JP3314840B2 - 形態安定に優れた布帛 - Google Patents

形態安定に優れた布帛

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強力のフィラメント
が芯に存在し、鞘にセルロース系繊維が存在してなる繊
維束と、セルロース系繊維のみからなる繊維束とからな
る複合糸を用いた吸湿性、ソフト風合に富んだ形態安定
に優れた布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、綿繊維が半分ほど入っている糸か
らなる布帛であっても、しわにならずアイロンかけ不要
というワイシャツが人気を呼んでいる。その加工の仕組
みとして2つの方法が挙げられる。
【0003】一つの方法は、液体アンモニアで加工され
た生地に形態安定強化樹脂加工を施し、縫製後140〜
170℃の熱処理を加えて樹脂を反応させ形状記憶させ
る方法である。他の一つの方法は、縫製後のシャツにホ
ルマリンを主成分とする混合ガスを吹き付けてセルロー
ス系繊維を架橋結合することにより形状記憶させる方法
である。
【0004】ところで、前者の方法によると、布帛は、
生地に樹脂加工を施しているため風合が硬くなり肌ざわ
りの面で問題があり、更に汗をかいたときの吸水性が悪
く、乾燥性にも問題があり、実用性に大きな問題を残し
ている。
【0005】また、後者の方法によると、布帛は、性能
面、実用性においては前者の方法によって加工された布
帛よりも優れているものの、セルロース系繊維を架橋結
合することで該セルロース系繊維がもろくなり、布帛の
引裂強力の低下は避けられず、セルロース系繊維の高混
率の展開に課題がある。
【0006】そこで、布帛の引裂強力の低下を防ぐため
に最内層にフィラメントが配置され、外層に短繊維が配
置されたいわゆるコアヤーンを用いることが考えられ
る。しかし、該コアヤーンは、糸均斉度が悪く、フィラ
メントに対する短繊維による被覆性が不十分であり、耐
摩耗性に関してもシース抜けしやすい欠点を有し、被覆
性及び糸性能上致命的欠点を有している。
【0007】また、マルチフィラメント糸を電気開繊し
てステープルと複合した複合糸を用いて形態安定に優れ
た布帛にすることも考えられるが、糸均斉度、耐摩耗性
は改善されるものの、被覆性の面で問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この様にセルロース系
繊維を高混率で用いた糸からなる布帛で引裂強力を下げ
ることなく、長繊維糸条たるフィラメントが充分被覆さ
れ、形態安定に優れた布帛は、今だ製造されていない。
本発明は、セルロース系繊維を高混率に用いた糸からな
る布帛であって引裂強力の低下のない、しかも形態安定
に優れた布帛を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するために、次の手段をとる。すなわち、本発明は、
フィラメントが芯にセルロース系繊維が鞘に配置された
芯鞘構造の繊維束(A)とセルロース系繊維のみからな
る繊維束(B)とが相互に巻き付くように実撚がかけら
れて構成される複合糸からなる布帛であって、前記フィ
ラメントの強度が5.0g/d以上であり、該セルロー
ス系繊維と該フィラメントとの重量%比が60〜90重
量%/40〜10重量%であり、該布帛のウオッシュア
ンドウエア性(以下「W&W性」という。)が3.5級
以上、引裂強力が700g以上であることを特徴とする
形態安定に優れた布帛である(請求項1)。
【0010】また、本発明は、布帛が縫製後の布帛であ
って、ホルマリンが気相状態で該布帛に吹き付けられて
セルロース分子同士が架橋結合されてなる請求項1に記
載の形態安定に優れた布帛である(請求項2)。
【0011】以下に本発明を図をまじえて詳細に説明す
る。なお、図は、あくまでも説明のためのものであっ
て、本発明はこれによって限定されるものではない。図
1において、繊維束Aは芯にフィラメントFを有し、そ
のまわりにセルロース系繊維の短繊維SAが配置してお
