JP2004358485A - 鋼の連続鋳造用モールドフラックス - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼を鋳造する場合に鋳片表層に発生する非金属介在物の残存に起因する欠陥(以下、「介在物性の欠陥」という)を抑制し、さらに鋳片表面に発生する縦割れを防止して、表面品質が良好な鋳片を得ることができる鋼の連続鋳造用モールドフラックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造で得られた鋳片の表層における介在物性の欠陥は、圧延工程で発生する表面庇の原因となるため、その低減が望まれる。特に、極低炭素鋼または低炭素鋼は、成形性に優れていることから自動車の外装用鋼板や家庭電器製品などの薄鋼板として多用されるが、鋼自体が比較的軟らく、表面疵に対する感受性が高いため、一層、介在物性の欠陥をなくすことが要求される。
【0003】
鋳片に存在する非金属介在物の主なものは、精錬プロセスにおいて溶鋼中に生成したもの、および連続鋳造において鋳型内でモールドフラックスの溶融層(以下、単に「溶融層」という)が溶鋼中へ巻き込まれたものである。
【0004】
特に、介在物性の欠陥が発生し易い鋳片表層に限れば、後者に該当する非金属介在物を低減することが、鋳片の表面品質の向上に効果的である。
【0005】
また、鋳片表面に発生する縦割れも、圧延工程において表面疵の要因になることから、その低減が望まれている。この縦割れは、鋳型内において溶鋼が凝固して形成する凝固殻の厚みが幅方向に不均一になると発生する欠陥であり、凝固収縮により発生する応力が厚みの薄い部分に引っ張り応力として集中し鋳片表面に発生する。
【0006】
特に、中炭素鋼は、溶鋼からの凝固に際し包晶反応を起こすことから、鋳片表面に縦割れが発生し易く、圧延工程における表面疵の発生を助長する。
【0007】
まず、介在物性の欠陥に関し、鋳型内において溶融層が溶鋼中へ巻き込まれるのを防止するには、鋳型内の溶鋼流動を適正な状態に維持すること、およびモールドフラックスを適正な化学組成に設計して、巻き込まれにくい物性を備えることが主な対策となる。
【0008】
これらの対策のうち、前者については、浸漬ノズルの適正化、電磁攪拌または電磁ブレーキの利用について、種々の方法が開示されている。例えば、極低炭素鋼の溶鋼を鋳造する際に巻き込みを防止するため、特許文献1には、鋳型短辺から鋳型幅1/4相当の位置における溶鋼表面の流速を適正範囲に抑制する方法が開示されている。
【0009】
一方、後者の対策としては、連続鋳造用モールドパウダーの改善について提案がなされており、特許文献2では溶融層の粘度を高める方法が提案され、逆に、特許文献3では粘度を低くして溶鋼中の非金属介在物を低減する方法が提案されている。
【0010】
次に、鋳片表面に発生する縦割れに関し、その発生防止には、モールドフラックスの結晶析出の促進および安定化が有効である。通常、鋳型内の溶鋼上に供給されたモールドフラックスは、溶鋼からの受熱により溶融層を構成する。この溶融層は、鋳型内壁と凝固殻との間隙に流入し、鋳型内壁に沿ってフラックスフィルムを形成する。このフラックスフィルムは鋳型により冷却されて、フラックスフィルム中に凝固層が形成される。
【0011】
この凝固層中に結晶が析出すると、フラックスフィルムの伝熱抵抗が増大し、凝固殻の冷却速度が緩やか(緩冷却)になる。緩冷却された凝固殻は均一に生成および成長するので、凝固殻の厚みが幅方向に均一になり、鋳片表面に発生する縦割れを防止することができる。
【0012】
このため、モールドフラックスの結晶析出の方法として、モールドフラックスの塩基度を高める方法(非特許文献1参照)、モールドフラックスにZrO2を添加する方法(非特許文献2参照)、さらにモールドフラックス中のMgO濃度を低減する方法(特許文献4参照)等が開示されている。
【0013】
