JP3971959B2 - 位置制御装置及び制御器設計方法 - Google Patents
位置制御装置及び制御器設計方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3971959B2 JP3971959B2 JP2002153825A JP2002153825A JP3971959B2 JP 3971959 B2 JP3971959 B2 JP 3971959B2 JP 2002153825 A JP2002153825 A JP 2002153825A JP 2002153825 A JP2002153825 A JP 2002153825A JP 3971959 B2 JP3971959 B2 JP 3971959B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- filter
- estimated value
- controller
- disturbance
- control device
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は位置制御装置及び制御器設計方法に係り、特に少なくとも1軸方向に駆動されるステージ等の駆動制御に適した位置制御装置及び制御器設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばX−Yステージ装置のように、モータ及び負荷で構成される機構の移動及び位置決めを行なう装置の位置制御装置の一例として外乱補償器を備えたものがある。図11に、外乱補償器として外乱オブザーバ6を備えた位置制御装置の一例を示す。
【0003】
同図に示す位置制御装置はPID制御方式によるものであり、大略するとPID制御器よりなる位置制御器1と外乱オブザーバ6とにより構成されている。位置制御器1は、位置指令値xcと位置検出値xとを一致させるようにその偏差(xc−x)に対し、比例(P)、積分(I)、微分(D)処理を加え、モータドライバ2への電流目標値ic を演算する。
【0004】
外乱オブザーバ6は、ローパスフィルタ7によりフィルタリングされたモータドライバ2へのトルク指令値τcと、入力トルク推定フィルタ8により位置検出値xから推定された推定負荷入力トルクとの差を減算器22で演算し、得られた差分によりモータトルク定数逆モデル9において推定負荷外乱トルクに相当する電流値を算出する。
【0005】
そして、減算器21により推定負荷外乱トルクに相当する電流値を電流目標値ic から減算することで、外乱トルクを打ち消すように電流目標値icを補正し、モータドライバ2への電流指令値irを算出する。なお、モータドライバ2に与えられるのは電流指令値icであるが、ローパスフィルタ7ではこの電流指令値icに定数Ktを乗じることでトルク指令値τcを得る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように制御部18に位置制御器1に加えて外乱オブザーバ6を設けた構成とすることにより、通常のPID制御のみからなる制御方式に比べ、目標値追随特性,速度安定特性等において非常に有効である。
【0007】
しかしながら、上記したように従来の位置制御装置では、外乱オブザーバ6において、ローパスフィルタ7によりフィルタリングされたモータドライバ2へのトルク指令値τcと、入力トルク推定フィルタ8により位置検出値xから推定された推定負荷入力トルクとの差分により、モータトルク定数逆モデル9において推定負荷外乱トルクに相当する電流値を算出する構成であったため、外乱オブザーバ6の推定負荷外乱トルクを演算するプロセスが複雑で、これにより応答性が低下するという問題点があった。
【0008】
具体的には、制御部18は例えばPMAC(Programmable Multi-Axis Controller)等のコントローラが適用され、また外乱オブザーバ6はこのコントローラに内設されているPLCC0の拡張サーボ演算を使用している。しかしながら、PLCC0の拡張サーボ演算を外乱オブザーバ6の外乱トルク推定に用いた構成では演算負荷が問題となり、よって制御周期を高めることが困難となる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易的な外乱オブザーバを実現することにより制御系の演算負荷の軽減及び応答性の向上を図った位置制御装置及び制御器設計方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1記載の発明は、
少なくとも1軸方向に駆動される被駆動部材の位置を検出し位置検出値を出力する位置検出器と、
位置指令値に基づいて前記被駆動部材を駆動する駆動装置と、
前記位置検出値と前記位置指令値との差により前記駆動装置の目標駆動値を生成するPID制御器とを備える、位置制御装置であって、
ξをフィルタの減衰係数、ω 0 をフィルタのカットオフ周波数、sをラプラス演算子とした場合、前記PID制御器と前記駆動装置との間に下記の式で特定されるフィルタを設けたことを特徴とするものである。
【数2】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載の位置制御装置であって、
前記減衰係数ξと前記カットオフ周波数ω 0 は、
前記目標駆動値をフィルタリングすることによって指令推定値を算出する指令推定値算出フィルタと、前記位置検出値をフィルタリングすることによって入力推定値を算出する入力推定値算出フィルタと、を備え、前記目標駆動値と前記位置検出値との間に入る外乱を推定する外乱オブザーバにおいてその外乱オブザーバの前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタに設定されたフィルタ減衰係数とカットオフ周波数と同じ値であることを特徴とするものである。
