JP3341020B2 - 活性鉄粉 - Google Patents

活性鉄粉

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JP3341020B2 JP5458893A JP5458893A JP3341020B2 JP 3341020 B2 JP3341020 B2 JP 3341020B2 JP 5458893 A JP5458893 A JP 5458893A JP 5458893 A JP5458893 A JP 5458893A JP 3341020 B2 JP3341020 B2 JP 3341020B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、使い捨てカイロに用い
られる活性鉄粉に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄粉と反応助剤等の混合物に空気(酸
素)を作用させて使用する製品としては、一般には使い
捨てカイロと各種食品の包装体中に装着して包装体中の
酸素を効率よく吸収して食品の鮮度を保持する、いわゆ
る脱酸素剤が良く知られている。
【0003】これらの製品に使用される金属粉としては
鉄粉が最も一般的であることは公知であり、反応助剤と
しては食塩、水等が用いられ、これらの物質を担持する
保水剤として活性炭、バーミキュライト、珪藻土、木粉
あるいは吸水性高分子等を混合して使用されることも良
く知られている。また脱酸素剤の中には反応助剤として
食塩のみを使用し、水分は食品から吸収して脱酸素を行
なうものもある。
【0004】これらの製品における鉄粉の役割は、使い
捨てカイロにあっては酸化による反応熱を利用し、脱酸
素剤にあっては包装内にある空気(酸素)を鉄粉に吸収
させてその目的を果たすことにある。従って、これらの
製品の性能は鉄粉の特性によって左右され、換言すれば
活性の高い鉄粉を使用することにより良質の製品が生産
されることになる。
【0005】特に使い捨てカイロにあっては、開封後す
みやかに昇温することが製品価値を高めるため、発熱立
上り特性の優れた鉄粉を供給することが望まれている。
【0006】市場におけるかかる要望に応えるための方
策として、原材料である鉄鉱石は還元され易いヘマタイ
ト(赤鉄鉱)を15〜20mmに粉砕して用い、比較的
低温(約1050℃)で還元が行なわれるロータリキル
ン法によって製造した鉄粉が好ましく使用されている。
ロータリキルン法により低温で還元した鉄粉の活性度が
高い理論的根拠については明らかでないが、原料である
酸化鉄が還元される際、酸素原子のあった場所が空格子
となり、生成された空格子へ鉄原子が移動していない不
安定状態にある、いわば安定状態にはない原子構造にお
いて酸素との反応性を高めているものと推論される。
【0007】ところで上記のロータリキルン法で製造し
た鉄粉はカイロ等の製品用原料としては好適であるが、
これを粉末冶金用、溶接棒用あるいは各種ショットブラ
スト用鉄粉として使用するためには、さらに高温度での
熱処理を重ねることが必要で、鉄粉産業全般を考えた場
合、経済的に有利とは言えない。さりとて、カイロ用鉄
粉をロータリキルン法で、その他の用途の鉄粉は別の方
法で製造することは往々にして一層経済的に不利を招く
場合が多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、使い捨てカ
ロの原料として好適で、かつ経済性に優れた活性鉄粉
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、使
い捨てカイロを構成し、鉄粉表面が、導電性グラファイ
ト、カーボンブラック、黒鉛及び活性炭からなる群から
選択される0.3〜3.0重量%の導電性炭素質物質で
部分的に被覆された活性鉄粉により達成される。
【0010】すなわち、本発明の活性鉄粉は、使い捨て
カイロを構成し、鉄粉表面が、導電性グラファイト、カ
ーボンブラック、黒鉛及び活性炭からなる群から選択さ
れる0.3〜3.0重量%の導電性炭素質物質で部分的
に被覆されたことを特徴とする。
【0011】本発明で用いられる鉄粉としては、市販の
鉄粉でよく、還元鉄粉、スポンジ鉄粉等が例示される
が、還元鉄粉が最も好ましく用いられ、アトマイズ鉄粉
も使用される。
【0012】本発明では、この鉄粉の表面に導電性炭素
質物質が部分的に被覆されている。導電性炭素質物質と