しかしながら、極低炭素鋼または低炭素鋼を鋳造する場合に鋳片表層部に発生する介在物性の欠陥、または中炭素鋼などを鋳造する場合に鋳片表面に発生する縦割れに関し、これらの防止対策はまだ根本的に解決されていないのが現状である。このため、それらの介在物性の欠陥、および縦割れをなくすことが可能な、表面品質に優れた鋳片の製造方法の改善が望まれている。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−192802号公報
【特許文献2】
特開平10−263767号公報
【特許文献3】
特開平10−5952号公報
【特許文献4】
特開平8−141713号
【非特許文献1】
品川技報32号、1989年、147頁
【非特許文献2】
材料とプロセス、第4巻、第4号、1991年、1247頁
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋼の連続鋳造に際し、鋳片表層に発生する介在物性の欠陥を低減するとともに、鋳片表面に縦割れが発生するのを防止でき、表面品質に優れた鋳片を製造できる鋼の連続鋳造用モールドフラックスを提供することを目的にしている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するため、連続鋳造に用いられるモールドフラックスに含有されるSの界面活性的な性質に着目して、各種フラックスの化学組成を検討した結果、モールドフラックス中でSの含有量を適正範囲に低下させることにより、鋳片表層に現れる介在物性の欠陥と同時に、鋳片表面に発生する縦割れを低減できることを見出した。
【0017】
モールドフラックスの溶融物である溶融層中のS含有量が多くなると、Sは溶鋼中に移行して溶融層と溶鋼との界面において濃化し、界面張力を大きく低下させる。このように界面張力が低下すると、絶えず流動している溶鋼中へ溶融層が巻き込まれ易くなり、巻き込まれた溶融層は鋳片中で非金属介在物として残存することになる。
【0018】
一方、溶融層から溶鋼中へ移行するSは、鋳型内メニスカス部の凝固穀の先端部、すなわち鋳片の表層部にも濃化することになるが、その部分でのS濃度が高くなると、鋼の脆化を招く。そのため、鋳型内で起こる収縮の際に凝固殻の割れに対する感受性が強くなり、縦割れが発生し易くなる。
【0019】
ところで、モールドフラックスの塩基度は、溶融層の性質を表すための一般的な指標であり、通常、Caの全量を換算したCaOのSiO2 に対する質量%の比として表される。
【0020】
そこで、上記のようにモールドフラックス中にSが含有される場合に、そのCaOの含有質量%とSiO2 の含有質量%との比「CaO/SiO2 」の値を高めることにより、溶融層中のSが溶鋼中へ移行するのを有効に抑制でき、鋳片表層に発生する介在物性の欠陥および鋳片表面に発生する縦割れを低減できる。
【0021】
前述の通り、フラックスフィルム中の凝固層に結晶が析出すると、フラックスフィルムの伝熱抵抗が増大し、縦割れの発生防止に有効である。また、モールドフラックスの一般的な組成であるCaO−SiO2−CaF2の三元系の化学組成では、フラックスフィルム中に析出する主な結晶は、3CaO・2SiO2・CaF2の分子式で表されるカスピディン(Cuspidine)と呼ばれる結晶である。
【0022】
したがって、鋳片表面の縦割れの発生をさらに有効に防止する方法は、カスピディンの析出を促進することであり、モールドフラックスの組成をカスピディンの析出が安定する組成範囲に維持することにより、析出した結晶組成を一定にし、析出を促進することができる。
【0023】
さらに、析出する結晶組成をカスピディンから変化させない程度に、任意成分を添加することにより、結晶の過度な析出を抑制するとともに、溶融層の粘度、凝固点等を調整することができる。
【0024】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(3)の鋼の連続鋳造用モールドフラックスを要旨としている。
