JP3341003B2 - 誘電体磁器組成物および電子部品 - Google Patents

誘電体磁器組成物および電子部品

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JP3341003B2
JP3341003B2 JP2001279534A JP2001279534A JP3341003B2 JP 3341003 B2 JP3341003 B2 JP 3341003B2 JP 2001279534 A JP2001279534 A JP 2001279534A JP 2001279534 A JP2001279534 A JP 2001279534A JP 3341003 B2 JP3341003 B2 JP 3341003B2
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capacitor
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知子 内田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐還元性を有する
誘電体磁器組成物と、該誘電体磁器組成物を用いた積層
セラミックコンデンサなどの電子部品とに関する。
【0002】
【従来の技術】電子部品としての積層セラミックコンデ
ンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く
利用されており、1台の電子機器の中で使用される個数
も多数にのぼる。近年、機器の小型・高性能化にともな
い、積層セラミックコンデンサに対する更なる小型化、
大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳
しくなっている。
【0003】積層セラミックコンデンサは、通常、内部
電極層用のペーストと誘電体層用のペーストとをシート
法や印刷法等により積層し、積層体中の内部電極層と誘
電体層とを同時に焼成して製造される。
【0004】内部電極層の導電材としては、一般にPd
やPd合金が用いられているが、Pdは高価であるた
め、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用され
るようになってきている。内部電極層の導電材として卑
金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極層
が酸化してしまうため、誘電体層と内部電極層との同時
焼成を、還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、
還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比
抵抗が低くなってしまう。このため、非還元性の誘電体
材料が開発されている。
【0005】しかし、非還元性の誘電体材料を用いた積
層セラミックコンデンサは、電界の印加によるIR(絶
縁抵抗)の劣化が著しく、すなわち、IR寿命が短く、
信頼性が低いという問題がある。
【0006】また、誘電体を直流電界にさらすと、比誘
電率εrが経時的に低下するという問題が生じる。ま
た、コンデンサには、直流電圧を重畳して使用する場合
があり、一般に強誘電体を主成分とする誘電体を有する
コンデンサに直流電圧を印加すると、容量値が低下する
という問題もある(DCバイアス特性)。チップコンデ
ンサを小型および大容量化するために誘電体層を薄くす
ると、直流電圧を印加したときの誘電体層にかかる電界
が強くなるため、比誘電率εrの経時変化、すなわち容
量の経時変化が著しく大きくなってしまったり、DCバ
イアス特性が劣化してしまう。
【0007】さらに、コンデンサには、温度特性が良好
であることも要求され、特に、用途によっては、厳しい
条件下で温度特性が平坦であることが求められる。近
年、自動車のエンジンルーム内に搭載するエンジン電子
制御ユニット(ECU)、クランク角センサ、アンチロ
ックブレーキシステム(ABS)モジュールなどの各種
電子装置に積層セラミックコンデンサが使用されるよう
になってきている。これらの電子装置は、エンジン制
御、駆動制御およびブレーキ制御を安定して行うための
ものなので、回路の温度安定性が良好であることが要求
される。
【0008】これらの電子装置が使用される環境は、寒
冷地の冬季には−20℃程度以下まで温度が下がり、ま
た、エンジン始動後には、夏季では+130℃程度以上
まで温度が上がることが予想される。最近では電子装置
とその制御対象機器とをつなぐワイヤハーネスを削減す
る傾向にあり、電子装置が車外に設置されることもある
ので、電子装置にとっての環境はますます厳しくなって
いる。したがって、これらの電子装置に用いられるコン
デンサは、広い温度範囲において温度特性が平坦である
必要がある。
【0009】温度特性に優れた温度補償用コンデンサ材
料としては、(Sr,Ca)(Ti,Zr)O系、
Ca(Ti,Zr)O系、Nd−2Ti
系、La−2TiO系等が一般に知
られているが、これらの組成物は比誘電率が非常に低い
(一般には100以下)ので、容量の大きいコンデンサ
を作製することが実質的に不可能である。
【0010】誘電率が高く、平坦な容量温度特性を有す
る誘電体磁器組成物として、BaTiOを主成分と
し、Nb−Co、MgO−Y、希
土類元素(Dy,Ho等)、Bi−TiO
などを添加した組成が知られている。容量温度特性
を平坦化させるメカニズムは、必ずしも明らかにされて
いないが、特公平7−118431号公報では、コア−
シェル構造の内部にMgや希土類元素を固溶させること
により、容量温度特性を平坦化させることが提案されて
いる。しかしながら、文献「Key Engineering Material
s Vols 17-24,157-158(1999) ; A study on Capacitanc
e Aging in Ni-Electroded , BaTiO -Based MLCCs
with X7R Characteristics 」では、容量温度特性が、
EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC/C
=±15%以内)を満足するためには、コア−シェル構
造は必須ではないことが報告されている。
【0011】また、これらBaTiOを主成分とす
る誘電体磁器組成物の温度特性は、BaTiOのキ
ュリー温度が約130℃付近にあるため、それ以上の高
温領域で容量温度特性のR特性(ΔC/C=±15%以
内)を満足することが非常に難しい。このため、BaT
iO系の高誘電率材料は、EIA規格のX7R特性
(−55〜125℃、ΔC/C=±15%以内)を満足
することしかできなかった。X7R特性を満足するだけ
では、上記した厳しい環境で使用される自動車の電子装
置には対応できない。上記電子装置には、EIA規格の
X8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以
内)を満足する誘電体磁器組成物が必要とされる。
【0012】BaTiOを主成分とする誘電体磁器
組成物においてX8R特性を満足させるために、BaT
iO中のBaをBi,Pbなどで置換することによ
り、キュリー温度を高温側にシフトさせることが提案さ
れている(特開平10−25157号公報、同9−40
465号公報)。また、BaTiO+CaZrO
+ZnO+Nb系の組成を選択すること
によりX8R特性を満足させることも提案されている
(特開平4−295048号公報、同4−292458
号公報、同4−292459号公報、同5−10931
9公報、同6−243721号公報)。
【0013】しかしながら、これらのいずれの組成系に
おいても、蒸発飛散しやすいPb,Bi,Znを使用す
るため、空気中等の酸化性雰囲気での焼成が前提とな
る。このため、コンデンサの内部電極に安価なNi等の
卑金属を使用することができず、Pd,Au,Ag等の
高価な貴金属を使用しなければならないという問題があ
る。
【0014】これに対し、誘電率が高く、X8R特性を
満足し、還元性雰囲気中での焼成を可能にすることを目
的として、本出願人は、既に以下に示す誘電体磁器組成
物を提案している(特開2000−154057号公
報)。この公報に記載の誘電体磁器組成物は、主成分で
あるBaTiOと、MgO,CaO,BaO,Sr
OおよびCrから選択される少なくとも1種
を含む第1副成分と、(Ba,Ca)SiO
