JP2001172222A - カルボン酸の製造方法 - Google Patents

カルボン酸の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低級オレフィンを含酸素ガスで酸化し直接一
段の反応操作でカルボン酸を製造する方法を提供する。 【解決手段】金を担体上に担持した触媒の存在下に低級
オレフィンを含酸素ガスを酸化剤として、水溶液中で反
応させる。 【効果】本発明の金触媒を使用することにより従来既知
のパラジウム系触媒に比較し効率よく工業的に有利にカ
ルボン酸を製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はオレフィンを水溶液
中で含酸素ガス存在下に反応させ直接一段の反応操作で
カルボン酸を製造する方法,より詳細には該反応を実施
する際により改良された触媒を使用してカルボン酸を製
造する方法に関するものである。
【0002】本発明の方法で使用するオレフィンは低級
オレフィンであつて例えばプロピレンを酸化して得られ
るアクリル酸をエステル化したものは合成樹脂モノマー
として大量に使用されている物である。同様にイソブテ
ンを酸化して得られるメタアクリル酸をメチルエステル
化して得られるメチルメタアクリレートも合成樹脂原料
として極めて大量に使用されている工業的に重要な化合
物である。
【0003】
【従来の技術】従来低級オレフィンを原料とする低級カ
ルボン酸の製造法としては,まずオレフィンを酸化して
アルデヒドを製造し、次いでこれを酸化しカルボン酸を
得る二工程の反応操作で製造されている(工業有機化
学、向山光昭 監訳、東京化学同人275頁他(197
8)。通常、上記の反応は多元系の遷移金属酸化物を触
媒として高温下で気相で実施される。オレフィン或いは
アルデヒドの酸化反応は、かなり大量の熱を放出する発
熱反応である。更に、副反応としてこれらの有機化合物
が二酸化炭素と水になる完全酸化反応が起こる。完全酸
化の反応熱は極めて大きいため、反応熱を除去し反応を
暴走させないための反応熱の除去が必要である。反応熱
を除去する目的で、径が1〜2インチ程度の鉄鋼製パイ
プを数千〜数万本束ねた多管式の反応器が多用される。
反応ガスが触媒を充填したパイプの内を通過し、パイプ
の外部は加熱および除熱の作用をする有機熱媒体或いは
亜硝酸塩などの無機熱媒体が循環する。この様な反応器
の形式のため、反応器の容積は大型となり、更に、反応
が二行程のため、大型の反応器が二基必要となり、設備
の建設費も大きなものになる。
【0004】オレフィンからアルデヒドを経由してカル
ボン酸を得る工程の選択率はアルデヒドを得る工程が8
0〜90%程度、アルデヒドからカルボン酸を得る工程
が70〜85%程度の範囲で、全行程の選択率としては
56〜78%程度の範囲であり、選択率改善の余地も残
されている。
【0005】上述の如き問題点を軽減するオレフィンか
らのカルボン酸の製造方法として、オレフィンの酸化を
水溶液中で実施し、一段の反応操作でカルボン酸を得る
方法が開示されている(J.Catalysis,24
巻,173頁(1972),工業化学雑誌,74巻,6
72頁(1971))。これらの報告に依れば、例え
ば、プロピレンを水溶媒中でパラジュームブラツクを触
媒とし、55℃程度の温和な条件で酸素ガスで酸化し、
オレフィン基準でアクリル酸の選択率83mol%、ア
クロレイン選択率15mol%、合計選択率98mol
%の高い選択率の値が示されている。この方法は、水媒
体中で温和な条件下に反応が進行し、高い選択率が得ら
れ副反応による二酸化炭素の副生が数mol%程度の優
れた反応成績を与えるが、触媒の効率が低く触媒重量当
たり単位時間に得られる目的物収量が充分でないなどの
問題点がある。
【0006】上記の報告ではオレフィンを酸化する最適
な反応温度が50〜60℃と低い。この為に、実験室規
模の反応では何ら問題が生じないが、工業的規模の反応
では最適反応温度が低いために、反応熱の除去と最適反
応温度の維持に冷却用の冷凍機の設置が必要となる。更
に冷凍機運転のための用役コストも必要となる。また、
本発明者の試験結果に依れば、上記反応方法は触媒活性
の低下が大きく、工業的操業には耐え得ない難点もあ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】オレフィンを含酸素ガ
スで酸化し直接一段の反応操作でカルボン酸を得る従来
既知の方法には、上述の如く、触媒の効率が低い、反応
熱除去と最適温度の維持に要するコストが大きい、或い
