JP2641089B2 - ミシン装置における縫い代定規装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主としてニット製ゴム
編みテープを、ニット製品であるセーター、カーディガ
ン等の襟回りや袖回りに縫い付けるのに使用する縫製用
ミシン装置における縫い代定規装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】ニット製品の襟付けや袖付け等には、被
縫製物自体のループとループとをかがるように縫い合わ
せるリンキングミシンが採用されているが、特にニット
製ゴム編みテープで襟や袖口部分を形成する場合には、
前記リンキングミシンの使用による縫製作業は非常に熟
練を要するので、身頃や袖を二つ折状態のテープに挟
み、挟んだ状態で本縫い、単環縫い、二重環縫いのミシ
ン装置を使用して縫合を行うようにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前記のニッ
ト製ゴム編みテープを二つ折とし、身頃を挟み込んで一
体に縫合する場合、二つ折の状態が常に一定でないと例
えば襟の場合には襟の深さが変化してセータ自体の品質
を低下させてしまう。このため前記縫製作業には熟練を
要することになり、作業能率の向上の阻害要因となって
いる。そこで本発明は、ニット製ゴム編みテープの縫い
代を常に一定にする定規装置を提案したものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明に係るミシン装置
における縫い代定規装置は、上下作動を行う縫い針を有
する適宜な縫合機構部と、縫い針の動作位置に設けた被
縫製物の抑え部と、適宜な布送り機構部とを備えたミシ
ン装置に於いて、縫合機構部の被縫製物供給側の被縫製
物高さに位置せしめて、被縫製物の縫合方向の縁部を上
下に挟むコの字状の定規体を、上下高さ調整自在に横移
動体に垂設してなる定規部と、定規部の定規体開口側位
置のミシン本体に固定した支持部と、定規部の横移動体
から突設した杆体を前記支持部に貫通し、横移動体を支
持部側に付勢する発条を付設すると共に、前記付勢方向
に抗して移動体と支持部との距離を調整する調整螺子を
付設してなる縫い代調整部と、前記杆体を発条付勢方向
と反対方向に押し出す離脱部とで構成したことを特徴と
するものである。

【０００５】

【作用】縫製対象は、被縫製物である二つ折されたニッ
ト製ゴム編みテープ及び前記テープに挟み込んだ身頃を
縫い合わせるもので、縫い合わせ箇所はニット製ゴム編
みテープの縁部であるから、縫製機構部位置の直前に設
けている定規体のコの字状部分に、上方に位置するニッ
ト製ゴム編みテープの端縁部分を差し入れ、縫製作業時
に常に端縁がコ状部分の奥端に添わせると、縫合位置は
常に一定となる。

【０００６】而も前記定規体の横位置移動即ち縫合方向
に対して水平直交する方向の移動は、調整螺子によって
可能であるので、当該位置調整でニット製ゴム編みテー
プの端縁から縫合ラインまでの距離を調整できる。また
襟の取り付けのようにリング状の一周の縫合は、縫合箇
所が再度縫合機構部分に戻るので、ニット製ゴム編みテ
ープ上辺の下方に差し入れられている定規体の一部が縫
合部分に衝突することになるので、離脱部を動作せしめ
ると、簡単に前記衝突を回避できる。

【０００７】

【実施例】次に本発明の実施例について説明する。本発
明の実施例を適用するミシン装置は、被縫製物である二
つ折されたニット製ゴム編みテープや、前記テープに挟
み込んだ身頃をテープと共に縫い合わせるもので、縫い
方向が作業者の左右方向となるようにミシン本体１を適
宜な作業台３に装着してなり、ミシン本体１は、縫合機
構部１１と、布抑え部１２とを備えたもので、縫合機構
部１１は単糸単環縫合機構を採用したものである。

【０００８】実施例に示した単糸単環縫合機構（縫合機
構部１１）は、縫い針０１と、ルーパ体０２と、糸保持
体０３からなり、縫い針０１は、従前の単環ミシンの物
と同様に針先に糸ａを通し、被縫製物の移動箇所である
針板の上下を貫通して上下作動をなすものである。

