JPH079032B2 - 耐火性に優れた建築用低降伏比高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

耐火性に優れた建築用低降伏比高強度冷延鋼板の製造方法

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JPH079032B2
JPH079032B2 JP2018090A JP2018090A JPH079032B2 JP H079032 B2 JPH079032 B2 JP H079032B2 JP 2018090 A JP2018090 A JP 2018090A JP 2018090 A JP2018090 A JP 2018090A JP H079032 B2 JPH079032 B2 JP H079032B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はプレハブ用建材、その他土木および海洋構造物
等の分野における各種建造物に用いる耐火性に優れた低
降伏比高強度冷延鋼板の製造方法に係る。
(従来の技術) 建築物の耐火性は重要で、大型ビルから一般住宅用まで
種々その対策がなされている。特に一般住宅にあっては
地価高騰のため3階建て住宅が普及しつつあるがこの場
合、相応の耐火性が要求される。しかし、一般的には、
特開昭63-47451号公報記載の技術のように耐火被覆で以
て火災対策を行なっているのが現状である。そのため、
建築コストが上昇し、建造物の利用空間を狭くしてい
る。
近時、耐火設計について見直しが行なわれ、昭和62年建
築物の新耐火設計法が制定されるにいたり、従来の火災
時の許容鋼材温度(350℃以下)の規定が外され、鋼板
の高温強度と建物に実際に加わっている荷重により、耐
火被覆の能力を決定できるようになり、素材鋼板の高温
強度が確保される場合等には無被覆で鋼板を使用するこ
とも可能となった。
本発明により得られる鋼板と同様に、耐火用の高温強度
を保証した鋼板としては、特願昭63-143740号にて提案
した技術があるが、この技術は主として厚板についての
ものである。しかし、屋根材やデッキプレートは、冷延
鋼板を素材として使用する場合が多い。
冷延鋼帯または鋼板は、熱延コイルを冷間圧延後、ほと
んど連続焼鈍を行なう。
この工程では、大量生産のため通板速度を極度に低下さ
せることはできない。さらに再結晶を完全に行なわせる
ため焼鈍温度をむやみに下げることはできない。加えて
焼鈍後に急冷、過時効があり、組織、析出等の制御が複
雑である。
これらの理由により常温引張特性および高温強度特性を
付与させるには、厚板工程とは大幅に異なってくる。
さらに上記厚板の技術は、Mo添加を基本としており、高
合金鋼ほどではないが経済性において問題は完全に解決
されたとはいえない。そこで本発明者らCu系鋼の優秀性
に着眼し、低C-Cu系鋼に関する技術を創案し特許出願し
た(特願平1-27297号)。本発明はこの先願の技術をさ
らに発展させたものである。
(発明が解決しようとする課題) 従来鋼では結晶粒成長、析出物の粗大化、炭化物溶解等
で高温強度を確保するのが難しい。また、高合金耐熱金
属はFe系以外に、Ni系、Ti系等も存在しているが、建築
用に大量に消費されるものとしては、経済性に難点があ
る。
本発明の目的は、高温特性に優れ、耐火被覆が低減ない
し省略でき、かつ常温強度も高く、低降伏比であり、特
願平1-26225号で提案した技術のように極低炭素化を必
要とせず、かつ非Mo系の普通鋼に近い鋼成分という、経
済性に優れ、さらに建築用鋼に必要な耐候性、耐食性を
兼備した低降伏比高強度冷延鋼板あるいは鋼帯を製造す
る方法の提供にある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、火災時における鋼板強度について研究の
結果、経済的な成分系で、600℃での降伏点強度が常温
強度の0.6倍以上となる鋼板の製造方法を発明するに至
った。さらに、地震時における鋼板強度について検討の
結果、常温における降伏比(降伏点強度/引張強度)が
80%以下の低降伏比鋼板が、耐震性に優れていることも
明らかにし、併せて達成するに至った。
本発明の要旨とするところは、下記のとおりである。
(1)重量比で、C:0.02〜0.1%、Si≦0.5%、Mn:0.3〜
1.5%、P≦0.05%,Al≦0.1%、Cu:0.6〜2.0%を含み、
残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼をスラブとした
後、直ちに、あるいは950〜1150℃に加熱し、750〜900
℃で熱間圧延し、熱延コイルを製造し、その後、冷間圧
延を行ない、さらに連続式焼鈍工程を通板する際、700
〜900℃で1〜3分加熱し、平均冷却速度3℃/s以上で
冷却し、250℃〜450℃で1〜10分保定することを特徴と
する600℃における降伏点強度が常温における降伏点強
度の0.6倍以上である耐火性に優れた建築用低降伏比高
強度冷延鋼板の製造方法。
