JP3623087B2 - 誘電体磁器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘電体磁器に関するものであり、特に、内部電極に卑金属材料、例えばNi等を用いることができる積層型磁器コンデンサの誘電体磁器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層型磁器コンデンサは、所定の誘電体磁器組成物からなるグリーンシートに導電ペーストを印刷し、該導電ペーストを印刷した複数枚のグリーンシートを積層し、グリーンシートと内部電極とを一体的に焼成し、形成されている。
【0003】
そして、従来、卑金属を内部電極として用いることができる非還元性誘電体磁器組成物として、例えば、特公昭57−42588号公報に開示されるようなものが知られている。この公報に開示される誘電体磁器組成物は、組成式[(Ba1−x−yCaSr)O]TiOで表されるものである。
【0004】
しかしながら、特公昭57−42588号公報に開示された誘電体磁器組成物では、焼成時に発生する誘電体材料の還元反応を抑えることができるものの、焼成温度が1300℃を越えてしまい、積層型コンデンサの内部電極にNiを用いた場合、Ni粒子が凝集反応を示し、安定した電極形成が困難であった。また、同時にNi粒子が誘電体磁器に拡散反応を示し、絶縁抵抗値を劣化させるという問題点があった。そこで、近年、低温焼成が可能な誘電体磁器組成物として、特公平6−14496号および特開平4−367559号公報に開示されるようなものが知られている。
【0005】
特公平6−14496号公報には、{(Ba1−xCa)O}(Ti1−y−zZr)O2−z/2(RはY等の希土類元素)で表される基本成分と、SiO、LiOおよびMO(MOはBaO等)からなる添加成分との混合物を焼成してなるものが開示されている。この公報には、基本成分を1200℃で仮焼し、添加成分を1000℃で仮焼し、基本成分と添加成分の仮焼粉末を混合し、この混合粉末でスラリーを形成し、所定形状に成形し、1150℃で焼成することにより焼結体が得られている。
【0006】
また、特開平4−367559号公報には、(Ba1−xCa)m(Ti1−yZr)+aM1+bM2+cM3(M1はMn等の化合物、M2はSiの化合物、M3はYの化合物)で表されている誘電体磁器組成物が開示されている。この公報には、BaCO、CaCO、TiO、ZrO、SiO、Y等の粉末を混合し、この粉末を1050〜1240℃で仮焼し、この仮焼粉末を用いて成形体を作製し、800〜1100℃で焼成することにより焼結体が得られている。
【0007】
これらの誘電体磁器組成物では、還元性雰囲気で焼成しても磁器が還元されず、焼成温度を1150℃以下とすることができ、低温焼成が可能である。
【0008】
【発明が解決しようする課題】
しかしながら、上記した誘電体磁器は、高温高湿中における信頼性が低いという問題があった。即ち、近年においては小型高容量化が要求されているが、このために積層型磁器コンデンサにおける誘電体層を薄層化すると絶縁抵抗の低下等により信頼性不良が多発するという問題があった。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は還元雰囲気にて1250℃以下で焼成でき、しかも比誘電率、誘電損失、絶縁抵抗値等の基本的な特性にも優れるとともに、高温高湿中における信頼性を向上し、長寿命とすることができる誘電体磁器を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点について鋭意検討した結果、特公平6−14496号および特開平4−367559号公報のように、添加される希土類元素を結晶相中に固溶させるのではなく、主に粒界に存在させることにより、積層型磁器コンデンサの誘電体層を薄層化した場合において、高温高湿中における信頼性を向上できることを知見し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明の誘電体磁器は、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される結晶粒子と、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を含有する粒界相とからなるものである。
【0012】
また、本発明の誘電体磁器は、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される主成分と、該主成分100重量部に対して、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種と、SiOと、LiOまたはBからなるガラス成分を0.2〜3.0重量部含有するとともに、前記ガラス成分が、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種と、SiOと、LiOまたはBの3成分組成において、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が2〜50モル%、SiOが20〜88モル%、LiOまたはBが10〜60モル%からなることが重要である。
【0013】
さらに、上記主成分100重量部に対して、さらにMnOを0.1〜0.3重量部含有することが望ましい。希土類元素酸化物がNdであることが望ましい。
【0014】
【作用】