【０００９】ルーパ体０２は、縫い針０１の上下作動に
同期して作動する所定の駆動機構０４に装着したもの
で、刀状本体０２１の下方にピアノ線のような強靱で適
宜な弾性を備えた弾性線体０２２を添設してなり、特に
前記弾性線体の先部を折り曲げて糸導入部０２３を形成
し、更に一部をルーパ体に当接（当接部０２４）させ、
基部に糸保持空間部０２５を有せしめてなるものであ
る。また駆動機構０４によるルーパ体０２の動作は、縫
合方向に対して直交する方向から縫い針０１の作動位置
の背後（縫合終了方向）に、少なくとも糸保持空間部０
２５が針位置より前方に進出し、次に横移動して針位置
の前部に移動し、次に後退し後退終了時に横移動により
最初の位置に戻るというような平面から見ると細長の矩
形運動となる。

【００１０】糸保持体０３は、前記ルーパ体０１の動作
方向と直交する方向で、丁度縫い針０１を挟んで反対側
に位置し、針の上下位置に隣接する箇所を縫合方向に進
出後退動作をなすようにしたもので、先端部分に糸の係
止離脱に適するように湾曲凹部０３１を形成してなるも
のである。

【００１１】前記装置での単糸環縫の実施について説明
する。また方向表示は、被縫製物の供給側を右とし、縫
合終了方向を左とし、ルーパ体０２の動作開始位置を後
側とする。

【００１２】単糸環縫は、周知の通り被縫製物の下側で
ループを形成し、ループの糸が被縫製物の上方に出て、
再度被縫製物を抜けてループを通って次のループを形成
することを順次繰り返し、糸を鎖状にして縫合するもの
である。前記縫合機構部１１の具体的な縫合動作は、図
７に示すように縫い針０１が下降して先に形成されてい
るループａ１内に糸ａ２を伴って縫い針０１が貫通した
状態（図７：イ，縫い針０１が下死点に位置）で、ルー
パ体０２が縫い針０１の右側近接位置を後から前に進出
する。この進出動作で糸ａ２を導入部０２３より糸保持
空間部０２５に導き入れて捕捉する（図７：ロ）。更に
糸ａ２を捕捉状態で前側に進出し、糸保持空間部０２５
が糸保持体０３の位置よりも更に前側に進出させる。

【００１３】次に糸保持体０３を右側に進出させ、ルー
パ体０２の上方を乗り越えて左側に進出させ（図７：
ハ：縫い針０１が上死点位置）、更にルーパ体０２を前
方に横移動（駆動部０４の回動運動による）させて後退
させる。そうすると糸保持体０３の先端は、糸保持空間
部０２５で捕捉されている糸ａ２の右側で且つ後側に必
ず位置することになり、ルーパ体０２の後退動作で確実
に確実に係止する。

【００１４】そしてルーパ体０２の後退では、糸ａ２が
当接部０２４によってルーパ体０２の糸保持空間部０２
５からの抜けが防止されるので、糸ａ２は、糸保持空間
部０２５での捕捉と、糸保持体０３の先端の係止とでル
ープ状ａ３とされる。次の縫い針０１の下降動作で、次
のループを形成する糸ａ４を伴って縫い針０１が糸ルー
プａ３を貫通する。同時にルーパ体０２が更に後退する
と、糸保持空間部からループ糸ａ３が外れると共に、糸
保持体０４も右方へ後退するので同様にループ糸ａ３が
外れる。次にルーパ０２は横移動して最初の状態に戻
り、前側への進出動作で次の糸ａ４の捕捉動作に入り、
前記各動作を繰り返すことで、確実な単糸環縫が実現す
るものである。

【００１５】尚本発明は前記単死環縫機構を採用せずに
本縫い、二重環縫い等の機構を採用しても良いことは勿
論である。

【００１６】次に布抑え部１２は、縫い針０１の上下作
動に対応して、少し時間的遅れをもって上下作動をなす
作動体１２１に、発条１２２を介在させて、縫い針０１
の上下作動で貫通する位置に配置した布抑えパイプ１２
３を先端に突設した抑え体１２４を連設してなる。特に
前記布抑え部１２の動作は、少なくとも縫い針０１が針
板を貫通して差し目が成立した時点からパイプ抑え１２
３が被縫製物と当接し、縫い針０１が被縫製物から引き
抜かれるまで発条１２２の作用で被縫製物をパイプ１２
３で下圧するように動作制御してなるものである。

