JP3821319B2 - 耐火性の優れた建築用継目無鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐火材の被覆を簡略化あるいは省略しても、火災時において十分な強度を有する耐火性(600℃での降伏点が常温降伏点規定値の2/3以上)に優れた建築用継目無鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄骨構造等の構造物は、火災時においても十分な強度を保証するため、鋼材にロックウール等の耐火材の被覆を施し、鋼材の温度が350℃以上に上昇しないように対策することが義務付けられていた。
【0003】
しかし、昭和57〜61年の建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐火設計法の開発」の成果により、火災時の構造安定性が数値シミュレーションおよび実験で確認できれば、耐火物の被覆厚さを薄くすること、もしくは耐火物を被覆することなく使用することが可能となった。すなわち、鋼材が600℃において十分な強度(600℃での降伏点が常温の規格降伏点の2/3以上)を有する場合は、耐火被覆を省略し、裸使用が可能になった。
【0004】
従来、耐火性に優れた建築用鋼材としては、C:0.04〜0.15%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜1.6%、Nb:0.005〜0.04%、Mo:0.4〜0.7%、Al:0.1%以下、N:0.001〜0.006%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を、1100〜1300℃の温度域で加熱後、熱間圧延を800〜1000℃の温度範囲で終了する方法、あるいはC:0.04〜0.15%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜1.6%、Nb:0.005〜0.04%、Mo:0.4〜0.7%、Al:0.1%以下、N:0.001〜0.006%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材、あるいはC:0.04〜0.15%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜1.6%、Nb:0.005〜0.04%、Mo:0.4〜0.7%、Al:0.1%以下、N:0.001〜0.006%を含有し、かつ、Ti:0.005〜0.10%、Zr:0.005〜0.03%、V:0.005〜0.10%v、Ni:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.001〜0.02%のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材(特公平4−50362号公報)、Vを0.005〜0.2%含有し、炭素当量(Ccq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+V/14)が0.35〜0.50%である鋼、あるいはVを0.005〜0.2%およびMoを0.005〜0.6%含有し、炭素当量(Ccq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+V/14)が0.35〜0.50%である鋼を、1000〜1280℃で加熱し、800〜1000℃で圧延終了し、圧延終了後放冷または加速冷却あるいは冷却後焼ならす方法(特開平2−163341号公報)、C:0.03〜0.15%、Si:0.05〜0.90%、Mn:0.30〜2.00%、P:0.005〜0.050%、Cr:0.10〜2.00%、Mo:0.25〜0.70%、Sol.Al:0.005〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式で示されるPCMが0.30%以下である鋼材(特公平7−39608号公報)が提案されている。
PCM=C+(1/30)Si+(1/20)Mn+(1/20)Cu+(1/60)Ni+(1/20)Cr+(1/15)Mo+(1/10)V+5B
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特公平4−50362号公報、特開平2−163341号公報ならびに特公平7−39608号公報に開示の方法は、耐火性を確保するため、鋼に高価なMo、V、Nb等の合金元素を製品強度に見合った量添加しており、製品強度に対するコスト割合を押し上げるという欠点を有している。また、合金元素の添加量を低く抑えた場合には、十分な高温強度が得られないという欠点を有している。