JP3402026B2 - 光学情報記録媒体の製造方法及び評価方法 - Google Patents

光学情報記録媒体の製造方法及び評価方法

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JP3402026B2 JP30541795A JP30541795A JP3402026B2 JP 3402026 B2 JP3402026 B2 JP 3402026B2 JP 30541795 A JP30541795 A JP 30541795A JP 30541795 A JP30541795 A JP 30541795A JP 3402026 B2 JP3402026 B2 JP 3402026B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学情報記録媒
体、特に光ディスクにおける記録薄膜の結晶化処理の良
否を判定する評価方法、並びに結晶化処理の良否判定プ
ロセスを含む製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】信号を記録・再生し、かつ消去すること
ができる光ディスクとして、記録薄膜材料にカルコゲン
化物を用いた相変化型の光ディスクが知られている。
【0003】一般には、記録薄膜材料が結晶状態の場合
を未記録状態とし、レーザ光を照射し、記録薄膜材料を
溶融・急冷して非晶質状態とすることにより、信号を記
録する。一方、信号を消去する場合には、記録時よりも
低パワーのレーザ光を照射することにより、記録薄膜を
昇温して結晶状態とする。
【0004】結晶状態と非晶質状態では、屈折率nと消
衰係数kとからなる複素屈折率が異なり、この結果生じ
る反射率或は透過率の差を利用して信号の再生を行な
う。
【0005】記録薄膜材料としては、例えばTe、I
n、Sb、Se等を主成分とする非晶質−結晶間で相変
化する材料、或は異なる2種類の結晶構造の間で可逆的
に相変化をおこす物質を用いることが一般的である。
【0006】相変化記録のメリットの1つは、例えば特
開昭56−145530号公報に記載されているよう
に、記録手段として単一のレーザビームのみを用い、情
報信号をオーバライトできる点にある。すなわち、レー
ザー出力を記録レベルと消去レベルとの2レベル間で、
情報信号に応じて変調し、記録済みの情報トラック上に
照射すると、既存の情報信号を消去しつつ新しい信号を
記録することが可能である。この特徴を生かして、相変
化光ディスクは、文書ファイル、画像ファイル、データ
ファイル等として利用されている。
【0007】記録薄膜材料にカルコゲン化物を用いた相
変化型の光ディスクの場合、通常記録薄膜は成膜時にお
いて非晶質状態であるため、使用に先立って、記録薄膜
全体を結晶状態にしておく必要がある。この結晶化処理
のことを初期化と呼ぶこともある。
【0008】記録薄膜の結晶化処理の方法としては、特
公昭47−26897号公報に示されているように、種
々の形態のエネルギーを使用する方法がある。例えば、
電気エネルギー、輻射熱、閃光ランプの光、レーザ光束
のエネルギー等のビーム状エネルギーを利用する方法が
ある。
【0009】図2は、その一例としてレーザビームを用
い、光ディスクの結晶化を行なう従来技術の一方法を説
明する模式図である。図2において、20はガスレーザ
や半導体レーザなどのレーザ照射源、21は対物レン
ズ、22はディスク回転用モータである。この装置を用
いて、光ディスク23を回転させながらレーザビームを
ディスクに照射する。さらに、レーザ照射位置を光ディ
スク23の半径方向に移動することで、ディスク全面を
結晶化することができる。
【0010】レーザビーム照射による記録薄膜の結晶化
は、ビーム照射スポットが比較的小さいために、時間が
かかることが欠点である。しかし、レーザ照射パワー、
照射スポット形状、ディスク回転速度、ディスク上での
半径方向へのレーザ照射位置の送り速度等、制御可能な
因子が多いために、結晶化処理条件を自由に選ぶことが
