JP3350363B2 - 絶縁被覆用塗料、無機絶縁電線及び電気コイル - Google Patents

絶縁被覆用塗料、無機絶縁電線及び電気コイル

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JP3350363B2 JP22883596A JP22883596A JP3350363B2 JP 3350363 B2 JP3350363 B2 JP 3350363B2 JP 22883596 A JP22883596 A JP 22883596A JP 22883596 A JP22883596 A JP 22883596A JP 3350363 B2 JP3350363 B2 JP 3350363B2
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健三 武内
信行 助川
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昭和電線電纜株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い耐熱性を有す
る絶縁被覆用塗料、該塗料から形成された絶縁被覆を有
する無機絶縁電線及び該無機絶縁電線を使用した電気コ
イルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から知られる無機絶縁電線として
は、液相法により製造される、ポリシロキサン、ポリボ
ロシロキサン、ポリチタノカルボシラン系等の無機ポリ
マーからなる絶縁被覆を有するものがあるが、これらの
無機絶縁電線は絶縁被覆が多孔性であるため、導体が高
温下で酸化により劣化し、被覆の導体に対する密着性が
劣化しやすく、例えば400℃以上の高温になると絶縁
被膜が導体から剥離しやすくなるという欠点があった。
また、同じく絶縁被覆が多孔性であることから破壊電圧
が低い。
【0003】また、溶射法により製造されるZrO2-CeO
2 、TiO2-CeO2 系等の材料を絶縁被覆として有する無機
絶縁電線もあるが、これらの絶縁被覆は均一な被膜とし
にくいことや、製造コストが高いこと等の欠点を有す
る。
【0004】さらに化学蒸着法(CVD) や物理蒸着法(PV
D) によっても無機絶縁被覆を形成することができる
が、厚膜を形成することが困難なこと(数μmまで)、
コストが高いこと等の欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、従来
のものと大差のないコストで容易に製造でき、かつ高い
耐熱性を有する無機絶縁電線を製造するための絶縁被覆
用塗料、該絶縁被覆用塗料を使用して製造される無機絶
縁電線を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らの研究の結
果、セラミックスまたはセラミックス前駆体を使用して
形成される絶縁被覆にイットリウムを含有させると従来
より緻密な無機絶縁被膜を形成することができ、破壊電
圧が向上し、高温(500℃以上、セラミックスの種類
により600℃以上)でも十分な強度、導体との密着性
等が得られることが見出された。本発明は上記知見に基
づき完成されたものである。
【0007】従って本発明は、セラミックスまたはセラ
ミックス前駆体とイットリウムとを含む絶縁被覆用塗料
に関する。
【0008】本発明の絶縁被覆用塗料の好ましい態様に
おいては、セラミックスまたはセラミックス前駆体が、
ポリボロシロキサン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリカ
ルボシラン樹脂、ポリシラスチレン樹脂、ポリチタノカ
ルボシラン樹脂、ポリシラザン樹脂及びその前駆体から
選択され、100重量部のセラミックスまたはセラミッ
クス前駆体に対してイットリウムが0.5〜5重量部含
まれる。
【0009】また本発明は、上記絶縁被覆用塗料から形
成された絶縁被覆を有する無機絶縁電線に関する。
【0010】さらに本発明は、上記無機絶縁電線を使用
した電気コイルにも関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳述する。
【0012】本発明の絶縁被覆塗料に使用されるセラミ
