JP3298069B2 - ステージの位置制御装置及び速度制御装置 - Google Patents

ステージの位置制御装置及び速度制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータ及び負荷で
構成される機構の移動及び位置決めを制御する位置制御
装置及び速度制御装置に関し、特に、少なくとも1軸方
向に駆動されるステージの駆動制御に適した位置制御装
置及び速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のステージの位置制御装置として
は、例えば図7に示すようなPID制御方式によるも
の、あるいは図8に示すようなPID制御及びFF制御
方式によるものが知られている。
【0003】図7において、PID制御方式において
は、負荷Lであるステージを駆動するモータMに位置検
出器31を設けてステージの位置を検出する。位置検出
値xは減算器32において位置指令値xc との差がとら
れ、この差信号がPID制御器33に入力される。PI
D制御器33は、差信号によりモータドライバ34に電
流目標値ic を与える。モータドライバ34はトルク指
令値τc を出力する。
【0004】図8において、PID制御及びFF制御方
式においては、PID制御器33に並列にFF制御器3
5が接続され、加算器36によりPID制御器33の出
力にFF制御器35の出力が加算される。FF制御器3
5は、位置指令値xc と位置検出値xとを一致させるよ
うに位置指令値xc にあらかじめ定められた制御ゲイン
を乗じるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなPID制
御方式あるいは、PID制御及びFF制御方式によるス
テージでは、外部からの不要な振動の混入、モータのコ
ギングやケーブル系テンションの影響による外乱によっ
て定速性、位置決め時間等の性能を劣化させていた。
【0006】このような外乱を抑えるためにはサーボ系
のゲインを高め、相対的に外乱のレベルを減少させる方
法がとられる。しかし、サーボ系のゲインを高めると、
制御系の安定性の面での問題を生じる。
【0007】このような事情から、実際の外乱抑制のポ
イントは、高度な外部振動防止対策、外乱の少ない高性
能モータやケーブル実装の工夫、機械系の高精度化等の
対策での対応であり、コスト的に問題であった。
【0008】そこで、本発明の課題は、装置のハードウ
ェア構成を変更することなく、装置の外乱を推定し補償
することで、定速性、位置決め時間の性能向上を図るこ
とのできるステージの位置制御装置を提供することにあ
る。
【0009】本発明の他の課題は、上記の性能を持つス
テージの速度制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガイド系とし
て静圧軸受け方式を用いたリニアモータにより少なくと
も1軸方向に駆動されるステージの位置制御装置であっ
て、前記ステージの位置を検出するための位置検出器か
ら得られる位置検出値と位置指令値とに基づいて前記
ニアモータを制御するフィードバック制御系による位置
制御装置において、前記位置検出値と前記位置指令値と
の差により前記リニアモータの電流目標値を生成するP
ID制御器と外乱オブザーバとを含み、前記外乱オブザ
ーバは、外乱オブザーバ制御プログラムにより高速演算
を実行する信号処理手段を有し、該信号処理手段は、前
リニアモータへの電流指令値からトルク指令値をフィ
ルタリングするフィルタ機能と、前記位置検出値から推
定負荷入力トルクを推定する入力トルク推定フィルタ機
能と、前記フィルタリングされた前記トルク指令値と前
記推定された推定負荷入力トルクとの差分により推定負
荷外乱トルクを算出する機能と、算出された推定負荷外
乱トルクに前記リニアモータのトルク定数の逆数を乗算
して電流補正値を算出する機能とを有し、算出された電
流補正値により前記電流目標値を補正して電流指令値と
して前記リニアモータに与えるようにしたことを特徴と
する。
【0011】本発明はまた、ガイド系として静圧軸受け
方式を用いたリニアモータにより少なくとも1軸方向に
駆動されるステージの速度制御装置であって、前記ステ
ージの速度を検出するための速度検出器から得られる速
度検出値と速度指令値とに基づいて前記リニアモータを
制御するフィードバック制御系による速度制御装置にも
適用され得る。
【0012】この場合、前記速度検出値と前記速度指令
値との差により前記リニアモータの電流目標値を生成す
るPID制御器と外乱オブザーバとを含む。前記外乱オ
ブザーバは、外乱オブザーバ制御プログラムにより高速
演算を実行する信号処理手段を有し、該信号処理手段
は、前記リニアモータへの電流指令値からトルク指令値
