JP3343438B2 - オレフィン系熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

オレフィン系熱可塑性樹脂組成物

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JP3343438B2
JP3343438B2 JP10264894A JP10264894A JP3343438B2 JP 3343438 B2 JP3343438 B2 JP 3343438B2 JP 10264894 A JP10264894 A JP 10264894A JP 10264894 A JP10264894 A JP 10264894A JP 3343438 B2 JP3343438 B2 JP 3343438B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒートシール性および
接着性、特に低温時の接着性に優れたオレフィン系熱可
塑性樹脂組成物に関し、詳しくは熱可塑性樹脂の容器、
シート等に加熱接着し、その後剥離する際に容器、シー
ト基材から容易に剥離可能なオレフィン系熱可塑性樹脂
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】ポリエチレン、ポリプロピレン等
のポリオレフィン、塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑
性ポリエステル等の熱可塑性樹脂は外観、機械的強度、
成形性、包装作業性、経済性等に優れ各種包装容器に広
く用いられている。これらの包装容器は、乳製品、菓
子、豆腐、清涼飲料等の食品を充填し、これを熱封着し
た包装容器が主流となっており、これら包装容器に対す
る要求が多様化するにしたがい、内容物の保護性だけで
なく、使用時に容易に開封が可能であることが求められ
ている。従来、これら容器の熱封着材料としてはホット
メルト接着剤や溶液型接着剤をコートしたものが用いら
れているが、これらは開封後にシール剤が容器側に付着
し食品衛生上問題があった。また、包装容器と同一の基
材を用いた場合は、完全に封着の状態となり、内容物保
護性は十分であるが、開封が困難となり実用的には不十
分である。
【0003】こうした欠点を改良するため、近年、内容
物の保護性と易開封性を兼ね備えた材料が種々提案され
ている。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体および
粘着付与剤からなる組成物が一般的に知られている(例
えば、特公昭52-50052号、特開昭58-47038号、特開昭60
-47053号公報参照)。しかしながら、内容物保護性の点
から容器との接着強度を満足するには、比較的高い酢酸
ビニル含量のエチレン−酢酸ビニル共重合体、またはよ
り多量の粘着付与剤を必要とする。こうした、酢酸ビニ
ルおよび粘着付与剤の多量の使用は、フィルム成形性お
よび成形後のフィルムのブロッキング等の問題を有して
おり、また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は融点が低
く、耐熱性に乏しいことから常温近傍で使用される包装
容器には使用できるが、ボイル等の加熱処理が必要な包
装容器には適さず、実用上不十分なものであった。
【0004】ポリオレフィンとスチレン系樹脂を接着す
る方法として、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、
およびビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック
共重合体からなる組成物も知られている(特開昭56-509
43号公報参照)。この組成物は、接着力を発現するため
にはスチレン系樹脂を20重量部以上必要とし、また、
該組成物をヒートシール層として用いた場合は、基材で
あるスチレン系樹脂と完全に封着の状態となり、開封が
困難で易開封性という点では実用上不十分である。
【0005】また、ポリオレフィン系樹脂、スチレン・
ブタジエン共重合体、低分子量ポリスチレンおよび粘着
付与性樹脂からなる接着剤組成物が知られている(特開
平6-104978号参照)。しかし、この組成物においては、
フィルム化及び接着力発現に際して特定範囲の分子量を
有する低分子量ポリスチレンを用いる必要がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の欠点を改
良することを目的として検討を重ねた結果、オレフィン
系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラス
トマー、改質オレフィン系重合体および粘着付与剤を含
有するオレフィン系樹脂組成物が、上記欠点をすべて改
良できることを見出し、本発明を完成するに至った。即
ち本発明は、(a)オレフィン系樹脂 20〜70重量%、
(b)オレフィン系エラストマー 10〜50重量%、(c)
スチレン系エラストマー 10〜50重量部(d)オレフ
ィン系重合体30〜95重量%とビニル単量体70〜5
重量%とをグラフト反応条件に付して得られる改質オレ
フィン系重合体 5〜40重量%、および(e)粘着付与
