JP3288508B2 - 多孔質繊維の製造方法 - Google Patents

多孔質繊維の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多孔質繊維の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】多孔質繊維はその多孔性により、各種物
質の吸着性や保持性に優れているばかりでなく、軽量で
あるため、様々な用途に使用することができる。この多
孔質繊維の製造方法としては、結晶性高分子からなる紡
糸した繊維を、延伸により多孔化する方法や、抽出可能
な樹脂成分の分散した繊維の、抽出可能な樹脂成分を抽
出することにより多孔化する方法が知られていた。
【0003】しかしながら、前者の方法では、紡糸する
際の冷却、溶媒の脱着、凝固液の浸透などが、繊維表面
から進行し、物理的や化学的性質の異なるスキン層とコ
ア層を形成した繊維を延伸することになるため、コア層
を多孔化できるものの、スキン層も安定して多孔化する
ことは困難であった。
【0004】他方、後者の方法では、抽出可能な樹脂成
分は繊維表面から徐々に抽出されるため、抽出に時間が
かかり、しかも完全に抽出するのは困難で、製造上、好
ましい方法ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの点
に鑑みてなされたもので、容易に、しかも安定して多孔
質繊維を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の多孔質繊維の製
造方法は、結晶性高分子からなる繊維内層部と、抽出可
能な高分子を含む繊維外周部とからなる複合繊維をドラ
フト比5〜1,000で紡糸し、熱処理、延伸による繊
維内層部の多孔化、熱セットを順に行った後、この抽出
可能な高分子を抽出する方法である。
【0007】本発明の他の多孔質繊維の製造方法は、結
晶性高分子からなる繊維内層部と、抽出可能な高分子を
含む繊維外周部とからなる複合繊維をドラフト比5〜
1,000で紡糸し、この抽出可能な高分子を抽出した
後、熱処理、延伸による繊維内層部の多孔化、熱セット
を順に行う方法である。この方法で得られる多孔質繊維
は繊維表面に大きな空孔を有している。
【0008】なお、繊維外周部が抽出可能な高分子のみ
からなると、均一な空孔を有する多孔質繊維が得られ
る。
【0009】
【作用】本発明の多孔質繊維の製造方法は、結晶性高分
子からなる繊維内層部と、抽出可能な高分子を含む繊維
外周部とからなる複合繊維をドラフト比5〜1,000
で紡糸し、熱処理、延伸による繊維内層部の多孔化、熱
セットを順に行った後、この抽出可能な高分子を抽出す
る方法であるため、延伸により繊維内層部は多孔化さ
れ、しかも、抽出可能な高分子の抽出により繊維外周部
も多孔化されるので、繊維全体にわたって多孔化した多
孔質繊維を安定的に製造することができる。また、抽出
可能な高分子は繊維外周部にのみに存在しているため、
短時間で、容易に抽出することができる。
【0010】複合繊維の繊維内層部は、延伸により空孔
を形成する部分で、複合繊維中、50〜90重量%の比
率で存在するのが好ましい。これは、50重量%未満で
あると、繊維外周部量が多くなるために、抽出可能な高
分子の抽出量が多くなったり、繊維内層部の空孔と繊維
外周部の空孔とがつながりにくくなり、各種物質の吸着
性や保持性が悪くなりやすいためであり、90重量%を
越えると、延伸による空孔が繊維内層部の繊維外周部付
近では形成されにくく、繊維表面から貫通する空孔が得
にくくなるためである。より好ましくは、60〜80重
量%である。
【0011】この繊維内層部を構成する結晶性高分子と
しては、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリ
オレフィン系、ポリスチレン系、ポリアセタール系、ポ
リカーボネート系、ポリウレタン系等の熱可塑性高分子
群の中から適宜用いることができる。これらの中でも、
配向結晶化しやすいので多孔化しやすい、ポリオレフィ
ン系高分子、より具体的には、高密度ポリエチレン、低
