JP3287980B2 - 積層型コンデンサ - Google Patents

積層型コンデンサ

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明宏 金内
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタン酸バリウム
を主成分とし、マンガンを含有する誘電体磁器層と、ニ
ッケル等の卑金属からなる内部電極を有する積層型コン
デンサに関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、積層型コンデンサ等の積層型電子部
品を得るにあたっては、内部電極を構成する電極材料と
誘電体セラミックスとを一体焼成して得られた焼結体が
用いられている。ところで積層コンデンサを製作する場
合、従来のBaTiO3 を主成分とする誘電体材料で
は、1300〜1500℃で焼成するため、内部電極材
料としては、このような温度で溶融しないPt,Pd等
の貴金属が使用されていた。
【0003】しかしながら、これらの貴金属は高価であ
るという問題があり、高容量化を図るために内部電極数
を増加させた場合にはコストが著しく高くなる。そこ
で、安価なニッケル等の卑金属を内部電極材料として用
いることが試みられている。
【0004】しかしながらニッケル等の卑金属からなる
内部電極を用いた場合には、内部電極材料が酸化しやす
いため還元雰囲気中で焼成しなければならず、そのよう
な雰囲気下で焼成すると、セラミックスが還元され絶縁
性を失ってしまうという問題があった。このような問題
を解決するものとして、例えばBaTiO3 にMgOや
MnOを添加したり(特開昭57−71866号公報参
照)、さらにこの系にCaZrO3 を添加したり(特開
昭62−157603号公報参照)することが提案され
ていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の組成を用いた積層型コンデンサでは、高
温,高電圧の環境で用いられる場合には製品寿命が短い
という問題があった。その原因は、高温,高電圧の環境
においては、誘電体磁器自体の電気伝導性が高くなって
誘電体としての機能を果たさなくなり、即ち、高温,高
電圧環境においては誘電体としての寿命が短くなり、そ
の実用化に際して障害となっていた。特に、高容量化の
ために誘電体層を薄層化する傾向にあるが、従来のグリ
ーンシートを用いた方法では薄層化に限界があった。ま
た、誘電体層が薄くなる程、高温,高電圧環境において
は電気伝導性が高くなり易いという問題があった。
【0006】また、上記のような従来の組成を用いた積
層型コンデンサでは、高温と低温が交互に生じるような
環境で使用される場合、内部電極層と誘電体層との接合
強度が低下して境界部分にクラック等が生じ易くなり、
熱衝撃性が低いという問題があった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、誘電体磁器層の厚みが3〜1
0μmと薄い場合でも、高温,高電圧の環境下における
寿命を向上することができるとともに、熱衝撃性を向上
することができる積層型コンデンサを提供することを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記問題
点に関して鋭意検討した結果、BaTiO3 100モル
部に対してマンガンを0.04〜0.5モル部含有する
厚み3〜10μmの誘電体磁器層と、卑金属からなる内
部電極層とを交互に積層してなり、誘電体磁器層の熱処
理前後の重量変化から求められる酸素空孔補償量ΔVo
が0.005〜0.5モル%である場合には、誘電体層
が薄層であっても高温,高電圧の環境下における寿命を
向上することができるとともに、熱衝撃性を向上するこ
とができることを見い出し、本発明に至った。
【0009】即ち、本発明の積層型コンデンサは、チタ
ン酸バリウムを主成分とし、このチタン酸バリウム10
0モル部に対してマンガンを0.04〜0.5モル部含
有する厚み3〜10μmの誘電体磁器層と、卑金属から
なる内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデン
サであって、前記誘電体磁器層の熱処理前後の重量変化
から求められる酸素空孔補償量ΔVo が0.005〜
0.5モル%のものである。
【0010】
【作用】本発明の積層型コンデンサでは、酸素空孔濃度
が雰囲気によって変化することが、製品寿命を長くする
ために必要であるが、還元焼成後に熱処理を行ったとし
ても、酸素空孔濃度の変化がなければ製品寿命は変化し
ない。本願発明では、熱処理を行うことと、マンガン添
加量を制御すること、および誘電磁器層用スリップを用
いて3〜10μmの誘電体磁器層を作製することによ
り、酸素空孔濃度を変化させ、酸素空孔補償量ΔVo
0.005〜0.5モル%とすることができるのであ
る。
【0011】高温,高電圧の環境下における寿命は電子
濃度の変化によって決まることから、電子濃度が添加物
の価数変化によって補償されるならば寿命を長くするこ
とができる。添加物の価数変化は、同時に酸素空孔濃度
を変化させることから、酸素空孔濃度の変化する磁器は
添加物が価数変化することを示しており、寿命を長くす
る傾向に一致する。即ち、酸素空孔補償量の大きい組成
及びプロセスは、高温、高電圧の環境下における製品寿
命を長くすることができる。
【0012】また、本願発明の積層型コンデンサでは、
内部電極層と誘電体層との接合強度が向上し、高温と低
温が交互に生じるような環境での使用でも、熱衝撃性が
向上し、内部電極層と誘電体層との境界部分にクラック
等が生じることがない。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明における積層型コンデンサ
の誘電体磁器層は、チタン酸バリウム(BaTiO3
を主成分とするもので、例えば、BaTiO3 100モ
ル部に対して、MgOを0.2〜2.0モル部、Y2
3 を0.5〜1.5モル部、MnCO3 を0.04〜
0.5モル部からなる成分100重量部に対して、Si
2 20〜70モル%、Li2 O0〜50モル%、Ba
O0〜40モル%、CaO0〜40モル%からなるガラ
ス成分を0〜3重量部添加して構成される。この場合
に、不純物としてZrO2 ,Al2 3 ,Fe2 3
混入する場合がある。
【0014】特には、静電容量温度特性の平坦化という
ためには、BaTiO3 100モル部に対して、MgO
を0.5〜1.5モル部、Y2 3 を0.75〜1.2
5ル部、MnCO3 を0.1〜0.3モル部からなる成
分100重量部に対して、SiO2 40〜60モル%、
Li2 O10〜25モル%、BaO15〜40モル%、
CaO0〜25モル%からなるガラス成分を1〜2重量
部添加して構成される。
【0015】誘電体磁器層の厚みを3〜10μmとした
のは、厚みを薄くし、高容量下を図るためである。厚み
が3μmよりも薄い場合には、ドクターブレード法によ
る成形が困難となり、10μmよりも厚い場合には、静
電容量が低くなるからである。誘電体磁器層の厚みは耐
電圧という点から5〜10μmが望ましい。
【0016】マンガンをBaTiO3 100モル部に対
して0.04〜0.5モル部含有させたのは、マンガン
添加により酸素空孔補償量ΔVo を増加することができ
るからであり、マンガンが0.04モル部よりも少ない
場合には必要なΔVo が得られなくなり、マンガンが
0.5モル部よりも多い場合には、エージング特性が悪
化し、高温,高電圧の環境下における寿命が短くなるか
らである。マンガンは0.1〜0.3モル部含有するこ
とが高温,高電圧の環境下における寿命の確保という点
から望ましい。
【0017】内部電極としてはNi,Cu等の卑金属か
らなるものである。
【0018】酸素空孔補償量ΔVo とは、雰囲気の変化
に対する酸素空孔濃度変化のうち、特に、添加物の価数
変化に基づく変化分を示すものであり、この量が大きい
ほど、高温,高電圧の環境下における寿命が長くなる。
酸素空孔補償量ΔVo は、例えば温度1000℃、酸素
分圧10-4Paの雰囲気中での熱処理前後の重量変化か
ら求められる。
【0019】酸素空孔補償量ΔVo を0.005〜0.
