JP2005272262A - 誘電体磁器組成物、積層型セラミックコンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物、積層型セラミックコンデンサ及びその製造方法 Download PDF

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治也 原
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和重 伊東
Toshihiro Iguchi
俊宏 井口
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陽 佐藤
Shigeki Sato
佐藤  茂樹
Takashi Kojima
小島  隆
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Abstract

【課題】X8R特性を満足し,焼結性に優れた誘電体組成物を提供する。
【解決手段】主成分のBaTiO100モルに対して次の7副成分を添加する。第1成分:Mg,Ca,Ba,Srの酸化物の少なくとも1種を0〜7モル、第2成分:V,Mo,Wの酸化物の少なくとも1種を0.01〜5モル、第3成分:R1を0.25〜3.5モル、第4成分:R2を0.25〜4.5モル、第5成分:Mn,Crの酸化物の少なくとも1種0〜0.5モル、第6成分:CaZrO又はCaO+ZrOの少なくとも1種を0〜5モル、第7成分:SiO−Al系複合酸化物0.5〜12モル、但し,RはSC,Er等を,RはY,Dy,HO等を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、誘電体磁器組成物、その原料、積層型セラミックコンデンサ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、X8R特性を満足し、焼結性に優れた誘電体磁器組成物及び積層型セラミックコンデンサ等に関するものである。
電子部品としての積層型セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されている。近年、機器の小型・高性能化に伴い、積層型セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求がますます厳しくなっている。
積層型セラミックコンデンサは、通常、内部電極層用のペーストと誘電体層用のペーストとをシート法や印刷法等により積層し、積層体中の内部電極層と誘電体層とを同時に焼成して製造される。
内部電極層の導電材としては、一般にPdやPd合金が用いられているが、Pdは高価であるため、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用されるようになってきている。内部電極層の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極層が酸化してしまうため、誘電体層と内部電極層との同時焼成を還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比抵抗が低くなってしまう。このため、非還元性の誘電体材料が開発されている。
しかし、非還元性の誘電体材料を用いた積層型セラミックコンデンサは、電界の印加による絶縁抵抗(Insulation Resistance)の劣化が著しく(すなわちIR寿命が短く)、信頼性が低いという問題があり、その解決が要求されている。
さらに、コンデンサには、温度特性が良好であることも要求され、特に、用途によっては厳しい条件下で温度特性が平坦であることが求められる。近年、自動車のエンジンルーム内に搭載するエンジン電子制御ユニット(ECU)、クランク角センサ、アンチロックブレーキシステム(ABS)モジュール等の各種電子装置に積層型セラミックコンデンサが使用されるようになってきている。これらの電子装置は、エンジン制御、駆動制御及びブレーキ制御を安定して行うためのものなので、回路の温度安定性が良好であることが要求される。
これらの電子装置が使用される環境は、寒冷地の冬季には−20℃程度以下まで温度が下がり、また、エンジン始動後には、夏季では+130℃程度以上まで温度が上がることが予想される。最近では電子装置とその制御対象機器とをつなぐワイヤハーネスを削減する傾向にあり、電子装置が車外に設置されることもあるので、電子装置にとっての環境はますます厳しくなっている。したがって、これらの電子装置に用いられるコンデンサは、広い温度範囲において温度特性が平坦である必要がある。
誘電率が高く、平坦な容量温度特性を有する誘電体磁器組成物として、BaTiOを主成分とし、Nb−Co、MgO−Y、希土類元素(Dy,Ho等)、Bi−TiO等を添加した組成が知られている。しかしながら、BaTiO系の高誘電率材料は、EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC/C=±15%以内)を満足することしかできず、上記した厳しい環境で使用される自動車の電子装置には対応できない。上記電子装置には、EIA規格のX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)を満足する誘電体磁器組成物が必要とされる。
本出願人は、誘電率が高く、X8R特性を満足し、還元性雰囲気中での焼成を可能にすることを目的として、既に以下に示す誘電体磁器組成物を提案している(例えば、特許文献1、2を参照)。
特許文献1には、チタン酸バリウムからなる主成分と、MgO,CaO,BaO,SrO及びCrから選択される少なくとも1種の第1副成分と、酸化シリコンを主成分として含有する第2副成分と、V,MoO及びWOから選択される少なくとも1種の第3副成分と、Rの酸化物(但し、R1はSc,Er,Tm,Yb及びLuから選択される少なくとも1種)からなる第4副成分と、CaZrO又はCaO+ZrOからなる第5副成分とを少なくとも有し、主成分100モルに対する各成分の比率が、第1副成分:0.1〜3モル、第2副成分:2〜10モル、第3副成分:0.01〜0.5モル、第4副成分:0.5〜7モル(但し、第4副成分のモル数は、R1単独での比率)、第5副成分:0<第5副成分≦5モルからなる原料で作製した誘電体磁器組成物が開示されている。
特許文献2には、チタン酸バリウムからなる主成分と、AEの酸化物(但し、AEはMg、Ca、Ba及びSrから選択される少なくとも1種)の第1副成分と、Rの酸化物(但し、RはY、Dy、Ho及びErから選択される少なくとも1種)の第2副成分とを有し、主成分100モルに対する各副成分の比率が、第1副成分:0モル<第1副成分<0.1モル、第2副成分:1モル<第2副成分<7モルからなる原料で作製した誘電体磁器組成物が開示されている。
上記特許文献1、2に記載の誘電体磁器組成物によれば、比誘電率が高く、容量温度特性がEIA規格のX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)を満足し、また、Pb,Bi,Zn等を含有していないために還元性雰囲気中での焼成が可能である。また、特許文献2に記載の誘電体磁器組成物では、Yの含有量の増加と共にX8R特性を満たす容量温度特性の改善(平坦化)が確認されている。
特許第3348081号 特許第3341003号
しかしながら、例えば上記特許文献2に記載の積層型セラミックコンデンサにおいては、X8R特性を満たす容量温度特性を改善するためにYの含有量を増加させると焼結性が急激に悪化してしまうという問題がある。こうした問題に対しては、焼成温度を上昇させて焼結性を高めているが、焼成温度が例えば1360℃を超える場合、積層型セラミックコンデンサを構成する内部電極層に途切れが発生し易くなったり、誘電体層を形成する誘電体磁器組成物の還元が起こり易くなるという問題が生じてしまう。