2+x (ただし、x=0.8〜1.2)で表される第
2副成分と、V,MoOおよびWO
から選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、R
1の酸化物(ただし、R1はSc,Er,Tm,Ybお
よびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副
成分と少なくとも有し、主成分100モルに対する各副
成分の比率が、第1副成分:0.1〜3モル、第2副成
分:2〜10モル、第3副成分:0.01〜0.5モ
ル、第4副成分:0.5〜7モル(ただし、第4副成分
のモル数は、R1単独での比率である)である。
【0015】また、最近、本出願人は、以下に示す誘電
体磁器組成物も提案した(特願2000−226862
号)。この出願明細書に記載の誘電体磁器組成物は、チ
タン酸バリウムを含む主成分と、MgO,CaO,Ba
O,SrOおよびCr から選択される少なく
とも1種を含む第1副成分と、酸化シリコンを主成分と
して含有する第2副成分と、V,MoO
およびWOから選択される少なくとも1種を含む第
3副成分と、R1の酸化物(ただし、R1はSc,E
r,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1
種)を含む第4副成分と、CaZrOまたはCaO
+ZrOを含む第5副成分とを少なくとも有し、主
成分100モルに対する各成分の比率が、第1副成分:
0.1〜3モル、第2副成分:2〜10モル、第3副成
分:0.01〜0.5モル、第4副成分:0.5〜7モ
ル(ただし、第4副成分のモル数は、R1単独での比
率)、第5副成分:0<第5副成分≦5モルである。
【0016】上述した本出願人によるいずれの出願も、
主成分100モルに対するMgOなどの第1副成分の比
率は、0.1モル以上である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本出願人による上記出
願に係る誘電体磁器組成物によれば、確かに誘電率が高
く、X8R特性を満足し、還元性雰囲気中での焼成は可
能である。
【0018】しかしながら、上記出願の誘電体磁器組成
物では、誘電体層をさらに薄層化した場合に、容量温度
特性がX8R特性を満足することが困難であること、お
よび絶縁抵抗の寿命が低下する傾向にあることが本発明
者らにより明らかにされた。容量温度特性に関しては、
特に高温側の容量変化率が増大する傾向にあり、これを
改善することが望まれている。
【0019】また、希土類酸化物のうちランタノイド系
列元素を含むものは高価であり、同特性を得られる安価
な置換元素の探索が進められてきた。
【0020】さらに、回路の集積化・高密度化の傾向
は、近年ますます強まり、小型で大容量のコンデンサの
需要が増加していることを受け、内部の誘電体層をより
一層薄層化することが求められている。
【0021】本発明の目的は、比誘電率が高く、絶縁抵
抗の寿命を維持でき、容量温度特性がEIA規格のX8
R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)
を満足し、還元性雰囲気中での焼成が可能である誘電体
磁器組成物を提供することである。また本発明は、この
ような誘電体磁器組成物を用い、小型・大容量化を実現
でき、特に薄層小型化対応の積層セラミックコンデンサ
などの電子部品を提供することも目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウ
ムを含む主成分と、AEの酸化物(ただし、AEはM
g、Ca、BaおよびSrから選択される少なくとも1
種)を含む第1副成分と、Rの酸化物(ただし、Rは
Y、Dy、HoおよびErから選択される少なくとも1
種)を含む第2副成分とを有し、前記主成分100モル
に対する各副成分の比率が、第1副成分:0モル<第1
副成分<0.1モル、第2副成分:1モル<第2副成分
<7モルである。
【0023】好ましくは、前記主成分100モルに対す
る各副成分の比率が、第1副成分:0.01モル≦第1
副成分<0.1モル、第2副成分:1モル<第2副成分
≦6モルである。
【0024】好ましくは、第1副成分のモル数に対する
第2副成分のモル数の比(第2副成分/第1副成分)
が、10<(第2副成分/第1副成分)<500であ
る。好ましくは、CaZrOまたはCaO+ZrO
を含む第6副成分をさらに有し、前記主成分100
モルに対する前記第6副成分の比率が、0モル<第6副
成分<5モルである。
【0025】好ましくは、MxSiO(ただし、M
は、Ba、Ca、Sr、Li、Bから選択される少なく
とも1種であり、M=Baの場合にはx=1、M=Ca
の場合にはx=1、M=Srの場合にはx=1、M=L
iの場合にはx=2、M=Bの場合にはx=2/3であ
る)を含む第3副成分をさらに有し、前記主成分100
モルに対する前記第3副成分の比率が、2モル≦第3副
成分≦10モルである。
【0026】好ましくは、MnOおよびCr
の少なくとも1種を含む第4副成分をさらに有し、前記
主成分100モルに対する前記第4副成分の比率が、0
モル<第4副成分≦0.5モルである。
【0027】好ましくは、V、MoO
よびWOから選択される少なくとも1種を含む第5
副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する前
記第5副成分の比率が、0.01モル≦第5副成分≦
0.5モルである。
【0028】本発明に係る電子部品は、誘電体層を有す
る電子部品であれば、特に限定されず、たとえば誘電体
層と共に内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ
素子本体を有する積層セラミックコンデンサ素子であ
る。本発明では、前記誘電体層が、上記いずれかの誘電
体磁器組成物で構成してある。内部電極層に含まれる導
電材としては、特に限定されないが、たとえばNiまた
はNi合金である。本発明では、特に誘電体層の厚み
が、10μm未満程度であるときに、その効果が大き
い。
【0029】
【発明の作用および効果】本発明に係る誘電体磁器組成
物は、比誘電率が高く、容量温度特性がEIA規格のX
8R特性を満足する。このため、本発明の誘電体磁器組
成物を用いたセラミックチップコンデンサなどの電子部
品は、自動車のエンジンルームのような高温下に晒され
る様な環境でも好適に使用できる。また、本発明に係る
誘電体磁器組成物は、蒸発飛散するようなPb、Bi、
Znのような元素を含有しない。このため、還元雰囲気
中での焼成が可能である。
【0030】すなわち、本発明によれば、比誘電率が高
く、絶縁抵抗の寿命を維持でき、容量温度特性がEIA
規格のX8R特性を満足し、還元性雰囲気中での焼成が
可能である誘電体磁器組成物を提供できる。本発明の誘
電体磁器組成物を用いてセラミックチップコンデンサな
どの電子部品を製造するに際し、内部電極としてNiお
よびNi合金などの卑金属を使用することが可能とな
り、電子部品の低コスト化が実現する。しかも、誘電体
磁器組成物を還元雰囲気中で焼成しても、得られる電子
部品は、X8R特性を満足し、直流電界印加による容量
エージング特性が良好(=容量の経時変化が小さい)で
あり、絶縁抵抗の劣化が小さく、信頼性にも優れる。す
なわち、本発明の誘電体磁器組成物で構成された誘電体
層を有する積層セラミックコンデンサなどの電子部品
は、自動車の電子装置のように厳しい環境下で使用され
る各種機器内において安定した動作が可能であるため、
適用される機器の信頼性を著しく向上させることができ
る。以上より、本発明の誘電体組成は、誘電体層の薄層
化に伴う高温領域の温度変化率の悪化を抑制する手法と
しても効果が期待できる。
【0031】さらに、本発明に係る誘電体磁器組成物
は、絶縁抵抗の寿命が長く、さらにDCバイアス特性
(誘電率の直流電圧印加依存性)およびTCバイアス特
性(直流電圧印加時の容量温度特性)が安定している。
【0032】さらにまた、本発明に係る誘電体磁器組成
物は、Pb,Biなどの有害物質を含有しないため、使
用後の廃棄、処分などによる環境への悪影響が小さい。
【0033】したがって、本発明の誘電体磁器組成物を
用いることで、優れた特性を有する積層セラミックコン
デンサなどの電子部品を提供することが容易になる。ま
た、本発明に係る誘電体磁器組成物を用いれば、誘電体
層を薄層化しても、X8R特性を満足することができ、
しかも絶縁抵抗の寿命の低下を効果的に防止できる。し