(1)CaOの含有質量%とSiO2 の含有質量%との比CaO/SiO2 の値が1.0〜2.5であり、Sの含有量が0.5質量%未満であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックスである。
(2)上記(1)の鋼の連続鋳造用モールドフラックスでは、下記(1)式で定義するf1の値を1.1〜1.7とし、下記(2)式で定義するf2の値を0.05〜0.25とするのが望ましい。
【0025】
ここで、(CaO)m=WCaO−(CaF2)m×0.718、
(SiO2)m=WSiO2、
(CaF2)m={WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.404}×2.05であり、
さらに、WCaO、WSiO2、WF、WLi2O、WNa2OおよびWK2Oは、モールドフラックス中のCaO、SiO2、F、Li2O、Na2OおよびK2Oの含有量(質量%)である。
(3)上記(1)、(2)の鋼の連続鋳造用モールドフラックスでは、さらに、A12O3の含有量を5〜20質量%にするのが望ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のモールドフラックスでは、CaOの含有質量%とSiO2 の含有質量%との比CaO/SiO2 の値が1.0〜2.5であり、Sの含有が0.5質量%未満であることを特徴とする。これにより、溶融層から溶鋼または鋳型内メニスカス部の凝固殻先端部へのSの移行を抑制し、鋳片表層に発生する介在物性の欠陥を低減するとともに、鋳片表面に縦割れが発生するのを防止することができる。
【0027】
本発明において、モールドフラックスに含有されるSは不純物であり、この含有量が多いとSは溶鋼中に移行して溶融層と溶鋼との界面に濃化し、溶鋼の界面張力が低下する。同時に、凝固穀の先端部に濃化し、その部分でのS濃度が高くなり鋼の脆化を招くことになる。このため、Sの含有量を適正範囲に低下させる必要がある。
【0028】
そこで、モールドフラックスのS含有量と溶融層からのS移行量との関係を調査すると、S含有量を0.5質量%未満にした場合に、溶鋼または凝固殻の先端部へ移行するSが著しく減少し、界面張力の低下や鋼の脆化が抑制される。そのため、不純物としてのS含有は0.5質量%以下とする。望ましくは0.3質量%以下であり、さらに望ましくは0.1質量%以下である。
【0029】
さらに、モールドフラックスの塩基度に応じて、溶融層から溶鋼または凝固殻の先端部へのS移行量が変動することが明らかになる。本発明者らの検討結果によれば、塩基度、すなわち「CaO/SiO2 」の値を1.0以上にすることにより、溶融層からのS移行を一層有効に抑制できる。これは、モールドフラックスが塩基性となるため、より多くのSをモールドフラックス中に保持できることによる。このため、本発明では、「CaO/SiO2 」の値を1.0以上にする必要がある。
【0030】
ところが、モールドフラックスの塩基度が2.5を超えるようになると、鋳型内での凝固収縮量の小さい極低炭素鋼または低炭素鋼を鋳造する際に、鋳型内の潤滑性が損なわれたり、潤滑性自体に問題はなくても、鋳型銅板の温度変動が大きくなる。最近では、一般的にブレイクアウト予知システムが用いられているが、鋳型銅板の温度変動が大きくなると、同システムが誤警報を発生する等の問題が生じる。
【0031】
この誤警報の原因は、フラックスフィルム中の凝固層に析出する結晶組成の不整合および不安定による。複数の結晶が同時に析出し存在すると、両結晶間の構造的な不整合さに起因して、フラックスフィルムの鋳型側表面の粗度が変化したり、フラックスフィルムの厚みが変動したりして、フラックスフィルムを介した伝熱の状態が不安定となり、鋳型銅板の温度変動が大きくなる。
【0032】
このように、鋳型内の潤滑性が損なわれたり、鋳型銅板の温度変動が大きくなるのを回避するため、本発明では「CaO/SiO2 」の値を2.5以下にする必要がある。
【0033】
