JP3281894B2 - 共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法 - Google Patents

共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法

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JP3281894B2
JP3281894B2 JP24859693A JP24859693A JP3281894B2 JP 3281894 B2 JP3281894 B2 JP 3281894B2 JP 24859693 A JP24859693 A JP 24859693A JP 24859693 A JP24859693 A JP 24859693A JP 3281894 B2 JP3281894 B2 JP 3281894B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、共役系高分子であるポ
リ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法に関す
る。本発明により製造されるポリ−2,5−ピリジンジ
イルビニレンは、高分子鎖中に電子過剰系であるピリジ
ン環を有しているため、ドナードーパントをドーピング
しやすい構造である。このようなn型導電性高分子は、
電子材料の用途として、電界効果型トランジスタ(FE
T)、ダイオード、さらに二次電池の負極等に応用が期
待できる電子材料である。
【0002】
【従来の技術】従来、共役系高分子の中に、ドーピング
剤を電気化学的にあるいは化学酸化的にドーピングする
ことにより、導電性が付与できるものがあることが知ら
れている。このような共役系高分子には、例えば、ポリ
アセチレン、ポリ置換アセチレン、ポリピロール、ポリ
チオフェン、ポリアニリン、ポリ−p−フェニレン、ポ
リ−p−フェニレンビニレン、ポリ−2,5−チエニレ
ンビニレン等、数多くの共役系高分子が報告されてい
る。
【0003】この中で、ポリ−p−フェニレンビニレ
ン、ポリ−2,5−チエニレンビニレン等の高分子は、
高分子主鎖に芳香環とビニル基が交互に存在する交互共
重合体の構造を有しており、高導電性を有する高分子と
してよく知られている。
【0004】これらの共役系高分子の製造法は、米国特
許明細書第3,410,152(1968)に示される
Wesslingらが開発した脱スルホニウム塩法を用
いた合成法により得られることが知られている。
【0005】一方、ピリジン系π共役高分子がn型ドー
ピング可能なことが、山本等によりChem. Letter, 153
(1988) に既に報告されている。また、ピリジン系π共
役高分子であるポリ−2,5−ピリジンジイルビニレン
が、脱スルフォニウム塩法を用いた重合法により得られ
たことが、Polymer Preprints, Japan Vol.42, No.3(1
993) pp739 に示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記ポ
リ−2,5−ピリジンジイルビニレンを脱スルフォニウ
ム塩法により合成する方法は、重合に用いるモノマーの
合成が難しく、またそのモノマーが常温で不安定であ
り、重合における活性中間体が非常に不安定であるた
め、重合体が形成しにくいという欠点があった。また、
この重合法により得られる重合体の精製には透析処理等
を行なうため後処理に手間がかかるので、多量の合成を
行なうことが困難であり、工業的な大量生産に適さない
という問題があった。
【0007】また、前記したようにピリジン系π共役高
分子がn型ドーピングが可能であることが既に示唆され
ているので、ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンを
n型導電性高分子として用いることが期待されており、
ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの大量生産に適
した安定した製造方法の出現が望まれていた。
【0008】したがって、本発明は、前記したようにポ
リ−2,5−ピリジンジイルビニレンを製造するのに問
題のある脱スルフォニウム塩法を使用することなく、重
合に用いるモノマーとして常温で安定なモノマーを使用
し、重合体が形成しやすく、また重合体が精製しやす
く、工業的生産に適したポリ−2,5−ピリジンジイル
ビニレンの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決す
るために本発明は、2,5−ジハロゲン化メチルピリジ
