JP3371678B2 - 構造用低降伏比耐火鋼材の製造方法 - Google Patents
構造用低降伏比耐火鋼材の製造方法Info
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Description
時間程度の短時間、高温状態になることが懸念される建
築物、橋梁等の鉄骨構造物に使用する溶接性および常温
・高温強度バランスに優れた低降伏比耐火鋼材の製造方
法に関する。
強度を有するように製造されているが、一般に温度の上
昇に伴い強度は低下する。特に、従来の構造用鋼材は5
00℃程度以上の高温状態では顕著な強度低下を示すこ
とが既に知られている。そのため、火災等で高温状態に
なることが懸念される構造物、特に人間が居住する建築
物では高温状態でも構造物が倒壊したり、著しく変形す
ることがないようにし、さらに安全性を確保することを
目的として鋼材の温度が著しく高くならないように耐火
被覆が施されている。
て、高温状態でも鋼材の強度低下を小さく抑えることが
できれば、耐火被覆の厚さを低減すること、あるいは、
耐火に対するその他の対策を低減することが可能にな
る。
圧力容器用鋼の分野でその研究が行われてきており、例
えば、日本工業規格(JIS) では、JISG3124:中
・常温圧力容器用鋼強度鋼鋼板等として既に規格化され
ている。しかしながら、これらは高温で数万時間以上と
いった長時間使用の場合のクリープ強度の高い鋼材であ
り、本発明が対象としている火災等による数時間程度の
高温強度とは全く異なるものである。構造用鋼材で耐火
性を付与した鋼材は、例えば特開平2-77523 号公報で開
示されている。
〜0.7%と高く、通常使用される構造用鋼材としては
高合金系の範躊に入る成分である。特開平3-277715号公
報には耐火性および耐震性に優れた構造用鋼材の製造方
法が記載されているが、耐震性の向上のため制御圧延後
に加速冷却が必要であった。
火鋼材は、耐火鋼材としての十分な高温強度を発揮させ
つつ耐震性を向上させるためには、合金元素の多量な添
加や加速冷却が必要であるため、それぞれ溶接性、製造
コストの点で問題があった。本発明はかかる事情に鑑み
てなされたものであり、溶接性および常温・高温強度バ
ランスに優れた構造用低降伏比耐火鋼材を空冷にて提供
することを目的とする。
成するために、重量%で、Mo:0.10%以上、0.
50%未満を含有し、且つNbを含有せず、しかも下記
(1)式で規定される溶接割れ感受性組成(Pcm)が
0.12%以上0.24%未満である鋼を、1050〜
1300℃に加熱し、これを熱間圧延する際に、粗圧延
を950℃以上で終了した後、空冷又は加速冷却などの
任意の冷却によりAr3温度以下まで冷却してから、引き
続きAr3温度以下で圧下率20%以上の仕上げ圧延を施
し、圧延終了温度をAr3 温度〜Ar3温度−100℃と
した後、空冷することを特徴とする構造用低降伏比耐火
鋼材の製造方法である。 Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20
+Ni/60+Mo/15+V/10+5B(%)…
(1) この発明は、また、Nb:0.005%以上0.05%
未満、V:0.01%以上0.1%未満のうち1種又は
2種をさらに含む鋼に対して、上に述べた工程と同様の
工程を施すことを特徴とする構造用低降伏比耐火鋼材の
製造方法である。ただし、Nbを添加する場合はMoの
上限を0.40%未満とする。
る数時間程度の高温強度をいう。この方法により得られ
る鋼材は、溶接性および常温・高温強度バランスに優れ
た性質を有する。
は、製造した鋼材が溶接性、コスト等に優れるとともに
十分な高温強度を有している点である。このようなこと
を考慮して、本願発明者等が上記課題を解決するために
鋭意研究を行った結果、主としてMoを添加した鋼に対
して適切な二相域圧延を施した場合、高温強度が著しく
向上し、常温・高温強度バランスが改善されることを見
出した。図1は、0.37%Mo添加鋼についての圧延仕上
温度と600℃における0.2%耐力の関係を示す。各
仕上温度での圧下率は25%である。圧延仕上温度がA
r3温度である780℃以下になると600℃での耐力は
大幅に向上する。図2は、0.35〜0.40%Mo添
加鋼について、圧延条件を変化させた場合の室温降伏強
度と600℃における0.2%耐力の関係を表したもの
