JP3353164B2 - ギ酸エステルの異性化反応用固体触媒及びそれを用いるカルボン酸の製造方法 - Google Patents

ギ酸エステルの異性化反応用固体触媒及びそれを用いるカルボン酸の製造方法

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JP3353164B2
JP3353164B2 JP23097493A JP23097493A JP3353164B2 JP 3353164 B2 JP3353164 B2 JP 3353164B2 JP 23097493 A JP23097493 A JP 23097493A JP 23097493 A JP23097493 A JP 23097493A JP 3353164 B2 JP3353164 B2 JP 3353164B2
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はギ酸エステルの異性化反
応用固体触媒及びそれを用いるカルボン酸の製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、酸酢の合成はRhカルボニル錯体
触媒を用いたメタノールのカルボニル化法が主流であ
る。この方法は一酸化炭素を消費する反応であることか
ら製造プロピルの立地は一酸化炭素の供給源が確保され
ていることが制限条件となっている。また、この方法の
場合は、技術的には一酢酸化炭素を反応液への溶解させ
るために多大のエネルギーを必要とする欠点がある。一
方、一酢酸化炭素の消費なしでカルボン酸を製造するた
めに、ギ酸エステルを、金属触媒を用い、ハロゲン化ア
ルキルと一酸化炭素の存在下で異性化させる方法が知ら
れている(特公昭49−3513号、特開昭51−65
703号、特開昭51−65703号、特開昭56−2
2745号、特開昭56−73040号等)。金属触媒
のうち、最も高活性を示すものはロジウム触媒である。
ロジウム触媒としては、RhCOCl〔P(C
6532、RhCl3、Rh(CO)4Cl2等が用い
られる(特公昭49−3513号)。これらのロジウム
触媒は、ギ酸エステル中に溶解するため、反応は液相均
一系で行われる。しかしながら、このような液相均一系
の反応では、反応生成物と触媒との分離に非常に大きな
困難を伴う上、触媒の損失も起りやすいという問題があ
る。ロジウム触媒は非常に高価であるため、その損失は
できる限り回避することが必要である。従って、前記ロ
ジウム触媒を用いる液相均一系の反応プロセスにおいて
は、ロジウム触媒の分離と、ロジウム触媒の再生をロジ
ウム触媒を損失することなく効率的に行うための複雑な
装置が必要となる。そして、このような装置は、製品コ
ストを上昇させ、そのプロセスの工業化を妨げる大きな
原因となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ギ酸エステ
ルを異性化するためのロジウム含有固体触媒及びそれを
用いるカルボン酸の製造方法を提供することをその課題
とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。即ち、本発明によれば、ロジウム錯体を担持
させた多孔質架橋構造を有するビニルピリジン系樹脂か
らなるギ酸エステルの異性化反応用固体触媒が提供され
る。また、本発明によれば、ギ酸エステルの異性化反応
用固体触媒を用い、ヨウ化アルキルと一酸化炭素の存在
下、ギ酸エステルを異性化してカルボン酸を製造する方
法において、該ギ酸エステルの異性化反応用触媒とし
て、前記固体触媒を用いることを特徴とするカルボン酸
の製造方法が提供される。
【0005】本発明のギ酸エステルの異性化反応用固体
触媒において、ロジウム錯体の担持用に用いる担体は、
多孔質架橋構造を有するビニルピリジン系樹脂(以下、
単にVP樹脂とも言う)である。本発明で用いる好まし
い担体は、30〜60%、好ましくは35〜60%の架
橋度、0.2〜0.4cc/g、好ましくは0.3〜
0.4cc/gの細孔容積及び20〜100nm、好ま
しくは30〜90nmの平均細孔径を有するVP樹脂で
ある。前記した特定の架橋度、細孔容積及び平均細孔径
を有するVP樹脂にロジウム錯体を担持させた触媒は、
耐久性及び耐摩耗性にすぐれ、かつその触媒寿命が著し