また、請求項3記載の発明は、
請求項1記載の位置制御装置において、
前記式で特定されるフィルタを、ノッチフィルタを用いて構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4記載の発明は、
請求項3に記載の位置制御装置において、
前記ノッチフィルタに外乱推定の制御器の離散変数を代入することで外乱推定を行うことを特徴とするものである。
また、請求項5記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置制御装置において、
前記駆動装置は、リニアモータであることを特徴とするものである。
また、請求項6記載の発明は、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置制御装置において、
前記被駆動部材は、少なくとも1軸方向に駆動されるステージであることを特徴とするものである。
また、請求項7記載の発明は、
制御対象の制御入力をフィルタリングすることによって指令推定値を算出する指令推定値算出フィルタと、
前記制御対象の制御出力をフィルタリングすることによって入力推定値を算出する入力推定値算出フィルタと、
前記入力推定値と前記指令推定値との偏差の演算によって外乱推定値を算出する第1減算器と、
前記制御対象に入力前の前記制御入力と前記外乱推定値との偏差を前記制御対象に入力する第2減算器とを備える構成を簡易化する制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタと前記第1減算器と前記第2減算器とを表したブロック線図の変換によって前向き制御器とフィードバック制御器とに展開し、その展開して得られたフィードバック制御器を除去することを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の発明は、
請求項7に記載の制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタのフィルタ定数を同一にすることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、
請求項7又は8に記載の制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタを二次遅れ要素にすることを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、
請求項9に記載の制御器設計方法であって、
前記除去すべきフィードバック制御器を、加速度のフィードバック制御器とすることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0019】
先ず、図1を参照して、本発明が適用されるステージ装置を1軸について説明する。ステージ装置は種々の形態が考えられ、通常はX軸用ステージとY軸用ステージとを直交するように積み上げてX−Yステージが構成される。
【0020】
しかしながら、ここでは説明の便宜上、1軸について図示し説明するものとする。但し、本発明は1軸に限定されるものではなく、2軸以上の多軸のステージ装置に対しても適用可能なものである。
【0021】
ステージ装置は、ベース上に駆動装置となるモータ3(同図に示す例ではリニアモータ)とガイド系となるスライドガイド4aとを取り付け、このスライドガイド4aに負荷となる可動ステージ4を組み付けた構成とされている。
尚、駆動系には、直接直線運動を実現するリニアモータの代わりに、回転型モータとボールねじにより回転運動を直線運動に変換する方式が採用されることもある。ガイド系については、一般に使用される接触式のボール/ローラベアリング方式と空気静圧軸受け(エアースライダ)方式に大別されるが、高精度品では空気静圧軸受けが有利である。
【0022】
また、外乱オブザーバを考えた場合は、各部の機械剛性が高い必要があり、静圧軸受け方式を用いたリニアモータによるダイレクトドライブ構成のステージ装置が最もその効果が期待できる。
【0023】
一方、可動ステージ4の位置の検出は、リニアエンコーダ(位置検出器)5によって行われる。この種のリニアモータ3では、可動部に検出器を持たせ、ガイド部(固定部)にリニアスケールを固定して、移動距離に対応したパルス数をカウントすることで相対的な位置を計算する。勿論、リニアエンコーダ以外、例えばレーザ干渉計でも同じ機能を実現することができる。
【0024】
制御部10にはDSP(ディジタル信号処理プロセッサ)などの高速プロセッサを用いる。制御部10は、PID制御器を持ち演算結果をモータドライバ2に与えるためのアナログ出力ポート、リニアエンコーダ21からの検出信号を受ける入力ポートを備えた汎用のサーボ制御ボードで実現される。
【0025】
ここで説明の便宜上、先に図11を用いて説明した制御方式の種に外乱オブザーバ6のブロック線図を図2に示す。本発明は外乱オブザーバ6の簡易化を目的としているため、同図では位置制御器1の図示は省略している。また、ローパスフィルタ7、入力トルク推定フィルタ8の伝達関数は、対応するブロックの中に記入された通りである。
【0026】
また、図2に図示されたブロック中に記入されている符号のうち、符号9で示すブロックにはモータトルク定数逆モデルが記入され、符号11で示すブロックにはモータと負荷を含んだ機構の伝達関数が記入され、符号12で示すブロックにはモータのトルク定数が記入されている。更に、図中Mはモータ3と負荷との慣性項、ξはフィルタの減衰係数、ωはフィルタのカットオフ周波数、sはラプラス演算子をそれぞれ示している。