たがって、積層セラミックコンデンサなどの電子部品で
は、小型・大容量化を実現でき、特にさらなる薄層小型
化に対応させることが容易である。このため、高集積回
路への実装がより容易となる。従来の誘電体磁器組成物
では、一層あたりの誘電体層の薄層化に伴い、特に高温
側の容量温度特性が悪化する傾向があった。すなわち高
温側の容量温度変化率カーブが時計回りの方向に向かう
傾向があった。これに対し、本発明によれば、高温側の
容量温度変化率カーブを反時計回りの方向に向かわせる
ことができる。この現象を、X7R特性を満たす電子部
品において応用すれば、従来よりも、一層あたりの誘電
体層のさらなる薄層化を実現することができる。
【0034】本発明に係る電子部品としては、特に限定
されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チ
ップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、
チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子
部品などが例示される。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。
【0036】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラ
ミックコンデンサの断面図、図2は実施例2のコンデン
ササンプルの容量温度特性を表すグラフ、図3は実施例
3のコンデンササンプルのDCバイアス特性を示すグラ
フ、図4は実施例5のコンデンササンプルの容量温度特
性を表すグラフ、図5は実施例5において、第2副成分
の含有量とキュリー温度との関係を示すグラフ、図6は
実施例7のコンデンササンプルの容量温度特性を表すグ
ラフ、図7は実施例7のコンデンササンプルのDCバイ
アス特性を示すグラフである。
【0037】本実施形態では、電子部品として図1に示
される積層セラミックコンデンサ1を例示し、その構造
および製造方法を説明する。
【0038】積層セラミックコンデンサ 図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る電子
部品としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層
2と内部電極層3とが交互に積層されたコンデンサ素子
本体10を有する。コンデンサ素子本体10の両端部に
は、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層
3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コ
ンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通
常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限は
なく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、
(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×
(0.3〜1.9mm)程度である。
【0039】内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子
本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するよう
に積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子
本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電
極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成
する。
【0040】誘電体層 誘電体層2は、本発明に係る誘電体磁器組成物を含有す
る。
【0041】本発明の誘電体磁器組成物は、チタン酸バ
リウム(好ましくは、組成式Ba TiO2+m で表
され、mが0.995≦m≦1.010であり、Baと
Tiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010であ
る)を含む主成分と、AEの酸化物(ただし、AEはM
g、Ca、BaおよびSrから選択される少なくとも1
種)を含む第1副成分と、Rの酸化物(ただし、Rは
Y、Dy、HoおよびErから選択される少なくとも1
種)を含む第2副成分とを有する。
【0042】前記主成分100モルに対する各副成分の
比率は、第1副成分:0モル<第1副成分<0.1モ
ル、第2副成分:1モル<第2副成分<7モルであり、
好ましくは、第1副成分:0.01モル≦第1副成分<
0.1モル、第2副成分:1モル<第2副成分≦6モル
であり、より好ましくは、第1副成分:0.04モル≦
第1副成分≦0.08モル、第2副成分:3モル≦第2
副成分≦5モルである。
【0043】前記第1副成分のモル数に対する前記第2
副成分のモル数の比(第2副成分/第1副成分)は、好
ましくは10<(第2副成分/第1副成分)<500、
より好ましくは37.5≦(第2副成分/第1副成分)
≦250、さらに好ましくは37.5≦(第2副成分/
第1副成分)≦125である。
【0044】なお、第2副成分の上記比率は、R単独の
モル比ではなく、Rの酸化物のモル比である。すなわ
ち、たとえば第2副成分としてYの酸化物を用いた場
合、第2副成分の比率が1モルであることは、Yの比率
が1モルなのではなく、Y の比率が1モルで
あることを意味する。
【0045】本明細書では、主成分および各副成分を構
成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化
物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであって
もよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構
成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成
の酸化物に換算して求める。
【0046】上記各副成分の含有量の限定理由は以下の
とおりである。第1副成分(AEの酸化物)は、容量温
度特性を平坦化させる効果を示す。第1副成分の含有量
が少なすぎると、この効果が不十分となり、容量温度特
性は全般的に悪化する。一方、第1副成分の含有量が本
発明の範囲を超えて多くなると、高温側の容量温度特性
が再び悪化する傾向がある。
【0047】第2副成分(Rの酸化物)は、キュリー温
度を高温側へシフトさせる効果と、容量温度特性を平坦
化させる効果とを示す。第2副成分の含有量が少なすぎ
ると、このような効果が不十分となり、容量温度特性が
悪くなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性
が急激に悪化する傾向にある。
【0048】特に、第1副成分の含有量を可能な限り少
なくしつつ、第2副成分の含有量を多くすることによ
り、容量温度特性を一層平坦化できるメリットがある。
【0049】第1副成分のモル数に対する第2副成分の
モル数の比(第2副成分/第1副成分)が小さすぎる
と、容量温度特性が悪くなってしまい、X8R特性を満
足できない。一方、これらの比が大きすぎると、焼結性
が悪化する傾向にある。本発明の誘電体磁器組成物に
は、CaZrOまたはCaO+ZrOを含む第
6副成分がさらに添加してあることが好ましい。第6副
成分は、キュリー温度を高温側にシフトさせるほか、容
量温度特性の平坦化、絶縁抵抗(IR)の向上、破壊電
圧の向上、焼成温度を低下させる、などの効果を有す
る。前記主成分100モルに対する前記第6副成分の比
率は、0モル<第6副成分<5モルが好ましく、より好
ましくは0モル<第6副成分≦3モルである。第6副成
分の添加量が多すぎると、IR寿命が著しく低下し、容
量温度特性が悪化する傾向がある。CaZrOの添
加形態は特に限定されず、CaOなどのCaから構成さ
れる酸化物、CaCOなどの炭酸塩、有機化合物、
CaZrOなどが挙げられる。CaとZrの比率は
特に限定されず、主成分に含まれるチタン酸バリウムに
固溶させない程度に決定すればよいが、Zrに対するC
aのモル比(Ca/Zr)は、好ましくは0.5〜1.