(2)重量比で、C:0.02〜0.1%、Si≦0.5%、Mn:0.3〜
1.5%、P≦0.05%,Al≦0.1%、Cu:0.6〜2.0%を含み、
さらにNiをNi/Cuで0.2〜1.0%を含み、残部Feおよび不
可避的不純物からなる鋼をスラブとした後、直ちに、あ
るいは950〜1200℃に加熱し、750〜900℃で熱間圧延
し、熱延コイルを製造し、その後、冷間圧延を行ない、
さらに連続式焼鈍工程を通板する際、700〜900℃で1〜
3分加熱し、平均冷却速度3℃/s以上で冷却し、250〜4
50℃で1〜10分保定することを特徴とする600℃におけ
る降伏点強度が常温における降伏点強度の0.6倍以上で
ある耐火性に優れた建築用低降伏比高強度冷延鋼板の製
造方法。
すなわち、本発明は、低C-Mn基本成分系に多量のCuを添
加した成分系の鋼を用い、スラブ加熱時はCuによる高温
割れが生じないようにし、さらに所定の特性を付与させ
るように、特定の条件で熱延、冷延および連続焼鈍を行
なうことによって耐火性に優れた建築用低降伏比高強度
冷延鋼板を製造しようとするものである。また、高温割
れに対しては、本発明に従いNi添加で補強することによ
り優れた効果が奏される。
以下、本発明の数値限定理由について述べる。
Cは0.02〜0.1%とする。本発明では、Cは強度を担う
元素である。0.02%未満では必要な強度を付与させるの
が難しい。また、製鋼における強度の真空脱ガスを必要
とするので経済性を損ねる。一方、0.1%を超えるとマ
ルテンサイト等焼入れ組織となりやすく曲げ性を劣化さ
せる。
Mnは0.3〜1.5%とする。0.3%未満では十分な強度を持
った組織となりにくい。一方、1.5%を越えると焼入れ
組織となりやすく、加工性が劣化する。
Siは0.5%以下とする。これを越えると加工性が劣化す
る。
Pは0.05%以下とする。これを越えると靱性が劣化す
る。一方、本成分系では、0.03%以上Pを添加すると耐
食性が向上することが判明したので、下限値は0.03%と
するのが好ましい。
Alは0.1%以下とする。Alは脱酸剤として必要である
が、0.1%を越える場合は、介在物が増加し、加工性が
劣化する。
Cuは0.6〜2.0%とする。Cuは本発明において極めて重要
な元素である。すなわち、本発明の主目的である高温強
度を確保し、かつ常温強度も担っている。強化機構はま
だ明らかではないが、常温強度はCuの固溶体強化ないし
若干のクラスター強化に、高温強度はCuのクラスター強
化ないし析出に負うものと考えられる。0.6%未満の添
加では、Cuの過飽和度が不足し、必要な高温温度が付与
されない。また、2.0%を越える添加は、これらの効果
が飽和傾向になり、熱間割れが避けがたくなる。
NiはNi/Cuで0.2〜1.0%とする。Ni添加は熱間割れを完
全になくすために行なう。下限値未満では効果がなく、
上限値を越えるとNiは高価な金属であるので本発明の大
きな目的の一つである経済性を損なう。
本発明の効果は以上の成分系だけの特定でもたらされる
ものではない。すなわち、熱延、冷延、連続焼鈍条件も
極めて重要な要件である。特に、本発明のような多量の
Cuを添加した鋼にあっては、いわゆるCu脆化と呼ばれる
熱間割れを生じ、十分な熱間圧延ができないのが現状で
あった。本発明では以下のように熱延〜冷延〜連続焼鈍
条件を特定する。
熱延はスラブ鋳造後に直ちに(CC−直接圧延)行なう
か、もしくは加熱後に行う。加熱温度はNi無添加の場合
は950〜1150℃、Ni添加の場合は950〜1200℃とする。加
熱温度が上限値を越えると熱間割れが避けられない。CC
−直接圧延を行なう場合は保温もしくは端部の多少の加
熱を行なっても差し支えない。さらに十分、Cuヘゲをな
くすためには1100℃以下とするのが好ましい。加熱温度
の下限は現状の連続熱延設備で採り得る950℃とする。
この条件であれば、Cuの溶体化は十分である。
熱間圧延終了温度は750〜900℃とする。
750℃未満であるとCuが圧延により、ひずみ誘起析出
し、高温強度に必要な、常温での過飽和なCu量を確保で
きない。さらに十分な過飽和なCu量を得るには、800℃
以上が好ましい。上限値は低温加熱との関係により現状
の連続熱延設備で採り得る900℃とする。
上記の方法で得られた熱延コイルを冷間圧延し、冷延コ
イルとし、それを連続式焼鈍工程で通板する場合は、焼
鈍温度は700〜900℃とする。下限値未満では、再結晶を
完全に行なわせるには不十分で、曲げ性が劣化し、かつ
Cuの析出域にかかるので、Cuが析出し必要な高温特性、
常温特性が得られない。コイル全体に亙って、再結晶を
完全に行なわせ、常温での過飽和なCu量を十分に確保す
るには、800℃以上が好ましい。一方、上限値を越える
と結晶粒が粗大化し、常温強度が低下する。焼鈍の保定
時間は、1〜3分とする。下限値未満では、再結晶が十
分ではなく、加工性が劣化する。上限値は通板速度と関
係があり、これを越えると生産性が落ち、経済性を損な
う。
平均冷却速度は3℃/s以上とする。この冷却速度より低