5モル%としたのは、この範囲内であれば高温,高電圧
下での寿命を十分に長くできるからである。即ち、酸素
空孔補償量ΔVo が0.005モル%よりも少ない場合
や、0.5モル%よりも多い場合には、高温,高電圧下
での寿命が短くなるからである。酸素空孔補償量ΔVo
は寿命のバラツキを抑制するという点から0.01〜
0.3モル%含有することが望ましい。
【0020】本発明の積層型コンデンサは、先ず、例え
ば、上記したような組成からなる誘電体磁器層用スリッ
プを作製するとともに、上記したような組成からなる内
部電極層用スリップを作製する。
【0021】この後、台板に誘電体磁器層用スリップを
ドクターブレード法により複数回塗布し、厚みが5〜1
3μmの厚みの誘電体成形膜を形成し、この誘電体成形
膜の表面に電極層用スリップをスクリーン印刷して所定
形状の電極膜を形成する。この工程を所望の容量が得ら
れるまで繰り返す。この積層体を酸素分圧が3×10-5
〜3×10-3Paの非還元性雰囲気において1200〜
1300℃で1〜5時間一体焼成し、この後、誘電体磁
器中の酸素空孔補償量が増加する条件、即ち、酸素分圧
が1×10-2〜2 ×104 Paの雰囲気中において80
0〜1100℃で1〜5時間熱処理し、本発明の積層型
コンデンサを得る。
【0022】
【実施例】出発原料としてBaCO3 粉末,TiO2
末を用い、混合後1150℃にて固相反応させBaTi
3 を合成し、粒径0.5μmに微粉砕した。次にBa
TiO3 ,MgO,Y2 3 ,MnCO3 を、表1の組
成となるように調合し、さらに、この組成物100重量
部に対して、SiO2 50モル%、Li2 O20モル
%、BaO20モル%、CaO10モル%からなるガラ
ス成分を1.5重量部添加し、ZrO2 ボールにより混
合し、バインダー,可塑剤を加え、誘電体磁器層用スリ
ップを得た。また、Niとテルピネオールを添加し、A
2 3 ボールにより混合し、バインダー、可塑剤を加
え、電極層用スリップを得た。
【0023】そして、誘電体磁器層用スリップを台板に
ドクターブレード法により塗布し、この誘電体成形膜の
上面に、Niを主成分とする電極層用スリップをクシ型
構造となるようにスクリーン印刷し、誘電体成形膜と電
極膜の成形工程を50回繰り返し、誘電体成形膜を50
層有する積層成形体を作製した。この積層成形体を熱圧
着後、酸素分圧が3×10-4Paの非還元性雰囲気にお
いて1250℃で2時間焼成した後、表1のような熱処
理を行った。
【0024】
【表1】
【0025】このようにして得られた積層型コンデンサ
に対して、誘電体層厚みを測定するとともに、熱衝撃特
性,容量,誘電体磁器中の酸素空孔補償量ΔVo を測定
し、さらに、信頼性試験を行った。
【0026】誘電体層厚みは金属顕微鏡により測定し
た。熱衝撃特性は室温に保持した200個の試料を34
0℃の半田槽中に浸漬し、表面にクラックが生じた個数
で判断した。容量はLCRメータで測定し、誘電体一層
当たりの容量に換算した。
【0027】また、誘電体磁器中の酸素空孔補償量ΔV
o は、上記表1の組成の誘電体磁器層用スリップをドク
ターブレード法により複数回塗布し、打ち抜き法により
直径20mm厚み1mmの誘電体成形体を作製し、上記
のような焼成条件で焼成した後、誘電体磁器の重量を測
定し、表1のような熱処理を行った後の誘電体磁器の重
量を測定し、熱処理前の重量に対する熱処理後の重量減
少分を酸素空孔量の変化によるものとみなし、酸素空孔
補償量を算出した。
【0028】信頼性試験は、上記のように作製した積層
コンデンサの両端面にスパッタ法により金電極を形成
し、これを300℃の測定炉中で1000Vの電圧を印
加し、ショート故障に至るまでの時間を測定した。これ
らの結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】この表2より、本発明の積層型コンデンサ
では、高温,高電圧の環境下における寿命(信頼性)を
向上することができるとともに、熱衝撃性を向上するこ
とができる。
【0031】
【発明の効果】本発明の積層型コンデンサでは、誘電体
磁器層の厚みが1〜10μmと薄い場合でも、高温,高
電圧の環境下における寿命を向上することができるとと
もに、熱衝撃性を向上することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤岡 芳博 鹿児島県国分市山下町1番4号 京セラ 株式会社総合研究所内 審査官 江畠 博 (56)参考文献 特開 平5−21267(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 4/00 - 4/42

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チタン酸バリウムを主成分とし、このチタ
    ン酸バリウム100モル部に対してマンガンを0.04
    〜0.5モル部含有する厚み3〜10μmの誘電体磁器
    層と、卑金属からなる内部電極層とを交互に積層してな
    る積層型コンデンサであって、前記誘電体磁器層の熱処
    理前後の重量変化から求められる酸素空孔補償量ΔVo
    が0.005〜0.5モル%であることを特徴とする積
    層型コンデンサ。
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