り、他方、繊維束Bはセルロース系繊維の短繊維SBで
構成される。
【0012】ここでフィラメント強度が5.0g/d以
上好ましくは5.5g/d以上である。仮りにフィラメ
ント強度が5.0g/d未満であると、布帛形成後製品
化でセルロース系繊維にホルマリンを気相状態で吹き付
け架橋結合する際にセルロース系繊維が劣化し布帛の引
裂強力が著しく低下してしまい、また、ウオッシュアン
ドウエア性も3.5級未満となり、好ましくない。な
お、フィラメントFは、1本でも、2本以上の多本数で
も良い。
【0013】フィラメントの素材としては、ポリエステ
ル、ポリアミド、ポリアクリルなどの合成繊維のほかプ
ロミックスなどの半合成繊維など一般に衣料用に供され
るものが挙げられるが、糸強度の面からポリエステル、
ポリアミドが好ましい。
【0014】他方、セルロース系繊維の短繊維SA、S
Bとしては、綿、ポリノジック、レーヨン、麻など、ま
たはこれらの混紡繊維が挙げられ、短繊維SAとSBと
は、同じものである方が好ましいが異っていても差し支
えない。例えば、短繊維SAに綿を用い、短繊維SBに
ポリノジックを用いることも考えられる。
【0015】また、複合糸に占めるセルロース系繊維
は、60重量%〜90重量%でなければならない。これ
は、セルロース系繊維を高混率にして本発明の効果を奏
するためであり、60重量%未満になると吸湿性及びソ
フト風合が低下して好ましくなく、他方、90重量%を
こえると引裂強力が低下して好ましくない。
【0016】さらに繊維束Aと繊維束Bとの重量%比A
/Bは0.4〜2.3であることが好ましい。0.4未
満であると短繊維で安定してフィラメントを被覆するこ
とが困難となり、他方、2.3をこえると著しく操業性
が低下し好ましくない。
【0017】また、繊維束A及び繊維束Bの撚方向と同
方向にかけられる実撚の撚係数Kは、インチ方式で2.
0〜8.0、さらに好ましくは2.2〜7.0がセルロ
ース系繊維特有の風合を得るのに好ましい。ここに、撚
係数Kは、T=K・Ne1/2 であらわされる。Tは撚数
(t/in)、Neは英式綿番手である。
【0018】さらに、布帛の引裂強力は700g以上で
ある必要がある。けだし、耐久性、実用性を考慮するた
めである。
【0019】また、布帛のウオッシュアンドウエア性は
3.5級以上でなければならない。3.5級未満である
と形態安定に乏しくなるためである。
【0020】またさらに、縫製後の布帛にホルマリンを
気相状態で吹き付けるのは、セルロース分子同士をとこ
ろどころ橋をかけたように化学的に結合させ、セルロー
ス分子の移動や繊維の折れをなくすことでしわの発生を
防止するためである。
【0021】洗濯後の布帛にしわが発生するのは次のよ
うな現象によると考えられる。すなわち、綿繊維などは
直径10万分の1mmというミクロな繊維がより集まっ
て出来ており、かかるミクロな繊維はセルロースという
高分子が集まって出来ており、ところによってセルロー
スが結晶化している部分とセルロースの密度が低く非結
晶のままの部分があり、綿繊維が水を吸ったり水を放出
して乾いたりすると、徐々に非結晶部分のセルロース分
子が詰まって密になり、また、非結晶部分は弱く折れ曲
がりやすく、これらの原因によって綿繊維が不均一に短
くなるため、しわが発生すると考えられる。したがっ
て、セルロース系繊維を含む複合糸を用い製織(編)、
染色加工、縫製後セルロース系繊維の布帛にホルマリン
を気相状態で吹き付け架橋結合することで形態安定に優
れた布帛が得られるのである。
【0022】次に製造方法について説明する。図2にお
いてリング精紡機のバックローラー1に2本の粗糸a、
bを同時に供給しこの際粗糸aの中心から粗糸bの中心
までの間隔をDとするとき3mm≦D≦12mmの範囲
のDを採用する。間隔Dが3mm未満になると糸強力、
耐摩耗性が低下し、更に毛羽が多く糸均斉度も低下す
る。またDが12mmをこえると操業性が著しく低下し
て好ましくない。ついで2本の粗糸a、bに所定のドラ
フトをかけてフロントローラー2に供給するわけである
が、この際フィラメント糸Fをガイド4、5をへて張力