本発明のモールドフラックスは、CaO、SiO2 およびフッ素化合物を含有する一般的な成分構成であり、基本的な化学組成としてはSiO2 が15〜40質量%、CaOが30〜60質量%およびFが3〜20質量%を採用できる。さらに、任意の添加成分としては、Al2O3、MgOおよびアルカリ金属酸化物を含有できる。
【0034】
前述の通り、一般的な組成のモールドフラックスを使用した場合、析出する結晶組成はカスピディンであり、この析出を促進することによりフラックスフィルムの伝熱抵抗が増大し、縦割れの発生防止に有効である。したがって、本発明のモールドフラックスの化学組成は、カスピディンの析出が安定する範囲に維持することにより、析出する結晶組成を一定させることが望ましい。
【0035】
本発明では、カスピディンの析出が安定する化学組成の範囲を、モールドフラックスの主要成分であるCaO、SiO2、アルカリ金属酸化物およびFの含有量(質量%)から、下記(3)〜(5)式で規定する(CaO)m、(SiO2)mおよび(CaF2)mの換算含有量(質量%)を算出し、それらの換算含有量を用いた下記(1)で定義するf1および(2)で定義するf2を所定範囲に調整することにより維持している。
【0036】
ただし、(CaO)m、(SiO2 )mおよび(CaF2)mは、化学量論的に換算された該当成分の換算含有量(質量%)であり、WCaO、WSiO2、WF、WLi2O、WNa2OおよびWK2Oは、モールドフラックス中のCaO、SiO2、F、Li2O、Na2OおよびK2Oの含有量(質量%)である。
【0037】
まず、上記(3)式で規定する(CaO)mについて説明する。通常、モールドフラックス中のCaは全てCaOに換算した含有量で表され、そのうちCaF2と考慮すべきCaを除いたCaOの有効含有量は、上記(3)式で規定される。上記(3)式における係数は、0.718=(CaOの分子量)/(CaF2 の分子量)を意味している。
【0038】
一方、モールドフラックス中のSiO2は全て有効な含有成分となり、その含有量は上記(4)式で規定する(SiO2)mとなる。
【0039】
次に、上記(5)式に規定する(CaF2)mについて検討する。モールドフラックスの溶融層中のFは、CaよりもLi、Na、Kなどのアルカリ金属との親和性がより強く、モールドフラックス中に、Na2O、Li2O、K2Oが存在する場合には、見かけ上、下記の反応が起こる。
【0040】
(CaF2)+2(Li2O)→(CaO)+2(LiF)
(CaF2)+2(Na2O)→(CaO)+2(NaF)
(CaF2)+2(K2O) →(CaO)+2(KF)
したがって、カスピディンの析出に寄与すると考えられる、CaF2の有効な含有量は上記(5)式により算出される。
【0041】
上記(5)式における係数は、1.27=2×(Fの原子量)/(Li2Oの分子量)、0.613=2×(Fの原子量)/(Na2Oの分子量)、0.404=2×(Fの原子量)/(K2Oの分子量)および2.05=(CaF2の分子量)/(2×(Fの原子量)を意味する。
【0042】
本発明では、カスピディンの析出を安定させるには、上記(1)式で定義するf1の望ましい範囲は1.1〜1.7である。f1が1.1未満の場合には、カスピディンが析出しにくくなる。一方、1.7を超える場合には、カスピディンと異なる結晶、例えば、2CaO・SiO2、3CaO・2SiO2・CaF2・Na2O等が析出して、結晶組成が単一とならない。さらに、f1の望ましい範囲は、1.2〜1.6であり、カスピディンの析出を促進するとともに、結晶組織の安定が一層図れることになる。
【0043】
さらに、上記(2)式で定義するf2の望ましい範囲は、0.05〜0.25である。f2が0.05未満の場合には、カスピディンが析出しにくくなり、0.25を超える場合には、CaF2が析出し易くなり、結晶組成が単一にならない。さらに、f2の望ましい範囲は0.10〜0.20であり、もっと望ましい範囲は0.15〜0.20である。いずれの場合も、カスピディンの析出が促進され、異なる結晶の析出を抑制し結晶組織の安定が一層図れることになる。