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、高価な合金元素の添加量を低く抑えても、十分に高い常温ならびに高温強度を有する耐火性の優れた建築用継目無鋼管の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐火性の優れた建築用継目無鋼管の製造方法は、成分が質量 % で ( なお、従来技術並びに本発明の鋼成分は単に % と表示する ) 、C:0.04〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.7%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.010%以下、N:0.012%以下を含有し、かつ、V:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.04%、Cr:0.1〜0.5%のうちの1種以上を含み、下記(1)式で得られる活性Nが0.002%以上で、残部がFeおよび不可避的不純物からなるビレットを加熱し、熱間で穿孔、圧延して継目無鋼管を製造する方法において、穿孔に続いて断面圧縮率30%以上の仕上圧延を仕上り温度900℃以上で行い、空冷後、900〜1000℃の温度で焼ならし、さらに500〜700℃の温度で焼戻しを行うことを特徴としている。
活性N(%)=N(%)−{1/2×Al(%)}………(1)式
【0008】
このように、C:0.04〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.7%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.010%以下、N:0.012%以下を含み、かつ、V:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.04%、Cr:0.1〜0.5%のうちの1種以上を含有し、さらに、前記(1)式で得られる活性Nを0.002%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるビレットを加熱し、熱間で穿孔、圧延して継目無鋼管を製造する過程において、穿孔に続いて仕上り温度900℃以上、断面圧縮率30%以上で仕上圧延後空冷し、その後900℃〜1000℃の温度で焼ならし、さらに500〜700℃の温度で焼戻しを行うことによって、安価に高温強度に優れた継目無鋼管を製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、前記仕上圧延後に空冷したのち、900〜1000℃で焼ならし、さらに500〜700℃の温度で焼戻しを行い、整粒された微細な再結晶粒を得る。
【0010】
本発明の耐火性の優れた建築用継目無鋼管の化学組成を限定した理由を説明する。まず、前記(1)式で推定される活性Nを0.002%以上に限定する理由を作用効果と共に説明する。
【0011】
本発明の耐火性の優れた建築用継目無鋼管の製造方法は、固溶Nによる高温強度確保を特徴としており、その固溶するN量を確保するためには前記(1)式で得られる活性N量を確保する必要がある。活性N量を確保する第一の方法は、N添加量を増加させることであるが、この場合鋼中Alと化合物(AlN)を形成、析出して鋼の靭性を低下させるので、同時に鋼中のAl量も低減する必要が生じる。これらのことから、この発明の鋼材は、高Nかつ低Alが好ましいため、製鋼工程におけるAl処理作業を考慮してAlは0.01%以下とした。
【0012】
一方、N量に関しては、活性Nを多くする観点から高い方が好ましいが、0.012%を超えて添加すると後工程で鋼の表面性状を低下させるため、0.012%以下、好ましくは0.07〜0.012%とした。
【0013】
また、活性N量と高温降伏強度との関係は、図2に示すとおりであって、活性Nが0.002%未満となると急激に高温強度が低下することから、前記(1)式で推定される活性N量を0.002%以上とすることが必要である。
【0014】
Cは、鋼の常温強度を確保するために必要な元素であるが、0.04%未満ではその効果が十分でなく、また、0.15%を超えると鋼の靭性、建築材として溶接する際の耐溶接割れ性を低下させるので、0.04〜0.15%とした。
【0015】
Siは 製鋼時の脱酸剤としてだけではなく、鋼の常温ならびに高温強度を確保するのに有効な元素であるが、0.5%を超えると耐溶接割れ性を低下させるので、0.5%以下とした。
【0016】
Mnは、鋼の常温ならびに高温強度を確保するのに有効な元素であるが、0.5%未満ではその効果が十分でなく、また、1.7%を超えるとその効果が飽和すると共に、溶接性を低下させるので、0.5〜1.7%とした。
【0017】
Moは、固溶強化により鋼の高温強度を増加させるために不可欠な元素であるが、0.1%未満ではその効果が十分でなく、また、1.0%を超えると高価な元素で鋼材のコストアップにつながると同時に、靭性の低下を招くため、0.1〜1.0%とした。
【0018】
V、Nb、Crは、高温強度を確保するための元素であり、一層高温強度が必要な場合、その一種以上を添加する。
【0019】
Vは、鋼の常温ならびに高温強度を確保するのに有効な元素であるが、0.01%未満ではその効果が十分でなく、また、0.10%を超えると鋼の靭性、溶接性を低下させるので、0.01〜0.10%とした。
【0020】
Nbは、組織を微細化することから鋼の常温ならびに高温強度、靭性を確保するのに有効な元素であるが、0.01%未満ではその効果が十分でなく、また、0.04%を超えて過度に添加すると、Nと化合、析出してかえって靭性を低下させるので、0.01〜0.04%とした。
【0021】