できる。このことは、すなわち、ディスク媒体に過度な
負荷を与えずに、しかも充分な記録薄膜の結晶化を可能
にする条件を容易に得ることができる。
【0011】図3は、結晶化の他の例として閃光放電管
を用い、光ディスクの結晶化を行なう従来技術の一方法
を説明する模式図である。図3において、30はキセノ
ンランプ等の閃光放電管、31は反射鏡、32は光ディ
スクである。反射鏡31は閃光放電管30からの光線
を、有効かつ均一に光ディスク32に照射するために設
ける。
【0012】閃光ランプを用いた記録薄膜の結晶化は、
ディスクの全面、或は広範囲を一度に結晶化するので、
結晶化処理に要する時間が短いという長所がある。ラン
プ閃光時の可変因子は、照射光線のエネルギー、閃光時
間等である。
【0013】また、多層膜の形成方法として、形成中の
多層膜の透過率或は反射率を光学モニターを用いて測定
し、膜厚制御を行なうという提案が、例えば特開平3−
135703号公報に示されている。
【0014】以下、光学情報記録媒体の反射率或は透過
率の測定方法を、レーザ光を用いて測定する方法と、レ
ーザ光を用いずに測定する方法の例を示す。
【0015】図4は、レーザ光を用いて反射率或は透過
率を測定する一方法を示す模式図である。図4におい
て、40はガスレーザや半導体レーザなどのレーザ照射
源、41は対物レンズ、42及び43はフォトディテク
ター、44はディスク回転モータである。但し、モータ
44は必ずしも必要ではない。
【0016】この装置を用いて、光ディスク45にレー
ザビームを照射し、反射光を測定する場合には、フォト
ディテクター42を用いて、また、透過率を測定する場
合にはフォトディデクター43を用いて、光ディスク4
5上の所定の場所の反射率或は透過率を測定する。この
時、照射するレーザビームの焦点が記録薄膜上に来るよ
うに、焦点位置を調整する必要がある。反射率或は透過
率の測定時に、ディスクを回転させてもよい。この場
合、同時に光学情報記録媒体の記録感度や、繰り返し記
録特性等を測定することによって、評価効率を高めるこ
とができる。
【0017】図5は、レ−ザ光の代わりにハロゲンラン
プ等の白色光を光源とし、分光器を用いて作成した任意
の波長の単色光を光学情報記録媒体に照射し、反射率或
は透過率を測定する一方法を示す模式図である。図中5
0はハロゲンランプ等の白色光源、51は分光器、52
は検出器、53は光ディスクである。光源50を出た光
はミラーを介して分光器51に入り、任意の波長の単色
光が得られる。
【0018】分光器からでた単色光は、光ディスク53
に照射される。反射光或は透過光を検出器52に集める
ことで、光ディスク53上の所定の場所の反射率或は透
過率を測定することができる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】相変化光ディスクにお
いて、結晶化処理はただ単に記録薄膜を結晶化すればよ
いというものではない。例えば、記録薄膜の良好な結晶
化が得られるエネルギー投入条件には、光ディスクに応
じて適正範囲が存在し、この適正なエネルギーよりも高
いエネルギーで記録薄膜を結晶化した場合、記録媒体に
かかる熱的負荷が増大する。このような例えば熱的負荷
が存在した光ディスクは、結晶化処理時にクラックが生
じたり、或は結晶化時にはクラックができなくても、長
期保存時において記録薄膜等にクラックが生成する可能
性がある。
【0020】また、逆に最適なエネルギーよりも低いエ
ネルギーで結晶化処理を行なった場合、記録薄膜中に結
晶化の完了していない領域が残ってしまう。この場合、
例えば信号を光ディスクの同一部分に繰り返し記録する
と、繰り返しの初期に良好な消去特性が得られず、情報
の正確な再生ができなくなる場合が生じ得る。
【0021】従って、結晶化処理条件は厳密に制御する
必要がある。また、実際に施した結晶化処理が適切でな
ものであったかを検査・判断する必要がある。
【0022】しかし、生産した光ディスクについて、加
速試験等によるクラックの生成状況を観察する検査方法