密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、
エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ジエン共
重合体などの変性ポリプロピレンなどを好適に使用でき
る。
【0012】他方、繊維外周部は抽出可能な高分子の抽
出により空孔を形成する部分で、複合繊維中、10〜5
0重量%の比率で存在するのが好ましい。これは10重
量%未満であると、延伸による空孔が繊維内層部の繊維
外周部付近で形成されにくく、繊維表面から貫通する空
孔が得にくくなるためであり、50重量%を越えると、
抽出可能な高分子の抽出量が多くなったり、繊維内層部
の空孔と繊維外周部の空孔とがつながりにくくなるた
め、各種物質の吸着性や保持性が悪くなりやすいためで
ある。より好ましくは20〜40重量%である。
【0013】この繊維外周部に含まれる抽出可能な高分
子としては、例えば、6ナイロンや66ナイロンなどの
ポリアミド系、ポリスチレン系、スルホキシイソフタル
酸とエチレングリコールとの共重合体のカチオンダイア
ブルポリエステル系、ポリエチレングリコール、ポリ乳
酸、ポリカプロラクトンなどを使用できる。これらの中
でも、抽出速度が速く、分散性に優れたポリアミド系、
ポリスチレン系、ポリ乳酸が好適に使用できる。
【0014】この抽出可能な高分子は複合繊維の一部を
なし、抽出されることにより繊維内層部の空孔とつなが
った多孔質繊維を形成するために、繊維外周部中、10
重量%以上含まれているのが好ましい。より好ましく
は、20重量%以上である。
【0015】なお、この繊維外周部が抽出可能な高分子
のみからなる場合、この複合繊維の抽出可能な高分子を
抽出して得られる多孔質繊維は、繊維内層部の延伸によ
り生じた空孔のみからなるため、均一な孔径を有する多
孔質繊維が得られるという特長がある。
【0016】一方、抽出可能な高分子以外の繊維外周部
を構成する高分子は、どのような高分子であっても良い
が、繊維内層部の結晶性高分子との相溶性が良く、繊維
内層部と剥離しにくい高分子が好ましい。そのため、繊
維内層部と同じか、又はその変性高分子が好適に使用で
きる。
【0017】本発明の複合繊維は、芯鞘型複合繊維のよ
うに、繊維内層部が繊維外周部に覆われた状態にあれば
良いが、繊維内層部が繊維外周部により完全に覆われて
いる必要はなく、繊維内層部の表面積の50%以上が繊
維外周部で覆われていれば、多孔質繊維としての働きを
損なわない。
【0018】本発明の複合繊維について、図面をもとに
説明すると、図1は繊維内層部1が繊維外周部2によっ
て、完全に覆われた状態にある。このような複合繊維3
は延伸する際に均一な強度を有しているため、均一な強
度を有する多孔質繊維が得られるという特長がある。
【0019】図2は複数個の繊維内層部1が繊維外周部
2によって、完全に覆われた状態にある。このように、
繊維内層部1を複数個有し、繊維外周部2が抽出可能な
高分子のみからなる場合には、複合繊維3が分割し、よ
り細い多孔質繊維を得ることができるという特長があ
る。
【0020】図3〜5は、繊維内層部1が繊維外周部2
によって、部分的に被覆されている場合である。また、
図5は繊維断面形状がプロペラ状の場合であり、このよ
うに、繊維断面形状は円形である必要はなく、多角形、
楕円形、長円形などでもよく、特に限定するものではな
い。
【0021】なお、図面はわかりやすいように、繊維外
周部2が抽出可能な高分子のみからなる場合であり、抽
出可能な高分子が繊維内層部1と同じ、或いは変性高分
子中に分散した状態の時には、図面のような明確な境界
線はない。
【0022】このような複合繊維は、各々の高分子の融
点よりも20〜120℃高い温度で溶融させた後、複合
紡糸をすることによって、容易に製造することができ
る。なお、ドラフト比は5〜1,000である。5未満
では高配向の複合繊維を得るのが難しく、1,000を
越えると、後工程の延伸を高倍率で行ない難くなるため
である。
【0023】このように紡糸した複合繊維は、熱処理
し、延伸による繊維内層部の多孔化、熱セットを順に行