をかけつつドラフトされている粗糸aの真中に供給す
る。フロントローラー2をへた繊維束A、Bは撚係数K
(2.0≦K≦8.0)の実撚をかけられてスネルワイ
ヤー7をへてボビン8に巻き取られる。3はセカンドロ
ーラーである。
【0023】
【実施例】
実施例1 フィラメントとしてポリエチレンテレフタレートからな
るマルチフィラメント糸(40d/15f、強度6.5
g/d)を、粗糸aとして米綿を主体とする綿繊維の粗
糸(50ゲレン/15yds)を、粗糸bとして同様の
綿繊維の粗糸(50ゲレン/15yds)を用い、綿繊
維とフィラメントとの重量比が70重量%/30重量%
の複合糸40's(英式綿番手)を製造した。
【0024】この際、繊維束Aと繊維束Bとの間隔が6
mmとなるように調整し、フロントローラ2の上流にお
いてドラフトされる粗糸aのフリース中央に前記マルチ
フィラメント糸を重ね合わせ撚係数3.7で実撚をかけ
て前記複合糸を製造した。得られた複合糸は、芯にフィ
ラメントが存在し鞘に綿繊維が存在する芯鞘構造の繊維
束と綿繊維のみからなる繊維束とからなり糸均斉度に優
れた毛羽の少ないものであった。
【0025】次に、該複合糸を用いてエアジェットルー
ムにより平織(密度:経110本/in、緯74本/i
n)を製織した。ついで、毛焼、糊抜、精練、漂白、染
色の工程を通してからシャツ製品に縫製した。その後、
該製品を25kg分、気相反応処理槽へセットし、37
%ホルマリン水溶液21kg分を蒸気と共に霧状に均一
に注入し、次いでSO2 ガス400g分をゲージ圧1k
g/m2 の圧力で注入した。更に低圧スチーミング処理
を10秒間実施した。そのままの温度で25分間処理し
た後、3.5kg/m2 の高圧スチームを6分間吹き込
み、ついで小量のアンモニア水を蒸気と共に注入し、更
に脱ホルマリンのため低圧スチーミング処理を4分間実
施した。糸特性、製品特性などを表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】比較例1 実施例1におけるマルチフィラメントのかわりに、フィ
ラメントの強度4.8g/dのポリエチレンテレフタレ
ートからなるマルチフィラメント(40d/15f)を
用いた以外は実施例1と同様にして複合糸を作り、シャ
ツ製品に実施例1と同様の加工を施した。その結果を表
1に示す。
【0028】比較例2 ポリエステルマルチフィラメント(40d/15f、強
度6.5g/d)を芯に、米綿を主体とした綿繊維を鞘
に配置したコアヤーン40's(撚係数3.7)を製造し
た。ついで、実施例1と同様に製織、染色、縫製を行な
い、この製品に実施例1と同様に製織、染色、縫製を行
ない、ついでホルマリンを気相状態で吹き付け架橋結合
を施した。この結果も表1に示す。
【0029】比較例3 ポリエステル短繊維(1.0d×38mm、強度4.0
g/d)と米綿を主体とした綿繊維を混率30/70で
混綿し、紡績糸40'S(撚係数3.7)を製造した。つ
いで、実施例1と同様に製織、染色、縫製を行ない、こ
の製品にホルマリンを気相状態で吹き付け架橋結合を施
した。このときの結果を表1に示す。
【0030】なお、表1における各特性の測定方法は下
記のとおりである。 イ.フィラメント強度(g/d)
【0031】ロ.単糸強力(g) 定速伸長型引張試験機テンソラピッド(ツエルヴェーガ
ウースタ社製)を用い試料長50cm、引張速度30c
m/minで測定した。
【0032】ハ.糸均斉度(u%) イヴネステスターuTIII 型(ツエルヴェーガウースタ
社製)を用い、条件として糸速400m/minで1分
間を採用した。
【0033】ニ.毛羽数(コ/10m) 毛羽数(1mm以上)はFインデックステスター(敷島
紡績(株)製)で測定した。
【0034】ホ.耐摩耗性(抱合力試験) 直径20cmのチタン製表面の円形ドラムを80回/分
で回転させ、糸の一端を固定し他端に70gの荷重をか
けてこのドラムに接触させ、フィラメントと綿繊維が分
離した回転数をもって耐摩耗性の程度をあらわした。