ックスは特に限定されるものではなく、通常のセラミッ
クスの用語の定義に包含されるあらゆる無機質固体材料
を含む。またセラミックス前駆体とは、焼成等の処理に
よりセラミックスとなる材料を意味するものであり、例
えばセラミックスを構成する無機ポリマーの基本単位構
造を含む低分子量の化合物で、焼成すると無機ポリマー
セラミックスとなるような材料を含む。
【0013】本発明の絶縁被覆塗料に使用されるセラミ
ックス及びセラミックス前駆体の好ましい例としては、
ポリボロシロキサン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリカ
ルボシラン樹脂、ポリシラスチレン樹脂、ポリチタノカ
ルボシラン樹脂、ポリシラザン樹脂等の無機ポリマー、
金属アルコキシドを加水分解、脱水縮合した化合物及び
これらの前駆体等が挙げられ、これらのセラミックス及
びセラミックス前駆体自体は公知の物質である。
【0014】ポリボロシロキサン樹脂は、下記式
【0015】
【化1】 (式中、Rはメチル、エチル、フェニル等の有機基であ
る)の構造を基本単位とする無機ポリマーであり、例え
ば、ジメチルジアセトキシシランとホウ酸メチルエステ
ルを溶媒中で加熱重縮合することにより製造される。本
発明に使用されるポリボロシロキサンは、好ましくは5
00〜5000程度の分子量を有する。
【0016】ポリシロキサン樹脂(シリコーン樹脂)
は、Si(−O−)n (−R)4-n (式中、Rはメチ
ル、エチル、フェニル等の有機基であり、nは1〜3の
整数である)の構造を基本単位とする無機ポリマーであ
り、例えば、クロロオルガノシラン、ジクロロオルガノ
シラン、トリクロロオルガノシラン等の官能性有機シラ
ン化合物を金属ナトリウムの存在下に重縮合することに
より製造される。本発明に使用されるポリシロキサン
は、好ましくは数百〜数百万程度の分子量を有する。本
発明に使用できるポリシロキサンの市販品の例として
は、東芝シリコーンTSR116、TSR117、TSR127B 、TSR14
4、TSR145、YR3187、YR3168、YR3370(以上東芝シリコ
ーン社製)、SH804 、SH805 、SH806A、SH808 、SH840
、SH2107、SH2108、SH2400(以上東レシリコーン社
製)、信越シリコーンKR271 、KR282 、KR311 、KR255
、KR155 (以上信越シリコーン社製)等がある。尚、
シリコーン樹脂としては純シリコーンの他、シリコーン
アルキッド樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコ
ーンアクリル樹脂、シリコーンエポキシ樹脂、シリコー
ンウレタン樹脂、有機変性シリコーンを含むポリシロキ
サン誘導体等も使用することができる。
【0017】ポリカルボシラン樹脂は、下記式
【0018】
【化2】 (式中、Rはメチル、エチル、フェニル等の有機基であ
り、R’はメチレン、エチレン等の二価有機基である)
の構造を基本単位とする無機ポリマーである。
【0019】ポリポリシラスチレン樹脂は、下記式
【0020】
【化3】 (式中、Rはメチル、エチル等の有機基である)の構造
を基本単位とする無機ポリマーである。
【0021】ポリチタノカルボシラン樹脂は、下記式
【0022】
【化4】 (式中、Rはメチル、エチル、フェニル等の有機基であ
る)の構造を基本単位とする無機ポリマーである。
【0023】ポリシラザン樹脂は、下記式
【0024】
【化5】 (式中、Rはメチル、エチル、フェニル等の有機基であ
る)の構造を基本単位とする無機ポリマーである。
【0025】本発明の絶縁被覆用塗料は、上記のセラミ
ックスまたはセラミックス前駆体に加え、イットリウム
を含む。イットリウムは任意の形態で添加することがで
きるが、好ましくはイットリウムの金属アルコキシド、
キレート化合物、あるいはオクチル酸イットリウム、ネ
オデカン酸イットリウム、酢酸イットリウム等の有機酸
塩として添加する。これらのイットリウム化合物は、塗
布熱分解法において粉末化しないので特に好適である。
【0026】前記のようなポリボロシロキサン樹脂、ポ
リシロキサン樹脂、ポリカルボシラン樹脂、ポリシラス
チレン樹脂、ポリチタノカルボシラン樹脂、ポリシラザ
ン樹脂またはこれらの前駆体100重量部に対して、イ
