JP3511188B2 - 掬い縫いミシン - Google Patents

掬い縫いミシン

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JP3511188B2
JP3511188B2 JP13077295A JP13077295A JP3511188B2 JP 3511188 B2 JP3511188 B2 JP 3511188B2 JP 13077295 A JP13077295 A JP 13077295A JP 13077295 A JP13077295 A JP 13077295A JP 3511188 B2 JP3511188 B2 JP 3511188B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、掬い縫いミシンに関
し、特に、縫い終わり端での止め縫いを可能とした掬い
縫いミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】ズボン、スラックス、スカートの裾まつ
り縫い等、裏面側に折り返した生地の端縁を、表面側に
ステッチを殆ど生ぜしめることなく縫い付ける用途に用
いられる掬い縫いミシンは、上下に対向する押え受け及
び押え金と、押え受けの上側に配された針、ルーパ及び
送り歯と、押え金の下側に配された突き上げ板とを備え
てなり、縫製対象となる生地は、縫製面となる裏面を上
向きとし押え受けと押え金との間に挾まれた状態にセッ
トされる。
【0003】掬い縫いミシンの針は、先端の糸孔に針糸
を保持し、円弧形の湾曲形状を有しており、該針の運針
は、自身の湾曲に沿って前記押え受けの上面をかすめる
態様に行われる。また前記突き上げ板は、この運針に同
期して所定の動作を行い、前述の如くセットされた縫製
生地を下側から突き上げ、この突き上げ部位を押え受け
の上面に突出せしめる動作をなす。
【0004】前記針は、突き上げ板による縫製生地の突
き上げに略同期して進出して、この突き上げ部位を掬う
態様に貫通し、該針に保持された針糸は、縫製生地の突
き上げ部位に裏面側から差し込まれ、表面側にわずかに
露出した後に裏面側に引き出されて、この引き出し位置
にて前記ルーパに捕捉される。この後、針は退避動作を
行い、これと共に突き上げ板による突き上げが解除さ
れ、縫製生地が押え受け下に退避する。この間、前記引
き出し位置にてルーパに捕捉された針糸は、該ルーパの
動作により、縦位置のループを形成しつつ針の退避側に
移動せしめられ、次回に進出する針により、前述した縫
製生地の貫通前に捕捉される。
【0005】このように掬い縫いミシンによる縫製は、
突き上げ板による生地の突き上げ部位の両側において、
針及びルーパによる針糸の捕捉を繰り返して行われる
が、この縫製を確実に行わせるためには、突き上げ板に
より突き上げられる縫製生地が針の進出位置に正しく整
合すると共に、突き上げ板の退避に応じて縫製生地が押
え受けの下側に確実に退避せしめられ、ルーパの動作を
妨げないようにする必要がある。
【0006】そこで従来から、突き上げ板の対応位置に
て縫製生地の上面に弾接する押え爪を前記押え受けに取
り付け、この押え爪により縫製生地の上面を押えること
により、突き上げ板による突き上げに伴う縫製生地のバ
タ付きを防ぎ、また突き上げ板の退避に応じた縫製生地
の退避を補助する構成とした掬い縫いミシンが実用化さ
れている。
【0007】図6は、押え爪の動作説明のための縫製部
近傍の側断面図である。本図に示す如く、縫製生地W
は、押え受け1と、該押え受け1の下面に弾接する左右
一対の押え金2,2(片側のみ図示)との間に挾持され
た状態にセットされ、図示しない送り歯の動作により、
図中に白抜矢符にて示す向きの送りを加えられている。
押え受け1の下側に配された突き上げ板3は、一対の押
え金2,2間において、押え受け1の下面と略平行をな
し、縫製生地Wの送り方向と略直交する支軸30回りに所
定角度の反復揺動を行い、図6(a)に示す揺動位置
(上位置)にて縫製生地Wを下側から突き上げ、この突
き上げを、図6(b)に示す揺動位置(下位置)にて解
除する構成となっている。
【0008】一方、押え受け1の上部には、これと略平
行をなし、縫製生地Wの送り方向と略直交する軸回りに
揺動自在にL字形をなす支持アーム40が枢支してあり、