剤 5〜30重量%を含有することを特徴とする熱可塑
性樹脂組成物である。
【0007】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリスチ
レン、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アク
リロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等のスチ
レン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;ポリ塩化
ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂;ポ
リカーボネート等の各種包装容器等に使用される基材に
対して良好なヒートシール性、接着性を有し且つ低温雰
囲気下においても接着強度が低下しない性質を有し、フ
ィルム、シート等への良好な成形加工性および得られた
フィルム、シート等が保存時にブロッキングしない取扱
いの優れた性質を有するものである。
【0008】
【発明の具体的説明】
(1)オレフィン系樹脂[(a)成分] 本発明の熱可塑性樹脂組成物の一成分を構成するオレフ
ィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテ
ン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチ
ル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等炭素
数2〜12、好ましくは2〜8程度のオレフィンの単独
重合体または2種以上の共重合体、ないしはこれらオレ
フィンと非共役ジエン、ビニルエステル、不飽和有機酸
またはその誘導体、ビニル有機シラン等とからなる共重
合体などを挙げることができる。共重合体はランダム、
ブロックあるいはグラフトといずれのどの様な結合様式
のものでも構わない。これらのオレフィン系樹脂は、2
種以上を混合して用いることもできる。
【0009】オレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、
高、中、低密度および直鎖状低密度ポリエチレン、ポリ
プロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダ
ム、ブロック)、プロピレン−ブテン−1ランダム共重
合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重
合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンと
場合によりエチレンまたはブテン−1とからなる共重合
体、エチレン−非共役ジエン共重合体、プロピレン−非
共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジ
エン共重合体(非共役ジエンの具体例としては、ジシク
ロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−
1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジ
エン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等が挙
げられる。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレ
ン−ビニルトリメトキシシラン共重合体、無水マレイン
酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリ
プロピレン、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エ
チレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタク
リル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合
体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が代表的なもの
である。これらオレフィン系樹脂のMFRは、通常0.
1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10
分である。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エ
チレン−プロピレン共重合体がフィルム成形性、耐熱性
等の観点から好ましい。
【0010】(2)オレフィン系エラストマー[(b)
成分] 本発明の熱可塑性樹脂組成物の一成分を構成するオレフ
ィン系エラストマーとしては、エチレン、プロピレン、
1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン相互の共
重合体、あるいはこれらと非共役ジエンとの共重合体、
あるいは1−ヘキセン等の高級α−オレフィンの単独重
合体であって、エラストマー状の重合体である。これら
オレフィン系エラストマーの中ではエチレン系エラスト