しては、電気抵抗が小さく、かつ鉄粉被膜を形成し易い
ものがよく、導電性グラファイト、カーボンブラックあ
るいは微粉の活性炭等が挙げられる。この導電性炭素質
物質の被覆量は、鉄粉全体の0.3〜3.0重量%、好
ましくは0.3〜1.0重量%であり、0.3重量%未
満では使い捨てカイロの発熱特性に寄与できず、3.0
重量%を超えても特別の効果が増進せず、逆に不経済で
ある。
【0013】通常、還元鉄粉は0.01〜0.3重量%
の還元剤、すなわち炭素分が残留しているが、これらの
炭素分は鉄粉中に固溶しているか、あるいは鉄粉から遊
離したいわゆる遊離炭素として存在するため、これらの
形態での炭素分では使い捨てカイロの発熱特性に寄与す
ることはない。
【0014】また、導電性炭素質物質被覆を効率よく行
なうために鉄粉の流動性を害さない程度に0.01〜
0.05重量%の油分、例えばスピンドル油(商品名:
スピノックスS5、S10、いずれも日本石油(株)
製)等を添加することは好ましいことである。
【0015】本発明の要点は、鉄粉表面に導電性炭素質
物質の薄膜を局部的に形成せしめることにより、地鉄と
導電材料の間に形成される局部電池により酸化反応を促
進せしめるものである。
【0016】図1にその原理図を示す。Aは鉄粉、Bは
炭素質導電材料を示す。鉄粉は塩水の存在により鉄イオ
ンとなり、この際、次式に従って2個の電子が放出され
るため、鉄粉が陽極となり炭素物質が陰極となって、こ
の間に形成された電池が酸化反応を促進させることにな
る。 Fe→Fe+++2e-
【0017】鉄粉表面をこれらの導電性炭素質物質で局
部的に被覆するには各種の装置が適用できるが、ボール
ミル、コニカルブレンダ等でも30分〜3時間の被覆処
理により陰極薄膜を形成させることが可能である。被膜
形成機としては(株)奈良機械製作所から市販されてい
る“ハイブリダイゼーション”等を使用すれば処理時間
が短縮できるが、特に被覆処理装置により制約を受ける
ものではない。
【0018】本発明において、例えばトンネルキルンを
用いて還元された鉄粉を適用すれば、空気(酸素)との
反応性が改善され、使い捨てカイロ用鉄粉として使用す
れば発熱特性、特に初期立上り特性が改善される他、助
燃剤、有効成分中の活性炭使用量を節減することができ
る。
【0019】他目的、溶接棒用あるいは粉末冶金用鉄粉
は従来通りの工程で生産されることは言うまでもなく、
本発明の適用によってこれらの鉄粉が品質的にも経済的
にも不利となることは全くない。
【0020】すなわち本発明は、現在一般的に製造され
ている鉄粉を用い、その機能を使い捨てカイロの原料と
して好適な活性鉄粉に改質することにある。
【0021】
【実施例】以下、実施例等に基づいて本発明をさらに詳
細に説明する。
【0022】実施例1 表1に示す性状を有する市販の溶接棒用鉄粉10kgと
粉末黒鉛(固定炭素97.0重量%、平均粒径7.0μ
m、商品名CP、日本黒鉛工業(株)製)50gを小型
ボールミルに入れ24時間被膜処理を行ない活性鉄粉を
得た。
【0023】
【表1】
【表1】
【0024】この活性鉄粉100gを250ccポリ瓶
に入れ、さらに塩水(20.5%)8ccを注ぎ、1分
間手でよく振って混合した。ポリ瓶は5ケ準備し、上記
の操作を繰り返し温度測定用サンプル5ケを作った(ポ
リ瓶は蓋を閉じてなるべく空気が入らないようにし
た)。準備が終れば各々のポリ瓶から内容物を100c
cのビーカーに移し替えビーカーのほぼ中央部の温度を
サーモカップルにて測定した。
【0025】測温結果は図2の曲線に見られるごとく、
10分後で約65℃(5ケの平均)であった。
【0026】比較例1 実施例1で用いた溶接棒用鉄粉を導電性炭素質物質処理
を行なわず、そのまま実施例1と同様の方法で塩水(2
0.5%)8ccを混ぜて測温を行なった結果、図2の
曲線のごとくなり10分後の温度は約30℃と実施例1
に用いた活性鉄粉に比べ著しく昇温速度は遅かった。
【0027】実施例2 トンネルキルンで還元されたスポンジ鉄を表2に示す粒
度に粉砕した鉄粉1トンに、10kgの活性炭(商品名
ゼオコールS、パウダーテック(株)製)の微粉(−4
5μm以下90重量%)をコーン型ミキサーに入れ2時
間被覆処理を行ない活性鉄粉を得た。
【0028】
【表2】
【0029】この活性鉄粉に実施例1で説明した方法で
塩水(20.5%)8ccを混ぜ、測温を行なった結
果、図2の曲線のごとくなり10分後の温度は約75℃
となった。
【0030】また、この鉄粉30gと反応助燃剤27.