5,より好ましくは0.8〜1.5、特に好ましくは
0.9〜1.1である。
【0050】本発明の誘電体磁器組成物には、MxSi
(ただし、Mは、Ba、Ca、Sr、Li、Bか
ら選択される少なくとも1種であり、M=Baの場合に
はx=1、M=Caの場合にはx=1、M=Srの場合
にはx=1、M=Liの場合にはx=2、M=Bの場合
にはx=2/3である)を含む第3副成分がさらに添加
してあることが好ましい。第3副成分は、主として焼結
助剤として作用するが、薄層化した際の初期絶縁抵抗の
不良率を改善する効果を有する。
【0051】前記主成分100モルに対する前記第3副
成分の比率は、2モル≦第3副成分≦10モルが好まし
く、より好ましくは2モル≦第3副成分≦6モルであ
る。
【0052】第3副成分(MxSiO)の含有量が
少なすぎると、容量温度特性を満足できない傾向があ
り、また絶縁抵抗が悪化する傾向があり、特に焼結性が
著しく悪くなる傾向にある。一方、含有量が多すぎる
と、絶縁抵抗の寿命特性が不十分となり、誘電率の急激
な低下が起こる傾向がある。
【0053】なお、第3副成分中における各酸化物の構
成比率は任意である。
【0054】本発明の誘電体磁器組成物には、MnOお
よびCrの少なくとも1種を含む第4副成分
がさらに添加してあることが好ましい。第4副成分は、
焼結を促進する効果と、IRを高くする効果と、IR寿
命を向上させる効果とを示す。前記主成分100モルに
対する前記第4副成分の比率が、0モル<第4副成分≦
0.5モルが好ましく、より好ましくは0.1モル≦第
4副成分≦0.5モルである。第4副成分(MnOおよ
びCr)の含有量が多すぎると、容量温度特
性に悪影響を与え、IR寿命を悪化させるおそれがあ
る。なお、第4副成分中における各酸化物の構成比率は
任意である。
【0055】本発明の誘電体磁器組成物には、V
、MoOおよびWOから選択される少なく
とも1種を含む第5副成分がさらに添加してあることが
好ましい。第5副成分は、キュリー温度以上での容量温
度特性を平坦化する効果と、IR寿命を向上させる効果
とを示す。前記主成分100モルに対する前記第5副成
分の比率が、0.01モル≦第5副成分≦0.5モルが
好ましく、より好ましくは0.01モル≦第5副成分≦
0.2モルである。第5副成分(V,MoO
およびWO)の含有量が少なすぎると、上述し
た効果が不十分となる傾向がある。一方、含有量が多す
ぎると、IRが著しく低下する。なお、第5副成分中に
おける各酸化物の構成比率は任意である。
【0056】本発明の誘電体磁器組成物中には、上記各
酸化物のほか、Alを含む第6副成分がさら
に添加してあってもよい。Alは容量温度特
性にあまり影響を与えず、焼結性、IRおよびIR寿命
を改善する効果を示す。ただし、Alの含有
量が多すぎると焼結性が悪化してIRが低くなるため、
第6副成分の比率は、主成分100モルに対して好まし
くは1モル以下、さらに好ましくは、誘電体磁器組成物
全体の1モル以下である。
【0057】なお、Sr,ZrおよびSnの少なくとも
1種が、ペロブスカイト構造を構成する主成分中のBa
またはTiを置換している場合、キュリー温度が低温側
にシフトするため、125℃以上での容量温度特性が悪
くなる。このため、これらの元素を含むBaTiO
[例えば(Ba,Sr)TiO]を主成分として用
いないことが好ましい。ただし、不純物として含有され
るレベル(誘電体磁器組成物全体の0.1モル%程度以
下)であれば、特に問題はない。
【0058】本発明の誘電体磁器組成物の平均結晶粒径
は、特に限定されず、誘電体層の厚さなどに応じて例え
ば0.1〜3μmの範囲から適宜決定すればよい。容量
温度特性は、誘電体層が薄いほど悪化し、また、平均結
晶粒径を小さくするほど悪化する傾向にある。このた
め、本発明の誘電体磁器組成物は、平均結晶粒径を小さ
くする必要がある場合に、具体的には、平均結晶粒径が
0.1〜0.5μmである場合に特に有効である。ま
た、平均結晶粒径を小さくすれば、IR寿命が長くな
り、また、直流電界下での容量の経時変化が少なくなる
ため、この点からも平均結晶粒径は上記のように小さい
ことが好ましい。
【0059】本発明の誘電体磁器組成物のキュリー温度
(強誘電体から常誘電体への相転移温度)は、組成を選
択することにより変更することができるが、X8R特性
を満足するためには、好ましくは120℃以上、より好
ましくは123℃以上とする。なお、キュリー温度は、
DSC(示差走査熱量測定)などによって測定すること
ができる。
【0060】本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層セ
ラミックコンデンサは、80℃以上、特に125〜15
0℃の環境下で使用される機器用電子部品として用いて
好適である。そして、このような温度範囲において、容
量の温度特性がEIA規格のR特性を満足し、さらに、
X8R特性も満足する。また、EIA規格のX7R特性
(−55〜125℃、ΔC/C=±15%以内)も同時
に満足することが可能である。
【0061】積層セラミックコンデンサでは、誘電体層
に、通常、0.02V/μm以上、特に0.2V/μm
以上、さらには0.5V/μm以上、一般に5V/μm
程度以下の交流電界と、これに重畳して5V/μm以下
の直流電界とが加えられるが、このような電界が加わっ
ても、容量の温度特性は安定している。
【0062】内部電極層 内部電極層3に含有される導電材は特に限定されない
が、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑
金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属
としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金と
しては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1
種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi
含有量は95重量%以上であることが好ましい。
【0063】なお、NiまたはNi合金中には、P等の
各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよ
い。内部電極層の厚さは用途等に応じて適宜決定すれば
よいが、通常、0.5〜5μm、特に0.5〜2.5μ
m程度であることが好ましい。
【0064】外部電極 外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、
本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いる
ことができる。外部電極の厚さは用途等に応じて適宜決
定されればよいが、通常、10〜50μm程度であるこ
とが好ましい。
【0065】積層セラミックコンデンサの製造方法 本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコン
デンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、
ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリー
ンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷
または転写して焼成することにより製造される。以下、
製造方法について具体的に説明する。
【0066】まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電
体磁器組成物粉末を準備し、これを塗料化して、誘電体
層用ペーストを調整する。
【0067】誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物
粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であって
もよく、水系の塗料であってもよい。
【0068】誘電体磁器組成物粉末としては、上記した
酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができる
が、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物と
なる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸
塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合
して用いることもできる。誘電体磁器組成物粉末中の各
化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物
の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状
態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、通常、平均粒径
0.1〜3μm程度である。
【0069】有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中
に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダ
は特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチ
ラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよ
い。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法や
シート法など、利用する方法に応じて、テルピネオー
ル、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種
有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0070】また、誘電体層用ペーストを水系の塗料と
する場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶
解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよ
い。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定さ
れず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水
溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0071】内部電極層用ペーストは、上記した各種誘
電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記
した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネ
ート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製す
る。外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペー
ストと同様にして調製すればよい。
【0072】上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含
有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バイン
ダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度と
すればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各
種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添