本発明の誘電体磁器では、積層型磁器コンデンサの内部電極に卑金属、例えばNiやNiを主成分とする合金等を用いても、低温で焼成処理されることからNi粒子が凝集反応を示したり、Ni粒子が誘電体中に拡散反応を示したりすることがなく、誘電率、誘電損失、絶縁抵抗値等の基本的な特性に優れた積層磁器コンデンサを作製することができる。
【0015】
そして、上記したように、特公平6−14496号公報では、{(Ba1−xCa)O}m(Ti1−y−zZr)O2−z/2(RはY等の希土類元素)からなる基本成分を1200℃で仮焼し、SiO、LiOおよびMO(MOはBaO等)からなる添加成分を1000℃で仮焼し、基本成分と添加成分の仮焼粉末を混合し、この混合粉末でスラリーを形成し、所定形状に成形し、1150℃で焼成することにより焼結体を作製していたため、Yが主結晶中に固溶していると考えられ、誘電特性は良好であるものの、薄層コンデンサを作製した場合の高温負荷試験での信頼性不良が発生し易い。
【0016】
また、特開平4−367559号公報でも同様に、BaCO、CaCO、TiO、ZrO、SiO、Y等の粉末を混合し、この粉末を1050〜1240℃で仮焼していたため、Yが主結晶中に固溶していると考えられ、上記したように信頼性不良が発生し易い。
【0017】
本発明者等は、誘電特性を向上するために添加するLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を、主結晶相の粒界に主にガラスとして存在せしめることにより、誘電特性を向上できるとともに、薄層化した場合の高温負荷試験での信頼性不良を低減することができ、長寿命とできることを知見し、本発明に至った。
【0018】
本発明では、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を主に粒界に存在せしめるため、例えば、SiO、LiCO、Y、及びBaCO、CaCO粉末を混合し、これを1200〜1400℃で溶融し、この溶融物を冷水中に投入してガラスカレットを作製し、このガラスカレットを粉砕してガラス成分として用いた。このようなガラス成分と主成分とを混合し、1250℃以下の温度で焼成して誘電体磁器を作製すると、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が粒界に主にガラスとして存在する誘電体磁器が得られる。本発明では、このようにLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が主に粒界に存在することにより、薄層化した場合においても信頼性が向上し、長寿命化を図れるのである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体磁器は、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される結晶粒子と、少なくともLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を含有する粒界とからなるものである。
【0020】
ここで、結晶粒子は、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)と表されるものである。
【0021】
この組成式において、xはCa原子数を表すが、このCaは主に温度特性を平坦化するディプレッサーとして作用するとともに、絶縁抵抗値を向上させる元素として作用するものである。xが0.01未満になると絶縁抵抗値が1×10Ωを下回ることになり、また、xが0.10を越えると比誘電率が8000を下回り、いずれの場合でも積層磁器コンデンサとしての基本特性を満足することができない。従って、xの値は、0.01≦x≦0.10の範囲が望ましい。特には0.03≦x≦0.08の範囲が望ましい。
【0022】
前記組成式において、yはZrの原子数を表すが、このZrは主にキュリー点を低温側に移動させるシフターとして作用するものである。yが0.15未満となると誘電損失が5.0%を越えてしまい、また、yが0.25を越えると比誘電率が8000を下回り、いずれの場合でも積層磁器コンデンサとしての基本特性を満足することができない。従って、yの値は0.15≦y≦0.25の範囲が望ましい。特に0.175≦y
≦0.225の範囲が望ましい。
【0023】
前記組成式において、mが0.99未満になると絶縁抵抗値が1×109 Ω未満となってしまい、また、mが1.02を越えると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。従って、mは0.99≦m≦1.02の範囲が好ましい。
【0024】
そして、本発明の誘電体磁器は、上記組成式で表される結晶粒子と、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を含有する粒界とからなるものである。従来の誘電体磁器と異なる点は、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が粒界に存在する点にある。このように、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が粒界に存在することにより、主結晶相の誘電特性を劣化させることなく、薄層化した場合の信頼性不良を低減することができ、長寿命とできるのである。
【0025】
