JP3313493B2 - 艶消し熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

艶消し熱可塑性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐衝撃性および流れ性
に優れる艶消し熱可塑性樹脂組成物に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術および問題点】ABS樹脂に代表されるゴ
ム強化スチレン系樹脂は、耐衝撃性、剛性等の機械的性
質や加工性と共に光沢等の成形品外観に優れており、自
動車部品、事務機器部品、雑貨等の広範囲の用途で使用
されている。
【0003】しかし、最近では、自動車内装部品を主体
に、安全性の観点から、またマット調の落ちついた風合
いを得るために、低光沢の艶消し材料に対する需要が高
まっている。
【0004】従来の一般的な艶消し方法としては、
(i)金型表面にシボ加工を施す方法、(ii)炭酸カル
シウム等の無機充填材を添加する方法、(iii)ゴム質重
合体を添加する方法があり、また(iv)エポキシ基含有
オレフィン共重合体を添加する方法(特開昭59−89
346号)が提案されている。
【0005】前記艶消し方法の中で、(i)金型表面に
シボ加工を施す方法では、金型表面が磨耗するため頻繁
に金型補修をする必要があり、また成形条件によっても
艶の状態が左右される。また(ii)炭酸カルシウム等の
無機充填材を添加する方法では、ゴム強化スチレン系樹
脂の特徴である耐衝撃性が著しく低下するという欠点が
ある。(iii)ゴム質重合体を添加する方法では、成形品
表面にフローマーク等の欠陥が発生し、均一な艶消し表
面が得られないという問題がある。さらに(iv)エポキ
シ基含有オレフィン共重合体を添加する方法では、(i
i)や(iii)の方法に比べて均一な艶消し表面が得られ
るが、その添加量を増すにつれて樹脂の流れ性が低下す
るという問題がある。
【0006】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上述の
問題点につき鋭意検討の結果、特定の単量体を含有する
ゴム強化スチレン系樹脂に特定の化合物を特定の割合で
配合することにより、該問題点を解決できることを見い
だし、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、次の一般式(1) (式中、R1 はH又はCH3 、R2 は炭素数1〜4のヒ
ドロキシアルキル基)で表されるヒドロキシアルキル基
含有単量体を0.05〜5重量%含有するゴム強化スチ
レン系樹脂(A)100重量部に対し、炭素数4〜40
の有機カルボン酸化合物(B)0.02〜5重量部を配
合してなることを特徴とする耐衝撃性および流れ性に優
れる艶消し熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0008】以下、本発明につき詳しく説明する。
【0009】本発明にて使用されるゴム強化スチレン系
樹脂(A)とは、ゴム状重合体(a−1)とヒドロキシ
アルキル基含有単量体(a−2)、芳香族ビニル系単量
体、シアン化ビニル系単量体および/または不飽和カル
ボン酸アルキルエステル系単量体またはそれらと共重合
可能な他のビニル系単量体からなる単量体(a−3)と
を重合してなる樹脂である。
【0010】より詳しくは、(a−1)の存在下に(a
−2)と(a−3)を重合してなるグラフト共重合体
(G−1)、(a−1)の存在下に(a−3)を重合し
てなるグラフト共重合体(G−2)、(a−2)と(a
−3)とを重合してなる共重合体(R−1)および(a
−3)を重合してなる共重合体(R−2)のうち、(1)
上述のグラフト共重合体(G−1)、(2) (G−1)と
グラフト共重合体(G−2)との混合物、(3) (G−
1)と共重合体(R−1)との混合物、(4) (G−1)
と共重合体(R−2)との混合物、(5) (G−1)、
(G−2)と(R−1)との混合物、(6) (G−1)、
(G−2)と(R−2)との混合物、(7) (G−1)、
(R−1)と(R−2)との混合物、(8) (G−1)、
(G−2)、(R−1)と(R−2)との混合物、(9)
(G−2)と(R−1)との混合物、(10)(G−2)、
(R−1)と(R−2)との混合物のいずれかである。
【0011】ゴム状重合体(a−1)としては、ガラス
転移温度が0℃以下のポリブタジエン、スチレン−ブタ
ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合
体等のジエン系重合体、エチレン−プロピレン共重合
体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系共重合体等
のエチレン−プロピレン系共重合体、アクリル酸エステ
ル系共重合体、塩素化ポリエチレン等が例示され、一種
または二種以上用いることができる。
【0012】これらのゴム状重合体は乳化重合、溶液重
合、懸濁重合、塊状重合等により製造される。なお、乳
化重合により製造する場合におけるゴム状重合体のゲル
含有率については特に制限はないが、0〜95%である
ことが望ましい。
【0013】また、次の一般式(1) (式中、R1 はH又はCH3 、R2 は炭素数1〜4のヒ
ドロキシアルキル基)で表されるヒドロキシアルキル基
含有単量体(a−2)としては、ラジカル重合可能なビ
ニル基と水酸基の両者を有する化合物であり、具体例と
してはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチ
ルメタクリレー、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒ
ドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシメチルベ
ンジルアクリレート、ヒドロキシメチルベンジルメタク
リレート、1−ヒドロキシメチル−4−ビニルベンゼ
ン、1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ビニルベンゼ
ン等が例示され、一種又は二種以上用いることができ
る。
【0014】芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、
α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチル
スチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、
α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロル
スチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロ
ムスチレン、ビニルナフタレン等が例示され、一種また
