JP3384300B2 - コークス製造用石炭の評価および配合方法 - Google Patents

コークス製造用石炭の評価および配合方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コークス製造用石
炭の評価方法および複数の石炭を配合した原料炭からコ
ークスを製造する際の配合方法に関する。この方法で
は、従来の石炭評価指標とは異なる新たな指標を用い
て、個々の石炭、または配合した原料炭の評価を行い、
所望の特性を持つコークスを確実に製造することを可能
にする。
【0002】
【従来の技術】高炉用コークスを製造する室炉式コーク
ス炉は、石炭を乾留するための炭化室と炭化室に熱を供
給するための燃焼室とが交互にサンドイッチ状に配列さ
れている。この炭化室の大きさは、たとえば高さが6〜
7m、長さが15〜17m、幅が0.45mである。このような
コークス炉に、たとえば20〜40トンの原料炭が一度に炭
化室に装入され、約1000℃に約24時間加熱され、乾留さ
れたコークスが炉から排出される。排出された赤熱コー
クスは、散水による湿式冷却、または不活性ガスによる
乾式冷却により消火、冷却される。
【0003】コークスは、このようにして乾留によって
製造されるが、石炭からコークスに転化する過程は非常
に複雑である。
【0004】製鉄用の高炉で使用するような高強度のコ
ークスを得ることができる石炭は、その昇温過程におい
て一度軟化溶融現象を呈する。石炭の種類によって多少
の違いはあるものの、400℃近傍からこの現象が生起
し、450℃前後で最高潮に達し、ほぼ500℃までには終了
し、再固化してセミコークス化する。このセミコークス
は、その後の昇温過程で脱水素を伴う収縮、分子構造再
配列反応などを経て、緻密な炭素骨格構造を有する高強
度コークスに変化していくのである。
【0005】このようなコークスの製造において、コー
クス炉へ装入される原料炭は、通常10種類以上の石炭の
混合物である。このように多種類の石炭が用いられるの
は、主に次の理由による。
【0006】 (1) 国内の使用量が年間5千万トン以上と膨大であり、
入手の危険分散を含めて多くの地域(炭鉱)から供給を
受けることが必要なこと、 (2) より高品質のコークスを、より安価に得るための最
適配合が指向されること、 (3) 煉瓦作りのコークス炉体に過大な負荷がかからない
ように配慮されること。
【0007】このように多種類の石炭が使用される高炉
用のコークスの製造では、原料炭の配合の最適化が、従
来から経験的に実施されている。そして、この場合に使
用される指数は、そのほとんどが石炭の平均反射率(R
o)とギーセラープラストメータによって測定される最
高流動度(MF)である。ところが、これらの指数は、
その測定精度が必ずしも高くない。従って、これらの指
標によって管理されるコークス品質にはバラツキが生じ
る。
【0008】上記の問題を解決すべく、たとえば、特開
平2-20592号公報、同2-97410号公報に開示されるような
数多くの改善が試みられている。
【0009】特開平2-20592号公報には、各石炭の流動
曲線に基づき、これを数式化し、流動開始温度から固化
温度までの間の一定温度ごとの流動度の対数を求め、流
動度の対数値を加重平均して求めた流動度の最大値を原
料炭の最高流動度と推定する方法、が開示されている。
【0010】また、特開平2-97410号公報には、原料炭
の性状として、平均反射率、平均反射率のバラツキ、ギ
ーセラー流動度、および灰分中の鉄成分または塩基性成
分の触媒効果指標を用いて、生産されるコークスの熱反
応後の強度を推定し、必要とする熱反応後の強度に見合
うように配合してコークス化を行うコークスの製造方
法、が開示されている。
【0011】上記のような多大な努力にも拘わらず、抜
本的な改善には至っていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】コークス炉へ装入する
原料炭は、前述したように通常10種類以上の石炭の混合
物が用いられる。この多種類の石炭の配合管理は、従来
から石炭の平均反射率(Ro)と最高流動度(MF)また
はその対数(logMF)とを主に用いてなされている。
【0013】石炭の流動性の指数として使用される最高
流動度(MF)は、ギーセラープラストメータによって
