磨だけであることから、発生した熱処理歪はそのま
ま部品に残されることとなり、特定の位置だけに高い圧
力がかかって、耐久性の低下を招いたり、或いは騒音や
振動を発生させる等、部品の性能に直接影響を及ぼすも
のである。
【0004】そこで焼入れ後の研磨代を大きくしたり、
冷間曲がり矯正を行うことにより、部品形状を修正する
ような方法等が行われているが、いずれの方法も多大の
費用と労力を要するという問題点がある。従って、熱処
理歪の発生が極めて少なく、焼入れ後に部品形状の修正
を行う必要のない高炭素鋼の開発が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであり、焼入れによる熱処理歪が少
なく、焼入れ後に部品形状の修正を行う必要のない高炭
素鋼を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明の高炭素鋼とは、棒状圧延材の横断面において等軸晶
の占める領域が面積率で30%以下であることを要旨と
するものであり、また棒状圧延材の横断面における中心
偏析帯の中心と前記横断面の中心との距離をa、圧延材
の直径をDとする時、a/Dの値が0.05以下である
ことが望ましく、更に棒状圧延材の横断面における等軸
晶域の中心と前記横断面の中心との距離をbとする時、
b/Dの値が0.05以下であることが望ましい。
【0007】尚、本発明において、等軸晶域の面積率を
算出するにあたり、等軸晶と柱状晶が混在する分岐柱状
晶の領域が存在する場合には、上記分岐柱状晶域は等軸
晶域に含めて面積率を算出することとする。
【0008】本発明の高炭素鋼の化学成分は、C:0.
6〜1.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:2.
0%以下(0%を含まない)、Mn:0.2〜1.2
%、Al:0.01〜0.06%、N :0.003〜
0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物か
らなる。
【0009】また本発明の高炭素鋼において、P,S,
Ti,Oは不純物元素であり、夫々P:0.03%以下
(0%を含む)、S:0.03%以下(0%を含む)、
Ti:0.005%以下(0%を含む)、O:0.00
2%以下(0%を含む)に制限することが好ましい。
【0010】また焼入性の向上を目的としてCr:2.
0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0
%を含まない)、Mo:2.0%以下(0%を含まな
い)、Cu:1.0%以下(0%を含まない)よりなる
群から選択される1種以上を含有させてもよく、靱性の
向上を目的としてV:0.01〜0.3%及び/又はN
b:0.01〜0.1%を含有させてもよい。さらに被
削性の向上を目的として、Ca:0.01%以下(0%
を含まない)、Pb:0.3%以下(0%を含まな
い)、Te:0.1%以下(0%を含まない)、Zr:
0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択さ
れる1種以上を含有させてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは後記する実施例を含
む多くの実験データに基づいて、上記圧延材横断面中の
等軸晶(分岐柱状晶域を含む)の面積率が焼入れ時の熱
処理歪に及ぼす影響を調べたところ、図1に外径真円度
の例を示す通り、圧延材横断面中の等軸晶域の面積率が
小さくなるほど焼入歪量が少なくなるとの知見を得た。
具体的には、面積率が30%を超えると歪発生量が極端
に悪くなっており、等軸晶域の割合を30%以下に抑え
る必要があることが分かった。
【0012】この様に、本発明者らは機械構造用鋼の熱
処理歪に及ぼす鋳造組織の影響について様々な角度から
研究を重ねた結果、鋳造時に生成する鋳造組織と熱処理
歪の間に非常に大きな相関があることを見出し本発明に
想到したものであり、本発明では棒状圧延材の横断面に
おいて、等軸晶域(分岐柱状晶域を含む)を面積率で3
0%以下に抑えることにより、焼入れ時の熱処理歪の発
生を極力抑制するものである。
【0013】図2に示す様に、鋳造初期には柱状晶1が
生成し、鋳造後期には等軸晶2が生成することが知られ
ているが、柱状晶域に対して等軸晶域ではCやCr等の
焼入性向上元素の含有量が多く、その分ミクロ的には上
記焼入性向上元素の成分偏析の程度が大きくなってい