では、時間もコストもかかり実際的ではない。
【0023】本発明は、上記のような実状に鑑みてなさ
れたものであって、その目的は、結晶化処理が良好に施
された光学情報記録媒体、特に書換え可能な相変化光デ
ィスクの製造方法、及び、光学情報記録媒体の結晶化処
理の適または不適の判定を容易に下すことのできる評価
方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明に係る光情報記録媒体の製造方法は、基板
上に記録薄膜を形成するプロセスと、この記録薄膜に結
晶化処理を施すプロセスと、記録薄膜の結晶化処理領域
において、少なくとも一つの波長の入射光に対する反射
率或は透過率を測定するプロセスと、この反射率或は透
過率の実測値と予め決定した基準値とを比較し、結晶化
処理の適または不適を判定するプロセスとを含み、結晶
化処理のプロセスでは、光学情報記録媒体の記録薄膜の
2箇所以上の位置をそれぞれ異なる条件で結晶化して、
この異なる条件で結晶化した複数の領域の反射率或は透
過率を測定し、さらに、この異なる条件で結晶化した複
数の領域がディスク形状をしているこの光学情報記録媒
体の同一半径中に存在することを特徴とする。
【0025】また、本発明に係る光学情報記録媒体の評
価方法は、記録薄膜に結晶化処理を施すプロセスと、こ
の記録薄膜の結晶化処理領域において、少なくとも一つ
の波長の入射光に対する反射率或は透過率を測定するプ
ロセスと、この反射率或は透過率の実測値と予め決定さ
れている基準値とを比較し、結晶化処理の適または不適
を判定するプロセスとを含み、結晶化処理のプロセスで
は、光学情報記録媒体の記録薄膜の2箇所以上の位置を
それぞれ異なる条件で結晶化して、この異なる条件で結
晶化した複数の領域の反射率或は透過率を測定し、さら
に、この異なる条件で結晶化した複数の領域がディスク
形状をしているこの前記光学情報記録媒体の同一半径中
に存在することを特徴とする。
【0026】本発明の光学情報記録媒体の製造方法によ
れば、記録薄膜に適切な結晶化処理が施された光学情報
記録媒体の製造が可能となる。これは、所定の波長の光
で測定した反射率等の光学特性が、記録薄膜の結晶状態
に敏感であることによる。
【0027】また、本発明の光学情報記録媒体の評価方
法によれば、光学情報記録媒体の反射率或は透過率等の
光学特性の測定によって、当該記録媒体の記録薄膜に施
された結晶化処理が適切なものであったか否かの判断が
容易にできる。これは、適当な波長の光で測定した光学
情報記録媒体の反射率等の光学特性が、記録薄膜の結晶
状態に敏感であることによる。
【0028】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る光学情報記
録媒体の製造方法のプロセスの要部を表わすブロック図
である。
【0029】図1において、1−1は成膜プロセスであ
る。成膜プロセスでは、基板上に記録薄膜を含む多層膜
を形成する。各層の形成には、電子ビーム蒸着法、イオ
ンプレーティング法、CVD法、レーザスパッタリング
法等を用いてもよいが、以下に記載する本発明の実施例
ではスパッタ成膜法を説明する。
【0030】図1において、1−2は記録薄膜の結晶化
処理のプロセスである。この結晶化処理プロセスには、
前述したように、レ−ザビームを用いる方法、フラッシ
ュランプ等の閃光光源を用いる方法、またはオーブン等
の加熱手段を適用する方法の何れでも良いが、以下に記
載する本発明の実施例では、図2に示した光学情報記録
媒体へのレーザビームの照射による順次結晶化、及び図
3に示したキセノンランプ等を用いる閃光ランプによる
一括結晶化の2方法を説明する。
【0031】図1において、1−3は光学情報記録媒体
の反射率或は透過率の測定するプロセスである。このプ
ロセスも前述したように、レ−ザ光を用いる方法とレ−
ザ光を用いない方法があるが、以下に述べる本発明の実
施例では、図4に示したレーザ光を用いる測定法と、図
5に示した白色光源を用いる測定法の2方法を説明す
る。