をフィルタリングするフィルタ機能と、前記速度検出値
から推定負荷入力トルクを推定する入力トルク推定フィ
ルタ機能と、前記フィルタリングされた前記トルク指令
値と前記推定された推定負荷入力トルクとの差分により
推定負荷外乱トルクを算出する機能と、算出された推定
負荷外乱トルクに前記リニアモータのトルク定数の逆数
を乗算して電流補正値を算出する機能とを有する。そし
て、算出された電流補正値により前記電流目標値を補正
して電流指令値として前記リニアモータに与える。
【0013】なお、前記PID制御器に並列に、前記位
置あるいは速度指令値にあらかじめ定められた制御ゲイ
ンを乗じるFF制御器が接続されていても良い。
【0014】
【0015】
【作用】本発明では、外乱オブザーバ制御プログラムを
追加することで外乱そのものを加速度のレベルで推定
し、これを指令値から差し引くことで本質的に外乱をキ
ャンセルすることが可能となる。よって、汎用部品や一
般の実装方法でも同様の効果が期待でき、定速性等にお
いて高い性能を実現することが可能となる。しかも、外
乱オブザーバ自体はコンピュータ制御プログラムであ
り、コスト面でも有利である。このような外乱オブザー
バ制御方式を用いた位置あるいは速度制御装置は、特に
高性能精密ステージに適している。
【0016】
【発明の実施の形態】図6を参照して、本発明が適用さ
れる高性能精密ステージ機構を1軸について説明する。
精密ステージには種々の形態が考えられ、通常は、X軸
用ステージとY軸用ステージとを直交するように積み上
げてX−Yステージが構成されるが、ここでは説明の便
宜上、1軸について図示、説明する。勿論、本発明は1
軸あるいは2軸、更には3軸以上のステージ機構にも適
用可能である。
【0017】精密ステージ機構は、アルミ、鋳鉄、グラ
ナイト等のベース上にリニアモータ21による駆動系と
スライドガイド22によるガイド系を取り付け、スライ
ドガイド22に可動ステージ23を組み付け、可動ステ
ージ23上にワークを載せる構成となる。駆動系には、
直接直線運動を実現するリニアモータの代わりに、回転
型モータとボールねじにより回転運動を直線運動に変換
する方式が採用されることもある。ガイド系について
は、一般に使用される接触式のボール/ローラベアリン
グ方式と空気静圧軸受け(エアースライダ)方式に大別
されるが、高精度品では空気静圧軸受けが有利である。
【0018】後で述べる本発明の外乱オブザーバを考え
た場合は、各部の機械剛性が高い必要があり、静圧軸受
け方式を用いたリニアモータによるダイレクトドライブ
構成の精密ステージ機構が最もその効果が期待できる。
【0019】可動ステージ23の位置の検出はリニアエ
ンコーダ24によって行われる。この種のリニアモータ
では、可動部に検出器を持たせ、ガイド部(固定部)に
リニアスケールを固定して、移動距離に対応したパルス
数をカウントすることで相対的な位置を計算する。勿
論、リニアエンコーダ以外、例えばレーザ干渉計でも同
じ機能を実現することができる。
【0020】制御部20にはDSP(ディジタル信号処
理プロセッサ)などの高速プロセッサを用いる。制御部
20は、図7、図8で説明したようなPID制御器ある
いは、PID制御器およびFF制御器を持ち、演算結果
をモータドライバに与えるためのアナログ出力ポート、
リニアエンコーダ21からの検出信号を受ける入力ポー
トを備えた汎用のサーボ制御ボードで実現される。
【0021】本発明では、このような汎用のサーボ制御
ボードに対し、更に外乱オブザーバ制御プログラムを付
加することで実現される。
【0022】図1を参照して、PID制御方式による位
置制御装置に本発明を適用した第1の実施の形態につい
て説明する。図6の制御部20はPID制御器33と外
乱オブザーバ10とで構成される。PID制御器33
は、位置指令値xc と位置検出値xとを一致させるよう
にその偏差(xc −x)に対し、比例(P)、積分
(I)、微分(D)処理を加え、モータドライバ34へ
の電流目標値ic を演算する。
【0023】外乱オブザーバ10は、ローパスフィルタ
11によりフィルタリングされたモータドライバ34へ
のトルク指令値τc と、入力トルク推定フィルタ12に
より位置検出値xから推定された推定負荷入力トルクと
の差を減算器13で演算し、得られた差分によりモータ
トルク定数逆モデル14において推定負荷外乱トルクに
相当する電流値を算出する。そして、減算器15により
推定負荷外乱トルクに相当する電流値を電流目標値ic
から減算することで、外乱トルクを打ち消すように電流
目標値ic を補正し、モータドライバ34への電流指令
値ir を算出する。なお、モータドライバ34に与えら
れるのは電流指令値ic であるが、ローパスフィルタ1
1ではこの電流指令値ic に定数Kt を乗じることでト
ルク指令値τc を得る。