ットリウムを好ましくは0.5〜5重量部、特に好まし
くは1.5〜2重量部加えることにより、後述するよう
に絶縁被膜を形成したときに緻密で、従って耐熱性を有
する被膜が形成される。これはイットリウムの添加によ
り塗料焼結体の粒界相に結晶相(またはガラス相)が形
成されることによると思われる。即ち、イットリウムが
焼結助剤の役割を果たすものと考えられる。イットリウ
ムの量が上記の範囲よりも多すぎても少なすぎても緻密
な焼成被膜は得られない。
【0027】本発明の絶縁被覆塗料は、上記のセラミッ
クスまたはセラミックス前駆体及びイットリウムに加
え、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコ
ニウム、酸化チタン、炭化珪素、マイカ等の無機充填
剤、並びにその他の添加剤を含有してもよい。
【0028】本発明の絶縁被覆塗料は、上記のセラミッ
クスまたはセラミックス前駆体及びイットリウム(イッ
トリウム化合物)、及び所望により充填剤及びその他の
添加剤を適当な溶媒に慣用の方法により添加混合して溶
解あるいは分散させることにより得られる。このような
溶剤としては、公知の炭化水素系溶剤、アルコール系溶
剤、エーテル系溶剤、芳香族系溶媒、例えばキシレン、
トルエン、ベンゼン、エタノール、N-メチル-2-ピロリ
ドン(NMP) 、フェノール類等が挙げられる。また、ポリ
ボロシロキサンの反応溶剤として、シリコーンオイルを
使用することもできる。溶媒の適当な量は、セラミック
スまたはセラミックス前駆体及びイットリウム化合物等
の成分100重量部に対して10〜100重量部程度で
ある。
【0029】上記のようにして得られた本発明の絶縁被
覆塗料を、導電体線材のような基体上に慣用の方法によ
り塗布し、200 〜500 ℃程度の温度で2〜3分間程度焼
成することにより、耐熱温度500 ℃以上の耐熱性を有
し、強度及び可撓性に優れた絶縁被膜が得られる。この
ようにして得られた無機絶縁電線も本発明に包含される
ものである。本発明の無機絶縁電線に設けられる絶縁被
覆の厚さは、電線の用途にもよるが、一般的には数μm
〜数mm程度である。
【0030】本発明の無機絶縁電線に使用できる導電体
線材としては従来公知の任意の材料を使用することがで
き、限定するものではないが、銅線、ニッケル線、ニッ
ケルメッキ銅線、SUS クラッド銅線、白金線等を挙げる
ことができる。
【0031】本発明の無機絶縁電線は、無機絶縁被膜の
強度の向上やモータ巻線として使用したときのコイル巻
き時の傷を防止すること等の目的で、無機絶縁被膜上に
さらに、ポリイミド、ポリエステル、ホルマール等から
なる有機ワニスを塗布、焼付してもよい。このような有
機ワニス被膜は、例えばコイル巻きの後に、300 ℃以上
に加熱することにより消失させてもよい。
【0032】本発明の無機絶縁電線は特に高い耐熱性を
有しているので、特に高温で使用される機器、例えばヒ
ートローラ、高温用モータ、原子力関連機器等のモータ
用捲線、リード線等として使用できる。特にセラミック
スまたはセラミックス前駆体としてポリシロキサンを使
用すると、絶縁被覆構成材料に中性子線の照射により放
射性化する元素が含まれていないので耐中性子線性に優
れており、原子力関連機器において使用するのに適して
いる。
【0033】本発明の絶縁被覆塗料は、電線の耐熱性を
有する絶縁被覆を形成するのに特に好適であるが、その
他の用途における耐熱性絶縁被覆塗料としても使用する
ことができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明す
る。
【0035】実施例1〜4 50重量部のNMPにそれぞれ表1に示した量(重量部)
の無機ポリマー、イットリウム、無機充填剤を加え、メ
ディア混合撹拌機(ボールミル)により200 rpm で6時
間撹拌混合して本発明の絶縁被覆塗料を得た。尚、イッ
トリウムについては、イットリウムの量が表1に示した
ものとなるようにオクチル酸イットリウムを加えた。実
施例に使用したポリボロシロキサンは昭和電線電纜社製
の耐熱塗料(商品名:ショウエクセル)、ポリシロキサ
ンは信越シリコーン社製シリコーン樹脂(商品名:KR
−271)であった。
【0036】それぞれの絶縁被覆塗料を直径1mmのニッ
ケルメッキ銅線に塗布し400 ℃で3分間加熱することに