本発明の誘電体磁器の組成は、上記した組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される主成分と、該主成分100重量部に対して、SiOLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種、LiOまたはBからなるガラス成分を0.2〜3.0重量部含有するとともに、ガラス成分が、SiOLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種、LiOまたはBの3成分組成において、SiOが20〜88モル%、LiOまたはBが10〜60モル%、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が2〜50モル%からなるものである。
【0026】
ここで、主成分100重量部に対して、SiOLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種、Li2 OまたはB2 O3 を含むガラス成分を0.2〜3.0重量部添加しているのは、ガラス成分が0.2重量部未満となると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。また、3.0重量部を越えると絶縁抵抗値が1×10Ωを下回ることになり、積層磁器コンデンサとしての基本特性を満足することができない。ガラス成分量は、特には0.5〜2重量%が望ましい。
【0027】
このガラス成分は、SiO、LiOまたはBLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種の3成分組成において、SiOが20〜88モル%、LiOまたはBが10〜60モル%、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が2〜50モル%からなるものである。SiO、LiOまたはB、希土類元素酸化物(Yを除く)の量が、上記範囲を外れると電気特性、焼結性が低下してしまう。
【0028】
また、希土類元素としては、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ho、Tm、Yb、Luがあり、これらのうちでもLa、Nd、Sm、Gd、Dy、Hoが重要であり、特にはNdが信頼性の観点から望ましい。
【0029】
更に、主成分100重量部に対して、MnOを0.1〜0.3重量部含有することが望ましい。これは、Mnは焼結性、絶縁抵抗値を向上させる作用があり、0.1重量部未満では焼結性向上効果が小さく、また、0.3重量部を越えると比誘電率が低下し、積層磁器コンデンサとしての基本特性を満足することができないからである。
【0030】
本発明の誘電体磁器は以下のようにして作製される。先ず、主成分粉末として、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される固溶体粉末を作製する。この固溶体粉末は、固相法または湿式合成法のどちらの製法を用いても同様の特性が得られる。
【0031】
また、ガラス成分粉末を、例えば、SiO、LiCOまたはBLa、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種の粉末を上記した組成となるように混合し、これを1200〜1400℃で溶融し、この溶融物を冷水中に投入してガラスカレットを作製し、このガラスカレットを粉砕して作製する。
【0032】
そして、ガラス成分粉末を、主成分粉末100重量部に対して0.2〜3.0重量部添加して混合し、窒素雰囲気、または還元雰囲気中において1050〜1250℃の温度で0.5〜5時間焼成することにより、本発明の誘電体磁器が得られる。このように、主成分粉末とは別に、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種をガラス成分として添加せしめることにより、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が主にガラスとして粒界に存在することになり、薄層化した場合においても信頼性が向上し、長寿命化を図れるのである。
【0033】
尚、SiOはガラスとして粒界に存在するものであり、結晶粒子中のBa、Caの一部が粒界にガラスとして存在する場合がある。また、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種、SiOは粒界に結晶相として析出する場合もあり、MnOは粒界に存在する。
【0034】
本発明の誘電体磁器を用いた積層型磁器コンデンサは、誘電体磁器からなる誘電体層、及び内部電極とが交互に積層してなるコンデンサ本体と、このコンデンサ本体の両端部に形成された第1の端子電極、および第2の端子電極とから構成されている。
【0035】
内部電極は、隣接する内部電極が交互に前記対向する端面に導出し、第1の端子電極、又は第2の端子電極に接続されて構成されている。この内部電極は、卑金属のNiを主成分とした材料からなる。
【0036】
このような積層型磁器コンデンサは、上記した主成分粉末とガラス成分粉末とを所定量添加し、さらに所望によりMnO粉末を添加し、ボールミルで湿式粉砕して有機ビヒクルを加え、均質混合を行い、ドクタブレード法によってテープ成形を行う。その後、テープを所定大きさに裁断し、グリーンシートとする。
【0037】
次に、Ni粉末、有機ビヒクルとを均質混合した導電性ペーストをスクリーン印刷で、上記グリーンシート上に内部電極となる導体膜を形成する。
【0038】