マーが品質、安定性および臭気の点で特に好ましい。こ
れらエラストマーの具体例を挙げると、エチレン−プロ
ピレン共重合ゴム、エチレン−1−ブテン共重合ゴム、
エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合ゴム、エチレ
ン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、エチレン−
1−ブテン−非共役ジエン共重合ゴム、エチレン−プロ
ピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合ゴム(非共役
ジエンの具体例としては、ジシクロペンタジエン、1,
4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエ
ン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカ
ジエン等がである)が挙げられる。中でも、エチレン−
プロピレン共重合ゴム、エチレン−1−ブテン共重合ゴ
ムが好ましい。
【0011】(3)スチレン系エラストマー[(c)成
分] 本発明の熱可塑性樹脂組成物の一成分を構成するスチレ
ン系エラストマーとしては、スチレン、α−メチルスチ
レン等のスチレン系化合物と、1,3−ブタジエン、イ
ソプレン等の共役ジエンとのエラストマー状ランダムま
たはブロック共重合体およびこれら共重合体の水素添加
物である。これらスチレン系エラストマーの中では、ス
チレン化合物と共役ジエンのブロック共重合体が好まし
い。これら共重合体の平均分子量は10,000〜1,
000,000、好ましくは20,000〜200,0
00であるものが好ましい。
【0012】これらスチレン系エラストマーの具体例と
しては、スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチ
レン・イソプレンランダム共重合体、スチレン・ブタジ
エン・スチレントリブロック共重合体、スチレン・イソ
プレン・スチレントリブロック共重合体、ポリスチレン
ブロックが末端であるスチレン・イソプレンラジアルブ
ロック共重合体、スチレン・ブタジエンマルチブロック
共重合体、スチレン・イソプレンマルチブロック共重合
体等のスチレン・共役ジエンブロック共重合体、および
これらを水素添加した生成物を挙げることができる。こ
れらの中で好ましいものは、水素添加されたスチレン・
共役ジエンブロック共重合体であり、組成物の溶融押出
時に架橋反応によるゲルの生成がなく、フィルムの外観
が非常に良好である
【0013】(4)改質オレフィン系重合体[(d)成
分] 本発明の熱可塑性樹脂組成物の一成分を構成する改質オ
レフィン系重合体は、オレフィン系重合体にビニル単量
体をグラフト反応条件に付して得られる改質重合体であ
る。このような改質オレフィン系重合体(以下「改質P
O」と称す)は下記の方法によって製造されたものであ
ることが好適である。
【0014】1) 原材料 (i)オレフィン系重合体 オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、
1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、
4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテ
ン等炭素数2〜12、好ましくは2〜8程度のオレフィ
ンの単独重合体または2種以上の共重合体、ないしはこ
れらオレフィンと非共役ジエン、ビニルエステル、不飽
和有機酸またはその誘導体、ビニル有機シラン等とから
なる共重合体などを挙げることができる。共重合体はラ
ンダム、ブロックあるいはグラフトといずれのどの様な
結合様式のものでもよく、樹脂状、あるいはエラストマ
ー状のものであっても構わない。これらのオレフィン系
重合体は、2種以上を混合して用いることもできる。
【0015】オレフィン系重合体の具体例を挙げれば、
高、中、低密度および直鎖状低密度ポリエチレン、ポリ
プロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダ
ム、ブロック)、プロピレン−ブテン−1ランダム共重
合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重
合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンと
場合によりエチレンまたはブテン−1とからなる共重合
体、エチレン−非共役ジエン共重合体、プロピレン−非
共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジ
エン共重合体(非共役ジエンの具体例としては、ジシク
ロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−
1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジ
エン、1,9−デカジエン等が挙げられる。)、エチレ
ン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルトリメトキ
シシラン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレ
ン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、エチレン
−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エ
チル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合
体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタク
リル酸共重合体等が代表的なものである。中でも、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重
合体が熱安定性の点で好ましい。
【0016】(ii)ビニル単量体 改質POを製造する際に使用されるビニル単量体は、特
に限定されるものではないが、具体的には、スチレン、
2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチル
スチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の不飽
和芳香族単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の
ビニルエステル類;メチルアクリレート、エチルアクリ
レート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリ
レート、sec−ブチルアクリレート、ドデシルアクリ
レート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルア
クリレート、オクチルアクリレート等のアクリル酸エス
テル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレー
ト、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタク
リレート、デシルメタクリレート、2−エチルヘキシル
メタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタク
リル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、無水マ
レイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジ(2−エ
チルヘキシル)等の不飽和有機酸;アクリロニトリル、
メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン等の不飽和モノないしジハライド等
が挙げられる。中でも、スチレン、メチルメタクリレー
トが改質が容易な点で好ましい。
【0017】上記オレフィン系重合体およびビニル単量
体は、30〜95重量%、好ましくは40〜70重量%
と70〜5重量%、好ましくは60〜30重量%の割合
で、グラフト反応条件に付されるが、放射線による反応
以外は通常ラジカル発生剤を用いる。
【0018】(iii)ラジカル発生剤 前記改質POを製造する際に使用されるラジカル発生剤
としては、汎用のものを使用することができるが、後に
記載する好ましいグラフト反応方法との関係で、分解温
度が50℃以上であって、かつ油溶性であるものが好ま
しい。ここで「分解温度」とは、ベンゼン1リットル中
にラジカル発生剤0.1モルを添加してある温度で10
時間放置したときにラジカル発生剤の分解率が50%と
なるときの温度である。いわゆる「10時間の半減期を
得るための分解温度」を意味する。この分解温度が低い
ものを用いると、ビニル単量体の重合が異常に進行して
しまうことがあり、均質な改質重合体が得られない欠点
がある。しかし、逆に分解温度が高いものと低いものを
適宜組み合わせて段階的ないし連続的に分解を行わせ、
効率よくグラフト反応させることもできる。
【0019】このようなラジカル発生剤としては、例え
ば2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブ
チルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパー
オキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイ
ルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベン
ゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エ
チルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイ
ド、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキ
シヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−
t−ブチル−ジパーオキシフタレート、メチルエチルケ
トンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t