【0032】図1において、1−4の結晶化処理の適ま
たは不適の判定のプロセスは、1−3で測定した反射率
或は透過率と、結晶化処理が良好な場合に示す反射率或
は透過率の値の範囲を記した参照データとを比較し、結
晶化処理が良好であると結論できる記録媒体のみを合格
と判定するプロセスである。
【0033】以上の4段階のプロセスからなる製造方法
を採用することによって、適切な結晶化処理の施された
光学情報記録媒体を製造することができる。
【0034】図6は、本発明に係る光学情報記録媒体の
評価方法のプロセスの要部を表わすブロック図である。
【0035】図6おいて、6−1は記録薄膜の結晶化処
理のプロセスである。結晶化処理プロセスは、図1の1
−2で説明したように多種の方法があるが、以下に記載
する実施例では、製造方法と同様に図2に示した光学情
報記録媒体へのレーザビームの照射による順次結晶化、
及び図3に示したキセノンランプ等を用いる閃光ランプ
による一括結晶化の2方法を説明する。
【0036】図6において、6−2は光学情報記録媒体
の反射率或は透過率の測定するプロセスである。このプ
ロセスも前述したように、レ−ザ光を用いる方法とレ−
ザ光を用いない方法があるが、以下に述べる本発明の実
施例では、製造方法と同様に図4に示したレーザ光を用
いる測定法と、図5に示した白色光源を用いる測定法の
2方法を説明する。
【0037】図6において、6−3の結晶化処理の適ま
たは不適の判定のプロセスは、6−2で測定した反射率
或は透過率と、結晶化処理が良好な場合に示す反射率或
は透過率の値の範囲を記した参照データとを比較し、結
晶化処理の良好であると結論できる記録媒体のみを合格
と判定するプロセスである。
【0038】以上の3段階のプロセスからなる評価方法
を採用することによって、対象となる光学情報記録媒体
に施された結晶化処理が適切であったか、適切でなかっ
たかの判断が可能となる。
【0039】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明
する。本発明に係る光ディスクの基板としては、光学的
に透明な材料が適用され、例えばポリカーボネイト、ア
クリル樹脂等の有機高分子材料が専ら適用され、その他
には例えばガラス等の無機材料であっても良い。以下に
説明する実施例では、基板材料としてポリカーボネイト
(以下PCと略す)を適用した。
【0040】また、本発明に係る情報記録媒体の構成と
しては、従来提案されている各種構成の何れでも適用で
きるが、PC基板・下誘電体層・記録層・上誘電体層・
反射層・バックカバーの構成の場合について以下に述べ
る実施例を検討した。
【0041】具体的材料としては、下誘電体層と上誘電
体層は何れもZnS薄膜、記録層としては、良好な記録
・消去・再生特性及び繰り返し特性にも優れる例えば特
開昭62−209742号公報等に記載のGe・Sb・
Te3元素薄膜、反射層にはAu薄膜をそれぞれ順次ス
パッタ法で積層し、バックカバーとしてPCを紫外線効
果樹脂を接着材として貼り合わせて光ディスクとして、
各膜厚及び記録層組成を変えた2種類である。但し、P
C基板表面にはピッチ1.6μmのスパイラル状の凹凸
を、溝幅0.8μmで設けた。下記(表1)に、2種類
の光ディスクの構成を示す。
【0042】
【表1】
【0043】ここで、ディスクA、Bはともに、波長6
80nmのレーザ光を用いて情報を記録・再生することを
想定している。
【0044】また、ディスクAは線速度6m/s、ディ
スクBは線速度15m/sをそれぞれ中心とし、異なる
線速度範囲で情報を記録することを想定している。
【0045】波長830nmの半導体レーザを用いて、
種々の条件で各ディスクの結晶化処理を行ない、得られ
たディスクの耐環境特性、及び繰り返し記録特性を調べ
た。
【0046】この結晶化処理条件を(表2)に示す。但
し、記録薄膜上に投入されるエネルギーは、半導体レー
ザに投入する電流値が(X)mAの場合に、記録薄膜上
に投入されるエネルギーは、およそ(X/3)mWであ
った。
【0047】
【表2】