また、焼結助剤として酸化物ガラスであるBa0.6Ca0.4SiOの添加量を増やして焼成温度を過度に上昇させることなく焼結性を高める方法も行われているが、上記の焼結助剤の添加量の増加は比誘電率の低下やIR寿命の低下をもたらすという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、小型化大容量化を目的として誘電体層をさらに薄層化した場合等において、容量温度特性がEIA規格のX8R特性を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができた誘電体磁器組成物及びその誘電体磁器組成物を備えた積層型セラミックコンデンサを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、そうした積層型セラミックコンデンサの製造方法を提供することにある。また、本発明の第3の目的は、焼成温度を過度に上昇させることなく焼結性を高めることができる誘電体磁器組成物用原料を提供することにある。
上記第1の目的を達成するための本発明の誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、(a)チタン酸バリウムと、(b)Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物及びSr酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれMgO,CaO,BaO及びSrOに換算したときのモル数で0を超え7モル以下の第1副成分と、(c)V酸化物、Mo酸化物及びW酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれV,MoO及びWOに換算したモル数で0.01〜0.5モルの第2副成分と、(d)R酸化物(Rは、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種)を少なくとも1種含むものであり、それぞれR に換算したモル数で0.25〜3.5モルの第3副成分と、(e)R酸化物(Rは、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される少なくとも一種)を少なくとも1種含むものであり、それぞれR に換算したモル数で0.25〜4.5モルの第4副成分と、(f)Mn酸化物及びCr酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれMnO及びCrに換算したモル数で0を超え0.5モル以下の第5副成分と、(g)ジルコニウム酸カルシウム及びCa酸化物とZr酸化物との混合物の少なくとも1種であり、それぞれCaZrO及びCaO+ZrOに換算したモル数で0を超え5モル以下の第6副成分と、(h)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなり、当該Al原子とSi原子との合計のモル数が0.5〜12モルの第7副成分とを含有し、前記第7副成分中のAl原子のモル数Aと、Si原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満であることを特徴とする。
この発明によれば、チタン酸バリウム系の上記誘電体磁器組成物において、A1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなり、そのAl原子とSi原子との合計のモル数が0.5〜12モルであり、そのAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満の第7副成分を含有するように構成したことにより、小型化大容量化を目的として誘電体層をさらに薄層化及び多層化した場合等においても、X8R特性を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができた。
本発明の誘電体磁器組成物は、上記本発明の誘電体磁器組成物において、前記複合酸化物が、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式(但し、αは0≦α≦1の範囲内、γは0.8≦γ≦1.2の範囲内、βは0<β<0.4の範囲内である。)で表されることを特徴とする。
この発明によれば、上記一般式で表される複合酸化物を焼結助剤として含有させることにより、X8R特性を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができる。
本発明の積層型セラミックコンデンサは、上述した本発明に係る誘電体磁器組成物からなる誘電体層と、内部電極層とが交互に積層された積層体を有することを特徴とする。
この発明によれば、誘電体磁器組成物からなる誘電体層と内部電極層とを交互に積層された積層体を有するので、そうした積層型セラミックコンデンサは、X8R特性を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができる。
上記第2の目的を達成するための本発明の積層型セラミックコンデンサの製造方法は、(1)チタン酸バリウム及び/又は焼成によりチタン酸バリウムになる化合物若しくは混合物と、(2)MgO、CaO、BaO及びSrOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第1副成分と、(3)V、MoO及びWOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第2副成分と、(4)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される元素)からなる第3副成分と、(5)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される元素)からなる第4副成分と、(6)MnO及びCrから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第5副成分と、(7)CaZrO、CaOとZrOとの混合物、焼成によりCaZrOになる化合物、及び焼成によりCaOになる化合物と焼成によりZrOになる化合物との混合物から選択される少なくとも1種からなる第6副成分と、(8)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなる第7副成分とを含有し、前記チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、前記各副成分のモル数が、前記各酸化物に換算したときの換算量で、第1副成分:0を超え7モル以下、第2副成分:0.01〜0.5モル、第3副成分:0.25〜3.5モル、第4副成分:0.25〜4.5モル、第5副成分:0を超え0.5モル以下、第6副成分:0を超え5モル以下、第7副成分:0.5〜12モルであると共に、当該第7副成分中のAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満である誘電体磁器組成物用原料を用意する準備工程と、前記誘電体磁器組成物用原料で作製した誘電体層形成用のグリーンシートと、内部電極層形成用のペースト層とが交互に積層された状態で焼成されて、前記グリーンシートが誘電体層になると共に前記ペースト層が内部電極層になったセラミックスチップを形成する焼成工程と、前記セラミックスチップ中の誘電体層を再酸化する再酸化工程とを含むことを特徴とする。
この発明によれば、こうした原料で製造される積層型セラミックコンデンサは、X8R特性を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができる。
本発明の積層型セラミックコンデンサの製造方法は、上記本発明の積層型セラミックコンデンサの製造方法において、前記第7副成分である複合酸化物が、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式(但し、αは0≦α≦1の範囲内、γは0.8≦γ≦1.2の範囲内、βは0<β<0.4の範囲内である。)で表されることを特徴とする。