−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイ
ソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)等のアゾ化合物がある。ラジカル発生剤の使
用量は、用いるビニル単量体の量に対して0.01〜1
0重量%程度の範囲内で、ラジカル発生剤の種類、反応
条件により適宜加減する。使用量がこの量未満では反応
が円滑に進まず、一方、この量超過では改質PO中にゲ
ルが生成しやすく本発明の効果が発現され難くなる。
【0020】2) 改質POの製造 これら各原料成分をグラフト重合反応に付して改質PO
を製造するのであるが、以下に説明する水性懸濁グラフ
ト手法によって製造することがゲル分をコントロールす
ることが容易な点で特に好ましい方法である。すなわ
ち、オレフィン系重合体粒子、ビニル単量体およびラジ
カル発生剤を含む水性懸濁液を、この開始剤の分解が実
質的に起こらない温度に昇温し、該ビニル単量体を該オ
レフィン系重合体粒子に含浸させた後、この水性懸濁液
をさらに昇温させてビニル単量体の重合を完結させる方
法が好ましく、この方法について説明する。
【0021】(i)含浸工程 水性媒体中でオレフィン系重合体粒子にビニル単量体を
含浸させる代表的な好ましい方法としては、オレフィン
系重合体粒子の水性懸濁液に好ましくはラジカル発生剤
(および必要に応じてその他の添加剤)が溶存している
ビニル単量体を加えて撹拌するか、または、ラジカル発
生剤が溶存したビニル単量体の水性分散液にオレフィン
系重合体粒子を加えて撹拌する方法によって始まる。含
浸工程では、工業的には上記ラジカル発生剤が実質的に
分解しない温度に昇温して、効率よく含浸が行われるべ
きであり、一般的には室温から100℃、特に60〜9
0℃で操作するのが好ましい。この工程で、遊離ビニル
単量体の量がビニル単量体使用量の80重量%以下とな
るようにビニル単量体を含浸させる。オレフィン系重合
体はビニル単量体と比較的相溶性があるので、重合開始
前に80重量%以下のビニル単量体が遊離していても重
合中にこれらビニル単量体はオレフィン系重合体粒子に
含浸するので、これらビニル単量体を重合して得られる
重合体粒子が改質されたオレフィン系重合体粒子と独立
して析出することはない。含浸時間は2〜8時間程度が
普通である。水性分散液中のオレフィン系重合体および
ビニル単量体の含量は、水100重量部に対して5〜1
00重量部程度であるのが普通である。
【0022】このような水性分散液は単に撹拌を十分に
行うだけでも安定に分散状態に維持することができる
が、適当な懸濁安定剤を使用すればより容易かつ安定に
懸濁分散液を調整することができる。この場合の懸濁安
定剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセ
ルロース、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子;ア
ルキルベンゼンスルホネート等のような陰イオン性界面
活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イ
オン性界面活性剤;あるいは酸化マグネシウム、リン酸
カルシウム等の水不溶性の無機塩等が単独あるいは混合
して水に対して0.01〜10重量%程度の量で使用さ
れる。オレフィン系重合体粒子にビニル単量体(および
ラジカル発生剤等)を含浸させる際に、可塑剤、滑剤、
酸化防止剤等の補助資材を同時に含浸させることができ
る(これらの補助資材はオレフィン重合体に既に添加さ
れている場合もあり、またグラフト重合反応後に配合す
ることもできる)。
【0023】(ii)グラフト重合工程 このようにして調整した水性懸濁液を昇温して、使用し
たラジカル発生剤が適当な速度で分解する温度以上にす
れば、含浸されたビニル単量体はグラフト重合して改質
PO粒子が生成する。グラフト重合進行中の水性懸濁液
は、適当に撹拌することが好ましい。重合温度は一般的
に50〜150℃の範囲で適宜選択すべきであるが、グ
ラフト重合工程を通じて一定である必要はない。重合は
2〜10時間程度であるのが普通である。重合圧力は常
圧〜10kg/cm程度が普通である。また、ビニル単量
体の重合の結果生じる重合体の分子量調節のため、n−
ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−
ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を添加するとよ
い。重合後、通常のビニル単量体(例えばスチレン)の
水性懸濁重合の後処理と同様の後処理を行えば、使用し
たオレフィン系重合体粒子の形状がほぼそのまま保持さ
れていて直ちに成形用材料として使用することができる
改質PO粒子が得られる。従って、改質前に用いるオレ
フィン系重合体は、粉末状でもよいが、その後の成形加
工時のハンドリングを考慮すると粒子状である方が便利
である。すなわち、粒子寸法は、通常成形材料として用
いられる程度のものである方が生成される改質POをそ
のまま成形材料に用いることができるので好ましく、一
