JP3403796B2 - Pc構造物補強体の編組方法 - Google Patents

Pc構造物補強体の編組方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、主に土木建築産業にお
けるプレストレストコンクリート(PC)構造物の補強
体編組方法に関するものであり、特に補強体を構成する
熱処理PC鋼棒と補強筋との溶接接合方法に関するもの
である。 【0002】 【従来の技術】PC構造物の製造方法の一例として、コ
ンクリートポール、パイルの製造方法について述べる。
図1に示したように円周上に並列に配置したPC鋼棒1
に軟鋼線2を螺旋状に巻き付けた後(以下螺旋筋と称
す)、PC鋼棒と螺旋筋の交点3を固定して円筒状の籠
型補強体(以下補強体と略称)を製造する。次いでこの
補強体を型枠に導入し、補強体を構成するPC鋼材の両
端を固定して引張強さの70%前後の応力で緊張する。
型枠内に注入したコンクリートが固化した後にPC鋼棒
の緊張力が除去され、同時にコンクリートに圧縮力が付
与されてPCポール、パイルが完成する。この製造工程
中、補強体の組立を自動化するためにPC鋼棒と螺旋筋
の固定は電気抵抗溶接によって行われる。 【0003】補強体を構成する熱処理PC鋼棒は、おお
よそ0.15〜0.35重量%の炭素を含有する中低炭
素鋼線材に焼入れ焼戻しまたは沸騰水焼入れ等の熱処理
を施して製造される。ピアノ線材の冷間引抜きによって
製造されるPC鋼線に比べて炭素の含有量が低く溶接が
可能なため、電気抵抗溶接によって編組される補強体に
多用されている。ところで、高い緊張力がかかった状態
で使用されるPC鋼棒においては、内部に水素が侵入し
た場合に遅れ破壊が発生する危険があり、特に溶接部に
おける遅れ破壊が危惧されている。 【0004】図2に、溶接の概念図を示す。補強体編組
に用いられる電気抵抗溶接のように微小な溶融部を形成
させる溶接においては、入熱量が小さいため一旦溶融ま
たはオーステナイト化した熱影響部は急冷され、母材に
比べて強度が著しく上昇する。母材部の硬さがHv45
0程度であるのに対し、前記熱影響部の硬さはHv55
0〜600にまで上昇し、遅れ破壊感受性が高くなる。
さらに同様の高硬度の熱影響部は螺旋筋との溶接部の裏
側に位置するもう一方の電極にあたる部分にも生じる。
溶接によって生じたこれらの高硬度の熱影響部は遅れ破
壊の起点となる可能性が高く、この部分の遅れ破壊特性
改善が強く求められている。 【0005】このようなPC鋼棒の溶接部の遅れ破壊特
性改善要求に対し、これまでにも様々な改善方法が提案
されてきた。例えば、特公平5−59967号公報では
不純物元素であるP,Sの量を低く制限する方法が開示
されている。しかし、これら不純物元素の低減のために
は溶銑の予備処理等、特別な工程を経なければならず、
鋼材の製造コストが上昇する欠点を有していた。この他
にも、特公平3−75325号公報では溶接機に溶接用
電極の他に焼戻し用の電極を設け、溶接直後に溶接部を
通電加熱によって焼戻す方法が示されている。しかし、
軟化に充分な温度と時間を確保し、かつ再度溶体化しな
い温度範囲に制御することが難しいこと等から広く普及
するまでには至っていない。 【0006】一般に遅れ破壊は、引張応力の作用の下で
水素が存在する時に発生するとされている。前記2例
は、溶接部の組織を制御して遅れ破壊特性を改善すると
の視点からの発明である。これに対して引張応力を制御
して遅れ破壊特性を改善しようとする試みも行われてい
る。遅れ破壊クラックは表層から発生し伝播するので、
鋼材の緊張時に表層に作用する引張応力を低減すること
によって遅れ破壊特性を改善することができる。表層部
に作用する引張応力を低減するためには、予め、表層に
圧縮残留応力を付与することが効果的であり、本発明者
等は以前に特願平4−95235号を提案し、適切なシ
ョットピーニングによってPC鋼棒の遅れ破壊特性が改
善できることを示した。しかし、ショットピーニング後
に溶接を行うと表層に導入した圧縮残留応力が低下し、
遅れ破壊特性の改善効果も低下する恐れがある。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶接部の組
織、成分等を制御するのではなく、プレストレスをかけ
て緊張する時に溶接部に作用する引張応力を低減し、P
C鋼棒の遅れ破壊特性を劣化させることなくPC構造物
の補強体を編組する溶接方法を提供するものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明にあたっては、溶
接によって編組した補強体を緊張する際に、PC鋼棒の
溶接部に作用する引張応力を低減する手段について種々
検討を行った。その結果、螺旋筋とPC鋼棒の接合に際
し、PC鋼棒に引張応力を作用させた状態で溶接を行う
と、型枠に補強体を挿入して再度緊張する際に溶接部に
作用する引張応力が低減されて遅れ破壊特性が改善され
ることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわ
ち本発明は、PC鋼棒と補強筋とを電気抵抗溶接によっ
て接合してPC構造物の補強体を編組する際に、該PC
鋼棒に引張強さの23%以上、かつ降伏応力以下の引張
応力を付加した状態で溶接を行い、冷却後、前記付加し
た引張応力を解放することを特徴とするPC構造物補強
体の編組方法である。 【0009】 【作用】本発明は従来のPC鋼棒を用いながらも、補強
体の形成に際して螺旋筋とPC鋼棒の溶接に工夫をこら
すことによって該補強体を構成するPC鋼棒の遅れ破壊
特性を飛躍的に改善するものである。その機構は以下の
ように推測される。引張応力の作用の下で溶接を実施し
た場合でも、拘束を取り除かない限り、溶接部には、冷
却時の熱収縮と変態による体積膨張が相殺されて残留応
力はほとんどないものと考えられる。冷却後に引張の拘
束を取り除くと弾性変形していた溶接部の周囲の母材が
元に戻ろうとする動きに伴って溶接部に圧縮応力が作用
する。このようなPC鋼棒はPC構造物の補強材として
プレストレスを付加しても溶接部に作用する引張応力が
低減され、遅れ破壊の発生が抑制されるのである。な
お、溶接時にPC鋼棒に付加する応力が弾性限を超える
とPC鋼棒が変形し、補強体の寸法精度が低下する恐れ
があるため、引張応力を降伏応力以下に制限した。 【0010】 【実施例】表1に示す化学組成を有する直径10mmの熱
間圧延線材を冷間引抜きし、引続いて高周波加熱による
焼入れ焼戻しを行って製造されたJIS G3109の
異形D種に相当する線径9.2mmのPC鋼棒を用いて発
明の効果を確認した。なお、焼入れ加熱温度は950
℃、焼戻し温度は400℃であった。このPC鋼棒の機
械的性質を表2に示す。0.2%耐力をもって降伏応力
とし、その値は1440MPa であった。引張試験におけ
る伸び測定の評点距離は線径の8倍とした。また、絞り
は公称断面積に対する破断材の断面積実測値の百分率で
表した。 【0011】上記PC鋼棒に対して、引張応力を付加し
た状態、および比較例として引張応力を付加しない通常
の条件で螺旋筋の溶接を行い、遅れ破壊試験に供した。
螺旋筋とPC鋼棒の溶接には汎用の手動単発型スポット
溶接機を用い、直交したPC鋼棒と長さ20mmほどの螺
旋筋を図に示すように上下から電極で挟んで加圧、通
電した。溶接条件は工業的に通常とられている範囲から
選定し、溶接電流の目標値を3000A、通電時間を
0.04秒、加圧力を410Nとした。用いた螺旋筋は
線径3.2mm、JIS規格SWRM6に相当する軟鋼線
である。 【0012】PC鋼棒の両端に冷間転造ねじを切ってね
じジャッキのついた剛性の高い枠に取り付け、締め上げ
ることによって引張応力を付与し、この状態で螺旋筋を
溶接した。溶接時に付加した引張荷重は付属のロードセ
ルによって測定可能である。遅れ破壊試験はFIP法に
て行い、50℃の20重量%NH4 SCN水溶液中で、
20mmほど残した螺旋筋を付着させたままのPC鋼棒に
996MPa の引張応力を付加し、破断時間を測定した。
50時間以上破断しない場合にはその時点で試験を打ち
切った。その結果を表3に示す。溶接時にPC鋼棒に引
張応力を付加した本発明例はいずれも50時間以内では
破断せず、比較例に比べて遅れ破壊特性が格段に向上し
た。 【0013】 【表1】 【0014】 【表2】 【0015】 【表3】 【0016】 【発明の効果】本発明を用いれば、従来溶接によって編
組したPC構造物の補強体の弱点とされていた溶接部分
の遅れ破壊特性が大幅に向上し、土木建築物の信頼性・
安全性が高まる。このように本願発明は通常の工業材料
を用いながらも溶接方法に改善を加えることによって遅
れ破壊特性を顕著に改善するものであり土木建築業界で
大量に使用されるコンクリート構造物の性能を大幅に改
善するものである。
【図面の簡単な説明】 【図1】補強体概略図。 【図2】PC鋼棒と螺旋筋の溶接の概念図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−56973(JP,A) 特開 昭49−9446(JP,A) 特開 昭53−9261(JP,A) 特公 平3−75325(JP,B2) 特公 昭40−5297(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 11/14 B21F 27/10 B28B 23/02 E04C 5/08

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 PC鋼棒と補強筋とを電気抵抗溶接によ
    って接合してPC構造物の補強体を編組する際に、該P
    C鋼棒に引張強さの23%以上、かつ降伏応力以下の引
    張応力を付加した状態で溶接を行い、冷却後、前記付加
    した引張応力を解放することを特徴とするPC構造物補
    強体の編組方法。
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