JP3706489B2 - 誘電体磁器およびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘電体磁器およびその製法に関し、特に車載用で好適に使用される積層セラミックコンデンサの誘電体磁器およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、積層セラミックコンデンサは、表面に内部電極用ペーストが塗布されたグリーンシートを複数枚積層するとともに、各シートの内部電極を交互に並列に一対の端子電極に接続し、これを焼結一体化することにより形成されている。このような積層セラミックコンデンサは近年のエレクトロニクスの発展に伴い電子部品の小型化が急速に進行し、広範な電子回路に使用されるようになってきている。
【0003】
特にX7R特性と呼ばれるコンデンサは、−55〜125℃まで容量変化率が±15%以内と平坦な特性を有している。この特性を有する誘電体材料はBaTiO3 を主成分とし、内部電極材料としては、パラジウムと銀の合金または、Niが用いられ、1200〜1350℃で同時焼成されていた。
【0004】
近年、自動車の各種制御のコンピュータ化に伴い、ECU(エンジンコントロールユニット)等が使用され、制御の高度化、小型軽量化のため、ECUは、エンジンルーム内の設置が有効である。エンジンルーム内は、寒冷地における冬期の始動時には−20℃以下、エンジン始動後は、夏期では+130℃と非常に高温になる。しかしながら、従来のX7R特性の積層セラミックコンデンサでは、125℃を越えると容量が急激に低下し、150℃では容量変化率は−40%と低くなり、高温側に対応できない。
【0005】
また、150℃まで温度特性が平坦な誘電体磁器組成物として、特開平7−37428号公報、特開平8−295559号公報に開示されるようなものが知られている。例えば、特開平7−37428号公報に開示された誘電体磁器組成物では、Pbで一部置換したBaTiO3 と、ZnO、Bi2 3 、MeO2 (MeはTi、Zr、Sn)、Nb2 5 、RE2 3 (REは希土類元素)からなる主成分と、SiO2 を主成分とするガラスから構成されている。
【0006】
このような誘電体磁器組成物では、1160℃以下の低温で焼成でき、−55℃〜150℃までの広い温度範囲で平坦な温度特性を有するものである。
【0007】
この公報に開示された磁器は、例えば、BaTiO3 、TiO2 、ZnO、Bi2 3 、Nb2 5 、Re2 3 粉末を所定の組成比となるように混合した後、仮焼粉砕し、該仮焼物に対して、BaO−SrO−CaO−Li2 O−SiO2 系からなるガラス成分を添加し、これを焼成して作製していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された誘電体磁器では、比誘電率が最大でも2000程度であり、いずれも、比誘電率が小さいという問題があった。
【0009】
本発明は、1150℃以下の低温で、Agを主成分とする内部電極と同時に焼成でき、比誘電率εrが2000よりも高く、温度特性が良好で、IR加速寿命が長い積層セラミックコンデンサ用として適した誘電体磁器およびその製法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の誘電体磁器は、金属元素として少なくともBaおよびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる主結晶粒子と、金属元素として少なくともSi、Zn、Bi、TiおよびLiを含有する粒界相とからなる誘電体磁器であって、粒界相のBiがBiおよびTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子として存在するとともにSi、ZnおよびLiがガラスとして存在し、かつ比誘電率が2110以上であるものである。
【0011】
ここで、粒界相のBiは、BiおよびTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子としてのみ存在することが望ましい。
【0012】
また、金属元素としてBa、TiおよびBiを含有し、これらの金属元素酸化物のモル比による組成式を(100−a)BaTiO3 ・aBi2 Ti2 7 と表した時、前記aが1.5≦a≦5.0を満足する主成分と、該主成分100モル部に対して、モル比による組成式bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2で表わされる組成物を1〜12モル部、NbをNb2 5 換算で0.7〜1.9モル部、希土類元素をRE2 3 換算(REは希土類元素)で0.1〜0.6モル部、アルカリ土類金属をアルカリ土類金属酸化物換算で4.0モル部以下含有するものである。
【0013】