前記押え爪4は、この支持アーム40の一端部に前記突き
上げ板3の上側に面して固設された爪体41を、支持アー
ム40の他端部に弾接する押しばね42のばね力により下向
きに付勢してなる。
【0009】このように取り付けられた押え爪4の爪体
41は、突き上げ板3により突き上げられる縫製生地Wの
上面に前記押しばね42のばね力により弾接し、前記支持
アーム40の揺動により、突き上げ板3の動作に追随して
上下方向に従動することになり、図6(a)に示す如
く、突き上げ板3が上位置にあるとき、該突き上げ板3
と共に押え受け1上に突出する縫製生地Wの上面を押
え、該縫製生地Wの姿勢を整えて、針の進出位置に正し
く整合させる作用をなし、また、図6(b)に示す如
く、突き上げ板3が下位置にあるとき、該突き上げ板3
による下側からの拘束を解かれた縫製生地Wを、ルーパ
の前述した動作に支障を来さないよう、押しばね42のば
ね力により下向きに押圧する作用をなす。
【0010】爪体41による押え力は、前記押しばね42の
ばね力の加減により、また爪体41の従動ストロークは、
支持アーム40の他端の可動域に臨ませたストッパ片43の
位置変更により自在に調節でき、これらの調節を、縫製
生地Wの厚さ、種類等の縫製条件に応じて実施すること
により、突き上げ板3の動作に追随して縫製生地Wを確
実に上下動させ、掬い縫いミシンによる前述した縫製を
安定して行わせることができる。
【0011】図7は、図6の VII−VII 線による横断面
図である。本図に示す如く、前記爪体41は、幅方向中央
を上向きに盛り上げてなる山形の横断面を有しており、
上位置にある突き上げ板3との間での縫製生地Wの挾持
は、該突き上げ板3を山形の内側に受け入れる態様にて
行われる。前記針は、図中に2点鎖線により示す湾曲軌
跡に沿って進退動作し、爪体41の下面に沿って山形をな
す縫製生地Wに、上面(裏面)側から挿通されて、頂点
位置近傍にて下面(表面)側に露出し、再度裏面側に抜
け出し、全体として突き上げ部を掬う態様に挿通され
る。
【0012】図8は、以上の如き掬い縫いミシンによる
縫い目の形成態様を示す斜視図である。掬い縫いミシン
による縫い目は、針及びルーパの前述した動作とこれら
に同期した縫製生地Wの送りとにより、縫製生地Wの裏
面側に折り返された折り返し縁W′の合わせ部の一側か
ら挿通された2重の針糸aが進出端に残すループをルー
パにより捕捉し、縫製生地Wの送りにより引き出して、
次回に進出する針により捉える順の繰り返しにより、図
示の態様をなして形成される。
【0013】ところがこのように形成された縫い目は、
図中に仮想線にて示す如く、針糸aの末端a′を縫製生
地Wの裏面(上面)側に引き出し、同側に引っ張ること
により、縫い終わり端から連鎖的にほどくことができ、
このような縫い目のほどけを、着用時、洗濯時等におけ
る外力の作用により生ぜしめないために、掬い縫いミシ
ンによる縫製においては、針糸aの末端a′の抜け止め
処置が不可欠である。この抜け止め処置は、一般的には
手作業により行われるが、このために多大の手間を要す
る問題があり、この手間を解消すべく、縫い終わり端で
の針糸の抜け止め処置を自動的に行わせるための止め縫
い方法及び止め縫い装置が、従来から種々提案されてい
る(例えば、実公昭59−2795号公報、実公昭63-45251号
公報、実開平6-81468号公報等)。
【0014】この種の提案の一つとして、本願出願人に
より特公昭60-50471号公報に開示された止め縫い方法及
び装置がある。これは、縫い終わり前の二回分の運針の
内、先の一回を、前記突き上げ板3による縫製生地Wの
突き上げなしに行わせ、これに続く最終の一回を、突き
上げ板3による縫製生地Wの突き上げを伴う通常の運針
に戻して縫いを終了するものである。
【0015】図9は、この手順により得られる縫い目の
形成態様を示す斜視図である。前述した手順を実行した
場合、先の一回の運針により、縫製生地Wを掬うことな
く進出する針の針糸aがルーパにより捉えられる空縫い
が行われ、縫製生地Wに縫い付けられられずに針糸aが
絡み合う空環bが形成されて、該空環bから引き出され
たループが、後の一回の運針時に進出する針により捉え
られ、縫製生地Wに縫い付けられて、図9(a)に示す
如き縫い目が形成される。