【００１７】また前記ミシン本体１の縫い針０１の縫い
方向前後に、布送り機構部２を設けたもので、布送り機
構部２は、適宜な駆動源と連結した挟持駆動ローラ２１
及び駆動ローラ２２と、テープ持上体２３と、テープ幅
寄定規２４からなり、挟持駆動ローラ２１は、上下平行
に軸架したローラで、縫合機構部１１の縫合方向の後部
（縫合された被縫製物が繰り出る方向）に設け、駆動ロ
ーラ２２は、縫合機構部１１の縫合方向の前部（縫合さ
れる被縫製物が供給される方向）に設けてなり、縫い針
０１の縫合運動に対応して間欠回転動作をなすものであ
るる。また持上体２３は下方に折り返し鉤を設けたもの
で、駆動ローラ２２と縫合機構部１１との間に設けてな
り、テープ幅寄定規２４は、被縫製物の背面側（折り曲
げ部分）の位置を確保し、被縫製物供給の定規としたも
のである。

【００１８】本発明に係る縫い代定規装置は、前記ミシ
ン装置に装着してなり、定規部４と、支持部５と、縫い
代調整部６と、離脱部７とで構成したものである。定規
部４は、横移動体４１に上下調整螺子杆４２を介して定
規体４３を垂設したもので、特に定規体４３をコの字状
にして、開口部分がミシン本体１側とし、縫合機構部１
１の被縫製物供給側の被縫製物高さに位置せしめてなる
ものであり、被縫製物の厚さに対応した内寸のものを選
択して使用するものであるる。

【００１９】支持部５は、平面コ状にしてミシン本体１
の側面固定し、縫合機構部１１の縫合方向を左右とする
と、その前後方向に前後板５１，５２がそれぞれミシン
本体１の側面に突設するようにミシン本体１に固着した
ものである。

【００２０】縫い代調整部６は、前記横移動体４１から
背後に突設した平行な２本の杆体６１，６２を、前記支
持部５の前後板５１，５２を貫通させ、一方の杆体６１
の後端部分と支持後板５２との間に圧縮発条６３を介装
して横移動体４１をを支持部５側に付勢せしめ、更に横
移動体４１に支持前板５１に当接する調整螺子６４を付
設してなるものである。

【００２１】離脱部７は、作業者の操作部（足踏みペダ
ル：図示せず））の操作によって作動せしめられる電磁
石作動体７１に、作動アーム７２を連結し、作動アーム
７２で杆体６２の後端部を押圧作動するようにしたもの
である

【００２２】而して前記ミシン装置での縫製作業は、二
つ折状態となったゴム編みテープａが駆動ローラ２２に
よって縫合機構部１１に送り出されると共に、持上体２
３で二つ折テープａの上辺部がその端縁部分を持ち上
げ、身頃ｂを二つ折の間に差し入れ、テープ幅寄定規２
４に添わせて縫合機構部１１に供給するものである。

【００２３】縫合機構部１１では、縫い針０１が布抑え
パイプ１２３を貫通して上下動を行い乍ら縫合を実施
し、特に縫い針０１に遅れて布抑えパイプ１２３が上下
作動をなすものであるから、被縫製物Ａ（ａ，ｂ）に縫
合時の圧力（差し込み並びに引き上げ方向の力）が加わ
る際にパイプ１２３で確りと被縫製物で押さえ付けられ
ているので安定した縫合がなされる。そして縫合された
被縫製物Ａは挟持駆動ローラ２１に挟持され、縫合機構
部１１から前記縫合動作と同期した間欠動作で引き出さ
れるものである。

【００２４】従って前記作業は、作業者が作業台３に正
対して作業するものであるから、被縫製物Ａは作業者の
正対状態に対して、縫合箇所（縫い針が上下作動する箇
所）の右から左に送られ、正対した正面で縫合作業がな
されることになる。これは従来の縫製作業に比較して、
作業者が被縫製物ａの全体の動き並びに縫合状態を明確
に視認することができるので、作業中にテープの二つ折
状態の位置ずれや、縫合箇所の位置ずれ等の修正動作を
容易に行うことができる利点がある。