【0024】図1に示す制御装置のブロック線図を図2
に示す。図2を用いて外乱オブザーバ10の作用を説明
する。図2中の箱の中に記入されている符号のうち、1
1、12、33に記入されているのは、図1に示されて
いる対応する構成要素の伝達関数を示し、16はモータ
Mのトルク定数、17はモータMと負荷Lを含んだ機構
の伝達関数、18はモータMのトルク定数の逆数であ
る。
【0025】ローパスフィルタ11は、モータドライバ
34へのトルク指令値τc を外乱抑制周波数帯域でフィ
ルタリングし、トルク指令推定値eτc を算出する。入
力トルク推定フィルタ12はモータMと負荷Lを含んだ
機構の入力トルクから位置への伝達関数16の逆モデル
に基づいて位置検出値xより入力トルク(τc +τd
の推定値(eτc +eτd )を求める。この入力トルク
推定フィルタ12もローパスフィルタ11と同様のフィ
ルタ特性を持たせ、外乱抑制周波数帯域のみの入力トル
ク推定値(eτc +eτd )を算出する。
【0026】更に、モータトルク定数逆モデル14にお
いてトルク指令推定値eτc と、入力トルク推定値(e
τc +eτd )との差分eτd により外乱トルク推定値
eτd を算出する。演算された外乱トルク推定値eτd
にモータMのトルク定数の逆数18を乗じ、電流補正値
eid を算出する。減算器15において、電流目標値i
c から電流補正値eid を減じ、モータドライバ34へ
の電流指令値ir とする。
【0027】図3は、本発明をPID制御及びFF制御
方式による位置制御装置に適用した第2の実施の形態を
示した図であり、図1の構成にFF制御器35が付加さ
れている。FF制御器35は、位置指令値xc と位置検
出値xとを一致させるように位置指令値xc に対し制御
ゲインを乗じ、加算器36によりPID制御器33から
の出力に加え、モータドライバ34への電流目標値ic
を演算する。その他の構成要素の作用は、図1、図2で
説明した第1の実施の形態と同様である。
【0028】具体的には、本発明を静圧軸受け(エアー
スライダ)方式+リニアモータの精密ステージ機構に適
用し、定速性に対する効果を計測した例を図4に示す。
図4は、一定速度時の追従誤差変動を示している。外乱
オブザーバ10を加えることで誤差変動を減少させるこ
とが可能となる。外乱要因は、主にリニアモータ(一般
の回転モータでも同様)の磁気回路の不均一さから生じ
る推力リップルとケーブル系のテンションの変動による
ものと思われる。これらは通常の商品を考えた場合、一
般的に必ず存在するものであり、最近の装置の高精度化
に伴い問題となるケースが増加している。本発明は、こ
のような問題に対し有効である。
【0029】本発明を静圧軸受け(エアースライダ)方
式+リニアモータの精密ステージ機構に適用し、位置決
め特性に対する効果を計測した例を図5に示す。図5は
150mmのステップ移動時の位置偏差を示している。
外乱オブザーバ10を含まない制御では位置決め時に定
盤(ベース)振動に起因する残留振動が存在するが、外
乱オブザーバ10を加えることで残留振動を効果的に抑
制させることが可能となる。通常、X−Yステージ機構
は、床振動の除去のため除振された定盤上に固定されて
おり、位置決め時の残留振動は一般的に必ず存在するも
のであり、装置の高スループット化の際に問題となる。
本発明は、この問題に対しても有効である。
【0030】以上、本発明を精密ステージ機構に適用し
て説明したが、本発明は対象物を移動及び位置決めする
装置の速度制御方式及び位置制御方式にも広く応用可能
である。すなわち、本発明を速度制御方式に適用する場
合には、位置指令値は速度指令値となり、位置検出器3
1に代えて、速度検出器が用いられる。そして、入力ト
ルク推定フィルタ12は、モータMと負荷Lを含んだ機
構の入力トルクから速度への伝達関数の逆モデルに基づ
いて速度検出器で検出される速度より負荷入力トルクを
推定する。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、装置のハードウェア構
成を変更することなく、装置の外乱を推定し補償するこ
とで、定速性、位置決め時間の性能向上を図ることので
きる位置制御装置及び速度制御装置を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をPID制御方式に適用した場合の位置
制御系の構成を示したブロック図である。
【図2】図1のブロック線図である。
【図3】本発明をPID制御及びFF制御方式に適用し
た場合の位置制御系の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明を静圧軸受け方式+リニアモータの精密
ステージ機構に適用し、定速性に対する効果を計測した
例を示した図である。