【0048】耐環境特性では、光ディスクに80℃・8
0%RHで1000時間の加速試験を施すことで、記録
薄膜中にクラックが生じるか否かを基準に合否を決定し
た。
【0049】また、繰り返し記録特性は(表3)に示し
た条件で、同一トラック(溝部)に1万回の繰り返し記
録を行い、1,2,3,5,7,10,20,30,5
0,100,300,500,1000,3000,5
000,7000,1万回繰り返し記録した後に、それ
ぞれ記録データを再生してエラー率を測定し、いずれの
繰り返し回数の記録の後にも、エラー率が3×10ー6
満で情報を再生できたかどうかによって合否を決定し
た。但し、記録パワーは、1万回後にエラー率が1×1
ー5未満となるパワー範囲の中心値とした。以上の実験
の結果を(表4)に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】(表4)から、光ディスクAに6m/sで
情報を記録する場合を考えると、結晶化処理時、半導体
レーザに投入する電流値は1200〜1300mAが好
ましく、また、光ディスクBに15m/sで情報を記録
する場合を考えると、結晶化処理時、半導体レーザに投
入する電流値は900〜1000mAが好ましいことが
わかる。
【0053】次に、各種条件で結晶化処理を施した構成
A及びBの光ディスクについて、波長380〜830nm
の入射光に対する反射率、及び透過率を測定した。反射
率、及び透過率の測定には分光光度計を用いた。測定結
果を図7、8及び(表5)に示す。
【0054】
【表5】
【0055】(表5)より、測定光として適当な波長の
光を選ぶことにより、結晶化処理時の条件差を光学特性
の違いとして検出できることがわかる。本構成のディス
クの場合、結晶化処理時に半導体レーザに導入した電流
値の値が100mA変化しても、光学特性の変化として
検知できる。これは、結晶化処理の適または不適を光学
特性から判断することが可能であることを意味してい
る。
【0056】別の言い方をすると、(表2)に示した条
件で結晶化処理を施した光ディスクAと同じ構成のディ
スクの光学特性が、半導体レーザに1200〜1300
mAの電流を投入した場合と同じ光学特性を示す(例え
ば波長520nmに対する反射率が36.2〜36.7
%の範囲内に収まる)場合には、そのディスクに施され
た結晶化処理は良好であったと判定できる。同様に、
(表2)の条件で結晶化処理を施した光ディスクBと同
じ構成のディスクの分光特性が、半導体レーザに900
〜1000mAの電流を投入した場合と同じ分光特性を
示す(例えば波長730nmに対する反射率が19.3
〜19.7%の範囲内に収まる、或は波長480nmに
対する透過率が13.0〜13.5%の範囲内に収まる)
場合には、そのディスクに施された結晶化処理は良好で
あったと判定できる。
【0057】これが図1及び図6のブロック図に示した
結晶化処理の適または不適を判定するプロセスの一例で
ある。
【0058】結晶化処理が不適と判定された場合には、
同記録媒体を破棄し、結晶化処理のプロセスを見直して
改正すればよい。
【0059】このように、図1のブロック図で示した製
造方法を用いることによって、適切な結晶化処理を施し
た光ディスクを製造・出荷することができる。
【0060】また、図6のブロック図で示した評価方法
を用いることによって、光ディスクに施された結晶化処
理の適または不適を速やかに判断できる。
【0061】試みに、構成Aのディスクを上記条件で1
00枚製造し、波長520nmの測定光に対する反射率
を測定した結果、測定値が36.2〜36.7%の範囲
に収まったものは、78枚であった。但し、この場合
は、反射率測定結果を記録薄膜の結晶化処理過程にフィ
ードバックしていない。このようにして得た良品と判断
した78枚のディスクに、80℃・80%RHで100
0時間の加速試験を施したが、全てのディスクにおいて
記録薄膜中にクラックは生じなかった。
【0062】また、同78枚のディスクに対して、(表
3)の条件で同一トラック(溝部)に1万回の繰り返し
