JP3354186B2 - 縁かがり縫いミシンの空環返し縫い装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、縁かがり縫いミシンの
空環返し縫い装置に係り、特に前順位の縫製生地から切
断された遊離状空環を次順位の縫製生地の始端に縫い込
む際の返し縫い不良をなくし、常に良好な返し縫いを行
なうことができる縁かがり縫いミシンの空環返し縫い装
置を提供することにある。

【０００２】

【従来の技術】縫製生地の縫い始め部分のほつれを防止
するために、前順位の縫製生地から切断された遊離状空
環を次順位の縫製生地の縫製開始縫目中に縫い込む、返
し縫い装置を備えた縁かがり縫いミシンは種々開示され
ている。しかしながら、このような従来の空環返し縫い
装置には、縫い始めにおいて、生地端がカールするとい
う問題があり、これを回避しようとすると、空環が当該
縫製開始生地端から突出したり、上ルーパ糸のテンショ
ンが緩んだりして不良縫いが生じ、風合のよい返し縫い
（以下、バックタック縫製ということがある）ができな
いという問題があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の問題点を解決し、空環を押え金の裏面でガイ
ドして次順位生地に縫い込むことにより、縫製不良をな
くし、風合の良好なバックタック縫製をすることができ
る縁かがり縫いミシンの空環返し縫い装置を提供するこ
とにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、空環を、次順位の生地の適正位置に縫い込む
縁かがり縫いミシンに設けられた空環切り装置と、縫い
終わりの空環長さを調整するカウンタ装置と、空環を縫
い位置へ導いて安定させるガイド部を有する押え金と、
該押え金の上部に設けられ、空環縫い込み長さを定める
前エアノズルと、前記空環切り装置で所定の長さに切断
された空環を吸引する空環吸込管と、該空環吸込管に吸
引された空環を押圧・固定する空環押え片を備えた空環
押えシリンダと、ミシン停止信号により、前記空環吸込
管を揺動させ、針落ちに対して前進または後退させる第
１空環吸込管駆動用エアシリンダと、前記空環吸込管の
前進、後退位置の中間位置を設定する第２空環吸込管駆
動用エアシリンダと、該第１空環吸込管駆動用エアシリ
ンダと第２空環吸込管駆動用エアシリンダを連結する連
結軸と、該連結軸に設けられ、前記空環吸込管の停止位
置を調節する位置調節ボルトと、縫製運針数とミシンの
回転を定め、空環縫い込み縫製終了後、前記空環押え片
の押圧を解除する一定速カウンタ装置と、前記空環切り
装置および空環吸込管にそれぞれ連結されたチューブ内
のエア圧力を正圧から負圧に変換する二つのベンチュリ
ー装置と、該ベンチュリー装置からのエアの流通経路を
遮断し、エアを前記空環切り装置へ逆流させるエア吹き
返しバルブと、該エア吹き返しバルブの開閉を司るエア
吹き返しソレノイドとを有する縁かがり縫いミシンの空
環返し縫い装置において、前記押え金（６）が、押え本
体（３６）に固定された押え爪（２８）を有し、該押え
爪（２８）の裏面に空環（２６）を縫い位置で安定させ
る溝（２８ｂ）を設けるとともに、表面に空環（２６）
を前記裏面の溝（２８ｂ）に案内するガイド部（２８
ａ）を設けたことを特徴とする

【０００５】

【作用】押え金が、押え本体中央部に固定された押え爪
を有し、該押え爪の裏面に空環を縫い位置で安定させる
溝を設けるとともに、表面に前記空環を前記裏面の溝に
案内するガイド部を設けたことにより、縫製時の空環が
前記押え爪の表面のガイド部を経て裏面の溝に嵌入し、
押え金の裏面でガイドされることになり、空環と上ルー
パ糸とを接触させることなく縫製されるので、上ルーパ
糸のテンションの緩みが防止され、風合のよいバックタ
ック縫製が可能となる。