る。このため、等軸晶域では焼入性が部分的に大きく異
なっており、この焼入性のバラツキが焼入れ時の歪の原
因となっているものと考えられる。従って、本発明では
焼入れ性のバラツキの大きい等軸晶域を減少させて、ミ
クロ的な成分偏析が少なく焼入性のバラツキの小さい柱
状晶域を増大させることにより、焼入歪量が非常に小さ
く制限できるものである。
【0014】尚、リング型部材の場合、圧延材を用いて
そのままリング状に切削加工する場合には、中央部の等
軸晶域は取り除かれるので悪影響を及ぼすことはないも
のと考えられるが、通常は、強度向上を目的として、丸
棒状の圧延材を熱間鍛造で円板状に据込み加工した後、
リング状に切り出すことが一般的であり、圧延材の等軸
晶域の面積率が大き過ぎると、リング状部材であっても
等軸晶を有するものである。したがって、リング型部材
の場合であっても、熱処理歪の発生を防止する上で、圧
延材として横断面の等軸晶域の面積率が30%以下のも
のを用いることが非常に有効である。
【0015】また鋳造最終段階の凝固時に中心部付近に
生成する中心偏析帯はその周囲よりもCやCr等の焼入
性向上元素がかなり高くなっていることから、中心偏析
帯は周囲よりも焼入性が高い。この中心偏析帯が鋼材の
中心より離れた位置に存在する場合、中心偏析帯におい
ては周囲に比べ焼入れ時にマルテンサイトが生成し易
く、且つ変態膨張量も大きくなり、片側に偏った歪が発
生してしまう。一方、中心偏析帯が中心付近に存在する
場合は、全円周方向または厚み方向に対して均一に変形
が発生する。従って、図2に示す様に、棒状圧延材の横
断面における中心偏析帯の中心と前記横断面の中心との
距離をa、圧延材の直径をDとする時、a/Dの値を
0.05以下とすることが、焼入れ時の熱処理歪を低減
させる上で望ましい。
【0016】更に、凝固最終段階で凝固する等軸晶域
は、先に凝固する柱状晶域に比べてCやCr等の焼入性
向上元素の含有量が多く、しかも偏析している。このた
め、等軸晶域では焼入性のバラツキが大きく、このバラ
ツキが焼入れ時の歪の原因となっている。この焼入れ性
のバラツキの大きい等軸晶域が、中心よりもずれた位置
に存在した場合、片側で等軸晶領域が大きくなり、焼入
れ時に、片側に偏った歪が発生してしまう。これに対し
て、等軸晶の中心が圧延材の中心付近に存在する場合
は、全円周方向に対して均一に変形するため、全周に均
一に変形が発生する。従って、図2に示す様に、棒状圧
延材の横断面における等軸晶域の中心と前記横断面の中
心との距離をb、圧延材の直径をDとする時、b/Dの
値を0.05以下とすることが、焼入れ時の熱処理歪を
低減させる上で推奨される。
【0017】尚、等軸晶域を面積率で30%以下に制御
するにあたっては、比較的大きな速度で冷却を施しなが
ら連続鋳造を行うことが望ましく、鋳造開始から約80
0℃までを4℃/min以上の速度で冷却することが好
ましい。また連続鋳造の際に、電磁撹拌を行うと等軸晶
域が大きくなり易いので、電磁撹拌は極力制限すること
が推奨される。
【0018】さらに中心偏析帯は、例えば鋳片の片側側
面だけから冷却を施した場合に圧延材中心からずれるの
で、できるだけ鋳片の全周から均一に冷却を施すことが
望ましい。等軸晶域の中心は、例えば水平型連続鋳造等
を採用した場合には圧延材中心からずれて前記b/Dの
値が0.05を超えるので、垂直型鋳造や全湾曲型鋳造
を行うことが望ましく、鋳片を湾曲させる際の曲げRは
できるだけ大きくすることが推奨される。
【0019】次に化学成分の限定理由を説明する。本発
明の高炭素鋼は、C,Si,Mn,Al,Nを以下の範
囲で含有することが望ましい。
【0020】C:0.6〜1.2% Cは、焼入れ・焼戻し後の硬さをHRCで58以上にし
転動疲労性等の軸受特性を確保するのに必要な元素であ
るので、C含有量の下限は、0.6%とすることが望ま
しく、0.8%以上がより好ましい。一方、C含有量が
1.2%を超えるとCが偏析しやすくなり熱処理歪が大
きくなるので、1.2%以下が望ましく、1.1%以下
であればより望ましい。
【0021】Si:2.0%以下(0%を含まない) Siは、脱酸の他に、焼入性及び焼戻し軟化抵抗性を向
上させる元素であるが、2.0%を超えて含有させて
も、それ以上の効果は少なく、かえって圧延材の強度を
挙げ、冷間鍛造性や被削性を低下させる。従って、Si
含有量は、2.0%以下が望ましく、0.5%以下であ
ればより望ましい。