記録を行ったが、1,2,3,5,7,10,20,3
0,50,100,300,500,1000,300
0,5000,7000,1万回繰り返し記録した後
に、それぞれ記録データを再生してエラー率を測定した
結果、いずれの繰り返し回数の記録の後にも、エラー率
が3×10ー6未満で情報を再生できた。
【0063】すなわち、本製造方法で製造したディスク
には、いずれも良好な結晶化処理の施されていることが
確認できた。
【0064】また、反射率測定結果を記録薄膜の結晶化
処理過程にリアルタイムでフィードバックすると、光学
特性時に良品と判断される良品率は90%を越えるよう
になった。
【0065】但し、前述したように、結晶化処理を施し
た後に、同領域の反射率或は透過率を測定するための測
定波長は、複数種類必須であるというものではない。測
定波長をどのように選ぶかは、対象とする光学情報記録
媒体の光学特性を考慮して決定するればよい。
【0066】また、測定波長の数が複数の場合、結晶化
処理条件の差を、より容易かつ正確に求めることができ
るという長所がある一方、複雑な測定装置が必要となる
短所がある。例えば、分光光度計ではなく、レーザ光を
用いて対象とする光学情報記録媒体の光学特性を測定す
る場合を考えれば、測定波長の数だけレーザ源が必要と
なる。
【0067】それ故、できるだけ少ない数の測定光で評
価できることが重要であるが、結晶化処理条件の差を正
確に求める点と比較して決定すれば良い。但し、相変化
記録薄膜を有する種々の構成の光ディスクを作成して、
結晶化処理を施し、かつ、その結晶化処理条件と光学特
性、耐環境特性、繰り返し記録特性の関連を調べたとこ
ろ、基本的には、一つないし二つの波長の測定光に対す
る光学特性から、結晶化処理の適または不適の判定が容
易にできることがわかった。もちろん、それぞれの光学
情報記録媒体に対して、記録薄膜の結晶状態に光学特性
が敏感な波長とそうでない波長が存在するので、都度、
適当な波長を選択すればより精度が向上すること勿論で
ある。
【0068】次に、結晶化処理の適または不適の判定精
度を高める方法について述べる。その一つの方法は、適
切な結晶化状態となる結晶化処理の他に、適切な結晶化
状態に比べて結晶化度が低い状態になるような結晶化処
理を光学情報記録媒体の一部に施し、この結晶化度の低
い領域について、予め測定してある光学特性と比較判定
する方法である。
【0069】具体的には、レーザビームを用いて結晶化
処理を行なう場合、例えば前述した光ディスクAの場
合、同じ400nmの波長で反射率を測定する場合で
も、結晶化用の半導体レーザに投入する電流値が800
mA前後の時に、投入電流値の変動に対する反射率変化
が大きくなった。これは、800mAで結晶化すると、
記録薄膜が非晶質状態と結晶状態との混じった状態で結
晶化することを意味しているものと思われる。
【0070】このように、結晶化処理条件の微少な変動
に、光学特性が敏感に変化するような条件を選び、結晶
化処理を施した領域で光学特性を測定し、予め測定して
ある光学特性と比較すると、施した結晶化処理装置に不
具合が生じた場合に、容易にそのことを知ることができ
る。
【0071】また、閃光放電管を使用した結晶化処理方
法の場合には、例えば、局所的に光量を通すフィルター
を介して光学情報記録媒体に光を照射することで、記録
薄膜の結晶化度を局所的に下げることができる。
【0072】光ディスクにおいて、反射率或は透過率を
半導体レーザ等のレーザ光を用いて測定する場合を考え
ると、異なる条件で結晶化処理を施した領域が同一円周
上にあることが好ましい。この場合、光ディスクを回転
させながら反射率を測定すれば、同時に結晶化状態の異
なる複数の領域の光学特性を測定することができる。な
お、レーザ光を用いて光学特性を測定する場合の長所
は、反射率等の光学特性測定と同時に、記録特性、繰り
返し特性等を測定できることである。
【0073】結晶化処理の適または不適の判定精度を高
めるもう一つの方法は、結晶化処理後だけでなく結晶化