ンを脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存在下に重合
して、下記の一般式、
【0010】
【化3】 で表される重合体を得ることを特徴とする共役系高分子
ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法とす
るものである。
【0011】また本発明は、2,5−ジハロゲン化メチ
ルピリジンを脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存在
下に重合し、得られた重合体に対して、さらに窒素ある
いは不活性気流下もしくは真空減圧下で、230〜30
0℃の温度で熱処理を行なうことにより、前記重合体に
含まれるハロゲン未脱離部分を脱離させて、下記の一般
式、
【0012】
【化4】 で表される重合体を得ることを特徴とする共役系高分子
ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法とす
るものである。
【0013】本発明において、前記脱ハロゲン化水素重
合法に用いられる塩基は、求核性の小さい塩基であるこ
とを特徴とする。
【0014】本発明において、前記求核性の小さい塩基
は、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド、又は
リチウムアミドであることを特徴とする。
【0015】本発明において、前記求核性の小さい塩基
の量は、2,5−ジハロゲン化メチルピリジンに対し
て、モル比で2倍以上であることを特徴とする。
【0016】本発明において、前記2,5−ジハロゲン
化メチルピリジンを脱ハロゲン化水素重合法により重合
する方法は、極性溶媒中で行なわれることを特徴とす
る。
【0017】本発明において、前記2,5−ジハロゲン
化メチルピリジンは、ピリジン−2,5−ジカルボン酸
ジエチルエステルを水素化ホウ素カルシウムで還元して
ピリジン−2,5−ジメタノールを生成させ、該ピリジ
ン−2,5−ジメタノールに塩酸を作用させてピリジン
−2,5−ジメタノール塩酸塩とし、該ピリジン−2,
5−ジメタノール塩酸塩にハロゲン化試薬を作用させて
生成させたものであることを特徴とする。
【0018】本発明において、前記水素化ホウ素カルシ
ウムは、アルコール溶媒中における水素化ホウ素ナトリ
ウムに塩化カルシウムを添加することにより生成させた
ものであることを特徴とする。
【0019】本発明の製造方法により得られるポリ−
2,5−ピリジンジイルビニレンは、高分子鎖中に電子
過剰系であるピリジン環が存在するため、ドナードーパ
ントをドーピングしやすい構造を有しており、n型の導
電性高分子を得ることができる。このようなn型導電性
高分子の製造方法を提供することにより、電子材料とし
ての用途が拡大し、電界効果型トランジスタ(FE
T)、ダイオード、さらに二次電池の負極等に応用が期
待できる。
【0020】以下、本発明について詳述する。
【0021】ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの
製造に用いるモノマーの製造:本発明における前記一般
式(1)で示されるポリ−2,5−ピリジンジイルビニ
レンの製造に用いるモノマーは、下記の式(2)で示す
ピリジン−2,5−ジカルボン酸ジエチルエステルを水
素化ホウ素化カルシウムを用いて還元してピリジン−
2,5−ジメタノールとする第1段階、得られたピリジ
ン−2,5−ジメタノールをさらに分離精製しやすくす
るために塩酸を作用させることによりピリジン−2,5
−ジメタノール塩酸塩とする式(3)で示す第2段階、
さらには、得られたピリジン−2,5−ジメタノール塩
酸塩をハロゲン化試薬によりハロゲン化して2,5−ジ
ハロゲン化メチルピリジンとする式(4)で示す第3段
階の工程を経ることにより製造される。
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】 第1段階:原料であるピリジン−2,5−ジカルボン酸
ジエチルエステルを還元する場合、アルコール溶媒中に
おいて水素化ホウ素ナトリウムを用いた系に塩化カルシ
ウムを添加することにより還元力を強化し、少量の還元
剤でも目的のピリジン−2,5−ジメタノールを効率よ
く合成することができる(実施例1参照)。
【0025】このような系においては、水素化ホウ素ナ
トリウムのナトリウムイオンがカルシウムイオンと置き
換わることによって水素化ホウ素カルシウムが溶媒中に
生成する。この反応は、得られる水素化ホウ素カルシウ
ムが溶液中で不安定であることから、反応温度は低温で
あることが望ましい。例えば、−20℃〜0℃の範囲、