般には平均粒径1〜8mm、好ましくは3〜7mm程度
である。その寸法は改質処理前後でさして変化が認めら
れない。
【0024】(5)粘着付与剤[(e)成分] 本発明の一成分を構成する粘着付与剤は、軟化点(環球
法)が80〜180℃である脂肪族、脂環族あるいは芳
香族の高分子低重合体であり、具体例を挙げるとロジ
ン、ロジンエステル、水添ロジン、重合ロジン等のロジ
ン系樹脂;α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペ
ンテン重合体、テルペン−フェノール重合体等のテルペ
ン系樹脂;C〜Cの石油樹脂およびそれらの水素添
加物が挙げられる。これらの粘着付与剤は2種以上を混
合して用いることもできる。中でも、色相、臭気の点で
脂環族高分子低重合物が好ましく、具体的には石油樹脂
の水素添加物が好ましい。これら粘着付与剤の軟化点
(環球法)は、一般的には80〜180℃、好ましくは
100〜170℃、より好ましくは120〜160℃、
最も好ましくは130〜150℃であるものを用いるこ
とができる。しかし、用途によっては低軟化点のものと
高軟化点のものを混合して用いることも有効である。
【0025】(6)各成分の配合割合 本発明の組成物における各成分の割合は、(a)オレフ
ィン系樹脂 20〜70重量%、好ましくは25〜60
重量%、(b)オレフィン系エラストマー 10〜50
重量%、好ましくは15〜40重量%、(c)スチレン
系エラストマー10〜50重量%、好ましくは15〜4
0重量%、(d)改質PO 5〜40重量%、好ましく
は10〜25重量%、および(d)粘着付与剤 5〜3
0重量%、好ましくは10〜20重量%である。オレフ
ィン系樹脂の含量が上記未満では成形性の点で不十分で
あり、上記超過では接着性の点で満足なものではない。
また、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラ
ストマーの含量が上記未満では常温および低温時の接着
性の点で不十分であり、上記範囲超過では成形加工性の
点で本発明の目的を達しない。一方、改質POの含量が
上記未満ではフィルム、シートの取扱いの点で好ましく
なく、上記範囲超過では剥離性制御の点で不十分であ
る。更に、粘着付与剤の量が上記未満では接着力発現の
点で不十分であり、上記範囲超過ではフィルム、シート
の取扱いの点で好ましくない。
【0026】本発明の組成物には、これらの必須成分の
他に付加的成分を発明の効果を損なわない範囲の量添加
することができる。付加的成分としては、例えば、他の
熱可塑性樹脂、ゴム物質、無機フィラー、顔料、可塑
剤、各種安定剤(酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、
アンチブロッキング剤、滑剤)等である。
【0027】(7)組成物の製造 上記の成分をドライブレンドして直接成形しても得られ
るが、一般には予めロール、バンバリーミキサー、押出
機等通常の混練機で混練して組成物とした後成形に供さ
れる。成形は、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成
形等いずれの方法も取ることができる。
【0028】
【実施例】
実施例1改質PO粒子の製造工程 50リットル容量のオートクレーブに水20kg、懸濁
剤の第三リン酸カルシウム0.6kg、およびドデシル
ベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを混入して水性
媒質とし、これに粒径3〜4mmの低密度ポリエチレン
(密度:0.92g/cm、MFR:45g/10分)6k
gを加え、撹拌して懸濁させた。別に3,5,5−トリ
メチルヘキサノイルパーオキサイド15.6g、および
ベイゾイルパーオキサイド9gをスチレンモノマー6k
gに溶解し、これを先の懸濁系に添加し、オートクレー
ブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cmに加圧し
た。更にオートクレーブ内を55℃に昇温し、この温度
で撹拌しながら5時間放置して重合開始剤を含むスチレ
ンモノマーを全量低密度ポリエチレン粒子中に含浸させ
た。次にこの懸濁液を65℃に昇温し、この温度で撹拌
しながら7時間放置して重合を行い、更に110℃に昇
温して3時間維持して重合を完結した。冷却後、内容固
形物を取り出して水洗し、改質低密度ポリエチレン粒子
12kgを得た。得られた改質低密度ポリエチレンのM
FRは2.5g/10分であった。
【0029】熱可塑性樹脂組成物の製造 低密度ポリエチレン(三菱油化社製“三菱ポリエチ L
D LM31”;密度0.92g/cm3,MFR 8g/1
0分)30重量%、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム
(三井石油化学社製“タフマー A4085”;密度
0.88g/cm3,MFR 6.7g/10分)20重量
%、水素添加されたスチレン・ブタジエン・スチレンブ
ロック共重合体ゴム(旭化成社製“タフテック H10
51”;密度0.93g/cm3,MFR 1.0g/10
分)20重量%、上記製造工程で得られた改質低密度ポ
リエチレン15重量%、粘着付与剤として脂環族飽和炭