である。製造条件を本発明の範囲内とすることによっ
て、常温・高温強度バランスが改善される。上記内容の
本発明は、本発明者等の知見に基づいてなされたもので
ある。以下に、本発明における化学成分の限定理由につ
いて説明する。
より鋼の強度を上昇させるのに有効な元素であり、特に
中・高温強度に対しては極めて有効である。しかし、
0.10%未満ではその効果を得ることは困難であり、
また、0.50%以上添加した場合コスト上昇につなが
るだけでなく、溶接性も劣化させる。このため、Moの
含有量を0.05%以上0.50%未満に規定する。
は、溶接時の低温割れの生じやすさを表す指標である。
低温割れの観点からはPcmは低い方が望ましいが、
0.12%未満では構造用鋼材として必要な強度を得る
ことは困難である。一方、0.24%以上では、溶接熱
影響部(HM)最高硬さが上昇し、低温割れが生じやす
くなる。このためPcmの範囲を0.12%以上0.2
4%未満に規定する。
成分の他に、必要に応じてNb,Vのうち1種又は2種
を添加することができる。Nb:Nbは常温強度および
高温強度の上昇に対して有効な元素である。しかし、
0.005%未満ではその効果が得られず、また、0.
05%以上添加すると溶接性が劣化する。このため、N
bの含有量を0.005%以上0.05%未満に規定す
る。ただし、Nbを添加する場合はMoの上限を0.4
0%未満とする。
強度の上昇に対して有効な元素である。しかし、0.01
%未満ではその効果が得られず、また、0.1%以上添
加すると溶接性が劣化する。このため、Vの含有量を
0.01%以上0.1%未満に規定する。
上述の成分組成の鋼を1050〜1300℃に加熱す
る。加熱温度を1050℃以上としたのは添加した元素
の溶体化のためである。低降伏比達成のためには、加熱
温度を高くしてオーステナイト粒径を大きくする方が望
ましいが、1300℃を越えるとオーステナイト粒が顕
著に粗大化するため、加熱温度は1300℃以下とす
る。
比を達成するために、オーステナイト粒径を過度に微細
にしないことが必要である。粗圧延が950℃未満で行
われると、再結晶の進行によりオーステナイト粒径が微
細になり、後述の二相域圧延を行った場合、降伏比が高
くなるため粗圧延の温度を950℃以上に規定する。そ
の後Ar3温度以下まで圧延を施さずに冷却するのは、前
述のようにオーステナイト粒径を過度に微細にしないた
めであり、通常は空冷でよい。ただし、板厚が厚い場合
等に冷却時間の短縮を図りたい場合は、Ar3温度以下ま
で加速冷却を施しても差し支えない。本発明鋼の場合、
Ar3温度以下における圧下率20%以上において、高温
強度の著しい向上の図れることが見出されたため、圧下
率を20%以上に規定する。
と二相域圧延とならないため、高温強度の著しい向上に
よる常温・高温強度バランスの改善効果が得られない。
また、Ar3温度−100℃未満では圧延荷重が増大し圧
延が困難になるとともに、圧延効率が極度に低下する。
このため、圧延終了温度はAr3温度〜Ar3温度−100
℃とする。本発明では2相域での20%以上の圧下によ
り高温強度、常温強度ともに十分な性能が得られるが、
さらに加速冷却を行えば、高強度が得られることはいう
までもない。
表1に供試鋼の化学成分、溶接割れ感受性組成(Pcm) 、
およびAr3温度を示す。鋼番A〜Hの鋼は本発明の範囲
内の成分組成のものであり、鋼番I〜Kは本発明の成分
組成から外れる比較鋼である。比較鋼I、Kは溶接割れ
感受性組成が本発明の範囲よりそれぞれ低い側、高い側
へ外れたものであり、比較鋼JはMoの添加量が本発明
の範囲より少ないものである。
式で与えられる。表2に供試鋼A〜Kを用いて製造した
板厚25mmの鋼板の製造条件、常温引張試験、高温引張
試験結果、ならびに溶接熱影響部最高硬さと溶接性の良
否を示す。高温引張試験は600 ℃にて実施した。
1,E−1,F−1,G−1,H−1はいずれも本発明
の範囲内の成分組成および製造条件を満足する実施例で
あり、板番A−2,C−2,D−2,E−2,F−2,
I−1,J−1,K−1はこれらの範囲から外れる比較
鋼である。表2から明かなように、実施例の場合には、
600 ℃における0.2 %耐力は、常温の降伏強さの70%以
上あり、耐火鋼材としての性能を満足している。また、
降伏比も十分に低く、溶接性も良好である。比較鋼A−
