JP3363322B2 - 積層型コンデンサ - Google Patents
積層型コンデンサInfo
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Description
バリウムを主成分とし、Li、Si、Bのうち少なくと
も2種を含有する誘電体層と、ニッケル等の卑金属から
なる内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデン
サに関するものである。 【0002】 【従来技術】従来、積層型コンデンサは、内部電極を構
成する電極層と誘電体層とを交互に積層した後、一体焼
成して製造されている。 【0003】ところで積層コンデンサを作製する場合、
従来のBaTiO3 を主成分とする誘電体材料では、1
300〜1500℃で焼成するため、内部電極材料とし
ては、このような温度で溶融しないPt,Pd等の貴金
属が使用されてきた。 【0004】しかしながら、これらの貴金属は高価であ
り、高容量化を図るために内部電極数を増加させた場合
にはコストが著しく高くなるという問題があった。そこ
で、近年、安価なニッケル等の卑金属が内部電極材料と
して用いられている。 【0005】しかしながら、ニッケル等の卑金属からな
る内部電極を用いた場合には、内部電極の酸化を防止す
るため還元雰囲気中で焼成しなければならず、そのよう
な雰囲気下で焼成すると、誘電体セラミックスが還元さ
れ絶縁性を失ってしまうという問題があった。 【0006】そこで、近年では、還元雰囲気中で焼成し
た場合でも、誘電体セラミックスが還元されないよう
な、例えば、塩基性酸化物である(Ba,Ca,Sr)
Oを酸性酸化物であるTiO2 に対して化学量論比より
過剰にしたチタン酸バリウム固溶体(Ba,Ca,S
r)(Ti,Zr)O3 から成る基本成分と、Li
2 O,SiO2 を含む添加成分とからなる誘電体磁器組
成物が提案されている(例えば、特公昭60−2085
1号公報等参照)。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の組成を用いた積層型コンデンサでは、高
温、高電圧の環境下で用いられる場合には製品寿命が短
いという問題があった。即ち、上記従来の組成では、高
温、高電圧の環境下では、誘電体磁器自体の電気伝導性
が高くなり、誘電体としての機能が低下し、誘電体とし
ての寿命が短くなるという問題があった。特に、近年で
は、高容量化のために誘電体層を薄層化する傾向にある
が、誘電体層が薄くなる程、高温、高電圧環境下におい
ては電気伝導性が高くなり易く、誘電体としての機能が
低下し易いという問題があった。 【0008】 【発明の目的】本発明は、誘電体層厚みが3〜10μm
と薄い場合でも、高温、高電圧の環境下における寿命を
向上できる積層型コンデンサを提供することを目的とす
る。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題に
対して鋭意検討した結果、チタンジルコン酸バリウムか
らなる結晶相と、このチタンジルコン酸バリウム100
重量部に対してLi、Si、Bのうち少なくとも2種を
それぞれLi2 O、SiO2 、B2 O3 換算で総量0.