好ましくは、−20℃〜−10℃で行なうことが望まし
い。また、この水素化ホウ素カルシウムを形成させるの
に必要な、水素化ホウ素ナトリウムに対する塩化カルシ
ウムの必要量はモル比で2:1であり、反応系が上記温
度に保たれていれば、ほぼ定量的に反応する。
【0026】このようにして得られた水素化ホウ素カル
シウムにより、アルコール溶液中において目的のピリジ
ン−2,5−ジメタノールを高収率で得ることができ
る。
【0027】また、この反応に用いる溶媒は、アルコー
ル、特にメタノールあるいはエタノールが好ましく、反
応後の溶剤回収等を考慮した場合、エタノールを用いた
ほうがよい。
【0028】なお、水素化リチウムアルミニウムのよう
な強い還元剤を用いると、ピリジン環自体が反応あるい
は分解し、目的のピリジン−2,5−ジメタノールを得
ることは難しい。また一方、水素化ホウ素ナトリウム等
の温和な還元剤を用いた場合においても、Melancthonら
が報告したように、多量の還元剤が必要となり、効率よ
くエステルを還元してアルコールに転換することにより
目的のピリジン−2,5−ジメタノールを得ることは難
しい(J.Am.Chem.Soc vol.28,3261(1963))。
【0029】第2段階:前記第1段階で得られるピリジ
ン−2,5−ジメタノールは水溶性であり、また、溶媒
であるエタノールにも可溶であることから、反応溶液か
らのピリジン−2,5−ジメタノールの分離精製が困難
となる。その理由は第1段階の反応を停止させる際に過
剰の還元剤等を分解するためにイオン交換水を加えてお
り、したがって、この反応混合物が水溶液となるので、
目的のピリジン−2,5−ジメタノールと他の反応副生
成物との分離が困難となるからである。
【0030】そこで、本発明では、反応後の水溶液を濃
縮して副生成物の無機塩を除去した後、濃縮物に塩酸エ
タノール溶液を加えることにより、ピリジン−2,5−
ジメタノールの塩酸塩とし、分離精製を容易にした。こ
れは、得られるピリジン−2,5−ジメタノール塩酸塩
が溶媒のエタノールに難溶となるため、エタノール中で
再結晶することができ、他の反応副生成物からの分離が
容易になるためである。このように塩酸塩の形で分離精
製を行なうことにより目的のピリジン−2,5−ジメタ
ノールをその塩酸塩として効率よく得ることができる。
したがって、モノマー合成工程においてこの第2段階の
工程を付加することにより最終的な2,5−ジハロゲン
化メチルピリジンの合成収率を高めることができる。
【0031】第3段階:前記第2段階で得られたピリジ
ン−2,5−ジメタノール塩酸塩をハロゲン化して2,
5−ジハロゲン化メチルピリジンとする場合、例えば、
クロル化して2,5−ジクロロメチルピリジン(以下、
ジクロル化物と略す)を得る場合、無溶媒中で過剰の塩
化チオニルを用いてクロル化する方法が簡便でよい。反
応温度は0〜50℃迄がよく、ピリジン−2,5−ジメ
タノール塩酸塩を加える際には0〜20℃、反応中は2
0〜50℃の温度で行なうのが望ましい。すなわち、あ
まり高い温度では、反応混合物中に塩素が遊離し副反応
を生じやすく、またより低温では、反応速度が遅く目的
物への転化率が低い結果となる。
【0032】また、ブロム化して2,5−ジブロモメチ
ルピリジン(以下ジブロム化合物と略す)を得る場合、
臭化水素−酢酸溶液(例えば、東京化成工業(株)の5
0%臭化水素−酢酸溶液)を用いる方法が簡便である。
この反応では、臭化水素−酢酸溶液中に上記のピリジン
−2,5−ジメタノール塩酸塩を加え、室温で攪拌する
ことにより容易に合成することができる。
【0033】このようにして得られた2,5−ジハロゲ
ン化メチルピリジンは、pHに対して敏感であり、アル
カリ中ではハロゲンが遊離し分解反応が生じる。よっ
て、合成した後に、この化合物を精製する際には、pH
を正確に制御して行なうことが必要である。特にpHを
制御して、中性にして精製した化合物は、空気中でも安
定となる。
【0034】2,5−ジハロゲン化メチルピリジンを重
合してポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンを製造す
る方法:前記のようにして得られた2,5−ジハロゲン
化メチルピリジンをモノマーとして用い、塩基の存在下
に極性溶媒中で重合させることができる。この重合反応
には、求核性の小さい塩基を用いることが望ましい。す
なわち、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシドあ
るいはリチウムアミド(アミドに用いる第二アミンのア
ルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロ
ピル等が望ましい。その調製は−78℃でエーテル溶媒
中に市販のn−ブチルリチウムヘキサン溶液と反応させ
ることにより、目的のリチウムアミドを得る。)等の求
核性の小さい塩基が好ましい。しかし、ナトリウムメト
キシドあるいはナトリウムエトキシド等の金属アルコキ
シドを用いるとWilliamsonのエーテル合成反応(J.C
hem.Soc.,229(1852))が生じ、ハロ
ゲンの代わりにアルコキシ基が置換した化合物を生成さ
せ、重合反応が生じにくい。
【0035】塩基の量:モノマーである2,5−ジハロ
ゲン化メチルピリジンを重合する際に用いられる塩基の
量は、反応機構から最低限モノマーに対してモル比で2
倍の量が必要である。重合反応をより活性に行なうに
は、モノマーに対しモル比で3〜5倍の量が必要であ
る。特にモノマーに対しモル比で4倍以上用いたとき
に、重合物が高収率で得られる。
【0036】溶剤:重合に用いる溶剤は、用いる塩基に
よっても異なるが、一般的に極性溶媒を用いて反応を行
なうことが望ましい。例えば、塩基に水素化ナトリウム
を用いる場合には溶剤にジメチルホルムアミド(以下、
DMFと略す)を用いることが好ましく、塩基にカリウ
ムt−ブトキシドを用いる場合には、テトラヒドロフラ
ン(以下、THFと略す)、DMF、ジメチルスルホキ
シド、特に、t−ブタノールを用いることが好ましい
(実施例5参照)。また、塩基にリチウムアミドを用い
る場合には、エーテル系の溶媒、ジメチルエーテル、ジ
エチルエーテル、THF、ジオキサン、ジグライム等の
溶剤が使用できる(実施例6参照)。
【0037】反応温度:重合における反応温度は、用い
る塩基によっても異なるが、高分子鎖の規則性を高める
ため、室温付近の温度で長時間攪拌して反応させる方法
がよい。反応の性質上、高温で反応させると、モノマー
自体が分解し、塩素が遊離して複雑な副反応が生じ、目
的の重合反応が収率よく起こらず、また高分子鎖の規則
性が低下する。
【0038】用いる塩基がNaH又はt−BuOKの場
合、20〜100℃、特に好ましくは50〜70℃で重
合反応を行ない、この温度範囲内の低温(20℃付近)
では6〜48時間、高温では2〜24時間程度の攪拌を
行なう。用いる塩基がリチウムアミドの場合、高温で反
応を行なうと溶媒が分解したり或いは反応する恐れがあ
るので、−78〜30℃で、好ましくは0〜20℃で反
応を行なうことが望ましい。
【0039】以上のように、塩基を用い重合反応を行な
うと、目的の重合反応は効率よく生じ、ポリ−2,5−
ピリジンジイルビニレンが得られる(実施例1及び2参
照)。なお、この反応は次の式(5)に示すように行な
われる。
【0040】
【化8】 式(5)において、第一段階で重合反応が生じ、その後
過剰の塩基によって高分子鎖中のハロゲン原子に脱ハロ
ゲン化水素反応が生じ、高分子主鎖にビニル基が形成さ
れる。
【0041】得られた重合体の熱処理:しかし、式
(5)で示した反応の後者の脱ハロゲン化水素反応にに
よる高分子主鎖のビニル化は定量的には起こらず、ポリ
マー主鎖にハロゲン原子が脱離していない欠陥部分が生
じる。このハロゲン原子が脱離していない欠陥部分は、
得られた重合体を窒素もしくは不活性ガス気流下、特に
好ましくは真空減圧下で熱処理を行なうことにより、熱
による脱ハロゲン化水素反応によって目的のビニル鎖に
変換することができる(実施例3参照)。この反応は、
次の式(6)に示す通りである。
【0042】
【化9】 この熱処理の温度は、230〜300℃、好ましくは2
70〜300℃で行なうことが望ましい。その理由は、
230℃以下では、このような熱による脱ハロゲン化水
素反応が起こらず(実施例3参照)、また300℃を越
えるようなより高温での処理では、熱による分解反応が
生じやすくなるからである。
【0043】なお、熱処理に必要な時間は、4時間程度
が望ましい。特に上記の熱処理温度の範囲内で、より低
い領域での熱処理では、より長い時間の熱処理が必要で
あり、またより高温領域での熱処理では2時間程度の熱
処理でもさしつかえない。
【0044】上記に示した各反応、すなわちモノマー合
成反応、重合反応、熱処理反応によって得られた、ポリ
−2,5−ピリジンジイルビニレンは、気相ドーピング
あるいは、電界酸化ドーピングすることにより導電性を
付与させることができる。例えば、気相ドーピングで
は、例えば、よう素の添加により、半導体温度の導電性
を与えることができる(実施例4参照)。
【0045】
【実施例】
〔実施例1〕 ピリジン−2,5−ジメタノールの合成例:反応容器に
水素化ホウ素ナトリウム3.40g(89.9mmo
l)とエタノール100mlを加え−10℃に冷却し