った後、抽出可能な高分子を抽出するか、抽出可能な高
分子を抽出した後に熱処理、延伸による繊維内層部の多
孔化、熱セットを順に行って、本発明の多孔質繊維を得
ることができる。繊維外周部に部分的に抽出可能な高分
子が含まれており、前者のように、延伸後に抽出した場
合には、繊維内層部、及び繊維外周部の抽出可能な高分
子の存在していた部分とが空孔となり、後者のように抽
出後に延伸した場合には、繊維内層部、及び抽出可能な
高分子の存在していた部分の空孔の拡大した空孔が形成
される。
【0024】他方、繊維外周部が抽出可能な高分子のみ
からなる場合、複合繊維を延伸した後に抽出する場合で
あっても、抽出した後に延伸する場合であっても、均一
な空孔を有する多孔質繊維を得ることができる。これ
は、紡糸段階においてスキン層とコア層が形成されるた
め、紡糸した後にスキン層(本発明の繊維外周部に相
当)を全て抽出すると、均一なコア層(本発明の繊維内
層部に相当)のみとなるため、延伸したとしても、均一
な空孔が形成されるためである。
【0025】本発明の複合繊維の延伸は、繊維内層部の
結晶性高分子のガラス転移温度以上の温度で行い、少な
くとも繊維内層部の結晶性高分子を結晶配向化させると
同時に多孔化させる。
【0026】本発明では、抽出可能な高分子を抽出でき
る溶媒を適宜選択し、使用することができる。例えば、
抽出可能な高分子がポリアミド系の場合にはぎ酸、ポリ
スチレン系の場合にはベンゼン、ポリエチレングリコー
ルの場合には水、ポリ乳酸やポリカプロラクトンやカチ
オンダイアブルポリエステル系の場合にはアルカリ溶液
といった具合である。
【0027】以下に、本発明の多孔質繊維の製造方法の
実施例を記載するが、以下の実施例に限定されるもので
はない。なお、樹脂成分の溶融粘度は、270℃、シェア
レート103S-1におけるもので、フローテスター(島津製
作所製、フローテスターCFT-500)で、直径1.0mm、長さ
10.0mmのノズルを用いて測定した。また、空孔率は水銀
圧入法(ポロシメーター:CARLO ERBA社製)により測定
した。
【0028】
【実施例】(実施例1) 繊維内層部の結晶性高分子として、溶融粘度が450ポイ
ズのポリプロピレン樹脂(ガラス転移温度:−15℃)
と、繊維外周部の高分子として、溶融粘度が300ポイズ
の6−ナイロン樹脂(抽出可能な高分子)50重量%と繊
維内層部と同じポリプロピレン樹脂50重量%の混合樹脂
とを8:2の重量比率で、別々に溶融させた後、芯鞘タ
イプの横断面を持つ270℃に加熱されたオリフィスの芯
部分からポリプロピレン樹脂融液を、他方、鞘部分から
混合融液を押し出し、これら融液を複合し、オリフィス
から紡出した後、速度450m/分で巻取り(ドラフト
比:75)、図1に示すように、繊維内層部がポリプロ
ピレン、繊維外周部がポリプロピレンと6−ナイロンよ
りなる芯鞘型複合繊維を得た。この複合繊維を、140℃
で30分間熱処理し、ついで80℃で2倍に延伸した後、14
5℃で30分間熱セットした。その後、繊維外周部を構成
する6−ナイロンをぎ酸により抽出して多孔質繊維とし
た。この繊維を走査型電子顕微鏡により観察したとこ
ろ、繊維表面及び断面に空孔が生じていることが確認さ
れた。また、空孔率は35%であった。
【0029】(実施例2) 繊維内層部の結晶性高分子として、溶融粘度が450ポイ
ズのポリプロピレン樹脂(ガラス転移温度:−15℃)
と、繊維外周部の高分子として、溶融粘度が300ポイズ
の6−ナイロン樹脂とを8:2の重量比率で別々に溶融
させた後、芯鞘タイプの横断面を持つ270℃に加熱され
たオリフィスの芯部分からポリプロピレン樹脂融液を、
他方、鞘部分から6−ナイロン樹脂融液を押し出し、こ
れら融液を複合し、オリフィスから紡出した後、速度53
0m/分で巻取り(ドラフト比:85)、図1に示すよ
うな、繊維内層部がポリプロピレン、繊維外周部が6−
ナイロンよりなる複合繊維を得た。この複合繊維を、実
施例1と同じ条件で熱処理、延伸、熱セット、繊維外周
部の6−ナイロンの抽出を行ない、多孔質繊維とした。
この繊維を走査型電子顕微鏡により観察したところ、繊
維表面及び断面に均一な空孔が生じていることが確認さ