加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、1
0重量%以下とすることが好ましい。
【0073】印刷法を用いる場合、誘電体層用ペースト
および内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積
層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグ
リーンチップとする。
【0074】また、シート法を用いる場合、誘電体層用
ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内
部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグ
リーンチップとする。
【0075】焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処
理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の
導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材
としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バイ
ンダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜10Pa
とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満である
と、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が前記範
囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0076】また、それ以外の脱バインダ条件として
は、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好
ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは
180〜400℃、より好ましくは200〜350℃、
温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ま
しくは2〜20時間とする。また、焼成雰囲気は、空気
もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰
囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとH
との混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
【0077】グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電
極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定され
ればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を
用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−7〜1
−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲
未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こ
し、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記
範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0078】また、焼成時の保持温度は、好ましくは1
100〜1400℃、より好ましくは1200〜138
0℃、さらに好ましくは1260〜1360℃である。
保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分とな
り、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による
電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量
温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすく
なる。
【0079】これ以外の焼成条件としては、昇温速度を
好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは20
0〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5
〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ま
しくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜
300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲
気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえ
ば、NとHとの混合ガスを加湿して用いること
が好ましい。
【0080】還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデン
サ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニー
ルは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これに
よりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼
性が向上する。
【0081】アニール雰囲気中の酸素分圧は、0.1P
a以上、特に0.1〜10Paとすることが好ましい。
酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困
難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾
向にある。
【0082】アニールの際の保持温度は、1100℃以
下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保
持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分
となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりや
すい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極
層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が
誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、I
Rの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、ア
ニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよ
い。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場
合、保持温度は最高温度と同義である。
【0083】これ以外のアニール条件としては、温度保
持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜
10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時
間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。ま
た、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿し
たNガス等を用いることが好ましい。
【0084】上記した脱バインダ処理、焼成およびアニ
ールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するに
は、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、
水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0085】脱バインダ処理、焼成およびアニールは、
連続して行なっても、独立に行なってもよい。これらを
連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰
囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して
焼成を行ない、次いで冷却し、アニールの保持温度に達
したときに雰囲気を変更してアニールを行なうことが好
ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際
しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあ
るいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲
気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、アニ
ール時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあ
るいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続け
ることが好ましい。また、アニールに際しては、N
ガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更
してもよく、アニールの全過程を加湿したNガス雰
囲気としてもよい。
【0086】上記のようにして得られたコンデンサ素子
本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより
端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写
して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペース
トの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの
混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程
度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電
極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。このよ
うにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサ
は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、
各種電子機器等に使用される。
【0087】以上、本発明の実施形態について説明して
きたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0088】たとえば、上述した実施形態では、本発明
に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示
したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミッ
クコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成
物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも
良い。
【0089】
【実施例】次に、本発明の実施の形態をより具体化した
実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。ただ
し、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでは
ない。
【0090】実施例1 コンデンササンプルの作製 まず、誘電体材料を作製するための出発原料として、そ
れぞれ平均粒径0.1〜1μmの主成分原料(BaTi
)および第1〜第5副成分原料を用意した。Mg
OおよびMnOの原料には炭酸塩(第1副成分:MgC
、第4副成分:MnCO)を用い、他の原料
には酸化物(第2副成分:Y、第3副成分:
(Ba0.6 Ca0.4 )SiO、第5副成
分:V)を用いた。第2副成分である(Ba
0.6 Ca0.4 )SiOは、BaCO,C
aCOおよびSiOをボールミルにより16時
間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で焼成し、
さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕すること
により製造した。
【0091】なお、主成分であるBaTiOは、B
aCOおよびTiOをそれぞれ秤量し、ボール
ミルを用いて約16時間湿式混合し、これを乾燥したの
ち、1100℃の温度で空気中にて焼成したものをボー
ルミルにより約16時間湿式粉砕して作製したものを用
いても同様の特性が得られた。また、主成分であるBa
TiOは、水熱合成粉、蓚酸塩法などによって作製
されたものを用いても同様の特性が得られた。
【0092】これらの原料を、焼成後の組成が、主成分
であるBaTiO100モルに対して、表1および
表2に示すものとなるように配合して、ボールミルによ
り16時湿式混合し、乾燥させて誘電体材料とした。次
いで、得られた乾燥後の誘電体原料100重量部と、ア
クリル樹脂4.8重量部と、塩化メチレン40重量部
と、酢酸エチル20重量部と、ミネラルスピリット6重
量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合してペ
ースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0093】次いで、平均粒径0.2〜0.8μmのN
i粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロー
ス8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解した
もの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部と
を3本ロールにより混練してペースト化し、内部電極層
用ペーストを得た。
【0094】次いで、平均粒径0.5μmのCu粒子1
00重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8
重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したも
の)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを
混練してペースト化し、外部電極用ペーストを得た。
【0095】次いで、上記誘電体層用ペーストを用いて
PETフィルム上に、厚さ4.5μmのグリーンシート
を形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷したの
ち、PETフィルムからグリーンシートを剥離した。次
いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート
(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、
圧着して、グリーンチップを得た。内部電極を有するシ
ートの積層数は4層とした。
【0096】次いで、グリーンチップを所定サイズに切
断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを行って、
積層セラミック焼成体を得た。
【0097】脱バインダ処理は、昇温時間15℃/時
間、保持温度350℃、保持時間2時間、加湿したN
+H混合ガス雰囲気(酸素分圧は10−31
Pa)の条件で行った。
【0098】焼成は、昇温速度200℃/時間、保持温
度1260〜1340℃、保持時間2時間、冷却速度3
00℃/時間、加湿したN+H混合ガス雰囲気
(酸素分圧は10−6Pa)の条件で行った。
【0099】アニールは、保持温度1050℃、温度保
持時間2時間、冷却速度300℃/時間、窒素雰囲気の
条件で行った。なお、脱バインダー処理および焼成の際
の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウェッタ
ーを用いた。
【0100】次いで、積層セラミック焼成体の端面をサ
ンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを
端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中におい
て、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成し、
図1に示される構成の積層セラミックコンデンサのサン
プルを得た。
【0101】このようにして得られた各サンプルのサイ
ズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内
部電極層に挟まれた誘電体層の数は4、その厚さは3μ
mであり、内部電極層の厚さは1.5μmであった。
【0102】各サンプルについて下記特性の評価を行っ
た。
【0103】比誘電率(εr)、誘電損失(tan
δ)、絶縁抵抗(IR) コンデンサのサンプルに対し、LCRメータにより、周
波数1kHz,入力信号レベル1Vrmsの条件下で、
静電容量および誘電損失(単位は%)を測定した。そし
て、得られた静電容量、電極寸法および電極間距離か
ら、比誘電率(単位なし)を算出した。その後、絶縁抵
抗計((株)アドバンテスト社製R8340A)を用い
て、25℃において、直流50Vを1分間印加し、その
ときの絶縁抵抗(IR、単位はΩcm)を測定した。結
果を表1および表2に示す。
【0104】静電容量の温度特性 コンデンサのサンプルに対し、−55〜160℃の温度
範囲で静電容量を測定し、+25℃での静電容量に対す
る−55℃、+125℃および150℃での静電容量の
変化率(△C/C)を算出し、結果を表1および表2に
示した。また、X8R特性(−55〜150℃、ΔC/
C=±15%以内)を満足するかどうかを調べ、特に好
条件で満足するもの(△C/C=±14.8%)を◎、
満足するもの(△C/C=±14.9%〜±15.0
%)を○、満足しないものを×とし、表1および表2に
示した。
【0105】直流電界下でのIR寿命 コンデンサのサンプルに対し、200℃にて15V/μ
mの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗が1MΩ以下に
なるまでの時間を寿命時間とし、表1および表2に示し
た。
【0106】直流絶縁破壊強度 コンデンサのサンプルに対し、直流電圧を100V/s
ec.の昇温速度で印加し、100mAの漏洩電流を検
知するか、または素子の破壊時の電圧(直流破壊電圧、
単位はV)を測定し、直流絶縁破壊強度を評価した。結
果を表1および表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】表1(表2〜11も含む)中、絶縁抵抗
(IR)の数値において、「mE+n」は「m×10
+n」を意味する。
【0110】表1および表2に示すように、一層あたり
の誘電体層の厚みを3μmと特に薄層化した場合におい
て、第1副成分の含有量が少なすぎると、容量温度変化
率が大きくなり、X8R特性を満足することができない
ことが確認できた。一方、誘電体層を薄層化した場合
に、第1副成分の含有量が多すぎると、特に高温側の容
量温度特性が悪化し、X8R特性を満足できない傾向が
あることが確認できた。したがって、これら表1および
表2によれば、第1副成分の添加量を0.1モル未満
(ただし、0モル超)と少なくすることにより、特に薄
層化した場合のX8R特性改善に効果があることが確認
できた。
【0111】また表1および表2に示すように、第1副
成分のモル数に対する第2副成分のモル数の比(第2副
成分/第1副成分)が小さすぎても大きすぎても、容量
温度特性が悪くなってしまい、X8R特性を満足できな
い傾向があることが確認できた。
【0112】本実施例のサンプルは、第1副成分のモル
数に対する第2副成分のモル数の比(第2副成分/第1
副成分)が、10<(第2副成分/第1副成分)<50
0の範囲に入っており、いずれも良好な結果を示した。
【0113】本実施例のサンプルは、X8R特性を満足
し、しかも、比誘電率および絶縁抵抗が十分に高く、か
つ、誘電損失も問題ないことが判明した。なお、本実施
例のサンプルでは、X8R特性のほか、前記したEIA
規格のX7R特性も満足していた。
【0114】実施例2 第1副成分の含有量を、0モル(試料6)、0.08モ
ル(試料3)、1.0モル(試料1−1)、2.06モ
ル(試料1−2)と変化させた以外は、実施例1の試料
3と同様にしてコンデンササンプルを作製した。
【0115】これらのコンデンササンプルに対し、−5
5〜160℃の温度範囲で静電容量を測定し、+25℃
での静電容量に対する各温度での静電容量の変化率(△
C/C)を算出し、これらをプロットしたものを図2に
示した。図2に示すように、第1副成分の含有量が減少
するにつれて、高温側の容量温度変化率が小さくなるこ
とが確認できた。すなわち、第1副成分の含有量を減少
させることで、グラフ上において、高温側の容量温度変
化率のプロット点を反時計回りに向かわせることができ
ることが確認できた。
【0116】実施例3 第1副成分の含有量を、0.02モル(試料6−1)、
0.04モル(試料4)、0.08モル(試料3)と変
化させた以外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデ
ンササンプルを作製した。これらのコンデンササンプル
について、DCバイアス特性(誘電率の直流電圧印加依
存性)を評価した。
【0117】DCバイアス特性(誘電率の直流電圧印加
依存性) DCバイアス特性は、コンデンサのサンプルに対し、一
定温度(25℃)において、各サンプルに徐々に直流電
圧をかけていった場合の静電容量の変化(△C/C)を
測定し、結果を図3に示した。図3に示すように、第1
副成分の含有量が本発明の範囲では、高い電圧をかけて
も静電容量が減少しにくく、安定したDCバイアス特性
を有することが確認された。
【0118】実施例4 第2副成分の含有量を、表3に示すように変化させた以
外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプ
ルを作製した。これらのコンデンササンプルについて、
実施例1と同様な測定を行った。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】表3に示すように、第2副成分の含有量が
少なすぎると、キュリー温度を高温側へシフトさせる効
果と、容量温度特性を平坦化させる効果とが不十分とな
り、容量温度特性が悪くなってしまう。一方、第2副成
分の含有量が多すぎると、焼結性が急激に悪化する傾向
にあった。
【0121】実施例5 第2副成分の含有量を、1.5モル(試料18)、2.