は二種以上用いることができる。特にスチレンが好まし
い。
【0015】シアン化ビニル系単量体としては、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が
例示され、一種または二種以上用いることができる。特
にアクリロニトリルが好ましい。
【0016】不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2
−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が例示され、
一種または二種以上用いることができる。特にメチルメ
タクリレートが好ましい。
【0017】上述の単量体と共にゴム強化スチレン系樹
脂(A)を構成することのできる共重合可能な他のビニ
ル系単量体としては、マレイミド、メチルマレイミド、
エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、O−クロ
ル−N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体
およびアクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和ア
ミド系単量体が例示され、それぞれ一種又は二種以上用
いることができる。
【0018】単量体(a−3)における芳香族ビニル系
単量体(i)、シアン化ビニル系単量体および/または
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(ii)およ
び共重合可能な他のビニル系単量体(iii)の組成比率に
は特に制限はないが、(i)50〜90重量%、(ii)
50〜10重量%および(iii)0〜40重量%であるこ
とが好ましく、さらに好ましくは、(i)50〜80重
量%、(ii)50〜20重量%および(iii)0〜30重
量%であり、特に(ii)としてシアン化ビニル系単量体
を用いることが好ましい。
【0019】本発明におけるゴム強化スチレン系樹脂
(A)は、上記のヒドロキシアルキル基含有単量体(a
−2)を0.05〜5重量%含有することが必要であ
る。ヒドロキシアルキル基含有単量体が0.05重量%
未満では、艶消し効果が不十分であり、また5重量%を
超えると流れ性が低下し好ましくない。好ましくは0.
5〜3重量部である。
【0020】また、最終組成物の物性バランスの面よ
り、ゴム状重合体(a−1)5〜40重量%、ヒドロキ
シアルキル基含有単量体(a−2)0.05〜5重量%
および単量体(a−3)55〜94.95重量%である
ことが好ましい。
【0021】ゴム強化スチレン系樹脂(A)(グラフト
共重合体および共重合体)の製造方法にも特に制限はな
く、公知の乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合ま
たはこれらを組み合わせた方法が用いられる。
【0022】本発明において使用される炭素数4〜40
の有機カルボン酸化合物(B)としては、例えば、カプ
ロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプ
リン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、エラ
イジン酸、リノール酸、リノレン酸、(無水)マレイン
酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アラギジン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪
族カルボン酸化合物、さらにはそれら水酸基、ニトロ
基、アミノ基等の置換基にて置換された脂肪族置換カル
ボン酸化合物、安息香酸、(無水)フタル酸、(無水)
トリメリット酸、ナフトエ酸等の芳香族カルボン酸化合
物、さらにはそれら水酸基、ニトロ基、アミノ基、アル
キル基等の置換基にて置換された芳香族置換カルボン酸
化合物等が例示され、一種又は二種以上用いることがで
きる。特に脂肪族カルボン酸化合物が好ましい。
【0023】本発明においては、上記のような炭素数が
4〜40の有機カルボン酸化合物を使用するものである
が、炭素数が4未満のものでは艶消し効果が不十分であ
り、また40を超えるものでは流れ性が低下し好ましく
ない。好ましくは7〜35である。
【0024】本発明における樹脂組成物は、上記のゴム
強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、有機カ
ルボン酸化合物(B)0.02〜5重量部配合してなる
ものである。有機カルボン酸化合物(B)の配合量が
0.02重量部未満では艶消し効果が不十分であり、ま
た5重量部を超えると耐熱性が低下し好ましくない。
【0025】上記ゴム強化スチレン系樹脂(A)、およ
び有機カルボン酸化合物(B)の混合方法については特
に制限はなく、ラテックス状態で、または粉末、ビー
ズ、ペレット等の状態で混合することができる。また、
溶融混練方法としては、バンバリーミキサー、ロール、
押出機等の公知の方法を採用することができる。
【0026】なお、混合時に、必要に応じて酸化防止
剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可
塑剤、難燃剤、離型剤等の添加剤を配合することができ
る。また、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブ
チレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポ
リメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性
樹脂を適宜配合することもできる。
【0027】〔実施例〕次に本発明を実施例に基づいて
説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるも
のではない。なお、配合組成における部および%は全て
重量に基づくものである。
【0028】−ゴム強化スチレン系樹脂(A)の製造− G−1:窒素置換した反応器に、平均粒子径0.1μ、
ゲル含有量85%、固形分50%のポリブタジエンラテ
ックス100部、純水100部および過硫酸カリウム
0.3部を仕込んだ後、攪拌下に65℃に昇温した。そ
の後、アクリロニトリル15部、スチレン30部、ヒド
ロキシエチルアクリレート5部およびt−ドデシルメル
カプタン0.3部からなる混合モノマー溶液およびドデ
シルベンゼンスルホン酸ソーダ2部を含む乳化剤水溶液
30部を各々4時間に亘って連続添加し、その後重合系
を70℃に昇温し、3時間熟成して重合を完結し、グラ
フト共重合体B−1を得た。
【0029】G−2−1:窒素置換した反応器に、平均
粒子径0.5μ、ゲル含有量85%、固形分50%のポ
リブタジエンラテックス100部、過硫酸カリウム0.
