JP2970257B2 - ポリシランの製造方法 - Google Patents

ポリシランの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光電導体、フォトレジ
スト、発光材料、電荷輸送材料あるいはヒドロシリル化
反応等の各種反応に有用であるポリシランの製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリシランは、出発原料としてオ
ルガノジクロロシランを用い、主にナトリウム、カリウ
ム等のアルカリ金属と100℃以上の高温条件下で縮合
反応させることによって製造されていた(例えば、J.
Polym. Sci.:Polym.Chem.Ed.,VOL22,159-170(1984))。
しかし、この方法では一般に収率が低く、またアルカリ
金属を使って反応を行うために危険性が極めて大きく、
ポリシランの製造方法として適当とはいえなかった。
【0003】また、オルガノジクロロシランをアルミニ
ウムまたはマグネシウム電極を用いて、支持電解質を含
有する極性溶媒中で電解する方法が提案されている(特
開平3−104893号公報)。しかし、オルガノジク
ロロシランは、特に水に対して反応が活性であり、空気
中の湿気により容易に加水分解され、原料の取り扱いが
困難であるばかりでなく、その際に発生する酸性ガス、
すなわち塩化水素の処理あるいは反応装置の防食対策等
を必要とする。また、オルガノジクロロシランを電解す
ると、塩素イオンが副生し、これが電極上で酸化されて
有害な塩素ガスとなるのを防ぐ必要がある。そこでアル
ミニウムあるいはマゲネシウム等の塩素と反応する電極
を使用し、該電極と塩素を反応させて、塩素を金属塩化
物として反応系から除去する手段を講じる必要があり、
電極の交換、あるいは多量に副生する金属塩化物の回収
処理など、経済的に不利で煩雑な工程が必要であった。
【0004】更に、ハロシランを原料として、Mg、C
u等を陽極として電解反応させることにより、両末端に
Si−H結合を有するジシランを製造する方法が知られ
ている(特開平3−264683)。しかし両末端にS
i−H結合を有する高分子のポリシランは知られていな
い。
【0005】いずれにせよ、上記の各製造方法では、原
料化合物にクロロシランなどのハロシランを用いるた
め、副成物としてハロゲンまたはハロゲン化物が生成
し、製品中に不純物として混入する恐れがあり、各種電
子材料部材等への影響が心配される。
【0006】一方、チタノセン系触媒を用い、オルガノ
ヒドロシラン類を脱水素縮合反応させることにより、低
分子量のオルガノヒドロポリシランを製造する方法が知
られているが、ポリシランを構成する全ての珪素原子に
接合する少なくとも一方の側鎖が水素であるため、架橋
反応により不溶化が起こる恐れがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、オルガノジク
ロロシランのように腐食性の高い原料を使用することな
く、また有害なハロゲンガスを発生せず、クリーンな環
境下で、経済的に有利に製造することが出来、しかも架
橋する恐れがなく、種々の反応や各種用途に利用し得
ポリシランの製造方法を開発せんと鋭意研究を重ねた結
果、本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、化4で示され
るオルガノヒドロシラン〔以下、オルガノヒドロシラン
(1)と称する〕を電解することを特徴とする、主鎖が
実質的に化3で示される繰り返し単位よりなり、両末端
部が水素原子で終わる、重量平均分子量500〜6,0
00のポリシラン〔以下、ポリシラン(1)と称する〕
製造方法である。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】本発明の製造方法で得られるポリシラン
(1)のR1 またはR2 は、炭素数1〜8のアルキル基
またはフェニル基である。該アルキル基の好ましい炭素
数は1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。アル
キル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチ
ル基であり、これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状で
も差支えないが、直鎖状が好ましい。。R1 またはR2
は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0012】本発明の製造方法で得られるポリシラン