4〜1.2重量部の割合で含有する偏析相とを有する誘
電体層の厚みを3〜10μmとするとともに、誘電体層
の破断面において存在する面積1×10-8mm2 以上の
偏析相を6〜10%の面積比で存在せしめることによ
り、誘電体層が薄層であっても高温、高電圧の環境下に
おける寿命を向上することができることを見い出し、本
発明に至った。 【0010】即ち、本発明の積層型コンデンサは、チタ
ンジルコン酸バリウムからなる主結晶相と、このチタン
ジルコン酸バリウム100重量部に対してLi,Si,
Bのうちの少なくとも2種をそれぞれLi2 O、SiO
2 、B2 O3 換算で総量0.4〜1.2重量部の割合で
含有する偏析相とを有する誘電体層と、卑金属からなる
内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデンサで
あって、前記誘電体層が3〜10μmの厚みを有すると
ともに、前記誘電体層の破断面において、面積1×10
-8mm2 以上の偏析相が6〜10%の面積比で存在する
ものである。 【0011】 【作用】本発明の積層型コンデンサでは、誘電体の厚み
を3〜10μmと薄層化した場合でも、誘電体層の破断
面において存在する面積1×10-8mm2 以上の偏析相
が、破断面において6〜10%の面積比で存在すること
により、誘電体としての機能を十分に有し、かつ、高
温、高電圧の環境下においても寿命を長くすることがで
きる。 【0012】即ち、高温、高電圧の環境下での寿命は誘
電体磁器中の粒界層を移動する電子の移動度に影響され
ると考えられるが、Li2 O、SiO2 、B2 O3 のう
ち少なくとも2種を含有する組成で、面積1×10-8m
m2 以上の偏析相が破断面において6〜10%の面積比
で存在することにより、電子の移動度を小さくすること
ができ、高温、高電圧の環境下における製品寿命を長く
することができる。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の積層型コンデンサは、チ
タンジルコン酸バリウムからなる主結晶相と、このチタ
ンジルコン酸バリウム100重量部に対してLi、S
i、Bのうちの少なくとも2種をそれぞれLi2 O、S
iO2 、B2 O3 換算で総量0.4〜1.2重量部の割
合で含有する偏析相とを有する誘電体層を備えたもので
あるが、本発明に用いられる誘電体層は、例えば、Ba
(Ti、Zr)O3 100モル部に対してCaTiO3
を1.0〜8.0モル部含有する成分と、該成分100
重量部に対して、Nd2 O3 を0.3〜0.8重量部、
MnO2 を0.1〜0.2重量部含有させて、主成分が
構成される。 【0014】一方、例えば、Li2 O、SiO2 、B2
O3 のモル比で表される三角図において、(Li2 O、
SiO2 、B2 O3 )で示す、A(20、80、0)、
B(70、30、0)、C(80、0、20)、D(4
0、20、40)の4点で囲まれる組成範囲の粒界成分
を900℃以上の温度で仮焼し、Li、Si、Bのうち
少なくとも2種を含有する複合酸化物を作製する。そし
て、この複合酸化物を上記主成分100重量部に対し
て、総量0.4〜1.2重量部添加含有してなるもので
ある。誘電体層中に、不純物としてAl2 O3 、Fe2
O3 、ZrO2 等が混入する場合がある。 【0015】チタンジルコン酸バリウム100重量部に
対してLi、Si、Bのうちの少なくとも2種をそれぞ
れLi2 O、SiO2 、B2 O3 換算で総量0.4〜
1.2重量部の割合で含有せしめたのは、Li、Si、
Bが0.4重量部よりも少ない場合には、高温、高電圧
の環境下における寿命が低下するからであり、また、
1.2重量部よりも多い場合には容量が低下するからで
ある。 【0016】本発明においては、添加される粒界相成分
は、Li,Si,BをそれぞれLi2 O,SiO2 ,B
2 O3 換算で総量0.4〜1.2重量部含有すれば良
く、3種類の成分を必須成分とするものでもなく、2種
でも良い。これらのうちLiとSiの組み合わせは誘電
率向上という観点から特に望ましい。 【0017】また、卑金属からなる内部電極層は、例え
ば、Ni,Co,Cu等からなるものである。 【0018】さらに、誘電体層の厚みを3〜10μmと
したのは、誘電体層の厚みが3μmより薄いと誘電体層
の作製が困難であるからであり、厚みが10μmよりも
厚くなると、高容量化を図ることができなくなるからで
ある。本発明の誘電体層の厚みは、高容量化および誘電
体層の作製の容易性という観点から5〜8μmであるこ
とが望ましい。 【0019】また、本発明における偏析相とは、偏析相
は3個以上のチタンジルコン酸バリウム粒子により形成