た。この温度で攪拌しながらピリジン−2,5−ジカル
ボン酸ジエチルエステル(東京化成工業(株)製)1
0.0g(44.8mmol)を徐々に加え溶解させ
た。−10℃に保ちながらこれに無水塩化カルシウム
5.00g(45.0mmol)をエタノール30ml
に溶かした溶液を30分かけて滴下し、同温で5時間、
ついで室温で15時間攪拌した。
【0046】反応溶液から溶媒のエタノールを留去後、
20%希硫酸で中和し、加熱攪拌した。冷却してから析
出した硫酸カルシウムを吸引濾過により除去し、濾液を
濃縮した。濃縮物にメタノール100mlを加え再び加
熱し、放冷して再び析出した結晶を除去し、ピリジン−
2,5−ジメタノール溶液を得た。
【0047】ピリジン−2,5−ジメタノール塩酸塩の
合成例:上記ピリジン−2,5−ジメタノール溶液を濃
縮して、5vol%の塩酸エタノール溶液を200ml
加えて攪拌し、一昼夜放置した。得られた結晶を吸引濾
過してエタノールにて洗浄し、真空減圧下で乾燥して
5.90gの結晶を得た(収率75%)。得られた合成
物をFT−IR,1 H−NMRにて構造分析した。その
結果を以下に示した。
【0048】1 H-NMR(δ, CD3 OD);4.86(2H,s),5.00(2
H,bs),5.09(2H,s),8.01(1H,dJ=7Hz)8.56(1H,dJ=7Hz),8.
72(1H,s) FT-IR(cm-1);3270(OH 基伸縮振動) 3051( ピリジン環CH伸縮振動) 融点:164〜166℃ これらの理化学的性質から、得られた結晶はピリジン−
2,5−ジメタノール塩酸塩であることが分かる。
【0049】2,5−ジクロロメチルピリジンの合成
法:前記方法で得られたピリジン−2,5−ジメタノー
ル塩酸塩の10.0g(57.0mmol)を反応容器
に入れ、氷冷して攪拌しながら塩化チオニル13mlを
ゆっくり滴下した。氷冷しながら3時間攪拌した後、室
温で20時間攪拌した。得られた反応混合物にベンゼン
100mlを加えて過剰の塩化チオニルを共沸によって
除去し、その後氷冷して純水200mlを加えた。残存
している塩化チオニルを炭酸ナトリウムで分解して中和
し、pHを7.0にコントロールした。
【0050】析出した白色結晶を吸引濾過し純水で洗浄
して、真空減圧下で乾燥させ、8.53gの白色針状結
晶を得た(収率85%)。
【0051】得られた化合物をFT−IR,1 H−NM
Rにて構造分析した。得られた各ピーク値と融点は以下
のとおりであった。
【0052】1 H-NMR(δ, CDCl3 ): 4.60(2H,s),4.68(2
H,s),7.50(1H,d),7.78(1H,d),8.57(1H,s) FT-IR(cm-1):1327(CH2 ClのCH2 面外変角振動) 759,651 (C-Cl の伸縮振動) 融点:44〜45℃ これらの理化学的性質から、得られた結晶は2,5−ジ
クロロメチルピリジンであることが分かる。
【0053】ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの
重合例:窒素気流下、乾燥した反応容器に60%オイル
サスペンジョンの水素化ナトリウム(和光純薬工業
(株)製)1.37g(34.1mmol)を入れ、蒸
留した石油エーテルで洗浄した。次に、蒸留したDMF
で置換し、最後にDMFの全量が50mlになるように
調製した。
【0054】先の方法で得られた2,5−ジクロロメチ
ルピリジン1.00g(5.68mmol)に、DMF
5ml溶液を室温でゆっくり滴下し、滴下後50℃で2
時間反応させ、さらに70℃で6時間反応させた。反応
後放冷して、イオン交換水を加え攪拌した。次に吸引濾
過して重合物を分離し、エタノール、イオン交換水、さ
らにアセトンで洗浄し、真空減圧下で乾燥して0.49
gのオレンジ色の粒の荒い粉体の重合体を得た。
【0055】得られた重合体を電子走査型顕微鏡にて観
察したところ、フィブリル構造を有していた。この重合
体のフィブリル構造(繊維の形状)の10,000倍の
顕微鏡写真を図1に、35,000倍の顕微鏡写真を図
2に示す。また、本実施例1で得られた重合体を真空減
圧下にて、200℃、250℃、300℃の各温度で4
時間熱処理した。各熱処理後の重合体及び熱処理をしな
かった重合体のFT−IRを図3に示す。また、この重
合体の250℃と300℃で熱処理したもの、及び熱処
理しなかったものについて各々元素分析を行なった。そ
の測定結果を次の表1に示す。
【0056】
【表1】 これらのFT−IR及び元素分析値より、本実施例1で
得られた重合体のうち熱処理前のものには残留塩素が認
められたが熱処理後のものは残留塩素が認められず、ポ
リ−2,5−ピリジンジイルビニレンであると同定され