【0027】
ローパスフィルタ7は、モータドライバ2へのトルク指令値τc を外乱抑制周波数帯域でフィルタリングし、トルク指令推定値eτcを算出する。入力トルク推定フィルタ8はモータ3と負荷とを含んだ機構の入力トルクから位置への伝達関数Ktの逆モデル(1/Kt)に基づいて位置検出値xより入力トルク(τc +τd)の推定値(eτc +eτd )を求める。この入力トルク推定フィルタ8もローパスフィルタ7と同様のフィルタ特性を持たせ、外乱抑制周波数帯域のみの入力トルク推定値(eτc +eτd )を算出する。
【0028】
更に、モータトルク定数逆モデル9においてトルク指令推定値eτcと、入力トルク推定値(eτc+eτd)とを減算器22により減算し、その差分である外乱トルク推定値eτdを算出する。演算された外乱トルク推定値eτdにモータトルク定数逆モデル(1/Kt)を乗じ、電流補正値eidを算出する。減算器21において、電流目標値icから電流補正値eidを減じ、モータドライバ2への電流指令値irとする。
【0029】
上記のように、従来の外乱オブザーバにおいて使用されている外乱推定は、制御対象の逆モデル(モータトルク定数逆モデル9)を用い、制御入力と制御出力との間に入る外乱を逆算し、制御入力の値を生成する段階で補正する構成となっている。しかしながら、この外乱推定方法では、モータトルク定数逆モデル(1/Kt)が適正な制御器として表せないため、通常はモータトルク定数逆モデル9に対して十分考慮されたフィルタを用いることにより、等価で適正な制御器を実現している。
【0030】
しかしながら、図2に示される外乱オブザーバ6のブロック線図の表現は、古典制御理論や現代制御理論により導出される制御器の構造と比べると、複雑な表現とされている。そこで、図2に示される制御器を展開し整理すること考える。
【0031】
具体的には、前向き制御器と逆モデル制御器を完全に分離し、前向き制御器を整理する。図3は図2に示される逆モデル制御器である入力トルク推定フィルタ8とモータトルク定数逆モデル9を纏めた構成である。また図4は、図3に示された構成において、ローパスフィルタ7を前向き制御器として表現したものである。そして最終的には、図2に示される制御器は図5に示すように展開される。同図より、前向き制御器及び逆モデル制御器の伝達関数は、同じ構造の「積分器+一次遅れ」で構成された制御器であることが判る。
【0032】
次に、図5に示されるように展開された制御器の、外乱推定の検討と制御目的との整合性について検討する。まず、外乱に対する低感度化は、外乱推定の制御器によって発生した積分特性によって実現される。
【0033】
ここで、外乱オブザーバ6の外のループにPID制御器が設けられていることを前提とし、また主な混入する外乱をトルク外乱とする。この時、外乱混入の手前に二次の積分器が構成されていることから、外乱入力に対しては、内部モデルの原理よりステップ状外乱まで漸近的に除去できることがわかる。
【0034】
即ち、図5に示す符号14で示すブロックで示す伝達関数は、主に低周波外乱防止フィルタとして機能していると予測できる。また、符号13で示すブロックで示す伝達関数は、主に安定性フィルタとして機能していると予想できる。
【0035】
これに対し、逆モデル制御器15は、その構造から加速度のフィードバックである。本発明では、この低周波外乱防止に機能しない加速度のフィードバックである逆モデル制御器15を除去することを特徴としている。
【0036】
このように逆モデル制御器15を除去することにより、外乱オブザーバの構成を簡易化することが可能となる。具体的な逆モデル制御器15を除去の手段としては、図5に示す逆モデル制御器15と減算器21とを接続する位置で切断して切断部16を設ける。従って、比較的容易に逆モデル制御器15を除去することができる。
【0037】
次に、図5に示される簡易化された外乱オブザーバを有する位置制御器において、外乱の影響がどのように抑制されるのかを見るシミュレーションを行なった結果について述べる。具体的には、図1に示したような1軸駆動のステージ装置を想定し、これに対してシミュレーションを実施した。
【0038】
また、以下のシミュレーションにおいては、制御部10として前記したPMACを用いた場合を想定している。更に、外乱オブザーバの処理である外乱推定処理をPMACのPLCC0の拡張サーボ演算を使用せずに、PMACの標準制御器として設けられている「ノッチフィルタ(Notch filter)」を外乱推定の前向き制御器として使用することとしている。
【0039】
PMACのノッチフィルタは、二次の離散型伝達関数で、その変数も自由に決定することができる。従って、ノッチフィルタの変数に外乱推定の制御器の離散変数を代入することで、簡易型の外乱推定を実現することができる。
【0040】
続いて、図5で求められた簡易型の外乱オブザーバにおいて、外乱推定のための変数を決定する。この簡易型外乱オブザーバと、モータドライバ2,モータ3,制御部10(PMAC)等からなる制御系を等価モデルで表現すると図6のようになる。また、同図に示す等価モデルにおいて、制御系の各要素(パラメータ)の条件は図7に示すように設定した。
【0041】
ここで、簡易型外乱オブザーバであっても、各要素(パラメータ)の決定方法は従来から行われている通常の外乱オブザーバにおける決定方法と同じであるため、ここでは特性多項式の比較のみ下記するものとする。
【0042】
簡易型外乱オブザーバの場合