れた。また、空孔率は37%であった。
【0030】(実施例3) 実施例1で得られた複合繊維の繊維外周部の6−ナイロ
ン成分をぎ酸により抽出した後、実施例1と同じ条件で
熱処理、延伸、熱セットして、多孔質繊維を得た。この
繊維を走査型電子顕微鏡により観察したところ、繊維表
面及び断面に空孔が生じており、断面よりも大きな空孔
を有する繊維表面であることが確認された。また、空孔
率は40%であった。
【0031】(比較例) 結晶性高分子として、溶融粘度が450ポイズのポリプロ
ピレン樹脂のみを270℃に加熱されたオリフィスから紡
出した後、速度700m/分で巻取った(ドラフト比:8
0)。この繊維を、実施例1と同じ条件で熱処理、延
伸、熱セットした。この繊維を走査型電子顕微鏡により
観察したところ、繊維断面には空孔が生じているが、繊
維表面には空孔の存在しないものであった。また、空孔
率は8%であった。
【0032】
【発明の効果】本発明の多孔質繊維の製造方法は、結晶
性高分子からなる繊維内層部と、抽出可能な高分子を含
む繊維外周部とからなる複合繊維をドラフト比5〜1,
000で紡糸し、熱処理、延伸による繊維内層部の多孔
化、熱セットを順に行った後、この抽出可能な高分子を
抽出する方法であるため、延伸により繊維内層部は多孔
化され、しかも、抽出可能な高分子の抽出により繊維外
周部も多孔化されるので、繊維全体にわたって多孔化し
た多孔質繊維を安定的に製造することができる。また、
抽出可能な高分子は繊維外周部にのみに存在しているた
め、短時間で、容易に抽出することができる。
【0033】なお、繊維外周部が抽出可能な高分子のみ
からなると、均一な空孔を有する多孔質繊維を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合繊維断面の一例
【図2】複合繊維断面の一例
【図3】複合繊維断面の一例
【図4】複合繊維断面の一例
【図5】複合繊維断面の一例
【符号の説明】
1 繊維内層部 2 繊維外周部 3 複合繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/00 - 15/72 D01F 8/00 - 8/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性高分子からなる繊維内層部と、抽
    出可能な高分子を含む繊維外周部とからなる複合繊維を
    ドラフト比5〜1,000で紡糸し、熱処理、延伸によ
    る繊維内層部の多孔化、熱セットを順に行った後、該抽
    出可能な高分子を抽出することを特徴とする多孔質繊維
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 結晶性高分子からなる繊維内層部と、抽
    出可能な高分子を含む繊維外周部とからなる複合繊維を
    ドラフト比5〜1,000で紡糸し、該抽出可能な高分
    子を抽出した後、熱処理、延伸による繊維内層部の多孔
    化、熱セットを順に行うことを特徴とする多孔質繊維の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 繊維外周部が抽出可能な高分子のみから
    なることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の多孔
    質繊維の製造方法。
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EP0528048A4 (en) * 1991-03-05 1994-03-18 Ube Nitto Kasei Co COMPOSITE FIBER WITH POROUS ENVELOPE.
JPH05132821A (ja) * 1991-11-06 1993-05-28 Jiyumoku Chiyuushiyutsu Seibun Riyou Gijutsu Kenkyu Kumiai 香りを有する芯鞘型複合長繊維及びその製造法

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