【0044】
さらに、本発明のモールドフラックスでは、析出する結晶組成をカスピディンから変化させない程度に、任意成分を添加することができる。これにより、結晶の過度な析出を抑制するとともに、モールドフラックス溶融層の粘度、凝固点等を調整することができる。
【0045】
任意に添加できる成分として、Al2O3、MgOが有効である。特に、Al2O3は、溶融層の凝固点および流動性(粘度)の調整に有効である。すなわち、溶融層が溶鋼中のAl2O3を吸収すること、または溶融層中のSiO2が溶鋼中のAlと反応し、Al2O3が生成することにより、その濃度が上昇する。このため、予め溶融層中のAl2O3濃度を高めることにより、凝固点や流動性(粘度)の変動を小さくすることができる。
【0046】
凝固点や流動性(粘度)の変動を小さくするため、モールドフラックスにAl2O3を含有させる場合には、その含有量は5〜20質量%にするのが望ましい。Al2O3の含有量が5質量%未満では、添加による効果が発揮されず、20質量%を超える場合には、Al2O3を含む組成の結晶が析出し始めて、カスピディンの析出が不安定になる。
【0047】
また、MgOを添加する場合は、モールドフラックスの溶融層の凝固点を調整することを目的にする。この場合には、MgOの含有量は2〜15質量%である。2質量%未満では、添加による効果が発揮されず、15質量%を超える場合にはカスピディンの析出を阻害する。
【0048】
本発明のモールドフラックスの化学組成は、基本成分としてSiO2 が15〜40質量%、CaOが30〜60質量%およびFが3〜20質量%を含有させ、さらに、任意の添加成分として、上記のAl2O3およびMgOの他に、アルカリ金属酸化物を総和で0.1〜20質量%で含有させることができる。
【0049】
さらに、本発明のモールドフラックスでは、TiO2、ZrO2、MnO、BaO等も、必要に応じて添加することができる。これらの添加によりフラックスの凝固点を調整することができるが、なかでもZrO2は凝固点を上昇させる作用を発揮し、それ以外の成分は凝固点を下降させる作用を有する。しかし、これらの成分を添加する場合には、各成分の単独での含有量が10質量%を超えないことが望ましい。
【0050】
モールドフラックスには配合する原料から不純物としてFe2O3等が混入する場合があるが、本発明において何ら支障を生じない。
【0051】
本発明のモールドフラックスは、上記の構成を採用することにより、溶融層から溶鋼または鋳型内メニスカス部の凝固殻先端部へのSの移行を抑制でき、鋳片表層に発生する介在物性の欠陥を低減するとともに、鋳片表面に縦割れが発生するのを防止することができる。
【0052】
さらに、カスピディンをフラックスフィルム中に安定して析出させることができるので、鋳型内の緩冷却化が可能になることから、一層、鋳片表面に発生する縦割れ防止を図ることができる。
【0053】
【実施例】
(実施例1)
厚み270mmおよび幅1260mmの鋳型を有する垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて、極低炭素鋼を速度1.6m/分で鋳造した。溶鋼の鋳造に際しては、塩基度、Sの含有量、添加元素の異なる10種類(本発明例A〜Gおよび比較例a〜c)のモールドフラックスを使用した。表1に極低炭素鋼の化学組成を示す。また、表2にモールドフラックスの条件を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
極低炭素鋼の鋳造結果を表3に示す。ここで、鋳片表層の介在物は、表面から10mmの厚みにかけて鋳片を1kg切り出して塩化第一鉄水溶液中で電解させ、水溶液中に残渣として残った直径100μm以上の球状介在物の個数を光学顕微鏡で計数して評価した。
【0057】
また、鋳型銅板の温度は、溶鋼表面から約200mm下方の位置に埋設した熱電対により計測し、その温度変動を評価した。
【0058】
【表3】
【0059】