上記第3の目的を達成するための本発明の誘電体磁器組成物用原料は、(1)チタン酸バリウム及び/又は焼成によりチタン酸バリウムになる化合物若しくは混合物と、(2)MgO、CaO、BaO及びSrOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第1副成分と、(3)V、MoO及びWOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第2副成分と、(4)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される元素)からなる第3副成分と、(5)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される元素)からなる第4副成分と、(6)MnO及びCrから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第5副成分と、(7)CaZrO、CaOとZrOとの混合物、焼成によりCaZrOになる化合物、及び焼成によりCaOになる化合物と焼成によりZrOになる化合物との混合物から選択される少なくとも1種からなる第6副成分と、(8)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなる第7副成分とを含有し、前記チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、前記各副成分のモル数が、前記各酸化物に換算したときの換算量で、第1副成分:0を超え7モル以下、第2副成分:0.01〜0.5モル、第3副成分:0.25〜3.5モル、第4副成分:0.25〜4.5モル、第5副成分:0を超え0.5モル以下、第6副成分:0を超え5モル以下、第7副成分:0.5〜12モルであると共に、当該第7副成分中のAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満であることを特徴とする。
以上説明したように、本発明の誘電体磁器組成物及び積層型セラミックコンデンサによれば、焼結助剤として作用する第7副成分を上記のように構成することにより、容量温度特性がEIA規格のX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)を満足すると共に、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができた。そのため、小型化・大容量化を目的として誘電体層をさらに薄層化及び多層化した場合等において、その有用性は顕著となり、特に厳しい使用環境下で使用される自動車用途において、信頼性の高い誘電体磁器組成物及び積層型セラミックコンデンサを提供できた。
また、本発明の誘電体磁器組成物用原料や誘電体磁器組成物は、Pb,Bi,Zn等を含有していないので、還元性雰囲気中での焼成が可能であり、直流電界下での容量の経時変化が小さいという効果もある。
また、本発明の積層型セラミックコンデンサの製造方法によれば、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性の高い積層型セラミックコンデンサを製造できる。
以下、本発明の誘電体磁器組成物、誘電体磁器組成物の製造方法、積層型セラミックコンデンサ及び誘電体磁器組成物用原料について説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明の範囲は制限されない。
(積層型セラミックコンデンサ及び誘電体磁器組成物)
図1は、本発明の積層型セラミックコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。本発明の積層型セラミックコンデンサは、図1に示されるように、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された積層体(以下、積層誘電体素子本体10又は素子本体10という。)を有している。積層誘電体素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成されている。積層誘電体素子本体10の形状は、通常、直方体状であるが特に制限されない。また、その寸法も特に制限はないが、通常、長辺:0.6〜5.6mm程度×短辺:0.3〜5.0mm程度×高さ:0.3〜1.9mm程度である。
誘電体層2は、誘電体磁器組成物で構成されている。この誘電体磁器組成物は、(a)チタン酸バリウムと、(b)Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物及びSr酸化物から選択される少なくとも1種の第1副成分と、(c)V酸化物、Mo酸化物及びW酸化物から選択される少なくとも1種の第2副成分と、(d)R酸化物(Rは、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種)を少なくとも1種含む第3副成分と、(e)R酸化物(Rは、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される少なくとも一種)を少なくとも1種含む第4副成分と、(f)Mn酸化物及びCr酸化物から選択される少なくとも1種の第5副成分と、(g)ジルコニウム酸カルシウム及びCa酸化物とZr酸化物との混合物の少なくとも1種の第6副成分と、(h)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物の第7副成分とを含有している。
誘電体磁器組成物の各成分比率は、チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表すことができる。
例えば、誘電体磁器組成物において、チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したとき、第1副成分は、Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物及びSr酸化物のそれぞれについて、MgO,CaO,BaO及びSrOに換算したときのモル数で0を超え7モル以下含有し、第2副成分は、V酸化物、Mo酸化物及びW酸化物のそれぞれについて、V,MoO及びWOに換算したモル数で0.01〜0.5モル含有し、第3副成分は、R酸化物(Rは、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種)のそれぞれについて、R に換算したモル数で0.25〜3.5モル含有し、第4副成分は、R酸化物(Rは、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される少なくとも一種)のそれぞれについて、R に換算したモル数で0.25〜4.5モル含有し、第5副成分は、Mn酸化物及びCr酸化物のそれぞれについて、MnO及びCrに換算したモル数で0を超え0.5モル以下含有し、第6副成分は、ジルコニウム酸カルシウム及びCa酸化物とZr酸化物との混合物のそれぞれについて、CaZrO及びCaO+ZrOに換算したモル数で0を超え5モル以下含有し、第7副成分については、Al原子とSi原子との合計のモル数で0.5〜12モル含有する。
なお、本発明において、チタン酸バリウムは化学量論組成から外れるものであってもよいが、その場合であっても、化学量論組成から外れたチタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数が相対的に表される。また、誘電体磁器組成物中の各副成分の酸化物も化学量論組成から外れるものであってもよいが、その場合であっても、化学量論組成から外れた各酸化物のモル数を上記の化学量論組成に換算した時のモル数とし、チタン酸バリウムのモル数を100モルとした場合の相対値として表される。また、各成分のモル数は、各成分原子の定量データに基づいて決定される。この定量データは、従来公知の各種の方法で得ることができ、例えば蛍光X線分析やICP(高周波誘導結合プラズマ分光分析)等の分析等により比較的容易に定量データを得ることができる。
