JP3328019B2 - 医療用分析機の洗浄装置 - Google Patents

医療用分析機の洗浄装置

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は検体や試薬を分注するノ
ズルを振動により洗浄する医療用分析機の洗浄装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】図13は特開昭60−42635号公報
に記載された従来の洗浄装置を示す。円筒状の洗浄槽1
00には洗浄液の注入口110と、排出口120とが形
成され、内部に充填された洗浄液に検体・試薬の分注用
ノズル140が浸漬される。また、洗浄槽100の底部
には超音波振動を発生する振動部材130が設けられて
いる。このような洗浄装置はノズル140が洗浄液に浸
漬した状態で、振動部材130が作動して超音波振動を
発生させ、これにより洗浄液に定在波を形成し、この定
在波によりノズル140の外面および内面に付着した汚
れを除去するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した装置は洗浄液
に超音波振動を伝達させ、洗浄液のキャビテーションに
より汚れを除去する方法であり、一般的な超音波洗浄装
置と同様に、外面に付着した強固な汚れも破壊して剥離
することができる。しかしながら、ノズルの場合には内
外面に汚れが付着しており、外面の汚れを除去すること
ができても、内面の汚れはほとんど除去することができ
ない。これは医療用分析機のノズルは内径が非常に小さ
く、超音波振動の波長に対して1/5〜1/10程度で
あるところから、超音波振動がその吐出口から入っても
すぐに減衰し、ノズル内部では強力なキャビテーション
がほとんど起きないことによる。また、洗浄水に伝達さ
れる超音波振動は水面に反射して、節と腹を有する縦振
動の定在波を形成するが、節位置の部分では、腹位置に
比べて強力に汚れを落とすことができない。
【0004】 加えて、ノズルを超音波振動させる場合
においては、超音波振動の加速度により汚れを振り落と
す洗浄効果を有しているが、これについても上述と同様
となっている。図11は一端を固定したノズル140
を、図12はノズルの超音波振動時の変形状態を示す。
洗浄液に効率よくキャビテーションを発生させるために
は、数十kHzの超音波振動を与えなければならない
が、この数十kHzの超音波振動下では、ノズルには図
12に示すように多数の節Xと腹Yを有する屈曲振動が
励振される。このため、腹Yの位置では、汚れをよく落
とせるが、節Xの位置では汚れが落としきれずに残って
しまうためである。
【0005】以上のような洗浄不良は、キャリーオーバ
ーやコンタミネーションを誘発して分析の信頼性を低下
させる。このようなことから洗浄不良をなくすために洗
浄液を増やしたり、洗浄時間を長くしているが、廃棄物
の増加・分析時間の長時間化という洗浄とは別個の問題
を引き起こしている。
【0006】本発明は上記問題点を考慮してなされ、ノ
ズルの外面・内面に付着した汚れであっても残さずに洗
浄することができる医療用分析機の洗浄装置を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】上記目的を達成
するために、本発明の医療用分析機の洗浄装置は、交番
電圧の印加によって振動する圧電アクチュエータと、検
体、試薬を吐出口から分注するノズルと、前記ノズルを
支持し、該ノズルに前記圧電アクチュエータの振動を拡
大して伝達する変位拡大機構と、前記ノズル吐出口が浸
漬される洗浄液が充填された洗浄槽とを備え、前記ノズ
ルの洗浄の際に、前記変位拡大機構に支持される位置を
節位置、吐出口を腹位置とする1次の屈曲振動、及びさ
らに高次の屈曲振動を含む複数の振動モードにより前記
ノズルが励振されるよう構成されていることを特徴とし
ている。
【0008】 さらに、本発明の医療用分析機の洗浄装
置は、前記ノズルが振動している際に前記ノズル内に洗
浄液を供給する洗浄液供給手段をさらに有することを特
徴としている。
【0009】
【実施例1】 図1は本発明の実施例1の全体構成を示
し、水平方向に所定角度回転すると共に、上下動する支
持部材8に変位拡大機構2が締結部材7を介して固定さ
れている。変位拡大機構2は略コ字形状に形成されてお
り、開口側を下方に向けて支持部材8に取付けられてい
る。ステンレス,リン青銅等の金属で形成されたこの変
位拡大機構2の開口側には、積層型圧電アクチュエータ
1が取付けられている。変位拡大機構2は垂直方向に垂
下する肉厚で比較的大きな質量となっている固定アーム
2aと、固定アーム2aの先端側で薄肉部Aを介して同
様に垂下するレバー3とが一体的に形成されている。
【0010】積層型圧電アクチュエータ1はこれらの固
定アーム2aおよびレバー3とに両端部が接着されるこ
とにより、これらの間に取付けられる。この場合、レバ
ー3における積層型圧電アクチュエータ1との対向部分
には薄肉状の変形部4を有した接続片4aが形成されて
おり、この接続片4aの端面に同アクチュエータ1の端
面が接着されている。また、変位拡大機構2のレバー3