【0022】 Mn:0.2〜1.2% Mnは、脱酸・脱硫に有効に作用する他、焼入性を高め
て表層及び芯部の硬さを高めることにより表面の陥没を
防止し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。こ
れらの作用を有効に発揮するには0.20%以上含有さ
せることが望ましい。但し、1.2%を超えて含有させ
ても効果は飽和すると共に、かえって熱処理歪が大きく
なるので、1.2%以下が好ましい。
【0023】Al:0.01〜0.06% Alは、焼入れ加熱時におけるオーステナイト結晶粒の
成長を抑えることにより歪を抑制するのに有効な元素で
あり、そのためには0.01%以上の添加が必要であ
る。但し、0.06%を超えて添加してもこの効果は飽
和するので上限を0.06%とした。好ましくは0.0
4%以下である。
【0024】N:0.003〜0.03% Nは、Alと結合してAlNを生成しオーステナイト結
晶粒の成長を抑制する元素である。この効果を発揮する
ためには0.003%以上の添加が必要である。但し、
0.03%を超えて過多に含有させると鍛造時や熱間加
工時に割れを起こし易くなるため、上限は0.03%と
することが望ましく、0.02%以下であればより好ま
しい。
【0025】本発明の高炭素鋼において、P,S,T
i,Oはいずれも不純物元素であり、夫々、以下の範囲
に制限することが望ましい。
【0026】P:0.03%以下(0%を含む) Pは靱性を低下させる元素であるから、含有量は極力少
なくする必要があり、0.03%以下が好ましく、0.
015%以下であればより好ましい。
【0027】S:0.03%以下(0%を含む) Sはほとんどが鋼中においてMnSの形で含有されてお
り、切削性を向上させる元素として知られているが、O
含有量が少ない場合には転動疲労性を低下させるので、
本発明においては不純物元素とした。よって、S含有量
は0.03%以下が好ましく、0.01%以下であれば
より好ましい。
【0028】Ti:0.005%以下(0%を含まな
い) Tiは鋼の脱酸、脱窒に有効に作用する他、結晶粒の微
細化に有効ではあるものの、TiN等の硬質介在物が生
成すると曲げ疲労特性や転動疲労特性が劣化するので、
本発明では不純物元素とした。よってTi含有量は0.
005%以下とすることが好ましく、0.0015%以
下であるとより好ましい。
【0029】O:0.0020%以下(0%を含む) OはAlと結合して転動疲労性に悪影響を及ぼすAl2
3 を生成し、また冷間加工性や熱間加工性を低下させ
るため、極力低くする必要がある。従って、O含有量は
0.0020%以下が好ましく、0.0015%以下で
あればより好ましい。
【0030】更に、本発明の高炭素鋼では、焼入性の向
上を目的として、Cr,Ni,Mo,Cuを以下の範囲
で添加しても良い。
【0031】Cr:2.0%以下(0%を含まない) Crは、焼入性を向上させ、表層及び芯部の硬さを高め
ることにより表面の陥没を防止し、転動疲労寿命の向上
に寄与する元素である。Cr含有量が0.2%未満では
この効果は少ないので0.2%以上が好ましく、0.3
%以上であればより好ましい。一方Cr含有量が2.0
%を超えるとCrが偏析しやすくなり、巨大なCr炭化
物が生成して転動疲労寿命を低下させるばかりでなく、
熱処理歪が大きくなるので、2.0%以下が好ましく、
1.6%以下であるとより好ましい。
【0032】Ni:2.0%以下(0%を含まない) Mo:2.0%以下(0%を含まない) Ni及びMoは共に焼入性を増加させる元素であり、質
量の大きな部品における焼入れ・焼戻し処理を容易にす
る元素であるが、含有量が2.0%を超えて含有させる
と冷間加工性及び被削性を低下させ、さらに焼入れ・焼
戻し後に残留オーステナイトが多量に発生し、寸法安定
性が劣化するばかりでなく、熱処理歪が大きくなる。よ
って、Ni,Mo含有量は2.0%以下とすることが望
ましい。
【0033】Cu:1.0%以下(0%を含まない) Cuは、焼入性を高めると共に靱性の向上に有効な元素
であり、且つ耐食性の向上にも有効である。但し、多過
ぎると熱間割れが生じ易くなって熱間加工性は劣化する
ので上限は1.0%とすることが望ましく、0.6%以
下とすることがより好ましい。
【0034】またV及びNbは、結晶粒の微細化に有効
であり靱性の向上に効果的であるので以下の範囲で含有
させることが望ましい。
【0035】V :0.01〜0.3% Nb:0.01〜0.1% V及びNbはいずれも鋼中のC,Nと結合して炭窒化物