上記各副成分の含有量の限定理由は以下のとおりである。
第1副成分の含有量が0モル(含有されていない:未含有)では、容量温度変化率が大きくなってしまう。一方、第1副成分の含有量が7モルを超えると、焼結性が悪化する。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意であり、また、第1副成分の含有量の下限値としては、例えば0.1モルとすることができる。第1副成分の含有量が0.1モル未満では、容量温度変化率が大きくなってしまう。
第2副成分は、得られる誘電体磁器組成物のキュリー温度以上での容量温度特性を平坦化する効果と、Hot−IR特性を向上させる効果とを有する。第2副成分の含有量が0.01モル未満では、このような効果が不十分となる。一方、第2副成分の含有量が0.5モルを超えると、IRが著しく低下する。なお、第2副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
第3副成分は、電界印加時の酸素欠陥の移動による誘電体の絶縁破壊を防止するためのドナー(酸素欠陥の移動を妨げるためにドナー)として作用する。この第3副成分の添加により、絶縁破壊までの時間を長くすることができる。また、この第3副成分は、得られる誘電体磁器組成物のキュリー温度を高温側へシフトさせる効果と、容量温度特性を平坦化する効果とを有する。第3副成分の含有量が0.25モル未満では、絶縁破壊までの時間を長くすることができないことがあると共に、キュリー温度を高温側に十分にシフトさせることができなかったり、容量温度特性を十分に平坦化させることができないことがある。一方、第3副成分の含有量が3.5モルを超えると、生焼けになりかえって寿命が低下する恐れがある。第3副成分のうちでは、特性改善効果が高く、しかも安価であることから、Yb酸化物が好ましい。
第4副成分は、上記の第3副成分と同様に、電界印加時の酸素欠陥の移動による誘電体の絶縁破壊を防止するためのドナー(酸素欠陥の移動を妨げるためにドナー)として作用する。この第4副成分の添加により、絶縁破壊までの時間を長くすることができる。また、この第4副成分は、IR及びIR寿命を改善する効果を示し、容量温度特性への悪影響も少ない。第4副成分の含有量が0.25モル未満では、絶縁破壊までの時間を長くすることができないことがあると共に、容量温度特性を十分に平坦化させることができなくなってしまうことがある。一方、第4副成分の含有量が4.5モルを超えると、生焼けになりかえって寿命が低下する恐れがある。第4副成分のうちでは、特性改善効果が高く、しかも安価であることから、Y酸化物が好ましい。
第5副成分は、焼結を促進する効果と、IRを高くする効果と、Hot−IR特性を向上させる効果とを有する。このような効果を十分に得るためには、BaTiO100モルに対する第5副成分の比率が0を超え(好ましい下限値は0.01モルである。)、0.5モル以下であることが好ましい。第5副成分の含有量が0.5モルを超えると、容量温度特性に悪影響を与えることがある。
第6副成分は、得られる誘電体磁器組成物のキュリー温度を高温側へシフトさせる効果と、容量温度特性を平坦化する効果とを有する。また、CR積及び直流絶縁破壊強度を改善する効果もある。第6副成分の含有量が5モルを超えると、IR加速寿命が著しく悪化し、容量温度特性(X8R特性)が悪くなってしまう。第6副成分であるジルコニウム酸カルシウム(例えばCaZrO等で表される。)の含有形態は特に限定されないが、例えばCaZrO等の複合酸化物として含有される。なお、こうした第6副成分は、CaO等のCaから構成される酸化物、CaCO等の炭酸塩、有機化合物、CaZrO等を原料として配合される。CaZrO及びCaO+ZrOに換算されるCaとZrとの比率は特に限定されず、主成分であるBaTiOに固溶させない程度に決定すればよいが、Zrに対するCaのモル比(Ca/Zr)については、好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは0.9〜1.1である。なお、IR加速寿命とは、得られたコンデンサに対し、200℃にて15V/μmの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗が測定開始時の値に対して一桁落ちるまでの時間のことである。
なお、誘電体磁器組成物においては、第3副成分(R酸化物の希土類酸化物)及び第6副成分(CaZrO又は、CaO+ZrOを含むもの)の含有量を調整することで、容量温度特性(X8R特性)を平坦化し、高加速寿命等を改善することができる。特に、上述した数値範囲内では、異相の析出が抑制され、組織の均一化を図ることができる。
第7副成分は、生焼けを防止するための焼結助剤として、焼成温度を過度に上昇させることなく焼結性を高めるように作用する。本発明においては、こうした第7副成分として、SiO−Al系の複合酸化物が用いられる。SiO−Al系の複合酸化物としては、1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物が挙げられ、より具体的には、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式(但し、αは0≦α≦1の範囲内、γは0.8≦γ≦1.2の範囲内、βは0<β<0.4の範囲内である。)で表される複合酸化物が挙げられる。
この第7副成分は、その複合酸化物に含まれるAl原子とSi原子との合計のモル数(すなわち、第7副成分である複合酸化物のモル数と同じ。)が0.5〜12モルとなるように誘電体磁器組成物中に含有されるが、その含有量が0.5モル未満では、焼結性が低下するので過度に焼成温度を上げなければならなくなると共に、焼成温度の上昇に伴う問題(内部電極層の途切れや、誘電体磁器組成物の還元)が起こり易くなる。一方、第7副成分の含有量が12モルを超えると、誘電率の急激な低下が生じてしまうことがある。
(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2中のBa原子及びCa原子は第1副成分にも含まれるが、この複合酸化物は融点が低いため主成分に対する反応性が良好な焼結助剤として好ましく作用する。(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2におけるγの範囲は0.8〜1.2であるが、γが0.8未満、すなわち(Ba,Ca)成分に対する(Si,Al)成分が多すぎると、主成分のBaTiOと反応して誘電体特性を悪化させてしまうことがある。一方、γが1.2を超えると、融点が高くなって主成分に対する反応性が低下し、焼結性を悪化させることがある。BaとCaとの比率は任意であり、αは0〜1の範囲で変化させることができ、その一方だけを含有するものであってもよい。なお、本願において、IRとは、絶縁抵抗のことであり、Hot−IR特性とは、その絶縁抵抗が25℃における絶縁抵抗値を150℃における絶縁抵抗値で除した後に常用対数をとったものであり、log(IR25/IR150)で表される。
本発明においては、第7副成分中のAl原子のモル数Aと、Si原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満となるように、誘電体磁器組成物が構成される。すなわち、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2においては、βの範囲が0を超え0.4未満となるように構成される。A/Bが0.67以上(すなわちβが0.4以上)の場合には、焼結性が悪化してIRが低くなることがある。一方、A/Bが0(すなわちβが0でAlが含まれていない)の場合には、比誘電率の低下やHot−IR特性の劣化が起こる。