【０００６】図７は、本発明で使用される典型的な押え
金を示す斜視図である。図において、この押え金６は、
押え本体３６と、該押え本体３６の後端部に固定された
空環押え３７および中央部に固定された押え爪２８とか
ら構成されている。図８は、押え本体３６に固定される
押え爪２８の斜視図、図９は、図８のIX−IX線矢視方向
断面図である。図９において押え爪２８は、その裏面に
溝２８ｂを、また上面に傾斜面からなる空環ガイド部２
８ａを有している。このような構成の押え爪２８および
押え金６を有する本発明の縁かがり縫いミシンの空環返
し縫い装置において、例えば空環吸込装置によって縫い
方向と逆方向に引っ張られた空環２６は、図１０に示す
ように、押え爪２８の空環ガイド部２８ａの傾斜面を滑
り落ち、軌跡２６ａをたどって溝２８ｂに嵌入し、該溝
２８ｂでガイドされ、上ルーパ糸と接触することなく、
縫製生地３５の始端に縫着される。

【０００７】

【実施例】次に、本発明を添付図面によりさらに詳細に
説明する。図１は、本発明の一実施例である縁かがり縫
いミシンの空環返し縫い装置の説明図、図２〜図６は、
図１の部分詳細図である。この装置は、縁かがり縫いミ
シン本体２４に設けられた空環切り装置１と、縫い終わ
りの空環の長さを調整するカウンタ装置の一部としての
受光器３および該受光器３の上方に配置され、受光器３
に光を投光し、該受光器３の明暗の変化により、縫製生
地の有無を検出する投光器１１と、空環を縫い位置へ導
いて安定させ、図示省略した布送り歯と協同して縫製生
地を送る押え金６と、該押え金６の上部に設けられ、空
環縫い込み長さを定める前エアノズル９と、前記空環切
り装置１で所定の長さに切断された空環を吸引する空環
吸込管７と、該空環吸込管７に吸引された空環を押圧・
固定する空環押え片２７（図３参照）を備えた空環押え
シリンダ２１と、ミシン停止信号の指令により、前記空
環吸込管７をロッド３０および回転軸２２を介して揺動
させ、針落ちに対して前進させたり、作業者側に後退さ
せたりする第１空環吸込管駆動用エアシリンダ２３と、
前記空環吸込管７の前進、後退の中間位置を設定する第
２空環吸込管駆動用エアシリンダ３１と、該第１空環吸
込管駆動用エアシリンダ２３と第２空環吸込管駆動用エ
アシリンダ３１を連結する連結軸３２と、該連結軸３２
に設けられた前記空環吸込管７の前進位置または後退位
置を調節する位置調節ボルト３３（図４参照）と、縫製
運針数とミシンの回転を定め、空環縫い込み縫製終了
後、前記空環押え片の押圧を解除する図示省略した一定
速カウンタ装置と、前記空環切り装置１および空環吸込
管７にそれぞれ連結されたビニールパイプ内のエアの正
圧を負圧にそれぞれ変換するベンチュリー１７および２
０と、該ベンチュリー１７からのエアの流通経路を遮断
し、エアを前記空環切り装置１へ逆流させるエア吹き返
しバルブ１９と、該エア吹き返しバルブ１９の開閉を司
るエア吹き返しソレノイド１８とから主として構成され
ている。

【０００８】また、前記押え金６は、押え本体３６と、
その後端部に固定された空環押え３７および中央部に固
定された押え爪２８とからなり（図２参照）、該押え爪
２８には空環ガイド部２８ａおよび押え爪の溝２８ｂが
設けられている。４は針板、５はクロスプレート、１０
は空環吸込管７と空環押えシリンダ２１との連結部を構
成する空環押えシリンダ取付台、１２は前記押え金６を
押圧する押えヒンジ、１３は該押えヒンジを支持する押
え腕、１５は針棒、１４は縫い針２９を前記針棒１５に
固定する針止め、８は図示省略した下メスと協同して空
環２６および生地端を切断する上メス、１６は前記投光
器１１を固定する投光器取付台、２５はベンチュリー２
０およびエア吹き返しバルブ１９にそれぞれビニールパ
イプで連結された集塵箱である。