また、本発明の誘電体磁器の製法は、BaTiO3 粉末と、Bi2 Ti2 7 粉末と、モル比による組成式、bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされるガラス粉末とを混合し、焼成する方法である。
【0014】
【作用】
本発明の誘電体磁器は、1150℃以下の比較的低温で、Ag、Pdを含有する内部電極と同時焼成できるとともに、比誘電率が2000よりも高く、かつ高温側における静電容量の温度変化を小さくでき、IR加速寿命が長く、特に車載用のコンデンサの誘電体磁器として好適な特性を示す。
【0015】
即ち、上記公報に開示された誘電体磁器組成物では、BiをBi2 3 粉末として添加しているため、作製した誘電体磁器では、BaTiO3 結晶粒子の粒界にBi2 3 粒子として存在しており、このため、比誘電率が最大でも2000程度と小さかったが、本発明では、主結晶粒子間のBiが、Bi2 3 よりも高誘電率を示し、キュリー温度が高いBiとTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子として存在するため、比誘電率を2000よりも高くできるのである。
【0016】
また、誘電体層の主結晶粒子間の粒界相にSi、Zn、Liを含有し、これら成分の分散性が向上するため、焼結性が良く、1150℃以下の比較的低温で焼成でき、Ag、Pdを含有する内部電極と同時焼成できる。特に、Liが粒界相に存在することにより焼結性が向上し、Si、Zn、Liをガラス状態で添加することで、誘電体磁器に均一に前記ガラスが存在することになり、IR加速寿命が向上する。
【0017】
本発明の誘電体磁器では、粒界相のBiは、BiとTiを含有する複合酸化物、特にBi2 Ti2 7 からなる結晶粒子としてのみ存在することにより、さらに比誘電率および温度特性を向上できる。
【0018】
そして、本発明の誘電体磁器は、モル比による組成式を(100−a)・BaTiO3 ・aBi2 Ti2 7 と表した時、前記aが1.5≦a≦5.0を満足する主成分と、該主成分100モル部に対して、bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされる組成物を1〜12モル部、NbをNb2 5 換算で0.7〜1.9モル部、希土類元素をRE2 3 換算(REは希土類元素)で0.1〜0.6モル部、アルカリ土類金属をアルカリ土類金属酸化物換算で4.0モル部以下含有することにより、1150℃以下の低温で焼成できるとともに、比誘電率を2000よりも高くでき、IR加速寿命が長くなり、高温側における静電容量の温度変化を小さくでき、EIA規格のX8R(+25℃における静電容量を基準としたとき、−55℃〜+150℃の広い範囲にわたり静電容量の温度変化率が±15%以内)を満足できる。
【0019】
また、BaTiO3 粉末と、Bi2 Ti2 7 粉末と、モル比による組成式、bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされるガラス粉末とを混合し、焼成するので、粒界相中にBiがBi2 Ti2 7 としてのみ存在する磁器が容易に得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体磁器は、金属元素として少なくともBaとTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる主結晶粒子と、金属元素として少なくともSi、Zn、Bi、TiおよびLiを含有する粒界相からなる誘電体磁器であって、粒界相のBiが、BiとTiを含有する複合酸化物となる結晶粒子として存在するとともに、Si、ZnおよびLiがガラスとして存在するものである。
【0021】
ここで、結晶粒子間の粒界相のBiが、室温での比誘電率が4000以上であり、キュリー温度が300℃以上の、BiとTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子として存在することにより、誘電体層の比誘電率を2000よりも高くできるとともに、高温側の温度特性を向上できるのである。
【0022】
粒界相のBiは、BiとTiを含有する複合酸化物、特にBi2 Ti2 7 からなる結晶粒子としてのみ存在することにより、言い換えれば、粒界相のBiがBi2 3 からなる結晶粒子として存在しないことにより、さらに比誘電率および温度特性を向上できる。BiとTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子としてのみ存在するとは、X線回折測定において、BiとTiを含有する複合酸化物のピークのみが存在し、Bi2 3 のピークが存在しないことをいう。
【0023】