本発明の誘電体磁器組成物のキュリー温度(強誘電体から常誘電体への相転移温度)は、誘電体磁器組成物の組成を選択することにより変更することができるが、X8R特性を満足するためには、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上とする。キュリー温度は、DSC(示差走査熱量測定)等によって測定することができる。なお、Sr,Zr及びSnの少なくとも1種が、ペロブスカイト構造を構成する主成分中のBa又はTiを置換している場合、キュリー温度が低温側にシフトするため、125℃以上での容量温度特性が悪くなる。このため、これらの元素を含むBaTiO[例えば(Ba,Sr)TiO]を主成分として用いないことが好ましい。但し、Sr,Zr及びSnの少なくとも1種が不純物として含有されるレベル(例えば誘電体磁器組成物全体の0.1モル%程度以下)であれば、特に問題はない。また、寿命バラツキは、ワイブル分布で表した際の回帰直線の傾きであるm値として表され、このm値が大きいほど平均故障寿命(MTTF)のバラツキが小さく、信頼性に優れたものとなる。
誘電体層を構成する誘電体粒子は、上述した誘電体磁器組成物を焼成して得られた誘電体層を構成するものであるが、本発明においては、その誘電体粒子の平均粒径は特に限定されず、誘電体層の厚さ等に応じて例えば0.1〜3μmの範囲から適宜決定すればよい。具体的には、平均粒径が0.1〜0.5μmである場合に特に有効であり、IR寿命が長くなり、また、直流電界下での容量の経時変化を少なくすることができる。なお、本発明において、誘電体粒子の平均粒径は、コード法により求めたコード長を1.5倍したものを粒径と定義し、測定された相当数の粒径データの平均値で表した。
また、容量温度特性がEIA規格のX8R特性を満足するとは、製造された積層型セラミックコンデンサが、80℃以上、特に125〜150℃の環境下で使用される機器用電子部品として好ましく用いることができることを示すものである。そして、このような温度範囲において、容量の温度特性がEIA規格のR特性を満足し、さらにX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)も満足することを意味している。また、EIAJ規格のB特性[−25〜85℃で容量変化率±10%以内(基準温度20℃)]、EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)も同時に満足することが可能である。また、容量の経時変化に優れるとは、製造された積層型セラミックコンデンサを例えば85℃の温度環境下で例えば7V/μmの直流電圧を印加した場合等において、1000時間後における容量の変化率が10%以内であることを意味している。
誘電体層2の積層数や厚さ等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよいが、誘電体層2の厚さとしては、通常30μm以下であり、小型大容量化の観点からは、誘電体層2の厚さを10μm以下とすることが好ましい。このように薄層化した誘電体層を有する積層型セラミックコンデンサは、小型化大容量化を実現できると共に、その誘電体層を構成する誘電体粒子の平均粒径等が特定されることにより、容量温度特性等の改善に有効である。なお、誘電体層の厚さの下限は特に制限されないが、強いて挙げれば0.5μm程度である。また、誘電体層の積層数は、通常、1000程度である。
内部電極層3は、以上説明した誘電体層2と交互に設けられ、各端面が積層誘電体素子本体10の対向する2つの端部の表面に交互に露出するように積層されている。また、一対の外部電極4は、積層誘電体素子本体10の両端部に形成され、交互に配置されたニッケル内部電極層3の露出端面に接続されて、積層型セラミックコンデンサを構成している。
内部電極層3は、実質的に電極として作用する非金属の導電材から構成される。具体的には、Ni又はNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,Co,Al,W等の1種又は2種以上と、Niとの合金が好ましく、合金中のNi含有量が95重量%以上であることが好ましい。また、Ni又はNi合金中には、P,C,Nb,Fe,Cl,B,Li,Na,K,F,S等の各種微量成分が0.1重量%以下含有されていてもよい。内部電極層3の積層数や厚さ等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよいが、厚さとしては、通常0.1μm〜3μm程度が好ましく、0.2μm〜2.0μmがより好ましい。
外部電極4は、積層誘電体素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する電極であり、積層誘電体素子本体10の両端部に一対形成されている。外部電極4としては、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu、Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag、Ag−Pd合金、In−Ga合金等が使用される。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜200μm程度であることが好ましい。
(積層型セラミックコンデンサの製造方法)
本発明の積層型セラミックコンデンサは、従来の積層型セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷又は転写して焼成することにより製造される。
より詳しくは、上述した誘電体磁器組成物用原料を用意する準備工程と、その誘電体磁器組成物用原料を含む誘電体層用ペーストで作製した誘電体層形成用のグリーンシートと内部電極用ペーストで作製した内部電極層形成用のペースト層とが交互に積層された状態で焼成されて前記グリーンシートが誘電体層になると共に前記ペースト層が内部電極層になったセラミックスチップを形成する焼成工程と、そのセラミックスチップ中の誘電体層を再酸化する再酸化工程とを含む方法で製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物用原料と有機ビヒクルとを混練した塗料であり、有機系の塗料であっても水系の塗料であってもよい。
誘電体磁器組成物用原料には、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることができる。誘電体磁器組成物用原料中の各酸化物及び/又は焼成により酸化物になる化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。
より詳しくは、(1)チタン酸バリウム及び/又は焼成によりチタン酸バリウムになる化合物若しくは混合物と、(2)MgO、CaO、BaO及びSrOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成によりその酸化物になる化合物からなる第1副成分と、(3)V、MoO及びWOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成によりその酸化物になる化合物からなる第2副成分と、(4)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成によりその酸化物になる化合物(但し、R は、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される元素)からなる第3副成分と、(5)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成によりその酸化物になる化合物(但し、R