【図5】本発明を静圧軸受け方式+リニアモータの精密
ステージ機構に適用し、位置決め特性に対する効果を計
測した例を示した図である。
【図6】本発明が適用されるステージ機構を1軸につい
て示した図である。
【図7】従来のPID制御方式による位置制御系の構成
を示したブロック図である。
【図8】従来のPID制御及びFF制御方式による位置
制御系の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
10 外乱オブザーバ 11 ローパスフィルタ 12 入力トルク推定フィルタ 13、15、32 減算器 14 モータトルク定数逆モデル
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−31014(JP,A) 特開 平7−249564(JP,A) 特開 平10−254550(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G05D 3/00 - 3/20 G05B 11/00 - 13/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガイド系として静圧軸受け方式を用いた
    リニアモータにより少なくとも1軸方向に駆動されるス
    テージの位置制御装置であって、前記ステージの位置を
    検出するための位置検出器から得られる位置検出値と位
    置指令値とに基づいて前記リニアモータを制御するフィ
    ードバック制御系による位置制御装置において、 前記位置検出値と前記位置指令値との差により前記リニ
    モータの電流目標値を生成するPID制御器と外乱オ
    ブザーバとを含み、 前記外乱オブザーバは、外乱オブザーバ制御プログラム
    により高速演算を実行する信号処理手段を有し、 該信号処理手段は、前記リニアモータへの電流指令値か
    トルク指令値をフィルタリングするフィルタ機能と、
    前記位置検出値から推定負荷入力トルクを推定する入力
    トルク推定フィルタ機能と、前記フィルタリングされた
    前記トルク指令値と前記推定された推定負荷入力トルク
    との差分により推定負荷外乱トルクを算出する機能と
    算出された推定負荷外乱トルクに前記リニアモータのト
    ルク定数の逆数を乗算して電流補正値を算出する機能と
    を有し、 算出された電流補正値により前記電流目標値を補正して
    電流指令値として前記リニアモータに与えるようにした
    ことを特徴とするステージの位置制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の位置制御装置において、
    前記PID制御器に並列に、前記位置指令値にあらかじ
    め定められた制御ゲインを乗じるFF制御器が接続され
    ていることを特徴とするステージの位置制御装置。
  3. 【請求項3】 ガイド系として静圧軸受け方式を用いた
    リニアモータにより少なくとも1軸方向に駆動されるス
    テージの速度制御装置であって、前記ステージの速度を
    検出するための速度検出器から得られる速度検出値と速
    度指令値とに基づいて前記リニアモータを制御するフィ
    ードバック制御系による速度制御装置において、 前記速度検出値と前記速度指令値との差により前記リニ
    アモータの電流目標値を生成するPID制御器と外乱オ
    ブザーバとを含み、 前記外乱オブザーバは、外乱オブザーバ制御プログラム
    により高速演算を実行 する信号処理手段を有し、 該信号処理手段は、前記リニアモータへの電流指令値か
    らトルク指令値をフィルタリングするフィルタ機能と、
    前記速度検出値から推定負荷入力トルクを推定する入力
    トルク推定フィルタ機能と、前記フィルタリングされた
    前記トルク指令値と前記推定された推定負荷入力トルク
    との差分により推定負荷外乱トルクを算出する機能と、
    算出された推定負荷外乱トルクに前記リニアモータのト
    ルク定数の逆数を乗算して電流補正値を算出する機能と
    を有し、 算出された電流補正値により前記電流目標値を補正して
    電流指令値として前記リニアモータに与えるようにした
    ことを特徴とするステージの速度制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の速度制御装置において、
    前記PID制御器に並列に、前記速度指令値にあらかじ
    め定められた制御ゲインを乗じるFF制御器が接続され
    ていることを特徴とするステージの速度制御装置。
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