【0016】このように形成される縫い目においては縫
製生地Wの裏面側に引き出された針糸aの末端a′に引
っ張り力が加えられた場合、この力の作用により空環b
が引締められ、該空環bの形成位置に、図9(b)に示
す如き結び目b′が生じる結果となり、更なる引っ張り
力が加えられたとしても、この結び目b′に連続する縫
い目がほどける虞れはない。
【0017】一方、以上の如き縫いを可能とするには、
前記空縫いのための一回分の運針の間、突き上げ板3の
突き上げ動作を禁じる必要があるが、掬い縫いミシンに
は、一般的に、縫製の開始に際して押え受け1と押え金
2,2との間への縫製生地Wのセットを可能とするため
に、押え受け1から押え金2,2を離反させるべく、該
押え金2,2を、これらの間にて前述した動作をなす突
き上げ板3と共に強制下降させる機構が装備されてお
り、前記特公昭60-50471号公報においては、この機構
を、押え金2,2と突き上げ板3とを各別に下降可能に
構成し、前記空縫いの実行時には、一回の運針の間、突
き上げ板3の下降機構を動作させ、該突き上げ板3の前
述した動作を下降位置にて行わせることにより、突き上
げ動作の禁止を実現している。なお、縫製生地Wのセッ
トに際しては、押え金2,2の下降と突き上げ板3の下
降とを同時に行わせて対応している。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】このように、本願出願
人による特公昭60-50471号公報に開示された止め縫い方
法及び止め縫い装置は、掬い縫いミシン本来の構成の大
幅な変更を必要とせず、また複雑な制御動作を必要とせ
ずに、縫い終わり端における針糸の抜け止め処置を確実
になし得る優れたものである。
【0019】さて、この装置に確実な動作を行わせるた
めには、突き上げ板3の下降時に、縫製生地Wの対応部
分を押え受け1の下側に十分に押し下げ、針の進出によ
り掬われることのないようにする必要がある。縫製生地
Wの押し下げは、該縫製生地Wの上面に弾接する押え爪
4の作用により行われるため、前述した如き押し下げ
は、前記ストッパ片43の位置変更により調節される爪体
41の従動ストロークを押え受け1の下側を含むように設
定することにより実現される。
【0020】ところが、押え爪4のストローク設定を以
上の如くに行った場合、該押え爪4は、突き上げ板3に
よる突き上げを伴って行われる通常縫いの間に、必要分
を超える過剰なストロークを有することとなり、該押え
爪4の動きが緩慢となり、特に、縫製速度を高めたいと
きに、突き上げ板3の動作に応じた押え爪4の追随動作
に遅れを伴い易く、突き上げられた縫製生地Wの姿勢が
安定せず、針による掬いむらが生じ、表面側への糸の露
出長さのばらつき、目飛びの発生等の不具合を招来し
て、良質な縫い目が得られなくなるという問題があっ
た。
【0021】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもの
であり、通常縫製時における良質な縫い目の形成を阻害
することなく、特公昭60-50471号公報に開示された縫製
完了時における止め縫いを確実に行わせることができる
掬い縫いミシンを提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明に係る掬い縫いミ
シンは、押え受けと押え金とにより上下から挾持された
縫製生地の所定部位を前記押え受けの上部に反復的に突
き上げる突き上げ板と、この突き上げ部位にて前記縫製
生地の上面に弾接し、該縫製生地の突き上げに従動して
予め設定されたストローク間にて上下動する押え爪とを
備え、前記突き上げ板により突き上げられる縫製生地
を、前記押え爪により上側から押えつつ、各突き上げタ
イミングに同期した運針により縫製する掬い縫いミシン
において、前記押え爪の一部に当接し、該押え爪の下動
を前記ストロークの中間位置に制限するストッパと、該
ストッパによる制限を解除するストッパ解除手段と、前
記突き上げ板の突き上げ動作を禁じる突き上げ拘束手段
とを具備することを特徴とする。
【0023】更に加えて、前記縫製の終了前の所定の操
作に応じて、前記ストッパ解除手段及び前記突き上げ拘
束手段の動作下にて少なくとも一回の運針を行わせ、こ
の運針に続き、前記ストッパ解除手段及び前記突き上げ