は使用する触媒の活性低下が大きい、等の幾つかの問題
点がある。
【0008】本発明の第一の目的は、オレフィンを酸化
し直接一段の反応操作でカルボン酸を与える効率の高い
反応方法を提供することであり、第二の目的は反応熱の
除去が容易である温度範囲で反応操作を実施し得る触媒
を提供することであり、第三の目的は、従来既知の触媒
より活性低下の少ない触媒を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は前述のような
問題点のない、オレフィンを酸化し直接一段の反応操作
で、カルボン酸を得る反応および触媒に関して種々研究
した。その結果、オレフィンを水溶液中で含酸素ガスで
酸化する反応に使用する触媒に担体上に担持した金触媒
を使用すれば効率よく目的物が得られ,貴金属の使用量
も従来既知のパラジューム系触媒にくらべ低減でき、反
応操作の温度も200℃程度まで上昇でき、触媒の活性
低下も軽減されることを見出し本発明を完成するに至つ
た。
【0010】また,使用する金触媒を疎水性化すること
により反応時のオレフィンと含酸素ガスの圧力を低減で
きることも見出し本発明を完成した。
【0011】即ち,本発明の要旨とするところはオレフ
ィンを含酸素ガスで酸化し直接一段の反応操作でカルボ
ン酸を製造するのに際し、水溶液中で金を担体上に担持
した触媒の存在下に反応させるところにある。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の方法はオレフィンを分子
状酸素存在下に金触媒を使用し、直接一段の反応でカル
ボン酸を製造する方法であつて、使用する金触媒が特徴
である。本発明を実施するのに使用する触媒は金を担体
上に担持した触媒である。使用する担体は活性炭,シリ
カ,アルミナ,シリカアルミナ,チタニア,ジルコニ
ア,炭酸カルシュームおよびゼオライトなどが使用され
るが特に活性炭が多用される。使用する活性炭は椰子殻
炭,木炭,などの木質系或いは石炭系が使用される。
更に,使用する触媒を疎水性化するには,担体としてテ
フロン(米国Dupont社製),シリカライト(米国
UCC社製),(シリカ/アルミナ)比が50以上のハ
イシリカゼオライト,或いは弗化黒鉛などを使用する。
【0013】或いは,通常の親水性担体を使用した金触
媒をポリテトラフルオロエチレン分散液スラリーで処理
するか,弗化黒鉛分散液のスプレイなどを噴霧し,乾燥
後焼成処理をして触媒を疎水性化する。
【0014】触媒を疎水性化することにより,水溶媒中
で触媒体への反応ガスの収着を促進し反応圧を低減する
ことができる。即ち、触媒を疎水性化することにより、
触媒上に強固に付着した水膜を除去し、反応ガスの触媒
上への到達を容易にする効果がある。
【0015】担体の形状は,粉体,破砕状或いはタブレ
ツトであつて,反応器の型式により適当な形状を選択す
る。
【0016】本発明の方法に使用する金触媒は金の微粒
子を担体に担持したもので通常は以下の方法で調整する
のが適当である。
【0017】(A)担体に塩化金酸,ハロゲン化金或い
は金錯体などの水可溶性金化合物を水に溶解させた金化
合物を含有する水溶液を調製し,前述の担体を水溶液中
に投入し含浸させる。金化合物水溶液の濃度は0.01
〜0.5Mol/Lが適当な範囲である。
【0018】次いで,金塩を含浸した担体をホルムアル
デヒド,蟻酸塩或いはヒドラジンなどの還元剤により水
溶液中で金塩を還元して触媒を調製する。還元温度は室
温〜100℃の範囲が多用される。還元処理は気相中で
含水素ガスを使用して還元する方法でもよい。気相還元
は100〜200℃で実施する。
【0019】担体上の金の担持量は0.01〜10重量
%,より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。金
の担持量が上記の範囲以下では触媒活性が低く,上記の
範囲以上の場合では担体上の金の粒子径が過大となり触
媒の活性が低下する。
【0020】上記(A)の方法で調製した担体上の金の粒
子径はX−線回折ピークの半値巾から計算して10〜3
0nmの範囲である。 (B)ハロゲン化金,塩化金酸等の金塩を溶解させた金
水溶液に炭酸カリ或いは重炭酸ソーダなどのアルカリ水
溶液を攪拌下に添加し水溶液のpHを9〜11にし,金
の微粒子状物を析出させる。金塩を溶解させた水溶液の
濃度は0.01〜1mol/Lの範囲が多用される。析
出した金微粒子はコロイド状であり放置しても殆ど沈降
しない。得られた金の微粒子を分散させた水溶液に上述