く延長され、しかもすぐれたギ酸エステルの異性化反応
活性を有する。
【0006】VP樹脂にロジウム錯体を担持させた触媒
において、そのVP樹脂の架橋度が前記範囲より小さく
なると、脱ピリジン速度の増大及び耐摩耗性の低下等の
問題を生じるので好ましくなく、一方、前記範囲より大
きくなると、触媒活性の低下の問題を生じるので好まし
くない。また、VP樹脂の細孔容積が前記範囲より小さ
くなると、触媒活性の低下の問題を生じるので好ましく
なく、一方、前記範囲より大きくなると、耐摩耗性の低
下等の問題を生じるので好ましくない。さらに、VP樹
脂の平均細孔径が前記範囲より小さくなると、触媒活性
の低下の問題を生じるので好ましくなく、一方、前記範
囲より大きくなると、耐摩耗性の低下等の問題を生じる
ので好ましくない。
【0007】本明細書において、VP樹脂に関して言う
架橋度は以下のように定義される。またVP樹脂に関し
て言う細孔容積及び表面積は以下のようにして測定され
たものである。さらに、VP樹脂に関して言う平均細孔
径は以下のようにして算出されたものである。 (架橋度) 架橋度(%)=A/B×100 A:樹脂中に含まれる架橋剤の重量 B:樹脂中に含まれるビニルピリジン系モノマーの重量 (細孔容積)水銀圧入法により測定した。この場合、水
銀の表面張力は25℃で474dyne/cmとし、使
用接触角は140度とし、絶対水銀圧力を1〜200k
g/cm2まで変化させて測定した。 (表面積)B.E.T法により測定された。 (平均細孔径)前記のようにして測定された細孔容積及
び表面積の各測定値を用い、以下の式により算出した。 平均細孔径(nm)=4(C/D)×103 C:細孔容積(cc/g) D:表面積(m2/g)
【0008】VP樹脂は、ビニルピリジン系単量体と、
架橋剤としての2個のビニル基を持つ芳香族化合物を共
重合させることによって製造される。VP樹脂を得るた
めのこの共重合方法自体は従来公知の方法であり、例え
ば、(1)沈殿剤添加法、(2)線状重合体添加法、
(3)膨潤剤・沈殿剤添加法、(4)希釈剤・線重合体
添加法等がある。本発明で用いるVP樹脂の好ましい製
造方法については、特公昭61−25731号公報に詳
記されている。即ち、この方法によると、VP樹脂は、
ビニルピリジン系単量体と、2個のビニル基を持つ架橋
剤と、必要に応じて用いられるビニル単量体との混合物
を、ラジカル重合反応触媒の存在下で重合反応させるこ
とによって製造される。この場合、重合反応は、水を媒
体とする水系懸濁重合が採用される。また、重合反応系
には、懸濁安定剤及び沈殿剤が添加される。懸濁安定剤
としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセ
ルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリ
ル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、澱粉、ゼ
ラチン、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアンモニ
ウム塩等の水溶性高分子、炭酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム等の無機塩が
用いられる。また、反応系には、塩化ナトリウムや亜硝
酸ナトリウムを添加することができる。沈殿剤として
は、単量体に対して溶剤として作用するが、生成ポリマ
ーに対しては貧溶媒として作用する有機溶媒、例えば、
イソオクタン等の炭素数5〜10の炭化水素の他、アル
コール、エステル等が用いられる。このようなVP樹脂
の製造方法においては、得られるVP樹脂に関し、その
架橋度は架橋剤の添加量でコントロールすることがで
き、その細孔容積及び平均細孔径は沈殿剤の種類とその
添加量によって主にコントロールすることができ、さら
には、懸濁安定剤の種類とその添加量及び反応温度等に
てコントロールすることができる。
【0009】VP樹脂を得るために用いるビニルピリジ
ン系単量体としては、4−ビニルピリジン、2−ビニル
ピリジン、ピリジン環にメチル基やエチル基等の低級ア
ルキル基を有する4−ビニルピリジン誘導体又は2−ビ
ニルピリジン誘導体等が挙げられる。また、このビニル