【０００９】本装置は以上のような構成であり、図１１
のタイミングチャートを参照しながらその作用を説明す
る。まず、前順位の生地を縫い終わると受光器３が暗か
ら明となり、空環切り装置１が吸引作用を開始し、図示
省略した糸ゆるめ装置が地縫い縫製より空環２６をソフ
トチェーンにするための糸ゆるめ作用を開始する。する
と予め設定された縫い終わりの空環２６の長さを調整す
るためのカウンタＣの運針までミシンモータが回転し、
前記空環２６が一定の長さになるまで縫われる。空環２
６が一定長さまで縫われると、ミシンモータの回転は停
止し、空環切り装置１の吸引作用も停止する。次いで、
ミシンが停止した信号を受け、第１空環吸込管駆動用エ
アシリンダ２３のロッドが進出を始め（図４参照）、空
環吸込管７が回転軸２２を支点として揺動し、前記空環
吸込管７のノズル先端が針落ち近く（第１位置）に達し
（図６参照）、これと同時に空環吸込管７の吸引が開始
される。このとき、タイマーｇも作動を開始し、該タイ
マーｇで設定された所定の時間だけエア吹き返しソレノ
イド１８に通電され、チューブ内のエアはエア吹き返し
バルブ１９を介して空環切り装置１へ逆流し、空環２６
は空環吸込管７に吸引され易くなる。

【００１０】次いで予め設定されたタイマーｇの時間経
過後、エア吹き返しソレノイド１８はＯＦＦとなり、第
１空環吸込管駆動用エアシリンダー２３、第２空環吸込
管駆動用エアシリンダ３１は各々退入し、空環吸込管７
のノズル先端は揺動範囲の一番手前側（第３位置）まで
後退する（図６参照）。前記第１、第２空環吸込管駆動
用エアシリンダが退入を開始すると同時に空環押えシリ
ンダ２１、図示省略した押え揚げシリンダが作用を開始
し、空環押え片２７が下降し、空環２６を押圧、固定す
る（図３参照）。このとき、押え金６は上昇し、空環２
６は該押え金６に締結されている押え爪２８の空環ガイ
ド部２８ａの傾斜面を滑り、押え爪２８の裏面の溝２８
ｂに嵌入する。次に第２空環吸込管駆動用エアシリンダ
３１が進出し、空環吸い込み管７のノズル先端は上メス
８近傍（第２位置）に移動する（図５参照）。この時点
で、押え金６と針板上面４の間に次順位の縫製生地３５
を、その先端が上メス８のＡ部に届くまで挿入する。生
地が挿入されたことにより受光器３は明から暗となり、
糸ゆるめ続行中の糸ゆるめ装置はタイマーｄの時間経過
後、糸ゆるめ動作を解除し、通常の縫製状態となる。

【００１１】次にミシン駆動用ペダルを踏むと、ミシン
は一定速で回転し、設定されているカウントＨのカウン
ト後、再び第２空環吸込管駆動用エアシリンダ３１が退
入し、図６に示すように空環吸込管７は第３位置に後退
し、縫い始めの生地端にある空環を縫目中に引張り込
む。次にカウントａが完了すると同時に空環押えシリン
ダ２１は上昇し、空環押え片は空環２６の押圧を解放す
る。このとき同時に、カウントｂのカウント終了後、前
エアノズル９がタイマーｅの時間だけ空環２６をメス装
置にエアで吹き付け、該空環２６を切断する。タイマー
ｅがアップした後、タイマーｆの時間だけベンチュリー
２０が作用し、空環吸込管７に吸引エアを送り、残され
た空環２６を吸い込み集塵箱２５へ移送して空環２６の
縫い込みが終了する。

【００１２】本実施例によれば、押え金６に固定された
押え爪２８の上面に空環ガイド部２８ａを、裏面に溝２
８ｂを設けたことにより、前記空環２６は空環ガイド部
２８ａの傾斜面を滑って押え金６（押え爪２８）の裏面
の溝２８ｂに嵌入し、ここでガイドされるので、該空環
２６が上ルーパ糸に引っ掛かることによる弊害、例えば
上ルーパ糸のテンションの緩みを防止することができる
ので、縫い始めから風合の良好なバックタック縫製を行
なうことができる。

【００１３】また本実施例によれば、空環２６をシリン
ダ２１で押圧・固定した状態で空環吸込管７のノズル先
端部を第３位置に後退させ、該空環を押え爪２８の裏面
の溝２８ｂでサポートして縫目中に引張り込む構成とし
たことにより、前記空環２６の左右の揺れが防止でき、
空環２６が針２９に接触することによる弊害、例えば針
の破損を防止することができる。