拘束手段の非動作下にて少なくとも一回の運針を行わせ
る制御手段を備えることを特徴とする。
【0024】
【作用】本発明においては、突き上げ板による突き上げ
位置にて縫製生地を上側から押える押え爪の従動ストロ
ークを、ストッパにより制限された状態として通常の縫
いを実施し、押え爪の過剰な動きを防いで縫い目の安定
化を図る一方、突き上げ板による縫製生地の突き上げを
禁じた状態でなされる縫製終了前の空縫いを、ストッパ
による押え爪のストローク制限を解除して実施し、押え
爪の長いストロークにより縫製生地を押え受け下に十分
に押し下げ、抜け止めのための結び目となる空環を誤り
なく形成する。
【0025】また、ペダル操作、スイッチ操作等、縫製
の終了前の所定の操作に応じた制御手段の動作により、
押え爪のストローク制限を解除し、突き上げ板による突
き上げを禁じた状態での一回又は複数回の運針と、突き
上げ板による突き上げを再開し、押え爪のストロークを
制限した状態での一回又は複数回の運針とをこの順に行
なわせ、前者により形成された空環を後者により縫製生
地に縫い付けて、止め縫いを自動的に実施する。
【0026】
【実施例】以下本発明をその実施例を示す図面に基づい
て詳述する。図1は、本発明に係る掬い縫いミシンの全
体構成を模式的に示す正面図である。図示の如く本発明
に係る掬い縫いミシンは、ミシンテーブル11の上部にミ
シン本体10を設置してなり、ミシンテーブル11の正面
(図の手前側)に着座又は立脚した作業者が、該ミシン
テーブル11を支持する一対の支持脚12,12の下部間に横
架された操作ペダル13を踏込み又は踏み返しすることに
より運転操作されるようになしてある。
【0027】ミシン本体10は、その一側(図の左側)
に、図2に側断面図を示す縫製部を備えている。この縫
製部は、図6に示す縫製部と同様、押え受け1及び左右
一対の押え金2,2(片側のみ図示)を備え、押え受け
1の下側に前記押え金2,2間に位置して突き上げ板3
を、また、該突き上げ板3と押え受け1の上側に対応す
る位置に押え爪4を夫々配し、これらに加えて、図示し
ない針、ルーパ及び送り歯を備えて構成されている。
【0028】縫製生地Wは、押え受け1の下側に押え金
2,2との間に挾持された状態にセットされ、図示しな
い送り歯の動作により、図中に白抜矢符にて示す向きの
送りを加えられている。突き上げ板3は、押え受け1の
下面と略平行をなし、縫製生地Wの送り方向と略直交す
る支軸30回りに揺動し、図2(a)に示す上位置にて縫
製生地Wを下側から突き上げ、この突き上げを、図2
(b)に示す下位置にて解除する動作をなす。
【0029】図示しない針は、円弧形の湾曲形状を有
し、該針の運針は、自身の湾曲に沿って前記押え受け1
の上面をかすめる態様に行われる。前記突き上げ板3
は、この運針に同期して前述した動作を行い、針の進出
時に前記上位置となり、縫製生地Wを下側から突き上
げ、この突き上げ部位を押え受け1の上面に突出せしめ
る一方、前記針が退避するとき、これに同期して押え受
け1の上側にて生じるルーパの所定の動作に支障を来た
さないよう前記下位置に移行する動作を繰り返す。縫製
生地Wの縫製は、針、ルーパ及び突き上げ板3の以上の
如き動作と、これらに同期した前記送り歯の動作とによ
り、前述した如くに行なわれ、これらの各動作は、ミシ
ンテーブル11の下側に固設されたミシンモータMを駆動
源とし、公知の各別の機構を介して行なわれる。
【0030】押え受け1の上部には、前記針の進出位置
のやや前側に支持ブロック4aが固設してある。前記押え
爪4は、L字形をなす支持アーム40の一辺の先端に爪体
41を備え、前記支持ブロック4aに支持アーム40の中途の
屈曲部を、縫製生地Wの送り方向と略直交する軸回りに
揺動自在に枢支し、前記爪体41を突き上げ板3の上側に
臨ませて取り付けてあり、上向きとされた他辺の先端と
前記支持ブロック4aとの間に押しばね42を介装し、該押
しばね42のばね力により下向きに付勢した前記爪体41
を、突き上げ板3により突き上げられる縫製生地Wの弾
接せしめた構成となっている。
【0031】この構成により押え爪4の爪体41は、突き
上げ板3の前述した動作に追随して前記支持アーム40の
揺動を伴って上下方向に従動し、図2(a)に示す如く
突き上げ板3が上位置にあるときには、該突き上げ板3
と共に押え受け1上に突出する縫製生地Wの上面を押