このように、内部電極となる導体膜が形成されたグリーンシートを内部電極導出方向を考慮して、積層し、圧着して一体化する。
【0039】
そして、グリーンシート積層体を切断し、個々に切断した未焼成のグリーンチップを還元性雰囲気で1050〜1250℃で焼成し、外部電極用のペーストとして、Cuペーストを塗布し、窒素雰囲気中で800〜900℃で焼き付け、外部電極を形成した。
【0040】
上述の積層型磁器コンデンサは、内部電極にNi等の卑金属材料を用いた場合、特に焼成温度が1250℃以下とNi粒子の凝集反応を抑え、しかも緻密な焼結体が得られ、Ni粒子が誘電体磁器中に拡散することを抑え、Ni内部電極を安定に形成できるとともに、積層型磁器コンデンサの電気的な特性を満足し、さらに高温負荷試験においても信頼性を向上することができる。
【0041】
【実施例】
出発原料として、BaCO、CaCO、TiO、ZrO粉末を、表1に示す組成となるように秤量し、ZrOボールを用いたボールミルで湿式処理し、乾燥後、大気中で1200℃で2時間仮焼処理し、更に湿式粉砕、乾燥し、主成分粉末を作製した。
【0042】
次にガラス成分としてSiO、LiCOまたはB、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Hoを表1のガラス組成となるように所定量秤量し、1時間乾式混合した。その後、白金ルツボに混合粉をいれ、大気中で1300℃で溶融させ、冷水に流し出し、ガラスカレットとした。このカレットにイソプロピルアルコール(IPA)を加え、上記ボールミルで湿式粉砕し、乾燥し、ガラス成分粉末を作製した。
【0043】
その後、表1に示すように、ガラス成分粉末を主成分粉末100重量部に対して表1に示す量だけ添加し、MnO粉末を表1に示す量だけ添加し、上記ボールミルで湿式粉砕して有機ビヒクルを加え、ドクターブレード法によって15μmの厚みになるようテープ成型を行い、その後、テープを所定大きさに裁断し、グリーンシートを作製した。
【0044】
内部電極を形成する導電性ペーストを、Ni粉末と有機ビヒクルとを均質混合して作製し、この導電性ペーストをスクリーン印刷で上記グリーンシート上に塗布する。
【0045】
導電性ペーストが塗布されたグリーンシートを11枚を積層し、この積層体の上下に導電性ペーストが塗布されていない上記グリーンシートをそれぞれ10枚ずつ積層し、圧着して一体化してグリーンシート積層体を作製した後、これを切断し、個々に切断した未焼成のグリーンチップを還元性雰囲気で表2に示す温度で2時間焼成した後、大気中800℃で再酸化処理を行なった。
【0046】
この後、外部電極用のペーストとして、Cu粉末と有機ビヒクルを均質混合して作製し、このペーストを塗布し、窒素雰囲気中で900℃で焼き付け、外部電極を形成し、積層型コンデンサを作製した。
【0047】
作製された積層型コンデンサは、誘電体層の厚みが10μm、有効誘電体層は10層、内部電極の有効電極面積は3.0mmであった。
【0048】
この積層型コンデンサの特性を、基準温度25℃でデジタルLCRメータ(YHP製4274A)にて周波数1KHz、測定電圧1.0Vrmsの信号を入力し、静電容量、誘電損失tanδを測定した。誘電体磁器の比誘電率εrは積層型コンデンサの誘電体磁器の試料寸法と静電容量を考慮して算出した。尚、絶縁抵抗値は、積層型磁器コンデンサに16Vの直流電圧を1分間印可し、その値とした。
【0049】
評価として、比誘電率εrは小型で高誘電
率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、8000を越えるものを良好とした。誘電損失tanδは誘電体グリーンシートの薄膜化を実現し、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、5.0%以下を良好とした。絶縁抵抗値は1×10Ω以上を良好した。また、これらの特性値は磁器コンデンサのn=10個を平均した値とした。
【0050】
また、積層型コンデンサの高温負荷寿命を、150℃で64Vの直流電圧の印加状態に保持することにより測定した。この高温負荷寿命は、300個の積層型コンデンサについて行い、最初にショートしたコンデンサの、印加開始からショートに至るまでの時間を測定することにより評価した。高温負荷寿命は、誘電体層を薄層化する際に特に重要となるものであり、印加開始からショートに至るまでの時間が40時間以上を良品とした。これらの結果を表2に記載した。
【0051】
【表1】
Figure 0003623087
【0052】
【表2】
Figure 0003623087
【0053】
本発明の試料について、透過電子顕微鏡(TEM)にて組織を5万倍で観察したところ、結晶粒子と粒界とからなり、結晶粒子と粒界について元素分析を行ったところ、結晶粒子にはBa、Ca、Ti、Zrを検出し、粒界には希土類元素、Mn、Siを検出した。
【0054】
試料番号1〜6で、基本成分中のm値の範囲の作用が理解できる。試料番号1のようにmが0.98の場合、絶縁抵抗値が1×10未満となってしまう。また、試料番号6のようにmが1.03の場合には1250℃で焼成しても緻密な焼結体が得られない。このことから、mの値は、0.99≦m≦1.02の範囲となる。
【0055】
次に試料番号7〜12で複合酸化物のx値の範囲の作用が理解できる。試料番号7に示すようにxが0の場合、絶縁抵抗値が1×10未満となってしまう。
【0056】
また、試料番号12のようにxの値が0.1を越えると、比誘電率が6800と8000を下回ってしまう。このことから、xの値は、0.01≦x≦0.10となる。