ピリジン系単量体には、他のビニル単量体、例えば、ス
チレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体を混
入することができる。これらの芳香族系ビニル単量体の
混入量は、全単量体中、30モル%以下、好ましくは2
0モル%以下にするのがよい。前記ビニルピリジン系単
量体に共重合させる架橋剤は、2個のビニル基を有する
化合物である。このようなものとしては、ジビニルベン
ゼン、ジビニルトルエン等の芳香族化合物の他、ブダジ
エン等の脂肪族化合物を挙げることができる。この架橋
剤の使用量は、所望するVP樹脂の架橋度に応じて適宜
決める。
【0010】VP樹脂の粒径は、0.01〜4mm、好
ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.4〜2m
mの粒状体として用いられ、その好ましい形状は球状体
である。
【0011】本発明において、VP樹脂に担持させるロ
ジウム錯体は、担持された形態のロジウム錯体イオンで
表わして、例えば、〔Rh(CO)nm-(式中、Xは
ハロゲン原子を示し、n及びmは1以上の数で、n+m
=6又は4である)で表わすことができる。VP樹脂に
ロジウム錯体を担持させる方法としては以下に示す方法
が挙げられる。 (1)VP樹脂のピリジン環の窒素原子に水溶液中でロ
ジウムイオンを担持させた後、有機溶媒中でハロゲン化
アルキルと一酸化炭素の存在下にてロジウム錯体に変化
させる方法。この方法におけるピリジン環とロジウムと
の反応は以下の式で表わされる。また、その反応条件と
しては、一般的には、ロジウムの担持は、常温、常圧下
の条件を、担持ロジウムの錯体化は、7〜30kg/c
2、好ましくは10〜20kg/cm2のCO加圧条件
と140℃〜250℃、好ましくは160〜200℃の
温度条件を用いることができる。有機溶媒としては、メ
タノールやエタノール等のアルコール;酢酸やプロピオ
ン酸等のカルボン酸、アセトンやメチルエチルケトン等
のケトン類、ジメチルエーテルやジオキサン等のエーテ
ル;酢酸メチルや酢酸エチル等のカルボン酸エステル等
が用いられる。
【0012】
【化1】 前記式中、Rは低級アルキル基を示す。Xは塩素、臭
素、ヨウ素等のハロゲン原子を示し、好ましくはヨウ素
原子である。n及びmは1以上の数で、n+m=6又は
4である。
【0013】(2)VP樹脂を、一酸化炭素加圧下にお
いて、ハロゲン化アルキルを含む溶媒中でロジウム塩と
接触させる方法。この方法の場合、一般的には、7〜3
0kg/cm2、好ましくは10〜20kg/cm2のCO
2加圧条件と140〜250℃、好ましくは160〜2
00℃の温度条件下で、ロジウム塩とVP樹脂とを接触
させればよい。このようにして得られる触媒は、VP樹
脂に含まれるピリジン環がハロゲン化アルキルによって
4級化されてピリジニウム塩となり、このピリジニウム
塩に、ロジウム塩とハロゲン化アルキルと一酸化炭素と
の反応により生成したロジウムカルボニル錯体[Rh
(CO)nm-がイオン的に結合した構造を有する。
前記ロジウム塩としては、塩化ロジウムや、臭化ロジウ
ム、ヨウ化ロジウム等のハロゲン化ロジウムが挙げられ
る。また、ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ化メチ
ル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、塩化メチル、塩化
エチル、塩化プロピル等の炭素数1〜6の低級アルキル
基を有するものが挙げられるが、特にヨウ化メチルの使
用が好ましい。ロジウム錯体の担持量は、金属ロジウム
換算で、VP樹脂に対して、0.2〜2重量%、好まし
くは0.3〜1重量%の範囲である。
【0014】本発明で反応原料として用いるギ酸エステ
ルは、次の一般式(I)で表わすことができる。 HCOOR1 (I) 前記式中、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基、イソブチル基等のアルキル基、アリル基等のア
ルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアルアルキ
ル基を示す。
【0015】本発明触媒を用いるギ酸エステルの異性化