え、該縫製生地Wの姿勢を整えて、針の進出位置に正し
く整合させる作用をなし、また、図2(b)に示す如く
突き上げ板3が下位置にあるときには、該突き上げ板3
による下側からの拘束を解かれた縫製生地Wを押しばね
42のばね力により下向きに押圧し、ルーパの前述した動
作に支障を来さないように押し下げる作用をなす。
【0032】前記爪体41による押え力は、押しばね42の
ばね力の加減により、また前記爪体41の従動ストローク
は、支持アーム40の他端の可動域に臨ませて支持ブロッ
ク4aに取り付けられたストッパ片43の位置変更により自
在に調節できるようになしてある。本発明に係る掬い縫
いミシンにおいて、押しばね42の加減による押え力の調
節は、従来の掬い縫いミシンにおけると同様、縫製生地
Wの厚さ、種類等の縫製条件に応じて実施される。一
方、前記ストッパ片43の位置変更は、従来の掬い縫いミ
シンにおけるとは異なり、該爪体41の下動限界を定める
べく行なわれ、通常縫製時における爪体41の従動ストロ
ークは、前記ストッパ片43と別体に設けたストッパ5に
より制限されるようになしてある。
【0033】図3は、ストッパ5の構成及び動作説明の
ための縫製部近傍の平面図である。本図に示す如く押え
受け1の上面には、前述した如き動作をなす針を、その
進出時に下側から支える針溝14が、図中に白抜矢符にて
示す縫製生地Wの送り方向と直交する向きに形成されて
おり、押え爪4の支持アーム40は、前記針溝14のやや前
側を動作域として取り付けてある。
【0034】前記ストッパ5は、押え受け1の上面に沿
って滑動自在に配された細幅の板材であり、縫製生地W
の送り方向と略直交するその長手方向に進退動作をな
し、図3(a)に示す如く、支持アーム40先端の爪体41
と該支持アーム40を枢支する支持ブロック4aとの間、即
ち、押え爪4の動作域に先端を差し込んだ前進位置と、
図3(b)に示す如く、押え爪4の動作域から外れた後
退位置との間にて移動させ得るようになしてある。そし
て、図3(a)の前進位置にあるストッパ5は、図2に
示す如く、押え受け1の上面にて支持アーム40に下側か
ら当接し、該支持アーム40の揺動に伴う前記爪体41の従
動ストロークを、前記ストッパ片43との当接による制限
位置よりも上方にて制限する作用をなし、この制限は、
ストッパ5の後退に応じて解除される。
【0035】而して、押え爪4の従動ストロークは、ス
トッパ5の進退動作に応じて2通りに変化し、該押え爪
4は、ストッパ5が前進位置にある場合、図2(a)に
示す如く、爪体41が突き上げ板3により突き上げられた
上位置と、図2(b)に示す如く、支持アーム40の中途
をストッパ5に当接させ、爪体41を押え受け1の上面近
傍に保った中間位置との間にて上下動する一方、ストッ
パ5が後退位置にある場合、該ストッパ5による制限が
解除される結果、爪体41が突き上げ板3により突き上げ
られた図2(a)に示す上位置と、支持アーム40の他端
をストッパ片43に当接させ、図2(b)に示す中間位置
よりも爪体41が十分に下がった下限位置との間にて上下
動することができる。
【0036】以上の如きストッパ5の進退動作は、縫製
生地Wの送り方向に向かって右方に延びるストッパ5の
延設端に、図1に示す如く、ミシン本体10の前面に取り
付けたストッパアクチュエータ6により水平力を加えて
行なわれる。ストッパアクチュエータ6としては、回転
動作形又は直線動作形の電磁アクチュエータ(ロータリ
ソレノイド、リニアソレノイド)、各種のモータ、エア
シリンダ等、種々のアクチュエータの使用が可能であ
り、以下の説明においては、ロータリソレノイドをスト
ッパアクチュエータ6として用い、該ロータリソレノイ
ドへの通電によりストッパ5が後退位置に移動し、該ス
トッパ5による押え爪4の従動ストロークの制限が解除
されることとする。
【0037】また、図1に示す如く、ミシン本体10の下
部には、生地押え下降ソレノイド7と突き上げ板下降ソ
レノイド8とが固設してあり、これらへの通電がなされ
た場合、前述した如く構成された縫製部における押え金
2,2と突き上げ板3とが各別に強制下降せしめられ、
前記押え受け1から離反するようになしてある。なお、
生地押え下降ソレノイド7の動作に応じた押え金2,2
の強制下降、及び突き上げ板下降ソレノイド8の動作に