処理を施す前にも、光学情報記録媒体の光学特性を測定
し、予め調べておいた値と比較する方法である。
【0074】これは、光学情報記録媒体の製造過程で生
じた各層の膜厚のばらつきに起因する光学特性の変動分
を補正することを目的としたものである。すなわち、結
晶化処理前の光学特性の測定結果から、ディスク構成で
所望のものとどのようにずれているかの検討をつけると
同時に、そのように構成がずれている場合に適正な結晶
化処理が施されるとどのような光学特性となるか、とい
うデータベースを作っておくことによって、結晶化処理
後の光学特性の実測値から、結晶化処理の適または不適
を正しく判断できるようになる。
【0075】次に、光ディスクの反射率或は透過率を高
い精度、或は高い再現性で測定できる方法について述べ
る。
【0076】記録のできる光ディスクでは、基板に案内
溝或は、プリピットが存在するが、このような案内溝や
プリピットの形状は、反射率や透過率の実測値に大きな
影響を与える。もちろん、案内溝或はプリピットの形状
が常に同じであると保証されているのであれば問題はな
いが、実際に測定してみると、同じように作成したつも
りの基板においても、表面形状のわずかな差が、反射率
或は透過率等の光学特性に少なからず影響を与えてるこ
とが多い。
【0077】このような案内溝或はプリピットが存在す
る光学情報記録媒体の結晶化処理の適または不適を判定
するには、光学情報記録媒体の正確な反射率或は透過率
が必要である。本発明では、光学特性の測定領域用に予
め表面が鏡面な部分を作りこんだ基板を用いて実験した
結果、基板表面が鏡面である領域、すなわちその上に成
膜されている記録薄膜も鏡面である領域で、反射率或は
透過率を測定すると、高い精度で光学特性が測定でき
て、結晶化処理の適または不適を容易に判定できた。
【0078】本発明は、ディスク構成、結晶化処理方
法、評価方法になんらかの拘束を受けるものではない。
当然、ディスク構成によっては、一つ或は複数の波長の
測定光で所定の結晶化処理を施した領域を測定しても、
結晶化処理の適または不適の判定を下すために必要な差
異を見いだすことが困難な場合も有り得る。しかし、そ
のような場合でも、反射率或は透過率の測定精度を高め
る、或は複数の条件で結晶化処理をした領域を作成し、
その領域の光学特性を測定し、予め求めていたデータを
比較処理をすることで、直接的或は間接的に結晶化処理
の適または不適の判定を下すことができる。
【0079】また、上述した結晶化処理方法では、レー
ザビームを用いる方法以外に閃光放電管を使用した結晶
化処理方法についても検討してみたが、レーザビームに
よる結晶化と同様に、結晶化処理の適または不適の判定
を下すことができることを確認した。その他の結晶化処
理方法、例えば加熱炉を用いた結晶化処理等に対しても
本発明は有効であること勿論である。
【0080】また、同じ光学情報記録媒体でも、場所に
よって最適な結晶化処理条件が異なるような場合も有り
得る。例えば、記録時の線速度が内外周で異なる使用形
態が想定される場合、結晶化処理条件も内外周で変化さ
せて、それぞれの半径で最適な結晶化処理を施す場合が
有り得る。このような場合には、結晶化処理条件の異な
る複数の領域で光学特性を測定して、総合的に結晶化処
理の適叉は不適を判断することが好ましい。
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光学情報
記録媒体の製造方法によれば、基板上に記録薄膜を形成
するプロセスと、記録薄膜に結晶化処理を施すプロセス
と、前記記録薄膜の結晶化処理領域において、少なくと
も一つの波長の入射光に対する反射率或は透過率を測定
するプロセスと、前記反射率或は透過率の実測値と予め
決定されている基準値とを比較し、結晶化処理の適また
は不適を判定するプロセスとからなる製造を行なうこと
により、結晶化処理の適切な光学情報記録媒体の製造・
出荷が可能となる。
【0082】また、本発明の光学情報記録媒体の評価方
法によれば、記録薄膜に結晶化処理を施すプロセスと、