化水素樹脂(荒川化学工業社製“アルコン P−14
0”;環球法軟化点140℃)15重量%を混合し、単
軸押出機(L/D=23)を用い、樹脂温度180℃で
溶融混合してペレットとした。
【0030】熱可塑性樹脂フィルムの製造および評価 上記で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットをプラコ
ー社製35mmTダイ成形機を用いて、成形温度230
℃で30μ厚みのフィルムを成形した。本フィルムと9
μ厚のアルミニウム箔とを接着剤(東洋モートン社製
“AD−503”)で貼り合わせて積層フィルムとし
た。この積層フィルムの熱可塑性樹脂組成物の層を接着
面とし、各種基材と加熱接着した。加熱接着条件は、熱
板式ヒートシーラーを用い、接着面5mm幅、接着圧力
2kg/cm、時間1秒、接着温度180℃である。剥離
強度は、ショッパー型引張試験機を用い、サンプル幅1
5mm、引張速度300mm/分で180度剥離強度を
23℃および−30℃で測定した。結果を表−1に示
す。一方、得られたフィルムのブロッキング性の評価と
して、Tダイ成形で得られたフィルムを重ね合わせ、5
0g/cmの荷重をかけ、45℃雰囲気で24時間放置し
た後、剥離する強度を求めた。結果を表−1に示す。
【0031】実施例2〜5 表−1に示された熱可塑性樹脂組成物について、実施例
1と同様に調製し、評価した。結果を表−1に示す。
【0032】比較例1〜3 表−1に示される熱可塑性樹脂組成物について、実施例
1と同様に調製し、評価した。結果を表−1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】*1) LDPE:低密度ポリエチレン
(三菱油化社製“三菱ポリエチ LDLM31”密度
0.92g/cm3,MFR 8g/10分) *2) EPR−1:エチレン−ブテン−1共重合体ゴ
ム(三井石油化学社製“タフマー A4085”密度
0.88g/cm3,MFR 6.7g/10分) *3) EPR−2:エチレン−プロピレン共重合体ゴ
ム(日本合成ゴム社製“EP01Y”;密度 0.86g
/cm3,MFR 3.6g/10分) *4) SEBS−1:水素添加されたスチレン・ブタ
ジエン・スチレンブロック共重合体ゴム(旭化成社製
“タフテック H1051”;密度 0.93g/cm3,M
FR 1.0g/10分) *5) SEBS−2:水素添加されたスチレン・ブタ
ジエン・スチレンブロック共重合体ゴム(旭化成社製
“タフテック H1052”;密度 0.89g/cm3,M
FR 12.0g/10分) *6) SBS:スチレン・ブタジエン・スチレンブロ
ック共重合体ゴム(日本合成ゴム社製“TR200
0”;密度0.96g/cm3,MFR3.0g/10分) *7) P−140:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化
学社“アルコンP−140”;環球法軟化点140℃) *8) 電気化学社製“デンカスチロール HI−G-
2” *9) 三菱瓦斯化学社製“ユーピロン E−200” *10) 三菱レイヨン社製“ダイヤナイト PA500
X” *11) 三菱化成社製“ビニカコンパウンド D−12
6” *12) 剥離状態 ○:剥離強度300g/10cm2未満、×:
剥離強度300g/10cm2 以上
【0035】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレ
ン系樹脂、熱可塑性ポリエステル、ハロゲン含有樹脂、
ポリカーボネート等の各種包装容器等に使用される基材
に対して良好なヒートシール性、接着性を有し、且つ低
温雰囲気下においても接着強度が低下しない特徴を有
し、フィルム、シート等への良好な成形加工性を示し、
さらに得られたフィルム、シート等が保存時にブロッキ
ングしない取扱いの優れた性質を有するものであり、極
めて実用性の優れたものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)オレフィン系樹脂 20〜70重量
    %、(b)オレフィン系エラストマー 10〜50重量%、
    (c)スチレン系エラストマー 10〜50重量%、(d)オ
    レフィン系重合体30〜95重量%とビニル単量体70
    〜5重量%とをグラフト反応条件に付して得られる改質
    オレフィン系重合体 5〜40重量%、および(e)粘着
    付与剤 5〜30重量%を含有することを特徴とするオ
    レフィン系熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 前記改質オレフィン系重合体(d)が、オ
    レフィン系重合体粒子、ビニル単量体およびラジカル発
    生剤を含む水性懸濁液を、該ラジカル発生剤の分解が実
    質的に起こらない温度に昇温し、該ビニル単量体を前記
    オレフィン系重合体粒子に含浸させた後、この水性懸濁
    液をさらに昇温してグラフト反応を完結させる方法によ
    って得られたものである、請求項1に記載のオレフィン
    系熱可塑性樹脂組成物。
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