は固定アーム2aよりも長尺となっており、積層型圧電
アクチュエータ1が作動すると、薄肉部Aを支点として
揺動して、テコの原理によりアクチュエータ1の移動量
を拡大する。このレバー3の下端部はL字状に屈曲され
ており、この屈曲部分にノズル6の上部が締結部材5に
よって固定されている(図2参照)。
【0011】ノズル6は検体または試薬を分注するもの
であり、その先端部は絞り加工によりテーパー9が形成
され、テーパー9の先端部が吐出口10となっている。
またノズル6の他方の先端部には接続パイプ12を介し
て往復動ポンプ11が連結されている。接続パイプ12
および往復動ポンプ11はノズル6に洗浄液を供給する
洗浄液供給手段となっており、これらの内部には、生理
食塩水や水などの洗浄液19が充填されている。ノズル
6の内部には洗浄液19とエア層13を介して検体又は
試薬20が吸引され、往復動ポンプ11の作動によっ
て、吐出口10からこの検体または試薬20を吸引し、
吐出すると共に、洗浄液19を吐出する。さらにノズル
6の下方には、洗浄液14が満たされた洗浄槽15が設
置されている。この洗浄槽15はポンプ(図示省略)の
作動により洗浄液14を供給する供給口16と、オーバ
ーフローした洗浄液14を排出する排出口17とを有し
ている。
【0012】次に、本実施例の作動を説明する。図示し
ないが、分析機においては試薬ケース、検体が充填され
た反応セルおよび洗浄槽15がノズル6の下方に順に並
べられるものである。まず、支持部材8が水平方向に所
定角度だけ回転して、試薬ケースの上方に臨んだ後、下
降する。これと共にノズル6が下降して、その液面にわ
ずかに接したところで下降が停止し、往復動ポンプ11
によって、ノズル6内部に試薬20を吸引する。この場
合、試薬20はノズル6の支持部18に達しない程度に
吸引される。その後、支持部材8が上昇して、ノズル6
が試薬ケース上方に退避する。そして、支持部材8が回
転して、検体の入った反応セルの上方に回転し、反応セ
ル内に試薬20を所定量吐出する。
【0013】洗浄においては、支持部材8が回転して洗
浄槽15上方に移動し、その後下降して洗浄槽15内に
ノズル6を浸漬する。洗浄槽15内の洗浄液14にノズ
ル6が接触すると同時に、往復動ポンプ11の駆動より
生理食塩水または水からなる洗浄液19が流される。ま
た、洗浄槽15内にも供給口16より洗浄液14が供給
される。そして、積層型圧電アクチュエータ1に交番電
圧が印加され、変位拡大機構2によって拡大された振動
がノズル6に伝達される。
【0014】以上の作動により洗浄が行われ、ノズル6
の汚れは排出口17より外部に排出される。洗浄が終了
すると、洗浄液の供給および振動が停止し、その後、支
持部材8が上昇してノズル6が洗浄槽15から引き上げ
られる。
【0015】上記構成において、積層型圧電アクチュエ
ータ1は、薄板の厚み方向に分極方向が対向するように
圧電素子を積層し、各素子間を接着剤で固着した構造と
なっており、これにより電圧印加で積層方向に伸びる変
位が生じる。この積層型圧電アクチュエータ1は圧電素
子の積層化によって、低電圧でも大変位が得られる。こ
のため、交番電圧の周波数が積層型圧電アクチュエータ
1の共振周波数でなくても、すなわち非共振状態でも大
きな振幅の振動が得られる。加えて、本実施例では、こ
の振動の振幅をテコの原理を用いた変位拡大機構2によ
ってさらに拡大する。
【0016】ここで、交番電圧の周波数は、図3に示す
ようにノズル6の支持部材8付近を節、吐出口10を腹
とする1次の屈曲振動の共振周波数に調整する。例え
ば、外径φ2mm、内径φ1.7mm、全長120mm
のステンレス材からなるノズルにおいては、1次屈曲振
動の共振周波数が約200Hzとなるように調整する。
【0017】このような場合、ノズルの共振周波数が低
くなるため、共振周波数が高い他の振動発生部材、例え
ば、ランジュバン型振動子・平板型圧電振動子は低い周
波数領域で充分な振動および振幅が得られない。しか
し、この積層型圧電アクチュエータ1は低い周波数の非
共振状態でも大振幅が得られ、共振周波数にあまり依存
されないため、ノズルを大きく振らせることができる。
このため、ノズル6の支持部18付近以外は全て振動す
るため、試薬または検体が支持部18手前までしか吸引
されない使用態様ではノズルの外面・内面に付着した汚
れを全て振り落として洗浄することができる。またノズ
ル6が高速に振動すると、付着していた汚れがその加速
度に追従できなくなりノズル表面から剥離する。剥離し
た汚れは、洗浄液の流れと共に外部に排出される。
【0018】 以上のとおり、本実施例においては、ノ
ズル6の外面・内面に付着した汚れは、屈曲振動の加速
度によって振り落とされる。このため、洗浄不良が原因
で発生する試薬間のコンタミネーションおよび検体のキ
ャリーオーバーの発生がなくなり、信頼性の高い分析が
可能となる。また、洗浄時間が短縮されて高速分析が可
能となるばかりでなく、洗浄液の削減によって廃棄物も
少なくなり、その廃棄費用の低減が可能となる。
【0019】
【実施例2】図2ないし図7は本発明の実施例2を示