より、約30μm の厚さの絶縁被覆を有する無機絶縁電線
を得た。
【0037】各電線の被膜について、JIS C3003 の鉛筆
硬度試験によりその硬度を測定し、被膜強度を測定し
た。また、各試料を400 ℃に100 時間置いた後に絶縁破
壊強度をJIS C3003 の金属箔法により測定した。さらに
試料を500 ℃で100 時間または600 ℃で100 時間置いた
後の絶縁被覆の外観を目視により観察した。結果を表1
に示す。
【0038】絶縁被覆の外観の評価において、○は被覆
の剥離が見られなかったことを示し、△は若干の被覆の
剥離が見られたことを示し、×は有意な被覆の剥離が見
られたことを示す。
【0039】比較例1及び2 表1に示した組成を用い、実施例と同様にして無機絶縁
電線試料を製造し、実施例と同様に被膜強度、絶縁破壊
強度、及び絶縁被覆の外観を評価した。結果を表1に示
す。
【0040】
【表1】 表1に示した結果から明らかな通り、本発明による特定
の量のイットリウムを含む実施例の絶縁被膜は、比較例
のものに比べて被膜強度及び絶縁破壊電圧が有意に高
く、また高温処理後の被膜の剥離も有意に少なく、強度
及び耐熱性に優れていることが判る。
【0041】
【発明の効果】本発明の絶縁被覆塗料によれば、強度及
び耐熱性に優れ、緻密で酸化されにくい絶縁被膜を形成
することができ、特に500 ℃以上の高温に対しても有意
な剥離を起こさない被膜を得ることができる。従って、
絶縁被覆用塗料から形成された絶縁被覆を有する無機絶
縁電線は特に高温で使用される機器、例えばヒートロー
ラ、高温用モータ、原子力関連機器等のモータ用捲線、
リード線等として使用できる。
【0042】また、ポリボロシロキサン樹脂、ポリシロ
キサン樹脂、ポリカルボシラン樹脂、ポリシラスチレン
樹脂、ポリチタノカルボシラン樹脂、ポリシラザン樹脂
及びこれらの前駆体(特にポリボロシロキサン樹脂、ポ
リシロキサン樹脂)はワニス化が容易で焼成後の被膜も
他のセラミックスよりも可撓性に優れ、無機絶縁電線の
被膜として好適である。本発明に従い、これにイットリ
ウムを加えることによりさらに緻密で耐熱性の優れた被
膜を形成することができる。
【0043】特にセラミックスとしてポリシロキサンを
使用すると、絶縁被覆構成材料に中性子線の照射により
放射化する元素が含まれていないため特に耐中性子線性
に優れており、原子力関連機器において使用するのに適
している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 183/16 C09D 185/04 185/04 H01B 7/02 A H01B 7/02 C04B 35/56 101U (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 3/16 - 3/56 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリボロシロキサン樹脂、ポリシロキサ
    ン樹脂、ポリカルボシラン樹脂、ポリシラスチレン樹
    脂、ポリチタノカルボシラン樹脂、ポリシラザン樹脂及
    びその前駆体から選択されるセラミックスまたはセラミ
    ックス前駆体とイットリウムとを含む絶縁被覆用塗料。
  2. 【請求項2】 前記セラミックスまたはセラミックス前
    駆体100重量部に対してイットリウムを0.5〜5重
    量部含む請求項1に記載の絶縁被覆用塗料。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の絶縁被覆用塗
    料から形成された絶縁被覆を有する無機絶縁電線。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の無機絶縁電線を使用し
    た電気コイル。
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WO2014054748A1 (ja) * 2012-10-03 2014-04-10 日産化学工業株式会社 微細塗布可能な無機酸化物被膜形成用塗布液及び微細無機酸化物被膜の製造方法

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