反応によるカルボン酸の製造は、ギ酸エステル中に本発
明触媒とハロゲン化アルキルを存在させ、一酸化炭素の
存在下でギ酸エステルを異性化させることによって実施
される。本発明の触媒を用いるギ酸エステルの異性化反
応は、種々の反応器を用いて実施することができる。こ
のような反応器の形式としては、固定床、混合槽、膨脹
床等が挙げられる。反応器内における触媒充填量は、一
般には、反応器内溶液に対して2〜40重量%である
が、混合槽反応器の場合、2〜25重量%に選ぶのがよ
い。また、固定床反応器では20〜40重量%、膨張床
反応器では2〜25重量%に選ぶのがよい。
【0016】ギ酸エステルの異性化反応においては、ギ
酸エステル自体が反応溶媒として作用するので、反応溶
媒の使用は必ずしも必要とされない。反応溶媒として
は、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、フタル
酸、安息香酸等のカルボン酸;酢酸メチル、酢酸エチ
ル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリ
コールジアセテート、アジピン酸ジメチル、安息香酸メ
チル、フタル酸ジメチル、酢酸フェニル等のカルボン酸
エステル;ドデカン、ヘキサデカン、ベンゼン、ビスフ
ェニル等の芳香酸炭化水素;トリフェニルホスフェー
ト、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホス
フェート、テトラブチルホスフェート等のリン酸エステ
ル;フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、
ニトロフェノール等のフェノール;ジフェニルエーテル
等の芳香族エーテル;アセトン、メチルエチメケトン、
メチルイソブチルケトン、アセトンフェノン、プロピオ
フェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケト
ン等を用いることができる。これらの反応溶媒は単独又
は混合物の形で用いられる。ハロゲン化アルキルとして
は、炭素数1〜6のアルキル基を有するものが好ましく
用いられるが、より好ましくは、ヨウ化メチル等のヨウ
化アルキルが用いられる。
【0017】本発明触媒を用いてギ酸エステルの異性化
反応を行う際のCO分圧(一酸化炭素分圧)は、5kg
/cm2以上であればよく、CO分圧を特に高くしても
反応速度はあまり向上せず、格別の反応上の利点は得ら
れず、経済的観点からはそのCO分圧の上限は30kg
/cm2程度にするのがよい。従って、CO分圧は、5
〜30kg/cm2、好ましくは5〜20kg/cm2
範囲に規定するのがよい。CO分圧をこのような範囲に
保持することにより、全反応圧を経済的な20〜60k
g/cm2G、特に20〜40kg/cm2G、更に好ま
しくは20〜30kg/cm2G以下という低圧に保持
することが可能になる。本発明の場合、一酸化炭素は反
応に関与せず、反応の経過によっても消費されない。一
酸化炭素はもっぱらVP樹脂に担持されたロジウム錯体
の安定化にのみもちいられる。
【0018】本発明触媒を用いるギ酸エステルの異性化
反応における反応温度は140〜250℃、好ましくは
160〜200℃であるが、その上限は、使用するVP
樹脂の耐熱性に応じて適当に選定する。また、反応系に
おけるハロゲン化アルキルの存在量は、反応器内溶液
中、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%であ
る。さらに、反応系におけるロジウム濃度は、反応器内
溶液中、50wtppm以上、好ましく300wtpp
m以上、より好ましくは400wtppm以上である。
なお、ここで言うロジウム濃度は、反応器内からVP樹
脂を除いた溶液に対するロジウム金属量のwt%であ
る。
【0019】本発明において、反応系に水が存在する
と、この水はギ酢エステルを分解して、目的とするカル
ボン酸の収率を低下させるとともに、装置腐食性の高い
ギ酢を副生させる。さらに、水は助触媒であるハロゲン
化アルキルを分解して反応速度を低下させると共に装置
腐食性の高いギ酸を副生させる。従って、反応系におけ
る水の存在は好ましくなく、反応溶液中における水の量