Crは、鋼の高温強度を確保するのに有効な元素であるが、0.1%未満ではその効果が十分でなく、また、0.5%を超えると高価な元素で鋼材のコストアップにつながると同時に、耐溶接割れ性を低下させるため、0.1〜0.5%とした。
【0022】
次に製造条件の限定理由は、以下のとおりである。
ビレットの加熱温度は、穿孔機で熱間穿孔できる温度であればよく、特に限定されないが、最適温度は材質によって異なり、高温延性と高温強度を考慮して決定すればよく、通常は1100℃から1300℃の間に加熱する。
【0023】
本発明の仕上圧延における断面圧縮率を30%以上としたのは、断面圧縮率が30%未満の場合には焼ならしでの再結晶がスムーズに進行せず、微細化効果が得られないばかりでなく、時として結晶粒が異常成長するからである。仕上圧延における断面圧縮率の上限は、製管対象の材質やミルの能力によって異なるため、特に限定されないが、断面圧縮率が大きすぎると疵が発生し易くなるので、80%を上限とするのが好ましい。
【0024】
本発明の仕上圧延における仕上り温度は、製管対象の材質やミルの能力によって異なるが、900℃未満では中空素管の変形抵抗が大きくなって断面減少率30%以上の強加工を施すことが困難となるので、900℃以上とした。
【0025】
本発明の仕上圧延して空冷した後の焼ならしは、再結晶による結晶粒の整粒化を行うもので、加熱温度が900℃未満では加工歪がなく靭性が低下すること、再結晶化するのに長時間を必要とし、製管効率が極めて低くなり、また、1000℃を超える温度では、結晶粒が大きく成長して粗粒化が甚だしく、靭性が低下して二次加工等に際して割れの原因となるため、900℃〜1000℃とした。
【0026】
本発明における焼戻し処理は、焼ならしによる残留応力が緩和されていることが、靭性性能の観点から必要である。焼戻し熱処理温度としては、Ac1変態点以下である必要があるが、製管対象の材質によってAc1変態点が異なるので、500〜700℃とした。また、加熱保持時間は、通常20分以上必要である。
【0027】
【実施例】
表1に示す化学組成の鋼A〜Fを溶製し、通常の方法で分塊圧延して直径187mmのビレットとなし、1200℃に加熱したのち、表2に示す条件で製管して200℃以下まで空冷したのち、再加熱焼ならし処理を行い、空冷後さらに焼戻し熱処理を行って外径216.3mm、肉厚20.0mmの継目無鋼管を製造した。なお、図1に本発明法の概略製造工程を示す。このようにして製造した各継目無鋼管から試験片を採取し、JIS Z2241に規定の金属材料引張試験方法に準じて室温で引張試験を、また、JIS G0567に規定の鉄鋼材料および耐熱合金の高温引張試験方法に準じて600℃で引張試験を実施し、室温における降伏点(YS)、引張強度(TS)、破断伸び(EL)と600℃における降伏点(YS)を測定した。さらに、JIS Z2242に規定の金属材料衝撃試験方法に準じてシャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギーを測定した。その結果を表3に示す。なお、シャルピー衝撃試験に用いた試験片は、圧延方向に切り出した幅10mm、長さ10mmの試験片に深さ2mmのVノッチを設けたものを使用した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
表2、表3に示すとおり、試験No.1〜6の本発明法により得た継目無鋼管は、十分な高温強度、靭性性能を示している。これに対し、試験No.7〜11の比較例の場合は、高温強度、靭性性能のいずれかが確保できていない。
【0032】
【発明の効果】
本発明の耐火性に優れた建築用継目無鋼管の製造方法は、従来法に比較し、製管コストを高めることなく、安価で耐火性に優れたものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における本発明法の概略製造工程図である。
【図2】鋼中の活性Nと600℃における降伏点との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 成分が質量 % で、C:0.04〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.7%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.010%以下、N:0.012%以下を含有し、かつ、V:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.04%、Cr:0.1〜0.5%のうちの1種以上を含み、下記(1)式で得られる活性Nが0.002%以上で、残部がFeおよび不可避的不純物からなるビレットを加熱し、熱間で穿孔、圧延して継目無鋼管を製造する方法において、穿孔に続いて断面圧縮率30%以上の仕上圧延を仕上り温度900℃以上で行い、空冷後、900〜1000℃の温度で焼ならし、さらに500〜700℃の温度で焼戻しを行うことを特徴とする耐火性の優れた建築用継目無鋼管の製造方法。
活性N(%)=N(%)−{1/2×Al(%)}………(1)式
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