さらに、Si、ZnおよびLiがガラスとして存在することにより、1150℃以下の低温で焼成できるとともに、IR加速寿命を向上することができる。
【0024】
本発明の誘電体磁器は金属元素酸化物のモル比による組成式を(100−a)BaTiO3 ・aBi2 Ti2 7 と表した時、前記aが1.5≦a≦5.0を満足するものを主成分とする。
【0025】
上記組成式において、Biのチタン酸塩のモル比aを1.5≦a≦5.0としたのは、モル比aが1.5未満の場合は焼結性が低下したり、温度特性、すなわち、−55〜150℃における容量変化率の最小値が−15%より低くなり、モル比aが5.0を越える場合には比誘電率が低下したり、誘電損失が3.0%以上となるからである。とりわけ誘電体磁器の比誘電率と温度特性の観点からは2.3≦a≦4.5、特には3.1〜4.5が望ましい。本発明では、Liが粒界相に存在することにより4<a≦5の範囲においても優れた特性を示す。
【0026】
そして、上記主成分100モル部に対して、bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされる組成物を1〜12モル部、NbをNb2 5 換算で0.7〜1.9モル部、希土類元素をRE2 3 換算(REは希土類元素)で0.1〜0.6モル部、アルカリ土類金属をアルカリ土類金属酸化物換算で4.0モル部以下含有してなるものである。
【0027】
ここで、NbをNb2 5 換算で0.7〜1.9モル部含有したのは、0.7モル部未満では誘電損失が3.0%以上、温度特性、すなわち、−55〜150℃における容量変化率の最小値が−15%より低くなり、1.9モル部を越える場合には比誘電率が小さくなり、焼結性が悪くなるからである。とりわけ誘電体磁器の比誘電率と誘電損失の観点から0.9〜1.4モル部が好ましい。
【0028】
さらに、希土類元素をRE2 3 換算(REは希土類元素)で0.1〜0.6モル部含有したのは、0.1モル部未満では焼結性が悪くなり、0.6モル部を越える場合には比誘電率が小さくなり、焼結性が悪くなるからである。比誘電率の観点から0.25〜0.4モル部が好ましい。希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等があるが、このうち、Y、La、Ce、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、Tbが望ましく、さらにはTbが望ましい。
【0029】
さらに、アルカリ土類金属をアルカリ土類金属酸化物換算で4.0モル部以下含有したのは、アルカリ土類金属を含有しない場合でも、比誘電率が2000以上の特性を得られるが、アルカリ土類金属を含有することによりさらに高い比誘電率が得られるからである。一方、4.0モル部を越えると、−55〜150℃において容量変化率の最小値が−15%より低くなり、好ましくない。とりわけ比誘電率と温度特性の観点から1.2〜2.8モル部が好ましい。アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Ba、Srがある。
【0030】
また、組成式にして、bSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 O(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされる組成物を1〜12モル部含有したのは、1モル部未満では焼結性が悪くなり、12モル部を越える場合では比誘電率が低くなるからである。とりわけ比誘電率の観点から3.2〜7モル部が好ましい。また、ガラス状態で添加したのは、分散性が良くなり、IR加速寿命が向上するためである。特に粒界相にLiを含有することにより焼結性が向上し、さらにIR加速寿命が向上する。
【0031】
ここで、bを0.3≦b≦0.7としたのは、bが0.3より小さい場合、0.7より大きい場合には比誘電率が低下するからである。bは0.4≦b≦0.6であることが望ましい。
【0032】
さらに、Li2 O量を示すcを0<c≦0.2としたのは、Li2 Oを含有しない場合には焼結性が低下し、その結果比誘電率が低下したり、誘電損失が低下するからであり、0.2より大きくなると容量変化率が悪化するからである。cは0.02≦c≦0.2であることが望ましい。
【0033】
本発明の誘電体磁器は、積層セラミックコンデンサの誘電体層として好適に用いられ、内部電極として、Agを含む合金が使用され、電極の形成状態、導通抵抗がより低いという点からAgを70重量%以上含有する組成の内部電極を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の誘電体磁器は、Agを70重量%以上含有する内部電極層を用いることで、電極の形成状態が良好で、導通抵抗をより低くできる。内部電極層と誘電体層の同時焼成において焼成温度は、1150℃以下、特に1000〜1150℃が望ましい。