は0.2重量%以下、好ましくはゼロ%にするのがよ
い。
【0020】本発明の触媒を用いるギ酸エステルの異性
化反応は、流通式反応器を用いて有利に実施される。流
通式反応器には、混合槽流通式反応器と、ピストンフロ
ー式反応器があるが、以下、これらの反応器を用いたギ
酸メチルの異性化による酢酸製造例について詳述する。
図1に混合槽流通式反応器を用いる酢酸製造方法のフロ
ーシートの1例を示す。図1において、R−1は混合槽
流通式反応器、7は冷却器、Sは分離系を示す。
【0021】反応器R−1には、反応溶媒としての酢酸
と、触媒としてのロジウム錯体担持VP樹脂と、反応促
進剤としてのヨウ化メチルを充填し、これらの充填物
は、その反応器内に付設された撹拌器により均一に撹拌
混合される。この反応器R−1に対して、その底部から
ヨウ化メチルを含むギ酸メチルをライン1及び2を介し
て導入する。一酸化炭素をライン3から反応器内に任意
の圧力に達するまで導入する。反応中は、一酸化炭素の
消費はないのでバルブ15は閉じておく。ヨウ化メチル
を含むギ酸メチルに対しては、必要に応じ、反応溶媒と
しての酢酸を添加することができる。反応器R−1内に
導入されたギ酸メチルは、ここでロジウム錯体担持VP
樹脂及びヨウ化メチルの存在下で反応し、酢酸へと異性
化される。この反応により生成した酢酸を含む反応生成
液は、ライン4を通って抜出され、その一部はライン5
を通って分離系Sに導入され、他の一部はライン6を介
して、冷却器7を通り、ここで冷却された後、ライン2
を通って、反応器R−1に循環される。反応生成液の一
部をこのように冷却器を介して反応器に循環させること
により、反応器内で発生した反応熱を除去することがで
きる。
【0022】分離系Sに導入された酢酸を含む反応生成
液は、ここで蒸留を含む分離処理に付され、酢酸がライ
ン11を通って回収され、反応生成液から酢酸を分離し
た後の副生物を含む反応生成液残液はライン12,13
を通り、ギ酸メチルライン1に導入され、ライン2を通
って反応器R−1に循環される。残液の一部は、必要に
応じて、ライン14を通って系外へ排出される。この循
環液には、ヨウ化メチル、ヨウ化水素の他、未反応ギ酸
メチル、反応溶媒としての酢酸等を含む。また、この循
環液には、分離された酢酸の一部を混入させることもで
きる。
【0023】前記のようにしてギ酸メチルの異性化反応
を行う場合、反応器R−1内に供給されるギ酸メチルや
循環液の各量を調節し、反応器内溶液の組成を特定範囲
に保持するとともに、一酸化炭素分圧を5〜30kg/
cm2、反応温度を140〜250℃に保持するのが好
ましい。このような条件下でギ酸メチルの異性化反応を
行うことにより、反応圧力20〜60kg/cm2G、
特に20〜30kg/cm2Gという低められた圧力で
ギ酸メチルの異性化反応を迅速に行わせることができ
る。
【0024】ギ酸メチルの異性化反応は、発熱反応であ
り、反応温度を所定温度に保持するには、反応熱を除去
する必要がある。この反応熱を除去するための代表的方
法としては、図1に示すように、反応器内溶液の一部を
外部へ抜出し、これを冷却器により間接的に冷却した後
反応器へ戻す方法を示すことができる。このような方法
の他、反応熱を除去するためには種々の方法が可能であ
る。例えば、反応器内溶液をフラッシャーに導入してそ
の一部を気化させてその溶液を断熱冷却し、この冷却さ
れた溶液を反応器に循環することもできる。
【0025】反応器R−1内における溶液の撹拌は、撹
拌器以外の方法によって行うことも可能であり、例え
ば、反応器内に導入された一酸炭素ガスによって反応器
内溶液を流動撹拌させたり、あるいは反応器内への循環
液流を用いて流動撹拌させることもできる。
【0026】次に、ピストンフロー式反応器を用いたギ
酸メチルの異性化反応による酢酸の製造方法について説
明する。図2は、ピストンフロー式反応器を用いた酢酸
製造方法のフローシートの1例を示す。図2において、
R−2はピストンフロー式反応器、21は気液分離器、
Sは分離系を示す。
【0027】ピストンフロー式反応器R−2は、その内
部に複数の触媒管を立設した構造を有する。この場合の
触媒管は、その内部に触媒としてロジウム錯体担持VP
樹脂を充填した構造のもので、触媒が流動しないように
充填された固定床式のものであってもよく、また触媒が