の担体を投入し析出した金微粒子を吸着させる。次い
で,ホルマリン或いはヒドラジンなどの還元剤により金
を還元し触媒を調製する。担体上の金微粒子の担持量は
(A)の場合と同様に0.1〜3重量%の範囲が多用さ
れる。
【0021】上記(B)の方法で調製した担体上の金微
粒子の径は通常7〜15nmの範囲であり,一般的に
(B)の調製法に依れば金微粒子の径は(A)の調製法
より小さい。一般的な金微粒子の調製方法および金触媒
の製造方法等に関しては、春田等の報告に詳述されてい
る(大阪工業技術研究所報告、第393号、平成11年
8月、工業技術院 大阪工業技術研究所)。
【0022】本発明の方法で出発原料として用いられる
オレフィンはC2〜C6程度低級オレフィンである。プ
ロピレン、イソブテン、ブテン−1、ブテン−2等が多
用される。使用する含酸素ガスは,空気,酸素,或いは
酸素を窒素,二酸化炭素などで希釈した混合ガスなどが
使用される。オレフィンと酸素との仕込割合はオレフィ
ン1に対し酸素40〜オレフィン40に対し酸素1の範
囲が多用される。通常は爆発範囲外の組成とするため不
活性ガス等で希釈し反応させる方法が好ましい。触媒の
使用量は反応を回分式で実施する場合を例として示す
と,反応に供する水溶液に対し0.5〜10wt%の範
囲が多用される。
【0023】本発明の反応は80〜200℃,特に10
0〜150℃が適当な温度範囲として多用される。反応
温度が80℃以下では反応が遅く、200℃以上では好
ましくない副反応が増加する。反応圧は大気圧〜50気
圧の範囲が多用され,一般に、使用する溶媒である水溶
液が、反応を実施する反応温度で液層を保つに必要な圧
以上である。反応に要する時間は反応温度,触媒の使用
量,酸素分圧などにより変化するが,回分式反応の場合
で例示すれば1〜30時間の範囲である。反応器の形式
は懸濁床,固定床或いはトリツクルベツドが多用され
る。
【0024】本発明の方法は酸化反応のため反応熱によ
る反応系の温度上昇がある,このため反応を工業規模で
実施する際には反応熱の除去に充分な考慮をはらう必要
があり,反応の定温化のために常法による冷却手段を必
要とする。反応後の溶液から触媒を分離後,蒸留などの
常法により目的物のカルボン酸エステルを単離する。
【0025】
【実施例】以下実施例により本発明をより詳細に説明す
る。 実施例1 塩化金酸の0.1mol/L水溶液5mlに脱イオン水
30mlを加え希釈した。この溶液にカルゴン社製活性
炭(センタウ)の粉末10gを投入し塩化金酸を含浸さ
せた。次いで,上記の懸濁液に1.5gの蟻酸ソーダを
40mlの脱イオン水に溶かした溶液を加え90℃に加
熱攪拌した。金担持活性炭を水洗,濾別後乾燥し触媒を
調製した。
【0026】得られた触媒の金担持量は1.1wt%
で,X−線回折の半値巾から得られた金の平均粒子径は
17nmであつた。内容70mlのSUS−32製オー
トクレーブにテフロン製カツプを装着したものを反応器
として使用した。脱イオン水30mlと上記した金触媒
1gをオートクレーブに仕込み気相部分を窒素ガスで置
換した。プロピレン10vol%,空気90vol%の
混合ガスを25℃で30kgGの圧までオートクレーブ
に充填し、180℃に昇温し6時間攪拌下に反応させ
た。
【0027】反応収量後、オートクレーブを冷却し、オ
ートクレーブ内容物の気相部分と液層部分とを分析し
た。得られた結果は、プロピレンの転化率32mol
%、アクリル酸の選択率88mol%、アクロレインの
選択率10mol%、二酸化炭素の選択率2mol%で
あつた。反応液から濾別した触媒を水洗し、同様の反応
を繰り返し行い、触媒の繰り返し使用による活性低下を
試験した。その結果、使用2回目でプロピレン転化率2
9mol%、3回目で30mol%であり、活性の急激
な低下は認められない。
【0028】実施例2 0.2Mol/Lの塩化金酸水溶液5mlを採りこれを
脱イオン水で60mlに希釈し炭酸ソーダ水溶液を攪拌
しながら添加し塩化金溶液のpHを10.5にし,金の
コロイド状懸濁液を得た。これに活性炭粉末10gを脱
イオン水50gに懸濁させたものを投入し活性炭上に金
の微小沈殿を捕集沈着させた。 上記懸濁液を70℃に
加熱しホルマリン水溶液を添加攪拌し金塩の還元処理を
実施した。活性炭を濾別,水洗後乾燥し触媒を調製し
た。触媒上の金の担持量は1.01wt%であり,X−
線回折ピークの半値巾より得た金の平均粒径は10nm
であつた。
【0029】実施例1と同様の反応器を使用し、脱イオ
ン水30mlおよび上述の触媒1gをオートクレーブに