【0035】
本発明の誘電体磁器は、例えば、BaTiO3 からなる主結晶粒子と、該主結晶粒子間に形成された粒界相とから構成され、粒界相には、Si、Zn、Liと、所望によりアルカリ土類金属とからなるガラス相と、Bi2 Ti2 7 からなる結晶粒子が存在する。尚、Si、Zn、Liは、ガラス粉末として添加した場合はガラス相となるが、僅かではあるが結晶質となる場合もある。
【0036】
このように粒界相中にBiのチタン酸塩を析出せしめるためには、例えば、予めBi2 3 粉末と、TiO2 粉末を用いてBi2 Ti2 7 結晶質粉末を生成し、このBi2 Ti2 7 粉末をBaTiO3 粉末に添加し、焼成することにより可能となる。BiをBi2 Ti2 7 結晶粉末として添加することにより、X線回折測定において、Bi2 Ti2 7 のピークが現れ、Bi2 3 のピークが現れない。
【0037】
本発明の誘電体磁器を用いた積層セラミックコンデンサの製法は、具体的には、BaTiO3 粉末に、上記したBi2 Ti2 7 粉末と、ガラス粉末、所望により希土類元素酸化物粉末、Nb2 5 粉末、アルカリ土類金属酸化物粉末を添加し、ドクターブレード法によりフィルム状シートを作製する。このフィルム状シートの上面に、Pd含有率が40重量%以下、特に30重量%以下のAg−Pd合金からなる内部電極ペーストをスクリーン印刷等により印刷した後、内部電極ペーストが塗布されたフィルム状シートを複数積層、熱圧着、プレス、カットし、脱バインダー処理後、大気中1000〜1150℃で0.5〜2時間程度焼成を行い、端子電極の焼き付け、メッキ後、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0038】
また、本発明の誘電体磁器には、Fe、Al等の原料中の不可避不純物が混入したり、粉砕ボールのボール成分、例えばZrO2 等が混入する場合がある。また、本発明の誘電体磁器にはMnを含有しても良い。本発明の誘電体磁器の平均結晶粒径は、薄層化、高容量の点から、0.3〜1.0μmである。
【0039】
【実施例】
先ず、純度99%以上のBi2 3 、TiO2 の各原料粉末を秤量し、該原料粉末に媒体として純水を加えて24時間、ZrO2 ボールを用いたボールミルにて混合した後、該混合物を乾燥し、次いで、該乾燥物を900℃の温度で大気中1時間仮焼し、Bi2 Ti2 7 結晶粉末を作製した。
【0040】
出発材料としてSiO2 、ZnO、Li2 Oを用い、モル比による組成式をbSiO2 ・(1−b)ZnO・cLi2 Oとした時、b、cが表1となるように秤量し、らいかい器で1時間混合後、アルミナるつぼ中で、1400℃で溶解する。できた融液を水中に投入して急冷したものを粉砕してガラス粉末を得る。
【0041】
得られたBi2 Ti2 7 粉末、ガラス粉末、BaTiO3 粉末、Nb2 5 粉末、希土類元素酸化物粉末、アルカリ土類金属酸化物粉末を表1に示す割合となるように秤量し、分散剤、分散媒とともに24時間ボールミルにて混合し、原料スラリーを調整した。
【0042】
このスラリーに有機バインダー、可塑剤を加え、十分攪拌後、ドクターブレード法により45μmのフィルム状シートに成形した。このフィルム状シートを33層積層し、熱圧着後切断して試料を得た。この試料を大気中、300℃の温度で4時間加熱して脱バインダー処理し、引き続いて表2に示す温度で大気中、2時間焼成し、直径10mm、厚さ1mmの試料を得た。この試料の両面にIn−Ga電極を塗布し、評価試料を作製した。
【0043】
上記スラリーに有機バインダー、可塑剤を加え、十分攪拌後ドクターブレード法によりフィルム状シートに成形した。このフィルム状シートに、内部電極用に調整したAg−Pdペースト(Ag70重量%、Pd30重量%)をスクリーン印刷法等により印刷した後、ダミー層を加えて積層し、熱圧着後、切断した。これを大気中、300℃の温度で4時間加熱して脱バインダー処理し、引き続いて表2に示す温度で大気中で2時間焼成した。
【0044】
この磁器のタンブリング後、端子電極用に調整したAgペーストを端面に塗布、700℃、大気中で焼き付け、メッキを行い、端子電極とし、磁器の寸法3.2mm×1.6mm、有効電極面積2.2mm×1.1mm、誘電体厚み25μm×10層の積層コンデンサを作製した。
【0045】
次にこれらの評価試料を、LCRメーター4284Aを用いて、周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0Vrmsにて静電容量、誘電損失を測定した。静電容量から比誘電率を算出した。
【0046】
さらに、25℃の時の静電容量(C)を基準として、−55〜150℃の範囲において容量変化率の最小値を示した。尚、本願の組成系では、150℃で容量変化率が最小値となるので、150℃における容量変化率を示した。さらに、150℃、16V/μmの電界下でIR加速寿命試験を行った。