流動する膨張床式のものであってもよい。
【0028】この反応器R−2内の触媒管は、その外表
面に冷媒を接触流通させることにより冷却される。冷媒
としては好ましくはスチームが用いられる。スチームは
反応器から抜出され、蒸留塔の熱源等として利用され
る。ヨウ化メチルを含む原料ギ酸メチルはライン1を通
り、ライン13から循環される循環液及びライン3を通
して供給される一酸化炭素とともにライン2を通って反
応器R−2の入口部に導入される。この場合、ギ酸メチ
ルに対しては、必要に応じ、反応溶媒としての酢酸を添
加することができる。反応器R−2の入口底部に導入さ
れた一酸化炭素と、ギ酸メチル及び酢酸を含む液体とか
らなる気液混合物は、その反応器の入口部において気液
が充分分散され、複数の触媒管に液及びガスが均一に供
給される。
【0029】触媒管内においては、ギ酸メチルは、反応
溶媒としての酢酸中において、触媒及びヨウ化メチルの
存在下で反応して、酢酸に変換される。酢酸を含む反応
生成液はライン20を通して抜出され、気液分離器22
に導入され、ここで一酸化炭素、一部のヨウ化メチル、
一部の未反応ギ酸メチルを含むガス状物がライン23を
通ってライン3へ返送される。一酸化炭素を含むガス状
物が分離された後の反応生成液は、ライン22を通って
分離系Sに導入され、ここで酢酸が分離され、分離され
た酢酸はライン26を通って回収される。
【0030】分離系Sにおいて、反応生成液から酢酸を
分離した後の残液は、ライン12,13を通ってギ酸メ
チルライン1に導入され、ライン2を通って反応器R−
2に循環される。この循環残液の一部は、必要に応じて
ライン14を通して系外へ排出される。この循環液は、
ヨウ化メチル、ヨウ化水素等の副生物及び未反応ギ酸メ
チル及び酢酸を含有する。また、この中には分離された
酢酸の一部を混入させることもできる。
【0031】前記のようにしてギ酸メチルの異性化反応
を行う場合、反応器R−2内に供給されるギ酸メチル、
酢酸及び循環液の各量を調節し、反応器内溶液の組成を
特定範囲に保持するとともに、一酸化炭素分圧を5〜3
0kg/cm2、反応温度を140〜250℃に保持す
るのが好ましい。このような条件下でギ酸メチルの異性
化反応を行うことにより、反応圧力を20〜60kg/
cm2G、特に20〜40kg/cm2Gという低められ
た圧力で、ギ酸メチルの異性化反応を迅速に行わせるこ
とができる。
【0032】
【発明の効果】本発明のギ酸エステルの異性化反応用固
体触媒は、VP樹脂にロジウム錯体を担持させた不溶性
のもので、反応溶液との分離が容易であり、ロジウムの
反応液中への溶出による損失を防止することができる。
また、本発明の触媒は、固体触媒であり、その反応溶液
中でのロジウム濃度を高くすることができるので、カル
ボン酸を高生産率で得ることができる。さらに、本発明
による触媒は、耐久性及び耐摩耗性にすぐれ、その触媒
寿命は著しく延長され、かつ高いギ酸エステルの異性化
反応性を有するものである。本発明の触媒を用いるギ酸
エステルの異性化反応においては、その触媒が固体触媒
であり、反応溶液との分離が容易であるため、反応器か
ら抜出された反応液からの特別の触媒分離装置や触媒再
生装置の使用は必要とされない。また、本発明の場合、
その触媒は、一酸化炭素分圧が低い条件においても充分
な活性を有し、しかも一酸化炭素は触媒の安定化にのに
関与し、消費されないことから、特別の一酸化炭素製造
装置が必要とされず、また、酸化炭素の反応への溶解が
必要ないため強度の撹拌動力が不要となり、工業的に有
利に実施することができる。さらに、本発明で用いる触
媒は、そのVP樹脂が高い耐久性及び耐摩耗性を有する
ことから、樹脂中からのピリジン環の脱離が効果的に防
止されるとともに、樹脂の表面摩耗による微粉発生も効
果的に防止され、ギ酸エステルの異性化反応を長時間に
わたって円滑に実施することができる。
【0033】
【実施例】次に本発明を実施例にさらに詳細に説明す
る。
【0034】実施例1 (1)触媒の調製及び触媒活性試験 ビニルピリジン系樹脂6.7g部(乾燥重量)と塩化ロ
ジウム0.15gを、ギ酸メチル62.3g、酢酸6
5.2g及びヨウ化メチル11.1gからなる混合液に
加え、これをハステロイB製撹拌器付オートクレーブ
(内容積200ml)に仕込み、190℃まで昇温し、