1モル(試料18−1)、2.5モル(試料18−
2)、3.0モル(試料18−3)、3.5モル(試料
16)と変化させた以外は、実施例1の試料3と同様に
してコンデンササンプルを作製した。
【0122】これらのコンデンササンプルについて、静
電容量の変化率を測定し、結果を図4に示した。図4に
は、X8R特性を満足する矩形範囲を併せて記載した。
静電容量の測定には、LCRメータを用い、測定電圧は
1Vとした。図4に示すように、第2副成分の含有量が
増えるにつれて、容量温度変化率が平坦化されることが
確認できた。
【0123】また、コンデンササンプル(試料16,1
8−1,18)について、第2副成分(Y
の含有量とキュリー温度との関係を図5に示した。キュ
リー温度(Tc)は、DSC(示差走査熱量測定)によ
り吸熱ピークを測定して求めた。図5に示すように、第
2副成分の含有量が増加するに従って、キュリー温度が
高温側へシフトすることが確認できた。その結果、図4
に示すように、容量温度特性の改善(平坦化)が認めら
れることが確認できた。
【0124】実施例6 第1副成分の種類を、表4に示すように変化させた以外
は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプル
を作製した。これらのコンデンササンプルについて、実
施例1と同様な測定を行った。結果を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】表4に示すように、第1副成分の種類が変
わっても、ほぼ同等の特性が得られるが、特にMg酸化
物が、X8R特性を保持しながら、IR寿命の改善に効
果的であることが確認できた。
【0127】実施例7 第2副成分の種類を、表5に示すように変化させた以外
は、実施例1の試料9と同様にしてコンデンササンプル
を作製した。これらのコンデンササンプルについて、実
施例1と同様な測定を行った。結果を表5に示す。
【0128】
【表5】
【0129】表5に示すように、第2副成分の種類が変
わっても、ほぼ同等の特性が得られるが、特にY酸化物
とHo酸化物とが、X8R特性を保持しながら、IR寿
命の改善に効果的であることが確認できた。
【0130】また、コンデンササンプル(試料9,24
〜26)について、第2副成分(酸化物換算で3.5モ
ル)の種類を変化させた場合の容量温度特性を、図6に
示した。図6には、X8R特性を満足する矩形範囲を併
せて記載した。静電容量の測定には、LCRメータを用
い、測定電圧は1Vとした。図6に示すように、Y、D
y、HoまたはErの中でも、特にYを含有する場合
に、容量温度特性がより平坦化することが確認できた。
【0131】さらに、コンデンサのサンプル(試料9,
24〜26)を用い、DCバイアス特性(誘電率の直流
電圧印加依存性)を評価した。DCバイアス特性は、実
施例3と同様にして静電容量の変化(△C/C)を測定
し、結果を図7に示した。図7に示すように、第2副成
分の種類が本発明の範囲では、高い電圧をかけても静電
容量が減少しにくく、安定したDCバイアス特性を有す
ることが確認された。実施例7−1 第6副成分の含有量を、表5−1に示すように変化させ
た以外は、実施例4の試料14−1と同様にしてコンデ
ンササンプルを作製した。これらのコンデンササンプル
について、実施例1と同様な測定を行った。結果を表5
−1に示す。なお、第6副成分であるCaZrO
は、CaCOおよびZrOをボールミルに
より16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃にて空気
中で焼成し、さらにボールミルにより24時間湿式粉砕
することにより製造した。
【表5−1】 表5−1に示すように、第6副成分の添加により、容量
温度特性の平坦化、絶縁抵抗(IR)の向上、破壊電圧
の向上、焼成温度を低下させる、などの各効果が得られ
ることが確認できた。また、第6副成分の含有量が多す
ぎると、IR寿命が著しく低下し、特に高温側の容量温
度特性が悪化することが確認できた。
【0132】実施例8 第3副成分の含有量を、表6に示すように変化させた以
外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプ
ルを作製した。これらのコンデンササンプルについて、
実施例1と同様な測定を行った。結果を表6に示す。
【0133】
【表6】
【0134】表6に示すように、第3副成分の含有量が
少なすぎると、容量温度特性を満足できず、IRおよび
IR寿命が悪化する傾向があることが確認できた。ま
た、焼結性が不十分であることも確認できた。焼結性が
不十分であると、誘電損失、比誘電率、IR寿命などの
特性が低くなるほか、耐湿性や強度も不十分となる。な
お、焼成温度をさらに高くすることによって焼結性を向
上させることは可能であるが、1360℃を超えるよう
な高温で焼成した場合、内部電極層の途切れや誘電体磁
器組成物の還元が生じやすくなってしまう。一方、第3
副成分の含有量が多すぎると、比誘電率およびIR寿命
が低下する傾向があることが確認できた。
【0135】実施例9 第3副成分のMx(請求項3参照)を、表7に示すよう
に、Ba(BaSiO)、Ba0.6 +Sr
0.4 ((Ba0.6 Sr0.4 )SiO
と変化させた以外は、実施例1の試料3(第3副成分:
(Ba0.6Ca0.4)SiO)と同様にしてコ
ンデンササンプルを作製した。これらのコンデンササン
プルについて、実施例1と同様な測定を行った。結果を
表7に示す。
【0136】
【表7】
【0137】表7に示すように、第3副成分の種類が変
わっても、ほぼ同等の特性が得られるが、特に(Ba
0.6+Ca0.4)の組み合わせが、X8R特性を満
足しつつ、IR寿命の改善に有効であることが確認でき
た。
【0138】実施例10 第4副成分の含有量を、表8に示すように変化させた以
外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプ
ルを作製した。これらのコンデンササンプルについて、
実施例1と同様な測定を行った。結果を表8に示す。
【0139】
【表8】
【0140】表8に示すように、第4副成分の含有量が
多すぎると、IR寿命および高温側の容量温度特性に悪
影響を与える傾向があることが確認できた。
【0141】実施例11 第4副成分の種類を、表9に示すように変化させた以外
は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプル
を作製した。これらのコンデンササンプルについて、実
施例1と同様な測定を行った。結果を表9に示す。
【0142】
【表9】
【0143】表9に示すように、第4副成分の種類が変
わっても、ほぼ同等の特性が得られるが、特にMnの場
合に、比誘電率、IRおよび直流破壊電圧の特性改善に
効果的であることが確認できた。
【0144】実施例12 第5副成分の含有量を、表10に示すように変化させた
以外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササン
プルを作製した。これらのコンデンササンプルについ
て、実施例1と同様な測定を行った。結果を表10に示
す。
【0145】