た。
【0057】〔実施例2〕 2,5−ジブロモメチルピリジンの合成例:前記実施例
1で得られたピリジン−2,5−ジメタノール塩酸塩1
0.0g(57.0mmol)を反応容器に入れ、氷冷
して攪拌しながら50wt%の臭化水素−酢酸溶液13
mlをゆっくり滴下した。氷冷しながら3時間攪拌した
後、50℃に加熱し5時間攪拌した。その後氷冷して純
水100mlを加え、1Nの水酸化ナトリウム水溶液で
中和し、pHを7.0に調整した。
【0058】析出した白色結晶を吸引濾過し、純水で洗
浄して、真空減圧下で乾燥させ、13.6gの白色針状
結晶を得た(収率90%)。
【0059】得られた化合物をFT−IR,1 H−NM
Rにて構造分析した。得られたピーク値と融点を以下に
示した。
【0060】1 H-NMR(δ, CDCl3 );4.47(2H,s),4.55(2
H,s),7.44(1H,d),7.74(1H,d),8.58(1H,s) FT-IR(cm-1);1201(CH2 BrのCH2 面外変角振動),633
(C-Brの伸縮振動) 融点:75〜76℃ これらの理化学的性質から、得られた結晶は2,5−ジ
ブロモメチルピリジンであることが分かる。
【0061】ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの
重合例:得られた2,5−ジブロモメチルピリジン1.
51g(5.68mmol)を用いて、前記実施例1と
同様の反応条件で重合を行なった。その結果、黄土色の
粉体である重合体を0.23g得た。この重合体を真空
減圧下にて、200℃、250℃、300℃の各温度で
4時間熱処理した。本実施例2における各熱処理後の各
重合体及び熱処理をしなかった重合体のFT−IRを図
4に示す。本実施例2で得られた重合体のうち熱処理前
のものには残留臭素が認められたが熱処理後のものは残
留臭素が認められず、図4によりポリ−2,5−ピリジ
ンジイルビニレンであると同定された。
【0062】〔実施例3〕前記実施例1の300℃での
熱処理で得られた重合物をすりつぶし、0.5mm厚の
円板状のペレットに圧縮成形したところ、形状が保持で
きる成形物が得られた。それを7.0mm角の正方形に
カットし測定サンプルを得た。そのサンプルに銀ペース
トを用いて平行でかつ等間隔に白金電極を取付け、密閉
したガラス容器に貯えた。その容器内を真空にしたのち
ヨウ素を拡散させて、気相中でドーピングすることによ
って、そのサンプルの電気伝導率の測定を行なった。電
気伝導率は最大で5.0×10-5S/cmを示した。
【0063】〔実施例4〕3つ口フラスコにジムロート
および滴下ロートを取付け、窒素気流下に保った。フラ
スコにTHF80mlを入れ、攪拌しながらカリウムt
−ブトキシド3.82gを徐々に加えて溶解させた。反
応容器を20℃に保ち、前記実施例1で得られた2,5
−ジクロロメチルピリジン1.50g(8.53mmo
l)のTHF5ml溶液を滴下ロートに入れ、フラスコ
内を攪拌しながら30分間かけて滴下した。
【0064】滴下後、同温で6時間反応させた。反応後
氷冷して、イオン交換水をゆっくり加え攪拌した。吸引
濾過して重合体を分離し、エタノール、イオン交換水、
さらにアセトンで洗浄し、真空減圧下で乾燥して0.4
65gの黄色の粉体の重合体を得た。この重合体を真空
減圧下にて、200℃、250℃、300℃の各温度で
4時間熱処理した。本実施例4における各熱処理後の各
重合体及び熱処理をしなかった重合体のFT−IRを図
5に示す。得られた重合体のうち熱処理前のものには残
留塩素が認められたが熱処理後のものは残留塩素が認め
られず、図5により共役系高分子ポリ−2,5−ピリジ
ンジイルビニレンであると同定された。 〔実施例5〕窒素気流下、乾燥したフラスコにジエチル
エーテル75mlを入れ、−78℃に冷却した。この温
度に保ちながら、蒸留精製したばかりのジエチルアミン
1.87g(25.6mmol)を加え、攪拌しながら
シリンジを用いて1.60mol/lのn−ブチルリチ
ウムヘキサン溶液16.0mlを徐々に加え、1時間反
応させた。同温で、前記実施例1で得られた2,5−ジ
クロロメチルピリジン1.50g(8.53mmol)
のジエチルエーテル10ml溶液をシリンジを用いて、
−78℃でフラスコ内を攪拌しながら1時間かけて滴下
した。
【0065】滴下後、同温で2時間反応させ、その後徐
々に室温に戻し20時間反応させた。反応後、氷冷し、
イオン交換水をゆっくり加え攪拌した。吸引濾過して重
合物を分離し、エタノール、イオン交換水、さらにアセ
トンで洗浄し、真空減圧下で乾燥して0.945gの黄
色い蛍光色の粉体の重合物を得た。この重合体のFT−
IRを図6に示す。図6によれば、得られた重合体は共