応じた突き上げ板3の強制下降は、本願出願人による前
記特公昭60-50471号公報に開示された機構を用いて実現
できる。
【0038】図4は、以上の如く構成された本発明に係
る掬い縫いミシンの制御系の構成を示すブロック図であ
る。図中9は、演算処理のためのCPU、制御手順を記
憶させたROM、及び外部入力の記憶手段としてのRA
Mを内蔵する運転制御部であり、該運転制御部9の入力
側には、運転操作のための前記操作ペダル13の操作内容
が与えられている。
【0039】操作ペダル13は、外力が加えられない場合
の中立位置から、踏み込み及び踏み返しの両方向への操
作が可能であり、中立位置及び踏み返し位置のあると
き、夫々の位置に対応して操作ペダル13に付設された中
立スイッチ15及び踏み返しスイッチ16が夫々オンするよ
うになしてあり、また踏み込み状態にあるときには、操
作ペダル13に付設された踏み込み検出器17により、踏み
込みの有無と共に踏み込み量が検出されるようになして
ある。運転制御部9の入力側には、中立スイッチ15及び
踏み返しスイッチ16が接続され、また踏み込み検出器17
の検出結果が与えられており、運転制御部9は、これら
夫々からの入力により、操作ペダル13が中立状態又は踏
み返し状態にあることを認識でき、更に、踏み込み量を
認識することができる。
【0040】一方、運転制御部9の出力側には、ミシン
テーブル11の下部に固設され、針、ルーパ、送り歯及び
突き上げ板3等、縫製に関連する各部の駆動源となる前
記ミシンモータMが、図示しない駆動回路を介して接続
されており、該ミシンモータMは、運転制御部9が出力
する駆動指令に従って、回転速度を制御されつつ駆動さ
れるようになしてある。ミシンモータMには、これの回
転位置を検出する回転検出器18が付設してあり、該回転
検出器18による検出結果は、運転制御部9の入力側にフ
ィードバックされており、運転制御部9においては、こ
の検出結果を用いて、ミシンモータMの回転速度を媒介
として縫製速度を認識し、また、針の進退位置を認識す
るようになしてある。
【0041】また運転制御部9の出力側には、ロータリ
ソレノイドを用いてなる前記ストッパアクチュエータ6
と、前記生地押え下降ソレノイド7及び前記突き上げ板
下降ソレノイド8とが、図示しない各別の励磁回路を介
して夫々接続されており、これらは、運転制御部9の出
力に応じて前述した動作を行なうようになしてある。更
に運転制御部9の出力側には、図示しない励磁回路を介
して針糸切断ソレノイド19が接続されており、該針糸切
断ソレノイド19は、運転制御部9からの出力に応じて前
記針の進出に伴って引き出された針糸を切断する動作を
行なうようになしてある。
【0042】図5は、以上の如き制御系を備える本発明
に係る掬い縫いミシンによる縫製動作の内容を示すタイ
ムチャートである。縫製の開始に際し、まず作業者は、
縫製生地Wのセットのために前記操作ペダル13の踏み返
し操作を行う。この操作は、踏み返しスイッチ16のオン
により運転制御部9に認識され、該運転制御部9は、踏
み返しが行なわれている間、生地押え下降ソレノイド7
及び突き上げ板下降ソレノイド8に連続的に動作指令を
発し、押え金2,2及び突き上げ板3を下降させる動作
をなす。
【0043】縫製生地Wのセットは、該縫製生地Wの始
端部を下位置とされた押え金2,2と押え受け1との間
に挿入し、操作ペダル13を中立位置に戻して完了する。
運転制御部9は、操作ペダル13の戻しを中立スイッチ15
のオンにより認識し、生地押え下降ソレノイド7及び突
き上げ板下降ソレノイド8への動作指令を解除する動作
をなす。これに応じて押え金2,2及び突き上げ板3が
上昇し、前述の如く挿入された縫製生地Wは、上位置と
なった押え金2,2と押え受け1との間に挾持され、ま
た突き上げ板3は、前記縫製生地Wの突き上げが可能な
所定位置に位置決めされ、縫製準備が完了する。
【0044】このような準備作業を終えた後、作業者に
よる操作ペダル13の踏み込みに応じて縫製が開始され
る。この踏み込みは、踏み込み検出器17からの入力によ
り運転制御部9に認識され、該運転制御部9は、操作ペ
ダル13の踏み込み応じて縫製を開始すべく、出力側のミ
シンモータMに駆動指令を発する。前述の如く踏み込み
検出器17は、操作ペダル13の踏み込み量の検出が可能に