(1)を具体的に示すと、ポリ〔ジメチルシラン〕、ポ
リ〔ジエチルシラン〕、ポリ〔ジプロピルシラン〕、ポ
リ〔ジブチルシラン〕、ポリ〔ジペンチルシラン〕、ポ
リ〔ジヘキシルシラン〕、ポリ〔メチル−n−プロピル
シラン〕、ポリ〔ヘキシルメチルシラン〕、ポリ〔メチ
ルフェニルシラン〕、ポリ〔ジフェニルシラン〕等が挙
げられ、それらの中でもポリ〔ジメチルシラン〕、ポリ
〔ジエチルシラン〕、ポリ〔ジ−n−プロピルシラ
ン〕、ポリ〔ジ−n−ブチルシラン〕、ポリ〔メチルフ
ェニルシラン〕、ポリ〔ジフェニルシラン〕が用途との
関係から好適であり、更に特にポリ〔メチルフェニルシ
ラン〕が、より高分子のものが得られることから好適で
ある。
【0013】本発明の製造方法で得られる化合物の重量
平均分子量は500〜6,000であり、好ましくは5
00〜5,000、更に好ましくは1,000〜4,0
00である。
【0014】上記ポリシラン(1)は、オルガノヒドロ
シラン(1)を電解することにより得られる。本発明の
製造方法を式で示すと化5の通りである。
【0015】
【化5】
【0016】本発明の製造方法において、電解を行うた
めの陽極あるいは陰極に用いられる電極材料としては、
白金、カーボンあるいは銅等が好適に挙げられ、これら
の電極材料は電気化学的に不活性であり、繰り返し使用
が可能である。上記化5に示す如く、本発明の製造方法
においては、オルガノヒドロシラン(1)よりポリシラ
ン(1)を生成する際、水素ガスを発生するため、水素
過電圧が低い白金が特に好適である。
【0017】オルガノヒドロシラン(1)の電解を行う
ための電解槽中には、適当な支持電解質を溶解した電解
液が入っている。支持電解質としては無水過塩素酸リチ
ウム等が挙げられる。これら支持電解質を溶解して電解
液となす溶媒としては、支持電解質、オルガノヒドロシ
ラン(1)および生成するポリシラン(1)を溶解する
ものであれば特に限定されるものではないが、1,2−
ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(T
HF)等が好適である。
【0018】電解液中における支持電解質の濃度は、電
解電流をより多く通じ、ポリシランの生成速度を大きく
するため、0.05mol /l〜2mol /lが好ましく、
特に好ましくは0.1mol /l〜1mol /lである。
【0019】原料であるオルガノヒドロシラン(1)の
電解液中における濃度は、0.05mol /l〜10mol
/lとなるのが好ましく、更に好ましくは濃度0.1mo
l /l〜3mol /l、特に好ましくは0.8mol /l〜
2.5mol /lである。あまり濃度が高すぎると、電解
液の電気抵抗が高くなる恐れがある。
【0020】本発明の製造方法を更に具体的に説明する
と、陽極および陰極を設置した密閉可能な電解槽に、オ
ルガノヒドロシラン(1)と支持電解質および溶媒を入
れ、好ましくは、機械的に撹拌しながら、所定量の電流
を通電することにより電解反応を行わせる。電解槽内は
水分および酸素が除去された不活性ガス雰囲気とするこ
とが望ましく、具体的には乾燥窒素ガス雰囲気が挙げら
れる。
【0021】通電量はオルガノヒドロシラン(1)を基
準として、通常1F/mol 〜4F/mol が好ましく、更
に好ましくは、1F/mol 〜2F/mol である。
【0022】反応温度は0℃から使用する溶媒の沸点以
下までの任意の温度で良く、より好ましくは10℃〜3
0℃である。
【0023】本発明で使用する電解槽には、通常の電解
反応において必要とされる隔膜を使用しても良く、ある
いは使用しなくても良い。
【0024】かかる方法にて電解反応を行った後、目的
生成物が不溶性である場合は、これを濾過することによ
り取得すればよく、反応物が液体の場合は、反応溶液に
n−ヘキサンまたはトルエン等を加えて支持電解質を沈
澱せしめて除去した後、必要に応じてシリカゲルを充填
したカラムクロマトグラフィー等により精製を行ってか
ら溶媒で溶出し、減圧下で溶媒を溜去し、減圧乾燥する
ことによって目的生成物を取得する。
【0025】本発明により得られたポリシランは、光電
導体、フォトレジスト、発光材料、電荷輸送材料等に有
用であり、またポリマーの両末端部がSi−H基になっ
ているので、ヒドロシリル化反応等によるポリマー末端
修飾等に用いることが可能である。
【0026】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明する。
【0027】〈実施例1〉 白金電極(1cm×2cm×0.05mm)を2枚備えた容積50
mlの円筒形一室型電解槽(以下、電解槽と言う)に、支