仕込んだ。オートクレーブの気相部分を窒素ガスで置換
後、イソブテン12vol%、酸素15vol%、窒素
72vol%の混合ガスを24℃で35kgGの圧まで
充填した。オートクレーブを外部より油浴で加熱し5時
間、170℃で攪拌し、反応させた。オートクレーブを
冷却後、内容物の気相部分と液相部分とを分析した。得
られた結果は、イソブテンの転化率34mol%、メタ
アクリル酸への選択率84mol%、メタアクロレイン
への選択率8mol%、二酸化炭素への選択率8mol
%であつた。
【0030】実施例3 実施例1と同様の反応器を使用し、イオン交換水30m
lと実施例2で使用したものと同様の触媒1gを反応器
に仕込んだ。オートクレイブの気相部分を窒素ガスで置
換後、ブテン−1を11vol%、酸素15vol%、
窒素74vol%の混合ガスを20℃で30kgGの圧
までオートクレイブに圧入した。オートクレイブの外部
を油浴で170℃まで加熱し、5時間攪拌し反応させ
た。反応終了後オートクレーブ内容物を分析した結果、
ブテン−1の転化率36%、クロトン酸への選択率71
mol%、クロトンアルデヒドへの転化率12mol
%、メチルビニルケトンへの選択率14mol%、二酸
化炭素への選択率3mol%であつた。
【0031】実施例4 0.2Mol/Lの塩化金酸水溶液5mlを採り、これ
を脱イオン水で50mlに希釈し、炭酸ソーダ水溶液を
攪拌しながら添加し塩化金溶液のpHを10.5に調製
し金コロイドの懸濁液を得た。これに、テフロン粉末1
0gを投入、ロータリーエバポレーターで減圧下に水を
蒸発させ、金粒子をテフロン担体上に吸着捕集した。こ
れをホルマリン水溶液に投入し、70℃に加熱し金塩の
還元後、脱イオン水で水洗、乾燥して触媒を調製した。
【0032】還流冷却器を付けた内容200mlのステ
ンレススチール製反応器に脱イオン水70ml、触媒3
gを充填した。ガラスフィルターを付けたガス吹き込み
管からプロピレン20vol%、酸素40vol%、窒
素40vol%の混合ガスを吹き込み120℃、5kg
Gの圧で4時間反応させた。生成物を分析した結果は、
プロピレンの転化率29mol%、アクリル酸への選択
率87mol%、アクロレインへの選択率11mol
%、二酸化炭素への選択率2mol%であつた。
【0033】
【発明の効果】本発明の方法により金を担持した触媒を
使用することで,従来既知のパラジューム系触媒に比較
し、(1)効率よくカルボン酸の製造が可能であり、
(2)最適反応温度が高いため、反応熱除去に冷凍機を
使用する必要がなく、(3)触媒を繰り返し使用しても
触媒活性の低下が少ない。また,触媒を疎水性にするこ
とにより反応の圧力を低減することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低級オレフィンを含酸素ガス存在下に反
    応させて低級カルボン酸を製造するに際し,水溶液中で
    金を担体上に担持した触媒の存在下に反応させることを
    特徴とするカルボン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 低級オレフィンがプロピレンであり,酸
    化して得られるカルボン酸がアクリル酸である請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 低級オレフィンがイソブテンであり,酸
    化して得られるカルボン酸がメタアクリル酸である請求
    項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 低級オレフィンがブテン−1或いはブテ
    ン−2、或いはこれらの混合物であり,酸化して得られ
    るカルボン酸がクロトン酸である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 金を担持する触媒の担体が活性炭である
    請求項1〜4いずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 金を担持する触媒の担体が疎水性担体或
    いは通常の担体を疎水性化したものである請求項1〜4
    いずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 反応の温度が80〜200℃の範囲であ
    る請求項1〜6いずれかに記載の方法。
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