い値で徐冷すると冷却中にCuが析出し、必要な高温特
性、常温特性が得られない。上限は板厚にもよるが、現
在の設備で採り得る100℃/s以上としても効果は持続す
る。
冷却後の保定温度は250〜450℃とする。下限値未満では
焼入れ組織となりやすく、加工性が劣化する。上限値は
現在の設備に負荷のかからないこの温度とする。冷却後
の保定時間は1〜10分とする。下限値は通板速度により
決まり、現在の設備で負荷がかからないものとする。上
限値はやはり通板速度と関係があり、これを越えると生
産性が落ち、経済性を損なう。
本発明の出発鋼は通常転炉で溶製し、真空脱ガス等で二
次精錬を行なっても良い。そして普通は連続鋳造により
スラブとした後、直ちに、あるいは加熱後熱延を施し、
得られた熱延コイルを冷間圧延し、さらに連続焼鈍を行
なう。
次に本発明の実施例について説明する。
第1表に示す成分を有する鋼を転炉にて出鋼後、連続鋳
造にてスラブとした後、直ちに、あるいは加熱後熱延を
施し、得られた熱延コイルを冷間圧延し、さらに連続焼
鈍を行なった。
第2表に熱延条件、冷延条件、連続焼鈍条件および得ら
れた鋼板の特性値を示す。常温における引張試験はJIS
Z 2201 5号試験片を用い、JIS Z 2241に基づいて行なっ
た。高温引張試験は、高温伸び計を試験片に取り付け、
600℃まで10℃/sの速度で昇温し、その温度にて15分保
持の後、引張試験を行ない、0.2%耐力または降伏点強
度を測定した。
また、製造した熱延コイルを冷延工程で通板する際、そ
の前面にて、いわゆるCuヘゲに起因する表面状況をコイ
ル全長にわたり観察し、次のように評点付けを行なっ
た。◎:良好(一般材と同じ)、○:軽微(出荷合格
品)、△:やや認められる(向け先により出荷不可)、
×:発生大(不良品)。
材料の加工性は、曲げ性で評価した。試験片は、JIS Z
2204の3号試験片を用い、試験方法は、JIS Z 2248に従
った。曲げ強度は180℃で行ない、密着したものは○、
割れが生じたものは×とした。
第2表に本発明鋼と比較鋼の特性値を示す。本発明鋼は
Cuヘゲの程度も実用上なんら問題なく、常温強度,高温
強度とも各々規格値を満たし、曲げ性も良好である。
これに対し、本発明に従っていない比較鋼では、これら
特性値のいずれかが本発明鋼より劣る。
(発明の効果) 近年の急激な地価高騰により、土地および空間の有効利
用が叫ばれ、ビル等は高層化が進み、一般住宅において
も3階建て住宅が普及しつつある。そのなかで火災対策
は社会的な課題である。しかし、従来の耐火被覆工法
は、建築物のコスト増、建物のスペース減を招くもので
ある。さらに耐火被覆で、通常行なわれる石綿吹き付け
は環境面から好ましいものとはいえない。
本発明はこのような状況の中で鉄系の優れた高温特性を
有する素材を、普通鋼に近い成分系で、大量に供給でき
る連続熱延〜冷延〜連続焼鈍工程で製造することを可能
にしたものであり、これにより、従来の耐火被覆の軽減
ないし省略を計ることができ、上記社会的課題の解決に
大きく貢献するものと考えられる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で、C:0.02〜0.1%、Si≦0.5%、M
    n:0.3〜1.5%、P≦0.05%,Al≦0.1%、Cu:0.6〜2.0%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼をスラ
    ブとした後、直ちに、あるいは950〜1150℃に加熱し、7
    50〜900℃で熱間圧延し、熱延コイルを製造し、その
    後、冷間圧延を行ない、さらに連続式焼鈍工程を通板す
    る際、700〜900℃で1〜3分加熱し、平均冷却速度3℃
    /s以上で冷却し、250〜450℃で1〜10分保定することを
    特徴とする600℃における降伏点強度が常温における降
    伏点強度の0.6倍以上である耐火性に優れた建築用低降
    伏比高強度冷延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】重量比で、C:0.02〜0.1%、Si≦0.5%、M
    n:0.3〜1.5%、P≦0.05%,Al≦0.1%、Cu:0.6〜2.0%
    を含み、さらにNiをNi/Cuで0.2〜1.0を含み、残部Feお
    よび不可避的不純物からなる鋼をスラブとした後、直ち
    に、あるいは950〜1200℃に加熱し、750〜900℃で熱間
    圧延し、熱延コイルを製造し、その後、冷間圧延を行な
    い、さらに連続式焼鈍工程を通板する際、700〜900℃で
    1〜3分加熱し、平均冷却速度3℃/s以上で冷却し、25
    0〜450℃で1〜10分保定することを特徴とする600℃に
    おける降伏点強度が常温における降伏点強度の0.6倍以
    上である耐火性に優れた建築用低降伏比高強度冷延鋼板
    の製造方法。
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