される間隙(3重点)に存在するものを意味し、偏析相
としては結晶質のものもあり、非晶質のものもある。電
子の移動度を小さくし、高温、高電圧の環境下における
製品寿命を長くするという観点からは、結晶質であるこ
とが望ましい。誘電体層における偏析相のうち、Li,
Si,Bを含有する複合酸化物からなる偏析相は、例え
ば、(3Li2 O・B2 O3 +Li4 SiO4)、(L
i4 SiO4 )、(Li4 SiO4 +Li2 O)のよう
に表現されるようなものがあり、このような偏析相が結
晶質である。誘電体層中に存在する偏析相の内、面積が
1×10-8mm2 以上である偏析相の面積比を一定に制
御することにより、上記に示したように粒界相の電子の
移動度を制御し、高温、高電圧の環境下における製品寿
命を長くすることができるのである。 【0020】偏析相は、誘電体層の一断面(破断面)に
おいて存在する面積1×10-8mm2 以上の偏析相の面
積比が6〜10%であることが必要である。これは、面
積が1×10-8mm2 以上である偏析相の面積比が6%
未満では静電容量が小さく、信頼性が大きく低下するか
らであり、10%よりも多い場合には、粒子表面の結晶
性が不安定となり、信頼性が低下したり、静電容量が低
下するからである。誘電体層の一断面(破断面)におけ
る面積1×10-8mm2 以上の偏析相の面積比は、粒子
表面の結晶性が安定であり、かつ、高い信頼性を有する
という観点から7〜8%であることが望ましい。 【0021】このように、面積1×10-8mm2 以上の
偏析相の面積比を、誘電体層の一破断面において6〜1
0%とするためには、焼成時において最高温度から80
0℃までの降温速度を50℃/hr以下とし、かつ、一
体焼結後の熱処理を800〜1100℃で2〜10時間
行うことが必要である。降温速度は、特には20〜40
℃/hrとすることが望ましい。これは、主に降温速度
を50℃/hr以下とすることにより、偏析相の結晶化
を促進するとともに、降温速度と上記した条件の熱処理
により面積が1×10-8mm2 以上の偏析相の面積比を
6〜10%とすることができるのである。 【0022】本発明の積層型コンデンサは、先ず、例え
ば、上記した誘電体磁器組成物に所定のバインダー、可
塑剤を添加し誘電体層用のスリップを作製するととも
に、例えば、Niに所定のバインダー、可塑剤を添加し
内部電極用のスリップを作製する。そして、台板上に、
誘電体層用のスリップをドクターブレード法により複数
回塗布し、所定厚みの誘電体成形膜を形成し、この誘電
体成形膜の表面に内部電極用スリップをスクリーン印刷
して所定形状の内部電極膜を形成する。 【0023】この工程を所望の容量が得られるまで繰り
返した後、該積層体を酸素分圧が3×10-5〜3×10
-3Paの非還元性雰囲気において1200〜1300℃
で1〜5時間一体焼成し、この最高温度から800℃ま
での降温速度を20〜50℃/hrとする。この後、窒
素雰囲気において800〜1100℃で2〜10時間熱
処理することにより、本発明の積層型コンデンサを得
る。 【0024】 【実施例】出発原料として水熱合成法により得られた平
均粒径0.5μmのBa(Ti、Zr)O3 粉末を用
い、このBa(Ti、Zr)O3 100モル部に対して
平均粒径1.0μmのCaTiO3 を0.05モル部添
加した成分を作製し、この成分100重量部に対してN
d2 O3 を0.5重量部、MnO2 を0.2重量部添加
し、混合して主成分を作製する。この主成分100重量
部に対して、Li2 O、SiO2 、B2 O3 のモル比が
表1に示す比となるように仮焼した粒界相成分を、表1
に示す量だけ添加し、ZrO2 ボールにより混合し、バ
インダー、可塑剤を加え、誘電体層用スリップを得た。 【0025】また、Niとテルピネオールを添加し、A
l2 O3 ボールにより混合し、バインダー、可塑剤を加
え、内部電極層用スリップを得た。 【0026】そして、誘電体層用スリップを台板にドク
ターブレード法により複数回塗布して、焼成後の厚みが
表1の厚みとなるように誘電体成形膜を作製し、この誘
電体成形膜の上面に、内部電極層用スリップをクシ型構
造となるようにスクリーン印刷し、誘電体成形膜の形成
から電極膜の形成までの工程を20回繰り返し、誘電体
成形膜を20層有する積層成形体を作製した。この積層
成形体を熱圧着後、酸素分圧が3×10-4Paの非還元
性雰囲気において1250℃で2時間焼成し、800℃
までの降温速度を表1に示す速度として冷却した後、窒
素雰囲気中において表1に示す条件で熱処理した。 【0027】この後、該焼結体の両端面に、Cuからな
る外部電極を形成し、本発明の積層型コンデンサを得
た。尚、積層コンデンサの寸法は縦3.2mm、横1.