を生成し、結晶粒を微細化して転動疲労性を向上させ、
靱性を増大させるのに有効な元素である。V及びNb共
に、含有量が0.01%未満ではこの様な効果は少ない
ので0.01%以上含有させることが望ましい。また、
多過ぎても結晶粒の微細化効果は飽和するので、V含有
量の上限は0.3%とし、Nb含有量の上限は0.1%
とすることが望ましい。
【0036】尚、Ca,Pb,Te,Zrはいずれも被
削性向上元素であり、夫々以下の範囲で添加することが
推奨される。
【0037】Ca:0.01%以下(0%を含まない) Caは、MnSと硫化物系介在物を形成することによ
り、介在物を球状化して異方性を改善し靱性および曲げ
疲労強度を劣化させずに被削性を向上させることができ
る元素である。但し、0.01%を超えると粗大な複合
介在物が多数生成して、曲げ疲労特性及び転動疲労特性
が劣化するので、上限は0.01%とすることが望まし
い。
【0038】Pb:0.1%以下(0%を含まない) Pbも被削性向上元素であるが、0.1%を超えて添加
すると転動疲労寿命が大幅に低下するので上限は0.1
%とすることが望ましい。
【0039】Te:0.1%以下(0%を含まない) TeはMn−Teを形成してMnSの周辺に共存し、熱
間圧延時にMnSの変形を抑制してMnSの球状化に寄
与することによって、横目の靱性および曲げ疲労強度を
劣化させずに被削性を向上させる。但し、0.1%を超
えると非金属介在物の増大により曲げ疲労強度を劣化さ
せるので上限は0.1%とすることが望ましい。
【0040】Zr:0.1%以下(0%を含まない) Zrは、熱間圧延時にMnSの変形を抑制してMnSの
球状化に寄与することによって異方性を改善し、靱性お
よび曲げ疲労強度を劣化させずに被削性を向上させる元
素である。但し、0.1%を超えるとZrO2 等の非金
属介在物が多く生成し、曲げ疲労強度を劣化させるので
上限を0.1%とすることが望ましい。
【0041】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0042】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼材を溶製して鋳造を
行い、その後φ40mm丸棒に圧延した。尚、鋳造時の
等軸晶の割合を変化させるために、鋼No.1〜21は鋳
造開始から800℃までを冷却速度7℃/minで鋳造
し、鋼No.22は、鋳造開始から800℃までの冷却速
度を5℃/minとし、鋼No.23は、上記冷却速度を
4℃/minとし、鋼No.24,25は、上記冷却速度
を2℃/minとした。
【0043】また鋼No.22,23,25は、中心偏析
帯及び等軸晶域中心部の圧延材中心からのズレの影響を
調べるため、鋳片側面の一方のみを水冷し、冷却速度を
遅くすることにより中心偏析帯を中心よりずらして鋳造
した。
【0044】得られた圧延材の横断面にてマクロ試験を
行い、圧延材横断面中に等軸晶が占める割合を求めた。
等軸晶域の測定は、JIS G 0553に規定された
鋼のマクロ組織試験方法に準じて、約20%HCl液中
で約30〜40秒間腐食し、等軸晶と柱状晶に分離し、
等軸晶域の面積率を測定し、更に中心偏析帯および等軸
晶域の中心と横断面の中心との距離を測定した。なお、
等軸晶と柱状晶が混在している領域(分岐柱状晶域)は
すべて等軸晶域に分類した。測定結果は表2に示す。
【0045】次に、得られた圧延材をそれぞれ100m
mの長さに切断した後、熱間鍛造にて高さ20mmの円
板に据込み加工し、加熱(8700℃×1Hr)→空冷
の焼ならし処理を行った。その後、図3に示す様なリン
グ型試験片を切り出し、60℃のオイル中で焼入れを行
い、続いて170℃×2Hrの焼戻しを行った。その
後、図3に示す位置において外径真円度を測定した。
【0046】また、上記圧延材をφ30mmに鍛造後、
加熱(870℃×1Hr)→空冷の焼ならし処理を行っ
た後、図4に示すφ20mm×200mmの軸型試験片
に加工した。さらに、上記焼入れ・焼戻し処理を行い、
その後、図4に示す位置において軸の曲がりを測定し
た。測定結果は表2に併記する。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】No.1〜16,22,23は本発明鋼で
あり、等軸晶面積率が30%を超える比較鋼No.2
4,25と比較して、外径真円度が高く、熱処理歪が非