測定される軟化溶融状態下での最高流動度(単位=ddp
m)である。たとえばlogMFとして2〜3程度が好適で
あるといわれている。しかしながら、この指数は、元来
石炭のコークス化機構の本質を表すものではなく、いわ
ば経験的な相関の指標として採用されているものであ
る。これを基にコークスの品質を推定する場合には、基
本的にある程度のバラツキを含むことを前提とせざるを
得ない。
【0014】実操業における石炭配合の際には、個々の
石炭を配合した後の原料炭の最高流動度(MF)を実測
によって求めるのではなく、これを計算によって算出で
きることが望ましい。このため、従来は各石炭の実測値
を原料炭への配合割合に応じて加重平均したものを用い
てきている。しかしながら、この方法によって算出され
る配合後の原料炭の最高流動度(MF)は、実測値と一
致しないことが多い。これは上記のように、個々の石炭
のMFの測定値が不正確であることとともに、配合した
多数の石炭の相互作用が影響して加重平均では実体を表
さないものと考えられる。
【0015】さらに、近年コークス製造に係わる種々の
設備あるいは操業などの改善、革新が進み、従来コーク
ス製造用には不適であった非粘結炭および微粘結炭(以
下、合わせて「非粘結炭」という)が多量に配合される
ようになってきた。これらの非粘結石炭は、従来から使
用されている粘結炭に比較して非常に価格が安く、現在
では粘結炭に替えて少しでも多くの非粘結炭を使用する
ことが、コークス製造の経済性を向上させる大きな要因
になっている。
【0016】上記の非粘結炭とは、一般には最高流動度
の対数値(logMF)が1以下のものと定義されている。
そして、その中にはギーセラープラストメータが全く回
転しない(即ち、MFが測定できない)という石炭種も
相当数ある。したがって、このような石炭種の評価に最
高流動度(MF)を用いることは、ほとんど意味がない
ことになる。
【0017】コークス製造用の石炭の配合において使用
する指数としては、(1)コークス品質を精度良く推定で
きるものであること、(2)非粘炭を含む広範囲の石炭に
有効であること、(3)個々の石炭の性状から配合炭の性
状を推定できること、が肝要である。本発明の目的は、
これらの条件を満たす新しい指標を用いて、個々の石炭
の評価を行う方法、およびその方法を利用して理想的な
コークス製造用の石炭配合を行う方法を提供することに
ある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者は、コークス製
造用の石炭について種々検討を行い、特定域の熱重量減
少速度を用いることにより、非粘結炭から粘結炭までの
広範囲の石炭について、コークス用原料炭としての適否
を精度良く推定できることを確認し、本発明を完成し
た。 石炭の熱重量減少曲線を時間微分して重量減少
速度曲線に変換し、ここで得られる速度の最大値を全重
量減少量で除した値(Rmax)を計算し、このRmax値か
ら製品コークスの品質を推定することを特徴とするコー
クス製造用石炭の評価方法。 複数種類の石炭を配合
した原料炭からコークスを製造する際の原料炭の配合方
法であって、各石炭の熱重量減少曲線を時間微分して重
量減少速度曲線に変換し、ここで得られる速度の最大値
を全重量減少量で除した値(Rmax)を計算し、このRm
ax値の加重平均値に基づいて原料炭の配合を決定するこ
とを特徴とするコークス製造用原料炭の配合方法。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明方法では、原料炭の配合設
計において常用されているギーセラープラストメータ測
定値に代えて、石炭の流動性に関する新たな指数を採用
する。
【0020】本発明のおよびの方法は、熱天秤分析
をベースとしたRmax値を指数とするものである。
【0021】このRmax値とは、熱天秤で測定される熱
重量減少曲線をまず時間微分して重量減少速度曲線に変
換し、ここで得られる速度の最大値を全重量減少量で除
した値である。
【0022】石炭の軟化溶融現象は、石炭がコークスに
転化する過程において決定的な役割を担っている。この
現象の詳細なメカニズムは不明であるが、400〜500℃程
度の間では、芳香族積層構造を主体とする高分子の骨格
部分と、これの流動を助長するための比較的低分子の物
質とからなると考えられている。良質(高強度)のコー