は、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される元素)からなる第4副成分と、(6)MnO及びCrから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成によりその酸化物になる化合物からなる第5副成分と、(7)CaZrO、CaOとZrOとの混合物、焼成によりCaZrOになる化合物、及び焼成によりCaOになる化合物と焼成によりZrOになる化合物との混合物から選択される少なくとも1種からなる第6副成分と、(8)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなる第7副成分とを含有し、前記のチタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、各副成分のモル数が、前記の各酸化物に換算したときの換算量で、第1副成分:0を超え7モル以下、第2副成分:0.01〜0.5モル、第3副成分:0.25〜3.5モル、第4副成分:0.25〜4.5モル、第5副成分:0を超え0.5モル以下、第6副成分:0を超え5モル以下、第7副成分:0.5〜12モルであると共に、第7副成分中のAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満である誘電体磁器組成物用原料が用いられる。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法等、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤等を水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体磁器組成物用原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えばポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂等を用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種誘電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電材にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合には、空気雰囲気において、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜300℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは5〜20時間とする。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−8〜10−12気圧とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
本発明においては、焼結助剤としての上記第7副成分を誘電体磁器組成物用原料中に含有させているので、焼成温度を過度に上昇させなくても焼結性を高めることができる。こうした特徴を有する本発明において、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1360℃、さらに好ましくは1200〜1340℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしては、例えばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、積層誘電体素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−6気圧以上、特に10−5〜10−4気圧とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、Hot−IR特性の桁落ちが大きくなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、Hot−IR特性の劣化が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程及び降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは6〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、例えば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成及びアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成及びアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、アニールの保持温度に達したときに雰囲気を変更してアニールを行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、アニール時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、アニールに際しては、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、アニールの全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
上記のようにして得られた積層誘電体素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラスト等により端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷又は転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。このようにして製造された本発明の積層型セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上等に実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の積層型セラミックコンデンサ及びその製造方法について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
以下の実験例と比較例により本発明を詳細に説明する。但し、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。
(サンプル1の作製)
先ず、誘電体材料を作製するための出発原料として、それぞれの平均粒径が0.1〜1μmに含まれる主成分原料(BaTiO)及び第1〜第7副成分原料を用意した。なお、主成分であるBaTiOについては、BaCO及びTiOをそれぞれ秤量し、ボールミルを用いて約16時間湿式混合し、これを乾燥したのち、1100℃の温度で空気中にて焼成したものをさらにボールミルにより約16時間湿式粉砕して作製したものを用いても同様のものが得られた。また、主成分であるBaTiOは、水熱合成粉、蓚酸塩法等によって作製されたものを用いても同様のものが得られた。
MgO及びMnOの原料には炭酸塩(第1副成分:MgCO、第5副成分:MnCO)を用い、他の原料には酸化物(第2副成分:V、第4副成分:Y、第6副成分:CaZrO)を用いた。また、焼結助剤として作用する第7副成分は、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式で表される複合酸化物を用い、α=0.4、β=0.2、γ=1の組成のものを使用した。それぞれの副成分は、BaTiOのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、各副成分のモル数が上記各酸化物に換算したときの換算量で表1に示したモル数となるように調整して、ボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥させて誘電体磁器組成物用原料とした。