【００１４】

【発明の効果】本発明によれば、押え金に固定された押
え爪の上面に空環ガイド部を、裏面に空環用の溝を設け
たことにより、前記空環は押え金の裏面でガイドされる
ので、縫製生地のカールや空環の突出をなくすだけでな
く、空環と上ルーパ糸との接触による上ルーパ糸のテン
ションの緩みを防止して風合の良好な縁かがり縫いを行
なうことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す装置の斜視図。

【図２】空環の縫着中を示す部分拡大図および押え爪の
詳細図。

【図３】空環押えシリンダ取付台の断面図で、空環が空
環押え片で押圧されている状態を示す説明図。

【図４】空環を吸引して空環吸込管が中間位置（第２位
置）へ戻ったときの状態を示す図。

【図５】生地が針板の爪先端にあるときの状態を示す説
明図。

【図６】空環を縫い目に引き込んだときの状態を示す説
明図。

【図７】、

【図８】、

【図９】、

【図１０】押え金および該押え金に固定される押え爪の
説明図。

【図１１】タイミングチャートを示す図。

【符号の説明】

１…空環切り装置、３…受光器、４…針板、５…クロス
プレート、６…押え金、７…空環吸込管、８…上メス、
９…前エアノズル、１０…空環押えシリンダ取付台、１
１…投光器、１２…押えヒンジ、１３…押え腕、１４…
針止め、１５…針棒、１６…投光器取付台、１７…ベン
チュリー、１８…エア吹き返しソレノイド、１９…エア
吹き返しバルブ、２０…ベンチュリー、２１…空環押え
シリンダ、２２…回転軸、２３…第１空環吸込管駆動用
エアシリンダ、２４…ミシン本体、２５…集塵箱、２６
…空環、２６ａ…空環の軌跡、２７…空環押え片、２８
…押え爪、２８ａ…押え爪の空環ガイド部、２８ｂ…押
え爪の溝、２９…針、３０…ロッド、３１…第２空環吸
込管駆動用エアシリンダ、３２…連結軸。３３…位置調
節ボルト、３４…ロッド、３５…生地、３６…押え本
体、３７…空環押え。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) D05B 1/00 - 97/12

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 空環を、次順位の生地の適正位置に縫い
   込む縁かがり縫いミシンに設けられた空環切り装置と、
   縫い終わりの空環長さを調整するカウンタ装置と、空環
   を縫い位置へ導いて安定させるガイド部を有する押え金
   と、該押え金の上部に設けられ、空環縫い込み長さを定
   める前エアノズルと、前記空環切り装置で所定の長さに
   切断された空環を吸引する空環吸込管と、該空環吸込管
   に吸引された空環を押圧・固定する空環押え片を備えた
   空環押えシリンダと、ミシン停止信号により、前記空環
   吸込管を揺動させ、針落ちに対して前進または後退させ
   る第１空環吸込管駆動用エアシリンダと、前記空環吸込
   管の前進、後退位置の中間位置を設定する第２空環吸込
   管駆動用エアシリンダと、該第１空環吸込管駆動用エア
   シリンダと第２空環吸込管駆動用エアシリンダを連結す
   る連結軸と、該連結軸に設けられ、前記空環吸込管の停
   止位置を調節する位置調節ボルトと、縫製運針数とミシ
   ンの回転を定め、空環縫い込み縫製終了後、前記空環押
   え片の押圧を解除する一定速カウンタ装置と、前記空環
   切り装置および空環吸込管にそれぞれ連結されたチュー
   ブ内のエア圧力を正圧から負圧に変換する二つのベンチ
   ュリー装置と、該ベンチュリー装置からのエアの流通経
   路を遮断し、エアを前記空環切り装置へ逆流させるエア
   吹き返しバルブと、該エア吹き返しバルブの開閉を司る
   エア吹き返しソレノイドとを有する縁かがり縫いミシン
   の空環返し縫い装置において、前記押え金（６）が、押
   え本体（３６）に固定された押え爪（２８）を有し、該
   押え爪（２８）の裏面に空環（２６）を縫い位置で安定
   させる溝（２８ｂ）を設けるとともに、表面に空環（２
   ６）を前記裏面の溝（２８ｂ）に案内するガイド部（２
   ８ａ）を設けたことを特徴とする縁かがり縫いミシンの
   空環返し縫い装置。