す。本実施例では図4に示すように、印加される交番電
圧の波形は洗浄時間(すなわち電圧印加時間)21を3
等分し、1次の周波数f1 、2次の周波数f2 、3次の
周波数f3 、の3態様となっている。図5は1次の周波
数f1 によるノズル6の励振を示し、実施例1と同様の
1次の屈曲振動となっている。図6は2次の周波数f2
によるノズル6の励振であり2次の屈曲振動となってお
り、図7は3次の周波数f3 によるノズル6の励振であ
り3次の屈曲振動となる。いずれの振動においても、ノ
ズル6の支持部18が節、吐出口10が腹となってい
る。
【0020】一般に、1次の屈曲振動では、ノズル6先
端の吐出口10から支持部18に近づくにつれて振動振
幅が小さくなる。従ってノズルの支持部18付近まで検
体あるいは試薬を吸い上げた場合、支持部18付近での
洗浄効果が弱くなるが、本実施例では2次および3次の
屈曲振動を併用しているため、支持部18付近に2次屈
曲振動の腹および3次屈曲振動の腹が発生し、支持部1
8付近の洗浄作用を強化することができる。しかも、2
次および3次の各屈曲振動の節位置には、他の屈曲振動
の腹が形成されるため、洗浄不良が発生することがな
い。このため多量の試薬・検体を吸い上げ、支持部18
付近に汚れが付着した場合でも、3次までの屈曲振動を
洗浄時間内に発生させることにより、確実に汚れを落と
すことができる。
【0021】
【実施例3】図8ないし図10は本発明の実施例3を示
す。本実施例では電圧印加波形を図8に示すように、1
次の屈曲振動の周波数f1 を基本波とし、この周波数f
1 に5次の屈曲振動の周波数f5 を重畳しており、これ
によりAM変調波となっている。従って、ノズル6には
図9に示す1次の屈曲振動と、図10に示す5次の屈曲
振動とが同時に励振され、実施例2と同様にノズル6の
支持部18付近の洗浄作用を強力に行うことができ、多
量の試薬・検体による汚れにも対応することができる。
【0022】ここで、1次の屈曲振動の周波数に重畳さ
せる周波数は、回路構成上可能であれば5次以外の周波
数でもよい。このように、1次の屈曲振動を必ず含み、
さらに高次の屈曲振動を同時にまたは時間を分割して励
振することによって、さら洗浄効果を高めることができ
る。
【0023】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の洗浄装置は、ノ
ズルの外面・内面に付着した汚れをほとんど残さずに洗
浄することが可能である。このため分析結果の信頼性の
向上・洗浄時間の短縮・廃棄物の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の全体を示す側面図。
【図2】ノズルの支持部の断面図。
【図3】ノズルの屈曲振動を示す側面図。
【図4】本発明の実施例2の交番電圧の波形図。
【図5】実施例2におけるノズルの屈曲振動を示す側面
図。
【図6】実施例2におけるノズルの屈曲振動を示す側面
図。
【図7】実施例2におけるノズルの屈曲振動を示す側面
図。
【図8】本発明の実施例3の交番電圧の波形図。
【図9】実施例3におけるノズルの屈曲振動を示す側面
図。
【図10】実施例3におけるノズルの屈曲振動を示す側
面図。
【図11】従来の洗浄装置の斜視図。
【図12】従来装置のノズルの側面図。
【図13】従来装置におけるノズルの超音波振動時の側
面図。
【符号の説明】
1 積層型圧電アクチュエータ 2 変位拡大機構 3 レバー 6 ノズル 10 吐出口 15 洗浄槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−87703(JP,A) 特開 平5−1983(JP,A) 特開 平4−363665(JP,A) 特開 平3−232524(JP,A) 特開 平4−255919(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 1/00 101 G01N 35/10 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 交番電圧の印加によって振動する圧電ア
    クチュエータと、 検体、試薬を吐出口から分注するノズルと、 前記ノズルを支持し、該ノズルに前記圧電アクチュエー
    タの振動を拡大して伝達する変位拡大機構と、 前記ノズル吐出口が浸漬される洗浄液が充填された洗浄
    槽とを備え、 前記ノズルの洗浄の際に、前記変位拡大機構に支持され
    る位置を節位置、吐出口を腹位置とする1次の屈曲振
    動、及びさらに高次の屈曲振動を含む複数の振動モード
    により前記ノズルが励振されるよう構成されていること
    を特徴とする医療用分析機の洗浄装置。
  2. 【請求項2】 前記ノズルが振動している際に前記ノズ
    ル内に洗浄液を供給する洗浄液供給手段をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1記載の医療用分析機の洗浄装
    置。
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