【表10】
【0146】表10に示すように、第5副成分の含有量
が少なすぎると、キュリー温度以上での容量温度特性を
平坦化できず、かつIR寿命に悪影響を与える傾向があ
ることが確認できた。第5副成分の含有量が多すぎる
と、比誘電率およびIRが低下する傾向があることが確
認できた。
【0147】実施例13 第5副成分の種類を、表11に示すように変化させた以
外は、実施例1の試料3と同様にしてコンデンササンプ
ルを作製した。これらのコンデンササンプルについて、
実施例1と同様な測定を行った。結果を表11に示す。
【0148】
【表11】
【0149】表11に示すように、第5副成分の種類が
変わっても、ほぼ同等の特性が得られるが、特にV酸化
物が比誘電率およびIR寿命の特性改善に効果的である
ことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミ
ックコンデンサの断面図である。
【図2】 図2は実施例2のコンデンササンプルの容量
温度特性を表すグラフである。
【図3】 図3は実施例3のコンデンササンプルのDC
バイアス特性を示すグラフである。
【図4】 図4は実施例5のコンデンササンプルの容量
温度特性を表すグラフである。
【図5】 図5は実施例5において、第2副成分の含有
量とキュリー温度との関係を示すグラフである。
【図6】 図6は実施例7のコンデンササンプルの容量
温度特性を表すグラフである。
【図7】 図7は実施例7のコンデンササンプルのDC
バイアス特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1… 積層セラミックコンデンサ 10… コンデンサ素子本体 2… 誘電体層 3… 内部電極層 4… 外部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野村 武史 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開2001−89231(JP,A) 特開2000−26160(JP,A) 特開2000−34166(JP,A) 特開2000−154055(JP,A) 特開2000−169226(JP,A) 特開2000−185969(JP,A) 特開 平11−260660(JP,A) 特開 平10−25157(JP,A) 特開 昭62−278163(JP,A) 特開 平6−103812(JP,A) 特開 平6−251622(JP,A) 特開 平6−260023(JP,A) 特開 平9−157013(JP,A) 特開2000−143341(JP,A) 特開2000−103668(JP,A) 特開2000−327414(JP,A) 特開2001−135544(JP,A) 特開2001−17970(JP,A) 特開2001−220225(JP,A) 特開2001−39765(JP,A) 特開2000−154057(JP,A) 特開2001−192264(JP,A) 特開 平9−255420(JP,A) 特公 平7−118431(JP,B2) Hiroshi Kishi,et al,「EFFECT OF RARE −EARTH OXIDES ON F ORMATION OF CORE−S HELL STRUCTURES IN BaTiO3」,1999年,第100巻, 第33−40頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 REGISTRY(STN) CA(STN)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン酸バリウムを含む主成分と、 AEの酸化物(ただし、AEはMg、Ca、Baおよび
    Srから選択される少なくとも1種)を含む第1副成分
    と、 Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、HoおよびErか
    ら選択される少なくとも1種)を含む第2副成分とを有
    し、 前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、 第1副成分:0モル<第1副成分<0.1モル、 第2副成分:1モル<第2副成分<7モルである誘電体
    磁器組成物。
  2. 【請求項2】 第1副成分のモル数に対する第2副成分
    のモル数の比(第2副成分/第1副成分)が、10<
    (第2副成分/第1副成分)<500である請求項1に
    記載の誘電体磁器組成物。
  3. 【請求項3】 CaZrOまたはCaO+ZrO
    を含む第6副成分をさらに有し、 前記主成分100モルに対する前記第6副成分の比率
    が、0モル<第6副成分<5モルである請求項1または
    2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. 【請求項4】 MxSiO(ただし、Mは、Ba、
    Ca、Sr、Li、Bから選択される少なくとも1種で
    あり、M=Baの場合にはx=1、M=Caの場合には
    x=1、M=Srの場合にはx=1、M=Liの場合に
    はx=2、M=Bの場合にはx=2/3である)を含む
    第3副成分をさらに有し、 前記主成分100モルに対する前記第3副成分の比率
    が、2モル≦第3副成分≦10モルである請求項1〜3
    のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  5. 【請求項5】 MnOおよびCrの少なくと
    も1種を含む第4副成分をさらに有し、 前記主成分100モルに対する前記第4副成分の比率
    が、0モル<第4副成分≦0.5モルである請求項1〜
    4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  6. 【請求項6】 V、MoOおよびWO
    から選択される少なくとも1種を含む第5副成分を
    さらに有し、 前記主成分100モルに対する前記第5副成分の比率
    が、0.01モル≦第5副成分≦0.5モルである請求
    項1〜5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  7. 【請求項7】 誘電体磁器組成物で構成してある誘電体
    層を有する電子部品であって、 前記誘電体磁器組成物が、チタン酸バリウムを含む主成
    分と、 AEの酸化物(ただし、AEはMg、Ca、Baおよび
    Srから選択される少なくとも1種)を含む第1副成分
    と、 Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、HoおよびErか
    ら選択される少なくとも1種)を含む第2副成分とを有
    し、 前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、 第1副成分:0モル<第1副成分<0.1モル、 第2副成分:1モル<第2副成分<7モルである電子部
    品。
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