JP3319404B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モールドパウダー
を使用した鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】溶鋼の連続鋳造に使用される従来の鋳造
用パウダーには、以下のような特性が要求される。
【0003】(1)溶鋼面をパウダーが溶融して形成さ
れたスラグとその上の未溶融層とで被覆することによ
り、空気による溶鋼酸化を防止し、保温効果を持つ。 (2)溶融スラグは鋳型と鋳片との間に入って潤滑剤に
なるため、常に適当量供給される必要がある。このた
め、消費速度に合いかつ適正スラグプール厚となる溶融
速度を有する。 (3)溶融したスラグ層が鋼中より浮上した非金属介在
物を吸収し、その物性(粘性、溶融温度)の変化が小さ
いこと。 (4)溶融スラグは鋳型と凝固シェル間に流れ込み均一
なスラグフィルムを形成し、その間で潤滑作用があるこ
と。 (5)溶融スラグが適度の粘度、表面張力を持ち、溶鋼
へ巻き込まれないこと。
【0004】これらの中で、特に鋼へのパウダーの巻き
込みは、鋳造速度が1.5m/minよりも大きくなる
ような高速鋳造や、中、低速鋳造でもブリキ材、自動車
用鋼板等の品質要求が厳格な鋼に対し問題となることが
多い。
【0005】このため、高粘性、高表面張力の難巻き込
みタイプのパウダーが開発されてきた(特公平4−40
103号公報等)。また、特公平4−40103号公報
の技術は、粘度と鋳造速度との積が6以上で、かつパウ
ダーの表面張力が290dyn/cmであることを特徴
としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年さらなる
高速鋳造化やさらなる品質の向上が要求されており、巻
き込みを防止するためにパウダーの組成を変更して高粘
性とすると、鋳型と凝固シェル間の十分な潤滑性が維持
できなくなってしまう。
【0007】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、パウダーを巻き込み難く、かつ優れた潤滑性
を確保することができ、パウダー性欠陥の無い高品位の
製品を得ることができる、鋼の連続鋳造方法を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、各種実験
および検討を重ね、実鋳造でのパウダーの流れ込み条件
を推測した。その結果、高速鋳造においてもパウダーの
鋳片への巻き込みが極めて少なく、かつ潤滑性が優れる
条件が存在することを知見した。
【0009】すなわち、パウダーの粘度、パウダーと鋼
との間の界面張力、および鋳造速度を一定の範囲とする
ことにより、鋼に対するパウダーの巻き込みを減少させ
ることができる。
【0010】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたものであり、1550℃におけるモールドパウダー
と溶鋼との間の界面張力値γ(dyn/cm)と、モー
ルドパウダーの1300℃における粘度η(poise)
と、鋳造速度Vc(m/min)との関係が以下の式を
満足することを特徴とする鋼の連続鋳造方法を提供する
ものである。 1041.43・η-0.912・Vc1.971・γ-13.32<10
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。前述のように、パウダーを用いた鋼の連続鋳造
法では、パウダーの巻き込みが大きな問題となる。その
ため、巻き込みを防止し、しかも潤滑性を確保するため
の種々検討を行った。
【0012】まず、一般的に用いられる連続鋳造用パウ
ダーについて説明する。一般的な連続鋳造用パウダー
は、SiO2、CaO、Al23、Fe23、MgO、
MnO、BaO、B23等の酸化物を母材とし、その他
に物性調製剤としてNa2O、K2O,LiO等の金属酸
化物、NaF、KF、LiF、CaF2、MgF2、Al
3、Na3AlF6等のフッ化物およびそれら金属の炭
酸化物、硝酸化物が添加されている。
【0013】熱処理基材としては、電気炉やキュポラで
溶解されたプリメルト基材、また既存の熱処理原料とし
て、高炉滓やガラス粉末、ポルトランドセメント、天然
のものとして玄武岩、ワラストナイト、シラス等があ
る。
【0014】副原料としては、フッ化ナトリウム、水晶
石、炭酸ソーダ、炭酸リチウム、蛍石のフラックス、お
よびSiO2源としてガラス粉、珪藻土等、CaO源と
して、炭酸カルシウム、蛍石等が添加される。
【0015】溶融速度調整剤としては、カーボンブラッ
ク、天然および人造黒鉛、コークス粉、石炭粉等の炭素
質、あるいは、窒化ホウ素等の窒化物を0.5〜15重
量%配合した粉状のもの、あるいはこれにバインダーを
添加し、顆粒状にしたものが一般的である。従来は炭素
質粉として、平均粒径30mmのカーボンブラック、4
0μmのコークス粉、100μmの木粉が使用されてい
る。
【0016】このような一般的なパウダーを用いた連続
鋳造方法に対し、本発明では、以下の観点から検討を行
った。近年、高速鋳造が指向されており、その条件下で
は溶鋼のスループット量の増大によりパウダーはより巻