【0047】
また、本発明者等は、得られた誘電体磁器についてX線回折測定を行い、Biがどのような結晶として存在しているかを確認した。これらの結果を表2に記載した。尚、表1,2中、試料No.7、13、16、26、27、28、29、33および34は参考試料である。
【0048】
【表1】
Figure 0003706489
【0049】
【表2】
Figure 0003706489
【0050】
表1、表2によれば、BaTiO3 主結晶相と、Bi2 Ti2 7 結晶相と、Si、ZnおよびLiのガラスを有する本発明の試料では、1150℃以下の低温で焼成できるとともに、比誘電率εrを2020以上であることが判る。
【0051】
また、本発明の組成式を満足する試料では、1150℃以下の低温で焼成できるとともに、比誘電率εrが2020以上、測定周波数1kHzでの誘電損失が3.0%以下、EIA規格のX8R(+25℃における静電容量を基準としたとき、−55℃〜+150℃の広い温度範囲にわたって静電容量の温度変化率が±15%以内)、IR加速寿命が170時間以上を満足していた。図1に、試料No.6の静電容量の容量変化率を記載した。
【0052】
一方、比較例の試料No.1は、Bi2 Ti2 7 粉末を添加しない場合であり、この場合には、焼成温度が1270℃であり、Agを主成分とする導体を使用できないことが判る。
【0053】
また、試料No.47は、Si、Zn、Liを1000℃で仮焼して形成した結晶質粉末を用いた。この試料はX8R特性を満たす等改善の効果が見られるが、IR加速寿命は101時間であり、ガラス状態にて添加した試料No.6と比較して、IR加速寿命が短いことが判る。
【0054】
また、BiをBi2 3 粉末として添加した従来の誘電体磁器(試料No.48)では、Biの結晶としてBi2 3 結晶のみ析出しており、比誘電率が1720、誘電損失も2.42%であり、本発明の試料No.6と比較すると特性が低いことが判る。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の誘電体磁器およびその製法は、1150℃以下の温度で焼成できるとともに、Agを主成分とする内部電極と同時焼成可能であり、2000よりも高い比誘電率を有するとともに、温度特性を向上でき、IR加速寿命を向上でき、特に本発明の組成式を満足する場合にはX8R特性を満足することが可能になり、特に車載用途において、小型かつ高性能なコンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料No.6の容量変化率を示す図である。

Claims (4)

  1. 金属元素として少なくともBaおよびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる主結晶粒子と、金属元素として少なくともSi、Zn、Bi、TiおよびLiを含有する粒界相とからなる誘電体磁器であって、粒界相のBiがBiおよびTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子として存在するとともにSi、ZnおよびLiがガラスとして存在し、かつ比誘電率が2110以上であることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 粒界相のBiは、BiおよびTiを含有する複合酸化物からなる結晶粒子としてのみ存在することを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器。
  3. 金属元素としてBa、TiおよびBiを含有し、これらの金属元素酸化物のモル比による組成式を(100−a)BaTiO・aBiTiと表した時、前記aが1.5≦a≦5.0を満足する主成分と、該主成分100モル部に対して、モル比による組成式:bSiO・(1−b)ZnO・cLiO(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされる組成物を1〜12モル部、NbをNb換算で0.7〜1.9モル部、希土類元素をRE換算(REは希土類元素)で0.1〜0.6モル部、アルカリ土類金属をアルカリ土類金属酸化物換算で4.0モル部以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の誘電体磁器。
  4. BaTiO粉末と、BiTi粉末と、モル比による組成式、bSiO・(1−b)ZnO・cLiO(0.3≦b≦0.7、0<c≦0.2)で表わされるガラス粉末とを混合し、焼成することを特徴とする誘電体磁器の製法。。
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