前記記録薄膜の結晶化処理領域において、少なくとも一
つの波長の入射光に対する反射率或は透過率を測定する
プロセスと、前記反射率或は透過率の実測値と予め決定
されている基準値とを比較し、結晶化処理の適または不
適を判定するプロセスとからなる評価を行なうことによ
り、光学情報記録媒体の結晶化処理の適または不適の判
定が、簡便な工程で高速に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における光学情報記録媒体の製
造方法を表わすブロック図
【図2】レーザビームを用いて光ディスクの結晶化を行
なう装置を示す図
【図3】閃光放電管を用いて光ディスクの結晶化を行な
う装置を示す図
【図4】レーザ光を用いて反射率或は透過率を測定する
装置を示す図
【図5】分光光度計を用いて反射率或は透過率を測定す
る装置を示す図
【図6】本発明の実施例における光学情報記録媒体の評
価方法を表わすブロック図
【図7】本発明の実施例におけるディスクAの結晶化処
理条件と反射率の関係を示す図
【図8】本発明の実施例におけるディスクBの結晶化処
理条件と反射率の関係を示す図
【符号の説明】
20、40 レ−ザ照射源 23、32、45、53 光ディスク 30 閃光放電管 42、43 フォトディテクター 50 白色光源 51 分光器 52 検出器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−272022(JP,A) 特開 昭60−106031(JP,A) 特開 昭63−313330(JP,A) 特開 平6−215415(JP,A) 特開 平9−128817(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 7/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レーザ光の照射によって光学特性の異なる
    状態へと可逆的に移行し得る記録薄膜を基板上に備え
    光情報記録媒体の製造方法であって、 前記基板上に前記記録薄膜を形成するプロセスと、 前記記録薄膜に結晶化処理を施すプロセスと、 前記結晶化処理を施した領域に、少なくとも一つの波長
    の入射光に対する反射率或は透過率を測定するプロセス
    と、 前記反射率或は透過率の実測値と予め決定した基準値と
    を比較し、結晶化処理の適または不適を判定するプロセ
    スとを含み、 前記結晶化処理のプロセスでは、前記光学情報記録媒体
    の前記記録薄膜の2箇所以上の位置をそれぞれ異なる条
    件で結晶化し、前記異なる条件で結晶化した複数の領域
    の反射率或は透過率を測定し、 前記光学情報記録媒体はディスク形状をしており、前記
    異なる条件で結晶化した複数の領域が前記前記光学情報
    記録媒体の同一半径中に存在する ことを特徴とする光学
    情報記録媒体の製造方法。
  2. 【請求項2】レーザ光の照射によって光学特性の異なる
    状態へと可逆的に移行し得る記録薄膜を基板上に備え
    光学情報記録媒体の評価方法であって、 前記記録薄膜に結晶化処理を施すプロセスと、 前記結晶化処理を施した領域において、少なくとも一つ
    の波長の入射光に対する反射率或は透過率を測定するプ
    ロセスと、 前記反射率或は透過率の実測値と予め決定した基準値と
    を比較し、結晶化処理の適または不適を判定するプロセ
    スとを含み、 前記結晶化処理のプロセスでは、前記光学情報記録媒体
    の記録薄膜の2箇所以上の位置をそれぞれ異なる条件で
    結晶化し、前記異なる条件で結晶化した複数の領域の反
    射率或は透過率を測定し、 前記光学情報記録媒体はディスク形状をしており、前記
    異なる条件で結晶化した複数の領域が前記前記光学情報
    記録媒体の同一半径中に存在する ことを特徴とする光学
    情報記録媒体の評価方法。
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