持電解質として無水過塩素酸リチウム1.0g(9.4
mmol) を入れ、内部を真空ポンプで減圧してから乾燥窒
素ガスを導入して不活性雰囲気にした。あらかじめ金属
ナトリウムで脱水した後蒸留した1,2−ジメトキシエ
タン20mlを、支持電解質の溶媒として試料注入口より
シリンジで入れ、マグネチックスターラーで撹拌して電
解液を調製した。次に、メチルフェニルシランを濃度1
mol /lとなるように3.1g(25mmol) 仕込んだ。
電解槽にガルバノスタットを接続し、室温において30
mAの定電流により電解を行った。反応はメチルフェニル
シランを基準として2F/mol 通電されるまで続けた。
ガスクロマトグラフィーによる分析によれば、メチルフ
ェニルシランはこの時点において完全に消費されてい
た。
【0028】電解終了後、反応溶液にn−ヘキサン30
mlを加え、支持電解質を沈澱させて濾別し、濾液をロー
タリーエバポレータで濃縮してからシリカゲルカラムに
入れ、次いでn−ヘキサン溶媒で溶出した後、減圧下で
溶媒を除去して生成物を精製・単離した。
【0029】生成物をゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィーで分析したところ、重量平均分子量1,50
0、分散度(Mw/Mn )1.3のポリマーが得られた。
【0030】この化合物を 1H核磁気共鳴スペクルおよ
び紫外線吸収スペクトルで測定した結果をそれぞれ図1
および図2に示す。図1より、ケミカルシフトδ0.1
〜0.8ppmにメチル基、δ7.2〜7.8ppmに
フェニル基、δ5.1〜5.3ppmに末端のSi−H
によるシグナルが観測された。また図2より、275n
mにおける吸光係数(ケイ素1ユニットあたり)が12
00であり、吸収が320nm以上の長波長紫外域まで
延びていた。以上の分析結果より、取得した化合物がポ
リ〔メチルフェニルシラン〕であることが確認された。
その収率は28%であった。
【0031】(実施例2) 原料であるメチルフェニルシランの仕込み濃度を2mol
/lとしたこと以外は実施例1と同様にして電極反応を
行った。この結果、、重量平均分子量3,400、分散
度2.0のポリマ−が得られた。
【0032】この化合物を 1H核磁気共鳴スペクルおよ
び紫外線吸収スペクトルで測定した結果,実施例1と同
様ポリ〔メチルフェニルシラン〕であることが確認さ
れ、その収率は20%であった。
【0033】(実施例3) メチルフェニルシランに代えてジ−n−ブチルシランを
濃度0.5mol /lで仕込んだ以外は実施例1と同様に
実施した。この結果、重量平均分子量1,020、分散
度1.1のポリマーが得られた。
【0034】この化合物を 1H核磁気共鳴スペクルで測
定した結果、ケミカルシフトδ0.5〜1.5ppmに
n−ブチル基、δ4.5〜4.6ppmに末端のSi−
Hによるシグナルが観測された。また、紫外線吸収スペ
クトルを測定した結果、吸収が300nm以上の長波長
紫外域まで吸収が延びていた。以上の測定結果より、取
得した化合物がポリ〔ジ−n−ブチルシラン〕であるこ
とが確認され、その収率は80%であった。
【0035】
【発明の効果】本発明の製造方法で得られるポリシラン
は光電導体、フォトレジスト、発光材料、電荷輸送材料
に有用であリ、またヒドロシリル化反応等の各種反応
に、架橋等の恐れがなく有用される。また、本発明の製
造方法は、安価で腐食性のない原料を用いて、有害なハ
ロゲンガスを発生せずに、クリーンな環境下で経済的に
有利に製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得たポリ〔メチルフェニル
シラン〕の 1H核磁気共鳴スペクトル図である。
【図2】本発明の実施例1で得たポリ〔メチルフェニル
シラン〕の紫外線吸収スペクトル図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−184691(JP,A) 特開 平2−67288(JP,A) 特開 平3−104893(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 77/60

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化2で示されるオルガノヒドロシランを
    電解することによる、主鎖が実質的に化1で示される繰
    り返し単位よりなり、両末端部が水素原子で終わる、重
    量平均分子量500〜6,000のポリシランの製造方
    。 【化1】 【化2】
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