【0043】
【数1】
通常の外乱オブザーバの場合
【0044】
【数2】
図8は、シミュレーションの結果を示している。図8(A)はPID制御のみ制御の結果を示しており、図8(B)はPID制御器と従来の外乱オブザーバを組み合わせた制御の結果を示しており、更に図8(C)はPID制御機と本発明に係る簡易型の外乱オブザーバを組み合わせた制御の結果を示している。尚、各図において、横軸は時間であり、縦軸は外乱による変位量である。
【0045】
図8(A)に示すように、PID制御器のみでは外乱の影響を排除することができず、よって外乱による振動が発生してしまう。これに対し、図8(B)に示すPID制御器と従来の外乱オブザーバを組み合わせた制御では、外乱の影響が抑制されていることが判る。
【0046】
また、本実施例に係るPID制御機と本発明に係る簡易型の外乱オブザーバを組み合わせた制御では、図8(C)に示すように、図8(B)に示すPID制御器と従来の外乱オブザーバを組み合わせた制御と同様に外乱の影響が抑制されている。即ち、従来の外乱オブザーバから、低周波外乱防止に機能しない加速度のフィードバックである逆モデル制御器15を除去し、外乱オブザーバの簡易化を図っても、外乱の影響が確実に抑制されることが立証された。
【0047】
また、図9は図1に示される構成の位置制御器1を用い、これに本実施例に係る簡易型の外乱オブザーバを設けた制御系を用いた場合の追従偏差と、PDI制御器のみの制御系を用いた場合の追従偏差と、従来の外乱オブザーバを設けた制御系を用いた場合の追従偏差を比較して示している。同図に示されるように、本実施例に係る簡易型の外乱オブザーバを設けた構成(図では、簡易外乱除去制御器と示している)は、全体に現れる追随偏差(主に、可動ステージ4と共に移動するケーブルの反力と思われる)の影響が、外乱オブザーバを設けたものと略同程度まで減少していることが判る。
【0048】
上記した各実験により、逆モデル制御器を省略した簡易型の外乱オブザーバであっても、低周波外乱を漸次除去でき、従来の外乱オブザーバと同様の効果を得ることができることが立証された。更に、本実施例では制御部10としてPMACを用い、また外乱推定処理をPMACのPLCC0の拡張サーボ機構ではなく、PMACの標準制御器として設けられている「ノッチフィルタ(Notch filter)」を使用しているため、制御周波数を上げることが可能となり、より高精度で応答性の速いな外乱抑制制御を行なうことが可能となる。
【0049】
次に、図6に示された本実施例に係る簡易外乱オブザーバを適用した制御系において、可調整変数を部分モデルマッチングにより決定する方法について説明する。
通常、外乱推定を適正な制御器とするために導入するフィルタは、その推定特性を高めるためと、調整の容易さより一般に二次系を採用することが多い。しかしながら、実際に低周域の外乱抑制特性を補償するのであれば、その変数は安定性を補償する任意の値でよい。ここでは、特に前向き制御器について自由度を確保できるよう、図10に示す制御器を採用する。この図10に示す制御系を展開すると、下式のようになる。
【0050】
【数3】
また、特性多項式は次式で与えられる。
【0051】
【数4】
このときの他特性多項式では、三次或いは四次での変数の完全な自由度がなく、完全なマッチングができない。従って、ここでは部分モデルマッチングを検討する。部分モデルマッチングを採用する場合、通常では低次項から順に下式に一致させるように変数を決定するため、応答周波数ωを上げていくと系が振動的になる場合が多い。
【0052】
R(s)=(s+ω)n
そこで、応答周波数ωと共に可調整変数であるPID制御器の積分要素Kiを0と仮定し、完全マッチングを行なう。積分要素Kiを0と仮定したときの特性多項式は、次式のようになる。
【0053】
【数5】
この系に対し、完全マッチング(s+ω)nを行なうと、各可調整変数は四次の連立方程式から求められる。そして、求められた連立方程式により、可調整変数K0,K1,K2,l1により、応答周波数ωを自由に選定することができる。また、その時の外乱除去制御器の離散モデルでは、次式のように与えられる。
【0054】
【数6】
その時のknで比例ゲインKρを修正し、最終的にパラメータを決定する。このように、応答周波数ωを設定した制御系設計であれば、等価二次系の応答周波数ωと比較し、制御性能を決定することができる。また、微分ゲインKdが完全な自由パラメータであることから、位置ループ特性を維持したまま、速度ループ特性を変更することも可能である。
【0055】
以上、本発明を精密ステージ機構に適用して説明したが、本発明は対象物を移動及び位置決めする装置の速度制御方式及び位置制御方式にも広く応用可能であることは勿論である。
【0056】
【発明の効果】
上述の如く本発明によれば、外乱オブザーバが前向き制御器のみにより構成されているため、制御系の構成の簡単化及び処理の高速化を図ることができる。また、外乱オブザーバとしてノッチフィルタを用いたことにより、外乱推定処理に拡張サーボ演算処理を行なう必要がなくなり、処理の高速化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である位置制御装置を適用したステージ機構を1軸について示す構成図である。
【図2】従来の外乱オブザーバを適用した位置制御装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図2に示す制御系を展開した状態を示すブロック図である。
【図4】図3に示す制御系を更に展開した状態を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御系を更に展開した状態を示すブロック図である。