【0035】ヘ.抗張力(kgf) JIS−L−1096のグラブ法にしたがい、幅10c
m、長さ15cmの試験片をたて、よこ各3枚採取し、
つかみ間隔7.62cm、つかみの大きさは上下ともに
表側は2.54×2.54cm、裏側は5.1×2.5
4cmとし、1分間当たり30cmの引張速度で切断時
の強さをn=3の平均値であらわした。
【0036】ト.引裂強力(kgf) JIS−L−1096のペンジュラム法にしたがい、
6.3×10cmの試験片をたて、よこ各3枚採取し、
試験片の両つかみの中央で長辺のほぼ中央に辺と直角に
鋭利な刃によって2cmの切れ目を入れ、残りの4.3
cmが引き裂かれたときに示す荷重であらわした。
【0037】チ.W&W性(級) JIS L−1096のA法(かくはん形洗たく機を用
いる方法)にしたがい、40cm×40cmの試験片
を、たて、よこ方向に平行に3枚採取し、乾燥方法とし
てタンブル乾燥を採用し、3人の観察者により3枚の試
験片についてJIS所定のしわの判定基準(表11)で
評価し、9個の判定値の平均であらわした。
【0038】リ.洗濯20回後の品位、風合い(ステー
プルタッチ)、表面のイラツキ感は、7人の官能検査に
より評価し、非常に良好を◎、良好を○、普通を△であ
らわした。
【0039】ヌ.耐摩耗性(ピリング級) ICIピリングテスター(10hr)によりあらわした
もので、耐ピリング性があるほど数値が大となる。
【0040】ル.被覆性 セルロース系繊維のみを直接染料(0.3%濃度)にて
片染実施後7人の官能検査により評価し、非常に良いを
◎、良いを○、普通を△であらわした。
【0041】表1から明らかなように、実施例1は糸特
性値に優れ、製品特性値においてもW&W性が良く、引
裂強力も高く、さらに、洗濯20回後の品位も優れたス
テープルタッチの風合いのものであった。比較例1は、
糸特性、W&W性、洗濯20回後の品位も優れているも
のの、引裂強力が低かった。比較例2は、W&W性、引
裂強力は良いものの糸特性値に劣り、特に洗濯20回後
の品位、耐摩耗性が悪く実用面で問題があった。比較例
3は、引裂強力があまりにも低くすぎ、性能の面に大き
な課題を残した。
【0042】
【発明の効果】本発明は、セルロース系繊維を高混率に
含む複合糸を用いた布帛であっても、引裂強力の低下も
なくステープルタッチのソフト風合で吸湿性に富み形態
安定に優れた布帛を提供するという顕著な効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複合糸の斜視図である。
【図2】本発明に係る複合糸の製造装置の斜視図であ
る。
【符号の説明】
A 繊維束 B 繊維束 SA 短繊維 SB 短繊維 a、b 粗糸 1 バックローラー 2 フロントローラー 3 セカンドローラー F フィラメント糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D03D 15/00 D02G 3/00 - 3/48 D06M 13/127

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィラメントが芯にセルロース系繊維が
    鞘に配置された芯鞘構造の繊維束(A)とセルロース系
    繊維のみからなる繊維束(B)とが相互に巻き付くよう
    に実撚がかけられて構成される複合糸からなる布帛であ
    って、前記フィラメントの強度が5.0g/d以上であ
    り、該セルロース系繊維と該フィラメントとの重量%比
    が60〜90重量%/40〜10重量%であり、該布帛
    のウォッシュアンドウエア性が3.5級以上、引裂強力
    が700g以上であることを特徴とする形態安定に優れ
    た布帛。
  2. 【請求項2】 布帛が縫製後の布帛であって、ホルマリ
    ンが気相状態で該布帛に吹き付けられてセルロース分子
    同士が架橋結合されてなる請求項1に記載の形態安定に
    優れた布帛。
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