なお、焼結助剤である第7副成分は次のようにして作製した。先ず、所定のモル比になるようにBaCO、CaCO、Al、SiOの各原料粉末を秤量した後、これらの原料粉末を水及びジルコニアボールと共にボールミル内に入れ、湿式で16時間混合した。得られたスラリー(混合物)を乾燥機に入れ、120℃で乾燥させて混合粉体とした。次いで、得られた混合粉体に水を10wt%添加した後に金型に投入して加圧成型することにより、ペレット状物(成型物)を得た。次いで、ペレット状物の仮焼きを大気中で所定の温度と時間で行なった。温度と時間は、仮焼き後の粉末XRD測定により、原料粉末であるBaCO、CaCO、Al、SiOの各ピークがみられなくなる温度と時間とした。こうして得られた仮焼き温度と時間で仮焼きして得られたペレット状物は、乳鉢にて300ミクロンメッシュを通るまで解砕した。得られた粉末を水及びジルコニアボールと共にボールミル内に入れ、湿式で48時間混合し、得られたスラリー(混合物)を乾燥機に入れ、120℃で乾燥させて、各成分組成の異なる焼結助剤を作製した。
また、第6副成分であるCaZrOは、CaCO及びZrOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で焼成し、さらに、ボールミルにより24時間湿式粉砕することにより製造した。
このようにして得られた乾燥後の誘電体磁器組成物用原料100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、塩化メチレン40重量部と、酢酸エチル20重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
次いで、平均粒径0.4μmのNi粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混練してペースト化し、内部電極層用ペーストを得た。なお、外部電極については、ペースト状のIn−Ga合金を準備した。
次いで、上記誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上に、厚さ4.5μmのグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷したのち、PETフィルムからグリーンシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。内部電極を有するシートの積層数は4層とした。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成及びアニールを行って、積層セラミックチップである焼成体を得た。脱バインダ処理は、昇温時間32.5℃/時間、保持温度260℃、保持時間8時間、空気雰囲気の条件で行った。また、焼成は、昇温速度200℃/時間、保持温度1300℃、保持時間2時間、冷却速度200℃/時間、加湿したN+H混合ガス雰囲気(酸素分圧は10−12気圧)の条件で行った。アニールは、保持温度1050℃、温度保持時間2時間、冷却速度200℃/時間、加湿したNガス雰囲気(酸素分圧は10−5気圧)の条件で行った。なお、焼成の際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウェッターを用い、アニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を30℃としたウエッターを用いた。
次いで、積層セラミックチップの端面をサンドブラストにて研磨したのち、ペースト状のIn−Ga合金を端面に塗布して外部電極を形成することにより、積層型セラミックコンデンサのサンプルを得た。得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は5、誘電体層の1層当たりの厚さは3.5μmであり、内部電極層の1層当たりの厚さは1.0μmであった。
なお、焼結密度測定用及び比誘電率測定用のサンプルとして、直径12mmの寸法からなるディスク状の単層サンプルを作製した。なお、この単層サンプルの作製条件は、上記の積層サンプルと同様の条件とした。
得られた積層型セラミックコンデンサのサンプルは、還元雰囲気での焼成においても還元されることがなく、また内部電極として使用したニッケルもIR不良が生じる程度の酸化はみられなかった。
(サンプル2〜16の作製)
上記のサンプル1の作製において、誘電体磁器組成物用原料の成分組成を表1に示したものに変更し、さらに焼成温度を表1に示した温度で行った以外は上記サンプル1と同様にして、サンプル2〜16の積層型セラミックコンデンサを作製した。なお、サンプル13〜16は、焼結助剤である第7成分として(Ba0.6Ca0.4)SiOの複合酸化物を使用した。
得られた積層型セラミックコンデンサのサンプルは、そのいずれにおいても還元雰囲気での焼成においても還元されることがなく、また内部電極として使用したニッケルもIR不良が生じる程度の酸化はみられなかった。
(各特性の評価方法と結果)
作製されたサンプル1〜16について、焼結密度の測定結果を表1に示した。また、第7副成分である焼結助剤を用いることにより焼結密度が向上したサンプル1〜8及び14について、容量温度特性としてX8R特性を評価すると共に、MTTF(平均故障寿命)、寿命バラツキ(m値)、誘電損失(%)、Tc−bias(%)、Hot−IR特性、CR積のそれぞれについて測定・評価し、表2に示した。各特性の測定方法・評価方法は以下の通りである。
焼結密度は、ディスク状の単層サンプルを使用し、その直径、厚さ、重量から求めた。
容量温度特性は、得られた積層型のサンプルに対し、−55〜150℃の温度範囲で最も容量温度特性が悪くなる温度環境下での静電容量の変化率(%)を測定することにより評価した。静電容量の測定にはLCRメータを用い、周波数1kHz・入力信号レベル1Vrmsの条件下で測定した。測定結果に対しては、X8R特性(−55〜150℃、ΔC=±15%以内)を満足するか否かで評価した。
MTTF(平均故障寿命)は、雰囲気温度160℃、直流電界15V/mの条件の下に高加速寿命試験(HALT;High Accelerator Life Test)を行って、その結果をもとにワイブル関数から算出した平均寿命時間(時間:hr)で表される。また、m値は、ワイブル分布で表した際の回帰直線の傾きで表される。なお、この加速試験の結果は、得られた平均寿命時間が1.5時間以上であれば、積層型セラミックコンデンサとして十分な信頼性を有するものとして評価される。
誘電損失は、得られた積層型のサンプルに対し、室温にてLCRメータを用い、周波数1kHz・入力信号レベル1Vrmsの条件下で測定し、サンプル14に対する良否で評価した。
Tc−bias特性は、得られた積層型のサンプルに対し、7.0V/μmの直流電圧を印加した際の静電容量の変化率(%)を測定することにより評価した。静電容量の測定にはLCRメータを用い、周波数1kHz・入力信号レベル1Vrmsの条件下で測定した。測定結果に対しては、静電容量の変化率が40%以内となるか否か、及び、サンプル14に対する良否で評価した。
Hot−IR特性は、得られた積層型のサンプルの絶縁抵抗が25℃における絶縁抵抗値を150℃における絶縁抵抗値で除した後に常用対数をとったものであり、log(IR25/IR150)で表されるものである。
表1に示した焼結密度の結果から明らかなように、サンプル1〜4の焼結密度は、Alを含有していない焼結助剤を用いたサンプル13〜16の焼結密度に比べて高くなる傾向を示しており、焼結性の向上がみられた。一方、Al含有量が多いサンプル9〜12の焼結密度はやや低下していた。
表2に示した各特性結果から明らかなように、サンプル1〜8は、Alを含有していない焼結助剤を用いたサンプル14に比べて、各特性が向上する傾向を示していた。特に、X8R特性、寿命バラツキ(m値)、誘電損失(%)、Tc−bias(%)については特性値の向上がみられた。
Figure 2005272262
Figure 2005272262