構成してあり、ミシンモータMの駆動は、前記回転検出
器18からの入力により認識される現状の回転速度を参照
し、操作ペダル13の踏み込み量に応じた速度にて行なわ
れる。
【0045】以上の如きミシンモータMの駆動により、
図示しない針、ルーパ及び送り歯、並びに突き上げ板3
が前述した動作をなし、押え受け1と押え金2,2との
間に挾持された縫製生地Wは、操作ペダル13の踏み込み
量に応じた速度にて縫製される。この縫製動作は、図5
中においては、所定周期にて反復される針の進退動作を
代表として示してある。
【0046】このように行われる縫製の間、ストッパア
クチュエータ6は非通電状態に保たれ、前記ストッパ5
は前進位置に保持される結果、突き上げ板3の動作に伴
う前記押え爪4の従動は、前記上位置と中間位置との間
のわずかなストロークにて生じ、高速での縫製時におい
ても突き上げ板3の動作に、高い応答性にて追随動作で
き、突き上げ板3との間に挾まれた前記縫製生地Wの姿
勢を正しく保ち得るようになり、良質な縫い目が形成さ
れる。
【0047】以上の如き縫製動作中、踏み込み状態にあ
る操作ペダル13が中立位置に戻された場合、運転制御部
9は、この戻しを中立スイッチ15のオンにより認識し、
ミシンモータMへの駆動指令を解除して縫製動作を中断
する。この解除は、操作ペダル13の戻しに完全に同期し
て行なわれるのではなく、回転検出器18からの入力によ
り認識される針の進退位置を参照し、該針が押え受け1
上から退避した時点にて行なわれる。
【0048】この中断の後に縫製作業を続行する場合、
再度操作ペダル13を踏み込み操作すればよく、これに対
し、縫製作業を終える場合、操作ペダル13の踏み返し操
作を行なえばよい。運転制御部9は、この踏み返し操作
を踏み返しスイッチ16のオンにより認識し、これに応じ
て、まず、突き上げ板下降ソレノイド8及びストッパア
クチュエータ6に動作指令を発し、突き上げ板3のみを
強制下降せしめると共に、前記ストッパ5を後退位置に
移動させて前記押え爪4のストローク制限を解除する動
作をなす。また、この動作指令にわずかに遅れてミシン
モータMに駆動指令を発し、二回分の運針を行わせ、突
き上げ板下降ソレノイド8及びストッパアクチュエータ
6への動作指令を、一回目の運針完了に同期して解除す
る。
【0049】以上の動作により、突き上げ板3が下位置
に保たれて、該突き上げ板3による突き上げが行われな
いまま一回の運針が行われ、縫製生地Wを掬うことなく
針が進出し、該針の針糸aがルーパにより捉えられる空
縫いが行われて、図9(a)に示す如き空環bが形成さ
れる。この間、ストッパ5が後退し、該ストッパ5によ
る押え爪4のストローク制限が解除された状態にあるか
ら、押え爪4は、前記ストッパ片43と当接する下限位置
にまで下降し、縫製生地Wは、押え受け1の下側にまで
十分に押し下げられ、空縫い時における針の進出により
掬われる虞れがなく、前記空環bが確実に形成される。
【0050】更に、前記一回の運針の後、突き上げ板下
降ソレノイド8及びストッパアクチュエータ6への動作
指令が解除される結果、突き上げ板3が上位置に戻り、
またストッパ5が前進して、通常縫製時と同じ状態とな
り、この状態での一回の運針が行われる結果、前記空環
bに連続して通常の縫製が行われ、前記空環bから引き
出されたループが針により捉えられて縫製生地Wに縫い
付けられ、図9(a)に示す如き縫い目が得られる。
【0051】以上の動作の後、運転制御部9は、針糸切
断ソレノイド19に動作指令を発し、この後生地押え下降
ソレノイド7に動作指令を発し、操作ペダル13の踏み返
しに応じた一連の動作を終える。この動作により、図9
に示す如く形成された縫い目の末端a′にて針糸aが切
断され、次いで、押え金2,2が下降せしめられること
になり、縫製を終えた縫製生地Wの取り出しは、この状
態で行われる。
【0052】このように取り出された縫製生地Wにおい
ては、裏面側に引き出された針糸aの末端a′に引っ張
り力を加えることにより、前記空環bが引き締められ、
図9(b)に示す如き結び目b′が形成され、この結び
目b′に連続する縫い目がほどける虞れはない。
【0053】なお、空環bの引き締めのための針糸aへ
の引っ張り力は、針糸切断ソレノイド19の動作による針
糸aの切断前に加えてもよく、このことは、前記空環b