このオートクレーブ内を一酸化炭素でその分圧が25k
g/cm2になるまで加圧し、この条件下で、オートク
レーブ内容物を撹拌速度600rpmで30分間撹拌し
た。その後、内容物をオートクレーブから取出し、ギ酸
メチルで洗浄して、ロジウム錯体が担持されたビニルピ
リジン系樹脂からなる触媒を得た。反応液中のロジウム
を原子吸光法で定量したところ、9.6ppmであっ
た。これによりビニルピリジン重量に対して0.8重量
%のロジウムが担持されたことを確認した。次に、前記
のようにして得られた触媒をそのままオートクレーブに
入れ、さらに、酢酸65.2g、ギ酸メチル62.3
g、ヨウ化メチル11.1gからなる混合液を仕込み、
180℃まで昇温した後、一酸化炭素分圧が50kg/
cm2になるまで一酸化炭素で加圧し、1,000rp
mで撹拌しながら2時間反応させた。次に、前記の反応
により得られた反応液の組成をガスクロマトグラフィー
で分析し、反応に関与したギ酸メチル量を測定し、1時
間当り、1リットル当りの反応量(Space Tim
e Yield=STY)を算出した。
【0035】(2)VP樹脂の耐摩耗試験 1リットルのガラス容器に酢酸500gとビニルピリジ
ン系樹脂25g(乾燥重量)を入れ、幅3.2cm、高
さ1.2cmのステンレス製撹拌翼にて1000rpm
で室温にて1000時間撹拌し、撹拌停止後に液中に浮
遊する約10μm以下の微粒子を孔径0.2μmのフィ
ルターで濾過し、そのフィルターに捕集された微粒子重
量Aを測定した。この微粒子重量Aから、試験開始前に
同様にして測定した微粒子重量Bを差引き、その値を試
験により発生した微粒子量とした。この微粒子量から樹
脂の微粉化速度を算出した。
【0036】(3)脱ピリジン環試験 110℃、沸騰状態の酢酸90wt/水10wtの溶液
中にビニルピリジン系樹脂を添加し、140時間後に溶
液中の窒素濃度を測定して、樹脂からの脱ピリジン環速
度に換算した。
【0037】表1に前記試験に用いたビニルピリジン系
樹脂の特性を示し、表2に前記試験結果を示す。
【0038】なお、表1及び表2において符号で示した
ビニルピリジン系樹脂の具体的内容は次の通りである。 (レイレクス402)レイリイ・ター・アンド・ケミカ
ル社からの市販品、商品名「レイレクス(Reille
x)402」、平均粒径:0.2mm以下(粉末状) (レイレクス425)レイリイ・ター・アンド・ケミカ
ル社からの市販品、商品名「レイレクス425」、平均
粒径:0.55mm (KEX316)広栄化学社からの市販品、商品名「K
EX316」、平均粒径:0.65mm (KEX212)広栄化学社からの市販品、商品名「K
EX212」、平均粒径:0.1mm (VP樹脂A)ビニルピリジン77重量部とジビニルベ
ンゼン38重量部(40wt%のエチルビニルベンゼン
を含む)とを、沈殿剤添加法(特公昭61−25731
号)により共重合させて得られた共重合体、平均粒径:
0.5mm (VP樹脂B)ビニルピリジン72重量部とジビニルベ
ンゼン47重量部(40wt%のエチルビニルベンゼン
を含む)とを、沈殿剤添加法(特公昭61−25731
号)により共重合させて得られた共重合体、平均粒径:
0.50mm (VP樹脂C)ビニルピリジン67重量部とジビニルベ
ンゼン56重量部(40wt%のエチルビニルベンゼン
を含む)とを、沈殿剤添加法(特公昭61−25731
号)により共重合させて得られた共重合体、平均粒径:
0.60mm (VP樹脂D)ビニルピリジン63重量部とジビニルベ
ンゼン63重量部(40wt%のエチルビニルベンゼン
を含む)とを、沈殿剤添加法(特公昭61−25731
号)により共重合させて得られた共重合体、平均粒径:
0.70mm (VP樹脂E)ビニルピリジン60重量部とジビニルベ
ンゼン67重量部(40wt%のエチルビニルベンゼン
を含む)とを、沈殿剤添加法(特公昭61−25731
号)により共重合させて得られた共重合体、平均粒径:
0.65mm
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】実施例2 VP樹脂Bを用いて実施例1(1)に示す方法で触媒を
調製した。次いで、表3の仕込み組成の液と前記で得た
ビニルピリジン樹脂担持ロジウム触媒10.3gを仕込