【００２５】また本発明は、特に前記の縫製作業に際し
て、定規体４３のコの字状部分に上方に位置するニット
製ゴム編みテープａの端縁部分ｃを差し入れると共に、
縫製作業時に常に端縁ｃがコ状部分の奥端に添わせて縫
合を行うもので、前記定規体４３の位置が一定している
ので縫合位置も常に一定となる。而も調整螺子６３の調
整で、横移動体４１の前後方向位置調整で可能であり、
これによってニット製ゴム編みテープａの端縁から縫合
ラインｄまでの距離の調整即ち縫い代調整が容易に実現
するものである。また被縫製物の厚みの変化に対して
は、定規体４３の取り換え並びに定規部５の上下調整螺
子５２の回転調整で対応できるものである。

【００２６】更に襟の取り付けのようにリング状の一周
の縫合は、縫合箇所が再度縫合機構部分に戻るので、ニ
ット製ゴム編みテープａ上辺の下方に差し入れられてい
る定規体５３の一部が縫合部分に衝突することになるの
で、離脱部６を動作せしめると、作動アーム７１で杆体
６２を押出し、定規体４３を縫合ラインｄより直ちに離
脱せしめることができるものである。

【００２７】

【発明の効果】以上のように本発明は、二つ折されたニ
ット製ゴム編みテープとこのテープに挟み込んだ身頃を
縫い合わせるミシン装置に適用されるもので、縫合ライ
ン上に二つ折のニット製ゴム編みテープの上辺の端縁を
上下に挟むコの字上の定規体を、上下前後に位置調整可
能に設けてなるもので、前記定規体に被縫製物を添わせ
て縫製作業を行うことで、熟練を要せず常に一定の縫い
代が維持されるので、製出される縫製物は、品質が一定
し而もその製造能率が向上するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例のミシン装置の要部斜視図。

【図２】同縫い代定規装置の側面図。

【図３】同使用状態を示す正面図。

【図４】同調整状態の説明図。

【図５】同離脱部の動作説明図。

【図６】同縫合機構部の構造説明図。

【図７】同縫合機構部の動作説明図。

【符号の説明】

１ ミシン本体 １１ 縫合機構部 ０１ 縫い針 １２ 布抑え部 ２ 布送り機構部 ２１ 挟持駆動ローラ ２２ 駆動ローラ ２３ テープ持上体 ２４ テープ幅寄定規 ３ 作業台 ４ 定規部 ４１ 横移動体 ４２ 上下調整螺子杆 ４３ 定規体 ５ 支持部 ５１ 支持前板 ５２ 支持後板 ６ 縫い代調整部 ６１，６２ 杆体 ６３ 圧縮発条 ６４ 調整螺子 ７ 離脱部 ７１ 電磁石作動体 ７２ 作動アーム

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上下作動を行う縫い針を有する適宜な縫
   合機構部と、縫い針の動作位置に設けた被縫製物の抑え
   部と、適宜な布送り機構部とを備えたミシン装置に於い
   て、縫合機構部の被縫製物供給側の被縫製物高さに位置
   せしめて、被縫製物の縫合方向の縁部を上下に挟むコの
   字状の定規体を、上下高さ調整自在に横移動体に垂設し
   てなる定規部と、定規部の定規体開口側位置のミシン本
   体に固定した支持部と、定規部の横移動体から突設した
   杆体を前記支持部に貫通し、横移動体を支持部側に付勢
   する発条を付設すると共に、前記付勢方向に抗して移動
   体と支持部との距離を調整する調整螺子を付設してなる
   縫い代調整部と、前記杆体を発条付勢方向と反対方向に
   押し出す離脱部とで構成したことを特徴とするミシン装
   置における縫い代定規装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載の縫い代定規装置に於い
   て、ミシン本体を作業台に、縫い方向が左右となる位置
   で装着すると共に、被縫製物の抑え部を縫い針の上下作
   動に少し遅れて上下作動をなし、縫い針が貫通する布抑
   えパイプとし、布送り機構として、被縫製物を挟持して
   前記縫合機構部位置から縫い方向に引き出す挟持駆動ロ
   ーラを採用したことを特徴とするミシン装置における縫
   い代定規装置。