き込みやすい環境になる。また、高速下では潤滑性が悪
くなることが知られている。
【0017】パウダーの巻き込みを制御するためには、
パウダーの粘性を大きくする必要があり、その一方で凝
固シェルと鋳型間の潤滑作用を良好にするためには、パ
ウダーの粘性を低くする必要がある。このような相反す
る課題の解決が望まれている。
【0018】そこで、図1に示す試験装置を使用して検
討した結果、パウダーの巻き込みに関しては、粘度は大
きい影響力を持つことがわかったが、それに加え、溶鋼
−パウダー間の界面張力も巻き込みに対して多大な影響
があることがわかった。一方、表面張力に関しては、そ
の影響を確認することはできなかった。なお、図1の装
置においては、石英製のJ字管4を鋼中に浸漬し、湯面
近傍の溶鋼5を吸引した後、J字管4中に吸い込まれた
鋼に含有されるパウダーの量を定量化することで巻き込
みを評価した。なお、図1において、1は真空トラッ
プ、2は真空ポンプ、3は溶融パウダー、6はるつぼ、
7は鋼種はコイルである。また、ここでは界面張力およ
び表面張力は静滴法で求めた。
【0019】そこで、さらに検討を重ねた結果、パウダ
ー粘度を従来並みに維持することで潤滑性を確保しつ
つ、溶鋼−パウダー間の界面張力を大きくすることでパ
ウダーの巻き込みを抑制することができることを見出し
た。実際には、パウダーのこのような物性に加え、鋳造
速度もパウダー巻き込みの因子となることが知られてい
る。
【0020】実機において、これらの条件を変化させ、
パウダーの巻き込みに関する調査を行った。その結果、
1550℃におけるモールドパウダーと溶鋼との間の界
面張力値γ(dyn/cm)と、モールドパウダーの1
300℃における粘度η(poise)と、鋳造速度Vc
(m/min)とが以下の(1)式を満足する関係とな
るように鋳造することで、パウダー性の欠陥が大幅に減
少することを確認した。 1041.43・η-0.912・Vc1.971・γ-13.32<10 ・・・・・・(1) 上式の左辺の値が10以上になると、巻き込み量が増加
し、製品に発生するパウダー欠陥数が増大するため、上
記(1)式を満足する必要がある。
【0021】界面張力は、パウダーの組成においてCa
OやAl23の含有量を高くしたり、特性に影響を与え
ない範囲において溶鋼の成分の最適化を図ることにより
制御することができる。
【0022】なお、界面張力は、例えば、下式のような
溶鋼とパウダーとの間に一般に認められる反応があるこ
とで、大きな影響を受けるため、パウダー自身の物性で
ある表面張力とはその性質を全く異にするものである。Al +SiO2=Al23Si
【0023】
【実施例】表1に示すパウダーを使用して、実機試験を
行い、鋳造の際の潤滑性とコイルの疵を評価した。表1
に示すように、比較例の条件で製造したコイルにおける
パウダーの巻き込みに比較して、界面張力の高いパウダ
ーを用い、上記(1)を満たす条件で鋳造した実施例1
〜3では、巻き込み指数は10未満と少ないことが確認
された。また、実施例1,2に示すような低粘度のパウ
ダーを高速で鋳造しても、上記(1)を満たすことによ
り、巻き込みを抑制できることが確認された。なお、い
ずれの例においてもパウダーの消費量が0.25kg/
2以上であり、潤滑には問題のないレベルであった。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
パウダーの粘性、パウダーと鋼との間の界面張力、およ
び鋳造速度の関係をある一定の範囲に調整することによ
り、パウダーの鋳片への巻き込みが極めて少なく、優れ
た潤滑性を確保することができ、パウダー性欠陥の無い
高品位の製品を得ることができる鋼の連続鋳造方法を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パウダーの巻き込みを試験するための装置を示
す概略構成図。
【符号の説明】
1……真空トラップ 2……真空ポンプ 3……溶融パウダー 4……J字管 5……溶鋼 6……るつぼ 7……高周波コイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−204810(JP,A) 特開 平2−25254(JP,A) 特開 平2−165853(JP,A) 特開 昭50−1925(JP,A) 特開2000−158106(JP,A) 特開2000−71051(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/108 B22D 11/20 C21C 7/076

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1550℃におけるモールドパウダーと
    溶鋼との間の界面張力値γ(dyn/cm)と、モール
    ドパウダーの1300℃における粘度η(poise)と、
    鋳造速度Vc(m/min)との関係が以下の式を満足
    することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。 1041.43・η-0.912・Vc1.971・γ-13.32<10
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