3部および純水100部を仕込んだ後、攪拌下に65℃
に昇温した。その後、アクリロニトリル15部、スチレ
ン35部およびt−ドデシルメルカプタン0.2部から
なる混合モノマー溶液およびドデシルベンゼンスルホン
酸ソーダ2部を含む乳化剤水溶液30部を各々4時間に
亘って連続添加し、その後重合系を70℃に昇温し、3
時間熟成して重合を完結し、グラフト共重合体ラテック
スを得た。
【0030】G−2−2:公知の懸濁重合法に基づき、
エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン重合体
(プロピレン含有量40、ヨウ素価8、ムーニー粘度7
5)50%、スチレン34%およびアクリロニトリル1
6%からなるグラフト共重合体を得た。
【0031】G−2−3:公知の乳化重合法に基づき、
架橋ブチルアクリレート−アクリロニトリルゴム(アク
リロニトリル含有量5%)50%、スチレン35%およ
びアクリロニトリル15%からなるグラフト共重合体
(ゴムの平均粒子径、0.25μ)を得た。
【0032】R−1−1:窒素置換した反応器に、純水
120部および過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ後、
攪拌下に68℃に昇温した。その後アクリロニトリル3
0部、スチレン65部、ヒドロキシエチルアクリレート
5部およびt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる
混合モノマー溶液およびドデシルベンゼンスルホン酸ソ
ーダ2部を含む乳化剤水溶液30部を各々4時間に亘っ
て連続添加し、その後重合系を70℃に昇温し、3時間
熟成して重合を完結した。
【0033】R−1−2:ヒドロキシエチルアクリレー
ト5部をヒドロキシプロピルアクリレート10部に置換
した他はB−1と同様にして、アクリロニトリル−スチ
レン−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体を製造
した。
【0034】R−2:窒素置換した反応器に、過硫酸カ
リウム0.3部および純水120部を仕込んだ後、攪拌
下に65℃に昇温した。その後アクリロニトリル30
部、スチレン70部およびt−ドデシルメルカプタン
0.3部からなる混合モノマー溶液およびドデシルベン
ゼンスルホン酸ソーダ2部を含む乳化剤水溶液30部を
各々4時間に亘って連続添加し、その後重合系を70℃
に昇温し、3時間熟成して重合を完結し、アクリロニト
リル−スチレン共重合体ラテックスを得た。
【0035】 −エポキシ基含有オレフィン共重合体の製造− オートクレーブ型ポリエチレン製造装置を用いて、高圧
法ポリエチレンの重合条件に従って、エチレン−グリシ
ジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体(組成比90
−7−3)を塊状重合法により製造した。
【0036】上記のゴム強化スチレン系樹脂(A)、エ
ポキシ基含有オレフィン共重合体、SBブロック(旭化
成社製”タフプレンA”)および各種有機カルボン酸化
合物を、表1にて示す配合組成で混合し、40mm単軸
押出機を用いて溶融混練後、ペレット化した。得られた
組成物の特性を以下の方法により測定した。結果を表1
に示す。
【0037】耐衝撃性 ノッチ付アイゾット、ASTM D−256に準拠。 1/4インチ厚、23℃
【0038】熱変形温度 ASTM D−648に準拠。 1/2インチ、18.6 Kg/cm2 荷重。
【0039】流れ性 高化式フローテスター、210℃、30 Kg/cm2
【0040】表面光沢 3.5オンス射出成形機を用いて60mm×60mm×3mm
の試験板を成形し、試験板中央部の光沢をスガ試験機
(株)製デジタル変角光沢計UGV−4Dを用いて入射
角60°で測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の樹脂組成物は、
従来のものに比べて耐衝撃性、艶消し性および流れ性の
バランスに優れるものであり、艶消しが要求される用途
において好適に使用することができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の一般式(1) (式中、R1 はH又はCH3 、R2 は炭素数1〜4のヒ
    ドロキシアルキル基)で表されるヒドロキシアルキル基
    含有単量体を0.05〜5重量%含有するゴム強化スチ
    レン系樹脂(A)100重量部に対し、炭素数4〜40
    の有機カルボン酸化合物(B)0.02〜5重量部を配
    合してなることを特徴とする艶消し熱可塑性樹脂組成
    物。
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