クスを製造するためには、骨格部分の構造が重要である
ことは勿論であるが、骨格部分の再配列を促進する低分
子物質の存在も非常に重要である。したがって、低分子
物質がどれだけ安定して軟化溶融状態下に存在している
かが大きな鍵となる。
【0023】そこで、本発明者らは、ここで機能する低
分子物質の定量について種々検討を行った。Rmax値
は、熱重量減少最高速度を全減少量で除した値であるか
ら、ある期間にいかに多くの割合の低分子成分が揮発し
たかを示す数値である。言い換えれば揮発直前までの間
に、いかに多くの低分子物質が石炭中に存在したかを示
していることにもなる。そして、このRmax値となる温
度は、ギーセラープラストメータで測定される最高流動
温度と固化温度とのほぼ中間あたりにあり、さらに、す
べての石炭種について同様の傾向があることを確認し
た。
【0024】後述する実施例に示すように、このRmax
値の高い石炭ほど良好なコークスに転化していることか
ら、Rmax値で表される揮発成分が軟化溶融過程での流
動性に深く係わっているものと考えられる。
【0025】本発明の方法によれば、石炭の分子レベル
の性状に基づいた石炭の品質評価が可能になる。しか
も、複数の石炭を配合した後の原料炭の評価が、個々の
石炭のRmax値の加重平均値で評価できる。従って、配
合原料炭についてはRmax値を実測しなくても計算で求
めることができ、配合管理が容易になり、製品コークス
の品質制御の精度が格段に向上する。以下、本発明を実
施例によってさらに詳しく説明する。
【0026】
【実施例】(実施例1) 表1に示す組成の3種類の石炭を用意し、熱重量減少指
数(Rmax値)および最高流動度(MF)の石炭性状指数
を求め、これらの結果を表2に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】熱重量減少指数(Rmax値)は、熱天秤測
定を実施し、熱重量減少曲線およびこれの時間微分(重
量減少速度)曲線を求めた。図3は、実験に使用した石
炭Aと石炭Cの熱重量減少曲線(実線)およびこれの時
間微分(重量減少速度)曲線(破線)を示す図である。
ここで得られた重量減少速度の最大値を熱重量減少曲線
から得られる全重量減少量で除すことによってRmax値
を求めた。
【0030】最高流動度(MF)は、従来から指標とし
て用いられているものであり、ギーセラープラストメー
タで求めた。
【0031】装入量30kg規模の小型乾留試験炉を使用
し、表1に示す石炭についてそれぞれ乾留試験を行っ
た。その乾留条件は、炉温1100℃、乾留時間22時間、装
入炭水分6%、装入嵩密度0.78g/cm3 とした。得られた
コークスについて、常法に基づいて熱間反応後強度(C
SR)を求め表2に併記した。また、これらの結果か
ら、熱間反応後強度(CSR)と各石炭性状指数との関
係を図示した。
【0032】図1は、熱重量減少指数と熱間反応後強度
との関係を示す図、図2は、logMFと熱間反応後強度と
の関係を示す図である。
【0033】図1から明らかなように、石炭A、Bおよ
びC(●印)は直線関係にあり、熱重量減少指数(Rma
x値)を用いてコークスの熱間反応後強度を推定するこ
とができる。しかし、図2に示すように、石炭A、Bお
よびC(●印)は直関係にはなく、logMFからコークス
の熱間反応後強度を正確に推定することができないこと
がわかる。 (実施例2) 石炭A、BおよびCを配合した原料炭の乾留試験を実施
例1と同様に行った。表2に示す原料炭M1は、石炭A、
BおよびCを等量配合したもの、原料炭M2は、石炭Aを
50重量%、石炭Bを25重量%および石炭Cを25重量%を
配合したものである。
【0034】表2には原料炭M1およびM2に対して、これ
らの実測値と、混合した石炭A、BおよびCの単味炭の
実測値を加重平均した計算値とを併記した。
【0035】logMFでは、実測値(たとえば、M1で2.4
3)と計算値(同2.09)とその差が大きいのに対し、本
発明の方法で用いる熱重量減少指数(Rmax値)では、
実測値と計算値とがほぼ等しく、計算値でもって原料炭
の性状を精度良く推定できることがわかる。また、これ
らの結果を図1および図2にプロットした。原料炭M1お
よびM2の熱重量減少指数(Rmax値)は、実測値と計算
値とがほぼ等しいため図1に1点で示したが、logMFで