本発明例はいずれも、鋳片表層の介在物は1〜6個と少なく、良好な清浄性であった。また、鋳造中における鋳型銅板の温度変動も小さく安定していた。なお、通常の連続鋳造における鋳型銅板の温度変動レベルは±10℃であった。
【0060】
本発明例AおよびBは、塩基度が1.1〜1.3と比較的低いため、他の本発明例に比べ鋳片表層の介在物は4〜6個と多かった。
【0061】
これに対し、本発明例C、DおよびEでは塩基度が1.6と比較的高く、Al2O3の望ましい含有範囲も満足しているので、鋳片表層の介在物は1〜3個と良好な結果であった。特に、S含有量が0.03質量%であるモールドフラックスEを用いた場合、鋳片表層の介在物は1個であり、良好な清浄性であった。
【0062】
本発明例Gでは、上記(2)式で定義するf2が0.32と望ましい範囲を高めに外れているため、CaF2が析出し易くなり、析出した結晶組成が単一とはならず、鋳型銅板の温度変動が比較的大きくなった。ただし、通常の鋳造における変動レベル±10℃に比べ良好な結果であった。
【0063】
これに対して、本発明で規定する塩基度から低めに外れた比較例a、およびSの含有量が外れた比較例bでは、鋳片表層の介在物が多く、清浄性が悪化していた。また、本発明で規定する塩基度から高めに外れた比較例cでは、鋳片表層の介在物は少なかったものの、フィルム中にCaF2または3CaO・2SiO2・CaF2・Na2O等の結晶が析出することにより、鋳型銅板の温度変動が大きくなり、ブレイクアウト予知システムの誤作動が頻発した。
【0064】
実施例1では、本発明例および比較例のいずれにおいても、鋳片表面に縦割れは観察されなかった。
(実施例2)
実施例2では、厚み270mmおよび幅1260mmの鋳型を有する垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて、中炭素鋼を速度1.6m/分で鋳造した。溶鋼の鋳造に際しては、Sの含有量の異なる2種類(実施例1の本発明例Fおよび比較例d)のモールドフラックスを使用した。表4に中炭素鋼の化学組成を示す。また、表5にモールドフラックスの条件を示す。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
中炭素鋼の鋳造結果を表6に示す。ここで、鋳片表面に発生する縦割れについて、鋳造後の鋳片表面を目視で観察しその有無を確認した。さらに、鋳片表層の介在物の観察、および鋳型銅板の温度変動の評価は、実施例1の場合と同様とした。
【0068】
【表6】
【0069】
本発明例Fでは、鋳片表層の介在物は少なく良好な清浄性であるとともに、鋳片表面に発生する縦割れも観察されなかった。さらに、鋳造中における鋳型銅板の温度変動も小さく安定していた。
【0070】
これに対して、本発明で規定するSの含有量から外れる比較例dでは、鋳片表層の介在物が多く、清浄性が悪化しており、同時に鋳片表面に縦割れの発生が確認された。
【0071】
【発明の効果】
本発明の鋼の連続鋳造用モールドフラックスによれば、溶融層からのSの移行を抑制することが可能になり、鋳片表層に発生する介在物性の欠陥を低減するとともに、鋳片表面に縦割れが発生するのを防止することができる。
【0072】
さらに、その化学組成を適切に選択することにより、カスピディンをフラックスフィルム中に安定して析出させることができるので、鋳型内の緩冷却化が可能になり、一層、鋳片表面に発生する縦割れの防止を図ることができる。
Claims (3)
- CaOの含有質量%とSiO2 の含有質量%との比CaO/SiO2 の値が1.0〜2.5であり、Sの含有量が0.5質量%未満であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
- さらに、A12O3の含有量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
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