【0057】
次に試料番号13〜18で複合酸化物のy値の範囲の作用が理解できる。試料番号13に示すようにyが0.125の場合、誘電損失が6.4%となってしまう。また、試料番号18のようにyが0.275の場合、比誘電率が5700と8000を下回ってしまう。このことから、yの値は、0.15≦y≦0.25の範囲となる。
【0058】
次に試料番号21〜24でガラス成分の添加量の範囲の作用が理解できる。添加量を0.2〜3.0重量%に制御することにより、緻密な焼結体が得られ、その他の特性も安定するものとなる。ガラス成分を構成するSiO、LiOまたはB、希土類元素酸化物のモル%について試料番号25〜37でその作用が理解できる。
【0059】
以上のように、実施例から、1250℃以下で焼成可能で、比誘電率が8000以上、誘電損失が5.0%以下、絶縁抵抗値が1×10以上の誘電体磁器組成物とするためには、上述のように、基本成分のx、y、m、ガラス成分のSiO、LiOまたはB、希土類元素酸化物のモル%、そのガラス成分の重量部、更にMnOの重量部を厳密に制御して達成されることになる。
【0060】
そして、本発明の試料では、150℃で64Vの直流電圧の印加状態に保持する高温負荷寿命において、最初にショートしたコンデンサの、印加開始からショートに至るまでの時間が40時間以上と優れた特性を示した。
【0061】
尚、本願発明者等は、特公平6−14496号公報に開示された誘電体磁器を用いた積層磁器コンデンサを作製した。即ち、{(Ba0.95Ca0.05)O}1.00(Ti0.800Zr0.1960.004)Oで表される仮焼粉末からなる主成分粉末を作製し、SiO 60モル%、LiO 20モル%およびBaO 20モル%を混合し仮焼した添加成分粉末を作製し、これらを主成分粉末100重量部に対して0.5重量部の割合で添加混合し、上記実施例と同様にして積層磁器コンデンサを作製した。尚、焼成温度は1200℃1時間とした。誘電体層の比誘電率は13000であり、誘電損失は3.2%であり、絶縁抵抗は1.2×1010Ωであり優れた誘電特性を有していたが、高温負荷試験において、最初にショートしたコンデンサのショートに至までの時間は5時間であり、信頼性に欠けることが判った。
【0062】
また、特開平4−367559号公報に開示された誘電体磁器を用いた積層磁器コンデンサを作製した。組成式が、(Ba0.95Ca0.05)1.005(Ti0.80Zr0.20)O+0.2重量%MnO+0.3重量%SiO+0.2重量%Yとなるように、BaCO、CaCO、TiO、ZrO、SiO、Y等の粉末を混合し、この粉末を1200℃で仮焼し、この仮焼粉末を用いて、上記実施例と同様にして積層磁器コンデンサを作製した。尚、焼成温度は1100℃2時間とした。誘電体層の比誘電率は12000であり、誘電損失は2.5%であり、絶縁抵抗は1.4×1010Ωであり優れた誘電特性を有していたが、高温負荷試験において、最初にショートしたコンデンサのショートに至までの時間は4時間であり、信頼性に欠けることが判った。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明の誘電体磁器によれば、還元性雰囲気で1050〜1250℃で焼成しても、高い比誘電率、高い絶縁抵抗値、誘電損失の小さい磁器が得られるため、内部電極にNi等の卑金属を用いることができ、これによって低コストの積層磁器コンデンサが達成されることになる。そして、積層磁器コンデンサの誘電体層を薄層化した場合において、高温負荷試験における信頼性不良を低減することができ、長寿命と
できる。

Claims (3)

  1. 組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される結晶粒子と、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種を含有する粒界相とからなるとともに、組成式{(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)}O(但し、0.01≦x≦0.10、0.15≦y≦0.25、0.99≦m≦1.02)で表される主成分と、該主成分100重量部に対して、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種と、SiOと、LiOまたはBからなるガラス成分を0.2〜3.0重量部含有するとともに、前記ガラス成分が、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種と、SiOと、LiOまたはBの3成分組成において、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびHoの酸化物のうちのいずれか1種が2〜50モル%、SiOが20〜88モル%、LiOまたはBが10〜60モル%からなることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 主成分100重量部に対して、さらにMnOを0.1〜0.3重量部含有することを特徴とする請求項記載の誘電体磁器。
  3. 希土類元素酸化物がNdであることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体磁器。
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