本発明の積層型セラミックコンデンサの一例を示す模式断面図である。
符号の説明
1… 積層型セラミックコンデンサ
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… 積層誘電体素子本体

Claims (6)

  1. チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、
    (a)チタン酸バリウムと、(b)Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物及びSr酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれMgO,CaO,BaO及びSrOに換算したときのモル数で0を超え7モル以下の第1副成分と、(c)V酸化物、Mo酸化物及びW酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれV,MoO及びWOに換算したモル数で0.01〜0.5モルの第2副成分と、(d)R酸化物(Rは、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種)を少なくとも1種含むものであり、それぞれR に換算したモル数で0.25〜3.5モルの第3副成分と、(e)R酸化物(Rは、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される少なくとも一種)を少なくとも1種含むものであり、それぞれR に換算したモル数で0.25〜4.5モルの第4副成分と、(f)Mn酸化物及びCr酸化物から選択される少なくとも1種であり、それぞれMnO及びCrに換算したモル数で0を超え0.5モル以下の第5副成分と、(g)ジルコニウム酸カルシウム及びCa酸化物とZr酸化物との混合物の少なくとも1種であり、それぞれCaZrO及びCaO+ZrOに換算したモル数で0を超え5モル以下の第6副成分と、(h)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなり、当該Al原子とSi原子との合計のモル数が0.5〜12モルの第7副成分とを含有し、
    前記第7副成分中のAl原子のモル数Aと、Si原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記第7副成分である複合酸化物が、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式(但し、αは0≦α≦1の範囲内、γは0.8≦γ≦1.2の範囲内、βは0<β<0.4の範囲内である。)で表されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の誘電体磁器組成物からなる誘電体層と、内部電極層とが交互に積層された積層体を有することを特徴とする積層型セラミックコンデンサ。
  4. (1)チタン酸バリウム及び/又は焼成によりチタン酸バリウムになる化合物若しくは混合物と、(2)MgO、CaO、BaO及びSrOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第1副成分と、(3)V、MoO及びWOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第2副成分と、(4)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される元素)からなる第3副成分と、(5)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される元素)からなる第4副成分と、(6)MnO及びCrから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第5副成分と、(7)CaZrO、CaOとZrOとの混合物、焼成によりCaZrOになる化合物、及び焼成によりCaOになる化合物と焼成によりZrOになる化合物との混合物から選択される少なくとも1種からなる第6副成分と、(8)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなる第7副成分とを含有し、前記チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、前記各副成分のモル数が、前記各酸化物に換算したときの換算量で、第1副成分:0を超え7モル以下、第2副成分:0.01〜0.5モル、第3副成分:0.25〜3.5モル、第4副成分:0.25〜4.5モル、第5副成分:0を超え0.5モル以下、第6副成分:0を超え5モル以下、第7副成分:0.5〜12モルであると共に、当該第7副成分中のAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満である誘電体磁器組成物用原料を用意する準備工程と、
    前記誘電体磁器組成物用原料で作製した誘電体層形成用のグリーンシートと、内部電極層形成用のペースト層とが交互に積層された状態で焼成されて、前記グリーンシートが誘電体層になると共に前記ペースト層が内部電極層になったセラミックスチップを形成する焼成工程と、
    前記セラミックスチップ中の誘電体層を再酸化する再酸化工程とを含むことを特徴とする積層型セラミックコンデンサの製造方法。
  5. 前記第7副成分である複合酸化物が、(Ba1−αCaαγ(Si1−βAlβ)Oγ+2−β/2の一般式(但し、αは0≦α≦1の範囲内、γは0.8≦γ≦1.2の範囲内、βは0<β<0.4の範囲内である。)で表されることを特徴とする請求項4に記載の積層型セラミックコンデンサの製造方法。
  6. (1)チタン酸バリウム及び/又は焼成によりチタン酸バリウムになる化合物若しくは混合物と、(2)MgO、CaO、BaO及びSrOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第1副成分と、(3)V、MoO及びWOから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第2副成分と、(4)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Sc、Er、Tm、Yb及びLuから選択される元素)からなる第3副成分と、(5)式R で表される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物(但し、R は、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuから選択される元素)からなる第4副成分と、(6)MnO及びCrから選択される少なくとも1種の酸化物及び/又は焼成により当該酸化物になる化合物からなる第5副成分と、(7)CaZrO、CaOとZrOとの混合物、焼成によりCaZrOになる化合物、及び焼成によりCaOになる化合物と焼成によりZrOになる化合物との混合物から選択される少なくとも1種からなる第6副成分と、(8)1モル中にAl原子とSi原子とを合計1モル含有する複合酸化物からなる第7副成分とを含有し、
    前記チタン酸バリウムのモル数を100モルとして各成分のモル数を相対的に表したときに、前記各副成分のモル数が、前記各酸化物に換算したときの換算量で、第1副成分:0を超え7モル以下、第2副成分:0.01〜0.5モル、第3副成分:0.25〜3.5モル、第4副成分:0.25〜4.5モル、第5副成分:0を超え0.5モル以下、第6副成分:0を超え5モル以下、第7副成分:0.5〜12モルであると共に、当該第7副成分中のAl原子のモル数AとSi原子のモル数Bとの比(A/B)が0を超え0.67未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物用原料。
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