む以外は実施例1(1)と同様にして反応を行った。反
応後オートクレーブを放冷、放圧し反応生成液をガスク
ロマトグラフィにより分析した。反応終了液の組成を表
3に示す。ギ酸メチルの転化率は50.1%、酢酸の選
択率は96.4%であり、反応中に一酸化炭素の消費は
なかった。また反応終了液中に微量の酢酸メチル及びギ
酸が検出された。
【0042】
【表3】
【0043】実施例3 ギ酸メチルと酢酸の量比が実施例2と同じで、ヨウ化メ
チルの割合を変えた表4に示す仕込み液組成で、実施例
2と同様の操作を行なった。この時のギ酸メチルの転化
率は38.4%、酢酸の選択率は88.2%であった。
【0044】実施例4 ヨウ化メチルの割合が実施例2と同じで、ギ酸メチルと
酢酸の量比を変えた表4に示す仕込み液組成で、実施例
2と同様の操作を行なった。この時のギ酸メチルの転化
率は36.0%、酢酸の選択率は100%であった。
【0045】実施例5 実施例4と同様の仕込み液組成、操作で攪拌速度を50
0rpmにして反応を行なった。この時のギ酸メチルの
東化率は40.4%、酢酸の選択率は100%であっ
た。この結果から、撹拌速度の反応に対する実質的影響
は認められなかった。
【0046】実施例6 実施例2と同様の仕込み液組成、操作で一酸化炭素の分
圧を5kg/cm2にして反応を行なった。この時のギ酸
メチルの転化率は37.6%、酢酸の選択率は95.6
%であった。
【0047】実施例7 実施例2と同様の仕込み液組成、操作で反応度を170
℃にして反応を行なった。この時のギ酸メチルの転化率
は31.3%、酢酸の選択率は100%であった。以上
の反応結果を表4にまとめて示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【図面の簡単な説明】
【図1】混合槽流通式反応器を用いる酢酸製造方法のフ
ローシートの1例を示す。
【図2】ピストンフロー式反応器を用いる酢酸製造方法
のフローシートの1例を示す。
【符号の説明】
R−1 混合槽流通式反応器 R−2 ピストンフロー式反応器 S 分離系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白戸 義美 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12 番1号 千代田化工建設株式会社内 (72)発明者 米田 則行 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12 番1号 千代田化工建設株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−153652(JP,A) 特開 昭59−82947(JP,A) 特開 昭63−253047(JP,A) 特開 平6−315637(JP,A) 特開 平6−315636(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 37/36 C07C 51/00 C07C 53/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロジウム錯体を担持させた多孔質架橋構
    造を有するビニルピリジン系樹脂からなるギ酸エステル
    の異性化反応用固体触媒。
  2. 【請求項2】 30〜60%の架橋度、0.2〜0.4
    cc/gの細孔容積及び20〜100nmの平均細孔径
    を有する請求項1の固体触媒。
  3. 【請求項3】 ビニルピリジン系樹脂が、単量体成分と
    してスチレンを含有する請求項1又は2の固体触媒。
  4. 【請求項4】 ビニルピリジン系樹脂が、架橋剤成分と
    して、ジビニルベンゼンを含む請求項1〜3のいずれか
    の固体触媒。
  5. 【請求項5】 ギ酸エステルの異性化反応用固体触媒を
    用い、ハロゲン化アルキルと一酸化炭素の存在下、ギ酸
    エステルを異性化してカルボン酸を製造する方法におい
    て、該ギ酸エステルの異性化反応用触媒として、請求項
    1〜4のいずれかの固体触媒を用いることを特徴とする
    カルボン酸の製造方法。
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