2,C−2,D−2,E−2,F−2,H−2は成分組
成は本発明の範囲内であるが、製造条件が本発明の範囲
外であるため、600℃における0.2%耐力が十分で
なく、耐火鋼としての性能を満足していない。また、I
−1,J−1,K−1は成分組成が本発明の範囲外であ
るため、製造条件が本発明の範囲内であっても、I−1
については構造用鋼材として必要な強度が不足してお
り、J−1については耐火鋼材としての高温強度が得ら
れていない。また、K−1については溶接性に問題があ
る。
よび製造条件の鋼では高温強度特性に優れているととも
に、溶接性ならびに常温・高温強度バランスにも優れた
構造用耐火鋼材としての性能を有していることが確認さ
れた。
ば、Mo添加系を基本成分としながらPcm を規定し、か
つ、粗圧延を比較的高温で行った後に二相域圧延を施す
ことによって、高価な合金元素の多量の添加や加速冷却
をおこなわななくても高温において高い強度を有し、か
つ、溶接性および常温・高温強度バランスに優れた構造
用低降伏比耐火鋼材の製造方法が得られる。このため、
従来耐火特性を要求されていた構造物で使用されていた
耐火被覆を大幅に低減あるいは省略することが可能であ
るばかりでなく、構造物設計、溶接施工ならびに耐震面
の点からも構造物の安全性の向上が期待できる等の効果
がある。
00℃における0.2%耐力の関係を示す図。
延条件を変化させた場合の室温降伏強度と600℃にお
ける0.2%耐力の関係を表した図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、Mo:0.10%以上、0.
50%未満を含有し、且つNbを含有せず、更に下記
(1)式で規定される溶接割れ感受性組成(Pcm)が
0.12%以上0.24%未満である鋼を、1050〜
1300℃に加熱し、これを熱間圧延する際に、粗圧延
を950℃以上で終了した後、Ar3温度以下まで冷却し
てから、引き続きAr3温度以下で圧下率20%以上の仕上
げ圧延を施し、圧延終了温度をAr3温度〜Ar3温度−1
00℃とした後、空冷することを特徴とする構造用低降
伏比耐火鋼材の製造方法。 Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20
+Ni/60+Mo/15+V/10+5B(%)…
(1) - 【請求項2】重量%で、上記鋼は、Nb:0.005%
以上0.05%未満、V:0.01%以上0.l%未満
のうち1種又は2種を更に含むことを特徴とする請求項
1に記載の製造方法。ただし、Nbを添加する場合はM
oの上限を0.40%未満とする。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09255296A JP3371678B2 (ja) | 1996-04-15 | 1996-04-15 | 構造用低降伏比耐火鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09255296A JP3371678B2 (ja) | 1996-04-15 | 1996-04-15 | 構造用低降伏比耐火鋼材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09279230A JPH09279230A (ja) | 1997-10-28 |
JP3371678B2 true JP3371678B2 (ja) | 2003-01-27 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3371678B2 (ja) |
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---|---|---|---|---|
JP6164171B2 (ja) * | 2014-07-22 | 2017-07-19 | Jfeスチール株式会社 | 高温強度と溶接性に優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法 |
-
1996
- 1996-04-15 JP JP09255296A patent/JP3371678B2/ja not_active Expired - Fee Related
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