を形成するための一回の運針の間に図示しない糸締め装
置を動作させ、針糸aへの付与張力を高めることにより
達成される。このようにした場合、縫製生地Wの取り出
しの段階にて前記結び目b′が生じた縫い目が得られ
る。
【0054】
【発明の効果】以上詳述した如く本発明に係る掬い縫い
ミシンにおいては、突き上げ板による突き上げ位置にて
縫製生地を上側から押える押え爪の従動ストロークを制
限するストッパと、このストッパによる制限を解除する
ストッパ解除手段とを備えると共に、突き上げ板の突き
上げ動作を禁じる拘束手段を備えたから、ストッパによ
る押え爪の従動ストロークを制限した状態にて通常の縫
いを実施し、押え爪の過剰な動きを防いで縫い目の安定
化を図ることができ、また、ストッパによるストローク
制限を解除すると共に、突き上げ板の動作を禁じること
により、縫製生地を押え受け下に十分に押し下げて縫製
終了前の空縫いを実施でき、抜け止めのための結び目と
なる空環を確実に形成することができる。
【0055】また、縫製の終了前の所定の操作に応じた
制御手段の動作により、押え爪のストローク制限を解除
し、突き上げ板による突き上げを禁じた状態と、突き上
げ板による突き上げを再開し、押え爪のストロークを制
限した状態とでの各一回又は複数回の運針をこの順に行
なわせる構成としたから、前記空環の形成による止め縫
いを確実にしかも自動的に実施できる等、本発明は優れ
た効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る掬い縫いミシンの全体構成を示す
模式的正面図である。
【図2】本発明に係る掬い縫いミシンの縫製部近傍を拡
大して示す側断面図である。
【図3】本発明に係る掬い縫いミシンの縫製部近傍の平
面図である。
【図4】本発明に係る掬い縫いミシンの制御系のブロッ
ク図である。
【図5】本発明に係る掬い縫いミシンによる縫製動作の
内容を示すタイムチャートである。
【図6】従来の掬い縫いミシンの縫製部近傍を拡大して
示す側断面図である。
【図7】図6の VII−VII 線による横断面図である。
【図8】掬い縫いミシンによる一般的な縫い目の形成態
様を示す斜視図である。
【図9】縫い終わり部において望ましい止め縫いがなさ
れた掬い縫いミシンによる縫い目の形成態様を示す斜視
図である。
【符号の説明】
1 押え受け 2 押え金 3 突き上げ板 4 押え爪 5 ストッパ 6 ストッパアクチュエータ 7 生地押え下降ソレノイド 8 突き上げ板下降ソレノイド 9 運転制御部 10 ミシン本体 13 操作ペダル M ミシンモータ W 縫製生地 a 針糸 b 空環 b′ 結び目
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D05B 1/00 - 97/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 押え受けと押え金とにより上下から挾持
    された縫製生地の所定部位を前記押え受けの上部に反復
    的に突き上げる突き上げ板と、この突き上げ部位にて前
    記縫製生地の上面に弾接し、該縫製生地の突き上げに従
    して予め設定されたストローク間にて上下動する押え
    爪とを備え、前記突き上げ板により突き上げられる縫製
    生地を、前記押え爪により上側から押えつつ、各突き上
    げタイミングに同期した運針により縫製する掬い縫いミ
    シンにおいて、前記押え爪の一部に当接し、該押え爪の
    下動を前記ストロークの中間位置に制限するストッパ
    と、該ストッパによる制限を解除するストッパ解除手段
    と、前記突き上げ板の突き上げ動作を禁じる突き上げ拘
    束手段とを具備することを特徴とする掬い縫いミシン。
  2. 【請求項2】 前記縫製の終了前の所定の操作に応じ
    て、前記ストッパ解除手段及び前記突き上げ拘束手段の
    動作下にて少なくとも一回の運針を行わせ、この運針に
    続き、前記ストッパ解除手段及び前記突き上げ拘束手段
    の非動作下にて少なくとも一回の運針を行わせる制御手
    段を備える請求項1記載の掬い縫いミシン。
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