は実測値と計算値とに差があるので、図2ではそれぞれ
をプロットした(図中に、M1計、M2計とあるのが計算値
である。)。
【0036】図1から明らかなように、配合された原料
炭(M1、M2)(○、□印)は直線上にプロットされ、熱
重量減少指数(Rmax値)を用いてコークスの熱間反応
後強度を推定することができる。しかし、図2では、原
料炭(M1、M2)(○、□印)は曲線上にもプロットされ
ず、logMFからコークスの熱間反応後強度を正確に推定
することができないことがわかる。 (実施例3) 表3に性状を示す石炭について、実施例1と同様の手法
で各石炭性状指数を求め、表4に示した。石炭Dおよび
Eは、いずれも非粘結炭であり、最高流動度(MF)が
0(零)である。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】石炭DおよびEは、非粘結炭のため、従来
の最高流動度logMFではその差別化が不可能である。そ
れに対し、本発明方法で使用する指数(Rmax)によれ
ば差別化が可能である。
【0040】表1に示す石炭Aを75重量%、表3に示す
石炭DおよびEをそれぞれ25重量%を混合した原料炭
(M3およびM4)を準備し、これを用いて実施例2と同様
の方法で乾留試験を行った。得られたコークスの熱間反
応後強度(CSR)を測定し、その結果を表5に示し
た。
【0041】
【表5】
【0042】表5は、原料炭M3およびM4について、熱重
量減少指数(Rmax)およびlogMFを加重平均して求め
た値を示す。これらの値を図1および図2にプロット
(▲、△印)した。熱重量減少指数(Rmax)では、図
1に示すように直線上に位置し、コークスの熱間反応後
強度(CSR)を正確に推定することができる。しか
し、logMFとCSRとは、図2に示すように規則的な関
係になく、logMFの計算値からコークスの熱間反応後強
度(CSR)を正確に推定することができない。
【0043】
【発明の効果】石炭の熱重量減少指数(Rmax)を用い
る本発明方法によれば、その石炭を乾留したコークスの
品質を正確に推定することができる。しかも、複数種類
の石炭を配合した原料炭のRmaxが、個々の石炭のRmax
の加重平均値として求められるので、任意の品質のコー
クスが得られる原料炭の配合を決定することができる。
【0044】本発明方法は、従来の方法ではその性状の
判別が困難な低品質の石炭(非粘結炭)を使用するコー
クスの製造において特に有用であり、コークス製造のコ
スト低減に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱重量減少指数と熱間反応後強度との関係を示
す図である。
【図2】最高流動度logMFと熱間反応後強度との関係を
示す図である。
【図3】実験に使用した石炭Aと石炭Cの熱重量減少曲
線およびこれの時間微分(重量減少速度)曲線を示す図
である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−287010(JP,A) 特開 昭62−119291(JP,A) 特開 昭62−192485(JP,A) 特開 平4−275389(JP,A) 特開 平2−20592(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10B 57/04 G01N 33/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】石炭の熱重量減少曲線を時間微分して重量
    減少速度曲線に変換し、ここで得られる速度の最大値を
    全重量減少量で除した値(Rmax)を計算し、このRmax
    値から製品コークスの品質を推定することを特徴とする
    コークス製造用石炭の評価方法。
  2. 【請求項2】複数種類の石炭を配合した原料炭からコー
    クスを製造する際の原料炭の配合方法であって、各石炭
    の熱重量減少曲線を時間微分して重量減少速度曲線に変
    換し、ここで得られる速度の最大値を全重量減少量で除
    した値(Rmax)を計算し、このRmax値の加重平均値に
    基づいて原料炭の配合を決定することを特徴とするコー
    クス製造用原料炭の配合方法。
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