6mmであり、有効電極面積は2.6mm2 であった。 【0028】このようにして得られた積層型コンデンサ
に対して、誘電体層厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)
にて観察、測定するとともに、誘電体層の一断面(破断
面)において存在する面積1×10-8mm2 以上の偏析
相の面積比を画像処理装置により求めた。 【0029】また、容量をLCRメータで測定周波数1
kHz、入力信号レベル1Vrmsという条件で測定
し、誘電体層一層当たりの容量に換算して求めた。 【0030】さらに、150℃の測定炉中で誘電体厚み
に対して8V/μmの電圧を印加し、ショート故障に至
るまでの時間(寿命)を測定し、信頼性を測定した。こ
の結果を表1に示す。 【0031】 【表1】 【0032】この表1の結果より、本発明の試料では2
50nF以上の高容量であり、また、150℃、8V/
μmの電圧を印加した場合でも、ショート故障に至るま
での時間が185時間以上と長く、高温、高電圧の環境
下であっても、信頼性が高く長寿命であることが判る。 【0033】図1に、本発明のNo.8の積層型コンデ
ンサの断面をTEMにて2000倍に拡大した結果を示
す。図において、符号1は誘電体層、符号2は内部電極
層、符号4は偏析相を示す。さらに、この試料の誘電体
磁器の断面をTEMにて10万倍に拡大した結果を図2
に示す。図において、符号3は(Ba,Ca)(Ti,
Zr)O3 からなる主結晶相、符号4は偏析相を示す。 【0034】 【発明の効果】本発明の積層型コンデンサでは、チタン
ジルコン酸バリウムからなる主結晶相と、このチタンジ
ルコン酸バリウム100重量部に対してLi,Si,B
のうちの少なくとも2種をそれぞれLi2 O、Si
O2 、B2 O3 換算で総量0.4〜1.2重量部の割合
で含有する偏析相とを有する誘電体層と、卑金属からな
る内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデンサ
であって、誘電体層が3〜10μmの厚みを有するとと
もに、誘電体層中に、面積1×10-8mm2 以上の偏析
相を、誘電体層の破断面において6〜10%の面積比で
存在せしめることにより、誘電体層が薄層であっても高
温、高電圧の環境下における寿命を向上することができ
る。
Mにて2000倍に拡大した図である。 【図2】試料No.8の積層型コンデンサの誘電体層磁
器の断面をTEMにて10万倍に拡大した図である。 【符号の説明】 1・・・誘電体層 2・・・内部電極層 3・・・主結晶相 4・・・偏析相
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】チタンジルコン酸バリウムからなる主結晶
相と、このチタンジルコン酸バリウム100重量部に対
してLi,Si,Bのうちの少なくとも2種をそれぞれ
Li2 O、SiO2 、B2 O3 換算で総量0.4〜1.
2重量部の割合で含有する偏析相とを有する誘電体層
と、卑金属からなる内部電極層とを交互に積層してなる
積層型コンデンサであって、前記誘電体層が3〜10μ
mの厚みを有するとともに、前記誘電体層の破断面にお
いて、面積1×10-8mm2 以上の偏析相が6〜10%
の面積比で存在することを特徴とする積層型コンデン
サ。
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---|---|---|---|
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1996
- 1996-08-30 JP JP22992796A patent/JP3363322B2/ja not_active Expired - Fee Related
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