7g(活性炭4g、バーミキュライト6g、木粉2g、
塩0.7g、水15mlの混合物)をよく混合し、通常
の使い捨てカイロに用いられる不織布に入れ10ケのカ
イロを作成しこれをタオル2枚に包んでカイロの中央部
の温度を測定した結果、図3のAに示す棒グラフが得ら
れた。すなわち測定開始より5分後の温度差は約45℃
(10ケの平均)、最高温度83℃(10ケの平均)、
40℃以上の持続時間は約19時間であった。
【0031】比較例2 実施例2において導電性炭素質物質被覆処理を行なわ
ず、実施例2と同様の方法で発熱特性を評価した。
【0032】その結果、図2の曲線ならびに図3のBに
示す棒グラフのごとくなり、いずれも実施例2の活性鉄
粉を使用した場合に比べ、発熱特性が劣った。
【0033】実施例3 実施例1において使用した導電性炭素質物質(粉末黒
鉛)に代えて、粉末黒鉛(固定炭素92.5重量%、平
均粒径2μm、商品名青P、日本黒鉛工業(株)製)を
用い、かつ被覆量を鉄粉10kgに対し200gに増加
したことを除いては、実施例1と全く同様の方法で発熱
特性を評価した結果、10分後の温度は79℃であっ
た。
【0034】参考例1 アトマイズ鉄粉(商品名アトメル300M、神戸製鋼社
製)1トンに、10kgの活性炭(商品名ゼオコール
S、パウダーテック(株)製)の微粉(−45μm以下
90重量%)をコーン型ミキサーに入れ2時間被覆処理
を行ない活性鉄粉を得た。
【0035】この活性鉄粉約2.6gに市販の食塩13
mgをよく混合し、有孔ポリエチレンフィルムをラミネ
ートした不織布内に入れて水分依存型脱酸素剤を作成し
た。
【0036】この脱酸素剤をガスバリアフィルム袋に入
れ、さらに500mlの空気と水を含ませた脱脂綿を同
封して所定時間毎に酸素濃度を脱酸素が完了するまで測
定し、表3の結果を得た。
【0037】
【表3】
【0038】比較例3 参考において炭素質物質の被覆処理前のアトマイズ
鉄粉を使用したことを除いては、参考例1と全く同様の
方法で脱酸素速度を評価した結果、表4のごとくであっ
た。
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、現在、
溶接棒用あるいは粉末冶金用等として市場に出ている鉄
粉またはそれらの中間工程品として産出される鉄粉の表
面に、導電性炭素質物質の薄膜を局部的に一定量形成せ
しめることにより、使い捨てカイロ用原料として酸化反
応が促進されるように表面改質された本発明の活性鉄粉
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による鉄粉が効果を発揮する根拠を説
明する原理図である
【図2】 本発明の活性鉄粉と比較鉄粉の発熱立上り特
性を比較したグラフである
【図3】 本発明の鉄粉と比較鉄粉を用いて作った使い
捨てカイロの発熱特性を比較したグラフである
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22F 1/00 - 1/02 C09K 5/16 A61F 7/08 334 B01D 53/14

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 使い捨てカイロを構成し、鉄粉表面が、
    導電性グラファイト、カーボンブラック、黒鉛及び活性
    炭からなる群から選択される0.3〜3.0重量%の導
    電性炭素質物質で部分的に被覆されたことを特徴とする
    活性鉄粉。
  2. 【請求項2】 前記鉄粉が還元鉄粉であることを特徴と
    する請求項1に記載の活性鉄粉。
  3. 【請求項3】 前記鉄粉がアトマイズ鉄粉であることを
    特徴とする請求項1に記載の活性鉄粉。
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