常に少ない。比較鋼No.25は、等軸晶の偏析率が高
いだけでなく、中心偏析帯及び等軸晶中心のズレも大き
く、外径真円度が非常に悪くなっていると共に、軸の曲
がりも大きかった。
【0050】尚、No.17〜21は、等軸晶の面積率
は30%以下であるものの、C,Si,Mn,Al,N
の含有率が多過ぎるか、少な過ぎる場合の例であり、N
o.17〜19は夫々C,Si、Mnの含有量が多いた
め焼入れ性が高く、No.1〜14の本発明鋼に比較す
ると熱処理歪が大きくなっている。No.20,21は
夫々Al,Nの含有量が少なく、焼入れ時にオーステナ
イト結晶粒が粗大となり、歪が大きくなっている。
【0051】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、鋼
材鋳造時の等軸晶域の面積率を制御することにより、望
ましくは更に中心偏析帯及び等軸晶中心の位置と成分組
成を制御することにより、熱処理歪が非常に少なく、焼
入れ後に形状の修正を行う必要のない高炭素鋼が提供で
きることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】等軸晶の面積率と熱処理歪(外径真円度)の関
係を示すグラフである。
【図2】鋼材の断面の状態を示す説明図である。
【図3】実施例で用いたリング型試験片の形状と熱処理
歪の測定位置を示す説明図である。
【図4】実施例で用いた軸型試験片の形状と熱処理歪の
測定位置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 柱状晶 2 等軸晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−3682(JP,A) 特開 昭63−162813(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.6〜1.2%(質量%の意味、以下同じ)、 Si:2.0%以下(0%を含まない)、 Mn:0.2〜1.2%、 Al:0.01〜0.06%、 N :0.003〜0.03% を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、 棒状圧延材の横断面において等軸晶の占める領域が面積
    率で30%以下であることを特徴とする熱処理歪の少な
    い高炭素鋼。
  2. 【請求項2】 棒状圧延材の横断面における中心偏析帯
    の中心と前記横断面の中心との距離をa、圧延材の直径
    をDとする時、a/Dの値が0.05以下である請求項
    1に記載の高炭素鋼。
  3. 【請求項3】 棒状圧延材の横断面における等軸晶域の
    中心と前記横断面の中心との距離をb、圧延材の直径を
    Dとする時、b/Dの値が0.05以下である請求項1
    または2に記載の高炭素鋼。
  4. 【請求項4】 不純物元素の含有量を、 P :0.03%以下(0%を含む)、 S :0.03%以下(0%を含む)、 Ti:0.005%以下(0%を含む)、 O :0.002%以下(0%を含む) に制限する請求項1〜のいずれかに記載の高炭素鋼。
  5. 【請求項5】 さらに他の元素として Cr:2.0%以下(0%を含まない)、 Ni:2.0%以下(0%を含まない)、 Mo:2.0%以下(0%を含まない)、 Cu:1.0%以下(0%を含まない)、 よりなる群から選択される1種以上を含有するものであ
    る請求項1〜のいずれかに記載の高炭素鋼。
  6. 【請求項6】 さらに他の元素として V :0.01〜0.3%、 Nb:0.01〜0.1% よりなる群から選択される1種以上を含有するものであ
    る請求項1〜のいずれかに記載の高炭素鋼。
  7. 【請求項7】 さらに他の元素として Ca:0.01%以下(0%を含まない)、 Pb:0.3%以下(0%を含まない)、 Te:0.1%以下(0%を含まない)、 Zr:0.1%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される1種以上を含有するものであ
    る請求項1〜のいずれかに記載の高炭素鋼。
JP30605597A 1997-11-07 1997-11-07 熱処理歪の少ない高炭素鋼 Expired - Lifetime JP3409276B2 (ja)

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