【図6】図1に示すステージ機構の制御部を等価モデルで表現した図である。
【図7】図6に示す等価モデルの条件を示す図である。
【図8】図6に示す条件で制御部を駆動させたときのシミュレーションの結果を示す図であり、(A)は従来の外乱オブザーバ及び本発明に係る簡易外乱オブザーバのいずれをも設けていない制御部のシミュレーションの結果を示しており、(B)は従来の外乱オブザーバを設けた制御部のシミュレーションの結果を示しており、(C)は本発明に係る簡易外乱オブザーバを設けた制御部のシミュレーションの結果を示している。
【図9】本発明に係る簡易外乱オブザーバを設けた制御部の追従偏差と、従来の外乱オブザーバ及び本発明に係る簡易外乱オブザーバのいずれをも設けていない制御部の追従偏差と、従来の外乱オブザーバを設けた制御部の追従偏差を比較して示す図である。
【図10】制御器に対し、可調整変数を部分モデルマッチングにより決定する方法を説明するための図である。
【図11】従来の一例である外乱オブザーバを適用した位置制御装置の制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 位置制御器
2 モータドライバ
3 モータ
4 負荷
5 位置検出器
6 外乱オブザーバ
7 ローパスフィルタ
8 入力トルク推定フィルタ
9 モータトルク定数逆モデル
10 制御部
13 安定性フィルタ
14 低周波外乱防止フィルタ
15 逆モデル制御器
16 切断部
Claims (10)
- 請求項1記載の位置制御装置であって、
前記減衰係数ξと前記カットオフ周波数ω 0 は、
前記目標駆動値をフィルタリングすることによって指令推定値を算出する指令推定値算出フィルタと、前記位置検出値をフィルタリングすることによって入力推定値を算出する入力推定値算出フィルタと、を備え、前記目標駆動値と前記位置検出値との間に入る外乱を推定する外乱オブザーバにおいてその外乱オブザーバの前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタに設定されたフィルタ減衰係数とカットオフ周波数と同じ値である、位置制御装置。 - 請求項1記載の位置制御装置において、
前記式で特定されるフィルタを、ノッチフィルタを用いて構成したことを特徴とする位置制御装置。 - 請求項3記載の位置制御装置において、
前記ノッチフィルタに外乱推定の制御器の離散変数を代入することで外乱推定を行うことを特徴とする位置制御装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置制御装置において、
前記駆動装置は、リニアモータであることを特徴とする位置制御装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置制御装置において、
前記被駆動部材は、少なくとも1軸方向に駆動されるステージであることを特徴とする位置制御装置。 - 制御対象の制御入力をフィルタリングすることによって指令推定値を算出する指令推定値算出フィルタと、
前記制御対象の制御出力をフィルタリングすることによって入力推定値を算出する入力推定値算出フィルタと、
前記入力推定値と前記指令推定値との偏差の演算によって外乱推定値を算出する第1減算器と、
前記制御対象に入力前の前記制御入力と前記外乱推定値との偏差を前記制御対象に入力する第2減算器とを備える構成を簡易化する制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタと前記第1減算器と前記第2減算器とを表したブロック線図の変換によって前向き制御器とフィードバック制御器とに展開し、その展開して得られたフィードバック制御器を除去する、制御器設計方法。 - 請求項7に記載の制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタのフィルタ定数を同一にする、制御器設計方法。 - 請求項7又は8に記載の制御器設計方法であって、
前記指令推定値算出フィルタと前記入力推定値算出フィルタを二次遅れ要素にする、制御器設計方法。 - 請求項9に記載の制御器設計方法であって、
前記除去すべきフィードバック制御器を、加速度のフィードバック制御器とする、制御器設計方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002153825A JP3971959B2 (ja) | 2002-05-28 | 2002-05-28 | 位置制御装置及び制御器設計方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002153825A JP3971959B2 (ja) | 2002-05-28 | 2002-05-28 | 位置制御装置及び制御器設計方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003345402A JP2003345402A (ja) | 2003-12-05 |
JP3971959B2 true JP3971959B2 (ja) | 2007-09-05 |
Family
ID=29770766