役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンであ
ることが分かる。
【0066】〔比較例1〕 スルホニウム塩モノマーの合成:前記実施例2で得られ
たジブロム化物5.0g(18.9mmol)をメタノ
ール50mlに溶解し、さらにテトラヒドロチオフェン
6.65g(75.6mmol)を加え、50℃に加熱
し24時間攪拌した。終了後、全量が1/2になるまで
濃縮し、冷却したアセトンの中に加えて攪拌した。デカ
ンテーションによってアセトンを除去し、再びアセトン
を加え洗浄した。最後にグローブボックス中で濾過して
白色結晶を得た。この結晶を真空減圧下で乾燥し、目的
のモノマーを4.66g得た(収率56%)。このモノ
マーは空気中で不安定で、吸湿性であった。得られた化
合物をFT−IR,1 H−NMRにて構造分析した。得
られたピーク値を以下に示す。
【0067】1 H-NMR(δ, CD3 OD);2.3 〜2.6(8H,m),3.
5 〜3.8(8H,m),4.76(2H,s),4.93(2H,s),7.72(1H,d),8.1
8(1H,d),8.87(1H,s) FT-IR(cm-1);2950(CH 2 伸縮振動),1200(S-CH2 面外変
角振動) 重合:三つ口フラスコに窒素導入官と滴下ロートを取付
け、合成したモノマーの0.10mol/lの水溶液5
0mlを調製して、フラスコ中に加え氷冷により0℃に
冷却した。滴下ロート中に1Nの水酸化ナトリウム水溶
液5mlを入れ窒素置換した。
【0068】窒素をバブリングしたまま同温で30分間
放置した。その後、攪拌しながら10分間かけて水酸化
ナトリウム水溶液を滴下し、そのまま同温で2時間攪拌
した。反応後、窒素のバブリングを中止し、1Nの塩酸
水溶液で中和した。
【0069】得られたポリマー溶液をセロハンチューブ
(和光純薬工業(株)製、ダイアライシスメンブラン2
7)中に蓄え、透析を室温にて三日間行なった。得られ
た水溶液を濃縮して前駆体ポリマーを得た。この前駆体
ポリマーを250℃にて熱処理を行なったが目的の構造
を有する重合体は得られなかった。
【0070】
【発明の効果】
(1)本発明の共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジ
イルビニレンの製造方法は、2,5−ジハロゲン化メチ
ルピリジンを脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存在
下に重合して製造するので、脱スルフォニウム塩法に必
要な重合物の透析等の精製処理が不要であり、重合物を
濾過した後、水洗するという簡単な方法で精製すること
ができる。したがって工業的規模で大量生産することが
可能となる。
【0071】(2)本発明は、2,5−ジハロゲン化メ
チルピリジンを脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存
在下に重合し、得られた重合体に対して、さらに窒素あ
るいは不活性気流下もしくは真空減圧下で、230〜3
00℃の温度で熱処理を行なうことにより、ポリマー主
鎖にハロゲン原子が脱離していない欠陥部分に対して熱
による脱ハロゲン化水素反応を起こし、目的のビニル鎖
に変換して、ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンを
高収率で生産することができる。
【0072】(3)ポリ−2,5−ピリジンジイルビニ
レンの製造原料であるモノマー2,5−ジハロゲン化メ
チルピリジンの製造において、ピリジン−2,5−ジカ
ルボン酸ジエチルエステルを出発原料としてピリジン−
2,5−ジメタノール塩酸塩を経由することにより、
2,5−ジハロゲン化メチルピリジンを効率よく生産す
ることができる。したがって、最終的な産物であるポリ
−2,5−ピリジンジイルビニレンを出発原料ピリジン
−2,5−ジカルボン酸ジエチルエステルから高収率で
得ることができる。
【0073】(4)本発明で使用するモノマーである
2,5−ジハロゲン化メチルピリジンは、pH制御を行
なうことにより、空気中、常温でも安定となり、取扱い
が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の重合体のフィブリル構造(繊維の形
状)を示す10,000倍の顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の重合体のフィブリル構造(繊維の形
状)を示す35,000倍の顕微鏡写真である。
【図3】実施例1における重合体及び熱処理後の重合体
のFT−IRを示す。
【図4】実施例2における重合体及び熱処理後の重合体
のFT−IRを示す。
【図5】実施例4における重合体及び熱処理後の重合体
のFT−IRを示す。
【図6】実施例5における重合体及び熱処理後の重合体
のFT−IRを示す。
【図7】比較例1における重合体及び熱処理後の重合体
のFT−IRを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 弘幸 静岡県駿東郡長泉町上土狩字高石234番 地 東邦レーヨン株式会社 三島工場内 審査官 森川 聡 (56)参考文献 特開 平1−33140(JP,A) 特開 平2−131245(JP,A) 米国特許出願公開4946937(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 61/12 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2,5−ジハロゲン化メチルピリジンを
    脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存在下に重合し
    て、下記の一般式、 【化1】 で表される重合体を得ることを特徴とする共役系高分子
    ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法。
  2. 【請求項2】 2,5−ジハロゲン化メチルピリジンを
    脱ハロゲン化水素重合法により塩基の存在下に重合し、
    得られた重合体に対して、さらに窒素あるいは不活性気
    流下もしくは真空減圧下で、230〜300℃の温度で
    熱処理を行なうことにより、前記重合体に含まれるハロ
    ゲン未脱離部分を脱離させて、下記の一般式、 【化2】 で表される重合体を得ることを特徴とする共役系高分子
    ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法。
  3. 【請求項3】 脱ハロゲン化水素重合法に用いられる塩
    基が求核性の小さい塩基である請求項1又は2記載の共
    役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレンの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記求核性の小さい塩基が水素化ナトリ
    ウム、カリウムt−ブトキシド、又はリチウムアミドで
    ある請求項3記載の共役系高分子ポリ−2,5−ピリジ
    ンジイルビニレンの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記求核性の小さい塩基の量は、2,5
    −ジハロゲン化メチルピリジンに対して、モル比で2倍
    以上である請求項3又は4記載の共役系高分子ポリ−
    2,5−ピリジンジイルビニレンの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記2,5−ジハロゲン化メチルピリジ
    ンを脱ハロゲン化水素重合法により重合する方法が、極
    性溶媒中で行なわれる請求項1,2,3,4又は5記載
    の共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイルビニレン
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記2,5−ジハロゲン化メチルピリジ
    ンが、(1)ピリジン−2,5−ジカルボン酸ジエチル
    エステルを水素化ホウ素カルシウムで還元してピリジン
    −2,5−ジメタノールを生成し、(2)該ピリジン−
    2,5−ジメタノールに塩酸を作用させてピリジン−
    2,5−ジメタノール塩酸塩とし、(3)該ピリジン−
    2,5−ジメタノール塩酸塩にハロゲン化試薬を作用さ
    せて生成されたものである請求項1,2,3,4,5又
    は6記載の共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイル
    ビニレンの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記水素化ホウ素カルシウムが、アルコ
    ール溶媒中における水素化ホウ素ナトリウムに塩化カル
    シウムを添加することにより生成されたものである請求
    項7記載の共役系高分子ポリ−2,5−ピリジンジイル
    ビニレンの製造方法。
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