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002153825A Expired - Fee Related JP3971959B2 (ja) | 2002-05-28 | 2002-05-28 | 位置制御装置及び制御器設計方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3971959B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4914979B2 (ja) * | 2007-03-14 | 2012-04-11 | 国立大学法人長岡技術科学大学 | モータ制御装置およびモータ制御方法 |
WO2014129354A1 (ja) * | 2013-02-21 | 2014-08-28 | トヨタ自動車株式会社 | 制御装置の設計方法及び制御装置 |
JP5714622B2 (ja) * | 2013-02-21 | 2015-05-07 | トヨタ自動車株式会社 | 制御装置 |
CN116300476B (zh) * | 2023-05-16 | 2023-09-05 | 成都微精电机股份公司 | 基于转速环ladrc控制器的谐振抑制方法 |
-
2002
- 2002-05-28 JP JP2002153825A patent/JP3971959B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003345402A (ja) | 2003-12-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6668202B2 (en) | Position control system and velocity control system for stage driving mechanism | |
US9075400B2 (en) | Motor control device | |
JP4391218B2 (ja) | サーボ制御装置 | |
KR20010075266A (ko) | 위치 제어 장치 | |
US7496415B2 (en) | Digital servo control unit and laser machining apparatus | |
EP3118710B1 (en) | Feed shaft control method and numerical control work device | |
EP1505463B1 (en) | Position control device and position control method for machine tools | |
JP2007156699A (ja) | モータの負荷イナーシャ推定方法 | |
JP2008210273A (ja) | 摩擦補償方法、摩擦補償器及びモータ制御装置 | |
TWI412908B (zh) | 並聯驅動系統 | |
JP4867105B2 (ja) | 数値制御装置 | |
US10558176B2 (en) | Feedback control system with periodic disturbance suppression and resonance/disturbance suppression using μ-synthesis | |
JP2005085074A (ja) | 位置制御装置 | |
JP3971959B2 (ja) | 位置制御装置及び制御器設計方法 | |
JP4658181B2 (ja) | サーボ制御装置 | |
JP3298069B2 (ja) | ステージの位置制御装置及び速度制御装置 | |
JPH06282305A (ja) | コントローラ | |
KR101053205B1 (ko) | 백래쉬 보상 기능을 갖는 모터 제어 장치 | |
JP2009131022A (ja) | 慣性モーメント推定装置 | |
JP4664576B2 (ja) | サーボ制御装置 | |
JP4329438B2 (ja) | 電動機制御装置 | |
JP2838578B2 (ja) | モータ制御装置、外乱負荷トルク推定装置 | |
JPH0424701A (ja) | オブザーバ制御方式 | |
JP3802692B2 (ja) | サーボ制御装置 | |
EP0605909B1 (en) | Controller |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040819 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060920 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061010 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061211 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070213 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070416 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070605 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070611 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615 Year of fee payment: 3 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110615 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |